JP2004263135A - (メタ)アクリル系樹脂組成物、樹脂成形品並びに樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
(メタ)アクリル系樹脂組成物、樹脂成形品並びに樹脂成形品の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】SMC法またはBMC法において成形外観の優れた樹脂成形品を与えることが可能な(メタ)アクリル系樹脂組成物、該組成物を加熱硬化して得られる樹脂成形品、並びに樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】特定の(メタ)アクリル系重合体(A)と;(メタ)アクリル系単量体(B)を少なくとも含む(メタ)アクリル系樹脂組成物。該(メタ)アクリル系重合体(A)は、一般式(I)で表されるイソボルニル(メタ)アクリル系単量体、一般式(II)で表されるトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカル(メタ)アクリレート系単量体、および一般式(III )で表されるジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート系単量体の少なくとも1種と、下記一般式(IV)で表される脂環族基または芳香族基含有(メタ)アクリレート系単量体並びに下記一般式(V)で表される(メタ)アクリル系単量体とを重合して得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】特定の(メタ)アクリル系重合体(A)と;(メタ)アクリル系単量体(B)を少なくとも含む(メタ)アクリル系樹脂組成物。該(メタ)アクリル系重合体(A)は、一般式(I)で表されるイソボルニル(メタ)アクリル系単量体、一般式(II)で表されるトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカル(メタ)アクリレート系単量体、および一般式(III )で表されるジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート系単量体の少なくとも1種と、下記一般式(IV)で表される脂環族基または芳香族基含有(メタ)アクリレート系単量体並びに下記一般式(V)で表される(メタ)アクリル系単量体とを重合して得られる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形外観の優れた樹脂成形品を与えることが可能な(メタ)アクリル系樹脂組成物、該組成物を加熱硬化して得られる樹脂成形品、およびこのような樹脂成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途は特に制限されないが、説明の便宜上、人工大理石に関する先行技術について先ず述べる。従来より、樹脂組成物を成形硬化してなる人工大理石は、洗面化粧台、浴槽、台所カウンター等のサニタリーウェア、あるいは建築用の内装材、外装材の用途や繊維強化樹脂(FRP)としての用途に広く利用されている。
【0003】
このような人工大理石は、例えば、ビニル系単量体を含むシラップに水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填剤を混合してなる混合物を成形型内に充填し、硬化重合させる注型法や、ビニル系単量体を含むシラップと無機充填剤からなる混合物を増粘剤で増粘させて得られるシートモールディングコンパウンド(以下、SMCという)またはバルクモールディングコンパウンド(以下、BMCという)を、加熱加圧成形する等の方法により得ることができる。
【0004】
一方で、近年種々の用途面から高級化志向が強まり、透明性、深み、重厚感等の外観に優れた人工大理石が望まれており、このように外観に優れた人工大理石の製法も数多く提案されてきている。
【0005】
しかしながら、マトリックス樹脂として(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いた上記SMCまたはBMCの場合には、加熱加圧成形に適した成形前の到達粘度(通常10kPa・S〜150kPa・S/25℃)が不足しており、SMCまたはBMC表面がべたつき、取り扱い性が悪く、成形が困難であり、実用化には至っていなかった。
【0006】
そこで、これら欠点を改善するため、例えば、側鎖に−OCO−X−COOH(Xは脂環族基または芳香族基)を有する重合体を含む(メタ)アクリル系シラップおよび、水酸化アルミニウム、ガラス繊維からなるSMC組成物が開示されており、前記特定の重合体を用いることによって、充分な成形前の到達粘度を発現することにより、上記の問題を解決している(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の樹脂組成物から得られるSMCは、深絞り、リブ等がある大型で複雑な形状を有するバスタブ、防水パン、機械パネル、水タンク等の成形においては、成形時の流動特性が不充分であり、得られた成形品に欠肉、光沢低下、ヒケ、気泡等が発生し、実用レベルでないのが現状であった。すなわち、従来提案された方法においては、SMCまたはBMC等の加熱加圧成形に適した成形前の粘度特性(到達粘度)と成形時の流動特性を同時に満足するものは見出されていない。
【0008】
【特許文献1】
特開昭62−146929号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消した(メタ)アクリル系樹脂組成物、該組成物を加熱硬化して得られる樹脂成形品、並びにこのような樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、SMC法またはBMC法において成形外観の優れた樹脂成形品を与えることが可能な(メタ)アクリル系樹脂組成物、該組成物を加熱硬化して得られる樹脂成形品、並びに樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(I)で表されるイソボルニル(メタ)アクリル系単量体、一般式(II)で表されるトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカル(メタ)アクリレート系単量体、および一般式(III )で表されるジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート系単量体の少なくとも1種と、下記一般式(IV)で表される脂環族基または芳香族基含有(メタ)アクリレート系単量体並びに下記一般式(V)で表される(メタ)アクリル系単量体とを重合して得られる(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系単量体(B)からなる(メタ)アクリル系樹脂組成物が提供される。
【0012】
【化2】
【0013】
本発明によれば更に、該樹脂組成物からなるSMCまたはBMC、該樹脂組成物を加熱硬化して得られる樹脂成形品、該SMCまたはBMCを加熱加圧硬化して得られる樹脂成形品が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0015】
((メタ)アクリル系樹脂組成物)
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル系重合体(A)および(メタ)アクリル系単量体(B)を少なくとも含む。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。これらの(メタ)アクリル系重合体(A)および(メタ)アクリル系単量体(B)は、(メタ)アクリル樹脂の優れた透明性により、得られる成形品の外観に深みや重厚感を与えるマトリックス樹脂成分である。
【0016】
((メタ)アクリル系重合体(A))
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体(A)は、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を製造する際に適度な粘度を付与するための成分である。適度な粘度を付与するためには、酸化マグネシウム等の二価の金属酸化物または水酸化物等の増粘剤をさらに添加することが好ましい。この成分(A)は、該成分中のカルボキシル基と酸化マグネシウム等の二価の金属酸化物または水酸化物等の増粘剤が金属架橋し、樹脂成分を増粘させてSMCまたはBMCとしての取り扱い性を向上させる成分である。本明細書において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル系単量体を重合してなる重合体を意味する。
【0017】
この(メタ)アクリル系重合体(A)は、特定の構造、すなわち、下記一般式(I)で表されるイソボルニル(メタ)アクリル系単量体、一般式(II)で表されるトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカル(メタ)アクリレート系単量体、および一般式(III )で表されるジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート系単量体の少なくとも1種と、下記一般式(IV)で表される脂環族基または芳香族基含有(メタ)アクリレート系単量体並びに下記一般式(V)で表される(メタ)アクリル系単量体とを重合して得られる(メタ)アクリル系重合体であることが重要である。
【0018】
【化3】
【0019】
(SMCまたはBMCにおける挙動)
SMCまたはBMCにおいては、(メタ)アクリル系重合体(A)中のカルボキシル基と二価金属の酸化物または水酸化物が金属架橋し、樹脂成分を増粘させてSMCまたはBMCとしての取り扱い性を向上させると共に、加熱加圧成形時には、金属架橋が適度に解離して良好な流動特性を示すが、加熱加圧成形時の金属架橋の解離が不充分であると、充分な流動特性が得られず、得られた成形品に外観不良が生じる傾向がある。
【0020】
本発明者の研究により、成形時の流動特性改良には、(メタ)アクリル系重合体(A)の側鎖の構造が重要であり、特定の側鎖構造とすることにより、二価の金属酸化物または水酸化物等の増粘剤と金属架橋した後に得られるSMCまたはBMCの成形前の粘度特性(到達粘度)と成形時の流動特性が良好となることが判明した。
【0021】
すなわち、本発明者の知見によれば、成分(A)の側鎖が脂環族および芳香族のような立体障害が大きく、剛直な構造を有する場合、主鎖の自由回転が束縛されるので、金属架橋密度が低くても、充分な到達粘度が得られ、また、金属架橋密度が低いため、わずかな金属架橋の解離においても成形時に充分な流動性が得られると推定される。このような立体障害が大きく、剛直な構造の中でも、上記一般式(I)〜(V)で表される側鎖構造を有する重合体の使用が、成形前の到達粘度および成形時の流動特性が良好となり、得られた成形品が良好となると推定される。
【0022】
また、(メタ)アクリル系重合体(A)の側鎖が脂肪族である場合、重合体の主鎖結合軸まわりの自由回転が比較的に自由であるため、必要とする成形前の粘度特性を得るには、金属架橋密度を上げることが必要であった。しかしながら、この場合、金属架橋密度が高いと成形時に充分に金属架橋が解離せず、成形時の流動特性が不充分となる傾向がある。
【0023】
(成形時の流動特性)
ここでいう、成形時の流動特性を表す指標としては、成形温度における損失弾性率/貯蔵弾性率で表される損失正接(tanδ)が有効である。損失正接(tanδ)は、粘性体としての挙動(損失剛性率)と弾性体としての挙動(貯蔵剛性率)とのバランスを表す指標であり、損失正接が大きい程、粘性体としての挙動が支配的となり、成形時の流動特性が向上する。
【0024】
損失正接の値としては、特に限定されないが、成形時の流動特性の向上効果が大きいことから、損失正接のピーク値が1.5以上が好ましく、1.6以上がより好ましく、1.7以上が特に好ましい。また、損失正接のピーク値の上限値は、7以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。
【0025】
(重合体(A)の製法)
本発明に用いる(メタ)アクリル系重合体(A)の製造方法は、特に制限されず、例えば懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法等の方法により重合することができる。得られる(メタ)アクリル系重合体(A)の純度の点からは、成分(A)は、以下のような方法により製造することが好ましい。
【0026】
例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)が(I)と一般式(IV)および一般式(V)の(メタ)アクリル系単量体からなる場合は、イソボルニルアルコールと(メタ)アクリル酸と縮合反応させるかまたはメチルメタクリレートとエステル交換反応させることによって得られるイソボルニル(メタ)アクリレートとヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ含有(メタ)アクリル系単量体と、例えば無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸等の芳香族または脂環族酸無水物類との付加反応によって得られる(メタ)アクリル系単量体と、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等の炭素数1〜10のアルキル基含有(メタ)アクリレート系単量体を共重合することによって得ることができる。または上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体とイソボルニル(メタ)アクリレートおよび炭素数1〜10のアルキル基含有(メタ)アクリレート系単量体の共重合体に、上記の酸無水物類を付加反応することによっても得ることができる。
【0027】
同様に、(メタ)アクリル系重合体(A)が一般式(II)と一般式(IV)および一般式(V)の(メタ)アクリル系単量体からなる場合は、イソボルニル(メタ)アクリレートの代わりにトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカルアルコールと(メタ)アクリル酸と縮合反応させるかまたはメチルメタクリレートとエステル交換反応させることによって得られるトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカル(メタ)アクリレートを使用することにより、または、(メタ)アクリル系重合体(A)が一般式(III )と一般式(IV)および一般式(V)の(メタ)アクリル系単量体からなる場合は、イソボルニル(メタ)アクリレートの代わりにジシクロペンタジエンにアルキレングリコールまたはオキサアルキレングリコールを付加反応させ、生成したアルキレングリコールモノジシクロペンテニルエーテルまたはオキシアルキレングリコールモノジシクロペンテニルエーテルを(メタ)アクリル酸と縮合反応させるかまたはメチルメタクリレートとエステル交換反応させることによって得られるジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレートを使用することにより、容易に得る事ができる。
【0028】
((A)成分の含有量)
本発明において、(A)成分の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系樹脂組成物全量中、10〜70質量%(更には20〜60質量%)の範囲内が好ましい。
【0029】
この含有量が10質量%以上の場合に、高い増粘効果が得られる傾向にあり、また、70質量%以下の場合に、(メタ)アクリル系SMCまたはBMC製造時の混練性が良好となる傾向にある。
【0030】
(A)成分の含有量の下限値は、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましく、この上限値は、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下が特に好ましい。
【0031】
((メタ)アクリル系単量体(I)〜(III )の含有量)
本発明において、(A)成分中の一般式(I)〜(III )の(メタ)アクリル系単量体の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、3〜45mol%の範囲内が好ましい。
【0032】
この含有量が3mol%以上の場合に、得られる(メタ)アクリル系SMCまたはBMCの到達粘度が向上し、表面がべたつかず、取り扱い性が良好となり、また、成形時には、高い流動性が得られる傾向にある。更に、立体障害が大きく、剛直な構造を有するため、得られる成形品の耐熱性、耐熱水性が良好となる。また、45mol%以下の場合に、得られる樹脂成形品の耐衝撃性が良好となる傾向にある。
【0033】
一般式(I)〜(III )の(メタ)アクリル系単量体の含有量の下限値は、5mol%以上がより好ましく、7mol%以上が特に好ましく、この上限値は、42mol%以下がより好ましく、40mol%以下が特に好ましい。
【0034】
((メタ)アクリル系単量体(IV)の含有量)
本発明において、(A)成分中の一般式(IV)の(メタ)アクリル系単量体の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、0.5〜10mol%の範囲内が好ましい。
【0035】
この含有量が0.5mol%以上の場合に、得られる(メタ)アクリル系SMCまたはBMCの到達粘度が向上し、表面がべたつかず、取り扱い性が良好となる傾向にあり、また、10mol%以下の場合に、得られる樹脂成形品の耐熱水性が良好となる傾向にある。
【0036】
一般式(IV)の(メタ)アクリル系単量体の含有量の下限値は、0.7mol%以上がより好ましく、1.0mol%以上が特に好ましく、この上限値は、8mol%以下がより好ましく、6mol%以下が特に好ましい。
【0037】
((メタ)アクリル系単量体(V)の含有量)
本発明において、(A)成分中の一般式(V)の(メタ)アクリル系単量体の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、45〜95mol%の範囲内が好ましい。
【0038】
一般式(V)の(メタ)アクリル系単量体の含有量の下限値は、50mol%以上がより好ましく、55mol%以上が特に好ましく、この上限値は、93mol%以下がより好ましく、90mol%以下が特に好ましい。
なお、本発明の(メタ)アクリル系重合体(A)には(I)〜(V)成分以外の単量体として、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル、トリアリールイソシアヌレート等の単量体を用いてもよい。(I)〜(V)成分以外の単量体の含有量としては、(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、0〜20mol%の範囲内が好ましい。含有量の上限値は、15mol%以下がより好ましく、10mol%以下が特に好ましい。
【0039】
((A)成分の重量平均分子量)
(A)成分の重量平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量が大きいほど増粘効果が高くなるとともに、得られる樹脂成形品の耐熱水性と耐衝撃性が良好となる傾向にあるため、1万以上が好ましい。この重量平均分子量の下限値は、2万以上がより好ましく、3万以上が特に好ましい。
【0040】
この重量平均分子量の上限値も特に制限はないが、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物製造時の混練性の面から、500万以下が好ましい。また、上限値は300万以下がより好ましく、100万以下が特に好ましい。
【0041】
((メタ)アクリル系単量体(B))
本発明で用いられる(メタ)アクリル系単量体(B)は、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物に適度な流動性を付与する成分である。
【0042】
(B)成分として用いられる(メタ)アクリル系単量体としては、メタクリロイルおよび/またはアクリロイル基を有する単量体またはそれらの混合物であればよく、特に限定されない。
【0043】
(B)成分の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、炭素数2〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル系単官能性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系多官能性単量体等が挙げられる。
【0044】
これらは、必要に応じて単独であるいは二種以上を併用して使用することができる。
【0045】
これら(メタ)アクリレートの中でも、耐熱性を考慮すると、メタクリレートを主成分とすることが好ましい。
【0046】
((B)成分の含有量)
本発明において、(B)成分の含有量は特に制限されないが、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物全量中30〜90質量%の範囲であることが好ましい。樹脂組成物の取り扱い性に優れることから、下限値は35質量%以上がより好ましく、40質量%以上が特に好ましい。
【0047】
また上限値は80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が特に好ましい。
【0048】
((B)成分以外の単量体)
なお、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物には(B)成分以外の単量体として、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル、トリアリールイソシアヌレート等の単量体を用いてもよい。
【0049】
(無機充填剤(C))
本発明で用いられる無機充填剤(C)は、(メタ)アクリル系樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品に、大理石調の深みのある質感や耐熱性を与える成分である。
【0050】
無機充填剤(C)としては特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、シリカ、溶融シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸価チタン、リン酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、ガラスパウダー等を使用することができ、これらは2種以上を併用することができる。特に、本発明のSMCまたはBMCを樹脂成形品用成形材料として使用する場合には、無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリカ、溶融シリカ、ガラスパウダーが好ましく、コストの面から炭酸カルシウムがより好ましい。また、炭酸カルシウムとしては、特に制限はなく、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムが使用できる。
【0051】
((C)成分の含有量)
本発明において、(C)成分の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系単量体(B)とからなる(メタ)アクリル系樹脂組成物100質量部当たり、50〜200質量部の範囲が好ましい。
【0052】
(C)成分の含有量が50質量部以上の場合に、得られる樹脂成形品の質感や耐熱性が良好となる傾向にあり、また、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化時の収縮率が低くなる傾向にある。
【0053】
一方、(C)成分の含有量が200質量部以下の場合に、(メタ)アクリル系樹脂組成物製造時の流動性が良好となる傾向にある。成分(C)の含有量の下限値は、70質量部以上がより好ましく、90質量部以上が特に好ましく、この上限値は、180質量部以下がより好ましく、150質量部以下が特に好ましい。
【0054】
(添加剤等)
本発明の使用する(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上記(A)成分および(B)成分を基本構成成分とするものであるが、必要に応じて、繊維強化材(D)、石目模様材(E)、重合開始剤、禁止剤、増粘剤(酸化マグネシウム等の二価の金属の酸化物または水酸化物等)、着色剤、低収縮剤、内部離型剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種添加剤等を適宜添加してもよい。
【0055】
(繊維強化材(D))
繊維強化材(D)は、(メタ)アクリル系樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品に、機械的強度を付与することができる成分であり、特に制限はない。
【0056】
繊維強化材(D)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、フェノール繊維等が挙げられる。
【0057】
これらは、必要に応じて単独であるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0058】
そのうち、機械的強度を発現させやすい傾向にあることから、ガラス繊維、炭素繊維が特に好ましい。
【0059】
また、繊維強化材(D)の長さは特に制限されないが、1〜60mmの範囲であることが好ましい。(D)成分の長さの下限値は5mm以上であることがより好ましく、また上限値は50mm以下であることがより好ましい。
【0060】
本発明において、(D)成分の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系単量体(B)とからなる(メタ)アクリル系樹脂組成物100質量部当たり、30〜120質量部の範囲が好ましい。
【0061】
(D)成分の含有量が30質量部以上の場合に、得られる樹脂成形品の強度が高くなる傾向にあり、また120質量部以下の場合に、成形時の流動性が良好となる傾向にある。
【0062】
(D)成分の含有量の下限値は40質量部以上がより好ましく、50質量部以上が更に好ましく、60質量部以上が特に好ましい。また、(D)成分の含有量の上限値は110質量部以下がより好ましく、100質量部以下が特に好ましい。
【0063】
(石目模様材(E))
また、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物には、必要に応じて更に石目模様材(E)を添加してもよい。
【0064】
石目模様材(E)を添加した(メタ)アクリル系樹脂組成物を加熱成形すれば、石目模様を有する御影石調樹脂成形品を得ることができる。
【0065】
石目模様材(E)としては、特に制限されず、樹脂粒子や無機充填剤含有樹脂粒子等が挙げられる。
【0066】
石目模様材(E)を構成する樹脂としては、特に制限されないが、例えばアクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を挙げることができるが、その中でも鮮明な石目模様を発現し、意匠性に優れた石調模様の成形品が得られることから、特にアクリル樹脂が好ましい。
【0067】
また、石目模様材(E)が無機充填剤含有樹脂粒子である場合、その粒子中に含有される無機充填剤としては、例えば水酸化アルミニウム、シリカ、溶融シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラスパウダー等を挙げることができる。その中でも、 得られる樹脂成形品の質感が優れることから、水酸化アルミニウム、シリカ、溶融シリカ、炭酸カルシウムおよびガラスパウダーから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0068】
更に(E)成分には、必要に応じて顔料を含有させてもよい。
【0069】
また、本発明の樹脂組成物には、前記(E)成分を1種類単独で、もしくは色や粒径の異なる2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0070】
前記石目模様材(E)の製造方法は特に限定されないが、例えば樹脂板や無機充填剤入りの樹脂成形品を粉砕して得てもよい。その粉砕方法としては、例えばクラッシャー等による粉砕を挙げることができる。また粉砕した石目模様材は、必要に応じて篩によって粒度ごとに分級してもよい。
【0071】
本発明において、(E)成分の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系単量体(B)とからなる(メタ)アクリル系樹脂組成物100質量部当たり、10〜100質量部の範囲が好ましい。(E)成分の配合量を10質量部以上とすれば意匠性の良好な石目模様を有する成形品が得られる傾向にあり、100質量部以下とすれば、成形時の流動性が良好となる傾向にあるからである。
【0072】
(E)成分の配合量の下限値は15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることが特に好ましい。また、(E)成分の配合量の上限値は80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることが特に好ましい。
【0073】
(重合開始剤)
重合開始剤の具体例としては、例えば、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゾエート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用することができる。
【0074】
これらは、必要に応じて単独であるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0075】
(SMCまたはBMCの形態)
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、SMCまたはBMCの形態とすることにより、成形時間を短縮し、生産性を向上させることができる。
【0076】
ここでいうSMCおよびBMCとは、前記(A)成分、(B)成分、および必要に応じて各種添加剤を混合してなる(メタ)アクリル系樹脂組成物を増粘させた成形材料を意味する。
【0077】
(メタ)アクリル系樹脂組成物を得るために、前記(A)成分、(B)成分、および必要に応じて各種添加剤を混合する混合方法としては、特に限定されず、(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度に応じて適宜選択すればよい。
【0078】
特に、(メタ)アクリル系樹脂組成物を混合と同時に増粘させる場合には、具体的には、例えば、ニーダー、ミキサー、ロール、押出機、混練押し出し機等、高粘度物質を効率よく混合できる方法であれば特に限定されない。
【0079】
また、(メタ)アクリル系樹脂組成物の増粘方法としては、特に限定されないが、前記(A)成分および(B)成分を混合した後に増粘させる方法が好ましい。
【0080】
例えば、本発明のSMCを製造する場合には、離型フィルム上へ塗布しやすいことや繊維強化材(D)への含浸性から、(メタ)アクリル系樹脂組成物を混合し、離型フィルム上に塗布した後に増粘させることが好ましい。一方本発明のBMCを製造する場合にも、繊維強化材(D)への含浸性から、(メタ)アクリル系樹脂組成物と混練した後に増粘させることが好ましい。
【0081】
(熟成条件)
(メタ)アクリル系樹脂組成物の熟成条件は、10℃以上で熟成させればよく特に制限はないが、10〜60℃で1日以上熟成させると、最終的に到達する粘度まで増粘が進み、完全に増粘が終了する傾向にあるため好ましい。
【0082】
熟成時の温度条件としては、下限値は20℃以上がより好ましく、また上限値は50℃以下がより好ましい。
【0083】
ここで、熟成とは、(メタ)アクリル系重合体(A)中のカルボキシル基と二価の金属酸化物等の増粘剤から形成される金属架橋をSMCまたはBMCとしての取り扱い性が良好な粘度になるまで反応させることを意味する。
【0084】
(SMCおよびBMC具体例)
以下、該(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いたSMCおよびBMCの製造方法について、具体例を示す。
【0085】
本発明のSMCは、前述した(メタ)アクリル系重合体(A)、(メタ)アクリル系単量体(B)ならびに所望により各種添加剤を混合してなる(メタ)アクリル系樹脂組成物混合物を、2枚の離型性フィルム上に塗布した後、一方のフィルムの混合物が塗布された面に繊維強化材(D)を添加する。そして、その上に混合物が塗布された面がくるようにもう一方のフィルムを重ねて、繊維強化材(D)に混合物を含浸させた後、該混合物を増粘させることによって製造することができる。
【0086】
また、石目模様材を含むSMCを得るには、(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造時に石目模様材(E)を添加する以外は前述と同様にして製造することができる。
【0087】
SMCの製造工程において、離型性フィルムに塗布する(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度は特に限定されないが、1〜200Pa・sの範囲であることが好ましい。
【0088】
なお、ここでいう粘度とは、BH型粘度計で測定した粘度を意味する。
【0089】
ここで、その粘度が1Pa・s以上の場合には、特に繊維強化材(D)に(メタ)アクリル系樹脂組成物を含浸させる工程で、混合物が離型性フィルムから漏洩しない傾向にある。また、その粘度が200Pa・s以下の場合に、(メタ)アクリル系樹脂組成物の繊維強化材(D)に対する含浸性が向上する傾向にある。
【0090】
一方、本発明のBMCは、前述した(メタ)アクリル系重合体(A)、(メタ)アクリル系単量体(B)ならびに所望により各種添加剤を混合してなる(メタ)アクリル系樹脂組成物を混合し、前記混合後に増粘させれば得ることができる。
【0091】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂成形品は、例えば前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を所望の形状の金型に入れまたは賦形し、加熱重合により硬化させることにより、得ることができる。
【0092】
特に、前記SMCまたはBMCを用いて成形する場合には、圧縮成形法等公知の方法により加熱加圧硬化することによって成形品を製造することが好ましい。
【0093】
ここでいう加熱温度は特に制限はないが、80〜150℃の範囲内が好ましい。
【0094】
加熱温度が80℃以上の場合に、SMCまたはBMCの硬化時間を短縮することができ、生産性が高くなる傾向にあり、また、金型内におけるSMCまたはBMCの流動性が向上する傾向にある。
【0095】
一方加熱温度が150℃以下の場合には、得られる樹脂成形品の線収縮率は低下し、光沢は良好となる傾向にある。
加熱温度の下限値については、85℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。また、加熱温度の上限値については、140℃以下がより好ましく、135℃以下が特に好ましい。
【0096】
なお、加熱加圧成形を行う場合には、上金型と下金型に温度差をつけて加熱してもよい。
【0097】
本発明において加圧圧力は特に制限はないが、0.5〜25MPaであることが好ましい。
【0098】
加圧圧力が0.5MPa以上の場合に、SMCまたはBMCの金型内への充填性が良好となる傾向にあり、25MPa以下の場合に、白化のない良好な成形外観が得られる傾向にある。
【0099】
加圧圧力の下限値は、1MPa以上であることがより好ましく、上限値は20MPa以下であることがより好ましい。
【0100】
なお、本発明において加熱加圧硬化の条件のうち硬化時間は、所望する樹脂成形品の厚みによって適宜選択すればよく、限定されるものではない。
【0101】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げ具体的に説明する。
なお、例中の部は質量部を意味し、例中の評価方法は以下に示す通りである。
【0102】
<平均粒子径>
下記条件で重合体粒子の体積平均粒子径を測定した。
装置:堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910
測定条件:光透過率60〜80%の範囲にて自動測定
【0103】
<重量平均分子量>
GPC法によるポリスチレン換算値であり、下記条件で重量平均分子量を測定した。
装置:東ソー(株)製、高速GPC装置HLC−8020
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGMHXLを3本直列に連結
オーブン温度:38℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.4質量%
流速:1ml/分
注入量:0.1ml
検出器:RI(示差屈折計)
【0104】
<混合物の初期粘度>
(株)トキメック製のBH型粘度計で、10rpmの回転数で測定した。(測定温度30℃)
【0105】
<成形前の到達粘度>
ガラス繊維ロービング添加前の40℃熟成後の混合物をブルックフィールド社製デジタルレオメーターDV−III にヘリパススタンドを装着し、1RPMの回転数で測定した。(測定温度40℃)
【0106】
<成形時の流動特性>
ガラス繊維ロービング添加前の40℃熟成後の混合物を以下の装置・測定条件にて,動的粘弾性を測定した。尚、損失正接(tanδ)は、常法により、損失弾性率/貯蔵弾性率より算出した。
装置:レオメトリック・サイエンティフィック社製ダイナミック・ストレス・レオメータDSR−200
測定部上部冶具:ソルベントトラップ付きパラレルプレート(直径25mm)
測定下部冶具:ペルチェタイプ冶具
測定部カバー:ヒューミディティカバー
測定モード:ダイナミック・テンパラチャー・ランプ・デフォルト・テスト
温度制御:ペルチェ方式
温度条件:初期温度=30℃、最終温度=100℃、昇温速度=100℃/min
測定間隔:1秒毎
上部冶具と下部冶具のギャップ間隔:2mm
測定周波数:10rad/s
【0107】
<樹脂成形品の立ち面成形外観>
バスタブ成形品を目視により、外観観察した。
◎:樹脂成形品にヒケの発生なく、外観良好
○:樹脂成形品にヒケの発生が僅かながら認められるが、実用上問題とならない。
×:樹脂成形品に多数のヒケの発生が認められ、実用上問題となる。
【0108】
<樹脂成形品の手すり面成形外観>
バスタブ成形品を目視により、外観観察した。
◎:樹脂成形品にヒケの発生なく、外観良好
○:樹脂成形品にヒケの発生が僅かながら認められるが、実用上問題とならない。
×:樹脂成形品に多数のヒケの発生が認められ、実用上問題となる。
【0109】
<樹脂成形品の底面成形外観>
バスタブ成形品を目視により、外観観察した。
◎:樹脂成形品にヒケの発生なく、外観良好
○:樹脂成形品にヒケの発生が僅かながら認められるが、実用上問題とならない。
×:樹脂成形品に多数のヒケの発生が認められ、実用上問題となる。
【0110】
<手すり面光沢度>
JIS K7105に基づいて、成形品の60度鏡面光沢を日本電色工業(株)製ハンディー光沢計PG−1Mにて測定した。
【0111】
(1)重合体粉末(A−1)の製造例
冷却管、温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた反応装置に、純水600部、ポリビニルアルコール(けん化度88%、重合度1000)1.4部を溶解させた後、一般式(I)で表されるR1がCH3であるイソボルニルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルIBX」)158.7部(35.0mol%)、一般式(IV)で表されるR5がCH3、R6が炭素数2のアルキレン基およびR7が脂環族基であるヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルHH」)12.9部(2.2mol%)、一般式(V)で表されるR8がCH3であり、R9が炭素数1のアルキル基であるメチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルM」)128.4部(62.8mol%)、チオグリコール酸オクチル3部、アゾビスイソブチロニトリル0.9部を溶解させた単量体溶液を投入し、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら1時間で70℃に昇温し、そのまま2時間加熱した。その後、90℃に昇温し2時間加熱後、更に120℃に加熱して残存モノマーを水と共に留去してスラリーを得て、懸濁重合を終了した。得られたスラリーを濾過、洗浄した後、50℃の熱風乾燥機で乾燥し、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(I)と一般式(IV)および一般式(V)を有するアクリル系重合体(A−1)を得た。得られた(A−1)の重量平均分子量は4.3万であった。
【0112】
(2)重合体粉末(A−2)の製造例
イソボルニルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルIBX」)57.3部(10.0mol%)、ヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルHH」)16.2部(2.2mol%)、メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルM」)226.5部(87.8mol%)を用いたこと以外は(A−1)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(I)と一般式(IV)および一般式(V)を有するアクリル系重合体(A−2)を得た。得られた(A−2)の重量平均分子量は4.2万であった。
【0113】
(3)重合体粉末(A−3)の製造例
「アクリエステルIBX」の代わりに一般式(II)で表されるR2がCH3であるトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカルメタクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−513M」)56.7部(10.0mol%)を用いたこと以外は(A−2)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(II)と一般式(IV)および一般式(V)を有するアクリル系重合体(A−3)を得た。得られた(A−3)の重量平均分子量は4.1万であった。
【0114】
(4)重合体粉末(A−4)の製造例
「アクリエステルIBX」の代わりに一般式(III )で表されるR3がCH3、R4が−であるジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−511A」)53.4部(10.0mol%)を用いたこと以外は(A−2)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(III )と一般式(IV)および一般式(V)を有するアクリル系重合体(A−4)を得た。得られた(A−4)の重量平均分子量は4.1万であった。
【0115】
(5)重合体粉末(A−5)の製造例
「アクリエステルIBX」の代わりに一般式(III )で表されるR3がCH3、R4が−CH2CH2O−であるジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−512A」)62.4部(10.0mol%)を用いたこと以外は(A−2)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(III )と一般式(IV)および一般式(V)を有するアクリル系重合体(A−5)を得た。得られた(A−5)の重量平均分子量は4.3万であった。
【0116】
(6)重合体粉末(A−6)の製造例
「アクリエステルIBX」を用いず、「アクリエステルHH」18.0部(2.2mol%)、「アクリエステルM」282.0部(97.8mol%)としたこと以外は(A−1)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(IV)と一般式(V)のみを有するアクリル系重合体(A−6)を得た。得られた(A−6)の重量平均分子量は4.2万であった。
【0117】
(7)重合体粉末(A−7)の製造例
「アクリエステルIBX」の代わりにスチレン(三菱化学(株)製、商品名「スチレン」)30.0部(10.0mol%)を用いたこと以外は(A−2)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖にベンゼン環と一般式(IV)および一般式(V)のみを有するアクリル系重合体(A−7)を得た。得られた(A−7)の重量平均分子量は4.1万であった。
【0118】
[実施例1]
メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルM」)41.1部および1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルBD」)11.1部からなるメタクリル系単量体混合物に、重合禁止剤として2、6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(住友化学(株)製、商品名「スミライザーBHT」)0.02部を添加してなるビニル系単量体混合物中に、前記製造例(1)で得た重合体粉末(A−1)47.8部を溶解させてシラップを調製した。次いで該シラップ、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(化薬アクゾ(株)製、商品名「トリゴノックス42」)2.2部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛4部、緑色無機顔料7.1部、無機充填剤として重質炭酸カルシウム(日東粉化工業(株)製、商品名「NS#200」)122.2部、および増粘剤として酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製マグミック)0.51部、増粘助剤として水0.67部を混合して混合物を調合した。
【0119】
このときの混合物の温度は30℃で、初期粘度は11.2Pa・sであった。
【0120】
また、別途、この混合物を上記と同じ方法で調合し、40℃で熟成して増粘させて、アクリル系混合物を得た。このアクリル系混合物の到達粘度および動的粘弾性を測定した。到達粘度および損失正接(tanδ)のピーク値を表2に示す。
【0121】
2枚のポリプロピレン離型性フィルム上に混合物100部を厚さ1mmに塗布し、一方のフィルムのアクリル系プレミックス(混合物)が塗布された面に、直径13μmのガラス繊維ロービング(旭ファイバーグラス(株)製、商品名「ER4800LBAF211W」)を25.4mmにカットして、74.0部添加し、その上にもう一方のフィルムの混合物が塗布された面を重ねて、ガラス繊維に混合物を含浸させた。
【0122】
次いで、この含浸物を40℃で4日間熟成させ、SMCを得た。このSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきがなく、取り扱い性が良好であった。また、SMCに含まれるガラス繊維に含浸性不良が認められず、ガラス繊維への含浸性は良好であった。
【0123】
次に、このフィルムを剥離したSMCをバスタブ成形用金型(上面:幅600mm×奥行き400mm、下面:幅300mm×奥行き250mm、深さ450mm、厚さ3mm、図1)に充填し、上金型温度125℃、下金型温度105℃、圧力が300トン(成形品の投影面積に対して14.7MPa)の条件で5分間加熱加圧硬化を行った。
【0124】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)すべてにおいてヒケがなく、成形品の手すり面2(図2)の光沢値は82度であり、光沢がきわめて高く、外観は良好であった。
【0125】
[実施例2]
メチルメタクリレート50.0部および重合体粉末(A−2)38.9部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0126】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0127】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0128】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)において、僅かながらヒケが認められるが、実用上問題とならない程度であり、成形品の手すり面2(図2)の光沢値は81度であり、光沢が高く、外観は良好であった。
【0129】
[実施例3]
メチルメタクリレート50.0部および重合体粉末(A−3)38.9部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0130】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0131】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0132】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)において、僅かながらヒケが認められるが、実用上問題とならない程度であり、成形品の手すり面2(図2)の光沢値は80度であり、光沢が高く、外観は良好であった。
【0133】
[実施例4]
メチルメタクリレート50.0部および重合体粉末(A−4)38.9部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0134】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0135】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0136】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)において、僅かながらヒケが認められるが、実用上問題とならない程度であり、成形品の手すり面2(図2)の光沢値は79度であり、光沢が高く、外観は良好であった。
【0137】
[実施例5]
メチルメタクリレート50.0部および重合体粉末(A−5)38.9部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0138】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0139】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0140】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)において、僅かながらヒケが認められるが、実用上問題とならない程度であり、成形品の手すり面2(図2)の光沢値は79度であり、光沢が高く、外観は良好であった。
【0141】
[比較例1]
メチルメタクリレート54.4部および重合体粉末(A−6)34.5部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0142】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0143】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0144】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)すべてにおいて、多数のヒケが認められ、また、成形品の手すり面2(図2)の光沢値も73度と低く、外観が悪いものであった。
【0145】
[比較例2]
メチルメタクリレート54.4部および重合体粉末(A−7)34.5部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0146】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0147】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0148】
得られた樹脂成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)すべてにおいて、多数のヒケが認められ、また、成形品の手すり面2(図2)の光沢値も74度と低く、外観が悪いものであった。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
上記した表中の略記の意味は、以下の通りである。
【0152】
MMA:メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルM」)
HH:ヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルHH」)
IBX:イソボルニルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルIBX」)
FA−513M:トリシクロ(5・2・1・02、6)デニカルメタクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−513M」)
FA−511A:ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−511A」)
FA−512A:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−512A」)
St:スチレン(三菱化学(株)製、商品名「スチレン」)
BD:1,3−ブチレングリコールジメタクリレート (三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルBD」)
【0153】
A−1:製造例(1)で得た重合体粉末(A−1)
A−2:製造例(2)で得た重合体粉末(A−2)
A−3:製造例(3)で得た重合体粉末(A−3)
A−4:製造例(4)で得た重合体粉末(A−4)
A−5:製造例(5)で得た重合体粉末(A−5)
A−6:製造例(6)で得た重合体粉末(A−6)
A−7:製造例(7)で得た重合体粉末(A−7)
NS#200:重質炭酸カルシウム(日東粉化工業(株)製、商品名「NS#200」)
ガラス繊維:直径13μmのガラス繊維ロービング(旭ファイバーグラス(株)製、商品名「ER4800LBAF211W」)を25.4mmにカットしたもの
【0154】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、特定の構造の(メタ)アクリル系重合体を用いることにより、成形時の流動特性が改良され、成形外観の優れた樹脂成形品を得ることが可能な、従来にない顕著な効果を有する(メタ)アクリル系樹脂組成物が提供される。
【0155】
その結果、本発明によれば、例えば深絞り、リブ等がある大型で複雑な形状を有するバスタブ、機械パネル、水タンク等の成形において、成形外観の優れた実用化可能な樹脂成形品を製造することを可能となるため、本発明は工業上非常に有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で成形したバスタブを示す模式斜視図(下方から見た図)である。
【図2】実施例で成形したバスタブを示す模式平面図(上方から見た図)である。
【符号の説明】
1…立ち面
2…手すり面
3…底面
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形外観の優れた樹脂成形品を与えることが可能な(メタ)アクリル系樹脂組成物、該組成物を加熱硬化して得られる樹脂成形品、およびこのような樹脂成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途は特に制限されないが、説明の便宜上、人工大理石に関する先行技術について先ず述べる。従来より、樹脂組成物を成形硬化してなる人工大理石は、洗面化粧台、浴槽、台所カウンター等のサニタリーウェア、あるいは建築用の内装材、外装材の用途や繊維強化樹脂(FRP)としての用途に広く利用されている。
【0003】
このような人工大理石は、例えば、ビニル系単量体を含むシラップに水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填剤を混合してなる混合物を成形型内に充填し、硬化重合させる注型法や、ビニル系単量体を含むシラップと無機充填剤からなる混合物を増粘剤で増粘させて得られるシートモールディングコンパウンド(以下、SMCという)またはバルクモールディングコンパウンド(以下、BMCという)を、加熱加圧成形する等の方法により得ることができる。
【0004】
一方で、近年種々の用途面から高級化志向が強まり、透明性、深み、重厚感等の外観に優れた人工大理石が望まれており、このように外観に優れた人工大理石の製法も数多く提案されてきている。
【0005】
しかしながら、マトリックス樹脂として(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いた上記SMCまたはBMCの場合には、加熱加圧成形に適した成形前の到達粘度(通常10kPa・S〜150kPa・S/25℃)が不足しており、SMCまたはBMC表面がべたつき、取り扱い性が悪く、成形が困難であり、実用化には至っていなかった。
【0006】
そこで、これら欠点を改善するため、例えば、側鎖に−OCO−X−COOH(Xは脂環族基または芳香族基)を有する重合体を含む(メタ)アクリル系シラップおよび、水酸化アルミニウム、ガラス繊維からなるSMC組成物が開示されており、前記特定の重合体を用いることによって、充分な成形前の到達粘度を発現することにより、上記の問題を解決している(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の樹脂組成物から得られるSMCは、深絞り、リブ等がある大型で複雑な形状を有するバスタブ、防水パン、機械パネル、水タンク等の成形においては、成形時の流動特性が不充分であり、得られた成形品に欠肉、光沢低下、ヒケ、気泡等が発生し、実用レベルでないのが現状であった。すなわち、従来提案された方法においては、SMCまたはBMC等の加熱加圧成形に適した成形前の粘度特性(到達粘度)と成形時の流動特性を同時に満足するものは見出されていない。
【0008】
【特許文献1】
特開昭62−146929号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消した(メタ)アクリル系樹脂組成物、該組成物を加熱硬化して得られる樹脂成形品、並びにこのような樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、SMC法またはBMC法において成形外観の優れた樹脂成形品を与えることが可能な(メタ)アクリル系樹脂組成物、該組成物を加熱硬化して得られる樹脂成形品、並びに樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(I)で表されるイソボルニル(メタ)アクリル系単量体、一般式(II)で表されるトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカル(メタ)アクリレート系単量体、および一般式(III )で表されるジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート系単量体の少なくとも1種と、下記一般式(IV)で表される脂環族基または芳香族基含有(メタ)アクリレート系単量体並びに下記一般式(V)で表される(メタ)アクリル系単量体とを重合して得られる(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系単量体(B)からなる(メタ)アクリル系樹脂組成物が提供される。
【0012】
【化2】
【0013】
本発明によれば更に、該樹脂組成物からなるSMCまたはBMC、該樹脂組成物を加熱硬化して得られる樹脂成形品、該SMCまたはBMCを加熱加圧硬化して得られる樹脂成形品が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0015】
((メタ)アクリル系樹脂組成物)
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル系重合体(A)および(メタ)アクリル系単量体(B)を少なくとも含む。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。これらの(メタ)アクリル系重合体(A)および(メタ)アクリル系単量体(B)は、(メタ)アクリル樹脂の優れた透明性により、得られる成形品の外観に深みや重厚感を与えるマトリックス樹脂成分である。
【0016】
((メタ)アクリル系重合体(A))
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体(A)は、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を製造する際に適度な粘度を付与するための成分である。適度な粘度を付与するためには、酸化マグネシウム等の二価の金属酸化物または水酸化物等の増粘剤をさらに添加することが好ましい。この成分(A)は、該成分中のカルボキシル基と酸化マグネシウム等の二価の金属酸化物または水酸化物等の増粘剤が金属架橋し、樹脂成分を増粘させてSMCまたはBMCとしての取り扱い性を向上させる成分である。本明細書において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル系単量体を重合してなる重合体を意味する。
【0017】
この(メタ)アクリル系重合体(A)は、特定の構造、すなわち、下記一般式(I)で表されるイソボルニル(メタ)アクリル系単量体、一般式(II)で表されるトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカル(メタ)アクリレート系単量体、および一般式(III )で表されるジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート系単量体の少なくとも1種と、下記一般式(IV)で表される脂環族基または芳香族基含有(メタ)アクリレート系単量体並びに下記一般式(V)で表される(メタ)アクリル系単量体とを重合して得られる(メタ)アクリル系重合体であることが重要である。
【0018】
【化3】
【0019】
(SMCまたはBMCにおける挙動)
SMCまたはBMCにおいては、(メタ)アクリル系重合体(A)中のカルボキシル基と二価金属の酸化物または水酸化物が金属架橋し、樹脂成分を増粘させてSMCまたはBMCとしての取り扱い性を向上させると共に、加熱加圧成形時には、金属架橋が適度に解離して良好な流動特性を示すが、加熱加圧成形時の金属架橋の解離が不充分であると、充分な流動特性が得られず、得られた成形品に外観不良が生じる傾向がある。
【0020】
本発明者の研究により、成形時の流動特性改良には、(メタ)アクリル系重合体(A)の側鎖の構造が重要であり、特定の側鎖構造とすることにより、二価の金属酸化物または水酸化物等の増粘剤と金属架橋した後に得られるSMCまたはBMCの成形前の粘度特性(到達粘度)と成形時の流動特性が良好となることが判明した。
【0021】
すなわち、本発明者の知見によれば、成分(A)の側鎖が脂環族および芳香族のような立体障害が大きく、剛直な構造を有する場合、主鎖の自由回転が束縛されるので、金属架橋密度が低くても、充分な到達粘度が得られ、また、金属架橋密度が低いため、わずかな金属架橋の解離においても成形時に充分な流動性が得られると推定される。このような立体障害が大きく、剛直な構造の中でも、上記一般式(I)〜(V)で表される側鎖構造を有する重合体の使用が、成形前の到達粘度および成形時の流動特性が良好となり、得られた成形品が良好となると推定される。
【0022】
また、(メタ)アクリル系重合体(A)の側鎖が脂肪族である場合、重合体の主鎖結合軸まわりの自由回転が比較的に自由であるため、必要とする成形前の粘度特性を得るには、金属架橋密度を上げることが必要であった。しかしながら、この場合、金属架橋密度が高いと成形時に充分に金属架橋が解離せず、成形時の流動特性が不充分となる傾向がある。
【0023】
(成形時の流動特性)
ここでいう、成形時の流動特性を表す指標としては、成形温度における損失弾性率/貯蔵弾性率で表される損失正接(tanδ)が有効である。損失正接(tanδ)は、粘性体としての挙動(損失剛性率)と弾性体としての挙動(貯蔵剛性率)とのバランスを表す指標であり、損失正接が大きい程、粘性体としての挙動が支配的となり、成形時の流動特性が向上する。
【0024】
損失正接の値としては、特に限定されないが、成形時の流動特性の向上効果が大きいことから、損失正接のピーク値が1.5以上が好ましく、1.6以上がより好ましく、1.7以上が特に好ましい。また、損失正接のピーク値の上限値は、7以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。
【0025】
(重合体(A)の製法)
本発明に用いる(メタ)アクリル系重合体(A)の製造方法は、特に制限されず、例えば懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法等の方法により重合することができる。得られる(メタ)アクリル系重合体(A)の純度の点からは、成分(A)は、以下のような方法により製造することが好ましい。
【0026】
例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)が(I)と一般式(IV)および一般式(V)の(メタ)アクリル系単量体からなる場合は、イソボルニルアルコールと(メタ)アクリル酸と縮合反応させるかまたはメチルメタクリレートとエステル交換反応させることによって得られるイソボルニル(メタ)アクリレートとヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ含有(メタ)アクリル系単量体と、例えば無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸等の芳香族または脂環族酸無水物類との付加反応によって得られる(メタ)アクリル系単量体と、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等の炭素数1〜10のアルキル基含有(メタ)アクリレート系単量体を共重合することによって得ることができる。または上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体とイソボルニル(メタ)アクリレートおよび炭素数1〜10のアルキル基含有(メタ)アクリレート系単量体の共重合体に、上記の酸無水物類を付加反応することによっても得ることができる。
【0027】
同様に、(メタ)アクリル系重合体(A)が一般式(II)と一般式(IV)および一般式(V)の(メタ)アクリル系単量体からなる場合は、イソボルニル(メタ)アクリレートの代わりにトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカルアルコールと(メタ)アクリル酸と縮合反応させるかまたはメチルメタクリレートとエステル交換反応させることによって得られるトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカル(メタ)アクリレートを使用することにより、または、(メタ)アクリル系重合体(A)が一般式(III )と一般式(IV)および一般式(V)の(メタ)アクリル系単量体からなる場合は、イソボルニル(メタ)アクリレートの代わりにジシクロペンタジエンにアルキレングリコールまたはオキサアルキレングリコールを付加反応させ、生成したアルキレングリコールモノジシクロペンテニルエーテルまたはオキシアルキレングリコールモノジシクロペンテニルエーテルを(メタ)アクリル酸と縮合反応させるかまたはメチルメタクリレートとエステル交換反応させることによって得られるジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレートを使用することにより、容易に得る事ができる。
【0028】
((A)成分の含有量)
本発明において、(A)成分の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系樹脂組成物全量中、10〜70質量%(更には20〜60質量%)の範囲内が好ましい。
【0029】
この含有量が10質量%以上の場合に、高い増粘効果が得られる傾向にあり、また、70質量%以下の場合に、(メタ)アクリル系SMCまたはBMC製造時の混練性が良好となる傾向にある。
【0030】
(A)成分の含有量の下限値は、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましく、この上限値は、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下が特に好ましい。
【0031】
((メタ)アクリル系単量体(I)〜(III )の含有量)
本発明において、(A)成分中の一般式(I)〜(III )の(メタ)アクリル系単量体の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、3〜45mol%の範囲内が好ましい。
【0032】
この含有量が3mol%以上の場合に、得られる(メタ)アクリル系SMCまたはBMCの到達粘度が向上し、表面がべたつかず、取り扱い性が良好となり、また、成形時には、高い流動性が得られる傾向にある。更に、立体障害が大きく、剛直な構造を有するため、得られる成形品の耐熱性、耐熱水性が良好となる。また、45mol%以下の場合に、得られる樹脂成形品の耐衝撃性が良好となる傾向にある。
【0033】
一般式(I)〜(III )の(メタ)アクリル系単量体の含有量の下限値は、5mol%以上がより好ましく、7mol%以上が特に好ましく、この上限値は、42mol%以下がより好ましく、40mol%以下が特に好ましい。
【0034】
((メタ)アクリル系単量体(IV)の含有量)
本発明において、(A)成分中の一般式(IV)の(メタ)アクリル系単量体の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、0.5〜10mol%の範囲内が好ましい。
【0035】
この含有量が0.5mol%以上の場合に、得られる(メタ)アクリル系SMCまたはBMCの到達粘度が向上し、表面がべたつかず、取り扱い性が良好となる傾向にあり、また、10mol%以下の場合に、得られる樹脂成形品の耐熱水性が良好となる傾向にある。
【0036】
一般式(IV)の(メタ)アクリル系単量体の含有量の下限値は、0.7mol%以上がより好ましく、1.0mol%以上が特に好ましく、この上限値は、8mol%以下がより好ましく、6mol%以下が特に好ましい。
【0037】
((メタ)アクリル系単量体(V)の含有量)
本発明において、(A)成分中の一般式(V)の(メタ)アクリル系単量体の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、45〜95mol%の範囲内が好ましい。
【0038】
一般式(V)の(メタ)アクリル系単量体の含有量の下限値は、50mol%以上がより好ましく、55mol%以上が特に好ましく、この上限値は、93mol%以下がより好ましく、90mol%以下が特に好ましい。
なお、本発明の(メタ)アクリル系重合体(A)には(I)〜(V)成分以外の単量体として、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル、トリアリールイソシアヌレート等の単量体を用いてもよい。(I)〜(V)成分以外の単量体の含有量としては、(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、0〜20mol%の範囲内が好ましい。含有量の上限値は、15mol%以下がより好ましく、10mol%以下が特に好ましい。
【0039】
((A)成分の重量平均分子量)
(A)成分の重量平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量が大きいほど増粘効果が高くなるとともに、得られる樹脂成形品の耐熱水性と耐衝撃性が良好となる傾向にあるため、1万以上が好ましい。この重量平均分子量の下限値は、2万以上がより好ましく、3万以上が特に好ましい。
【0040】
この重量平均分子量の上限値も特に制限はないが、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物製造時の混練性の面から、500万以下が好ましい。また、上限値は300万以下がより好ましく、100万以下が特に好ましい。
【0041】
((メタ)アクリル系単量体(B))
本発明で用いられる(メタ)アクリル系単量体(B)は、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物に適度な流動性を付与する成分である。
【0042】
(B)成分として用いられる(メタ)アクリル系単量体としては、メタクリロイルおよび/またはアクリロイル基を有する単量体またはそれらの混合物であればよく、特に限定されない。
【0043】
(B)成分の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、炭素数2〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル系単官能性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系多官能性単量体等が挙げられる。
【0044】
これらは、必要に応じて単独であるいは二種以上を併用して使用することができる。
【0045】
これら(メタ)アクリレートの中でも、耐熱性を考慮すると、メタクリレートを主成分とすることが好ましい。
【0046】
((B)成分の含有量)
本発明において、(B)成分の含有量は特に制限されないが、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物全量中30〜90質量%の範囲であることが好ましい。樹脂組成物の取り扱い性に優れることから、下限値は35質量%以上がより好ましく、40質量%以上が特に好ましい。
【0047】
また上限値は80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が特に好ましい。
【0048】
((B)成分以外の単量体)
なお、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物には(B)成分以外の単量体として、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル、トリアリールイソシアヌレート等の単量体を用いてもよい。
【0049】
(無機充填剤(C))
本発明で用いられる無機充填剤(C)は、(メタ)アクリル系樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品に、大理石調の深みのある質感や耐熱性を与える成分である。
【0050】
無機充填剤(C)としては特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、シリカ、溶融シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸価チタン、リン酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、ガラスパウダー等を使用することができ、これらは2種以上を併用することができる。特に、本発明のSMCまたはBMCを樹脂成形品用成形材料として使用する場合には、無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリカ、溶融シリカ、ガラスパウダーが好ましく、コストの面から炭酸カルシウムがより好ましい。また、炭酸カルシウムとしては、特に制限はなく、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムが使用できる。
【0051】
((C)成分の含有量)
本発明において、(C)成分の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系単量体(B)とからなる(メタ)アクリル系樹脂組成物100質量部当たり、50〜200質量部の範囲が好ましい。
【0052】
(C)成分の含有量が50質量部以上の場合に、得られる樹脂成形品の質感や耐熱性が良好となる傾向にあり、また、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化時の収縮率が低くなる傾向にある。
【0053】
一方、(C)成分の含有量が200質量部以下の場合に、(メタ)アクリル系樹脂組成物製造時の流動性が良好となる傾向にある。成分(C)の含有量の下限値は、70質量部以上がより好ましく、90質量部以上が特に好ましく、この上限値は、180質量部以下がより好ましく、150質量部以下が特に好ましい。
【0054】
(添加剤等)
本発明の使用する(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上記(A)成分および(B)成分を基本構成成分とするものであるが、必要に応じて、繊維強化材(D)、石目模様材(E)、重合開始剤、禁止剤、増粘剤(酸化マグネシウム等の二価の金属の酸化物または水酸化物等)、着色剤、低収縮剤、内部離型剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種添加剤等を適宜添加してもよい。
【0055】
(繊維強化材(D))
繊維強化材(D)は、(メタ)アクリル系樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品に、機械的強度を付与することができる成分であり、特に制限はない。
【0056】
繊維強化材(D)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、フェノール繊維等が挙げられる。
【0057】
これらは、必要に応じて単独であるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0058】
そのうち、機械的強度を発現させやすい傾向にあることから、ガラス繊維、炭素繊維が特に好ましい。
【0059】
また、繊維強化材(D)の長さは特に制限されないが、1〜60mmの範囲であることが好ましい。(D)成分の長さの下限値は5mm以上であることがより好ましく、また上限値は50mm以下であることがより好ましい。
【0060】
本発明において、(D)成分の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系単量体(B)とからなる(メタ)アクリル系樹脂組成物100質量部当たり、30〜120質量部の範囲が好ましい。
【0061】
(D)成分の含有量が30質量部以上の場合に、得られる樹脂成形品の強度が高くなる傾向にあり、また120質量部以下の場合に、成形時の流動性が良好となる傾向にある。
【0062】
(D)成分の含有量の下限値は40質量部以上がより好ましく、50質量部以上が更に好ましく、60質量部以上が特に好ましい。また、(D)成分の含有量の上限値は110質量部以下がより好ましく、100質量部以下が特に好ましい。
【0063】
(石目模様材(E))
また、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物には、必要に応じて更に石目模様材(E)を添加してもよい。
【0064】
石目模様材(E)を添加した(メタ)アクリル系樹脂組成物を加熱成形すれば、石目模様を有する御影石調樹脂成形品を得ることができる。
【0065】
石目模様材(E)としては、特に制限されず、樹脂粒子や無機充填剤含有樹脂粒子等が挙げられる。
【0066】
石目模様材(E)を構成する樹脂としては、特に制限されないが、例えばアクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を挙げることができるが、その中でも鮮明な石目模様を発現し、意匠性に優れた石調模様の成形品が得られることから、特にアクリル樹脂が好ましい。
【0067】
また、石目模様材(E)が無機充填剤含有樹脂粒子である場合、その粒子中に含有される無機充填剤としては、例えば水酸化アルミニウム、シリカ、溶融シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラスパウダー等を挙げることができる。その中でも、 得られる樹脂成形品の質感が優れることから、水酸化アルミニウム、シリカ、溶融シリカ、炭酸カルシウムおよびガラスパウダーから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0068】
更に(E)成分には、必要に応じて顔料を含有させてもよい。
【0069】
また、本発明の樹脂組成物には、前記(E)成分を1種類単独で、もしくは色や粒径の異なる2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0070】
前記石目模様材(E)の製造方法は特に限定されないが、例えば樹脂板や無機充填剤入りの樹脂成形品を粉砕して得てもよい。その粉砕方法としては、例えばクラッシャー等による粉砕を挙げることができる。また粉砕した石目模様材は、必要に応じて篩によって粒度ごとに分級してもよい。
【0071】
本発明において、(E)成分の含有量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系単量体(B)とからなる(メタ)アクリル系樹脂組成物100質量部当たり、10〜100質量部の範囲が好ましい。(E)成分の配合量を10質量部以上とすれば意匠性の良好な石目模様を有する成形品が得られる傾向にあり、100質量部以下とすれば、成形時の流動性が良好となる傾向にあるからである。
【0072】
(E)成分の配合量の下限値は15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることが特に好ましい。また、(E)成分の配合量の上限値は80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることが特に好ましい。
【0073】
(重合開始剤)
重合開始剤の具体例としては、例えば、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゾエート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用することができる。
【0074】
これらは、必要に応じて単独であるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0075】
(SMCまたはBMCの形態)
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、SMCまたはBMCの形態とすることにより、成形時間を短縮し、生産性を向上させることができる。
【0076】
ここでいうSMCおよびBMCとは、前記(A)成分、(B)成分、および必要に応じて各種添加剤を混合してなる(メタ)アクリル系樹脂組成物を増粘させた成形材料を意味する。
【0077】
(メタ)アクリル系樹脂組成物を得るために、前記(A)成分、(B)成分、および必要に応じて各種添加剤を混合する混合方法としては、特に限定されず、(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度に応じて適宜選択すればよい。
【0078】
特に、(メタ)アクリル系樹脂組成物を混合と同時に増粘させる場合には、具体的には、例えば、ニーダー、ミキサー、ロール、押出機、混練押し出し機等、高粘度物質を効率よく混合できる方法であれば特に限定されない。
【0079】
また、(メタ)アクリル系樹脂組成物の増粘方法としては、特に限定されないが、前記(A)成分および(B)成分を混合した後に増粘させる方法が好ましい。
【0080】
例えば、本発明のSMCを製造する場合には、離型フィルム上へ塗布しやすいことや繊維強化材(D)への含浸性から、(メタ)アクリル系樹脂組成物を混合し、離型フィルム上に塗布した後に増粘させることが好ましい。一方本発明のBMCを製造する場合にも、繊維強化材(D)への含浸性から、(メタ)アクリル系樹脂組成物と混練した後に増粘させることが好ましい。
【0081】
(熟成条件)
(メタ)アクリル系樹脂組成物の熟成条件は、10℃以上で熟成させればよく特に制限はないが、10〜60℃で1日以上熟成させると、最終的に到達する粘度まで増粘が進み、完全に増粘が終了する傾向にあるため好ましい。
【0082】
熟成時の温度条件としては、下限値は20℃以上がより好ましく、また上限値は50℃以下がより好ましい。
【0083】
ここで、熟成とは、(メタ)アクリル系重合体(A)中のカルボキシル基と二価の金属酸化物等の増粘剤から形成される金属架橋をSMCまたはBMCとしての取り扱い性が良好な粘度になるまで反応させることを意味する。
【0084】
(SMCおよびBMC具体例)
以下、該(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いたSMCおよびBMCの製造方法について、具体例を示す。
【0085】
本発明のSMCは、前述した(メタ)アクリル系重合体(A)、(メタ)アクリル系単量体(B)ならびに所望により各種添加剤を混合してなる(メタ)アクリル系樹脂組成物混合物を、2枚の離型性フィルム上に塗布した後、一方のフィルムの混合物が塗布された面に繊維強化材(D)を添加する。そして、その上に混合物が塗布された面がくるようにもう一方のフィルムを重ねて、繊維強化材(D)に混合物を含浸させた後、該混合物を増粘させることによって製造することができる。
【0086】
また、石目模様材を含むSMCを得るには、(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造時に石目模様材(E)を添加する以外は前述と同様にして製造することができる。
【0087】
SMCの製造工程において、離型性フィルムに塗布する(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度は特に限定されないが、1〜200Pa・sの範囲であることが好ましい。
【0088】
なお、ここでいう粘度とは、BH型粘度計で測定した粘度を意味する。
【0089】
ここで、その粘度が1Pa・s以上の場合には、特に繊維強化材(D)に(メタ)アクリル系樹脂組成物を含浸させる工程で、混合物が離型性フィルムから漏洩しない傾向にある。また、その粘度が200Pa・s以下の場合に、(メタ)アクリル系樹脂組成物の繊維強化材(D)に対する含浸性が向上する傾向にある。
【0090】
一方、本発明のBMCは、前述した(メタ)アクリル系重合体(A)、(メタ)アクリル系単量体(B)ならびに所望により各種添加剤を混合してなる(メタ)アクリル系樹脂組成物を混合し、前記混合後に増粘させれば得ることができる。
【0091】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂成形品は、例えば前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を所望の形状の金型に入れまたは賦形し、加熱重合により硬化させることにより、得ることができる。
【0092】
特に、前記SMCまたはBMCを用いて成形する場合には、圧縮成形法等公知の方法により加熱加圧硬化することによって成形品を製造することが好ましい。
【0093】
ここでいう加熱温度は特に制限はないが、80〜150℃の範囲内が好ましい。
【0094】
加熱温度が80℃以上の場合に、SMCまたはBMCの硬化時間を短縮することができ、生産性が高くなる傾向にあり、また、金型内におけるSMCまたはBMCの流動性が向上する傾向にある。
【0095】
一方加熱温度が150℃以下の場合には、得られる樹脂成形品の線収縮率は低下し、光沢は良好となる傾向にある。
加熱温度の下限値については、85℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。また、加熱温度の上限値については、140℃以下がより好ましく、135℃以下が特に好ましい。
【0096】
なお、加熱加圧成形を行う場合には、上金型と下金型に温度差をつけて加熱してもよい。
【0097】
本発明において加圧圧力は特に制限はないが、0.5〜25MPaであることが好ましい。
【0098】
加圧圧力が0.5MPa以上の場合に、SMCまたはBMCの金型内への充填性が良好となる傾向にあり、25MPa以下の場合に、白化のない良好な成形外観が得られる傾向にある。
【0099】
加圧圧力の下限値は、1MPa以上であることがより好ましく、上限値は20MPa以下であることがより好ましい。
【0100】
なお、本発明において加熱加圧硬化の条件のうち硬化時間は、所望する樹脂成形品の厚みによって適宜選択すればよく、限定されるものではない。
【0101】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げ具体的に説明する。
なお、例中の部は質量部を意味し、例中の評価方法は以下に示す通りである。
【0102】
<平均粒子径>
下記条件で重合体粒子の体積平均粒子径を測定した。
装置:堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910
測定条件:光透過率60〜80%の範囲にて自動測定
【0103】
<重量平均分子量>
GPC法によるポリスチレン換算値であり、下記条件で重量平均分子量を測定した。
装置:東ソー(株)製、高速GPC装置HLC−8020
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGMHXLを3本直列に連結
オーブン温度:38℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.4質量%
流速:1ml/分
注入量:0.1ml
検出器:RI(示差屈折計)
【0104】
<混合物の初期粘度>
(株)トキメック製のBH型粘度計で、10rpmの回転数で測定した。(測定温度30℃)
【0105】
<成形前の到達粘度>
ガラス繊維ロービング添加前の40℃熟成後の混合物をブルックフィールド社製デジタルレオメーターDV−III にヘリパススタンドを装着し、1RPMの回転数で測定した。(測定温度40℃)
【0106】
<成形時の流動特性>
ガラス繊維ロービング添加前の40℃熟成後の混合物を以下の装置・測定条件にて,動的粘弾性を測定した。尚、損失正接(tanδ)は、常法により、損失弾性率/貯蔵弾性率より算出した。
装置:レオメトリック・サイエンティフィック社製ダイナミック・ストレス・レオメータDSR−200
測定部上部冶具:ソルベントトラップ付きパラレルプレート(直径25mm)
測定下部冶具:ペルチェタイプ冶具
測定部カバー:ヒューミディティカバー
測定モード:ダイナミック・テンパラチャー・ランプ・デフォルト・テスト
温度制御:ペルチェ方式
温度条件:初期温度=30℃、最終温度=100℃、昇温速度=100℃/min
測定間隔:1秒毎
上部冶具と下部冶具のギャップ間隔:2mm
測定周波数:10rad/s
【0107】
<樹脂成形品の立ち面成形外観>
バスタブ成形品を目視により、外観観察した。
◎:樹脂成形品にヒケの発生なく、外観良好
○:樹脂成形品にヒケの発生が僅かながら認められるが、実用上問題とならない。
×:樹脂成形品に多数のヒケの発生が認められ、実用上問題となる。
【0108】
<樹脂成形品の手すり面成形外観>
バスタブ成形品を目視により、外観観察した。
◎:樹脂成形品にヒケの発生なく、外観良好
○:樹脂成形品にヒケの発生が僅かながら認められるが、実用上問題とならない。
×:樹脂成形品に多数のヒケの発生が認められ、実用上問題となる。
【0109】
<樹脂成形品の底面成形外観>
バスタブ成形品を目視により、外観観察した。
◎:樹脂成形品にヒケの発生なく、外観良好
○:樹脂成形品にヒケの発生が僅かながら認められるが、実用上問題とならない。
×:樹脂成形品に多数のヒケの発生が認められ、実用上問題となる。
【0110】
<手すり面光沢度>
JIS K7105に基づいて、成形品の60度鏡面光沢を日本電色工業(株)製ハンディー光沢計PG−1Mにて測定した。
【0111】
(1)重合体粉末(A−1)の製造例
冷却管、温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた反応装置に、純水600部、ポリビニルアルコール(けん化度88%、重合度1000)1.4部を溶解させた後、一般式(I)で表されるR1がCH3であるイソボルニルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルIBX」)158.7部(35.0mol%)、一般式(IV)で表されるR5がCH3、R6が炭素数2のアルキレン基およびR7が脂環族基であるヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルHH」)12.9部(2.2mol%)、一般式(V)で表されるR8がCH3であり、R9が炭素数1のアルキル基であるメチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルM」)128.4部(62.8mol%)、チオグリコール酸オクチル3部、アゾビスイソブチロニトリル0.9部を溶解させた単量体溶液を投入し、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら1時間で70℃に昇温し、そのまま2時間加熱した。その後、90℃に昇温し2時間加熱後、更に120℃に加熱して残存モノマーを水と共に留去してスラリーを得て、懸濁重合を終了した。得られたスラリーを濾過、洗浄した後、50℃の熱風乾燥機で乾燥し、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(I)と一般式(IV)および一般式(V)を有するアクリル系重合体(A−1)を得た。得られた(A−1)の重量平均分子量は4.3万であった。
【0112】
(2)重合体粉末(A−2)の製造例
イソボルニルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルIBX」)57.3部(10.0mol%)、ヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルHH」)16.2部(2.2mol%)、メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルM」)226.5部(87.8mol%)を用いたこと以外は(A−1)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(I)と一般式(IV)および一般式(V)を有するアクリル系重合体(A−2)を得た。得られた(A−2)の重量平均分子量は4.2万であった。
【0113】
(3)重合体粉末(A−3)の製造例
「アクリエステルIBX」の代わりに一般式(II)で表されるR2がCH3であるトリシクロ(5・2・1・02、6)デニカルメタクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−513M」)56.7部(10.0mol%)を用いたこと以外は(A−2)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(II)と一般式(IV)および一般式(V)を有するアクリル系重合体(A−3)を得た。得られた(A−3)の重量平均分子量は4.1万であった。
【0114】
(4)重合体粉末(A−4)の製造例
「アクリエステルIBX」の代わりに一般式(III )で表されるR3がCH3、R4が−であるジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−511A」)53.4部(10.0mol%)を用いたこと以外は(A−2)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(III )と一般式(IV)および一般式(V)を有するアクリル系重合体(A−4)を得た。得られた(A−4)の重量平均分子量は4.1万であった。
【0115】
(5)重合体粉末(A−5)の製造例
「アクリエステルIBX」の代わりに一般式(III )で表されるR3がCH3、R4が−CH2CH2O−であるジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−512A」)62.4部(10.0mol%)を用いたこと以外は(A−2)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(III )と一般式(IV)および一般式(V)を有するアクリル系重合体(A−5)を得た。得られた(A−5)の重量平均分子量は4.3万であった。
【0116】
(6)重合体粉末(A−6)の製造例
「アクリエステルIBX」を用いず、「アクリエステルHH」18.0部(2.2mol%)、「アクリエステルM」282.0部(97.8mol%)としたこと以外は(A−1)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖に一般式(IV)と一般式(V)のみを有するアクリル系重合体(A−6)を得た。得られた(A−6)の重量平均分子量は4.2万であった。
【0117】
(7)重合体粉末(A−7)の製造例
「アクリエステルIBX」の代わりにスチレン(三菱化学(株)製、商品名「スチレン」)30.0部(10.0mol%)を用いたこと以外は(A−2)の製造例と同様にして、平均粒子径が350μmの側鎖にベンゼン環と一般式(IV)および一般式(V)のみを有するアクリル系重合体(A−7)を得た。得られた(A−7)の重量平均分子量は4.1万であった。
【0118】
[実施例1]
メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルM」)41.1部および1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルBD」)11.1部からなるメタクリル系単量体混合物に、重合禁止剤として2、6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(住友化学(株)製、商品名「スミライザーBHT」)0.02部を添加してなるビニル系単量体混合物中に、前記製造例(1)で得た重合体粉末(A−1)47.8部を溶解させてシラップを調製した。次いで該シラップ、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(化薬アクゾ(株)製、商品名「トリゴノックス42」)2.2部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛4部、緑色無機顔料7.1部、無機充填剤として重質炭酸カルシウム(日東粉化工業(株)製、商品名「NS#200」)122.2部、および増粘剤として酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製マグミック)0.51部、増粘助剤として水0.67部を混合して混合物を調合した。
【0119】
このときの混合物の温度は30℃で、初期粘度は11.2Pa・sであった。
【0120】
また、別途、この混合物を上記と同じ方法で調合し、40℃で熟成して増粘させて、アクリル系混合物を得た。このアクリル系混合物の到達粘度および動的粘弾性を測定した。到達粘度および損失正接(tanδ)のピーク値を表2に示す。
【0121】
2枚のポリプロピレン離型性フィルム上に混合物100部を厚さ1mmに塗布し、一方のフィルムのアクリル系プレミックス(混合物)が塗布された面に、直径13μmのガラス繊維ロービング(旭ファイバーグラス(株)製、商品名「ER4800LBAF211W」)を25.4mmにカットして、74.0部添加し、その上にもう一方のフィルムの混合物が塗布された面を重ねて、ガラス繊維に混合物を含浸させた。
【0122】
次いで、この含浸物を40℃で4日間熟成させ、SMCを得た。このSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきがなく、取り扱い性が良好であった。また、SMCに含まれるガラス繊維に含浸性不良が認められず、ガラス繊維への含浸性は良好であった。
【0123】
次に、このフィルムを剥離したSMCをバスタブ成形用金型(上面:幅600mm×奥行き400mm、下面:幅300mm×奥行き250mm、深さ450mm、厚さ3mm、図1)に充填し、上金型温度125℃、下金型温度105℃、圧力が300トン(成形品の投影面積に対して14.7MPa)の条件で5分間加熱加圧硬化を行った。
【0124】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)すべてにおいてヒケがなく、成形品の手すり面2(図2)の光沢値は82度であり、光沢がきわめて高く、外観は良好であった。
【0125】
[実施例2]
メチルメタクリレート50.0部および重合体粉末(A−2)38.9部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0126】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0127】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0128】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)において、僅かながらヒケが認められるが、実用上問題とならない程度であり、成形品の手すり面2(図2)の光沢値は81度であり、光沢が高く、外観は良好であった。
【0129】
[実施例3]
メチルメタクリレート50.0部および重合体粉末(A−3)38.9部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0130】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0131】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0132】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)において、僅かながらヒケが認められるが、実用上問題とならない程度であり、成形品の手すり面2(図2)の光沢値は80度であり、光沢が高く、外観は良好であった。
【0133】
[実施例4]
メチルメタクリレート50.0部および重合体粉末(A−4)38.9部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0134】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0135】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0136】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)において、僅かながらヒケが認められるが、実用上問題とならない程度であり、成形品の手すり面2(図2)の光沢値は79度であり、光沢が高く、外観は良好であった。
【0137】
[実施例5]
メチルメタクリレート50.0部および重合体粉末(A−5)38.9部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0138】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0139】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0140】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)において、僅かながらヒケが認められるが、実用上問題とならない程度であり、成形品の手すり面2(図2)の光沢値は79度であり、光沢が高く、外観は良好であった。
【0141】
[比較例1]
メチルメタクリレート54.4部および重合体粉末(A−6)34.5部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0142】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0143】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0144】
得られた樹脂成形品成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)すべてにおいて、多数のヒケが認められ、また、成形品の手すり面2(図2)の光沢値も73度と低く、外観が悪いものであった。
【0145】
[比較例2]
メチルメタクリレート54.4部および重合体粉末(A−7)34.5部を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、到達粘度および動的粘弾性を測定するとともにSMCを得た。
【0146】
得られたSMCは、フィルム剥離性が良好で、フィルムを剥離した表面にべたつきはなく、取り扱い性が良好であった。
【0147】
次に、得られたSMCを用いる以外は実施例1と同様にして加熱加圧硬化を行った。
【0148】
得られた樹脂成形品の表面は、バスタブの立ち面1(図2)、手すり面2(図2)、底面3(図2)すべてにおいて、多数のヒケが認められ、また、成形品の手すり面2(図2)の光沢値も74度と低く、外観が悪いものであった。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
上記した表中の略記の意味は、以下の通りである。
【0152】
MMA:メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルM」)
HH:ヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルHH」)
IBX:イソボルニルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルIBX」)
FA−513M:トリシクロ(5・2・1・02、6)デニカルメタクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−513M」)
FA−511A:ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−511A」)
FA−512A:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名「ファンクリルFA−512A」)
St:スチレン(三菱化学(株)製、商品名「スチレン」)
BD:1,3−ブチレングリコールジメタクリレート (三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルBD」)
【0153】
A−1:製造例(1)で得た重合体粉末(A−1)
A−2:製造例(2)で得た重合体粉末(A−2)
A−3:製造例(3)で得た重合体粉末(A−3)
A−4:製造例(4)で得た重合体粉末(A−4)
A−5:製造例(5)で得た重合体粉末(A−5)
A−6:製造例(6)で得た重合体粉末(A−6)
A−7:製造例(7)で得た重合体粉末(A−7)
NS#200:重質炭酸カルシウム(日東粉化工業(株)製、商品名「NS#200」)
ガラス繊維:直径13μmのガラス繊維ロービング(旭ファイバーグラス(株)製、商品名「ER4800LBAF211W」)を25.4mmにカットしたもの
【0154】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、特定の構造の(メタ)アクリル系重合体を用いることにより、成形時の流動特性が改良され、成形外観の優れた樹脂成形品を得ることが可能な、従来にない顕著な効果を有する(メタ)アクリル系樹脂組成物が提供される。
【0155】
その結果、本発明によれば、例えば深絞り、リブ等がある大型で複雑な形状を有するバスタブ、機械パネル、水タンク等の成形において、成形外観の優れた実用化可能な樹脂成形品を製造することを可能となるため、本発明は工業上非常に有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で成形したバスタブを示す模式斜視図(下方から見た図)である。
【図2】実施例で成形したバスタブを示す模式平面図(上方から見た図)である。
【符号の説明】
1…立ち面
2…手すり面
3…底面
Claims (8)
- (メタ)アクリル系重合体(A)の構成成分である一般式(I)、一般式(II)、および一般式(III )で表される脂環族系(メタ)アクリル系単量体の含有量が(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、3〜45mol%であり、一般式(IV)で表される(メタ)アクリル系単量体の含有量が(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、0.5〜10mol%であり、および一般式(V)で表される(メタ)アクリル系単量体の含有量が(メタ)アクリル系重合体(A)組成中、45〜95mol%であることを特徴とする、請求項1記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
- 無機充填剤(C)を更に含有することを特徴とする、請求項1記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
- 繊維強化材(D)を更に含有することを特徴とする、請求項1記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
- 石目模様材(E)を更に含有することを特徴とする、請求項1記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなるシートモールディングコンパウンドまたはバルクモールディングコンパウンド。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物を加熱硬化して得られる樹脂成形品。
- 請求項6記載のシートモールディングコンパウンドまたはバルクモールディングコンパウンドを加熱加圧硬化して得られる樹脂成形品。
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JP2003057195A JP2004263135A (ja) | 2003-03-04 | 2003-03-04 | (メタ)アクリル系樹脂組成物、樹脂成形品並びに樹脂成形品の製造方法 |
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