JP2015091221A - ケルセチン配糖体を含有する茶飲料 - Google Patents

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尚子 南
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秀貴 松林
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Abstract

【課題】特有の収斂味が抑制された、ケルセチン配糖体を含有する茶飲料を提供する。
【解決手段】ケルセチン配糖体を含有する茶飲料において、飲料中のナトリウム濃度が10〜130ppmの範囲になるように、ナトリウム含量を調整する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ケルセチン配糖体を含有する茶飲料に関し、より詳細には、ケルセチン配糖体特有の収斂味が低減された、ケルセチン配糖体を含有する茶飲料とその製造方法に関する。
ケルセチンは野菜や果物に豊富に含まれるポリフェノール成分であり、そのままで、又は配糖体(ルチン、クエルシトリンなど)の形で、柑橘類、タマネギ、ソバ、エンジュ等の種々の植物に含まれている。
ケルセチンは、強力な抗酸化活性の他、血小板の凝集抑制および接着抑制作用、血管拡張作用、抗ガン作用等、多彩な生理機能をもつことが知られている(非特許文献1)。そして、ケルセチン配糖体に関しては、結合するグルコース数が1、2及び3と増すにつれて、経口吸収性が高くなり、グルコース数(n)が4になると経口吸収性が低下することが分かっている(特許文献1参照)。
ケルセチン配糖体の一つ、ルチンを高含有する飲料として、韃靼そば茶飲料が知られている。ルチンには、特有の生臭さ、苦味及び後味の悪さ(ぬめり)があるために、韃靼そば茶飲料に関しては、風味を改善するための方法が検討されている(特許文献2)。
一方、ケルセチン配糖体を配合した容器詰め茶飲料については、アスコルビン酸含量を抑え、かつさらにpHを調整することでより安定性が相乗効果的に増すとともに、緑茶飲料においては、緑茶本来の豊かな味わいを維持できることが分かっている(特許文献3)。
WO2006/070883 特開2009−171856 特開2012−183063
薬理と治療、p123-131, vol.37, No.2, 2009
本発明者らは、ケルセチン配糖体を配合した茶飲料について検討してきた。しかし、茶飲料にケルセチン配糖体を配合することで、ケルセチン配糖体特有の収斂味が生じ、茶本来の良質な香気香味が阻害されるという問題があった。
本発明の課題は、ケルセチン配糖体を含有する茶飲料において、ケルセチン配糖体特有の収斂味が低減され、茶本来の良質な香気香味を有する茶飲料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、ケルセチン配糖体を含有する茶飲料において、飲料中のナトリウム濃度が特定範囲になるように、ナトリウムを含有させることで、ケルセチン配糖体特有の収斂味が低減され、茶本来の良質な香気香味を有する茶飲料が得られることを見出した。
本発明は、以下を包含するが、これらに限定されない。
1.ケルセチン配糖体及びナトリウムを含有する茶飲料であって、飲料中のナトリウム濃度が10〜130ppmである飲料。
2.ケルセチン配糖体の含有量が、100〜500ppmである、1に記載の飲料。
3.ケルセチン配糖体がイソクエルシトリンを含む、1又は2に記載の飲料。
4.緑茶飲料である、1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
5.飲料中のアミノ態窒素濃度(w/v)とカテキン含量(w/v)との比が、1:15〜1:50である、4に記載の飲料。
6.穀物茶飲料である、1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
7.容器詰飲料である、1〜6のいずれか1項に記載の飲料。
8.ケルセチン配糖体及びナトリウムを含有する茶飲料の製造方法であって、飲料中のナトリウムの濃度を10〜130ppmに調整することを含む方法。
9.茶飲料のケルセチン配糖体の収斂味を抑制する方法であって、飲料中のナトリウムの濃度を10〜130ppmに調整することを含む方法。
本発明によれば、ケルセチン配糖体を含有するにもかかわらず、ケルセチン配糖体特有の収斂味が低減され、茶本来の良質な香気香味を有する茶飲料を提供できる。本発明のケルセチン配糖体を含有する茶飲料は、収斂味が低減され、すっきり飲めるため、食事と併せての飲用にも好適である。
本発明の茶飲料は、ナトリウムを含有し、飲料中のナトリウム濃度が特定範囲にあることを特徴とする。
本発明に用いられるナトリウムの形態は特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等及びそれらの混合物のような容易に入手しうるナトリウム塩として配合することができる。なお、ナトリウムは茶の成分由来のものも含まれる。
本発明の茶飲料中のナトリウム濃度は10〜130ppmであり、好ましくは20〜120ppm、更に好ましくは40〜100ppmである。なお、本明細書中、別途記載しない限り、ppmは重量比(mg/kg)を示す。ナトリウム濃度が低過ぎても高過ぎても、本発明の効果は得られない。ナトリウム濃度は、公知の方法にて測定が可能であり、例えば、原子吸光光度法を用いることができる。
本発明に関連して用いられる「茶飲料」との用語は、(ア)植物の茎葉抽出液を主に配合した飲料、及び(イ)穀物の種子抽出液を主に配合した飲料を意味する。
本発明の茶飲料のうち、(ア)植物の茎葉抽出液を主に配合した飲料とは、Camellia属、例えばC. sinensis、C. assamica、やぶきた種及びそれらの雑種から得られる茶葉から製茶された茶葉から水や熱水、抽出助剤を添加した水溶液で抽出した茶葉抽出液を配合した飲料の総称をいう。製茶された茶葉には、緑茶(煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶など)などの不発酵茶類、烏龍茶(鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶など)などの半発酵茶、紅茶(ダージリン、アッサム、スリランカなど)などの発酵茶類があり、本発明の茶飲料は、いずれの茶葉由来の茶葉抽出液を配合した飲料であってもよいが、特に、緑茶の抽出液を主成分として調製された緑茶飲料が、本発明の効果が顕著に得られ、好ましい態様の一つである。本発明においては、用いられる茶葉は一種であってもよいし、2種以上の茶葉を用いてもよい。
また、本発明の茶飲料のうち、(イ)穀物の種子抽出液を配合した飲料とは、ハトムギ、オオムギ、コムギ、玄米、大豆、とうもろこし、黒豆、ケツメイシ(ハブ茶)、麦芽等の穀物の種子の焙煎物から得られた抽出液を配合した飲料の総称をいう。穀物種子の種類は、1種でもよいし、2種以上をブレンドしてもよい。好ましい穀物種子は、大麦、はと麦、玄米の種子である。
本発明の茶飲料(ア)においては、飲料中のアミノ態窒素濃度(w/v)とカテキン含量(w/v)との比は、1:15〜1:50であることが好ましく、1:25〜1:35であることがより好ましい。ここで、アミノ態窒素とは、遊離α-アミノ酸の総量に該当する量のことである。飲料中のアミノ態窒素の量は、試料を適度に希釈したのち、リン酸緩衝液とTNBS溶液を加え、所定時間、所定濃度で保持した後、反応停止液を加え、吸光度を測定し(分光光度計波長340nm)、この吸光度を既知濃度のグリシン標準水溶液から求められた検量線に照らし合わせることにより算出することができる。また、カテキン含量とは、非重合カテキンあるいは単量体の茶カテキンの総量のことであり、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの8種類の合計量を指す。飲料中のカテキン含量は、高速液体クロマトグラム法(HPLC法)を用いることで、それぞれ個別ピークとして測定することができる。これらアミノ態窒素とカテキンの量は、適切な緑茶抽出液を選択したり、あるいは緑茶抽出液以外の添加物を添加することにより調整することができる。
本発明において、「ケルセチン配糖体」というときは、特に記載した場合を除き、フラボノイドの一種であるケルセチン(クエルセチンとも呼ばれる)の配糖体を指し、これは下式で表される。
(式中、(X)nは、糖鎖を表し、nは、1以上の整数である。)
ここで、ケルセチンにグリコシド結合するXで表される糖鎖を構成する糖は、例えば、グルコース、ラムノース、ガラクトース、グルクロン酸であり、好ましくはグルコース、ラムノースである。また、nは1以上であれば、特に制限されないが、好ましくは1〜16、さらに好ましくは1〜8である。nが2以上であるとき、X部分は1種類の糖鎖からなっていてもよく、複数の糖鎖からなっていてもよい。
本明細書においては、ケルセチンにグルコースが一つ配されたものを、QG1、2つ配されたものをQG2、3つ配されたものをQG3(以下、グルコースが一つ増すごとに、QG4、QG5、QG6・・・)と表すことがある。
本発明のケルセチン配糖体は、既存のケルセチン配糖体を、酵素などで処理して糖転移させたものも含む。
本発明でいうケルセチン配糖体は、具体的には、ルチン、酵素処理ルチン、クエルシトリン、イソクエルシトリンを含む。
ルチンは、下式で表される化合物である。
ルチンは、ルトサイド又はケルセチン−3−ルチノシドと称されることもある。
酵素処理ルチンとは、ルチン又はその類縁体を酵素処理したものを成分とするものをいう。酵素処理ルチンは、酵素処理イソクエルシトリン又は糖転移ルチンと称されることもある。
本発明においては、ケルセチン配糖体に包含される一の化合物を、単独で用いてもよいし、複数の化合物の混合を用いてもよい。
本発明で使用するケルセチン配糖体は、その由来、製法については特に制限はない。例えば、ケルセチンを多く含む植物として、ケッパー、リンゴ、茶、タマネギ、ブドウ、ブロッコリー、モロヘイヤ、ラズベリー、コケモモ、クランベリー、オプンティア、葉菜類、柑橘類などが知られており、これらの植物からケルセチン配糖体を得ることができる。
本発明の特に好ましい態様においては、ケルセチン配糖体として、ルチンの酵素処理物(以下、酵素処理ルチン)を使用する。
酵素処理ルチンの特に好ましい例は、ケルセチン配糖体を酵素処理してラムノース糖鎖部分を除去したイソクエルシトリン、イソクエルシトリンを糖転移酵素で処理してグルコース1〜7個からなる糖鎖が結合したもの、及びその混合物を主成分とするものである。
イソクエルシトリンは、例えば、WO2005/030975に記載されている方法、すなわち、ルチンを、特定の可食性成分の存在下でナリンギナーゼで処理する方法によって製造することができる。さらに、WO2005/030975に記載されているように、イソクエルシトリンを糖転移酵素で処理することにより、α-グリコシルイソクエルシトリンを得ることができる。
一般に、ルチンには抗酸化作用があることが知られていたが、水に難溶性であるため使用用途が限られていた。しかしながら酵素処理ルチンは糖転移により水溶性が向上しているため飲料に好適に使用できる。酵素処理ルチンは強力な抗酸化活性のほか、血小板の凝集抑制および接着抑制作用、血管拡張作用、抗癌作用など、多彩な生理機能を持つことが知られており、炎症の改善や血液循環促進などの効果を目的とした健康食品に利用されている。酵素処理ルチンは、例えば、エンジュ、ソバなどの抽出物を糖転移酵素で処理して得ることができる。
本発明の飲料におけるケルセチンの配合量は、20〜5000ppm、好ましくは100〜2500ppm、さらに好ましくは200〜1500ppm、最も好ましくは100〜500ppmである。なお、本発明で飲料中のケルセチンの配合量をいうときは、特に記載した場合を除き、ケルセチン配糖体の配合量を合計したものをQG1として換算して得られる量を指す。
ケルセチン配糖体量の測定は、当業者にはよく知られた定法により、行うことができる。本明細書におけるケルセチン配糖体量とは、特に記載した場合を除き、ケルセチン配糖体の主要な構成成分であるQG1〜QG7をいい、下記の方法により求めてもよい:すなわち、標準物質としてQuercetin 3-O-glucoside(QG1)を用い、HPLCを用いて、紫外部吸光度350 nmにおける面積と標準物質濃度により検量線を作成する。ケルセチン配糖体は、小腸でケルセチンに加水分解されることから、QG1からQG7は生理活性的に同等であると考えられ、またケルセチンの3位配糖体は糖鎖の長さに関らず、すべて350nmに極大吸収を持ち、その吸光度はアグリコン部分であるケルセチンに依拠する。したがって、分子量は異なるが、モル吸光度ではQG1〜QG7は等しくなると考えられ、QG1換算でケルセチン配糖体量を定量する。具体的には、分析試料を、標準物質と同一条件でHPLCに供し、得られたチャートにおいて、標準物質の溶出保持時間と一致するピークを特定する。そして、QG1のピークより前に検出されるケルセチン配糖体QG2〜QG7のピークを特定し(もしあれば)、各々のピーク面積の総計から、標準物質を用いて作成した検量線を用いて、分析試料中のケルセチン配糖体含量を算出する。
本発明の茶飲料に含まれる、ナトリウムの量とケルセチン配合量との比は、重量で1:1〜1:10であることが好ましく、1:2〜1:8であることがさらに好ましい。
本発明の茶飲料のpHは特に限定されるものではないが、ケルセチン配糖体の安定性の観点からはpH6.0以下であることが好ましく、pH5.8以下であることがさらに好ましい。香味の観点からは、いずれの場合もpH5.6以上であることが好ましく、pH5.8以上であることがさらに好ましい。総合的には、pH5.8〜6.0であることが、より好ましい。
飲料のpHを調整する方法としては、飲料に酸やアルカリを添加すること、イオン交換樹脂へ通液させることが挙げられる。用いられる酸成分としては、例えば、有機酸としてはクエン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸など、無機酸としては塩酸、リン酸などが挙げられる。アルカリ成分としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重曹などが挙げられる。ただし、ナトリウム塩を用いる場合には、飲料中のナトリウム濃度が上述した特定範囲内となるように調整するとよい。
本発明の飲料は、上述した成分の他、乳化剤、酸化防止剤等の、飲料として許容される添加物を配合してもよい。
本発明により得られる茶飲料は、殺菌工程や保存工程を経ても、本発明における効果は維持されるため、容器詰飲料として好適に提供されるものである。容器詰飲料は、茶飲料を殺菌して容器に充填する、又は容器に充填した後に加熱殺菌(レトルト殺菌等)を行うことで、製造される。例えば缶飲料とする場合には、上記調合液を缶に所定量充填し、レトルト殺菌(例えば、1.2mmHg、121℃、7分)を行い、ペットボトルや紙パック、瓶飲料とする場合には、例えば120〜150℃で1〜数十秒保持するUHT殺菌等を行い、所定量をホットパック充填或いは低温で無菌充填する。本発明の容器詰茶飲料は、香味の良好な茶飲料であるから、無菌充填を行うのが最も好ましい態様である。
なお、容器としては、アルミ缶、スチール缶、PETボトル、ガラス瓶、紙容器など、通常用いられる容器のいずれも用いることができる。
[飲料の製造方法]
本発明の飲料を製造するための方法は、上述の各成分の配合量を満たすことができる限り、特に限定されない。ナトリウムやケルセチン配糖体の含有量を調整するタイミングも、特に限定されない。
例えば、既存の茶飲料に対し、ケルセチン配合量が適切となるように、ケルセチン配糖体を含む原材料を、常法により添加する。次に、ナトリウムの配合量が適切となるように塩化ナトリウムを添加することによって、本発明の飲料を製造することができる。
このように、飲料中のナトリウム濃度を所定の範囲に調整することによって飲料のケルセチン配糖体の収斂味を抑制できる。従って、本発明の飲料の製造方法は、別の側面では、飲料のケルセチン配糖体の収斂味を抑制する方法である。
以下、本発明を実施例に基づいて、より具体的に説明する。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例においては、ケルセチン配糖体量の測定は、下記の方法で行った。
1. 分析方法(機器および試薬、操作方法)
1-1.試薬
・アセトニトリル:高速液体クロマトグラフ用 純度99.8%(ナカライテスク株式会社製)
・水:高速液体クロマトグラフ用 不純物0.001%以下(ナカライテスク株式会社製)
・トリフルオロ酢酸:純度99%(ナカライテスク株式会社製)
・イソクエルシトリン(Quercetin 3-O-glucoside: 以下QG1とする): SSX1327S、純度93.8% (フナコシ株式会社製)
・エタノール:高速液体クロマトグラフ用 純度99.8%(ナカライテスク株式会社製)
・ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide: 以下DMSOとする):純度99.0%(ナカライテスク株式会社製)。
1-2.分析機器
高速液体クロマトグラフ(以下HPLCとする)
ポンプ:LC-10ADvp
検出器: SPD-M10Avp検出器
解析ソフト:Class LCsolution (以上、株式会社島津製作所)
1-3.分析試料の調製
・当該食品の原液を20%エタノール/水で5倍希釈し、0.45 μmフィルター(マイレクスLH-4:ミリポア社製)でろ過したものを分析試料としてHPLCに供する。
1-4.検量線の作成
標準物質であるQuercetin 3-O-glucoside (フナコシ株式会社製:SSX 1327S、純度93.8%)を1.0 mg正確に秤量し、5 mlメスフラスコ中で0.5 mlのジメチルスルホキシド(DMSO:ナカライテスク株式会社製 純度99.0%)に溶解し、20%エタノール(ナカライテスク株式会社製 純度99.8% 高速液体クロマトグラフ用特製試薬)/水により5 mlにフィルアップする。この200 μg/mlの溶液を20%エタノール/水で順次希釈し、10、25、50、100 μg/mlの溶液を作成する。各濃度の溶液を10 μl、 HPLCに供する。このときに検出されるピークの溶出保持時間は約14.5分である。このときの紫外部吸光度350 nmにおける面積と濃度により検量線を作成する。
原点を通る近似直線を計算し、これを用いてQG1からQG7までの濃度を算出し、合算した値に標準物質の純度(93.8%)をかけることで、ケルセチン配糖体量を算出する。
1-5.試験操作
・定性試験:分析試料を標準品と同一条件下でHPLC分析を行い、QG1標準品の溶出保持時間と一致するピークをQG1とする。QG1はケルセチンにグルコースが1個結合したケルセチン配糖体である。
・定量試験: QG1のピークより前に検出される6つのピークは、QG1にさらにグルコース結合したケルセチンの配糖体である。HPLC分析では、QG1およびQ G1にさらにグルコースが1〜6個結合した化合物が検出可能であり、これらQG1〜QG7について、標準品が入手可能なQG1を指標成分と設定し、QG1換算での量を算出する。ケルセチン配糖体の7つの溶出ピークについてのピーク面積を測定し、QG1標準品のピーク面積に基づいて作成した検量線から分析試料中のケルセチン配糖体含量を算出する。
イソクエルシトリン(QG1)は、ケルセチンの3位に1分子のグルコースがβ結合した化合物である。QG2〜QG7はQG1にさらに0 〜6個のグルコースがα-1,4結合した化合物群で、QG1およびQG2〜QG7の7成分の合計を、ケルセチン配糖体量とする。
ケルセチンの3位配糖体は糖鎖の長さに関らず、すべて350nmに極大吸収を持ち、その吸光度はアグリコン部分であるケルセチンが寄与する。従って、分子量は異なるが、モル吸光度ではQG1からQG7は等しくなると考え、QG1換算でケルセチン配糖体量を定量することとした。
緑茶抽出液2.2Lに、サンエミックP15(イソクエルシトリン配糖体含有製剤)を30g加え、さらに、表1記載の量の塩化ナトリウムを加え、加水し、7.5Lの各種緑茶飲料を得た。得られた緑茶飲料に殺菌処理を行った後、500mLのPET容器に1本ずつ充填し、製造官能評価を行った。官能評価は5名の訓練されたパネラーによって行い、○(ケルセチン配糖体特有の収斂味がない)、△(収斂味が少しある)、×(収斂味が強く、許容できない)の3段階評価を行い、最も点数の多かった評価を表1に記した。
表1に記載した飲料中のケルセチン配糖体量は、上述の方法にて、QG1換算量として算出した値であり、飲料中のナトリウム量は、原子吸光光度法にて測定した値である。各飲料のアミノ態窒素量(w/v)は15ppm、カテキン量(w/v)は460ppmであった。
本結果より、飲料中のナトリウム量を10〜130ppmに調節することにより、緑茶飲料のケルセチン配糖体由来の収斂味を低減できることがわかった。
続いて、穀物茶抽出液3.4L(大麦、はと麦、玄米茶のブレンド)に、サンエミックP15(イソクエルシトリン配糖体含有製剤)を30g加え、さらに、表2記載の量の塩化ナトリウムを加え、加水し、7.5Lの各種穀物茶飲料を得た。得られた穀物茶飲料に殺菌処理を行った後、500mLのPET容器に1本ずつ充填し、製造官能評価を行った。官能評価は5名の訓練されたパネラーによって行い、○(ケルセチン配糖体特有の収斂味がない)、△(収斂味が少しある)、×(収斂味が強く、許容できない)の3段階評価を行い、最も点数の多かった評価を表2に記した。
表2に記載した飲料中のケルセチン配糖体量は、上述の方法にて、QG1換算量として算出した値であり、飲料中のナトリウム量は、原子吸光光度法にて測定した値である。
本結果より、飲料中のナトリウム量を10〜130ppmに調節することにより、穀物茶飲料のケルセチン配糖体由来の収斂味を低減できることがわかった。

Claims (9)

  1. ケルセチン配糖体及びナトリウムを含有する茶飲料であって、飲料中のナトリウム濃度が10〜130ppmである飲料。
  2. 飲料中のケルセチン配糖体量が、100〜500ppmである、請求項1に記載の飲料。
  3. ケルセチン配糖体がイソクエルシトリンを含む、請求項1又は2に記載の飲料。
  4. 緑茶飲料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
  5. 飲料中のアミノ態窒素濃度(w/v)とカテキン含量(w/v)との比が、1:15〜1:50である、請求項4に記載の飲料。
  6. 穀物茶飲料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
  7. 容器詰飲料である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲料。
  8. ケルセチン配糖体及びナトリウムを含有する茶飲料の製造方法であって、飲料中のナトリウムの濃度を10〜130ppmに調整することを含む方法。
  9. 茶飲料のケルセチン配糖体の収斂味を抑制する方法であって、飲料中のナトリウムの濃度を10〜130ppmに調整することを含む方法。
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