JP2015074736A - セルロース複合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明では、飲料中のイオンが高濃度で配合されている場合においても、セルロース複合体自体が安定に分散し、かつ懸濁安定性に優れるセルロース複合体を提供することを課題とする。【解決手段】セルロース、化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類、及び化学的架橋構造を有する化合物からなる吸水性粒子を含むセルロース複合体であって、純水100mlに炭酸水素ナトリウム0.45gを溶解させた水溶液に、該セルロース複合体を1質量%分散させたときの粘度が10mPa・s以上であるセルロース複合体。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース複合体に関する。
セルロースと、陰イオン性多糖類とのセルロース複合体は、水系媒体中においてセルロースコロイドを形成し、良好な懸濁安定性を示すことが知られており、該セルロース複合体は、食品、医薬品、化粧品、塗料、セラミックス、樹脂、触媒、その他工業用品等の分野において、広く用いられている。特に、懸濁安定剤、乳化安定剤、増粘安定剤等の安定剤、組織付与剤、クラウディー剤、白度向上、流動性改良、研磨剤、食物繊維、油脂代替等の目的で、該セルロース複合体が用いられている。例えば、飲料であるカルシウム強化牛乳においては、ミルクカルシウムや炭酸カルシウムの如く、比重の大きい水不溶性成分の懸濁安定性を目的として、該セルロース複合体が添加されている。
これまで、ミネラル分すなわちイオンが少量しか存在しない媒体中で、このセルロース複合体がもつ懸濁安定性を向上させるために、様々な検討がなされている。
特許文献1では、微細セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する水分散性の複合体が開示されている。
特許文献2には、セルロース及び多糖類を含むセルロース複合体であって、動的散乱法により測定されるメジアン径が0.85μm以上であるセルロース複合体が記載されている。また、前記多糖類としてカルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましい旨が記載されている。また、セルロースと多糖類と水系媒体とを含む混合物を、湿式で共処理する工程において、固形分を35質量%以上、温度を80℃以下とするセルロース複合体の製造方法の記載がある。該セルロース複合体を使用した水分散性組成物は、ココア、コーヒー抽出物などが高濃度配合された飲料において懸濁安定性に優れることが記載されている。
特許文献3には、微細セルロースとカラギーナンまたはアルギネートを含むヒドロコロイドに加え、抗スリップ剤として水中に本質的に完全に可溶な任意の無機塩を添加し、高いせん断力で混練することで得られる水分散性組成物が開示されている。該無機塩としては塩化カルシウムが特に好ましいとの記載がある。該水分散性組成物はチョコレート飲料、飲用ヨーグルト製品において懸濁安定性に優れることが記載されている。
特公昭40−12174号公報 国際公開第13/022090号パンフレット 特表2006−508195号公報
近年は、地球温暖化に起因する熱中症患者の増加に伴い、ココア、コーヒー、紅茶等の缶、又はPET入り嗜好飲料において、ナトリウム等に代表されるミネラル分が配合された製品が開発されている。そのような製品の問題点は、飲料中のミネラル分がイオン状態で存在し、従って一般的にミネラル分が高濃度になると飲料に添加された安定剤が不安定化して、安定剤自身が沈殿してしまう。そして、ひいては蛋白質等の水不溶成分の沈降が発生しやすくなる。このため、ミネラル分が高濃度配合された飲料中でもそれ自体が安定的に分散状態を維持し、該飲料中の他の水不溶成分の懸濁安定化効果を発揮することができるセルロース複合体が望まれてきた。
上記の問題点は、従来のセルロースと陰イオン性多糖類とで構成されるセルロース複合体においても十分に解決されていなかった。つまり、従来のセルロース複合体を用いても、ミネラル分すなわちイオンが高濃度で配合された飲料においては、該セルロース複合体同士が凝集し沈降してしまい分散安定性を有さず、安定剤としての機能が十分に発揮されなかった。
例えば、特許文献1、2に記載のセルロース複合体又は水分散性組成物について見ると、セルロース自身の分散安定性は良好である。さらに特許文献2に記載のセルロース複合体を使用すると、ココア、コーヒー抽出物、紅茶抽出物等の成分を高濃度配合されたリッチテイスト飲料においても、十分な懸濁安定性が得られる。しかし、飲料中にイオンが高濃度で配合されている場合は、セルロース複合体同士が凝集しその後沈降してしまい分散安定性を有さず、安定剤としての機能が十分に発揮されない問題があった。
特許文献3に記載のセルロース複合体は、飲料中にイオンが高濃度で配合されている場合でもそれ自体は安定に分散することができるような分散安定性を有する。しかしながら、飲料中の他の水不溶成分に対する懸濁安定効果は十分ではなく、依然としてイオンが高濃度で配合されている飲料中に沈降、凝集が生じてしまう問題があった。
本発明では、飲料中のイオンが高濃度で配合されている場合においても、セルロース複合体自体が分散安定性を有し、かつ懸濁安定性にも優れるセルロース複合体を提供することを課題とする。
本発明の第1の局面において、本発明者らは、セルロースと陰イオン性多糖類に吸水性粒子を添加して高度に複合化させたセルロース複合体とすることで、イオン強度が高い飲料中においてもセルロース複合体自体が分散安定性を有し、かつ懸濁安定性に優れることを見出し、本発明をなすに至った。なお、本明細書でいうイオン強度とは電解質溶液中の1種類のイオンあるいは複数のイオンの合計により示される強度のことである。
また、本明細書でいう「分散安定」とは、非水溶性の成分を含まない水系媒体中にセルロース複合体を分散させたときの、セルロース複合体自体の分散安定性のことを意味している。具体的には、セルロース粒子の分離、凝集、沈降等の発生がなく、均一な外観を呈することである。
また、本明細書でいう「懸濁安定」とは、水系媒体中に、ココア粉末やカルシウム、機能性食品素材等、セルロース複合体以外の非水溶性の成分を含むときに、セルロース複合体の添加効果により、該非水溶性の成分が懸濁安定化されることを意味している。具体的には、セルロースだけでなく、該非水溶性の成分の粒子の分離、凝集、沈降等の発生がなく、均一な外観を呈することである。
本発明の第1の局面について更に説明すれば、本発明の吸水性粒子がセルロース複合体中に存在することによって、該吸水性粒子を含むセルロース複合体を水系媒体に分散させた際に、該吸水性粒子自身が膨潤しセルロース複合体粒子の内部からの崩壊を促進し、その結果セルロース複合体の分散性を向上させる作用を有していることも見出された。従って、本発明のセルロース複合体は、セルロース、化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類、及び化学的架橋構造を有する化合物からなる吸水性粒子を複合化する工程を含む方法により製造することができる。
また、本発明の第2の局面は、より高度に陰イオン性多糖類をセルロースと複合化できる方法に関する。すなわち、本願発明者らは、セルロースと陰イオン性多糖類とを混練する際に、本発明の吸水性粒子を添加することで、セルロース中に含まれる水分が当該粒子に吸水されて混練時の固形分濃度を事実上高めることで、混練物の粘性が高い半固形状態で高い混練エネルギーで混練可能になることを見出した。その結果、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の保護コロイド性を持つ陰イオン性多糖類をより高度にセルロースと複合化することが可能になり、複合体が持つ耐イオン性が向上しイオン強度が高い飲料中においてもセルロース複合体自体が安定に分散し、かつ懸濁安定性に優れることセルロース複合体を得ることができることを見出した。なお、ここでいう保護コロイド性とは、コロイド状のセルロース表面を陰イオン性多糖類が覆って、外部イオンによるセルロース粒子表面の電荷の中和を抑制することである。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1) セルロース、化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類、及び化学的架橋構造を有する化合物からなる吸水性粒子を含むセルロース複合体であって、
純水100mlに炭酸水素ナトリウム0.45gを溶解させた水溶液に、該セルロース複合体を1質量%分散させたときの粘度が10mPa・s以上であるセルロース複合体。
(2) 前記吸水性粒子の飽和吸水量が3ml/g以上である上記(1)のセルロース複合体。
(3) 前記吸水性粒子の含有量が0.5〜15質量%である、上記(1)又は(2)のセルロース複合体。
(4) 前記化学的架橋構造を有する化合物がカルボキシメチルセルロースカルシウムである、上記(1)〜(3)のいずれかのセルロース複合体。
(5) 前記セルロース/前記化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類の配合比が、50〜99質量部/1〜50質量部である、上記(1)〜(4)のいずれかのセルロース複合体。
(6) 前記セルロース、前記化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類、及び前記化学的架橋構造を有する化合物からなる吸水性粒子を複合化する工程を含む、上記(1)〜(5)のいずれかのセルロース複合体を製造する方法。
(7) セルロース、及び化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類を含むセルロース複合体を製造する方法において、化学的架橋構造を有する化合物からなる吸水性粒子の存在下で前記セルロースと前記化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類とを複合化する工程を含むセルロース複合体の製造方法。
(8) 請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロース複合体を含む、食品、工業製品又は医薬品。
本発明により、飲料中のミネラルすなわちイオンが高濃度で配合されている場合においても分散安定性を有し、かつ懸濁安定性に優れるセルロース複合体を提供することができる。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のセルロース複合体は、セルロース、化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類、及び化学的架橋構造を有する化合物からなる吸水性粒子を含むセルロース複合体であって、純水100mlに炭酸水素ナトリウム0.45gを溶解させた水溶液に該セルロース複合体を1質量%分散させたときの粘度が10mPa・s以上である。
本発明でいう複合化とは、セルロースの表面の少なくとも一部が、水素結合等の化学結合により、陰イオン性多糖類で被覆されることをいう。
<セルロース>
本発明において、「セルロース」とは、セルロースを含有する天然由来の水不溶性繊維質物質である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用しても、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
<セルロースの平均重合度>
本発明に用いるセルロースとしては、平均重合度が500以下の結晶セルロースが好ましい。平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。平均重合度が500以下ならば、陰イオン性多糖類との複合化の工程において、セルロース系物質が攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなるため好ましい。より好ましくは、平均重合度は300以下、さらに好ましくは、平均重合度は250以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては10以上である。
<セルロースの加水分解>
平均重合度を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースや、リグニン等の不純物も、取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、混練工程等で、セルロースと陰イオン性多糖類に機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、陰イオン性多糖類との複合化の制御が容易になる。
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、セルロース系物質を水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸
水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。
<セルロースの粒子形状(L/D)>
本発明のセルロース複合体中のセルロースは、微細な粒子状の形状であることが好ましい。セルロースの粒子形状は、本発明のセルロース複合体を1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%に純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾されたものを高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる
粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子の平均値として算出される。
L/Dは、懸濁安定性の点で20未満が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、5未満が格別に好ましく、4以下が最も好ましい。L/Dの下限はその定義より1である。
<化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類>
本発明における多糖類は、単糖類がα又はβ結合し、主鎖または側鎖を構成する化合物をいう。単糖類としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロースなどの糖以外に、デオキシ糖、N−アセチルグルコサミンなどのアミノ糖、チオ糖、グルコン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸などの糖酸、糖アルコールも含む。水中で陽イオンが遊離し、それ自身が陰イオンとなる多糖類を陰イオン性多糖類と呼ぶ。本発明において陰イオン性多糖類を用いることで、セルロースとの複合化がより促進されるため好ましい。
ここで、本願発明でいう「化学的架橋構造」について説明する。
モノマーが結合してなるポリマーにおいて、隣接する1つまたは2つのモノマーと結合しているモノマーを「結合ユニット」と定義する。隣接する3つ以上のモノマーと結合しているモノマーを「分岐ユニット」と定義する。例えば、グルコースが結合してなる多糖類において、隣接する2つのグルコースと1位、及び4位で結合するグルコースは結合ユニットに該当し、隣接する3つのグルコースと1位、4位、及び6位で結合するグルコースは分岐ユニットに該当する。
結合ユニットのみからなるポリマーの構造を直鎖構造と定義する。例えば、隣接する1つのグルコースと1位又は4位で結合するグルコースからなる端部の結合ユニットと、隣接する2つのグルコースと1位、及び4位で結合するグルコースからなる中間部の結合ユニットとからなるアミロースは、直鎖構造に該当する。
結合ユニットと分岐ユニットからなり、分岐ユニット同士が共有結合またはイオン結合によって直接結合していないポリマーの構造を分岐構造と定義する。例えば、隣接する1つのグルコースと1位又は4位で結合するグルコースからなる端部の結合ユニットと、隣接する2つのグルコースと1位、及び4位で結合するグルコースからなる中間部の結合ユニットと、隣接する3つのグルコースと1位、4位、及び6位で結合するグルコースからなる分岐ユニットを有し、分岐ユニット同士が直接共有結合またはイオン結合していないいが、一部の分岐ユニットと結合ユニットが結合しているアミロペクチンが該当する。
結合ユニットと分岐ユニットからなり、分岐ユニット同士が共有結合またはイオン結合によって直接結合しているポリマーの構造を架橋構造と定義する。例えば、隣接する1つのカルボキシメチル化グルコースと1位又は4位で結合するカルボキシメチル化グルコースからなる端部の結合ユニットと、隣接する2つのカルボキシメチル化グルコースと1位、及び4位で結合するカルボキシメチル化グルコースからなる中間部の結合ユニットと、隣接する3つのカルボキシメチル化グルコースと1位、4位でグリコシド結合(共有結合)し、3位または6位でイオン結合するカルボキシメチル化グルコースからなる分岐ユニットを有し、分岐ユニット同士が直接カルシウムイオンによりイオン結合したカルボキシメチルセルロースカルシウムが該当する。(下記の各構造参照。)
従って、本願発明でいう「化学的架橋構造を有さない」とは、共有結合又はイオン結合によって化学的に結合し形成された架橋構造を有さないことをいい、例えば、上記直鎖構造または上記分岐構造に該当する構造をいう。
Figure 2015074736
化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類としては、以下のものが好適である。
例えば、サイリウムシードガム、カラヤガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの水溶性の天然多糖類、が挙げられる。これらの陰イオン性多糖類の中でもカルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、「CMC−Na」ともいう。)及びキサンタンガムが好ましい。また、これらの陰イオン性多糖類は2種以上を組み合わせてもよい。
<カルボキシメチルセルロースナトリウム>
上述の陰イオン性多糖類の中でも、CMC−Naが、特にセルロースと複合化しやすいため好ましい。ここでいうCMC−Naとは、セルロースの水酸基の水素原子の一部または全部が−CHCOO基(カルボキシメチル基)に置換されたアニオンポリマーとNaカチオンからなるもので、D−グルコースがβー1,4結合した直鎖状の化学構造を持つものである。CMC−Naは、例えばパルプ(セルロース)を水酸化ナトリウム溶液で溶かし、モノクロロ酢酸(或いはそのナトリウム塩)でエーテル化する製法によって得られる。
特に、置換度と粘度が下記の特定範囲に調製されたCMC−Naを用いることが、複合化の観点から好ましい。置換度とは、CMC−Na中の水酸基(グルコース1単位あたり3つの水酸基を有する)にカルボキシメチル基がエーテル結合した度合いのことであり、グルコース1単位当たり0.6〜2.0が好ましい。置換度が前記の範囲であれば、置換度が高いほどセルロースと複合化しやすく、セルロース複合体の貯蔵弾性率が高まり、高塩濃度の水溶液中(例えば10質量%の塩化ナトリウム水溶液)でも高い懸濁安定性を発揮できるため好ましい。より好ましくは、置換度は0.9〜1.3である。
置換度は、以下の方法で測定される。試料(無水物)0.5gを精密にはかり、ろ紙に包んで磁性ルツボ中で灰化する。冷却した後、これを500mLビーカーに移し、水約250mLと、0.05M硫酸35mLを加えて30分間煮沸する。これを冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加えて、過剰の酸を0.1M水酸化カリウムで逆滴定して、次の式で算出する。
A=((af−bf1)/試料無水物(g))−アルカリ度(又は+酸度)
置換度=(162xA)/(10000−80A)
ここで、
A:試料1g中のアルカリに消費された0.05Mの硫酸の量(mL)
a:0.05M硫酸の使用量(mL)
f:0.05M硫酸の力価
b:0.1M水酸化カリウムの滴定量(mL)
f1:0.1M水酸化カリウムの力価
162:グルコースの分子量
80:CHCOONa−Hの分子量
アルカリ度(又は酸度)の測定法:試料(無水物)1gを300mLフラスコに精密に測りとり、水約200mLを加えて溶かす。これに0.05M硫酸5mLを加え、10分間煮沸した後、冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加え、0.1M水酸化カリウムで滴定する(SmL)。同時に空試験を行い(BmL)、次の式で算出する。
アルカリ度=((B−S)xf2)/試料無水物(g)
ここで、f2:0.1M水酸化カリウムの力価である。(B−S)xf2の値が、(−)の時には、酸度とする。
また、CMC−Naの粘度は、1質量%の純水溶液において、500mPa・s以下が好ましい。ここでいう粘度は、以下の方法で測定される。まず、CMC−Naの粉末を1質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて、純水中に分散し、水溶液を調製する。次に得られた水溶液について、分散3時間後(25℃保存)に、B型粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒静置後に、30秒間回転させて測定する。但し、ローターは粘度に応じて適宜変更することができる。
CMC−Naの粘度が低いほど、セルロースとの複合化が促進されやすい。そのため、200mPa・s以下がより好ましく、100mPa・s以下がさらに好ましい。下限は特に設定されるものではないが、好ましい範囲としては1mPa・s以上である。
<吸水性粒子>
吸水性とは物質が水を保持する性質のことであり、ここでは単位質量あたりの物質が保持できる最大水量のことで飽和吸水量を指標として用いている。飽和吸水量は吸油量JIS K5101に記載の吸油量の測定法に準じ、油の代わりに蒸留水を用いて測定する。終点は全体が一つの塊状になった後に、離水し始める点とする。
吸水性粒子の飽和吸水量が1gあたり3ml以上だとセルロースと保護コロイド性を持った陰イオン性多糖類を高い混練エネルギーで混練が可能になり、結果として耐イオン性が向上し、イオンが高濃度配合された飲料中でも安定して分散し、かつ懸濁安定性に優れる。好ましくは飽和吸水量が4ml/g以上であり、より好ましくは6ml/g以上である。上限は、特に設定されるものではないが、25ml/g以下が好ましい。
なお、吸水性粒子の飽和吸水量を測定するにあたっては、飽和吸水量測定前の少量の水分を含んだ吸水性粒子の重量と水分量とを測定して、水分を含まない状態の重量に換算しておくものとする。水分量は赤外線水分計を使用した乾燥減量法によって測定するものとする。
吸水性粒子の大きさは、500μm以下が好ましい。500μm以下であれば吸水性粒子自体が沈降しにくいためである。下限は特に制限はないが混練する際のセルロース複合体中の他の成分との親和性の観点から1μm以上が好ましい。
本発明では吸水性粒子として化学的架橋構造を有する化合物からなる粒子が好ましい。本願発明でいう「化学的架橋構造を有する」とは、共有結合又はイオン結合によって化学的に結合し形成された架橋構造を有することをいう。化学的架橋構造を有する吸水性の素材としては以下のものが好適である。
例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、メタクリレートジビニルベンゼンカリウム共重合体、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、デンプングリコール酸ナトリウム、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシアルキル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等が挙げられる。これらの吸水性の素材の中でもカルボキシメチルセルロースカルシウム(以下、CMC−Ca)、アルギン酸カルシウム等の食品添加物となり得るものが好ましい。
上述の吸水性粒子の中でも、セルロース骨格を有するCMC−Caがセルロース複合体中における他の成分との親和性の点から最も好ましい。
<カルボキシメチルセルロースカルシウム>
ここでいうCMC−Caとは、セルロースの水酸基の水素原子の一部または全部が−CHCOO基で置換されたアニオンポリマーとCaカチオンからなるもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の化学構造を持つものである。CMC−Caは、例えば、パルプ(セルロース)を水酸化ナトリウム溶液で溶かし、モノクロロ酢酸(或いはそのナトリウム塩)でエーテル化したのちに硫酸処理して、水に不溶性の遊離酸とし、炭酸カルシウムで中和して カルシウム塩とする製法で得ることができる。CMC−Caの物理化学的性質として、外観は白色微粉末であり水、酸に不溶でありアルカリに部分溶解する。また、吸水性が非常に高いことが知られており、この特性を利用して錠剤の崩壊剤として利用されている。また、食品工業分野でも成形剤としてビスケット、クッキー等に配合されている。
特に、置換度が下記特定範囲に調製されたCMC−Caを用いることが、複合化の観点から好ましい。置換度の定義は、前述のCMC−Naと同じであり、0.5〜2.0が好ましい。置換度が前記の範囲であれば、置換度が高いほど吸水性が高く、セルロースと陰イオン性多糖類の複合化を促進しやすい。より好ましくは、置換度は0.5〜0.7である。
<吸水性粒子の配合比率>
本発明のセルロース複合体において、吸水性粒子の配合比率は吸水量と混練エネルギーの関係から0.5〜15質量%含まれることが好ましい。より好ましくは0.5〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜7質量%であり、特に好ましくは0.5〜4質量%である。なお、吸水性粒子の配合量は、水分を含まない状態の吸水性粒子の重量に基づくものとする。
<セルロースと陰イオン性多糖類の配合比率>
本発明のセルロース複合体中のセルロースと陰イオン性多糖類の配合比は50〜99質量部/1〜50質量部であることが好ましい。このセルロースと陰イオン性多糖類を上記の組成とすることで、複合化が促進され、イオン強度の高い水分散体における懸濁安定性が向上して、機能性食品素材等の水不溶性成分の沈降防止効果を達成することができる。本発明のセルロース複合体の配合比は、セルロースと陰イオン性多糖類が70〜99質量部/1〜30質量部がより好ましく、80〜99質量部/1〜20質量部さらに好ましく、85〜99質量部/1〜15質量部が特に好ましい。なお、セルロースと陰イオン性多糖類の配合量は、それぞれ水分を含まない状態の重量に基づくものとする。
<炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度>
イオンが高濃度配合されている飲料中において、セルロース複合体が分散安定性を有し、かつ懸濁安定効果を発現するためには、純水100mlに炭酸水素ナトリウム0.45gを溶解させ、該セルロース複合体を1質量%含む溶液としたときの粘度が10mPa・s以上とすべきである。この粘度は以下の方法によって測定することが出来る。
あらかじめ純水100mlに炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を0.45g溶解した水溶液中に、セルロース複合体を1質量%(重量と水分量を測定して、水分を含まない状態のセルロース複合体の重量に換算した値に基づく。)を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて分散し、分散液を調製して25℃の環境で静置する。次に、得られた分散液について、静置後1時間経過した時点で、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒静置後に、30秒間回転させて粘度を測定する。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。
この粘度の値が高いほどセルロース複合体の懸濁安定性が優れるため、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは30mPa・s以上であり、さらに好ましくは70m Pa・s以上であり、特に好ましくは100m Pa・s以上であり、最も好ましくは110mPa・s以上である。粘度の上限は、懸濁安定化させるべき飲料の飲み口の観点から、500mPa・s以下であることが好ましい。
<セルロース複合体の貯蔵弾性率>
次に、本発明のセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)について説明する。本発明のセルロース複合体は、セルロース複合体を1質量%含むpH6〜7のすべての範囲の水分散体において貯蔵弾性率(G’)が0.40Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率とは、水分散体のレオロジー的な弾性を表現するものであり、セルロースと陰イオン性多糖類との複合化、又はセルロースと陰イオン性多糖類及びその他水溶性ガムとの複合化の程度を表すものである。貯蔵弾性率が高いほど、セルロースと陰イオン性多糖類との複合化、又はセルロースと陰イオン性多糖類及びその他水溶性ガムとの複合化が促進され、セルロース複合体の水分散体におけるネットワーク構造が、剛直であることを意味する。ネットワーク構造が剛直なほど、セルロース複合体の懸濁安定性に優れる。
本発明において、貯蔵弾性率は、セルロース複合体を純水中に分散させた水分散体(pH6〜7)の動的粘弾性測定により得られる値とした。つまり、水分散体に歪みを与えた際の、セルロース複合体ネットワーク構造内部に蓄えられた応力を保持する弾性成分が貯蔵弾性率として表される。
貯蔵弾性率の測定方法としては、まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の水分散体を調製する。得られた水分散体を3日間室温で静置する。この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引、水分散体は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定する。本発明における貯蔵弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値のことである。この貯蔵弾性率の値が大きいほど、セルロース複合体が形成する水分散体の構造はより弾性的であり、セルロースと陰イオン性多糖類との複合化、又はセルロースと陰イオン性多糖類及びその他水溶性ガムが高度に複合化していることを表している。
セルロース複合体の貯蔵弾性率は、0.5Pa以上が好ましく、1.8Pa以上がより好ましく、3.5Pa以上がさらに好ましく、特に好ましくは4.5Pa以上である。
貯蔵弾性率の上限は、特に設定されるものではないが、飲料とした場合の飲みやすさを勘案すると、6.0Pa以下である。6.0Pa以下であると、懸濁安定性が充分に得られるセルロース複合体の添加量(飲料により異なるが、例えば、コーヒー、ココア、紅茶等の嗜好飲料、またはCa強化牛乳等の飲料では0.1〜1.0質量%)において、飲み口が軽いため好ましい。また、食感を調節するために、セルロース複合体の添加量が低い場合(例えば0.5質量%以下)でも、セルロース以外の水不溶成分と凝集等を生じにくい。
<セルロース複合体の炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率>
次に、本発明のセルロース複合体の炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率(G’)について説明する。本発明のセルロース複合体は、純水100mlに炭酸水素ナトリウム0.45gを溶解させ、該セルロース複合体を1質量%(c。)含む水分散体において貯蔵弾性率(G’)が0.40Pa以上であることが好ましい。
セルロース複合体の炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率の測定方法としては、純水にかえて純水100mlに炭酸水素ナトリウム0.45gを溶解させた水溶液を使用する以外は、前述の貯蔵弾性率の測定方法と同じである。
前記のとおり、セルロース複合体の炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は、0.4Pa以上が好ましいが、1.0Pa以上がより好ましく、1.7Pa以上がさらに好ましく、特に好ましくは2.1Pa以上である。
<チキソトロピー性>
次に、本発明におけるセルロース複合体のチキソトロピー性について説明する。チキソトロピーとは、一定の応力で攪拌し続けると構造が壊れ、時間と共に液体の粘度は下がっていくが、応力を取り除くと構造が回復し、時間の経過に伴い元の状態に戻る現象である。チキソトロピーとは、構造が回復するときには構造が壊れた時と異なった挙動(ヒステリシス)を示し、そのヒステリシスの面積が大きいほどチキソトロピーが大きいと言い、食感が良好である等、良好な特性を示す。
チキソトロピーの測定方法は、まず、セルロース複合体を高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、0.5質量%の純水分散体を調製する。得られた水分散体を3日間室温で静置する。この水分散体の、ずり速度を上下した時の応力を粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、最終せん断速度::200 s−1、ゾーン時間: 60s、試験前待ち時間: 600s、水分散体は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込む)により測定する。ヒステリシスの面積は、せん断速度(Shear Rate)が0→200[1/s](せん断速度を1ずつ上げ、最終は200(1/s)まで上げる)の時のせん断応力(stress[Pa])から、200→0[1/s](せん断速度を200から1ずつ下げ、最終は0(1/s)まで下げる)のせん断応力(stress[Pa])を求め、ループ面積(Pa/s)は台形則で求めた。
セルロース複合体のヒステリシスの面積は1500以上が好ましく、3300以上がより好ましく、さらに好ましくは4500以上である。上限は、特に設定されるものではないが、現実的な範囲として10000以下である。
<セルロース複合体のコロイド状セルロース複合体含有量>
本発明のセルロース複合体は、コロイド状セルロース複合体を50質量%以上含有することが好ましい。ここでいうコロイド状セルロース複合体含有量とは、セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みに残存する固形分(セルロースと、陰イオン性多糖類を含む。)の質量百分率のことである。コロイド状セルロース複合体の含有量が50質量%以上であると、懸濁安定性が向上する。好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。コロイド状セルロース複合体含有量は、多ければ多いほど、懸濁安定性が高いため、その上限は特に制限されないが、好ましい範囲としては、100質量%以下である。
<セルロース複合体の陰イオン性多糖類の広がり ”動的光散乱法によるメジアン径“>
本発明のセルロース複合体は、セルロース粒子表面から放射状に伸びた陰イオン性多糖類の広がりが大きいという特徴がある。この陰イオン性多糖類の広がりは、上述のコロイド状セルロース複合体における、動的光散乱法により測定されるメジアン径で表され、本発明のセルロース複合体については、このメジアン径は0.85μm以上であることが好ましい。
この動的光散乱法によるメジアン径は、以下の方法で測定することができる。まず、セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取する。この上澄み液を、50mL容量のPP製サンプル管に入れて、超音波洗浄器(アズワン製超音波洗浄器 商品名AUC−1L型)で10分間、超音波処理する。その後、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子(株)製 商品名「ELSZ−2」(バッチセル))により粒度分布(粒径値に対する散乱強度の度数分布)を測定する。ここでいうメジアン径とは、この度数分布における散乱強度の積算50%に対応する粒径値(μm)のことである。このメジアン径は大きいほど、セルロース複合体の懸濁安定性が優れるため、好ましくは1.5μm以上であり、より好ましくは2.0μm以上であり、さらに好ましくは2.5μm以上である。上限については、特に制限はないが、好ましくは5.0μm以下である。
<セルロース複合体の製造方法>
次に、本発明のセルロース複合体の製造方法を説明する。本発明のセルロース複合体は、セルロース、陰イオン性多糖類及び本発明の吸水性粒子を十分に混合してそれらの成分を複合化することにより得られる。しかしながら、本発明のセルロース複合体は、混練工程において、吸水性粒子の存在下でセルロースと陰イオン性多糖類に機械的せん断力をあたえ、セルロースを微細化させるとともに、セルロース表面に陰イオン性多糖類を複合化させることによって得ることが好ましい。また、その際に、陰イオン性多糖類以外の水溶性ガムや親水性物質、及び、その他の添加剤などを添加しても良い。上述の処理を経たものは、必要に応じ、乾燥される。本発明のセルロース複合体には、上述の機械的せん断を経て、未乾燥のもの及びその後乾燥されたもの等、いずれの形態でもよい。
機械的せん断力を与えるには、混練機等を用いて混練する方法を適用することができる。混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の複合化反応、摩擦等により発熱する場合にはこれを除熱しながら混練してもよい。これらの機種を単独で使用することも可能であるが、二種以上の機種を組み合わせて用いることも可能である。これらの機種は、種々の用途における粘性要求等により適宜選択すればよい。
ただし、混練温度は低いほど、陰イオン性多糖類の劣化が抑制され、結果として得られるセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)が高くなるため好ましい。混練温度は、0〜100℃が好ましく、90℃以下がより好ましく、70℃以下が特に好ましく、60℃以下がさらに好ましく、50℃以下が最も好ましい。高エネルギー下で上記の混練温度を維持するには、ジャケット冷却、放熱等の徐熱を工夫することも自由である。
前記のとおり、混練時の固形分は、本発明の吸水性粒子を添加することで、セルロース中に含まれる水分を吸水し、混練時の固形分を事実上高めることができる。混練時の固形分は、20質量%以上とすることが好ましい。混練物の粘性が高い半固形状態で混練することで、混練物が緩い状態にならず、下記に述べる混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ないパサパサな状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。さらに、固形分を上記範囲とするために、加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施しても良い。
ここで、混練エネルギーについて説明する。混練エネルギーとは混練物の単位質量当たりの電力量(Wh/kg)で定義するものである。混練エネルギーは、50Wh/kg以上とすることが好ましい。混練エネルギーが50Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が高く、セルロースと陰イオン性多糖類、又は、セルロース、陰イオン性多糖類、及びその他水溶性ガム等との複合化が促進され、中性のセルロース複合体の懸濁安定性は向上する。より好ましくは80Wh/kg以上であり、さらに好ましくは100Wh/kg以上であり、特に好ましくは200Wh/kg以上であり、一層好ましくは300W
h/kg以上であり、最も好ましくは400Wh/kg以上である。
混練エネルギーは、高い方が、複合化が促進されると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると、工業的に過大な設備となること、設備に過大な負荷がかかることから、混練エネルギーの上限は1000Wh/kgとするのが好ましい。
複合化の程度は、セルロースとその他の成分の水素結合の割合と考えられる。複合化が進むと、水素結合の割合が高くなり本発明の効果が向上する。また、複合化が進むことで、セルロース複合体に含まれるコロイド状セルロース複合体のメジアン径が大きくなる。
混練時における原料の投入方法はセルロースと陰イオン性多糖類及び吸水性粒子とを同時に投入し複合化させる方法、セルロースと吸水性粒子を混練し、セルロースの固形分を事実的に高めた後に陰イオン性多糖類を投入し複合化させる方法が挙げられるが、最も好ましくはセルロースと陰イオン性多糖類を複合化させた後に、吸水性粒子を投入し、全体の固形分を事実的に高めさらに複合化を進める方法である。また、上述の方法をそれぞれ多段階で行っても良い。
本発明のセルロース複合体を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合に
は、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。
乾燥後のセルロース複合体の含水率は1〜20質量%が好ましい。含水率を20%以下とすることで、べたつき、腐敗等の問題や運搬・輸送におけるコストの問題が生じにくくなる。より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。また、1%以上とすることで、過剰乾燥のため分散性が悪化することもない。より好ましくは1.5%以上である。
セルロース複合体を市場に流通させる場合、その形状は、粉体の方が取り扱い易いので、乾燥により得られたセルロース複合体を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、乾燥方法として噴霧乾燥を用いた場合は、乾燥と粉末化が同時にできるため、粉砕は必要ない。乾燥したセルロース複合体を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度(重量平均粒子径)としては10〜250μmとなるように粉砕することが好ましい。これらの乾燥粉末は、セルロース複合体の微粒子が凝集し、二次凝集体を形成しているものである。この二次凝集体は、水中で攪拌すると崩壊し、上述のセルロース複合体微粒子に分散する。二次凝集体の見かけの重量平均粒子径は、ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより得られた粒度分布における累積重量50%粒径のことである。
乾燥したセルロース複合体を水中で攪拌した際、容易に分散し、セルロースが均一に分散した、なめらかな組織を持つザラツキの無い安定なコロイド分散体が形成される。特に、中性において、セルロースが凝集や分離を起こさず、安定なコロイド分散体を形成するため、安定剤等として優れた機能を奏する。
<用途>
本発明のセルロース複合体は、種々の食品に使用できる。例を挙げると、コーヒー、紅茶、抹茶、ココア、汁粉、ジュース等の嗜好飲料、生乳、加工乳、乳酸菌飲料、豆乳等の乳性飲料、カルシウム強化飲料等の栄養強化飲料並びに食物繊維含有飲料等を含む各種の飲料類、アイスクリーム、アイスミルク、ソフトクリーム、ミルクシェーキ、シャーベット等の氷菓類、バター、チーズ、ヨーグルト、コーヒーホワイトナー、ホイッピングクリーム、カスタードクリーム、プリン等の乳製品類、マヨネーズ、マーガリン、スプレッド、ショートニング等の油脂加工食品類、各種のスープ、シチュー、ソース、タレ、ドレッ
シング等の調味料類、練りがらしに代表される各種練りスパイス、ジャム、フラワーペーストに代表される各種フィリング、各種のアン、ゼリーを含むゲル・ペースト状食品類、パン、麺、パスタ、ピザ、各種プレミックスを含むシリアル食品類、キャンディー、クッキー、ビスケット、ホットケーキ、チョコレート、餅等を含む和・洋菓子類、蒲鉾、ハンペン等に代表される水産練り製品、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等に代表される畜産製品、クリームコロッケ、中華用アン、グラタン、ギョーザ等の各種の惣菜類、塩辛、カス漬等の珍味類、ペットフード類及び経管流動食類等である。
本発明のセルロース複合体は、これらの用途において、懸濁安定剤、乳化安定剤、増粘安定剤、泡安定剤、クラウディー剤、組織付与剤、流動性改善剤、保形剤、離水防止剤、生地改質剤、粉末化基剤、食物繊維基剤、油脂代替などの低カロリー化基剤として作用するものである。また、上記の食品がレトルト食品、粉末食品、冷凍食品、電子レンジ用食品等形態又は用時調製の加工手法が異なっていても本発明の効果は発揮される。特に、加熱環境、低pH環境、高塩濃度環境においても機能を発揮する点が、従来のセルロース系の素材と異なる。
本発明のセルロース複合体を食品に使用する場合、各食品の製造で一般に行われている方法と同様の機器を使用して、主原料の他、必要に応じて、香料、pH調整剤、増粘安定剤、塩類、糖類、油脂類、蛋白類、乳化剤、酸味料、色素等と配合して、混合、混練、撹拌、乳化、加熱等の操作を行えばよい。
特に、本発明のセルロース複合体は、ミネラルすなわちイオンが高濃度配合された媒体中でも安定に分散し貯蔵弾性率(G’)が高く、懸濁安定性に優れるため、特に、ミネラル分を多く含んだ流動食や飲料の懸濁安定材として好適である。
<セルロース複合体の添加方法>
飲食品に、本発明のセルロース複合体を添加する方法としては次の方法が挙げられる。主原料或いは着色料、香料、酸味料、増粘剤等の成分と同時に、本発明のセルロース複合体を水に分散させることにより添加できる。
また、セルロース複合体の乾燥粉末を、水系媒体に分散する場合には、セルロース複合体を一旦、水に分散した後、目的とする食品形態に添加する方が、セルロース複合体の懸濁安定性が向上するため好ましい。セルロース複合体が乾燥粉末の場合、水への分散方法としては、食品等の製造工程で通常使用される各種の分散機・乳化機・磨砕機等の混練機を使用して分散することができる。混練機の具体例としては、プロペラ攪拌機、高速ミキサー、ホモミキサー、カッター等の各種ミキサー、ボールミル、コロイドミル、ビーズミル、ライカイ機等のミル類、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等の高圧ホモジナイザー
に代表される分散機・乳化機、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクルトルーダー、タービュライザー等に代表される混練機等が使用できる。2種以上の混練機を組み合わせて使用してもかまわない。また、加温しながら行ったほうが分散は容易である。
<飲食品への添加量>
飲食品に対するセルロース複合体の添加量としては、特に制限はないが、例えば、コーヒー、ココア、牛乳等の飲料において、0.01質量%以上が好ましい。セルロース複合体の添加量を0.01質量%以上とすることで、分散、懸濁安定性が増し、乳化安定、離水防止の効果が優れる。より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。セルロース複合体の添加量を5質量%以下とすることで、凝集や分離を引き起こすこともなく、また、飲料の飲みやすさ(のど越し、舌のざらつき)の点からも5質量%以下が好ましい。
<不溶性成分>
本発明のセルロース複合体は、特に、水不溶性成分を含む中性の飲食品に好適である。水不溶性成分とは、水に溶けない成分のことで、本発明においては、10mmの目開きの篩を通過するものをいう。より好適には、5mmの篩いを通過するものであり、さらに好適には2mmの篩いを通過するものである。水不溶性成分は、中性において不安定となるが、本発明のセルロース複合体を添加することで、優れた懸濁安定性が得られる。
水不溶性成分としては、食物・飲料中のタンパクや、果実くず、乳酸菌飲料等に含有される乳酸菌、野菜果汁飲料中のパルプ分等、ミルクカルシウム、炭酸カルシウム、ベータグルカン、プロテイン(大豆タンパク、ミルクプロテイン、コラーゲン)、ウコン、レイシ等の水より比重が大きい機能性食品素材等、コエンザイムQ10等のユビデカレノン化合物、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、又はそのエステル等のオメガ3化合物、セラミド化合物等の水より比重が軽い機能性食品素材等が挙げられる。
上記した機能性食品素材は、飲料の一日摂取量と、素材の効果効能にもよるが、飲料に対して、0.01質量%以上添加することが、好ましい。より好ましくは、0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
<天然濃厚流動食>
本発明のセルロース複合体は、流動食にも好適である。ここでいう流動食とは、一般に天然濃厚流動食と呼ばれるもので、天然食品をベースにミネラルや食物繊維、ビタミン類を追加し、1mlあたり1kcal以上に調整された主に乳児、あるいは成人の重体疾患者向けの流動性のある食物のことである。このような天然濃厚流動食では、高濃度の天然食品をベースに作られているため残渣が発生しやすく、その残渣が沈殿し、その結果流動食がチューブを通過しにくくなるといった問題や、成分中に含まれるミネラルとたんぱく質が流動食の加熱殺菌時に反応して凝集物が発生する問題が生じやすく、本発明のセルロース複合体を添加することで、これらの課題が解消され、安定な天然濃厚流動食が得られるものであり、加熱殺菌時の凝集物の発生を抑えることができる。
<熱中症対策飲料>
本発明のセルロース複合体は、通常の飲料物と比較してミネラルが高濃度配合された熱中症対策飲料にも好適である。厚生労働省は夏の熱中症患者が増加する時期は、100mlあたりナトリウムが40〜80mg配合された経口保水液を20〜30分毎にカップ1〜2杯摂取することが望ましいとしている。上述のナトリウムの配合条件を満たすコーヒー、紅茶、抹茶、ココア、汁粉、ジュース等の嗜好飲料、生乳、加工乳、乳酸菌飲料、豆乳等の乳性飲料はイオン状態で存在するナトリウムと成分中のたんぱく質等が反応し凝集物が発生ししてしまう。また、安定剤を配合し凝集物の発生を防ごうとしても一般的にミネラル分が高濃度になると、安定剤が不安定化し、安定剤自身が沈殿してしまい、その結果たんぱく質等の水不溶成分の沈降が発生する問題が生じるが、本発明のセルロース複合体を添加することで、これらの課題が解消され、安定な熱中症対策飲料が得られるものである。
<食品以外の用途>
本発明のセルロース複合体は、コロイド分散性が著しく向上したものであり、食品以外にも、シロップ剤、液剤、及び軟膏等の医薬品、並びに、化粧水、乳液、洗浄剤等の化粧品、食品用・工業用洗浄剤及び処理剤原料、家庭用(衣料、台所、住居、食器等)洗剤原料、塗料、顔料、セラミックス、水系ラテックス、乳化(重合)用、農薬用、繊維加工用(精錬剤、染色助剤、柔軟剤、撥水剤)、防汚加工剤、コンクリート用混和剤、印刷インキ用、潤滑油用、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、分散剤、及び脱墨剤等の工業製品が用途として挙げることができる。その中でも、特に、構成成分が高濃度のイオン状態で存在する組成物において、凝集や分離、離水、沈降を発生させることなく、安定な分散状態を保持することが可能である。また、安定剤としての性能が著しく向上するとともに、その滑らかな舌ざわりとボディ感によりザラツキの問題が解消されるため、上記に記載した以外の幅広い食品用途で使用することも可能である。
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
<セルロースの平均重合度測定法>
セルロースの平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定した。
<カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)の粘度>
(1)CMC−Naの粉末を、1質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散し、水溶液を調製した。
(2)得られた水溶液について、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度に応じて最適なものを使用した。
<カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)の置換度>
(1)試料(無水物)0.5gを精密にはかり、ろ紙に包んで磁性ルツボ中で灰化した。
(2)冷却した後、これを500mLビーカーに移し、水約250mLと、0.05M硫酸35mLを加えて30分間煮沸した。これを冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加えて、過剰の酸を0.1M水酸化カリウムで逆滴定して、以下の式で算出した。
A=((af−bf1)/試料無水物(g))−アルカリ度(又は+酸度)
置換度=(162xA)/(10000−80A)
ここで、
A:試料1g中のアルカリに消費された0.05Mの硫酸の量(mL)
a:0.05M硫酸の使用量(mL)
f:0.05M硫酸の力価
b:0.1M水酸化カリウムの滴定量(mL)
f1:0.1M水酸化カリウムの力価
162:グルコースの分子量
80:CHCOONa−Hの分子量
アルカリ度(又は酸度)の測定法:試料(無水物)1gを300mLフラ
スコに精密に測りとり、水約200mLを加えて溶かした。これに0.05M
硫酸5mLを加え、10分間煮沸した後、冷却し、フェノールフタレイン指
示薬を加え、0.1M水酸化カリウムで滴定した(SmL)。同時に空試験
を行い(BmL)、次の式で算出した。
アルカリ度=((B−S)xf)/試料無水物(g)
ここで、f:0.1M水酸化カリウムの力価である。(B−S)xfの値
が、(−)の時には、酸度とした。
<吸水性粒子の飽和吸水量>
飽和吸水量は吸油量JIS K5101に記載の吸油量の測定法に準じ、油の代わりに蒸留水を用いて測定した。終点は全体が一つの塊状になった後に、離水し始める点とした。
<セルロースの粒子形状(L/D)>
セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1質量%に純水で希釈し、スポイトを使用し、マイカ上に1滴キャストした。エアダスターにて、余剰の水分を吹き飛ばし、風乾し、サンプルを調製した。原子間力顕微鏡(装置Digital Instruments社製 Nano ScopeIV MM、スキャナーEV、測定モードTapping、プローブNCH型シリコン単結晶プローブ)で計測された画像を基に、長径(L
)が2μm以下の粒子の形状から、長径(L)と短径(D)のを求め、その比(L/D)がセルロース粒子の形状であり、100〜150個の粒子の平均値として算出した。
<セルロース複合体の貯蔵弾性率>
(1)セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%濃度の純水分散体を調製した。得られた水分散体を3日間室温で静置した。
(2)この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、ひずみを1→794%の範囲で掃引)により測定した。本発明において、貯蔵弾性率(G’)は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値を用いた。
<セルロース複合体の炭酸水素ナトリウム水溶液中における貯蔵弾性率>
(1)あらかじめ純水100mlに炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を0.45g溶解した水溶液中に、セルロース複合体を1質量%(重量と水分量を測定して、水分を含まない状態のセルロース複合体の重量に換算した値に基づく。)を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて分散させ、1.0質量%の分散体を調製した。得られた水分散体を3日間室温で静置した。
(2)この分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引)により測定した。本発明において、貯蔵弾性率(G’)は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値を用いた。
<セルロース複合体のコロイド状セルロース複合体含有量>
(1)セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散した。
(2)この分散液を、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m/sで45分間遠心処理する。)した。
(3)遠心後の上澄みは、ガラス製秤量ビンに導入し、60℃で15時間、その後、105℃で2時間乾燥し、デシケータ内で恒量した後、重量を測定した。また、別途、未遠心の水分散体も同様に乾燥し、重量を測定した。それらの結果から、上澄みに残存するセルロース固形分の質量百分率を以下の式から求めた。コロイド状セルロース複合体含有量の計算式:(上澄み50gの固形分)/(未遠心50g中の固形分)×100
<コロイド状セルロース複合体の動的光散乱法によるメジアン径>
(1)セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散され、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取した。
(2)この上澄み液を、50mL容量のPP製サンプル管に入れて、超音波洗浄器(アズワン製 超音波洗浄器 商品名AUC−1L型)で10分間、超音波処理した。
(3)その後、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子(株)製 商品名「ELSZ−2」(バッチセル))により粒度分布(粒径値に対する散乱強度の度数分布)を測定した。ここでいうメジアン径とは、この度数分布における散乱強度の積算50%に対応する粒径値(μm)のことである。
<チキソトロピー性>
(1)チキソトロピーの測定方法は、まず、セルロース複合体を高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、0.5質量%の純水分散体を調製した。得られた水分散体を3日間室温で静置した。
(2)この水分散体の、ずり速度を上下した時の応力を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、最終せん断速度::200 s−1、ゾーン時間: 60s、試験前待ち時間: 600s)により測定した。ヒステリシスの面積は、せん断速度(Shear Rate)が0→200[1/s](せん断速度を1ずつ上げ、最終は200(1/s)まで上げる)の時のせん断応力(stress[Pa])から、200→0[1/s](せん断速度を200から1ずつ下げ、最終は0(1/s)まで下げる)のせん断応力(stress[Pa])を求め、ループ面積(Pa/s)は台形則で求めた。
<炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度>
(1)あらかじめ純水100mlに炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を0.45g溶解した水溶液中に、セルロース複合体を1質量%(重量と水分量を測定して、水分を含まない状態のセルロース複合体の重量に換算した値に基づく。)を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて分散させ、1.0質量%の分散体を調製した。
(2)得られたに分散体について、分散1時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度によって最適なものを使用した。
(実施例1)
市販溶解用パルプ(DPパルプ)を裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、セルロース(以下MCC)/CMC−Na/CMC−Caの質量比(重量と水分量を測定して、水分を含まない状態の成分の重量に換算した値に基づく)が84/15.5/0.5となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Aを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、40Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。
得られたセルロース複合化物Aの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、0.7Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.4Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は68%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.5μmであり、チキソトロピー性は640であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は10mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例2)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が84/14/2.0となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Bを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、50Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。
得られたセルロース複合体Bの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は1.7Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は1.0Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は73%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.7μmであり、チキソトロピー性は1560であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は30mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例3)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が84/13.5/2.5となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Cを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、70Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。
得られたセルロース複合体Cの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、2.9Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は1.7Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は76%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.8μmであり、チキソトロピー性は2660であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は70mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例4)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が84/13/3となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Dを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、90Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜60℃であった。
得られたセルロース複合体Dの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、3.4Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は2.0Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は79%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.8μmであり、チキソトロピー性は3120であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は100mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例5)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が84/12/4となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Eを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、100Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜60℃であった。
得られたセルロース複合化物Eの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、3.6Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は2.1Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は82%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.8μmであり、チキソトロピー性は3300であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は110mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例6)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が84/8/8となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Fを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、150Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して40〜70℃であった。
得られたセルロース複合体Fの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、4.5Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は1.3Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は77%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は3.0μmであり、チキソトロピー性は4130であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は40mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例7)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が84/1/15となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Gを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、170Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して40〜70℃であった。
得られたセルロース複合体Gの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、0.8Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.4Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は60%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.6μmであり、チキソトロピー性は730であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は12mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例8)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が50/37.5/12.5となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Hを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、70Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。
得られたセルロース複合体Hの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、0.9Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.5Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は63%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.5μmであり、チキソトロピー性は825であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は50mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例9)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が98/1.5/0.5となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体I得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、120Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して40〜70℃であった。
得られたセルロース複合体意Iの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、0.7Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.4Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は51%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.5μmであり、チキソトロピー性は660であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は14mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例10)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のヒドロキシリン酸架橋でんぷん(1gあたりの吸水量3g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/ヒドロキシリン酸架橋でんぷんの質量比が84/12/4となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Jを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、80Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して30〜50℃であった。
得られたセルロース複合体Jの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、3.0Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は1.8Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は80%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.6μmであり、チキソトロピー性は2750であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は85mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例11)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のクロスカルメロースナトリウム(1gあたりの吸水量6.5g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/クロスカルメロースナトリウムの質量比が84/12/4となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Kを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、110Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜70℃であった。
得られたセルロース複合体Kの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、3.8Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は2.2Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は80%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.8μmであり、チキソトロピー性は3500であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は120mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例12)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のアルギン酸カルシウム(1gあたりの吸水量3.2g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/アルギン酸カルシウムの質量比が84/12/4となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Lを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、80h/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して30〜60℃であった。
得られたセルロース複合体Lの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、3.1Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は1.8Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は76%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.3μmであり、チキソトロピー性は2840であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は88mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例13)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(1%溶解液の粘度250mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が84/12/4となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Mを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、80Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。
得られたセルロース複合体Mの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、2.7Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は1.6Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は79%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.5μmであり、チキソトロピー性は2475であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は65mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例14)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販CMC−Na(2%溶解液の粘度11mPa・s、エーテル化度0.7〜0.8)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が84/12/4となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Nを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、90Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜60℃であった。
得られたセルロース複合体Nの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、3.3Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は1.9Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は77%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.6μmであり、チキソトロピー性は3030であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は90mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例15)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、市販キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ(株)ビストップD−3000)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/キサンタンガム/CMC−Caの質量比が84/12/4となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Oを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、60Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜50℃であった。
得られたセルロース複合体Oの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、1.5Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.9Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は61%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.0μmであり、チキソトロピー性は1375であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は50mPa・sであった。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例と同様の操作で市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が84/15.6/0.4となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Pを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、30Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜30℃であった。
得られたセルロース複合体Pの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、0.5Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.3Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は64%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は0.9μmであり、チキソトロピー性は460であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は7mPa・sであった。結果を表1に示す。
(比較例2)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)と市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が83/1/16となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Qを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、190Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して40〜80℃であった。
得られたセルロース複合体Qの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、0.6Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.3Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は48%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は0.6μmであり、チキソトロピー性は550であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は5mPa・sであった。結果を表1に示す。
(比較例3)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)と市販のアルギン酸プロピレングリコールエステル(以下PGA)(1gあたりの吸水量3g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/PGAの質量比が84/12/4となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Rを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、70Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。
得られたセルロース複合体Rの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、1.1Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.5Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は79%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.1μmであり、チキソトロピー性は1000であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は20mPa・sであった。結果を表1に示す。
(比較例4)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)と市販のジェランガム(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製ネイティブジェランガム ケルコゲルLT−100)(1gあたりの吸水量24g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/ジェランガムの質量比が84/12/4となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Sを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、250Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して50〜90℃であった。
得られたセルロース複合体Sの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、6.4Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は3.7Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は61%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.7μmであり、チキソトロピー性は5900であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は210mPa・sであった。結果を表1に示す。
(比較例5)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)と市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が49/38/13となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Tを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、60Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。
得られたセルロース複合体Tの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、0.7Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.3Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は62%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.2μmであり、チキソトロピー性は710であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は7mPa・sであった。結果を表1に示す。
(比較例6)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、CMC−Na(1%溶解液の粘度55mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)と市販のCMC−Ca(1gあたりの吸水量6g)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、MCC/CMC−Na/CMC−Caの質量比が99.5/0.38/0.13となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Uを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、100Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して40〜80℃であった。
得られたセルロース複合体Uの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、0.5Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.2Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は45%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.3μmであり、チキソトロピー性は460であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は3mPa・sであった。結果を表1に示す。
(比較例7)
市販KPパルプを使用し、セルロースの加水分解を行い、次に、ウェットケーキ状のセルロース(平均重合度は220)と、A成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度620mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度25mPa・s、エーテル化度1.0〜1.3)を用意し、MCC/CMC−Na(A成分+B成分)の質量比が90/10(CMC−Naの構成:A成分/B成分=40/60)となるように投入し、固形分45質量%となるように加水し、実施例1と同様に混練し、セルロース複合体Vを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、100Wh/kgであった。混練温度は、ジャケット冷却の調整で行われ、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜60℃であった。
得られたセルロース複合体Vの粒子L/Dは1.6であった。貯蔵弾性率(G’)は、2.5Paであり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の貯蔵弾性率は0.1Paであり、コロイド状セルロース複合体含有量は72であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.2μmであり、チキソトロピー性は2300であり、炭酸水素ナトリウム水溶液中の粘度は3mPa・sであった。結果を表1に示す。
(実施例、比較例:イオン高濃度配合濃厚流動食)
上記の実施例、比較例により得られたセルロース複合体A〜Vを使用し、以下の操作によりイオン高濃度配合濃厚流動食を作製し、評価を行った。
大豆油を46.0g、乳化剤レシチン3.45g、さらに70℃の温めたイオン交換水を加え1852.29gにした。その後、TKホモミキサ(特殊機化工業製Model MarkII、7000rpm×3分 at60℃)にて混合分散を行い、その後、カゼインNa28.75g、大豆蛋白86.25g、デキストリン299.0gをあらかじめ混合しておいたものを加えプロペラで攪拌(700rpm×20秒)し、その後ミネラル分として炭酸水素ナトリウム8.40g、リン酸水素二カリウム9.22g、炭酸カルシウム6.88g、炭酸マグネシウム4.00g、クエン酸アンモニウム0.15g、乾燥酵母(亜鉛)0.46gとセルロース複合体4.60gを加え全量を2300gとしてTKホモミキサ(7000rpm×1分 at70℃)にて混合分散した後に、ピストン型ホモジナイザーにて均質化処理(50MPa)行い、250ml耐熱瓶に充填し、イオン高濃度配合濃厚流動食を得た。その後、加熱熱殺菌(121℃、15分)し、水道水で1時間冷却した後、容器を上下に10回軽く振盪した後、40℃の雰囲気にて1ヶ月間静置保存し、目視にて外観を観察した。評価方法は以下の通り、得られた結果は、表1に示した。
<懸濁安定性:飲食品の外観観察>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)において、以下の4項目に関し、基準を定め、目視により判定した。
(分離)耐熱ビン入り飲料上部の色が薄い層の体積で評価した。
◎(優):分離なし、○(良):分離10%未満、△(可):分離30%未満、×(不可):分離30%以上
(沈降)耐熱ビン入り飲料底面の堆積物の量で評価した。
◎(優):沈降なし、○(良):部分的に薄く沈降、△(可):一面に薄く沈降、×(不可):全体的に濃く沈降
(凝集)耐熱ビン入り飲料全体において、不均一な部分の量で評価した。
◎(優):均一、○(良):僅かに一部不均一、△(可):一部不均一、×(不可):全体的に不均一
<食感>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):のど越しが軽く、適度なボディがある。
○(良):のど越しに、やや糊状感がある。
△(可):のど越しが重く糊状感がある。
×(不可):のど越しがよいが、水くさく感じる。又はのど越しが重く、強い糊状感がある。
Figure 2015074736
Figure 2015074736
Figure 2015074736
Figure 2015074736
本発明のセルロース複合体を、高イオン強度の飲食品に添加することで、成分の分離や凝集、沈降の発生を抑制し、懸濁安定させることができる。また、本発明のセルロース複合体は、懸濁安定性に優れるため、通常のココア、コーヒー、紅茶、牛乳等の成分が配合飲料に有用である。さらに、これらの飲料に、機能性食品素材等の水不溶性成分を含有する飲食品において、優れた懸濁安定性を示すため、有用である。

Claims (8)

  1. セルロース、化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類、及び化学的架橋構造を有する化合物からなる吸水性粒子を含むセルロース複合体であって、
    純水100mlに炭酸水素ナトリウム0.45gを溶解させた水溶液に、該セルロース複合体を1質量%分散させたときの粘度が10mPa・s以上であるセルロース複合体。
  2. 前記吸水性粒子の飽和吸水量が3ml/g以上である請求項1に記載のセルロース複合体。
  3. 前記吸水性粒子の含有量が0.5〜15質量%である請求項1又は2に記載のセルロース複合体。
  4. 前記化学的架橋構造を有する化合物がカルボキシメチルセルロースカルシウムである請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース複合体。
  5. 前記セルロース/前記化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類の配合比が、50〜99質量部/1〜50質量部である請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース複合体。
  6. 前記セルロース、前記化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類、及び前記化学的架橋構造を有する化合物からなる吸水性粒子を複合化する工程を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロース複合体を製造する方法。
  7. セルロース、及び化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類を含むセルロース複合体を製造する方法において、化学的架橋構造を有する化合物からなる吸水性粒子の存在下で前記セルロースと前記化学的架橋構造を有さない陰イオン性多糖類とを複合化する工程を含むセルロース複合体の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロース複合体を含む、食品、工業製品又は医薬品。
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