JP2015086358A - 熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】製造適性、取扱性及び成形性に優れると共に、外観や強度に優れた成形品を得ることが可能な熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を提供する。【解決手段】熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルと、1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性多官能単量体とを含有する。さらに、ラジカル重合開始剤と、無機酸化物及び無機水酸化物の少なくともいずれか一方を含む増粘剤とを含有する。そして、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤及び増粘剤の合計質量中の3〜40質量%である。また、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルの酸価が5〜150mgKOH/gである。【選択図】図1

Description

本発明は、シートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)の製造に用いられる熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物、及びそれを用いた成形体に関する。
(メタ)アクリル系樹脂による成形品は、他の樹脂による成形品に比べて深み感を与えることができ、良好な外観が得られる。そのため、例えば、キッチンカウンターや洗面化粧台、バス浴槽等の良好な外観が要求される水廻り部材として広く用いられている。
従来、このような種類の(メタ)アクリル系樹脂による成形品は、その殆どが注型成形で製造されている。しかしながら、注型成形は成形サイクルが長いという問題があった。この問題を改善するために、(メタ)アクリル系樹脂によるシートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)の検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来より、注型成形よりも成形サイクルが短い圧縮成形により、成形品を製造する試みが行われている。つまり、流動性が高く、注型成形でしか成形できなかった樹脂の粘度を上昇させ、当該樹脂をシート状や塊状にして圧縮成形する試みが行われている。そして、特許文献2乃至4では、樹脂組成物にカルボキシル基含有(メタ)アクリル系重合体を添加することにより、樹脂粘度を上昇させる手法が開示されている。
特開2004−263135号公報 特開2001−64518号公報 特開2000−351902号公報 特開2000−143927号公報
しかしながら、(メタ)アクリル系樹脂によるSMCやBMCは、例えば取扱性が悪いという問題があった。また、(メタ)アクリル系樹脂における独特の収縮性の大きさから生じる成形クラックや、流動性不良による外観悪化等の問題もあった。
また、SMC及びBMCを調製するための(メタ)アクリル系樹脂組成物の配合には、製造適性も考慮する必要がある。例えば、組成物を構成する原材料を容易に配合できることが求められる一方、成形時には樹脂流れ性を調整し、所定の成形厚みや品質を達成するための粘度が確保される必要がある。そのため、(メタ)アクリル系樹脂組成物の全体の配合を調整しなければならない。したがって、これまで(メタ)アクリル系樹脂によるSMC及びBMCは、殆ど実用化されていなかった。
さらに、特許文献2による方法では、カルボキシル基を含有した樹脂及び充填材を多量に使用する必要があり、材料コストの低減や意匠性の向上に限界があった。また、特許文献3による方法では、シリカを必須成分として用いるため、材料コストの低減や強度の向上に限界があった。さらに特許文献4による方法では、スチレンを必須成分として用いるため、製造時及び製造後に残留スチレンの影響があると共に、材料コストの低減や意匠性の向上に限界があった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、製造適性、取扱性及び成形性に優れると共に、外観や強度に優れた成形品を得ることが可能な熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物及びそれを用いた成形体を提供することにある。
本発明の態様に係る熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルと、1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性多官能単量体とを含有する。さらに熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤と、無機酸化物及び無機水酸化物の少なくともいずれか一方を含む増粘剤とを含有する。当該カルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤及び増粘剤の合計質量中の3〜40質量%である。また、カルボキシル基を持つ前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルの酸価が5〜150mgKOH/gである。
本発明の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、配合時は粘度が低く、配合後から次第に粘度が上昇するため、製造適性、取扱性及び成形性に優れている。また、当該樹脂組成物を重合することにより得られる成形体は、深み感のある良好な外観となり、さらに強度も十分なものとなる。
本発明の実施形態に係る熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物から成形体を製造する工程を示す概略図である。
以下、本発明の実施形態に係る熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物及び成形体について詳細に説明する。なお、本明細書では、「熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物」を単に「樹脂組成物」ともいう。また、「分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステル」を単に「カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル」ともいう。
[熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物]
本発明の実施形態に係る熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルと、1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性多官能単量体とを含有する。さらに、当該樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤と、無機酸化物及び無機水酸化物の少なくともいずれか一方を含む増粘剤とを含有する。
本実施形態に係る熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、上記材料を混合した状態では、粘度が低い液状混合物である。しかし、この混合物を放置することにより、次第に粘度が上昇し、当該樹脂組成物を例えばシート状や塊状などの所定形状に造形することが可能となる。つまり、本実施形態の樹脂組成物は、上記材料を混合する際には粘度が低く、上記材料を略均一に混合することが可能であるが、混合後は放置するだけで所定形状になる。そのため、重合して成形体を製造する際には所定形状の樹脂組成物を用いることから、注型成形する必要がなく、例えば圧縮成形により製造することができる。その結果、成形サイクルを大幅に短縮することが可能となる。
<(メタ)アクリル酸エステル単量体>
本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル単量体が配合される。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、当該樹脂組成物中のその他の成分を溶解し混合させる役割と、成形時における樹脂組成物の流動性を向上させる役割を持つ。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、イソボニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」という用語はアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」という用語はアクリレート又はメタクリレートを意味する。
(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の30〜85質量%が好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、当該合計質量中の40〜80質量%がより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が30質量%以上の場合には、当該樹脂組成物の混合時の粘度が高くなりすぎ、取扱性が悪化することを抑制できる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が85質量%以下の場合には、成形中に当該単量体が揮発して成形品の成分バランスが崩れたり、成形品中に気泡が発生することを抑制できる。また、85質量%以下の場合には、成形時にクラックが発生することを抑制できる。
なお、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では10〜85質量%が好ましく、15〜80質量%がより好ましい。また、樹脂組成物が後述の無機充填材を含有する場合、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、無機充填材を除いた樹脂組成物の全質量中の30〜85質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
<分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステル>
本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルが配合される。カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのエステル基の一部がエステル化されず、カルボキシル基の状態で存在しているものである。そして、ポリ(メタ)アクリル酸エステル中のカルボキシル基は、後述の増粘剤と結合することにより、樹脂組成物中で架橋構造を形成し、樹脂組成物の粘度を増大させる効果を発現する。
分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルにおけるエステル基(R−COO−R’)を構成する基(R’)は特に限定されないが、メチル基、エチル基などを用いることができる。また、基(R’)としては、n−プロピル基、n−ブチル基、イソプロピル基、イソボルニル基、シクロヘキシル基なども用いることができる。当該ポリ(メタ)アクリル酸エステルにおいて、エステル基を構成する基(R’)は上述のうちの一種でもよく、二種以上が含まれていてもよい。
分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルの酸価は、5〜150mgKOH/gであることが好ましく、15〜120mgKOH/gであることがより好ましい。当該ポリ(メタ)アクリル酸エステルの酸価が5mgKOH/g以上の場合には、増粘効果が向上し、成形時の粘度が高くなるため、取扱性や成形性が良好となる。また、当該ポリ(メタ)アクリル酸エステルの酸価が150mgKOH/g以下の場合には、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物から得られる成形体の耐水性や耐薬品性の低下を抑制することが可能となる。
また、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルがこのような範囲の酸価を有することにより、分子鎖の末端に限らず、分子鎖の中央にもカルボキシル基を有するようになる。そのため、当該ポリ(メタ)アクリル酸エステルが比較的低い酸価であっても、増粘剤と結合し、増粘性を確保できる。その結果、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物から得られる成形体の耐水性が優れるようになる。なお、当該ポリ(メタ)アクリル酸エステルの酸価は、日本工業規格JIS K6901(液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法)に基づき測定することができる。
また、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルの重量平均分子量は、10000〜100000が好ましく、15000〜80000がより好ましい。当該ポリ(メタ)アクリル酸エステルの重量平均分子量が10000以上の場合には、樹脂組成物を重合して得られる成形体の耐熱性や耐水性、衝撃強度を向上させることが可能となる。また、当該ポリ(メタ)アクリル酸エステルの重量平均分子量が100000以下の場合には、(メタ)アクリル酸エステル単量体に溶解されやすく、さらに得られる樹脂組成物が高粘度になり取扱性が悪化することを抑制できる。なお、当該重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の数値である。
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の3〜40質量%である。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、当該合計質量中の4〜38質量%であることが好ましい。カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量が3質量%未満の場合には、樹脂組成物の増粘効果が不十分となり、成形時の粘度が不足する恐れがある。また、当該ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量が40質量%を超える場合には、樹脂組成物を重合して得られる成形体の耐水性が低下してしまう。
なお、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では1〜40質量%であることが好ましく、2〜35質量%であることがより好ましい。また、樹脂組成物が後述の無機充填材を含有する場合、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた樹脂組成物の全質量中の3〜35質量%であることが好ましく、4〜33質量%であることがより好ましい。
<架橋性多官能単量体>
本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物には、1分子に2以上のビニル基(HC=CH−)を有する架橋性多官能単量体が配合される。架橋性多官能単量体を配合することにより、樹脂組成物中の(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合時に三次元架橋反応を発生させることができるため、得られる成形体に所望の耐熱性や強度を発現させることが可能となる。なお、架橋性多官能単量体における1分子中のビニル基の数の上限は特に限定されないが、例えば10以下とすることができる。
架橋性多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
架橋性多官能単量体の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の1〜20質量%が好ましい。また、架橋性多官能単量体の含有量は、当該合計質量中の1.5〜5質量%がより好ましい。架橋性多官能単量体の含有量が1質量%以上の場合には、樹脂組成物の重合により得られる成形体の架橋度を高め、所望の性能を得ることが可能となる。また、架橋性多官能単量体の含有量が20質量%以下の場合には、樹脂組成物の成形時にクラックが発生することを抑制できる。
なお、架橋性多官能単量体の含有量は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では0.3〜20質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。また、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物が後述の無機充填材を含有する場合、架橋性多官能単量体の含有量は、無機充填材を除いた樹脂組成物の全質量中の1〜20質量%が好ましく、1.5〜5質量%がより好ましい。
<ラジカル重合開始剤>
本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物には、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び架橋性多官能単量体をラジカル重合させるためのラジカル重合開始剤が配合される。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリルや1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)のようなアゾ化合物、及び有機過酸化物が挙げられるが、この中でも有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン、t−アミルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
ラジカル重合開始剤として有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物の10時間半減期温度が70℃以上であることが好ましい。このような有機過酸化物を用いることで、本実施形態の樹脂組成物をシートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)に用いた場合、SMCやBMCの貯蔵安定性を高めることができる。また、成形時に硬化反応が速やかに進行し、生産性の高い成形品を得ることができる。
有機過酸化物の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及び架橋性多官能単量体の合計質量に対して0.05〜3質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましい。有機過酸化物の含有量が0.05質量%以上の場合には、成形時の硬化速度が速めることが可能となる。また、有機過酸化物の含有量が3質量%以下の場合には、成形時における樹脂組成物の流動性低下及び成形時のクラック発生を抑制することが可能となる。
<増粘剤>
本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物には、増粘剤が配合される。樹脂組成物に増粘剤を配合することにより、重合反応に拠ることなく、増粘剤とカルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとが架橋構造を形成する。そのため、本実施形態の樹脂組成物の粘度を上昇させ、当該樹脂組成物を例えばシート状や塊状などの所定形状に造形することが可能となる。
増粘剤としては、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルと結合し、増粘させるものであれば特に限定されない。増粘剤は、例えば、無機酸化物及び無機水酸化物の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。また、増粘剤としては、マグネシウムやアルカリ土類金属(カルシウム、ストロンチウム、バリウム)の酸化物及び水酸化物の少なくともいずれか一方を用いることがより好ましい。具体的には、増粘剤は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも一つであることが特に好ましい。
増粘剤の含有量は、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有比率や所望の増粘速度に応じて調整することができる。増粘剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及び架橋性多官能単量体の合計質量中の0.5〜6.0質量%であることが好ましく、0.6〜5.0質量%であることがより好ましい。増粘剤の含有量が0.5質量%以上の場合には、十分な増粘が得られることから、ハンドリング性が良好となり、さらに分離等による色むらの発生を抑制することができる。増粘剤の含有量が6.0質量%以下の場合には、増粘速度の増加により不均一な成形品になることを抑制できる。また、最終到達粘度の増加による成形品の強度低下や、欠肉等の成形不良が生じることを抑制できる。
また、本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物には、増粘剤として無機酸化物を含むことが好ましい。さらに増粘剤は、酸化マグネシウムであることが好ましく、比表面積が30m/g以上150m/g以下の範囲である酸化マグネシウムであることがより好ましい。また、増粘剤は、比表面積が40m/g以上100m/g以下の範囲である酸化マグネシウムであることが特に好ましい。増粘剤として酸化マグネシウムを含むことで、マグネシウムイオンがカルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルと結合し、全体的にゲルを形成し増粘させることが可能となる。
また、増粘剤として酸化マグネシウムを含むことで、増粘させた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を加熱加圧して成形する際、60℃以上でマグネシウムイオンとカルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとの結合が分離する。そのため、樹脂組成物の粘度が低下する。その結果、加熱加圧成形時において、樹脂組成物の流動性が確保され、充填不足のない均質な成形品が得られる。また、一時的な粘度低下により、ラジカル重合開始剤の加熱による活性が促進され、樹脂組成物の重合硬化反応が速やかに進行し、生産性の高い成形品を得ることができる。
増粘剤としての酸化マグネシウムは、比表面積が30m/g以上150m/g以下であることが好ましく、40m/g以上100m/g以下であることがより好ましい。酸化マグネシウムの比表面積が30m/g以上の場合には、十分な増粘が得られることから、ハンドリング性が良好となり、さらに分離等による色むらの発生を抑制することができる。酸化マグネシウムの比表面積が150m/g以下の場合には、増粘速度の増加により不均一な成形品になることを抑制できる。また、最終到達粘度や成形中粘度の増加による成形品の強度低下や、欠肉等の成形不良が生じることを抑制できる。なお、酸化マグネシウムは、種々の比表面積のものが上市されている。また、比表面積は、ガス吸着法により全自動ガス吸着量測定装置を用いて、BET多点法により測定できる。
<ポリ(メタ)アクリル酸エステル>
本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、上述のように、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルと、1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性多官能単量体とを含有する。さらに、当該樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤と、無機酸化物及び無機水酸化物の少なくともいずれか一方を含む増粘剤とを含有する。しかし、樹脂組成物は、上述のカルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとは異なる、他のポリ(メタ)アクリル酸エステルを配合してもよい。このようなポリ(メタ)アクリル酸エステルを配合することにより樹脂組成物の粘度がさらに増大するため、樹脂組成物の配合と成形時の取扱性がより良好となる。さらに、成形品の厚みが保持され、外観のむらも抑制できる。また、成形体の硬化収縮率を低減し、クラックの発生を抑制することが期待できる。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとは異なる、他のポリ(メタ)アクリル酸エステルは、分子中にカルボキシル基を有さないことが好ましい。また、ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、単官能(メタ)アクリル酸エステルを重合させることにより得ることができる。
他のポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物中に溶解できる範囲内であれば特に限定されない。ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の5〜50質量%であることが好ましい。なお、樹脂組成物が後述の無機充填材を含有する場合、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた樹脂組成物の全質量中の5〜50質量%であることが好ましい。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとは異なる、他のポリ(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸エステル単量体との合計含有量は、樹脂組成物の全質量中の60〜95質量%であることが好ましい。また、当該合計含有量は、樹脂組成物の全質量中の65〜90質量%であることがより好ましい。本実施形態の樹脂組成物において、(メタ)アクリル酸エステル単量体及びポリ(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることにより、得られる成形体の深み感を与え、良好な外観とすることが可能となる。
<無機充填材>
本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物には、必要に応じて無機充填材を配合してもよい。無機充填材を配合することで、成形品の耐熱性、強度及び表面硬度を高め、また成形時及び成形後の硬化収縮を抑制することができる。
無機充填材としては特に限定されないが、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、珪砂、タルク、及びガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
無機充填材の含有量は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中、20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。無機充填材の含有量が20質量%以上の場合には、成形品の耐熱性を向上させ、さらに成形後の硬化収縮を十分に抑制することができる。また、無機充填材の含有量が80質量%以下の場合には、成形時における樹脂の流動性低下や成形品の物性低下を抑制することができる。
無機充填材の平均粒子径は特に限定されないが、例えば3μm以下であることが好ましい。また、平均粒子径が3μm以下の無機充填材の含有量が、無機充填材の全量に対して3質量%以上であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。なお、「平均粒子径」は、レーザー回折/散乱法による体積平均粒子径として測定することができる。平均粒子径が3μm以下の無機充填材をこのような量で含有することで、無機充填材の配合による各種の効果を損なうことなく、成形時における無機充填材の流動性を高めることができる。
また、本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物において、無機充填材は、比表面積が0.5m/g以上である炭酸カルシウムであることが好ましい。比表面積が0.5m/g以上の炭酸カルシウムを用いることにより、成形品の成形後の硬化収縮を十分に抑制することができ、表面平滑性を向上させることが可能となる。また、耐水性を向上させることができる。なお、このような炭酸カルシウムとしては、粉砕した石灰岩を粒度分級したものが上市されている。
<他の成分>
本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、本実施形態の効果を損なわない範囲において、上記の成分に加えて他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、例えば、ステアリン酸及びステアリン酸亜鉛等の内部離型剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤等が挙げられる。また、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂等の機能性樹脂、あるいはセルロースやポリスチレンなどの有機充填材を配合することもできる。
[熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法について説明する。本実施形態の樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤及び増粘剤を混合することにより得ることができる。また、必要に応じて、ポリ(メタ)アクリル酸エステル及び/又は無機充填材を混合する。本実施形態では、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、通常、室温(25℃)で液体であるため、任意の攪拌機を用いることによりこれらの原材料を容易に混合することができる。なお、各原材料の混合は一段で行ってもよく、各原材料を逐次添加して多段的に行ってもよい。各原材料を逐次添加する場合は、任意の順序で添加することができる。
上述のように、本実施形態の樹脂組成物は、上記原材料を混合した際には低粘度の液状混合物であるが、放置し養生することにより、粘度が上昇する。増粘条件は特に限定されないが、得られた混合物を室温(25℃)〜60℃で一定期間放置することにより増粘させることができる。そのため、図1に示すように、当該液状混合物を例えば基板などに塗布して放置することにより、混合物の粘度が上昇してシート状にすることができる。
本実施形態に係る熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルと、1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性多官能単量体とを含有する。さらに、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤と、無機酸化物及び無機水酸化物の少なくともいずれか一方を含む増粘剤とを含有する。当該カルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤及び増粘剤の合計質量中の3〜40質量%である。また、カルボキシル基を持つ前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルの酸価が、5〜150mgKOH/gである。このような構成により、配合当初は粘度が低いが成形前には粘度が上昇するため、製造適性、取扱性及び成形性に極めて優れたものとなる。また、本実施形態の樹脂組成物を使用することにより、成形体の前駆体であるシートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)を容易に得ることができる。さらに、当該樹脂組成物を重合することにより得られる成形体は、深み感のある良好な外観となり、さらに耐熱性や耐水性などの強度も十分なものとなる。
[成形体]
本実施形態の成形体は、上述の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の重合体を含有する。具体的には、本実施形態の成形体は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を重合させることにより得ることができる。
上述のように、本実施形態の樹脂組成物を用いることで成形体の前駆体であるSMCやBMCを容易に得ることができる。そして、図1に示すように、得られたSMCやBMCを加熱加圧成形することにより、成形体とすることができる。具体的には、図1に示すように、シート状の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物1を上金型2及び下金型3の間に介在させ、加圧しつつ加熱する。これにより、ラジカル重合開始剤よりラジカルが発生し、ラジカル重合が進行することにより、樹脂組成物が硬化する。その後、硬化物を上金型2及び下金型3から離型させることにより、本実施形態の成形体を得ることができる。
加熱加圧成形の方法としては特に限定されないが、例えば圧縮成形法、射出成形法、トランスファー成形法、押出成形法等を用いることができる。また、加熱加圧成形の条件も特に限定されないが、例えば60〜150℃、20〜90kgf/cmで行うことができる。また、上記の温度範囲内で上金型と下金型に温度差を設けて加熱してもよい。
このように本実施形態の成形体は、上述の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の重合体を含有する。そして、得られる成形体は、(メタ)アクリル系樹脂を主成分としているため、他の樹脂による成形品に比べて深み感を与えることができる。また、当該成形体は、強度、表面硬度、意匠性及び耐水性に優れる。そのため、良好な外観が要求される用途、例えばキッチンカウンター、洗面化粧台、バス浴槽等の水廻り部材に好適である。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[BMCによる成形品作製の場合]
<実施例1>
まず、メタクリル酸メチル単量体(三菱レイヨン株式会社製)を準備した。さらに、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、酸価が17mg−KOH/g、重量平均分子量が72000のカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを準備した。カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルは、東レコーテックス株式会社製「RT−2」を使用した。
カルボキシル基を含有しないポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、メタクリル酸メチル単量体(住友化学株式会社製)を、重量平均分子量が100000となるように塊状重合させて得られたメタクリル酸メチル重合体を準備した。なお、このメタクリル酸メチル重合体は、粉砕して粉末にした。
1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性多官能単量体として、アクリレート基を3個有するトリメチロールプロパントリメタクリレートを準備した。なお、トリメチロールプロパントリメタクリレートは、新中村化学株式会社製「TMPT」を使用した。
ラジカル重合開始剤として、10時間半減期温度が64℃である1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを準備した。なお、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートは、化薬アクゾ株式会社製「カヤエステル(登録商標)TMPO」を使用した。
増粘剤として、酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製「キョーワマグ(登録商標)150」、比表面積(BET):145m/g)を準備した。
その他、内部離型剤として、ステアリン酸亜鉛(大日化学工業株式会社製「ダイワックスZP」)を準備した。また、重合禁止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(住友化学株式会社製「スミライザー(登録商標)BHT」を準備した。
無機充填材として、平均粒子径が14μmのシリカ(瀬戸窯業原料株式会社製「溶融シリカ」)と、ガラス繊維(日東紡績株式会社製「RS480PB−549」)とを準備した。
上述のメタクリル酸メチル単量体を25質量部、カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを4質量部、ポリ(メタ)アクリル酸エステルを6質量部、架橋性多官能単量体を0.7質量部、ラジカル重合開始剤を0.3質量部投入し、均一に混合した。さらに、増粘剤を0.2質量部、内部離型剤を0.1質量部、重合禁止剤を0.02質量部、無機充填材としてのシリカを45質量部、ガラス繊維を17質量部投入し、均一に混合した。このようにして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の13.2質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では11質量%であった。
そして、得られた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を、35℃に保温した混練機により加熱混練し、バルクモールディングコンパウンド(BMC)を調製した。
次に、得られたBMCを用いて、保持圧5MPa、上金型温度110℃、下金型温度90℃にて20分間加熱加圧成形を行い、本実施例の成形品を得た。
各材料の配合比、品名、特性及び成形条件を表1に示す。さらに、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量の割合も示す。また、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量の割合も示す。
<実施例2>
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、酸価が6mg−KOH/g、重量平均分子量が58000のカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを使用した。なお、カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルは、東レコーテックス株式会社製「RT−3」を使用した。
さらに、酸化マグネシウムの配合量を0.4質量部に変更した。また、架橋性多官能単量体として、エチレングリコールジメタクリレート(新中村化学株式会社製「1G」)を使用した。それ以外は実施例1と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の13.2質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では11質量%であった。
さらに実施例1と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表1に示す条件で成形品を得た。
<実施例3>
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、酸価が70mg−KOH/g、重量平均分子量が10000のカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを使用した。なお、カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルは、東亞合成株式会社製「UC−3000」を使用した。それ以外は実施例1と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。さらに実施例1と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表1に示す条件で成形品を得た。
<実施例4>
メタクリル酸メチルを19質量部に、酸化マグネシウムを0.6質量部に、ポリメタクリル酸メチルを12質量部に変更した。そして、無機充填材としてのシリカ及びガラス繊維を配合しなかった。それ以外は実施例1と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の16.3質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では11質量%であった。
さらに実施例1と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表1に示す条件で成形品を得た。
<実施例5>
無機充填材として、シリカの代わりに炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製「SS#80」を45質量部配合した。それ以外は実施例1と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。さらに実施例1と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表2に示す条件で成形品を得た。
<実施例6>
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしてのカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを1.5質量部に、酸化マグネシウムを0.8質量部に変更した。それ以外は実施例4と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の6.7質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では4.4質量%であった。
さらに実施例4と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表2に示す条件で成形品を得た。
<実施例7>
メタクリル酸メチルを21質量部に、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしてのカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを8質量部に、酸化マグネシウムを0.4質量部に変更した。さらに、ラジカル重合開始剤として、10時間半減期温度が98℃であるt−ブチルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標)I」)を使用した。それ以外は実施例1と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の26.3質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では22質量%であった。
さらに実施例1と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表2に示す条件で成形品を得た。
<実施例8>
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしてのカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを10質量部に変更した。そして、ポリ(メタ)アクリル酸エステルを配合しなかった。それ以外は実施例1と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の27.6質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では11質量%であった。
さらに実施例1と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表2に示す条件で成形品を得た。
<比較例1>
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルを配合せず、ポリメタクリル酸メチルを10質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様にして、本比較例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の0質量%であった。
さらに実施例1と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表3に示す条件で成形品を得ようとした。しかし、成形中に樹脂組成物が金型から流れ出てしまい、成形品を得ることができなかった。
<比較例2>
増粘剤としての酸化マグネシウムを配合しなかった。それ以外は実施例1と同様にして、本比較例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、及びラジカル重合開始剤の合計質量中の13.3質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では11質量%であった。
さらに実施例1と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表3に示す条件で成形品を得ようとした。しかし、成形中に樹脂組成物が金型から流れ出てしまい、成形品を得ることができなかった。
<比較例3>
メタクリル酸メチルを16質量部、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしてのカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを13質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様にして、本比較例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の43.0質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では36質量%であった。
さらに実施例1と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表3に示す条件で成形品を得た。
<比較例4>
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしてのカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを0.5質量部に、酸化マグネシウムを0.8質量部に変更した。それ以外は実施例4と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の2.3質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では1.5質量%であった。
さらに実施例4と同様にしてBMCを調製し、これを用いて表3に示す条件で成形品を得ようとした。しかし、成形中に樹脂組成物が金型から流れ出てしまい、成形品を得ることができなかった。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及びポリ(メタ)アクリル酸エステルの重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値であり、下記の条件で測定した。
装置:東ソー株式会社製 高速GPC装置 HLC−8220GPC
カラム:東ソー株式会社製 TSKgelG2500HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG5000HXL
温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.5%
流速:0.35ml/min
注入量:200μL
検出器:赤外線検出器
上記の実施例及び比較例について、次の評価を行った。各評価結果を表1乃至表3に示す。
[樹脂組成物の粘度]
B型粘度計を用いて樹脂組成物の粘度を測定した。具体的には、各例の樹脂組成物における配合当初の粘度と24時間室温で放置した後の粘度とを測定した。
[成形中の樹脂流れ性]
成形後に製品以外の部分に流出した樹脂組成物の重量を、元の樹脂組成物の質量で除して評価した。
[成形品の曲げ強度]
JIS K7171(プラスチック−曲げ特性の求め方)に従って評価した。
[成形品の写像性]
写像性測定器(スガ試験機株式会社製「ICM−1」)を使用して、成形品の表面に対して入射角45°の反射光における、光量の変動率を測定した。
[成形品のガラス転移温度]
株式会社日立ハイテクサイエンス製の熱分析システムにおける粘弾性分析装置を使用して測定した。
[成形品の耐水性]
各例の成形品を90℃の熱水中に200時間浸漬した後、成形品の外観を目視にて観察した。
Figure 2015086358
Figure 2015086358
Figure 2015086358
実施例1〜8では、配合当初の粘度が低く樹脂組成物の製造適性に優れている。加えて、成形前の粘度が高くなるため、成形前のSMC及びBMCの取扱性に優れている。また、得られた成形品は、強度、外観、耐熱性及び耐水性に優れている。
特に、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの重量平均分子量が30000〜100000である実施例1,2,4〜8は、得られた成形品のガラス転移温度が高くなり、耐熱性に優れるものとなった。
また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの酸価が5〜30である実施例1,2,4〜8は、配合当初の粘度は低く、24時間後の粘度は大幅に上昇している。そのため、配合及び成形のそれぞれに対して取扱性に優れるものとなった。
実施例1〜8は、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の3〜40質量%である。この場合には、樹脂組成物の粘度上昇がSMC及びBMCの成形に適した範囲になる。そのため、成形性や外観に優れた成形品を得ることができる。
また、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が70℃以下のものを含む実施例1〜6,8では、成形時に(メタ)アクリル酸単量体の揮発を防止することができる。そのため、成形性に優れた成形品を得ることができる。
また、樹脂組成物中に無機充填材を含む実施例1〜3,5,7及び8では、樹脂組成物の粘度がより上昇している。そのため、SMC及びBMCの成形適性が特に優れている。
一方、比較例1ではカルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルを使用しなかったため、樹脂組成物の粘度が上昇せず、圧縮成形が不可能であった。また、比較例2では増粘剤を使用しなかったため、樹脂組成物の粘度が上昇せず、圧縮成形が不可能であった。
比較例3では、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの質量比が43.0質量%と高い。そのため、この樹脂組成物を用いた成形品はボイドが発生し、良好な外観を得ることができず、さらに強度も低いものとなった。
比較例4では、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの質量比が2.3質量%と低い。そのため、樹脂組成物の粘度上昇量が少なく、圧縮成形が不可能であった。
[SMCによる成形品作製の場合]
<実施例9>
まず、メタクリル酸メチル単量体(三菱レイヨン株式会社製)を準備した。さらに、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、酸価が17mg−KOH/g、重量平均分子量が72000のカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを準備した。カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルは、東レコーテックス株式会社製「RT−2」を使用した。
1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性多官能単量体として、アクリレート基を3個有するトリメチロールプロパントリメタクリレートを準備した。なお、トリメチロールプロパントリメタクリレートは、新中村化学株式会社製「TMPT」を使用した。
ラジカル重合開始剤として、10時間半減期温度が64℃である1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを準備した。なお、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートは、化薬アクゾ株式会社製「カヤエステル(登録商標)TMPO」を使用した。
増粘剤として、酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製「キョーワマグ(登録商標)100」、比表面積(BET):83m/g)を準備した。
その他、内部離型剤として、ステアリン酸亜鉛(大日化学工業株式会社製「ダイワックスZP」)を準備した。また、重合禁止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(住友化学株式会社製「スミライザー(登録商標)BHT」を準備した。
無機充填材として、炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製「KSDM」、比表面積(BET):1.17m/g)と、ガラス繊維(セントラルグラスファイバー株式会社製「PRA4800−317」)とを準備した。
SMC作成及びプレス成形は、下記の手順、条件で行った。上述のメタクリル酸メチル単量体を24.4質量部、カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルを6質量部、架橋性多官能単量体を0.6質量部、ラジカル重合開始剤を0.2質量部投入し、均一に混合した。さらに、内部離型剤を0.18質量部、重合禁止剤を0.02質量部、無機充填材としての炭酸カルシウムを51質量部投入して、均一に混合した。さらに、増粘剤を2.6質量部投入した後に均一に混合し、ガラス繊維を除く全量を混合した樹脂ペーストを作成した。
次に、樹脂ペースト中にガラス繊維15質量部を均等になるように分散した。その後、ガラス繊維間に樹脂ペーストを含浸させて密封したものを、40℃の乾燥機中に入れて8時間養生することにより、増粘したSMCを得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の17.8質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では18質量%であった。
次に、得られたSMCを用いて、保持圧5MPa、上金型温度100℃、下金型温度85℃にて20分間加熱加圧成形を行い、本実施例の成形品を得た。
<実施例10>
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとを質量比が1:1となるように混合したもの(DIC株式会社製「ENS−905」)を使用した。なお、カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルは、酸価が40mg−KOH/gであり、重量平均分子量が18000である。酸化マグネシウムは、協和化学工業株式会社製「キョーワマグ(登録商標)40」(比表面積(BET):46m/g)を使用した。炭酸カルシウムは、日東粉化工業株式会社製「NITOREX−30P」(比表面積(BET):2.6m/g)を使用した。
カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルとメタクリル酸メチルの混合品に更にメタクリル酸メチルを加えることで、実施例9の配合に対し、メタクリル酸メチルを21.7質量部に、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルを11質量部に変更した。また、実施例9の配合に対し、酸化マグネシウムを0.3質量部に変更した。それ以外は実施例9と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。さらに実施例9と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の32.5質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では33質量%であった。
<実施例11>
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとを質量比が1:1となるように混合したもの(DIC株式会社製「ENS−1145」)を使用した。なお、カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルは、酸価が104mg−KOH/gであり、重量平均分子量が18000である。酸化マグネシウムは、協和化学工業株式会社製「マグミック(登録商標)」(比表面積(BET):36m/g)を使用した。カルボキシル基を含有しないポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、メタクリル酸メチル単量体(住友化学株式会社製)を、重量平均分子量が100000となるように塊状重合させて得られたメタクリル酸メチル重合体を使用した。
カルボキシル変性ポリメタクリル酸メチルとメタクリル酸メチルの混合品に更にメタクリル酸メチルを加えることで、実施例9の配合に対し、メタクリル酸メチルを17.7質量部に、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルを11質量部に変更した。また、実施例9の配合に対し、酸化マグネシウムを0.3質量部に変更した。さらに実施例9の配合に対し、カルボキシル基を含有しないポリ(メタ)アクリル酸エステルを4質量部投入した。それ以外は実施例9と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。さらに実施例9と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の37.0質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では33質量%であった。
<実施例12>
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、酸価が15mg−KOH/g、重量平均分子量が57000のカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチル(東レコーテックス株式会社製「RT−4」)を使用した。酸化マグネシウムは、協和化学工業株式会社製「キョーワマグ(登録商標)20」(比表面積(BET):21m/g)を使用した。炭酸カルシウムは、日東粉化工業株式会社製「SS#80」(比表面積(BET):0.85m/g)を使用した。
そして、実施例9の配合に対し、メタクリル酸メチルを25質量部に、酸化マグネシウムを2質量部に変更した。それ以外は実施例9と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。さらに実施例9と同様にしてSMCを調製し、これを用いて表1に示す条件で実施例9と同様にして成形品を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の17.8質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では18質量%であった。
<実施例13>
カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、酸価が70mg−KOH/g、重量平均分子量が10000のカルボキシル変性ポリメタクリル酸メチル(東亞合成株式会社製「UC−3000」を使用した。酸化マグネシウムは、協和化学工業株式会社製「キョーワマグ(登録商標)150」(比表面積(BET):145m/g)を使用した。カルボキシル基を含有しないポリ(メタ)アクリル酸エステルとして、メタクリル酸メチル単量体(住友化学株式会社製)を、重量平均分子量が100000となるように塊状重合させて得られたメタクリル酸メチル重合体を使用した。
そして、実施例9の配合に対し、メタクリル酸メチルを24.7質量部に、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルを2質量部に、酸化マグネシウムを0.3質量部に変更した。さらに実施例9の配合に対し、カルボキシル基を含有しないポリ(メタ)アクリル酸エステルを6質量部投入した。それ以外は実施例9と同様にして、本実施例の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。さらに実施例9と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の7.2質量%であった。また、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、無機充填材を除いた熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の全質量中の割合では6質量%であった。
なお、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及びポリ(メタ)アクリル酸エステルの重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値であり、実施例1と同様に測定した。
上記の実施例について、上述と同様に、成形中の樹脂流れ性、成形品の曲げ強度、成形品の写像性、成形品のガラス転移温度を評価した。各評価結果を表4に示す。なお、SMCの場合、樹脂組成物の粘度は測定が困難であった。さらに上記の実施例について、次のように耐熱水評価を行った。
[成形品の耐水性]
各例の成形品を90℃の熱水中に200時間浸漬した後、成形品の外観を目視にて観察した。また、浸漬後の成形品表面について、上述と同様に写像性を評価した。表4には、耐水性試験の前後における写像性の残存率([耐水性試験後の成形品の写像性]/[耐水性試験前の成形品の写像性]×100)も示す。
Figure 2015086358
実施例9〜13では、いずれも圧縮成形が可能であった。その中でも、実施例9〜11は、実施例12〜13に比べて、得られた成形品の強度、外観及び耐水性が特に優れている。
実施例12は、増粘剤の酸化マグネシウムの比表面積が30m/g未満と他の実施例に比べて小さく、成形前粘度が低いことから、樹脂流れ性の値がやや大きくなった。また、耐水性試験後の写像性が他の実施例に比べて低下した。
実施例13は、無機充填材の炭酸カルシウムの比表面積が0.5m/g未満と他の実施例に比べて小さく、成形前粘度が低いため、樹脂流れ性の値がやや大きくなった。また、曲げ強度及び成形後の写像性の値が、他の実施例に比べて低くなった。また、耐水性試験後の写像性が、他の実施例に比べて低下した。
以上、本発明を実施例及び比較例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
1 熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物

Claims (7)

  1. (メタ)アクリル酸エステル単量体と、
    分子中にカルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステルと、
    1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性多官能単量体と、
    ラジカル重合開始剤と、
    無機酸化物及び無機水酸化物の少なくともいずれか一方を含む増粘剤と、
    を含有し、
    カルボキシル基を持つ前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基を持つポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋性多官能単量体、ラジカル重合開始剤、及び増粘剤の合計質量中の3〜40質量%であり、
    カルボキシル基を持つ前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルの酸価が、5〜150mgKOH/gである熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物。
  2. カルボキシル基を持つ前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルの重量平均分子量が、10000〜100000である請求項1に記載の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物。
  3. 前記増粘剤は、比表面積が30m/g以上150m/g以下の範囲である酸化マグネシウムである請求項1又は2に記載の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物。
  4. ポリ(メタ)アクリル酸エステルをさらに含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物。
  5. 無機充填材をさらに含有し、
    カルボキシル基を持つ前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物における前記無機充填材を除く全質量中の3〜35質量%である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物。
  6. 前記無機充填材は、比表面積が0.5m/g以上である炭酸カルシウムである請求項5に記載の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物の重合体を含有する成形体。
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