JP2015088581A - 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 - Google Patents
電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】第1の電極と、第1の電極上に形成された電気機械変換膜162と、電気機械変換膜162上に形成された第2の電極163とを備え、電気機械変換膜162及び第2の電極163の平面形状が長尺形状である電気機械変換素子であって、電気機械変換膜162及び第2の電極163の長手方向における同一箇所に、部分的に幅が細くなっている細幅部162a、163aが形成されている。
【選択図】図8
Description
例えば、電気機械変換素子の変形量を高めたりその変形量を経時的に安定化させたりするために、電気機械変換素子に高電圧を印加して電気機械変換膜の結晶の分極の向きを揃える分極処理を行う場合がある。この分極処理時に電気機械変換膜にクラックが発生するおそれがある。また、上記電気機械変換膜のクラックは、電気機械変換素子に高電圧からなる駆動電圧を印加して電気機械変換素子をアクチュエータとして使用する実際の使用時にも発生するおそれがある。
図1は、本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの基本構成部分である液滴吐出部10の一構成例を示す概略構成図である。
図1において、液滴吐出部10は、インクなどの液体の液滴を吐出する液滴吐出孔としてのノズル11を有するノズル基板12と、ノズル11に連通し液体を収容した液室としての個別液室13が形成された液室基板14とを備えている。更に、液室基板(以下、単に「基板」という。)14上には、個別液室13の壁の一部を形成する振動板15と、電気機械変換素子としての圧電素子16とが設けられている。圧電素子16は、振動板15を介して個別液室13内の液体に圧力を発生させる圧力発生手段(アクチュエータ)として機能する。圧電素子16は、基板14側の第1の電極としての下電極である共通電極161と、電気機械変換膜としての圧電体膜162と、圧電体膜162の基板14側とは反対側の第2の電極としての上電極である個別電極163とが積層されている。共通電極161は、後述の外部接続用の第1の端子電極としての共通電極用のパッド電極に接続されている。また、圧電体膜162は、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)などから形成されている。また、個別電極163は、後述の外部接続用の第2の端子電極としての個別電極用のパッド電極に接続されている。図1の液滴吐出部10において、第1パッド電極及び第2パッド電極を介して圧電素子16の共通電極161と個別電極163との間に所定の周波数及び振幅の駆動電圧が印加される。この駆動電圧が印加された圧電素子16が、基板14と圧電素子16との間にある振動板15を変形させるように振動し、その振動板15の変形により個別液室13内の液体が加圧され、ノズル11から液滴を吐出させることができる。
本実施形態では、共通電極用のパッド電極19及び個別電極用のパッド電極21それぞれが露出するコンタクトホール23aに対して、コロナ放電方式又はグロー放電方式の放電処理を行っている。この放電処理により、共通電極用のパッド電極19及び個別電極用のパッド電極21を介して、圧電素子16の共通電極161及び個別電極163に、所定極性の互いに異なる電荷量の電荷を付与している。この電荷付与により、圧電素子16の共通電極161及び個別電極163に挟まれた圧電体膜162に対して分極処理を行うことができる。
図5において、コロナワイヤ電極31を用いて例えばコロナ放電を発生させると、大気中の分子がイオン化して陽イオンと陰イオンが発生する。この発生したイオンのうち、陽イオンがパッド電極19及び21を介して、圧電素子16の共通電極161及び個別電極163に流れ込み、それらの電極に蓄積される。共通電極161はシリコン基板の裏面に対して所定の抵抗値(本実施形態では1×107[Ω]程度)を持っている。分極処理時の電荷はほぼグラウンド(GND)に流れてしまい、個別電極163にチャージされた電荷により電位差が発生して分極処理されていると考えられる。
基板14としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100[μm]以上及び600[μm]以下の範囲の厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本構成例においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図1に示すような液室(圧力室)13を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していく。この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。本構成例としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiO2もエッチングされてしまうため、この点も留意して利用することが好ましい。
図1に示すように電気機械変換素子としての圧電素子16によって発生した力を受けて、その下地の振動板15が変形して、液室(圧力室)13のインクなどの液体の液滴を吐出させる。そのため、振動板15としては所定の強度を有したものであることが好ましい。材料としては、Si、SiO2、Si3N4などを例えばCVD法により作製したものが挙げられる。さらに図1に示すような共通電極(下電極)161及び圧電体膜162の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、圧電体膜としては、一般的に材料としてPZTが使用される場合が多い。従って、振動板15の材料は、PZTの線膨張係数8×10−6(1/K)に近い5×10−6(1/K)以上及び10×10−6(1/K)以下の範囲の線膨張係数を有した材料が好ましい。さらには7×10−6(1/K)以上及び9×10−6(1/K)以下の範囲の線膨張係数を有した材料がより好ましい。具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等が挙げられる。これらの材料を、例えばスパッタ法又はゾルゲル法を用いてスピンコーターにて作製することができる。膜厚としては0.1[μm]以上及び10[μm]以下の範囲が好ましく、0.5[μm]以上及び3[μm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より小さいと、図1に示すような液室(圧力室)13の加工が難しくなる。また、上記範囲より大きいと振動板15が変形しにくくなり、インク滴などの液滴の吐出が不安定になる。
共通電極(第1の電極)161としては、金属もしくは金属と酸化物からなっていることが好ましい。ここで、どちらの材料も振動板15と共通電極161を構成する金属膜との間に密着層を入れて剥がれ等を抑制するように工夫している。以下に密着層含めて金属電極膜及び酸化物電極膜の詳細について記載する。
密着層は、例えば次のように形成する。Tiをスパッタ成膜後、成膜したチタン膜をRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて熱酸化して酸化チタン膜にする。熱酸化の条件は、例えば、650[℃]以上及び800[℃]以下の範囲の温度、1[分]以上及び30[分]以下の範囲の処理時間、及びO2雰囲気である。酸化チタン膜を作成するには反応性スパッタでもよいがチタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とする。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方がチタンO2膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTAによる酸化の方が良好な結晶を形成するために有利になる。また、Ti以外の材料としては、Ta、Ir、Ru等の材料を用いることもできる。密着層の膜厚としては、10[nm]以上及び50[nm」以下の範囲が好ましく、15[nm]以上及び30[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲以下の場合においては、密着性に懸念があり、また、この範囲以上になってくると、その密着層の上で作製する電極膜の結晶の質に影響が出てくる。
金属電極膜の金属材料としては、従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これらの合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地(特にSiO2)との密着性が悪いために、前述の密着層を先に積層することが好ましい。作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、80[nm]以上及び200[nm]以下の範囲が好ましく、100[nm]以上及び150[nm]以下の範囲がより好ましい。この範囲より薄い場合においては、共通電極161として十分な電流を供給することができなくなり、液滴の吐出をする際に不具合が発生する。さらに、この範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合においては、コストアップとなる。また、白金を材料とした場合においては、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、その上に作製する酸化物電極膜やPZTの表面粗さや結晶配向性に影響を及ぼして、インク吐出に十分な変位が得られないような不具合が発生する。
酸化物電極膜の材料としては、SrRuO3(以下、適宜「SRO」と略す。)を用いることが好ましい。SrRuO3以外にも、Srx(A)(1−x)Ruy(1−y)、A=Ba、Ca、B=Co、Ni、x、y=0〜0.5で記述されるような材料も挙げられる。酸化物電極膜は例えばスパッタ法等の成膜方法により作製することができる。スパッタ条件によってSrRuO3の薄膜の膜質が変わる。従って、特に結晶配向性を重視し、第1の電極のPt(111)にならってSrRuO3の膜についても(111)配向させるためには、成膜温度については500[℃]以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。例えば特許文献2に記載のSRO成膜条件については、室温成膜でその後、RTA処理にて結晶化温度(650℃)で熱酸加している。この場合、SRO膜としては、十分結晶化され、電極としての比抵抗としても十分な値が得られるが、膜の結晶配向性としては、(110)が優先配向しやすくなり、その上に成膜したPZTについても(110)配向しやすくなる。
圧電体膜162の材料としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbTiO3)とチタン酸(PbTiO3)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrO3とPbTiO3の比率が53:47の割合であり、化学式ではPb(Zr0.53,Ti0.47)O3と示され、更に一般的にはPZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。これら材料は一般式ABO3で記述され、A=Pb、Ba、Sr、 B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O3、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O3、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
また、圧電体膜162の比誘電率としては600以上及び2000以下の範囲になっていることが好ましく、さらに1200以上及び1600以下の範囲になっていることが好ましい。このとき、この範囲よりも小さいときには十分な変形(変位)特性が得られず、この範囲より大きくなると、分極処理が十分行われず、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生する。
個別電極(第2の電極)163としては、金属もしくは酸化物と金属からなっていることが好ましい。以下に酸化物電極膜及び金属電極膜の詳細について記載する。
酸化物電極膜の材料等については、前述の共通電極(第1の電極)161で使用した酸化物電極膜について記載したものと同様なものを挙げることができる。酸化物電極膜(SRO膜)の膜厚としては、20[nm]以上及び80[nm]以下の範囲が好ましく、40[nm]以上60[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変形(変位)や変形(変位)の劣化特性については十分な特性が得られない。また、この範囲を超えると、その後に成膜した圧電体膜(PZT膜)の絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。
金属電極膜の材料等については、前述の共通電極(第1の電極)161で使用した金属電極膜について記載したものと同様なものを挙げることができる。金属電極膜の膜厚としては、30[nm]以上及び200[nm]以下の範囲が好ましく、50[nm]以上及び120[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より薄い場合においては、個別電極163として十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出する際に不具合が発生する。また、上記範囲より厚いと、白金族元素の高価な材料を使用する場合にコストアップとなる。また、白金を材料とした場合に膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、絶縁保護膜を介して配線などを作製する際に、膜剥がれ等のプロセス不具合が発生しやすくなる。
成膜・エッチングの工程による圧電素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、第1の絶縁保護膜18の材料は緻密な無機材料とする必要がある。また、第1の絶縁保護膜18として有機材料を用いる場合は、十分な保護性能を得るために膜厚を厚くする必要があるため、適さない。第1の絶縁保護膜18を厚い膜とした場合、振動板15の振動を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低い液滴吐出ヘッドになってしまう。薄膜で高い保護性能を得るには、酸化物,窒化物,炭化膜を用いるのが好ましいが、第1の絶縁保護膜18の下地となる電極材料、圧電体材料及び振動板材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。また、第1の絶縁保護膜18の成膜法も、圧電素子16を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法やプラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。第1の絶縁保護膜18の好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD法などが例示できるが、使用できる材料の選択肢が広いALD法が好ましい。好ましい材料としては、Al2O3,ZrO2,Y2O3,Ta2O3,TiO2などのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。特にALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制することができる。
配線20、22及びパッド電極19、21の材料は、Ag合金、Cu、Al、Au、Pt、Irのいずれかから成る金属電極材料であることが好ましい。これらの電極の作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。膜厚としては、0.1[μm]以上及び20[μm]以下の範囲が好ましく、0.2[μm]以上及び10[μm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より小さいと抵抗が大きくなり電極に十分な電流を流すことができなくなりヘッド吐出が不安定になる。一方、この範囲より大きいとプロセス時間が長くなる。また、共通電極161及び個別電極163に接続されるコンタクトホール部(例えば10[μm]×10[μm])での接触抵抗としては、共通電極161に対して10[Ω]以下、個別電極163に対して1[Ω]以下が好ましい。さらに好ましくは、共通電極161に対して5[Ω]以下、個別電極163に対して0.5[Ω]以下である。この範囲を超えると十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出をする際に不具合が発生する。
第2の絶縁保護膜23としての機能は、共通電極用の第1の配線20や個別電極用の第2の配線22の保護層としての機能を有するパシベーション層である。前述の図3及び図4に示したように、個別電極163の引き出し部(開口部23a)と図示しない共通電極161の引き出し部とを除き、個別電極163及び共通電極161を被覆する。これにより、電極材料に安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高い液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)とすることができる。第2の絶縁保護膜23の材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし、有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため、パターニングに適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上にSi3N4を用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であるため好ましい。また、膜厚は200[nm]以上とすることが好ましく、さらに好ましくは500[nm]以上である。膜厚が薄い場合は十分なパシベーション機能を発揮できないため、配線材料の腐食による断線が発生し、インクジェットの信頼性を低下させてしまう。
まず、図7を用いて参考例の構成について説明する。図7の参考例では、個別電極163に、部分的に幅が細くなっている細幅部としての個別電極細幅部163aが長手方向に複数形成されている。具体的な寸法例は次のとおりである。
図8は、実施例1に係る圧電素子16の一例を示す上面図である。本実施例1では、上記参考例と同様に圧電体膜162を成膜した後、圧電体膜162にも細幅部を形成した。圧電素子16の短手方向の寸法は前述の参考例と同じである。
個別電極切欠部163bの切欠幅W3bが5[μm]の場合、圧電体膜切欠部162bの切欠幅W2bの2[μm]よりも広いので、図8に示すように個別電極切欠部163bが圧電体膜切欠部162bの内側に形成される。つまり、個別電極切欠部163bの外周縁が、圧電体膜切欠部162bの外周縁よりも内側にくるように形成される。
一方、個別電極切欠部163bの切欠幅W3bが2[μm]の場合、圧電体膜切欠部162bの切欠幅W2bと同じ幅になる。そのため、図示を省略したが、圧電素子の長手方向において個別電極切欠部163bの外周縁が圧電体膜切欠部162bの外周縁に揃うように形成される。
個別電極切欠部163bの切欠幅W3b及び圧電体膜切欠部162bの切欠幅W2bはともに2[μm]の圧電素子の場合は、個別電極切欠部163b及び圧電体膜切欠部162bの外周縁(エッジ)が揃っている。この圧電素子の場合、電極間のリーク電流は5×10−9[A]以下であった。
一方、個別電極切欠部163bの切欠幅W3bが5[μm]及び圧電体膜切欠部162bの切欠幅W2bが2[μm]の圧電素子の場合は、個別電極切欠部163bの外周縁(エッジ)が圧電体膜切欠部162bの外周縁(エッジ)より内側にある。この圧電素子の場合、電極間のリーク電流は5×10−10[A]以下であった。
これに対し、前述の個別電極切欠部163bのみを設けた参考例の場合は、個別電極163が切除されている個別電極切欠部163bに圧電体膜162が露出している。この圧電体膜162の露出部分は、個別電極163が存在しないため電圧が印加されず、電圧印加による変形が発生しない。そのため、電圧印加時に圧電体膜162が幅方向(短手方向)に伸縮しようとする変形が阻害され、圧電体膜162が変形しにくい。
図9は、実施例2に係る圧電素子16の一例を示す上面図である。本実施例2では、図9に示すように、圧電体膜162及び個別電極163それぞれの切欠部162b,163bの切欠幅を外側から中央側に向けて徐々に狭くなるテーパをつけてくさび状とした。このように圧電体膜切欠部162b及び個別電極切欠部163bそれぞれの形状をテーパのついたくさび状とすることにより、圧電素子16が変形する際の拘束力がより小さくなる。従って、圧電体膜162における応力集中が低減することができ、圧電素子16の繰返し駆動時における耐久性を更に向上することができる。
図10は、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置の一例を示す側面図である。また、図11は、同画像形成装置の部分平面図である。
本実施形態の画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド101とガイドレール102とで、液滴吐出装置(インク滴吐出装置)としてのキャリッジ103が主走査方向に摺動自在に保持されている。キャリッジ103は、主走査モータ104で駆動プーリ106Aと従動プーリ106B間に架け渡したタイミングベルト105を介して矢示方向(主走査方向)に移動走査される。
(態様A)
基板14などのベース部材上に形成された共通電極161などの第1の電極と、第1の電極上に形成された圧電体膜162などの電気機械変換膜と、電気機械変換膜上に形成された個別電極163などの第2の電極とを備え、電気機械変換膜及び第2の電極の平面形状が長尺形状である圧電素子16などの電気機械変換素子であって、前記電気機械変換膜及び第2の電極は、部分的に幅が細くなっている圧電体膜細幅部162a及び個別電極細幅部163aなどの細幅部が長手方向に複数形成されている。
これによれば、上記実施形態について説明したように、長手方向に延在する電気機械変換膜及び第2の電極に形成した細幅部により、電気機械変換膜の長手方向において伸縮しようとする変形を分断することができる。この電気機械変換膜の長手方向における伸縮変形の分断により、電気機械変換膜の長手方向における内部応力を緩和することができる。従って、電圧印加時における電気機械変換層の内部応力によるクラックの発生を抑制することができる。
しかも、上記細幅部は、電気機械変換膜及び第2の電極の長手方向における同一箇所において、第2の電極だけでなく電気機械変換膜にも形成されている。この細幅部では、第2の電極の幅だけでなく電気機械変換膜の幅も細くなっている。このため、第2の電極の幅だけが細くなるように構成した場合に比して、電圧印加による変形が発生しない電気機械変換膜の露出部分が少なく、電気機械変換素子の全体の変形に大きく寄与する短手方向(幅方向)における所定の変形が阻害されにくい。従って、電圧印加時における電気機械変換素子の所定の変形を抑制することなく、電圧印加時に十分な変形量を確保することができる。
以上のように、長尺形状の電気機械変換膜における電圧印加時の十分な変形量を確保しつつクラックの発生を抑制することができる。特に、本態様Aでは、電気機械変換素子の印加電圧に対する変形量を大きくするために電気機械変換膜の膜厚を厚くする場合に効果的である。
(態様B)
上記態様Aにおいて、前記細幅部は、電気機械変換膜の幅又は第2の電極の幅よりも短い間隔で長手方向に複数形成されている。
これによれば、上記実施形態について説明したように、前記細幅部が、電気機械変換膜の幅又は第2の電極の幅よりも短い間隔で長手方向に複数形成されているので、電気機械変換膜の長手方向における内部応力をより確実に緩和することができる。
(態様C)
上記態様A又はBにおいて、前記細幅部は、電気機械変換膜及び第2の電極の幅方向の中央部に形成されている。
これによれば、上記実施形態について説明したように、電気機械変換膜の幅方向において変形量が極大となる中央部に、電気機械変換膜及び第2の電極が残る。従って、電気機械変換膜の幅方向における変形量の低下を抑制しつつ、電気機械変換膜の幅方向の中央部を中心として電気機械変換膜の変形を対称且つ均等にすることができる。
(態様D)
上記態様A乃至Cのいずれかにおいて、細幅部における電気機械変換膜が形成されていない圧電体膜切欠部162bなどの切欠部の切欠幅は、第2の電極が形成されていない個別電極切欠部163bなどの切欠部の切欠幅よりも狭く、第2の電極の外周縁は、電気機械変換膜の外周縁よりも内側に位置する。
これによれば、上記実施形態について説明したように、第2の電極の端部などの外周縁を電気機械変換膜の端部などの外周縁よりも内側に形成したので、第2の電極の外周縁が第1の電極から離れる。従って、第1の電極と第2の電極との間のリーク電流を低減することができ、電圧印加による電気機械変換膜の良好な分極処理や電気機械変換素子の良好な駆動を行うことができる。
(態様E)
上記態様Dにおいて、前記切欠部は、その切欠幅が中央部にいくほど狭くなったテーパ形状を有する。
これによれば、上記実施形態について説明したように、電圧印加時の電気機械変換膜における応力集中が低減できるので、電気機械変換膜におけるクラックの発生をより確実に抑制することができる。
(態様F)
液滴を吐出するノズル11などの液滴吐出孔と、液滴吐出孔が連通する個別液室13などの液室と、液室内の液体に圧力を発生させる圧力発生手段と、を備えた液滴吐出ヘッド107k、107c、107m、107yにおいて、前記圧力発生手段は、液室の壁の一部を形成する振動板15と、振動板15に設けられた上記態様A乃至Eのいずれかの電気機械変換素子と、を備える。
これによれば、上記実施形態について説明したように、クラックのない分極処理が確実に行われた電気機械変換素子によって液室13内の液体を昇圧させることができるので、安定した液滴吐出特性が得られる。
(態様G)
上記態様Fの液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置である。これによれば、上記実施形態について説明したように、安定した液滴吐出特性が得られる。
(態様H)
記録媒体に向けてインクの液滴を吐出するインク液滴吐出手段を備え、記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、前記インク滴吐出手段として、上記態様Gの液滴吐出装置を備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、画像形成装置の製造コストの低減を図りつつ、液滴吐出ヘッドの液滴吐出特性のばらつきを低減させ、画像品質の向上を図ることができる。
11 ノズル
12 ノズル基板
13 個別液室(圧力室)
14 基板(液室基板)
15 振動板
16 圧電素子
107 記録ヘッド
107k、107c、107m、107y 液滴吐出ヘッド
161 共通電極(第1の電極、下電極)
162 圧電体膜
162a 圧電体膜細幅部
162b 圧電体膜切欠部
163 個別電極(第2の電極、上電極)
163a 個別電極細幅部
163b 個別電極切欠部
18 第1の絶縁保護膜
18a コンタクトホール
19 共通電極用のパッド電極
20 第1の配線
21 個別電極用のパッド電極
22 第2の配線
23 第2の絶縁保護膜
23a コンタクトホール
31 コロナワイヤ電極
107 記録ヘッド
Claims (8)
- 第1の電極と、前記第1の電極上に形成された電気機械変換膜と、前記電気機械変換膜上に形成された第2の電極と、を備え、前記電気機械変換膜及び前記第2の電極の平面形状が長尺形状である電気機械変換素子であって、
前記電気機械変換膜及び前記第2の電極の長手方向における同一箇所に、部分的に幅が細くなっている細幅部が形成されていることを特徴とする電気機械変換素子。 - 請求項1の電気機械変換素子において、
前記細幅部は、前記電気機械変換膜の幅又は前記第2の電極の幅よりも短い間隔で長手方向に複数形成されていることを特徴とする電気機械変換素子。 - 請求項1又は2の電気機械変換素子において、
前記細幅部は、前記電気機械変換膜及び前記第2の電極の幅方向の中央部に形成されていることを特徴とする電気機械変換素子。 - 請求項1乃至3のいずれかの電気機械変換素子において、
前記細幅部における前記電気機械変換膜が形成されていない切欠部の切欠幅は、前記第2の電極が形成されていない切欠部の切欠幅よりも狭く、該第2の電極の外周縁は、該電気機械変換膜の外周縁よりも内側に位置することを特徴とする電気機械変換素子。 - 請求項4の電気機械変換素子において、
前記切欠部は、その切欠幅が中央部にいくほど狭くなったテーパ形状を有することを特徴とする電気機械変換素子。 - 液滴を吐出するノズルと、該ノズルに連通する液室と、該液室内の液体に圧力を発生させる圧力発生手段と、を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
前記圧力発生手段は、前記液室の壁の一部を形成する振動板と、該振動板に設けられた請求項1乃至5のいずれかの電気機械変換素子とを備えることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項6の液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置。
- 記録媒体に向けてインクの液滴を吐出するインク液滴吐出手段を備え、該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、
前記インク滴吐出手段として、請求項7の液滴吐出装置を備える画像形成装置。
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