以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、排気ガスを浄化するための排気ガス浄化用触媒として、主成分としてのZrO2と、La2O3と、Y2O3とを含有するZrLaY複合酸化物にRhを担持した排気ガス浄化用触媒材(図面又は表では、Rh/ZrLaYOと表すことがある)を触媒担体基材上に形成した触媒層に含ませたものを用いた。
排気ガス浄化用触媒材として、主成分としてのZrO2と、La2O3と、Y2O3とを含有するZrLaY複合酸化物にRhを担持したRh担持ZrLaY複合酸化物においてLa2O3含有率とY2O3含有率とをそれぞれ変化させたもの、具体的には14種類のRh担持ZrLaY複合酸化物を実施例として用い、排気ガス浄化性能を評価した。
また、主成分としてのZrO2と、La2O3とを含有するZrLa複合酸化物にRhを担持したRh担持ZrLa複合酸化物(図面又は表では、Rh/ZrLaOと表すことがある)においてLa2O3含有率を変化させたもの、具体的には3種類のRh担持ZrLa複合酸化物と、主成分としてのZrO2と、Y2O3とを含有するZrY複合酸化物にRhを担持したRh担持ZrY複合酸化物(図面又は表では、Rh/ZrYOと表すことがある)においてY2O3含有率を変化させたもの、具体的には3種類のRh担持ZrY複合酸化物とを比較例として用い、これらについても排気ガス浄化性能を評価した。
<触媒材の調製>
実施例において、排気ガス浄化用触媒材としてのRh担持ZrLaY複合酸化物を調製する際には先ず、Zr、La及びYの各硝酸塩を混合し、水を加えて室温で約1時間撹拌する。次に、この硝酸塩混合溶液とアルカリ性溶液(好ましくは28%アンモニア水)とを室温から80℃の温度で混合して中和処理をする。そして、中和処理により白濁した溶液を一昼夜放置した上で、遠心分離器により沈殿物を分離させ、上澄み液を除去して得られたケーキを十分に水洗し、水洗後のケーキを約150℃の温度で乾燥させ、その後に500℃の温度に5時間保持して加熱焼成し、粉砕してZrLaY複合酸化物の粉末を得た。
次に、得られたZrLaY複合酸化物の粉末に対して、硝酸ロジウム溶液を加えて混合し、混合後に蒸発乾固させる。蒸発乾固後に、得られた乾固物を粉砕し、大気中で加熱焼成することにより、ZrLaY複合酸化物にRhを担持したRh担持ZrLaY複合酸化物を得た。
比較例では、排気ガス浄化用触媒材としてのRh担持ZrLa複合酸化物の調製として、実施例に係るRh担持ZrLaY複合酸化物の調製におけるZr、La及びYの各硝酸塩を混合することに代えてZr及びLaの各硝酸塩を混合すること以外は同様にして行うことができ、かかる調製によってZrLa複合酸化物にRhを担持したRh担持ZrLa複合酸化物を得た。
また、排気ガス浄化用触媒材としてのRh担持ZrY複合酸化物の調製として、実施例に係るRh担持ZrLaY複合酸化物の調製におけるZr、La及びYの各硝酸塩を混合することに代えてZr及びYの各硝酸塩を混合すること以外は同様にして行うことができ、かかる調製によってZrY複合酸化物にRhを担持したRh担持ZrY複合酸化物を得た。
<触媒層の形成>
次に、排気ガス浄化性能を評価するために、実施例に係るRh担持ZrLaY複合酸化物、比較例に係るRh担持ZrLa複合酸化物及びRh担持ZrY複合酸化物をそれぞれ触媒担体基材としてのハニカム担体にコーティングし、ハニカム担体基材上に触媒層を形成する。
実施例では、Rh担持ZrLaY複合酸化物とバインダーとしての硝酸ジルコニルと水とを混合してスラリーを調製し、該スラリーにハニカム担体を浸漬させ、その後に引き上げて余分なスラリーをエアブローにより吹き飛ばし、乾燥させてハニカム担体上にRh担持ZrLaY複合酸化物を含む触媒層を形成する。ハニカム担体に所定量の触媒層が形成されるまでスラリーへの浸漬、エアブロー及び乾燥を繰り返し、所定量の触媒層が形成されると、ハニカム担体を500℃の温度に保持して加熱焼成し、ハニカム担体上にRh担持ZrLaY複合酸化物を含む触媒層を形成した。
比較例についても、実施例に係るRh担持ZrLaY複合酸化物を含む触媒層の形成においてRh担持ZrLaY複合酸化物に代えてRh担持ZrLa複合酸化物又はRh担持ZrY複合酸化物を用いること以外は同様にして行うことができ、かかる方法によって、ハニカム担体上にRh担持ZrLa複合酸化物を含む触媒層及びRh担持ZrY複合酸化物を含む触媒層をそれぞれ形成した。なお、実施例及び比較例では、触媒材が異なること以外は同様の条件で行った。
図1は、実施例及び比較例として用いたRh担持ZrLaY複合酸化物、Rh担持ZrLa複合酸化物及びRh担持ZrY複合酸化物の酸化物含有率を示す図である。図1に示すように、実施例1から実施例6では、ZrLaY複合酸化物においてLa2O3含有率を略一定(6質量%から7質量%)にしてY2O3含有率を変化させ、実施例4及び実施例7から実施例10では、ZrLaY複合酸化物においてY2O3含有率を一定(10質量%)にしてLa2O3含有率を変化させ、実施例1、実施例11及び実施例12では、ZrLaY複合酸化物においてY2O3含有率を一定(2質量%)にしてLa2O3含有率を変化させ、実施例13及び実施例14では、ZrLaY複合酸化物においてY2O3含有率を一定(20質量%)にしてLa2O3含有率を変化させた。
また、図1に示すように、比較例1、比較例3及び比較例4では、ZrLa複合酸化物においてLa2O3含有率を変化させ、比較例2、比較例5及び比較例6では、ZrY複合酸化物においてY2O3含有率を変化させた。
<排気ガス浄化性能評価>
次に、Rh担持ZrLaY複合酸化物、Rh担持ZrLa複合酸化物及びRh担持ZrY複合酸化物を含む触媒層をそれぞれ形成したハニカム担体を大気雰囲気中で1000℃の温度に24時間保持するエージングを行った後に、直径2.54cm、長さ50mmの円筒状に切り出した。なお、ハニカム担体は、セル密度が3.5mil/600cpsiのものを用いた。
そして、このハニカム担体を固定床流通式反応評価装置に取り付けて、モデルガスを流し、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を測定した。ライトオフ温度は、モデルガスのガス温度を常温から漸次上昇させ、HC、CO及びNOxの浄化率が50%に達したときのガス温度である。
モデルガスのガス組成を以下の表1に示す。モデルガスは、理論空燃比A/F=14.7のメインストリームガスを定常的に流しつつ、表1に示した所定量の変動用ガスを周期1Hzで変動させ、A/Fを±0.9の振幅で強制的に振動させた。モデルガスはまた、空間速度SVを60000/時間とし、その昇温速度を30℃/分とした。
図1にはまた、実施例及び比較例として用いたRh担持ZrLaY複合酸化物、Rh担持ZrLa複合酸化物及びRh担持ZrY複合酸化物のライトオフ温度の測定結果を示している。図2は、Rh担持ZrLaY複合酸化物におけるY2O3含有率とライトオフ温度の測定結果との関係を示すグラフであり、図1に示す実施例1から実施例6及び比較例1のHC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度の測定結果を示している。
図1及び図2に示すように、HCの浄化に関するライトオフ温度について、Rh担持ZrLaY複合酸化物においてLa2O3含有率を略一定(6質量%から7質量%)にしてY2O3含有率を変化させた場合、Y2O3含有率が2質量%から15質量%であるRh担持ZrLaY複合酸化物(実施例1から実施例6)はいずれも、La2O3含有率が6質量%であるがY2O3含有率がゼロであるRh担持ZrLa複合酸化物(比較例1)に対して、HCの浄化に関するライトオフ温度が低下している。
CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度についてもそれぞれ、Rh担持ZrLaY複合酸化物においてLa2O3含有率を略一定(6質量%から7質量%)にしてY2O3含有率を変化させた場合、Y2O3含有率が2質量%から15質量%であるRh担持ZrLaY複合酸化物(実施例1から実施例6)はいずれも、La2O3含有率が6質量%であるがY2O3含有率がゼロであるRh担持ZrLa複合酸化物(比較例1)に対して、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低下している。
図1に示す実施例11、実施例7、実施例13及び比較例3のライトオフ温度の測定結果から分かるように、Rh担持ZrLaY複合酸化物においてLa2O3含有率を2質量%にしてY2O3含有率を変化させた場合においても、Y2O3含有率が2質量%から20質量%であるRh担持ZrLaY複合酸化物(実施例11、実施例7及び実施例13)はいずれも、La2O3含有率が2質量%であるがY2O3含有率がゼロであるRh担持ZrLa複合酸化物(比較例3)に対して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低下している。
また、図1に示す実施例12、実施例10、実施例14及び比較例4のライトオフ温度の測定結果から分かるように、Rh担持ZrLaY複合酸化物においてLa2O3含有率を10質量%にしてY2O3含有率を変化させた場合においても、Y2O3含有率が2質量%から20質量%であるRh担持ZrLaY複合酸化物(実施例12、実施例10及び実施例14)はいずれも、La2O3含有率が10質量%であるがY2O3含有率がゼロであるRh担持ZrLa複合酸化物(比較例4)に対して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低下している。
このように、主成分としてのZrO2とLa2O3とY2O3とを含有するZrLaY複合酸化物にRhを担持したRh担持ZrLaY複合酸化物を排気ガス浄化用触媒材として用いることで、Rh担持ZrLa複合酸化物を排気ガス浄化用触媒材として用いる場合に比して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を低下させることができ、排気ガス浄化性能を向上させることができる。
また、図3は、Rh担持ZrLaY複合酸化物におけるLa2O3含有率とライトオフ温度の測定結果との関係を示すグラフであり、図1に示す実施例4、実施例7から実施例10及び比較例2のHC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度の測定結果を示している。
図1及び図3に示すように、HCの浄化に関するライトオフ温度について、Rh担持ZrLaY複合酸化物においてY2O3含有率を一定(10質量%)にしてLa2O3含有率を変化させた場合、La2O3含有率が2質量%から10質量%であるRh担持ZrLaY複合酸化物(実施例4及び実施例7から実施例10)はいずれも、Y2O3含有率が10質量%であるがLa2O3含有率がゼロであるRh担持ZrY複合酸化物(比較例2)に対して、HCの浄化に関するライトオフ温度が低下している。
CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度についてもそれぞれ、Rh担持ZrLaY複合酸化物においてY2O3含有率を一定(10質量%)にしてLa2O3含有率を変化させた場合、La2O3含有率が2質量%から10質量%であるRh担持ZrLaY複合酸化物(実施例4及び実施例7から実施例10)はいずれも、Y2O3含有率が10質量%であるがLa2O3含有率がゼロであるRh担持ZrY複合酸化物(比較例2)に対して、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低下している。
図1に示す実施例11、実施例1、実施例12及び比較例5のライトオフ温度の測定結果から分かるように、Rh担持ZrLaY複合酸化物においてY2O3含有率を2質量%にしてLa2O3含有率を変化させた場合においても、La2O3含有率が2質量%から10質量%であるRh担持ZrLaY複合酸化物(実施例11、実施例1及び実施例12)はいずれも、Y2O3含有率が2質量%であるがLa2O3含有率がゼロであるRh担持ZrY複合酸化物(比較例5)に対して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低下している。
また、図1に示す実施例13、実施例14及び比較例6のライトオフ温度の測定結果から分かるように、Rh担持ZrLaY複合酸化物においてY2O3含有率を20質量%にしてLa2O3含有率を変化させた場合においても、La2O3含有率が2質量%から10質量%であるRh担持ZrLaY複合酸化物(実施例13及び実施例14)はいずれも、Y2O3含有率が20質量%であるがLa2O3含有率がゼロであるRh担持ZrY複合酸化物(比較例6)に対して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低下している。
このように、主成分としてのZrO2とLa2O3とY2O3とを含有するZrLaY複合酸化物にRhを担持したRh担持ZrLaY複合酸化物を排気ガス浄化用触媒材として用いることで、Rh担持ZrY複合酸化物を排気ガス浄化用触媒材として用いる場合に対しても、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度をそれぞれ低下させることができ、排気ガス浄化性能を向上させることができる。
図4は、実施例及び比較例として用いたRh担持ZrLaY複合酸化物、Rh担持ZrLa複合酸化物及びRh担持ZrY複合酸化物のLa2O3含有率とY2O3含有率とを示す図であり、図4では、実施例1から実施例14のRh担持ZrLaY複合酸化物をそれぞれW1からW14として白丸で表示し、比較例1、比較例3及び比較例4のRh担持ZrLa複合酸化物をそれぞれC1、C3及びC4として黒丸で表示し、比較例2、比較例5及び比較例6のRh担持ZrLa複合酸化物をそれぞれC2、C5及びC6として黒丸で表示している。
図4ではまた、実施例1から実施例14のRh担持ZrLaY酸化物において、La2O3含有率の最大値及び最小値の実施例をそれぞれ破線で繋ぐとともに、Y2O3含有率の最大値及び最小値の実施例をそれぞれ破線で繋いで表示しているが、この破線によって囲まれる領域内のY2O3含有率とLa2O3含有率とを有するRh担持ZrLaY酸化物では、Rh担持ZrLa複合酸化物及びRh担持ZrY複合酸化物に比して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を低下させることができ、排気ガス浄化性能を向上させることができる。
このように、主成分としてのZrO2と、2質量%以上10質量%以下のLa2O3と、2質量%以上20質量%以下のY2O3とを含有するZrLaY複合酸化物にRhを担持したRh担持ZrLaY複合酸化物を排気ガス浄化用触媒材として用いることで、Rh担持ZrLa複合酸化物を用いる場合に比して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を低下させることができ、排気ガス浄化性能を向上させることができる。
<BET比表面積の測定>
本実施形態ではまた、ライトオフ温度の測定による排気ガス浄化性能評価に加え、実施例4に用いたZrLaY複合酸化物、比較例1に用いたZrLa複合酸化物及び比較例2に用いたZrY複合酸化物について、フレッシュ時(エージング前)及びエージング後のBET比表面積をN2吸着法により測定した。また、Zrを含有するZr酸化物(ZrO2)についてもBET比表面積を測定した。なお、エージングは、2%O2、10%H2O及び残部N2の雰囲気において、1000℃の温度に24時間保持することにより行った。
ZrLaY複合酸化物、ZrLa複合酸化物、ZrY複合酸化物及びZr酸化物について、フレッシュ時(エージング前)及びエージング後のBET比表面積の測定結果を以下の表2に示す。表2では、ZrLaY複合酸化物、ZrLa複合酸化物、ZrY複合酸化物及びZr酸化物について各酸化物の含有率も示している。
表2に示すように、ZrLaY複合酸化物は、フレッシュ時にはZrLa複合酸化物に比してBET比表面積が小さいものの、エージング後にはZrLa複合酸化物に比してBET比表面積が大きくなっており、ZrLa複合酸化物よりも高温時における比表面積の低下が小さくなっている。
また、ZrLaY複合酸化物は、フレッシュ時及びエージング後にZrY複合酸化物に比してBET比表面積が大きく、且つZrY複合酸化物よりも高温時における比表面積の低下が小さくなっている。また、ZrLaY複合酸化物は、フレッシュ時及びエージング後にZr酸化物に比してBET比表面積が大きく、且つZr酸化物よりも高温時における比表面積の低下が小さくなっている。
このように、ZrLaY複合酸化物は、ZrLa複合酸化物、ZrY複合酸化物及びZr酸化物に比して高温時における比表面積の低下が小さく、ZrLaY複合酸化物にRhを担持した場合、ZrLa複合酸化物、ZrY複合酸化物及びZr酸化物にそれぞれRhを担持した場合に比して、Rhが凝集することを抑制することができ、触媒の耐熱性を向上させることができる。
本実施形態ではまた、触媒担体基材上にRhを含有するRh含有触媒層とPdを含有するPd含有触媒層を形成すると共にPd含有触媒層よりも排気ガス通路側にRh含有触媒層を形成した排気ガス浄化用触媒において、Rh含有触媒層にRh担持ZrLaY複合酸化物、具体的には主成分としてのZrO2と2質量%以上10質量%以下のL2O3と2質量%以上20質量%以下のY2O3とを含有するRh担持ZrLaY複合酸化物を含ませたものを用い、排気ガス浄化性能を評価した。
排気ガス浄化用触媒として、Rh含有触媒層である上側触媒層に、ZrCe系複合酸化物としてZrとCeとNdとを含有するZrCeNd複合酸化物にRhを担持したRh担持ZrCeNd複合酸化物と、前述した実施例5のRh担持ZrLaY複合酸化物と、触媒金属が担持されていないLa含有アルミナとを触媒成分として混合し、Pd含有触媒層である下側触媒層に、ZrCeNd複合酸化物にPdを担持したPd担持ZrCeNd複合酸化物と、LaアルミナにPdを担持したPd担持Laアルミナと、触媒金属が担持されていないZrCeNd複合酸化物とを触媒成分として混合したものを実施例5Aとして用い、排気ガス浄化性能を評価した。
また、実施例5Aの上側触媒層に含まれるRh担持ZrLaY複合酸化物の半分を、ZrとLaとを含有するZrLa複合酸化物を担持した活性アルミナにRhを担持させたものに代えたものを実施例5Bとして用い、排気ガス浄化性能を評価した。
一方、実施例5Aの上側触媒層に含まれるRh担持ZrLaY複合酸化物を全て、ZrとLaとを含有するZrLa複合酸化物を担持した活性アルミナにRhを担持させたものに代えたものを比較例5Aとして用い、これについても排気ガス浄化性能を評価した。
実施例5A、実施例5B及び比較例5Aとして用いた排気ガス浄化用触媒の上側触媒層及び下側触媒層の触媒成分を以下の表3に示す。表3では、Rh担持ZrCeNd複合酸化物をRh担持ZrCeNdOと表し、Rh担持ZrLaY複合酸化物をRh担持ZrLaYOと表し、Pd担持ZrCeNd複合酸化物をPd担持ZrCeNdOと表し、ZrLa複合酸化物を担持した活性アルミナにRhを担持させたものをRh担持ZrLaアルミナと表している。
排気ガス浄化性能の評価に用いた実施例5Aに係る排気ガス浄化用触媒の調製について説明する。
<下側触媒層の触媒材の調製>
ZrCeNd複合酸化物を調製する際には先ず、Zr、Ce及びNdの各硝酸塩を混合し、水を加えて室温で約1時間撹拌し、この硝酸塩混合溶液とアンモニア水とを混合して中和処理をする。そして、中和処理により白濁した溶液を一昼夜放置した上で、遠心分離器により沈殿物を分離させ、上澄み液を除去して得られたケーキを十分に水洗し、水洗後のケーキを約150℃の温度で乾燥させ、その後に500℃の温度に5時間保持して加熱焼成し、粉砕してZrCeNd複合酸化物の粉末を得た。ZrCeNd複合酸化物は、酸化物含有率(質量%)をZrO2/CeO2/Nd2O3=55/35/10に設定した。
また、Pd担持ZrCeNd複合酸化物を調製する際には先ず、ZrCeNd複合酸化物の粉末が、ZrCeNd複合酸化物の調製と同様にして得られるが、ZrCeNd複合酸化物は、酸化物含有率(質量%)をZrO2/CeO2/Nd2O3=67/23/10に設定した。次に、ZrLaY複合酸化物の粉末に対して、硝酸パラジウム溶液を加えて混合し、混合後に蒸発乾固させ、得られた乾固物を粉砕し、大気中で加熱焼成することにより、ZrCeNd複合酸化物にPdが担持されたPd担持ZrCeNd複合酸化物を得た。
Pd担持Laアルミナは、Laを4質量%添加してなる活性アルミナの粉末に、硝酸パラジウム溶液を滴下して、500℃の温度で加熱焼成することにより、Pd担持Laアルミナを得た。
<上側触媒層の触媒材の調製>
Rh担持ZrCeNd複合酸化物を調製する際には先ず、ZrCeNd複合酸化物の粉末が、下側触媒層のZrCeNd複合酸化物の調製と同様にして得られるが、ZrCeNd複合酸化物は、酸化物含有率(質量%)をZrO2/CeO2/Nd2O3=80/10/10に設定した。次に、ZrCeNd複合酸化物の粉末に対して、硝酸ロジウム溶液を加えて混合し、混合後に蒸発乾固させ、得られた乾固物を粉砕し、大気中で加熱焼成することにより、ZrCeNd複合酸化物にRhが担持されたRh担持ZrCeNd複合酸化物を得た。
また、Rh担持ZrLaY複合酸化物の調製については先ず、ZrLaY複合酸化物の粉末が、下側触媒層のZrCeNd複合酸化物の調製においてZr、Ce及びNdの各硝酸塩を混合することに代えてZr、La及びYの各硝酸塩を混合すること以外は同様にして得られる。ZrLaY複合酸化物は、酸化物含有率(質量%)をZrO2/La2O3/Y2O3=82/6/12に設定した。次に、ZrLaY複合酸化物の粉末に対して、硝酸ロジウム溶液を加えて混合し、混合後に蒸発乾固させ、得られた乾固物を粉砕し、大気中で加熱焼成することにより、ZrLaY複合酸化物にRhが担持されたRh担持ZrLaY複合酸化物を得た。
Laアルミナは、Laを4質量%添加してなる活性アルミナの粉末を用いた。
<下側触媒層の形成>
下側触媒層の触媒材の調製において得られたZrCeNd複合酸化物、Pd担持ZrCeNd複合酸化物及びPd担持Laアルミナとバインダーとしての硝酸ジルコニルと水とを混合してスラリーを調製し、該スラリーにハニカム担体を浸漬させ、その後に引き上げて余分なスラリーをエアブローにより吹き飛ばし、乾燥させてハニカム担体上に下側触媒層を形成する。ハニカム担体に所定量の下側触媒層が形成されるまでスラリーへの浸漬、エアブロー及び乾燥を繰り返し、所定量の下側触媒層が形成されると、ハニカム担体を500℃の温度に保持して加熱焼成し、ハニカム担体上に下側触媒層を形成した。
<上側触媒層の形成>
上側触媒層の触媒材の調製において得られたRh担持ZrCeNd複合酸化物、Rh担持ZrLaY複合酸化物及びLaアルミナとバインダーとしての硝酸ジルコニルと水とを混合してスラリーを調製し、該スラリーに実施例Aに係る下側触媒層を形成したハニカム担体を浸漬させ、その後に引き上げて余分なスラリーをエアブローにより吹き飛ばし、乾燥させてハニカム担体上に下側触媒層の上に上側触媒層を形成する。所定量の上側触媒層が形成されるまでスラリーへの浸漬、エアブロー及び乾燥を繰り返し、所定量の上側触媒層が形成されると、ハニカム担体を500℃の温度に保持して加熱焼成し、ハニカム担体上に下側触媒層の上に上側触媒層を形成した。
次に、実施例5Bに係る排気ガス浄化用触媒の調製について説明する。
<下側触媒層の触媒材の調製>
下側触媒層の触媒材の調製については、実施例Aの下側触媒層の触媒材の調製と同様にして行い、ZrCeNd複合酸化物、Pd担持ZrCeNd複合酸化物及びPd担持Laアルミナを得た。
<上側触媒層の触媒材の調製>
上側触媒層の触媒材の調製についても、実施例5Aの下側触媒層の触媒材の調製と同様にして行い、Rh担持ZrCeNd複合酸化物、Rh担持ZrLaY複合酸化物及びLaアルミナを得たが、Rh担持ZrLaY複合酸化物の粉末を1/2にした。また、実施例5Bでは、1/2にしたRh担持ZrLaY複合酸化物と同量のRh担持ZrLaアルミナを調製した。
Rh担持ZrLaアルミナは、ZrLa複合酸化物を担持した活性アルミナにRhを担持したものであり、Rh担持ZrLaアルミナの調製では先ず、Zr及びLaの各硝酸塩の混合溶液と活性アルミナ粉末とアンモニア水とを混合して中和処理をし、中和処理により白濁した溶液を一昼夜放置した上で、遠心分離器により沈殿物を分離させ、上澄み液を除去して得られたケーキを十分に水洗し、水洗後のケーキを約150℃の温度で乾燥させ、その後に500℃の温度に5時間保持して加熱焼成し、粉砕してZrLaアルミナの粉末を得た。
次に、得られたZrLaアルミナの粉末に対して、硝酸ロジウム溶液を加えて混合し、混合後に蒸発乾固させ、蒸発乾固後に、得られた乾固物を粉砕し、大気中で加熱焼成することにより、Rh担持ZrLaアルミナを得た。Rh担持ZrLaアルミナにおいて、ZrLaアルミナは、酸化物含有率(質量%)をZrO2/La2O3/Al2O3=38/2/60に設定した。
<下側触媒層の形成>
下側触媒層の形成については、実施例5Aの下側触媒層の形成と同様にして行い、ハニカム担体上に下側触媒層を形成した。
<上側触媒層の形成>
上側触媒層の形成については、実施例5Aの上側触媒層の形成において、スラリーの調製時にZrCeNd複合酸化物、Pd担持ZrCeNd複合酸化物、Rh担持ZrLaアルミナ及びPd担持Laアルミナと硝酸ジルコニルと水とを混合すること以外は同様にして行い、ハニカム担体上に下側触媒層の上に上側触媒層を形成した。
一方、比較例5Aに係る排気ガス浄化用触媒の調製では、実施例5Aに係る排気ガス浄化用触媒の調製においてRh担持ZrLaY複合酸化物の粉末に代えて、該Rh担持ZrLaY複合酸化物の粉末と同量のRh担持ZrLaアルミナが用いられること以外は、実施例5Aに係る排気ガス浄化用触媒の調製と同様にして行った。また、Rh担持ZrLaアルミナの調製は、実施例5Bに係るRh担持ZrLaアルミナの調製と同様にして行った。
このようにして得られた実施例5A、実施例5B及び比較例5Aのハニカム担体を大気雰囲気中で1000℃の温度に24時間保持するエージングを行った後に、直径2.54cm、長さ50mmの円筒状に切り出し、固定床流通式反応評価装置に取り付けて、モデルガスを流し、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を測定した。ライトオフ温度の測定は、前述した実施例1から実施例14及び比較例1から比較例6の場合と同様にして行った。
本実施形態では、実施例5Aにおいて、下側触媒層の触媒成分のハニカム担体への担持量を、Pd担持ZrCeNd複合酸化物は35g/L(Pd担持量は0.28g/L)、Pd担持Laアルミナは45.2(Pd担持量は4.42g/L)、ZrCeNd複合酸化物は10g/Lとし、上側触媒層の触媒成分のハニカム担体への担持量を、Rh担持ZrCeNd複合酸化物は90g/L(Rh担持量は0.2g/L)、Rh担持ZrLaY複合酸化物は30g/L(Rh担持量は0.1g/L)、Laアルミナは12.8g/Lとした。
前述したように、実施例5Bでは、実施例5Aにおいて、上側触媒層のRh担持ZrLaY複合酸化物の1/2をRh担持ZrLaアルミナに代え、比較例5Aでは、実施例5Aにおいて、上側触媒層のRh担持ZrLaY複合酸化物を全て同量のRh担持ZrLaアルミナに代えた。
実施例5A、実施例5B及び比較例5Aの排気ガス浄化用触媒について、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度の測定結果を以下の表4にそれぞれ示す。また、図5は、本発明の実施形態に係る排気ガス浄化用触媒のライトオフ温度の測定結果を示すグラフであり、実施例5A、実施例5B及び比較例5Aのライトオフ温度の測定結果をグラフとして表している。
表4及び図5に示すように、HCの浄化に関するライトオフ温度について、上側触媒層に所定量のRh担持ZrLaアルミナを含む比較例5Aに対して、比較例5AのRh担持ZrLaアルミナの1/2をRh担持ZrLaY複合酸化物に代えた実施例5BではHCの浄化に関するライトオフ温度が低下し、比較例5AのRh担持ZrLaアルミナを全てRh担持ZrLaY複合酸化物に代えた実施例5AではHCの浄化に関するライトオフ温度がさらに低下している。
COの浄化に関するライトオフ温度についても、上側触媒層に所定量のRh担持ZrLaアルミナを含む比較例5Aに対して、比較例5AのRh担持ZrLaアルミナの1/2をRh担持ZrLaY複合酸化物に代えた実施例5BではCOの浄化に関するライトオフ温度が低下し、比較例5AのRh担持ZrLaアルミナを全てRh担持ZrLaY複合酸化物に代えた実施例5AではCOの浄化に関するライトオフ温度がさらに低下している。
また、NOxの浄化に関するライトオフ温度についても、上側触媒層に所定量のRh担持ZrLaアルミナを含む比較例5Aに対して、比較例5AのRh担持ZrLaアルミナの1/2をRh担持ZrLaY複合酸化物に代えた実施例5BではNOxの浄化に関するライトオフ温度が低下し、比較例5AのRh担持ZrLaアルミナを全てRh担持ZrLaY複合酸化物に代えた実施例5AではNOxの浄化に関するライトオフ温度がさらに低下している。
これらの結果から、ZrLa複合酸化物にRhが担持されたアルミナにRhを担持した触媒成分を含む排気ガス浄化用触媒材において、前記触媒成分の少なくとも一部をZrLaY複合酸化物にRhを担持した触媒成分に代えることで、Rhの一部がアルミナと固溶してRhが失活することを抑制することができると共に、ZrLa複合酸化物よりも高温時における比表面積の低下が小さいZrLaY複合酸化物によってRhが失活することを抑制することができ、排気ガスの浄化性能を向上させることができる。即ち、当該ZrLaY複合酸化物はZrLa複合酸化物よりも高温時における比表面積の低下が小さい、換言すれば、ZrLaY複合酸化物が凝集し難いことにより、当該ZrLaY複合酸化物表面でのRhの分散度が維持し易くなり、熱エージングを経た後の浄化性能がZrLa複合酸化物を用いた場合よりも向上する。
また、排気ガス浄化用触媒材に、ZrとCeとを含有するZrCe系複合酸化物が含まれ、該ZrCe系複合酸化物にRhが担持されていることにより、Rhを介して酸素をZrCe系複合酸化物内部に取り込み、且つ、取り込んだ酸素を酸素濃度の低い部分に送り出すことができ、前記効果をさらに有効に奏することができる。
実施例5A及び実施例5Bの排気ガス浄化用触媒では、上側触媒層に前述した実施例5のRh担持ZrLaY複合酸化物を含んでいるが、実施例1〜実施例14のRh担持ZrLaY複合酸化物など、主成分としてのZrO2と、2質量%以上10質量%以下のLa2O3と、2質量%以上20質量%以下のY2O3とを含有するZrLaY複合酸化物にRhが担持されたRh担持ZrLaY複合酸化物を含むようにしてもよい。
かかる場合においても、Rhの一部がアルミナと固溶してRhが失活することを抑制することができると共に、ZrLa複合酸化物よりも高温時における比表面積の低下が小さいZrLaY複合酸化物によってRhが失活することを抑制することができ、排気ガスの浄化性能を向上させることができる。
本実施形態ではまた、Rh担持ZrLaY複合酸化物とRh担持ZrLaアルミナとを含む排気ガス浄化用触媒において、Rh担持ZrLaY複合酸化物及びRh担持ZrLaアルミナにそれぞれ担持させるRh担持量の割合を変化させて排気ガス浄化性能を評価した。
ここで、排気ガス浄化用触媒として、前述した実施例5Bのように、Rh担持ZrLaY複合酸化物とRh担持ZrLaアルミナとを混合させたものを用いるのは、ライトオフ性能に加えて、高温浄化性能を考慮したためである。
ライトオフ浄化性能及び高温浄化性能については、Rh担持ZrLaY複合酸化物のみを用いた排気ガス浄化用触媒をサンプルAとし、サンプルAのRh担持ZrLaY複合酸化物の半分をRh担持ZrLaアルミナに代えた排気ガス浄化用触媒をサンプルBとし、サンプルAのRh担持ZrLaY複合酸化物を全てRh担持ZrLaアルミナに代えたものをサンプルCとし、排気ガス浄化性能をそれぞれ評価した。
排気ガス浄化性能の評価については、エージングとして、大気雰囲気中で900℃の温度に50時間保持するエージングを行うこと以外は、前述した実施例1〜14及び比較例1〜6と同様にして行い、ライトオフ浄化性能及び高温浄化性能を評価した。高温浄化性能についてはモデルガスのガス温度が400℃であるときのHC、CO及びNOxの排気ガス浄化率によって評価した。
サンプルA及びサンプルBでは、酸化物含有量(質量%)をZrO2/La2O3/Y2O3=82/6/12に設定したZrLaY複合酸化物からなるRh担持ZrLaY複合酸化物を使用し、サンプルB及びサンプルCでは、酸化物含有率(質量%)をZrO2/La2O3/Al2O3=38/2/60に設定したZrLaアルミナからなるRh担持ZrLaアルミナを使用した。サンプルA、サンプルB及びサンプルCのRh担持量はそれぞれ合計1.0g/Lに設定した。
サンプルA、サンプルB及びサンプルCの排気ガス浄化用触媒について、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度の測定結果を以下の表5に示し、400℃におけるHC、CO及びNOxの浄化率についての測定結果を以下の表6に示す。表5及び表6では、Rh担持ZrLaY複合酸化物をRh/ZrLaYOと表し、Rh担持ZrLaアルミナをRh/ZrLa−Al2O3と表している。
表5に示すように、サンプルAは、サンプルCに比べて、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低くなっており、Rh担持ZrLaY複合酸化物を含む排気ガス浄化用触媒は、Rh担持ZrLaアルミナを含む排気ガス浄化用触媒に比して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を低下させることができることが分かる。
一方、表6に示すように、サンプルCは、サンプルAに比べて、400℃におけるHC、CO及びNOxの排気ガス浄化率がそれぞれ高くなっており、Rh担持ZrLaアルミナを含む排気ガス浄化用触媒は、Rh担持ZrLaY複合酸化物を含む排気ガス浄化用触媒に比して、400℃におけるHC、CO及びNOxの排気ガス浄化率を高めることができることが分かる。
これらの結果から、サンプルAは、サンプルCに比べて、ライトオフ浄化性能に優れているものの高温浄化性能が劣っていることから、サンプルBのように、Rh担持ZrLaY複合酸化物とRh担持ZrLaアルミナとを含む排気ガス浄化用触媒を用いることで、ライトオフ浄化性能及び高温浄化性能を両立させることができる。
本実施形態ではまた、Rh担持ZrLaY複合酸化物とRh担持ZrLaアルミナとについて、スチームリフォーミング反応の活性を調べた。スチームリフォーミング反応の活性については、ZrY複合酸化物にRhが担持されたRh担持ZrY複合酸化物、及びZr酸化物としてのZrO2にRhが担持されたRh担持Zr酸化物についても同様に調べた。
スチームリフォーミング反応の活性については、Rh担持ZrLaY複合酸化物、Rh担持ZrLaアルミナ、Rh担持ZrY複合酸化物及びRh担持Zr酸化物を含む触媒層をそれぞれ形成したハニカム担体を用い、エージングを行った後に、固定床流通式反応評価装置に取り付けて、モデルガスを昇温させながら流して反応活性を調べた。
モデルガスのガス組成を以下の表7に示す。表7に示したモデルガスを、ガス供給量を26/Lとし、昇温速度30℃/分で昇温させながら各触媒層を形成したハニカム担体に供給し、プロピレンの変換率を測定した。モデルガスに含まれるプロピレンは、以下の化学式(1)によって示されるスチームリフォーミング反応によって一酸化炭素及び水素に変換される。
図6は、Rh担持ZrLaY複合酸化物、Rh担持ZrLaアルミナ、Rh担持ZrY複合酸化物及びRh担持Zr酸化物のスチームリフォーミング反応におけるプロピレン変換率を示すグラフである。図6に示すように、Rh担持ZrLaY複合酸化物及びRh担持ZrLaアルミナは、Rh担持ZrY複合酸化物及びRh担持Zr酸化物に比して、スチームリフォーミング反応活性が高くなっている。
本実施形態ではまた、スチームリフォーミング反応活性が高いRh担持ZrLaY複合酸化物及びRh担持ZrLaアルミナについてそれぞれ、X線光電子分光法(XPS)を用いてRhの状態を調べた。ZrLa複合酸化物にRhが担持されたRh担持ZrLa複合酸化物及びZr酸化物としてZrO2にRhが担持されたRh担持Zr酸化物についても同様に、X線光電子分光法を用いてRhの状態を調べた。
図7は、Rh担持ZrLaY複合酸化物、Rh担持ZrLaアルミナ、Rh担持ZrLa複合酸化物及びRh担持Zr酸化物におけるRhの状態を示すXPS分析結果を示すグラフである。図7に示すように、Rh担持ZrLaY複合酸化物及びRh担持ZrLaアルミナでは、結合エネルギー約307eVにピークを有しており、Rhは金属状態に維持されていることが分かる。一方、Rh担持ZrLa複合酸化物及びRh担持Zr酸化物では、結合エネルギー約307eVにピークがなく、酸化状態を示す方向にピークがずれており、酸化状態に維持されていることが分かる。
これらの結果から、Rh担持ZrLaY複合酸化物及びRh担持ZrLaアルミナは、Rh担持ZrY複合酸化物及びRh担持Zr酸化物に比して炭化水素のスチームリフォーミング反応を促進させ、生成した一酸化炭素及び水素によってNOxの還元浄化を促進させることができると共に、Rhが酸化状態ではなく金属状態に維持されて、排気ガス性能を高温まで維持できることが分かる。
このように、本実施形態では、ライトオフ性能及び高温浄化性能を考慮して、Rh担持ZrLaY複合酸化物とRh担持ZrLaアルミナとを含む排気ガス浄化用触媒において、Rh担持ZrLaY複合酸化物及びRh担持ZrLaアルミナにそれぞれ担持させるRh担持量の割合を変化させて排気ガス浄化性能を評価した。
排気ガス浄化用触媒として、前述した実施例5Bと同様に、Rh含有触媒層である上側触媒層に、Rh担持ZrCeNd複合酸化物と、前述した実施例4のRh担持ZrLaY複合酸化物と、触媒金属が担持されていないLa含有アルミナとを触媒成分として混合し、Pd含有触媒層である下側触媒層に、Pd担持ZrCeNd複合酸化物と、Pd担持Laアルミナと、触媒金属が担持されていないZrCeNd複合酸化物とを触媒成分として混合したものを実施例4A、4Bとして用い、排気ガス浄化性能を評価した。
実施例4A及び実施例4Bでは、ZrLaY複合酸化物は、酸化物含有率(質量%)をZrO2/La2O3/Y2O3=84/6/10に設定したこと以外は、前述した実施例5Bと同様のものを用い、実施例4Aでは、Rh担持ZrLaアルミナにおけるRh担持量がRh担持ZrLaY複合酸化物におけるRh担持量よりも大きく設定し、実施例4Bでは、Rh担持ZrLaアルミナにおけるRh担持量がRh担持ZrLaY複合酸化物におけるRh担持量と同量に設定した。実施例4A及び実施例4Bではまた、Rh担持ZrCeNd複合酸化物におけるRh担持量は、Rh担持ZrLaアルミナにおけるRh担持量及びRh担持ZrLaY複合酸化物におけるRh担持量よりも大きく設定した。
具体的には、実施例4A及び実施例4Bでは、Rh担持量をそれぞれ合計0.3g/Lに設定し、実施例4Aでは、Rh担持ZrCeNd複合酸化物、Rh担持ZrLaアルミナ及びRh担持ZrLaY複合酸化物におけるRh担持量をそれぞれ0.25g/L(0.278wt%)、0.03g/L(0.2wt%)及び0.02g/L(0.132wt%)に設定し、実施例4Bでは、Rh担持ZrCeNd複合酸化物、Rh担持ZrLaアルミナ及びRh担持ZrLaY複合酸化物におけるRh担持量をそれぞれ0.225g/L(0.25wt%)、0.0375g/L(0.25wt%)及び0.0375g/L(0.25wt%)に設定したこと以外は、同様に設定した。
実施例4A及び実施例4Bとして用いた排気ガス浄化用触媒の上側触媒層及び下側触媒層の触媒成分を以下の表8に示す。表8では、Rh担持ZrCeNd複合酸化物をRh/ZrCeNdOと表し、Rh担持ZrLaアルミナをRh/ZrLa−Al2O3と表し、Rh担持ZrLaY複合酸化物をRh/ZrLaYOと表し、LaアルミナをLa−Al2O3と表し、Pd担持ZrCeNd複合酸化物をPd/ZrCeNdOと表し、Pd担持LaアルミナをPd/La−Al2O3と表し、ZrCeNd複合酸化物をZrCeNdOと表している。
排気ガス浄化性能の評価に用いた実施例4A及び実施例4Bに係る排気ガス浄化用触媒の調製については、前述した実施例5Bと同様にして調製し、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度についても同様して測定した。
図8は、実施例として用いた排気ガス浄化用触媒の各触媒成分のRh担持量とライトオフ温度の測定結果とを示す図である。図8に示すように、実施例4Aは、実施例4Bに比して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低下している。
このように、Rh担持ZrLaY複合酸化物とRh担持ZrLaアルミナとを含む排気ガス浄化用触媒において、Rh担持ZrLaアルミナのRh担持量を、Rh担持ZrLaY複合酸化物のRh担持量よりも大きくすることで、Rh担持ZrLaY複合酸化物のRh担持量と同一若しくはそれよりも小さくする場合に比して、触媒の低温活性を向上させることができる。
また、排気ガス浄化用触媒に、Rh担持ZrCe系複合酸化物が含まれ、Rh担持ZrCe系複合酸化物のRh担持量を、Rh担持ZrLaアルミナのRh担持量よりも大きくすることにより、Rhを介して酸素をZrCe系複合酸化物内部に取り込み、且つ、取り込んだ酸素を酸素濃度の低い部分に送り出すことができるので、HC及びCOの酸化を部分的に促進させることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
実施例11、12、13、14の複合酸化物についても、実施例4と同様に、Rh含有触媒層である上側触媒層に、Rh担持ZrCeNd複合酸化物と、前述した実施例11、12、13、14のRh担持ZrLaY複合酸化物と、触媒金属が担持されていないLa含有アルミナとを触媒成分として混合し、Pd含有触媒層である下側触媒層に、Pd担持ZrCeNd複合酸化物と、Pd担持Laアルミナと、触媒金属が担持されていないZrCeNd複合酸化物とを触媒成分として混合したものをそれぞれ実施例11A、11B、12A、12B、13A、13B、14A、14Bとして用い、排気ガス浄化性能を評価した。
ZrLaY複合酸化物について、実施例11A及び実施例11Bでは酸化物含有率(質量%)をZrO2/La2O3/Y2O3=96/2/2に設定し、実施例12A及び実施例12Bでは酸化物含有率(質量%)をZrO2/La2O3/Y2O3=88/10/2に設定し、実施例13A及び実施例13Bでは酸化物含有率(質量%)をZrO2/La2O3/Y2O3=78/2/20に設定し、実施例14A及び実施例14Bでは酸化物含有率(質量%)をZrO2/La2O3/Y2O3=70/10/20に設定したこと以外は、実施例11A〜14A、実施例11B〜14Bではそれぞれ、前述した実施例4A、4Bとそれぞれ同様のものを用い、それぞれ同量に設定した。
実施例11A〜14Aでは、Rh担持ZrCeNd複合酸化物、Rh担持ZrLaアルミナ及びRh担持ZrLaY複合酸化物におけるRh担持量をそれぞれ0.25g/L(0.278wt%)、0.03g/L(0.2wt%)及び0.02g/L(0.132wt%)に設定し、実施例11B〜14Bでは、Rh担持ZrCeNd複合酸化物、Rh担持ZrLaアルミナ及びRh担持ZrLaY複合酸化物におけるRh担持量をそれぞれ0.225g/L(0.25wt%)、0.0375g/L(0.25wt%)及び0.0375g/L(0.25wt%)に設定した。
図8に示すように、実施例11Aは、実施例11Bに比して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低下している。実施例12A、13A、14Aについてもそれぞれ、実施例12B、13B、14Bに比して、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度がそれぞれ低下している。
このように、Rh担持ZrLaY複合酸化物とRh担持ZrLaアルミナとを含む排気ガス浄化用触媒において、Rh担持ZrLaアルミナのRh担持量を、Rh担持ZrLaY複合酸化物のRh担持量よりも大きくすることで、Rh担持ZrLaY複合酸化物のRh担持量と同一若しくはそれよりも小さくする場合に比して、触媒の低温活性を向上させることができる。
本実施形態では、Rh担持ZrLaY複合酸化物として実施例4、11、12、13、14を用いているが、実施例1〜実施例14のRh担持ZrLaY複合酸化物など、主成分としてのZrO2と、2質量%以上10質量%以下のLa2O3と、2質量%以上20質量%以下のY2O3とを含有するZrLaY複合酸化物にRhが担持されたRh担持ZrLaY複合酸化物を用いる場合においても、Rh担持ZrLaアルミナにおけるRh担持量がRh担持ZrLaY複合酸化物におけるRh担持量よりも大きく設定することで、Rh担持ZrLaアルミナにおけるRh担持量がRh担持ZrLaY複合酸化物におけるRh担持量と同量若しくはそれ以下に設定する場合に比して、触媒の低温活性を向上させることができる。
このように、本実施形態では、主成分としてのZrO2と、2質量%以上10質量%以下のLa2O3と、2質量%以上20質量%以下のY2O3とを含有するZrLaY複合酸化物にRhが担持されてなるRh担持ZrLaY複合酸化物と、ZrとLaとを含有するZrLa複合酸化物が担持された活性アルミナにRhが担持されてなるRh担持ZrLa−活性アルミナとを含む排気ガス浄化用触媒材を採用することで、ZrLa複合酸化物が担持されたアルミナにRhを担持した触媒成分を含む排気ガス浄化用触媒材において、前記触媒成分の少なくとも一部をZrLaY複合酸化物にRhを担持した触媒成分に代えた場合に、Rhの一部がアルミナと固溶してRhが失活することを抑制することができると共に、ZrLa複合酸化物よりも高温時における比表面積の低下が小さいZrLaY複合酸化物によってRhが失活することを抑制することができ、排気ガスの浄化性能を向上させることができる。即ち、当該ZrLaY複合酸化物はZrLa複合酸化物よりも高温時における比表面積の低下が小さい、換言すれば、ZrLaY複合酸化物が凝集し難いことにより、当該ZrLaY複合酸化物表面でのRhの分散度が維持し易くなり、熱エージングを経た後の浄化性能がZrLa複合酸化物を用いた場合よりも向上する。
また、排気ガス浄化用触媒材において、Rh担持ZrLaアルミナのRh担持量を、Rh担持ZrLaY複合酸化物のRh担持量よりも大きくすることで、Rh担持ZrLaY複合酸化物のRh担持量と同一若しくはそれよりも小さくする場合に比して、触媒の低温活性を向上させることができる。Rh担持ZrLaアルミナは、Rh担持ZrLaY複合酸化物に比して、炭化水素のスチームリフォーミング反応を促進させることができるので、生成した一酸化炭素及び水素によってNOxの還元浄化を促進させることができ、前記効果を有効に奏することができる。
更に、排気ガス浄化用触媒材に、ZrとCeとを含有するZrCe系複合酸化物にRhが担持されてなるRh担持ZrCe系複合酸化物が含まれていることにより、Rhを介して酸素をZrCe系複合酸化物内部に取り込み、且つ、取り込んだ酸素を酸素濃度の低い部分に送り出すことができるので、HC及びCOの酸化を部分的に促進させることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
また更に、Rh担持ZrCe系複合酸化物のRh担持量を、Rh担持ZrLa−活性アルミナのRh担持量よりも大きくすることにより、前記効果を有効に得ることができる。
また更に、触媒担体基材上にRhを含有する触媒層の他にPdを含有する触媒層が形成され、Rhを含有する触媒層は、Pdを含有する触媒層よりも排気ガス通路側に形成されていることにより、Rhを含有する触媒層とPdを含有する触媒層を設けることで、前記効果を有効に奏することができる。
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。