JP2015089539A - 断熱層の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】断熱層を形成するための熱処理の処理温度を低くできて且つ処理時間を短縮化できるようにすると共に、高い断熱性を有し、燃料の浸み込みを防止でき、長期にわたって高い断熱性を維持でき、もってエンジンの熱効率を向上できる断熱層を得られるようにする。【解決手段】断熱層20を形成する方法は、金属製基材10上に、中空粒子21を含むケイ酸ガラス前駆体溶液を塗布して塗布層を形成し、その塗布層に対して減圧下で熱処理をすることにより、塗布層を硬化させて非粉末状態のケイ酸ガラス23により構成された層を生成すると共に、該ケイ酸ガラス23により構成された層に含まれる中空粒子21内の空気を減圧膨張させる。【選択図】図1

Description

本発明は、断熱層の形成方法に関し、特に、中空粒子を含む断熱層の形成方法に関する。
近年、エンジンの熱効率を向上するために冷損を低減することが重要視されている。この冷損の低減のためにエンジンの燃焼室を形成するシリンダヘッド、ピストン、バルブ等に断熱層を設けることが検討されている。断熱層としては、ジルコニア等の低熱伝導性を有する無機酸化物を溶射して形成した溶射断熱層等が用いられている。
上記のような溶射断熱層は、粒子(粉末)同士が互いに結合してなるため、粒子間に間隙を有し、すなわちポーラス状となっている。このため、エンジンの燃焼室を形成する上記部材のうちのピストン頂面は噴射された燃料が当たるので、燃料が上記ポーラス状の溶射断熱層に浸み込んでしまう。この浸み込んだ燃料は、燃焼に寄与できないだけでなく、断熱層内でカーボンとなって残留し、断熱層の断熱性能を低減させる。このため、断熱層には、燃料が浸み込まない材料を用いることが好ましい。そのような材料として、例えば耐熱性が高い樹脂やガラス等が挙げられ、これらは上記溶射層のようなポーラス状でない緻密な層となるので好ましい。
材料として樹脂を含む断熱層については、特許文献1に開示されている。特許文献1の断熱層は、樹脂と、該樹脂の中に埋設された中空ナノ粒子とを含み、エンジンのピストンに設けられている。用いられる樹脂としては、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド等が例示されている。また、特許文献1には、その樹脂の焼き付け温度としては、樹脂の材質等に応じて設定でき、130〜220℃、150〜200℃、170〜190℃が挙げられ、焼き付け温度としては、0.5〜5時間、1〜3時間、1.5〜2時間が例示される、と記載されている。
この他に、特許文献2には、エンジンの断熱層ではないが、樹脂薄膜を硬化させる際に、減圧雰囲気で熱処理して、多孔質の樹脂薄膜を得る方法が記載されている。具体的に、特許文献2の方法は、樹脂材料と、該樹脂材料とは異なる有機化合物とを含む塗膜を形成し、塗膜中の樹脂材料を反応させて樹脂薄膜を形成し、樹脂薄膜から上記有機化合物を除去することにより、樹脂薄膜を多孔質にするものである。この樹脂薄膜中の上記有機化合物の除去は、減圧下で熱処理を施すことにより行っている。
特開2012−172619号公報 特開2002−347050号公報
特許文献1の断熱層は、エンジン部品の表面上に設けられた樹脂材料に対して上記のような温度で数時間の熱処理を施すことにより形成されている。上記エンジン部品がアルミ合金製の場合、通常、その部品に対してT6処理等の熱処理が施されており、このT6処理はアルミ合金製部品に対して180℃程度の熱処理を施すものである。このため、このアルミ合金製部品に対して180℃を超える温度で数時間の熱処理をすると、該部品基材の硬さや強度が低減し、耐久性が低い部品となるおそれがある。
また、特許文献2のように、樹脂層を減圧雰囲気下で比較的低温の熱処理を施すことにより多孔質樹脂層を形成することも考えられるが、熱処理により樹脂層から有機化合物が除去されるとき、有機化合物は樹脂層の内部から表面に向かって移動して外部に除去されるため、層内部と層表面とを連通する穴が形成されるものと考えられる。そうすると、この樹脂層を断熱層としてピストンの頂面に設けた場合、燃料が層表面の上記穴から断熱層内に浸み込むこととなり、上記の通り断熱層の断熱性能が低減する問題が生じる。
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、断熱層を形成するための熱処理の処理温度を低くできて且つ処理時間を短縮化できるようにすることにあり、さらに、高い断熱性を有し、燃料の浸み込みを防止でき、長期にわたって高い断熱性を維持でき、もってエンジンの熱効率を向上できる断熱層を得られるようにすることにある。
前記の目的を達成するために、本発明では、ケイ酸ガラス前駆体を減圧下で熱処理することにより断熱層を形成した。
具体的に、本発明に係る断熱層の形成方法は、金属製基材上に、該基材の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する断熱層を形成する方法であって、基材上に、中空粒子を含むケイ酸ガラス前駆体溶液を塗布して塗布層を形成する工程と、塗布層に対して減圧下で熱処理をすることにより、塗布層を硬化させて非粉末状態のケイ酸ガラス層を生成すると共に、該ケイ酸ガラス層に含まれる中空粒子内の空気を減圧膨張させる工程とを備えていることを特徴とする。
本発明に係る断熱層の形成方法によると、塗布層を硬化するための熱処理を減圧下で行うため、低温で且つ短時間の熱処理で塗布層中の溶剤を揮発でき、また、SiとOとの反応を促進できて塗布層を硬化することができる。その結果、断熱層の形成時間を短縮できる。また、断熱層を設ける基材は、その材料によっては高温で長時間の熱処理を施すことにより、その強度や硬さを低減してしまうが、上記方法では、低温で且つ短時間の熱処理を行うため、熱処理による基材の硬さや強度の低減を防止することができる。さらに、減圧下で熱処理することにより、断熱層に含まれる中空粒子内の空気が減圧膨張して、空気の密度が低下するため、断熱層の熱伝導率をより低減することが可能となる。また、断熱層の材料としてケイ酸ガラスを用いており、ケイ酸ガラスは、非粉末状態であり、ポーラス状の上記溶射層とは異なり、それ自体が緻密である。このため、この方法で得られる断熱層をエンジンの燃焼室を形成する部品に設けると、エンジン燃焼室に噴射された燃料の浸み込みを防止できる。その結果、浸み込んだ燃料に起因したカーボンデポジットの発生を防止できて、断熱性能の低減を防止できるため、エンジンの熱効率を向上できる。
本発明に係る断熱層の形成方法において、熱処理は、雰囲気圧力を253Torr以下とし、処理温度を120℃以上とし、処理時間を30秒以上とすることが好ましい。さらに、この熱処理は、雰囲気圧力を76Torr以下とし、処理温度を150℃以上とし、処理時間を30秒以上とすることがより好ましい。
253Torr以下又は76Torr以下といった減圧下で熱処理することにより、上記のような低い処理温度及び短い処理時間で断熱層を成膜することができ、さらに、得られる断熱層の熱伝導率をより低減することが可能となる。
本発明に係る断熱層の形成方法において、基材は、アルミニウム合金からなり、熱処理は、処理温度を180℃以下とすることが好ましい。
このようにすると、熱処理によってアルミニウム合金製の基材の硬さや強度を低減させることなく、断熱層の成膜をすることが可能となる。
本発明に係る断熱層の形成方法によると、断熱層の形成のための熱処理の処理温度を低くできて且つ時間を短縮化できるため、断熱層の形成時間を短縮でき、さらに、熱伝導率が低く、燃料の浸み込みを防止でき、長期にわたって高い断熱性を維持できる断熱層を得ることが可能となる。
本発明の実施形態に係る断熱層を示す断面図である。 断熱層における中空粒子の含有割合と、断熱層の熱伝導率及び体積比熱との関係を示すグラフ図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものでない。
<断熱層の構成>
まず、本発明の実施形態に係る断熱層の構成について図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、金属製の基材10の上に形成された本実施形態に係る断熱層20は、無機酸化物等からなる中空粒子21、フィラー材22、及びケイ酸を主体とするガラス質材(ケイ酸ガラス)23を含む。断熱層20は、ガラス質材23が中空粒子21とフィラー材22とを覆うと共にそれらを結合することで層構造を成している。ガラス質材23は、中空粒子21同士及び中空粒子21とフィラー材22との間隙を埋めるようにしてそれらを結合しており、また、ガラス質材23は非粉末状であり、それ自体が緻密に構成されている。このため、この断熱層20を、エンジン燃焼室を形成するピストンの頂面等に設けた場合、中空粒子21同士の間やガラス質材23自体に燃料が通過可能な間隙がなく、その結果、エンジン燃焼室に噴射された燃料が断熱層20に浸み込むことを防止できる。また、断熱層20は、内部に空気を含む中空粒子21を含有するため、断熱層20の熱伝導率は低く、高い断熱性能を有する。
本実施形態において、無機酸化物の中空粒子21としては、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、エアロゲルバルーン等のSi系酸化物成分(例えば、シリカ(SiO))又はAl系酸化物成分(例えば、アルミナ(Al))を含有するセラミック系中空粒子を採用することが好ましい。各々の材質及び粒径は表1の通りである。
Figure 2015089539
例えば、フライアッシュバルーンの化学組成は、SiO;40.1〜74.4%、Al;15.7〜35.2%、Fe;1.4〜17.5%、MgO;0.2〜7.4%、CaO;0.3〜10.1%(以上は質量%)である。シラスバルーンの化学組成は、SiO;75〜77%、Al;12〜14%、Fe;1〜2%、NaO;3〜4%、KO;2〜4%、IgLoss;2〜5%(以上は質量%)である。なお、中空粒子21としては、そのメディアン径(D50)が5μm以上30μm以下のものを用いることが好ましい。但し、5μm未満のメディアン径の中空粒子21をさらに追加しても構わない。中空粒子21の径が大きすぎると、断熱層の表面粗さが大きくなって、断熱層の表面温度の局所的な上昇が生じてしまうおそれがあるため、中空粒子21の径が上記範囲にあることが好ましい。
フィラー材22は、断熱層20を補強するために断熱層に含有されており、高強度で且つ高耐熱性材料からなることが好ましく、例えば繊維状無機酸化物及び遷移金属酸化物を好適に用いることができる。
また、ガラス質材23は、中空粒子21同士及び中空粒子21とフィラー材22とを結合して断熱層20を構成するために用いられており、その材料としてはケイ酸を主体とするガラス質材を得ることができる材料であればよく、シリコンアルコキシド等を用いることができる。
断熱層20中のガラス質材23と中空粒子21との含有割合は、適宜調整することができ、ガラス質材23の含有割合を大きくすると断熱層20の強度を向上でき、一方、中空粒子21の含有割合を大きくすると断熱層20の熱伝導率及び体積比熱を向上できて断熱性能を向上できる。
<断熱層の性能試験>
以下に、断熱層における中空粒子の含有割合と、断熱層の熱伝導率及び体積比熱との関係について検討した結果について説明する。ここでは、断熱層における中空粒子の含有比率が0vol%から75vol%までの範囲で異なる断熱層を作製し、その中空粒子量の差による断熱層の熱伝導率及び体積比熱を比較した。具体的に、断熱層として、それぞれ中空粒子を0vol%、40vol%、60.7vol%、67.8vol%又は75vol%の体積比率で含む5種類の断熱層を作製した。このとき、フィラー材とガラス質材の含有比は、断熱層における中空粒子を除く残部において、体積比でフィラー材:ガラス質材=7:93で一定となるように調整した。また、作製した断熱層の厚みは80μmである。なお、含有させる中空粒子の体積比率は、粒子のみかけ密度とガラス質材との密度を測定し、続いてガラス質材に対して添加する中空粒子の質量から算出することができる。
断熱層を作製するための材料として、中空粒子に上記シラスバルーンを用い、フィラー材にチタン酸カリウム繊維を用い、ガラス前駆体にシリコンアルコキシドからなる株式会社イズモ製G−90を用いて、上記製造方法により断熱層を得た。なお、断熱層はアルミ合金製基材上に形成した。本試験において形成した断熱層は、上記材料を混合した混合液を、基材上に塗布した後に、大気圧中において150℃で60秒間の熱処理を施して、塗布された混合液を硬化することにより得られたものである。
得られた断熱層のそれぞれに対して、熱拡散率(m/s)、密度(kg/m)及び重量比熱(kJ/kg・K)を測定した。それらの測定法はそれぞれ常法を用い、具体的に、熱拡散率はレーザフラッシュ法を用いて測定し、密度はアルキメデス法を用いて測定し、重量比熱は示差走査熱量法(DSC法)を用いて測定した。なお、測定は25℃の条件下で行った。これらの測定結果に基づいて、体積比熱及び熱伝導率を、体積比熱(kJ/m・K)=密度×熱拡散率、熱伝導率(W/m・K)=熱拡散率×密度×重量比熱の式からそれぞれ算出した。その結果を図2に示す。
図2に示すように、断熱層の熱伝導率及び体積比熱は、断熱層における中空粒子の含有割合が増えるに従って低減する。具体的に、断熱層が中空粒子を含まない場合(0vol%)は、熱伝導率が0.63W/m・Kであり、体積比熱が2159kJ/m・Kであったが、中空粒子の含有割合を40vol%まで増やすと、熱伝導率が0.4W/m・Kであり、体積比熱が1300kJ/m・Kにまで低減した。さらに、断熱層における中空粒子含有割合を75vol%にまで増大させると、熱伝導率が0.15W/m・Kであり、体積比熱が400kJ/m・Kにまで低減した。
このように、中空粒子の含有割合を大きくするに従って、熱伝導率及び体積比熱が低くなり、断熱性能を高くすることできる。特に、中空粒子の含有割合を体積比率で40vol%以上75vol%以下とすることで、断熱性能が高い断熱層を得ることができる。
<断熱層の形成方法>
次に、上記の断熱層を基材上に形成する方法について説明する。なお、以下では、基材としてエンジンのピストン本体の頂面に断熱層を形成する方法を説明するが、他の基材を用いた場合も、ピストン本体に断熱層を形成する場合と同様の方法で断熱層を形成することができる。
まず、予めT6処理されたエンジン部材であるアルミ合金製のピストン本体(基材)を準備する。このピストン本体に対して、脱脂処理を行うことにより、その断熱層を形成すべき表面に付着している油脂や指紋等の汚れを除去する。ここで、ピストン本体と断熱層との付着力を高めるべく、ピストン本体の頂面に粗面化処理(下地処理)を施すことが好ましい。下地処理としては、例えばサンドブラスト等のブラスト処理を行うことが好ましい。例えば、ブラスト処理は、エアーブラスト装置を使用し、投射材として粒度#30のアルミナを用い、圧力0.39MPa、時間45秒、距離100mmの処理条件で行うことができる。この他に、アルマイト処理を行うことでピストン本体と断熱層との付着力を向上させてもよい。例えば、アルマイト処理は、シュウ酸浴を用い、浴温20℃、電流密度2A/dm、時間20分の処理条件で行うことができる。なお、下地処理として、これらに限らず、例えば化成処理等を行ってもよい。
次に、断熱層材料として中空粒子とフィラー材とガラス前駆体溶液とを準備する。例えば、中空粒子としては上記のシラスバルーンやシリカバルーン等を用いることができる。フィラー材としては繊維状無機酸化物及び遷移金属酸化物等を用いることができ、具体的にはチタン酸カリウム繊維を好適に用いることができる。また、ガラス前駆体溶液としては、熱処理によりケイ酸を主体とするガラス質材を得ることができる材料であればよく、例えばシリコンアルコキシド溶液(例えば、株式会社イズモ製G−90)等を用いることができる。上記材料を準備した後、それらの材料を攪拌・混合してなる混合液を調製する。
上記のようにピストン本体を準備し、上記材料が混合された混合液を調製した後に、その混合液をピストン本体の頂面上に、スプレーや刷毛やスピンコート等を用いて塗布する。
その後、塗布された混合液に対して熱処理を施すことにより、ガラス前駆体溶液をガラス質材として硬化させる。ここでの熱処理は、減圧下で行う。具体的に、雰囲気圧力が253Torr以下であることが好ましく、76Torr以下であることがより好ましい。このようにすると、熱処理によるガラス質材の硬化を短時間で且つ低温で行うことができる。さらに、減圧下で熱処理を行うと、中空粒子中の空気が膨張してその密度が低減するため、断熱層の熱伝導率をさらに低くすることができる。熱処理の時間としては、ガラス前駆体溶液をガラス質材として硬化するのに十分な時間であればよく、30秒以上が好ましい。なお、いずれの雰囲気圧力であっても、処理時間の上限は生産性を考慮して最長10分程度でよい。また、熱処理温度は、ガラス前駆体溶液をガラス質材として硬化するのに十分な温度であればよく、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、さらに温度を上げることにより、より短時間で断熱層を成膜することができる。但し、断熱層を設ける基材に悪影響が生じない程度の温度で行うことが好ましい。本実施形態において、基材としてアルミ合金製のピストン本体を用いている場合、アルミ合金製ピストンは、通常、180℃程度で熱処理を行うT6処理等が施されており、このようなアルミ合金製ピストンに対して180℃を超える熱処理を行うと、ピストンの硬さや強度が低下するおそれがある。このため、基材としてアルミ合金製のピストン本体を用いている場合は、180℃以下で上記熱処理を行うことが好ましい。
以上のようにして、ピストン本体の頂面に、中空粒子、フィラー材及びガラス質材を含む断熱層を形成することができる。このようにして得られた断熱層では、ガラス質材はガラス前駆体溶液を熱処理によりガラス化された非粉末状のものであり、中空粒子同士間の間隙及び中空粒子とフィラー材との間隙を埋めるようにして互いに結合している。このため、この断熱層はポーラス状ではなく、燃料の浸み込みを防止でき、長期にわたって断熱性を維持でき、もってエンジンの熱効率を向上できる。
以下に、本発明に係る断熱層の形成方法を詳細に説明するための実施例を示す。
本実施例では、上記断熱層の形成方法における熱処理の温度、時間及び雰囲気圧力を変えて、それぞれの条件により形成された断熱層の熱伝導率の差異について検討した。実施例1〜8では、熱処理の処理温度を120℃又は150℃とし、処理時間を30秒又は60秒とし、熱処理の際の雰囲気圧力を76Torr又は253Torrとした。一方、比較例では、熱処理の際の雰囲気圧力を760Torr(大気圧)とし、処理温度を150℃とし、処理時間を60秒とした。なお、実施例1〜8及び比較例において、断熱層を作製するための材料として、中空粒子に上記シラスバルーンを用い、フィラー材にチタン酸カリウム繊維を用い、ガラス前駆体溶液にシリコンアルコキシド溶液である株式会社イズモ製G−90を用いて、上記断熱層の形成方法に従ってそれぞれの断熱層を得た。なお、断熱層はアルミ合金製基材上に形成した。また、断熱層における中空粒子の含有量を体積比率で60.7vol%とし、断熱層の膜厚を80μmとした。また、得られた断熱層に対して、上記と同様にそれぞれの熱伝導率を算出した。実施例1〜8及び比較例における熱処理の各条件、及び熱処理後に得られたそれぞれの断熱層の熱伝導率を表2に示す。
Figure 2015089539
表2に示すように、減圧下で熱処理が施された実施例1〜8の断熱層は、大気圧中で熱処理が施された比較例の断熱層よりも熱伝導率が低い結果となった。これは、減圧下で熱処理を施すことにより、断熱層に含まれる中空粒子内の空気が膨張してその密度が低くなるためであると考えられる。また、実施例1〜8及び比較例の断熱層のそれぞれに対して、エタノールを用いてラビング(表面の拭き取り)を行うと、実施例1〜8では、断熱層が剥がれることはなかったが、比較例の断熱層では、その一部が剥がれた。これは、比較例の断熱層においては、十分に溶剤が揮発しておらず、膜として十分に硬化していないためであると考えられる。この結果から、減圧下で熱処理を行うことにより、短時間で十分に硬化した断熱層を得ることができることが示唆される。
また、各実施例同士をそれぞれ比較すると、処理雰囲気圧力が同一の場合、処理温度が高い方が、熱伝導率が低減する傾向にあることがわかる(実施例1,2と実施例5,6との比較)。また、処理温度が同一の場合、処理雰囲気圧力が低い方が、熱伝導率低くなることがわかる(実施例1,2と実施例3,4との比較、及び実施例5,6と実施例7,8との比較)。これらの結果から、熱処理時における雰囲気圧力を低くする、また、熱処理温度を上げることにより、熱伝導率がより低い断熱層を形成できることが示唆される。
以上の通り、本発明に係る断熱層の形成方法は、基材に塗布された中空粒子を含むケイ酸ガラス前駆体溶液に対して、減圧下で熱処理を施すことにより、短時間で且つ低温で断熱層を成膜することが可能となり、また、中空粒子内の空気を膨張させてその密度を小さくすることで断熱層の熱伝導率を低減できる。すなわち、この方法によると、短時間で断熱性が高い断熱層を得ることが可能となる。
10 基材
20 断熱層
21 中空粒子
22 フィラー
23 ガラス質材(ケイ酸ガラス)

Claims (4)

  1. 金属製基材上に、該基材の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する断熱層を形成する方法であって、
    前記基材上に、中空粒子を含むケイ酸ガラス前駆体溶液を塗布して塗布層を形成する工程と、
    前記塗布層に対して減圧下で熱処理をすることにより、塗布層を硬化させて非粉末状態のケイ酸ガラス層を生成すると共に、該ケイ酸ガラス層に含まれる前記中空粒子内の空気を減圧膨張させる工程とを備えていることを特徴とする断熱層の形成方法。
  2. 前記熱処理は、雰囲気圧力を253Torr以下とし、処理温度を120℃以上とし、処理時間を30秒以上とすることを特徴とする請求項1に記載の断熱層の形成方法。
  3. 前記熱処理は、雰囲気圧力を76Torr以下とし、処理温度を150℃以上とし、処理時間を30秒以上とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱層の形成方法。
  4. 前記基材は、アルミニウム合金からなり、
    前記熱処理は、処理温度を180℃以下とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の断熱層の形成方法。
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