JP2015065758A - 圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】トルク脈動を低減させる回転電機を備える圧縮機を提供する。【解決手段】第1回転子8Aと、第1回転子8A異なるトルク脈動特性を有する第2回転子8Bと、固定子9と、からなる回転電機10を備えることを特徴とする圧縮機Sである。また、第2回転子8Bは、高速回転時における第1回転子8Aの振れ回りを低減するようなトルク脈動特性を有する。また、第1回転子8Aおよび第2回転子8Bは、永久磁石が埋め込まれ、第1回転子8Aの永久磁石と、第2回転子8Bの永久磁石とは、駆動電流波形が界磁の位相差を有するように配置される。【選択図】図1

Description

本発明は、圧縮機に関し、特に、圧縮機の回転電機(電動機、モータ)に関する。
圧縮機に搭載する電動機の低騒音化の方法として、特許文献1(特開2013−27150号公報)が開示されている。この特許文献1には、「電動機の低騒音化の方法としては、ロータ外周部に凹部を設け磁束の変化を緩和させるものが提案されているが、磁石端面部も凹部としているため、磁石幅が制限され、磁束量が減少しトルクが低下してしまう」と記載されている(要約参照)。
また、特許文献2(特開2004−270654号公報)が開示されている。この特許文献2には、「運転中に発生する作動媒体の圧縮反力により生じていたアンバランス状態を解消して、騒音及び振動の発生を抑制することができる回転型圧縮機」が記載されている(要約参照)。
特開2013−27150号公報 特開2004−270654号公報
特許文献1の電動機は、回転子に多極によるフェライト磁石を有して、磁石の厚さに制限がある場合でも、低騒音で高トルク出力可能な電動機とすることができる。
しかしながら、特許文献1の電動機は、モータ単体として、限られた運転範囲(回転速度、トルク)においては高効率とすることができるが、モータを他の構成と組み合わせて用いた場合、例えば、特許文献1の電動機をスクロール圧縮機に搭載した場合、限られた運転範囲(回転速度、トルク)から外れた領域で運転すると、効率が低下し、トルク出力も低下し、回転子の振動もトルク脈動などによって振れ回るおそれがある。
また、特許文献2の圧縮機は、バランスウェイトを設けることにより、圧縮機運転中に発生する圧縮反力が原因で生じていた動的アンバランス状態を抑制することができる。
しかしながら、特許文献2の圧縮機は、バランスウェイトを設けることにより、回転子のシャフト(クランク軸)に掛かる荷重が大きくなるため、圧縮機の軸負荷である始動トルクが増大する。この始動トルクは、圧縮機構部が冷媒を圧縮する際に必要とする圧縮反力のトルクに対して余分なトルクとなるため、始動トルクが増大すると電動機の消費エネルギ(電力)に対する効率が低下し、圧縮機の消費エネルギ(電力)に対する効率が低下する。また、バランスウェイトを設けることにより圧縮機が大型化する。加えて、始動トルクが増大するため、回転力を発生する回転電機10も大型化し、回転電機10の放熱機構を含めた圧縮機全体が大型化する。
また、余分なトルクとなるバランスウェイトの荷重は、高回転速度・過負荷運転時においても、必要トルク(圧縮反力のトルク)以上の余分なトルクを加算した状態で運転することとなる。このため、回転子の振れ回りによるトルク脈動も増大するため、トルク対回転速度の圧縮機運転範囲が狭い範囲に制限されることも考えられる。
そこで、本発明は、トルク脈動を低減させる回転電機を備える圧縮機を提供することを課題とする。
このような課題を解決するために、本発明に係る圧縮機は、第1回転子と、前記第1回転子とは異なるトルク脈動特性を有する第2回転子と、固定子と、からなる回転電機を備えることを特徴とする。
本発明によれば、トルク脈動を低減させる回転電機を備える圧縮機を提供することができる。
本実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。 回転電機の分解斜視図である。 回転電機の断面図である。 回転子、固定子、回転子の各永久磁石の関係を示す部分拡大図である。 回転子、固定子、回転子の各永久磁石の関係を示す部分拡大図であり、図4とは、回転子を反転して配置したものである。 主なる回転子の永久磁石と従なる回転子の永久磁石との配置関係を軸方向にみた図である。 主なる回転子の永久磁石と従なる回転子の永久磁石との配置関係を軸方向にみた図である。 主なる回転子の永久磁石と従なる回転子の永久磁石との配置関係を軸方向にみた図である。 主なる回転子の永久磁石と従なる回転子の永久磁石との配置関係を軸方向にみた図である。 回転子の各角度区分における磁極の組み合わせと、回転子の磁極比と、低温条件および高温条件における磁束に対するトルク脈動率と、の関係を示す表である。 第1実施形態に係る回転電機の断面模式図である。 第2実施形態に係る回転電機の断面模式図である。 第3実施形態に係る回転電機の断面模式図である。 第4実施形態に係る回転電機の断面模式図である。 第5実施形態に係る回転電機の断面模式図である。 第6実施形態に係る回転電機の断面模式図である。 本実施形態に係るスクロール圧縮機のトルク(トルク脈動)を示すグラフである。 振動周波数と音圧レベルとの関係を示すグラフである。 第1変形例に係る回転電機の回転子の分解斜視図である。 第2変形例に係る回転電機の回転子の分解斜視図である。 比較例に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。 比較例の回転電機の低速低負荷回転時の断面図である。 比較例の回転電機の高速高負荷運転時の断面図である。 比較例に係るスクロール圧縮機のトルク(トルク脈動)を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
≪スクロール圧縮機≫
本実施形態に係るスクロール圧縮機Sについて、比較例に係るスクロール圧縮機Sx(図21参照)と対比しつつ、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るスクロール圧縮機Sの縦断面図である。図21は、比較例に係るスクロール圧縮機Sxの縦断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、密閉容器1と、旋回スクロール2、固定スクロール3およびフレーム4からなる圧縮機構部5と、クランク軸6と、オルダムリング7と、回転子8(主なる回転子8A,従なる回転子8B)および固定子9からなる回転電機10と、主軸受11と、下軸受12と、を備えている。
本実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、密閉容器1内の上部に圧縮機構部5が配置され、密閉容器1内の下部に回転電機10が配置される密閉型の圧縮機である。
圧縮機構部5は、旋回ラップ2aを有する旋回スクロール2と、固定ラップ3aを有する固定スクロール3と、固定スクロール3にボルト等で締結され旋回スクロール2を支持するフレーム4と、を備えて構成されている。
旋回スクロール2は、台板から上面側に渦巻状の旋回ラップ2aが立設され、下面側にはクランク軸6の偏心部6bが嵌合する旋回軸受2bが設けられている。固定スクロール3は、台板から下面側に旋回ラップ2aと互いにかみ合う固定ラップ3aが立設されている。旋回スクロール2は、固定スクロール3と相対向して旋回自在に配置されており、両者によって、吸込室と圧縮室が形成されている。
フレーム4は、その外周側が溶接によって密閉容器1の内壁面に固定されており、クランク軸6の主軸6aを回転自在に支持する主軸受11を備えている。また、旋回スクロール2とフレーム4との間には、背圧室(中間圧室)が形成されている。
オルダムリング7は、旋回スクロール2の下面側とフレーム4の間に配置されており、旋回スクロール2の下面側に形成された溝とフレーム4に形成された溝に装着されている。オルダムリング7は、クランク軸6の偏心部6bの偏心回転を受けて、旋回スクロール2を自転することなく公転運動をさせる働きをする。
回転電機10は、回転子8および固定子9を備えている。固定子9は、密閉容器1に圧入、溶接等により固定されている。回転子8は、固定子9内に回転可能に配置されている。また、回転子8にはクランク軸6(主軸6a)が固定されている。
クランク軸6は、前記のように主軸6aと偏心部6bとを備えて構成されている。クランク軸6の主軸6aは、上側がフレーム4に設けた主軸受11で支持され、下側が下軸受12で支持されている。クランク軸6の偏心部6bは、主軸6aに対して偏心して一体に形成されており、旋回スクロール2の背面に設けた旋回軸受2bに嵌合されている。回転電機10を駆動して主軸6aを回転させると、偏心部6bは主軸6aに対して偏心回転運動し、旋回スクロール2を旋回運動させるようになっている。
回転電機10を駆動してクランク軸6を回転させ旋回スクロール2を旋回運動させると、ガス冷媒は、吸込管1aから吸込室を通り、旋回スクロール2および固定スクロール3により形成される圧縮室に導かれる。そして、圧縮室のガス冷媒は、旋回スクロール2と固定スクロール3との間で中心方向に移動するにしたがって容積を縮小して圧縮される。圧縮されたガス冷媒は、固定スクロール3の吐出ポートから密閉容器1内の空間である吐出圧室に吐出され、吐出管1bを通って、外部へと流出していく。
これに対し、図21に示すように、比較例に係るスクロール圧縮機Sxは、密閉容器1と、旋回スクロール2、固定スクロール3およびフレーム4からなる圧縮機構部5と、クランク軸6と、オルダムリング7と、回転子8xおよび固定子9xからなる回転電機10xと、主軸受11と、下軸受12と、バランスウェイト13A,13Bと、を備えている。
このように、本実施形態に係るスクロール圧縮機S(図1参照)は、比較例に係るスクロール圧縮機Sx(図21参照)と比較して、回転電機10,10xの構成が異なっている。即ち、比較例に係るスクロール圧縮機Sx(図21参照)の回転電機10xの回転子8xは、1つの回転子で構成されている。これに対し、本実施形態に係るスクロール圧縮機S(図1参照)の回転電機10の回転子8は、主なる回転子8Aと、主なる回転子8Aが受ける(または、発生する)トルク脈動とは異なるトルク脈動特性を有する従なる回転子8Bと、で構成されている。なお、主なる回転子8Aおよび従なる回転子8Bについての詳細は、後述する。
また、本実施形態に係るスクロール圧縮機S(図1参照)は、比較例に係るスクロール圧縮機Sx(図21参照)と比較して、バランスウェイト13A,13Bが省略されている。これにより、本実施形態に係るスクロール圧縮機S(図1参照)は、比較例に係るスクロール圧縮機Sx(図21参照)と比較して、スクロール圧縮機Sの全長(クランク軸6の回転軸方向長さ、図1の紙面において上下方向の長さ)を短くすることができ、小型の圧縮機とすることができる。また、クランク軸6の主軸6aの長さを短くすることができ、クランク軸6とともに回転する回転体の質量を低減することができるので、回転子8の振れ回りによるトルク脈動を低減させることができる。
≪回転電機≫
次に、本実施形態に係るスクロール圧縮機S(図1参照)が備える回転電機10について図2および図3を用いて説明する。図2は、回転電機10の分解斜視図である。図3は、回転電機10の断面図である。なお、図3は、回転電機10の回転軸方向を法線とする断面図である。なお、図2および図3において、回転電機10は、4極6スロットとして図示しているが、回転子8の磁極数および固定子9のスロット数はこれに限定されるものではない。
図2に示すように、回転電機10は、主なる回転子8Aと、従なる回転子8Bと、固定子9と、を備えている。そして、図2に示す回転電機10では、従なる回転子8Bとして、主なる回転子8Aの一方側(図1の上側、図2の手前側)に上部バランス用回転子8B1を備え、主なる回転子8Aの他方側(図1の下側、図2の奥側)に下部バランス用回転子8B2を備えている。なお、後述するように、従なる回転子8Bは、主なる回転子8Aの上下両方に備えていてもよく(図2および後述する図15から図16参照)、どちらか一方のみであってもよい(後述する図11から図14参照)。
回転電機10の回転子8および固定子9の構成について、図3を用いてさらに説明する。なお、ここでは、回転子8として、図2の従なる回転子8Bを例に説明する。
図3に示すように、回転電機10は、回転子8(従なる回転子8B(図1、図2参照))と、固定子9と、を備えている。なお、回転子8の中心位置P0と、固定子9の中心位置Q0は、同じ位置に配置される。
回転子8は、ロータコア81と、第1永久磁石82と、第2永久磁石83と、を備えている。また、ロータコア81には、永久磁石82,83が配置される磁石挿入孔と、リベット挿入孔84と、潤滑油孔85と、主軸挿入孔86が設けられている。
リベット挿入孔84は、積厚して構成されるロータコア81を固定するリベットが挿入される。リベットは、例えば、漏れ磁束の影響を受けにくい非磁性体材料、または、磁化されても漏れ磁束の影響が少ない材料やフェライト系の磁性体材料に挟まれていれば、磁束密度が低いため、漏れ磁束は生じにくく、低振動な回転子8とすることができる。なお、リベット挿入孔84の位置は図3の位置に限定されるものではない。潤滑油孔85は、スクロール圧縮機Sの潤滑油を流すことにも用いられており、潤滑油孔85の位置は図3の位置に限定されるものではない。主軸挿入孔86には、クランク軸6の主軸6a(図1参照)が挿入され、回転子8がクランク軸6の主軸6aに固定されている。
第1永久磁石82は、回転子8のロータコア81の磁石挿入孔に埋め込まれている。磁性体材料からなる第1永久磁石82は、例えば、希土類磁石(例えば、ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とした磁石や、サマリウム、鉄、窒素を主成分とした磁石)を用いる。
第2永久磁石83は、回転子8のロータコア81の磁石挿入孔に埋め込まれている。第2永久磁石83は、第1永久磁石82の磁性体材料とは異なる磁性体材料からなる永久磁石であり、例えば、フェライト磁石(例えば、酸化鉄を主成分としたセラミックス磁石)を用いる。なお、このような構成とすることにより、高価な希土類磁石(第1永久磁石82)の使用量を少なくすることができる。
また、図3に示すように、回転子8に埋め込んだ異なる磁極において、ある磁極の第1永久磁石82(希土類磁石)と、それに隣接する磁極の第1永久磁石82(希土類磁石)とが、回転子8の中心側において、第2永久磁石83(フェライト磁石)で厚めに仕切る構成となっている。これにより、回転中に発生する渦電流損失を低減することができ、回転子8全体の発熱も低減することができるため、熱減磁などによる永久磁石82,83の磁力損失も抑制することができる。
なお、第1永久磁石82と第2永久磁石83とは、別体として形成して、ロータコア81の磁石挿入孔に挿入してもよい。また、第1永久磁石82として錆びやすく表面処理を要する希土類磁石を用いる場合、第2永久磁石83の磁性体材料であるフェライト磁性体粉で第1永久磁石82(希土類磁石)を表面処理し、薄い被膜で覆うようにして、第1永久磁石82と第2永久磁石83とを一体に形成し、強固な単体品としてもよい。従来、防錆対策として、ネオジム磁石(希土類磁石)の表面にニッケル等のメッキを施している。このため、メッキ工程のコストが高いという問題がある。これに対し、第1永久磁石82と第2永久磁石83とを一体に形成することにより、錆びやすい希土類磁石(第1永久磁石82)の表面を、酸化に強く錆びにくい特性を有するフェライト磁石(第2永久磁石83)で覆うことができ、ニッケル等のメッキ工程を省略することができる。
また、第1永久磁石82の表面を覆うように一体に形成する第2永久磁石83は、フェライト磁性体粉だけでなく、樹脂をバインダとして有し、第1永久磁石82の磁性体材料とは異なる磁性体材料からなる永久磁石を用いてもよい。また、永久磁石82,83とロータコア81との固定用リベット、永久磁石82,83の飛び出し防止用端板などを一体に形成した単体品としてもよい。
また、ロータコア81の永久磁石82,83が挿入される磁石挿入孔およびリベット挿入孔84に、加工が容易であるフェライト系以外の、比抵抗が大きく、強固なボンド磁性体を用いることにより、ロータコア81、第1永久磁石82および第2永久磁石83を一体に形成し、固定用リベットや飛び出し防止用端板を省略してもよい。
なお、第2永久磁石83の着磁方法は、磁石単体による外部磁界からの着磁であってもよく、第2永久磁石83を回転子8のロータコア81に埋め込んだ状態による巻線着磁であってもよい。
異なる磁性材料と磁極からなる各永久磁石82,83は、回転子8の中心位置P0の周りで環状に配置し、例えば4極の場合は同極磁石を回転子8の中心位置P0の点対称として配置する。
固定子9は、コアバック91と、延在部92a,92bおよび鍔部93a,93bからなるティース94a,94bと、電機子巻線95と、を備えている。
積厚して構成されるコアバック91は、中空円筒状に形成され、その外周が密閉容器1(図1参照)に圧入等により固定される。回転電機10の駆動中に生じる電機子巻線95の銅損と固定子9の鉄損による発熱は、コアバック91を介して密閉容器1(図1参照)に放熱する。
中空円筒状のコアバック91の内周側には、ティース94a,94bが形成される。ここで、本実施形態の固定子9のティースは、非対称な形状を有しており、一方側をティース94aとし、他方側をティース94bとする。一方側のティース94aは延在部92aおよび鍔部93aで形成され、他方側のティース94bは延在部92bおよび鍔部93bで形成され、電機子巻線95が巻き回しされている。
電機子巻線95は、例えば、比抵抗の小さい銅線やアルミ線などが用いられ、スロット内において巻き崩れしないように固定されている。なお、電機子巻線95は、例えば、集中巻きや分布巻きで巻き回しされており、これに限定するものではない。また、巻き始めと巻き終りが同方向になるように巻き回ししてもよく、巻き始めと巻き終りを別方向になるように巻き回ししてもよく、限定するものではない。
固定子9の磁極面96は、例えば、回転子8が多極の磁極を有するときは、周方向において交互に異なる磁極を発生するように配置され、電機子巻線95に駆動電流を流すことで、固定子9は回転子8へと回転磁界を印加する。
回転子8の中心位置P0が固定子9の中心位置Q0と一致して回転子8が回転している場合、回転子8と固定子9のエアギャップ(空隙)88(図4参照)は、等しい間隔となる。一方、圧縮室の圧縮反力、回転速度、トルクによって、クランク軸6(主軸6a)を介して、回転子8に振れ回りが生じた場合、回転子8の中心位置P0が固定子9の中心位置Q0から変移することで、エアギャップ88(図4参照)の間隔も変化する。特に、高速高負荷運転時では、回転子8が大きく振れ回るので、回転子8と固定子9とが接触しないようにエアギャップ88(図4参照)が設計される。
次に、回転子8、固定子9、回転子8の各永久磁石82,83の関係について、図4を用いて更に説明する。図4は、回転子8、固定子9、回転子8の各永久磁石82,83の関係を示す部分拡大図である。
回転子8と、固定子9と、第1永久磁石82と、第2永久磁石83とは、軸方向に対して、重心を等しくするように、回転子8の中心位置P0および固定子9中心位置Q0を配置する。なお、エアギャップ88は、例えば、低速低負荷運転時の回転子8の外周方向の半径r1と、固定子9との間隔で図示する。
固定子9のティース94a,94bは、固定子9の中心位置Q0と、その中心位置Q0を垂直に交差する直線B1に対して、非対称形状となるように設けられている。直線B1とティース94aの延在部92aとの距離をL11とし、直線B1とティース94bの延在部92bとの距離をL12とすると、L11>L12の関係を満たす構成となる。
ティース94a側の電機子巻線95(図3参照)の巻き始めと巻き終わりの位置は、固定子9の中心位置Q0から距離L13の位置と、固定子9の外周方向のコアバック91からの距離L14との交点位置となる。そして、この交点位置から、延在部92aを通り、鍔部93aまで巻き回しされる。また、ティース94b側の電機子巻線95(図3参照)の巻き始めと巻き終わりの位置は、固定子9の中心位置Q0から(距離L13+距離L15)の位置と、固定子9の外周方向のコアバック91からの距離L14との交点位置となる。そして、この交点位置から、延在部92bを通り、鍔部93bまで巻き回しされる。
固定子9の側からの回転磁界の印加は、図4において、延在部92a(または、延在部92b)から距離(L11+L12)/2の中心位置側に向かって引きつける力が作用する。このため、回転子8の側からは、中心位置P0=中心位置Q0とした設置状態に対し、中心位置Q0から水平に距離L16ずれた点Q1に中心位置がずれた分に相当する印加力が発生することになる。
つまり、回転子8に埋め込んだ永久磁石82,83の位相角を、進相角や遅延角として働くように配置することで、複雑なトルク制御を行わなくとも、駆動電流波形が界磁の位相差(弱め界磁)で振れ回る固有振動に近似したトルク脈動を発生できる効果がある点Q1を回転子8と固定子9との関係から設定することができることを示している。なお、点Q1と距離(L11+L12)/2の中心位置は、同じ位置でなくてもよい。
<モータトルク(トルク脈動)と慣性モーメント>
ここで、回転子8と、磁極数(極対数)の位相角との関係から、モータ単体で発生するモータトルクT(トルク脈動)について説明する。
Figure 2015065758
モータトルクTは、式(1)により、大括弧内の1項の磁石トルクと、大括弧内の2項のリラクタンストルクとの和で求められる。ここで、Pは回転子8の極対数であり、φは固定子9に流す電流で回転子8に埋め込んだ永久磁石82,83(磁極面)が回転中に電磁鋼板を通る磁束の変化量(誘起電圧)であり、Iは電機子電流であり、Lはq軸成分のインダクタンスであり、Lはd軸成分のインダクタンス(磁気抵抗の大きな磁石とする)であり、βは電流によって回転子8が周方向に進む位相角である。
なお、式(1)の1項である磁石トルクとは、回転子8に埋め込んだ異なる磁極を有する永久磁石82,83の磁極面(回転子8の外周面)とエアギャップ88を介して、固定子9の内周面で働く電磁力を示すものである。
また、式(1)の2項であるリラクタンストルクとは、回転子8の磁気突極に働く電磁力であり、回転子8に埋め込んだ永久磁石82,83とその間にある電磁鋼板のインダクタンス差(L−L)により、磁気突極を得て発生させる吸引・反発力である。
式(1)により、固定子9側の電機子巻線95に流れる電機子電流Iである駆動電流(モータ駆動電流)を制御することにより、モータトルクTの大きさを調整したり、ある特定の高調波成分を合成した駆動電流を位相角βに合わせて通電して回転子8を回転させたりすることで、回転子8が振れ回りに近似したモータトルクTのトルク脈動を発生させることができる。
なお、回転電機10に駆動電流(電機子電流I)を供給する駆動装置は、120度通電、150度通電、180度通電や、最大モータ効率となるモータトルクにおける最適電流と位相通電や、また、モータ設計点よりも更に高速域で誘起電圧が飽和して回転できない高速回転領域でも回転できるように、界磁を弱める位相通電などを用いた制御方法で、モータトルクTに比例した駆動電流(電機子電流I)で回転電機10を運転できる駆動装置としてもよい。
次に、軸負荷からの回転子8のトルク脈動となる回転電機10の振動について説明する。回転子8は、固定子9によって印加される回転磁界に応じて回転する。このとき、回転子8の軸方向の中心位置と円柱形状または中空円柱形状である回転子8の重心位置が同じである場合、軸トルクTは、次の式(2)で表わされる。
Figure 2015065758
回転子8の軸トルクTは、式(2)に示すように、固定子9からのモータトルクの吸引・反発力や圧縮反力を無視した場合、バランス状態での遠心力Fと回転子8の半径rとの積となる。また、軸トルクTは、回転運動の運動方程式から慣性モーメントIと角加速度αとの積となる。
そして、式(2)の中空円柱形状の回転子8の中心位置と軸方向の重心位置が同じであり、かつ、中心位置に対し対称的に配置している埋め込み磁石を含んだ慣性モーメントIは、次の式(3)となる。
Figure 2015065758
中空円柱形状でバランス状態の回転子8の慣性モーメントIは、式(3)に示すように、シャフト(主軸6a)を圧入して挿入する部分(主軸挿入孔86)の半径rと、回転子8の半径Rと、回転子8の質量Mと、の式になる。このとき、埋め込み磁石や固定リベットなどは、回転子8の中心位置と軸方向の重心位置が同じ質点とみなすことができるので、質点を回転させた慣性モーメントは、回転子8の慣性モーメントと同等になる。なお、円柱の軸方向に対して、高さの影響はないため、式を省略する。
一方、例えば、中空円柱形状の回転子8の端部面に回転子8の中心位置とは異なる重心位置をもつ部品(例えば、図21のバランスウェイト13A,13B)を付加した慣性モーメントI’は、次の式(4)となる。
Figure 2015065758
式(4)の1項は、軸方向の中心位置と重心位置が一致する回転子8の慣性モーメント(式(3)参照)である。式(4)の2項は、付加した部品の慣性モーメントであり、付加した部品の重心位置が回転子8の中心から半径Lにあり、付加した部品の半径をrとし、その質量をmとする。回転子8の端部面に部品を付加した慣性モーメントI’は、式(4)に示すように、1項と2項の和となる。
さらに、回転子8が質量mでアンバランス状態である時の遠心力F’は、次の式(5)となる。なお、ωは回転角速度を示す。
Figure 2015065758
よって、式(2)、式(4)、式(5)の関係から、回転軸を中心とした質量M(回転子8)の末端部に、中心位置と異なる重心位置にある質量m(付加した部品)を付加させると、質量分配が不均一な状態となり、アンバランス状態となる。
そのアンバランス状態による回転子8の遠心力F’の大きさは、式(5)に示すように、回転子8の回転速度ωの2乗に比例するため、高速回転になるほど、回転子8がシャフト(主軸6a)を介して、無視できない弾性変形するような振動が発生する。
そして、バランス状態でスクロール圧縮機Sが必要とする一定な平均トルクによる回転運動とは別に、加速する回転速度ωの振動によって瞬時にアンバランスな遠心力が働き、回転子8とシャフト(主軸6a)を偏心するトルク脈動が、固定子9の電機子巻線95の駆動電流(電機子電流I)として、著しく乱れた周期による相電流波形で各U相、V相、W相に表れる。
さらに、圧縮室の圧縮反力からなる回転子8の振れ回りの振動の影響も、回転速度やトルクに応じてトルク脈動の発生要因となるため、アンバランス状態をバランス状態に釣り合わせるように低減させるには、少なくとも回転子8の末端部に回転子8の中心位置からずれた重心位置を持つ慣性モーメントとなる部品(即ち、図21のバランスウェイト13A,13B)を付加させないようにする。
以上のように、モータトルク式と慣性モーメント式の関係から、圧縮室が保証できる最大圧縮反力と最高回転速度で主なる回転子8Aが振れ回るようなトルク脈動の振動(振幅や周期)を、収束または減衰するように打ち消すトルクを発生させる従なる回転子8B(8B1,8B2)を備えることにより、主なる回転子8Aの末端部に別途バランスウェイト13A,13B(図21参照)を備えなくても、中空円柱形状の回転子8が振れ回るトルク脈動を低減することができる。
<回転子8:第1永久磁石82および第2永久磁石83の配置>
そこで、図4に戻り、本実施形態の固定子9に対する回転子8(従なる回転子8B)の構造について更に説明する。なお、本実施形態の固定子9に対する回転子8(主なる回転子8A)の構造については、図5を用いて後述する。
回転子8は、固定子9の中心位置Q0と同等の中心位置P0から、半径r1の円柱形状(または、中空円柱形状)で設け、重心と等しくしている。
次に、第1永久磁石82および第2永久磁石83の配置について説明する。
中心位置P0から距離L1だけ水平にずれた位置を点P1とし、さらに、点P1に対して、垂直な直線B2を引く。この直線B2を通り、点P1から距離L2の点を仮想点X0とする。この仮想点X0は、回転子8に埋め込まれる第1永久磁石82および第2永久磁石83の境界を示し、モータトルクTからみると、d軸インダクタンス成分の磁束は、負の方向の極性に対して最大値となる位相角の位置を表す。
そして、仮想点X0から、直線B2とのなす角が角度θ1となる線を引き、その線と回転子8の外周半径r1との交点位置を仮想点X1とする。さらに、直線B1を基準線として、仮想点X1と対称な点を仮想点X2とする。
次に、中心位置P0を中心に半径r2(ただし、r2>r1とする。)の軌跡を描き、仮想点X1を中心に仮想点X0を通るように半径r3で軌跡を描き、仮想点X2を中心に半径r4で軌跡を描く。
半径r3の軌跡のうち仮想点X0から半径r2の軌跡との交点までと、半径r2の軌跡のうち半径r3の軌跡との交点から半径r4の軌跡との交点までと、半径r4の軌跡のうち半径r2の軌跡との交点から第1永久磁石82(例えば、第1永久磁石83の厚さを厚さH1とし、仮想点X0から直線B2とのなす角が角度θ2となるように配置する。)との交点までと、第1永久磁石82の辺のうち半径r4の軌跡との交点から仮想点X0までと、で囲まれた領域が第2永久磁石83を挿入する孔および第2永久磁石83を備える位置となる。
なお、第2永久磁石83の磁石厚さ(即ち、半径r4を決定することに相当)は、次の位置関係から決定することができる。
例えば、残留磁束密度の関係から磁石厚さを求める場合、第1永久磁石82を希土類磁石とし、第2永久磁石83をフェライト磁石(例えば、ボンド磁石)として、スクロール圧縮機Sを吐出温度100℃になるように圧縮運転をする場合、例えば、磁化した希土類磁石(第1永久磁石82)の残留磁束密度Br100℃=1.181[T]相当に対して、磁化したフェライト磁石(第2永久磁石83)の残留磁束密度Br100℃=0.395[T]相当となり、第2永久磁石83の磁束密度を磁石厚さで補うためには、磁石形状などにもよるが、例えば、第1永久磁石82の厚さH1の約3倍以上の磁石厚さとすればよいことになる。
また、第2永久磁石83の最大磁石厚さは、例えば、回転子8の中心位置P0と直線B1から角度θ3(例えば、回転子8の極対数:固定子9のスロット数が比2:3の場合、360°/12=30°)の点線を二等分線として、r4≒1.435・r3の関係で、隣り合う異なる磁極(例えば極対数)に接触しないように配置する。
ただし、第2永久磁石83の磁石厚さが、回転子8の中心に向かって厚みを増し過ぎると、磁性体を着磁した時に、必要な残留磁束密度が得られず、効率が低下する。そして、発生トルクも低い磁束に対して弱くなり、所定値以上の駆動電流を流さないと必要トルクを得ることができなくなるという問題がある。一方、駆動電流を大きくすることにより、永久磁石が外部磁界による不可逆減磁に至るおそれがある。また、電機子巻線95の銅損から生じる発熱や、高速回転で振れ回るトルク脈動によって軸摩擦の熱が回転子8に埋め込んだ永久磁石82,83を加熱することにより、熱減磁に至るおそれがある。特に、不可逆減磁に至る場合、再度着磁を行わないと所定の磁束を得られないため、回転電機10の機能を損なうおそれがある。
したがって、本実施形態の回転子8に埋め込む永久磁石は、スクロール圧縮機Sの最大圧縮反力である必要モータトルクを満足できる第1永久磁石82および第2永久磁石83を備えればよい。例えば、残留磁束密度が所定量だけあれば、第2永久磁石83は磁化しない領域があってもよく、第1永久磁石82の防錆による表面処理と、回転子8を含む一体成形を兼ねる構造に用いてもよい。また、リベット挿入孔84に第2永久磁石83を備えてリベットとして代用してもよい。
<第1永久磁石82および第2永久磁石83のリラクタンストルク>
次に、回転子8に埋め込む第1永久磁石82および第2永久磁石83によって発生するリラクタンストルク(界磁による位相差)について説明する。
第1永久磁石82(例えば、希土類磁石)と第2永久磁石83(例えば、フェライト磁石)が交わる仮想点X0のd軸インダクタンスLと、異なる磁極が隣り合う間に磁束が通ったときに、第1永久磁石82と第2永久磁石83におけるq軸インダクタンスLと、が発生し、各々異なる磁性体材料と残留磁束密度などから、q軸インダクタンスLとd軸インダクタンスLのインダクタンス差(L−L)を大きくできる。
このインダクタンス差(L−L)は、式(1)の2項に相当し、例えば、4極の回転子8の場合、回転時に発生するモータトルクは機械角45°(1/4T時間)ごとに磁束が変化する。
例えば、比較例のスクロール圧縮機Sx(図21参照)において、回転電機10x単体運転時のモータトルク(トルク脈動)は、低速低負荷運転時において、後述する図24(b)に示すように、一定の振幅からなる正弦波形に近似している。
一方、高速高負荷運転時の圧縮反力によるトルク脈動が発生した場合、回転子8xは振れ回るため、後述する図24(a)に示すように、機械角45°周期でトルク脈動の振幅が最大(L)、最小(L)となるゆがんだ正弦波形となる。このため、後述する図18に示すように、比較例のスクロール圧縮機Sxの騒音は、振動周波数に対する音圧レベルSPxとなって表れる。
これに対し、本実施形態の回転電機10は、圧縮反力によって発生したトルク脈動に応じて主なる回転子8Aが脈動しても、従なる回転子8Bでこのトルク脈動を低減するように、永久磁石82,83の配置や、磁極数や、磁極比を選定することにより、回転電機10単体でモータ駆動電流波形が界磁による位相差を変えることができる。
ここで、図6から図9を用いて、主なる回転子8Aの永久磁石(第1永久磁石82A、第2永久磁石83A)と、従なる回転子8Bの永久磁石(第1永久磁石82B、第2永久磁石83B)と、の配置関係を説明する。図6から図9は、主なる回転子8Aの永久磁石(第1永久磁石82A、第2永久磁石83A)と、従なる回転子8Bの永久磁石(第1永久磁石82B、第2永久磁石83B)と、の配置関係を軸方向にみた図である。図6は位相角θaが121°〜140°の場合の例であり、図7は位相角θbが161°〜179°の場合の例であり、図8は位相角θcが141°〜160°の場合の例であり、図9は位相角θdが101°〜120°の場合の例であり、対称なもの、非対称なものを例示する。
これは、モータ駆動制御の点からみると、比較例の1つの回転子8xからなる回転電機10xは、一定の位相角で位相制御している。これに対し、本実施形態の回転電機10は、図6から図9に示すように、各々異なる永久磁石(82A,83A,82B,83B)の形状や配置によって、広域な位相角(θa〜θd)で位相制御が可能となる。また、例えば、低速回転のみを主とした高効率型の主なる回転子8Aと、高速回転でもトルク脈動を低減して高トルク出力できる従なる回転子8Bと、の両立ができるようになり、後述する図18に示すように、本実施形態のスクロール圧縮機Sの騒音は、振動周波数に対する音圧レベルSPとなって表れ、比較例の音圧レベルSPxよりも低減することができる。
図10は、回転子8の各角度区分における磁極(S極,N極)の組み合わせと、回転子8の磁極比(S極/N極比)と、低温条件(例えば、−10℃)および高温条件(例えば、100℃)における磁束に対するトルク脈動率(トルク脈動率/磁束比)と、の関係を示す表である。なお、図10において、第1永久磁石82を希土類磁石(ネオジム磁石)とし、第2永久磁石83をフェライト磁石とし、各角度区分における磁極(S極,N極)の下に、その角度区分における磁石の種類を示す。なお、「希土類磁石>フェライト磁石」とは、その角度区分において、希土類磁石の大きさがフェライト磁石の大きさよりも大きいことを示す。
図10に示すように、各角度区分における磁極(S極,N極)の組み合わせを変えることにより、磁束に対するトルク脈動率(トルク脈動率/磁束比)が変化する。換言すれば、要求する磁束に対するトルク脈動率(トルク脈動率/磁束比)から、各角度区分における磁極(S極,N極)の組み合わせを選択することができる。
<固定子9:ティース、延在部、鍔部の形状>
図4に戻り、本実施形態の回転電機10の固定子9のティース94a,94b(延在部92a,92b、鍔部93a,93b)の形状について説明する。
従来のスクロール圧縮機の振動の要因として、従来の対称形状に配置している固定子のティースおよび鍔部形状にも問題がある。
無通電時に、図4の回転子8の仮想点X1を中心位置に、半径r3で軌跡を描く領域内に、回転子8に埋め込んだ第1永久磁石82および第2永久磁石83と、ロータコア81の電磁鋼板を介して、固定子9と仮想点X1側に向かって吸引・反発する磁束が通り、コギングトルクが発生する。このコギングトルクは、回転子8を低速回転させた時には、回転子8は振れ回らずにモータ単体が「コギングトルク>モータトルク」の関係でトルク脈動して、固定子のティース、延在部、鍔部を介して強く振動する。一方、回転子8を高速回転させた時には、コギングトルクによるモータ単体のトルク脈動は、回転子8の振れ回りによるトルク脈動に抑制されて小さくなる。
なお、従来のコギングトルクを低減する構造として、回転子8のq軸インダクタンス成分をカットする技術が知られている。この構造を本実施形態の回転子8に用いてもよいが、従来の方法では、平均トルクと高速回転の運転範囲が低下し、位相制御すると脱調の原因となるという欠点があるため、必要トルクと回転速度範囲に見合った方法を選択する必要があった。
これに対し、本実施形態の回転電機10は、図4に示すような固定子9のティース94a,94b(延在部92a,92b、鍔部93a,93b)の形状を備えることで、低速から高速回転運転まで、コギングトルクを低減して、トルク脈動による振動も低減できる。
まず、回転子8の仮想点X1を中心に半径r3が軌跡を描く領域が、回転子8と固定子9の磁束が磁極面で同じ面積となる最大磁束密度の範囲となる。この回転子8の磁極面の面積を固定子9のティース94a,94b(延在部92a,92b、鍔部93a,93b)の同じ面積で磁束が通り、固定子9のコアバック91を介して磁路を分配できれば、固定子9の鉄損は低減できるが、電機子巻線95(図3参照)を巻き回すスペースがなくなる問題が生じる。
そこで、本実施形態の回転電機10は、固定子9の鍔部93a,93bの形状を回転子8の半径r3が描く軌跡に沿った位置とするとともに、その位置を非対称にすることでコギングトルクの均衡を回転方向(図4において、回転子8は反時計回りに回転するものとする。)に対して低減するように、不均衡に配置する。
まず、固定子9の中心位置Q0からL16水平にずれた点Q1を通る垂直な直線B3上に、点Q1から距離L17の仮想点X3を配置する。回転子8の回転方向と沿う側の鍔部93aは、この仮想点X3から角度θ4に延びた線と半径r3の軌跡が交差する領域で形成される。
回転子8の回転方向と対向する側の鍔部93bは、仮想点X3から角度θ5に延びた線と、固定子9の中心位置Q0から垂直方向に距離L18の位置と、半径r3の軌跡が交差する位置と、半径r3の軌跡と延在部92bから距離L19で交差する位置(または、固定子9の中心位置Q0から垂直方向に距離L18+L20で半径r3の軌跡が交差する位置としてもよい。)で形成される。
このように、電機子巻線95を巻き回すティース94a,94bを、延在部92a,92bおよび鍔部93a,93bで構成することにより、コギングトルクを低減することができる。これにより、回転電機10を備える本実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、コギングトルクによるトルク脈動を低減し、低速低負荷運転時においてもトルク脈動を低減することができる。
<第1永久磁石82および第2永久磁石83の他の配置>
図5は、回転子8、固定子9、回転子8の各永久磁石82,83の関係を示す部分拡大図であり、図4とは、回転子8を反転して配置したものである。ちなみに、図5に示す回転子8は、図2の回転子8における主なる回転子8Aに相当する。
図3の場合と同様に、回転電機10は、回転子8(主なる回転子8A(図1、図2参照))と、固定子9と、を備えている。なお、回転子8の中心位置P0と、固定子9の中心位置Q0は、同じ位置に配置される。回転子8は、ロータコア81と、第1永久磁石82と、第2永久磁石83と、を備えている。固定子9は、コアバック91と、延在部92a,92bおよび鍔部93a,93bからなるティース94a,94bと、電機子巻線95と、を備えている。
固定子9のティース94a,94bは、固定子9の中心位置Q0と、その中心位置Q0を垂直に交差する直線B1に対して、非対称形状となるように設けられている。直線B4とティース94aの延在部92aとの距離をL31とし、直線B1とティース94bの延在部92bとの距離をL32とすると、L31>L32の関係を満たす構成となる。
固定子9の側からの回転磁界の印加は、図5において、延在部92a(または、延在部92b)から距離(L31+L32)/2の中心位置側に向かって引きつける力が作用する。このため、回転子8の側からは、中心位置P0=中心位置Q0とした設置状態に対し、中心位置Q0から水平に距離L36ずれた点Q1に中心位置がずれた分に相当する印加力が発生することになる。
モータトルクは、回転子8に埋め込む永久磁石82,83の配置が図5のような場合であっても、式(1)の関係となる。また、回転子8の軸トルクも軸方向の中心位置と中空円柱形状である重心位置が同等であることから、式(2)の関係となる。同様に、慣性モーメントも式(3)となる。
一方で、図5に示す回転子8と固定子9との磁極面の磁束分布は、図3および図4の場合とは異なる。このため、高速高負荷運転時に回転子8が振れ回るトルク脈動も異なる。
そこで、本実施形態の回転子8について説明する。
回転子8は、固定子9の中心位置Q0と同等の中心位置P0から、半径r1の円柱形状(または、中空円柱形状)で設け、重心と等しくしている。
回転子8と固定子9の磁極面が同じ面積で磁束が通るための永久磁石82,83の配置は、次の位置関係からなる。
中心位置P0から距離L21だけ水平にずれた位置を点P2とし、さらに、点P2に対して、垂直な直線B5を引く。この直線B5を通り、点P2から距離L22の点を仮想点X4とする。この仮想点X4は、回転子8に埋め込まれる第1永久磁石82および第2永久磁石83の境界を示し、モータトルクTからみると、d軸インダクタンス成分の磁束は、負の方向の極性に対して最大値となる位相角の位置を表す。
そして、仮想点X4から直線B5とのなす角が角度θ7となる位置に厚さH2の第1永久磁石83を配置する。
そして、仮想点X4から、直線B5とのなす角が角度θ6となる線を引き、その線と回転子8の外周半径r5との交点位置を仮想点X5とする。この仮想点X5を通り直線B5と平行な線を引き、その線と第1永久磁石82との交差位置を仮想点X6とする。この仮想点X6を通り第1永久磁石82と垂直な線を引き、その線と回転子8の外周半径r5との交点位置を仮想点X7とする。
次に、中心位置P0を中心に半径r6(ただし、r6>r5とする。)の軌跡を描き、仮想点X5を中心に仮想点X4を通るように半径r7で軌跡を描き、仮想点X7を中心に半径r8で軌跡を描く。
半径r7の軌跡のうち仮想点X4から半径r6の軌跡との交点までと、半径r6の軌跡のうち半径r7の軌跡との交点から半径r8の軌跡との交点までと、半径r8の軌跡のうち半径r6の軌跡との交点から第1永久磁石82との交点までと、第1永久磁石82の辺のうち半径r8の軌跡との交点から仮想点X4までと、で囲まれた領域が第2永久磁石83を挿入する孔および第2永久磁石83を備える位置となる。
なお、第2永久磁石83の磁石厚さ(即ち、半径r8を決定することに相当)は、図4の場合と同様に、例えば、回転子8の中心位置P0と直線B1から角度θ3(例えば、回転子8の極対数:固定子9のスロット数が比2:3の場合、360°/12=30°)の点線を二等分線として、r4≒1.435・r3の関係で、隣り合う異なる磁極(例えば極対数)に接触しないように配置する。
ここで、第2永久磁石83の外部磁界による不可逆減磁や、第1永久磁石82(希土類磁石)と第2永久磁石83(フェライト磁石)とで異なる特性を有する熱減磁の関係を考慮して、最大圧縮反力である必要モータトルクを満足できる第2永久磁石83の磁石厚さであればよく、第2永久磁石83は磁化しない領域が存在するような厚みを設けてもよい。
また、磁化される前の磁性体材料を質量として考えた場合、回転子8の中空円柱形状から見ると、磁性体材料の質点を回転させた慣性モーメントは、軸方向の中心位置と重心位置が同じになる回転子8の慣性モーメントと同等になり、釣り合う均衡状態にある。
しかし、極対数(磁極数)で等比に回転子8に埋め込んだ磁性体材料の質量が同じであっても、着磁で磁化した永久磁石の残留磁束密度が、ある分布帯で磁化する領域と、磁化しない領域と、が存在するような複雑な形状を有するものとする。
この時、シャフト(主軸6a)を一回転させて、回転子8の磁極面と固定子9間で面しながら、各磁極面で発生するトルク(吸引・反発する)は、モータトルク(異なる磁束密度による非対称な磁石トルクと、極対数に応じた機械角で異なる磁束密度による非対称なリラクタンストルクの合成)や回転運動中の軸トルクに対して、任意のトルク脈動を生成できることになる。
よって、永久磁石82,83を有する回転子8は、例えば、最大圧縮反力に応じた必要トルクを満足する所定量の残留磁束密度と、着磁させる領域を限定して、着磁量および磁束の分布帯も各々最適化することで回転子8のトルク脈動を低減する構成となる。
また、図4の場合と同様に、コギングトルクを低減する固定子9の構造を有している。なお、ティース94aおよびティース94bの少なくとも一方が、半径r7の軌跡の領域に収まる構造であればよく、両方のティース94a,94bが半径r7の軌跡の領域に収まる構造であってもよい。
まず、固定子9の中心位置Q0からL36水平にずれた点Q2を通る垂直な直線B6上に、点Q2から距離L37の仮想点X8を配置する。鍔部93aは、この仮想点X8から角度θ9に延びた線と半径r7の軌跡が交差する領域、または、図5のように半径r7よりも鍔部93aが長い領域で形成される。
鍔部93bは、仮想点X8から角度θ10に延びた線と、固定子9の中心位置Q0から垂直方向に距離L38の位置と、半径r7の軌跡が交差する位置と、半径r7の軌跡と延在部92bから距離L19で交差する位置(または、固定子9の中心位置Q0から垂直方向に距離L38+L40で半径r7の軌跡が交差する位置としてもよい。)で形成される。
さらに、第1永久磁石82と仮想点X8から角度θ9の鍔部93a位置が、互いに平行となるように配置することにより(即ち、θ7=θ9)、トルク脈動が低減できる効果を大きくすることができる。
≪回転電機≫
次に、本実施形態に係るスクロール圧縮機S(図1参照)が備える回転電機10について更に説明する前に、比較例に係るスクロール圧縮機Sx(図21参照)が備える回転電機10xについて、図22および図23を用いて説明する。図22は、比較例の回転電機10xの低速低負荷回転時の断面図である。図23は、比較例の回転電機10xの高速高負荷運転時の断面図である。なお、P0は回転子中心であり、Q0は固定子中心であり、L90は固定子9xの軸方向長さ(積厚)である。
図22に示すように、低速低負荷で回転している状態では、コギングトルクを無視した場合、圧縮機構部5(図21参照)で冷媒を圧縮する際に生じる圧縮反力からなるトルク脈動は少ないので、クランク軸6(主軸6a)および回転子8xは、振れ回りせずに、回転子8xと固定子9xとのエアギャップのギャップ幅δは、等間隔となる。
一方、図23に示すように、高速高負荷で回転している状態では、圧縮反力により、回転子8xの回転子中心P0の軸が固定子9xの固定子中心Q0の軸からずれて(角度θPQ )、クランク軸6(主軸6a)および回転子8xが振れ回るトルク脈動が発生する。
比較例に係るスクロール圧縮機Sx(図21参照)は、バランスウェイト13A,13Bを備え、旋回運動する旋回スクロール2の遠心力と、バランスウェイト13A,13Bの遠心力とが、バランスすることにより、クランク軸6(主軸6a)の撓みを抑制するようになっている。また、特許文献2のように、圧縮反力によるアンバランスをバランスウェイト13A,13Bを適切に配置することにより、抑制する。
しかし、バランスウェイト13A,13Bだけでは、高速高負荷運転時におけるトルク脈動を低減することができない。また、バランスウェイト13A,13Bを備えることによる軸荷重の増加に伴い、始動トルクが増加し、軸トルクも圧縮反力に対する余分なトルクも増加し、駆動電流が大きくなり、モータ単体および圧縮機性能を低下させると考えられる。
これに対し、本実施形態に係るスクロール圧縮機S(図1参照)の回転電機10は、主なる回転子8Aと、主なる回転子8Aが受ける(または、発生する)トルク脈動とは異なるトルク脈動特性を有する従なる回転子8Bと、固定子9と、を備え、回転時におけるクランク軸6(主軸6a)および回転子8(8A,8B)の振れ回り運動を低減するようになっている。そこで、本実施形態に係るスクロール圧縮機S(図1参照)が備える回転電機10の一例について、図11から図16を用いて説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る回転電機10について、図11を用いて説明する。図11は、第1実施形態に係る回転電機10の断面模式図である。図11に示すように、第1実施形態に係る回転電機10は、主なる回転子8Aと、従なる回転子8Bである上部バランス用回転子8B1と、固定子9と、を備えている。そして、主なる回転子8Aおよび上部バランス用回転子8B1が、固定子9と磁極面で向かい合うようになっている。
ここで、主なる回転子8Aの軸方向長さ(積厚)をL80とし、上部バランス用回転子8B1の軸方向長さ(積厚)をL81とし、固定子9の軸方向長さ(積厚)をL90とした場合、振れ回りを低減する条件は、「L90=(L80+L81)かつL81<L80」を満たす関係、または、「L90=(L80+L81)かつL81≒L80」を満たす関係にあることが望ましい。
(第2実施形態)
第1実施形態に係る回転電機10(図11参照)よりも、さらに振れ回りを低減させる一例として、第2実施形態に係る回転電機10について、図12を用いて説明する。図12は、第2実施形態に係る回転電機10の断面模式図である。図12に示すように、第2実施形態に係る回転電機10は、第1実施形態に係る回転電機10(図11参照)と同様に、主なる回転子8Aと、従なる回転子8Bである上部バランス用回転子8B1と、固定子9と、を備えている。そして、主なる回転子8Aおよび上部バランス用回転子8B1の一部(図12における下側)が固定子9と磁極面で向かい合い、上部バランス用回転子8B1の残部(図12における上側)が固定子9と磁極面で向かい合わないようになっている。
ここで、主なる回転子8Aの軸方向長さ(積厚)をL80とし、上部バランス用回転子8B1の軸方向長さ(積厚)をL81とし、固定子9の軸方向長さ(積厚)をL90とした場合、振れ回りを低減する条件は、「L90<(L80+L81)かつL81<L80」を満たす関係にあることが望ましい。
(第3実施形態)
別の振れ回りを低減できる一例として、第3実施形態に係る回転電機10について、図13を用いて説明する。図13は、第3実施形態に係る回転電機10の断面模式図である。図13に示すように、第3実施形態に係る回転電機10は、主なる回転子8Aと、従なる回転子8Bである下部バランス用回転子8B2と、固定子9と、を備えている。そして、主なる回転子8Aおよび下部バランス用回転子8B2が、固定子9と磁極面で向かい合うようになっている。
ここで、主なる回転子8Aの軸方向長さ(積厚)をL80とし、下部バランス用回転子8B2の軸方向長さ(積厚)をL82とし、固定子9の軸方向長さ(積厚)をL90とした場合、振れ回りを低減する条件は、「L90=(L80+L82)かつL82<L80」を満たす関係、または、「L90=(L80+L82)かつL82≒L80」を満たす関係にあることが望ましい。
(第4実施形態)
第3実施形態に係る回転電機10(図13参照)よりも、さらに振れ回りを低減させる一例として、第4実施形態に係る回転電機10について、図14を用いて説明する。図14は、第4実施形態に係る回転電機10の断面模式図である。図14に示すように、第4実施形態に係る回転電機10は、第3実施形態に係る回転電機10(図13参照)と同様に、主なる回転子8Aと、従なる回転子8Bである下部バランス用回転子8B2と、固定子9と、を備えている。そして、主なる回転子8Aおよび下部バランス用回転子8B2の一部(図14における上側)が固定子9と磁極面で向かい合い、下部バランス用回転子8B2の残部(図14における下側)が固定子9と磁極面で向かい合わないようになっている。
ここで、主なる回転子8Aの軸方向長さ(積厚)をL80とし、下部バランス用回転子8B2の軸方向長さ(積厚)をL82とし、固定子9の軸方向長さ(積厚)をL90とした場合、振れ回りを低減する条件は、「L90<(L80+L82)かつL82<L80」を満たす関係にあることが望ましい。
(第5実施形態)
第1〜第4実施形態に係る回転電機10(図11〜図14参照)よりも、さらに振れ回りを低減できる一例として、第5実施形態に係る回転電機10について、図15を用いて説明する。図15は、第5実施形態に係る回転電機10の断面模式図である。図15に示すように、第5実施形態に係る回転電機10は、主なる回転子8Aと、従なる回転子8Bである上部バランス用回転子8B1および下部バランス回転子8B2と、固定子9と、を備えている。そして、主なる回転子8A、上部バランス用回転子8B1および下部バランス回転子8B2が、固定子9と磁極面で向かい合うようになっている。
ここで、主なる回転子8Aの軸方向長さ(積厚)をL80とし、上部バランス用回転子8B1の軸方向長さ(積厚)をL81とし、下部バランス用回転子8B2の軸方向長さ(積厚)をL82とし、固定子9の軸方向長さ(積厚)をL90とした場合、振れ回りを低減する条件は、「L90=(L80+L81+L82)かつL82<L81<L80」を満たす関係、または、「L90=(L80+L81+L82)かつL90/3≒L81≒L82」を満たす関係にあることが望ましい。
(第6実施形態)
第5実施形態に係る回転電機10(図15参照)よりも、さらに振れ回りを低減できる一例として、第6実施形態に係る回転電機10について、図16を用いて説明する。図16は、第6実施形態に係る回転電機10の断面模式図である。図16に示すように、第6実施形態に係る回転電機10は、第5実施形態に係る回転電機10(図15参照)と同様に、主なる回転子8Aと、従なる回転子8Bである上部バランス用回転子8B1および下部バランス回転子8B2と、固定子9と、を備えている。そして、主なる回転子8A、上部バランス用回転子8B1の一部(図16における下側)および下部バランス用回転子8B2の一部(図16における上側)が、固定子9と磁極面で向かい合い、上部バランス用回転子8B1の残部(図16における上側)および下部バランス用回転子8B2の残部(図16における下側)が固定子9と磁極面で向かい合わないようになっている。
ここで、主なる回転子8Aの軸方向長さ(積厚)をL80とし、上部バランス用回転子8B1の軸方向長さ(積厚)をL81とし、下部バランス用回転子8B2の軸方向長さ(積厚)をL82とし、固定子9の軸方向長さ(積厚)をL90とした場合、振れ回りを低減する条件は、「L90<(L80+L81+L82)、L90<(L81+L82)かつL82<L81<L80」を満たす関係にあることが望ましい。
このような構成を有することにより、回転電機10(図11〜図16参照)を備える本実施形態に係るスクロール圧縮機S(図1参照)は、従なる回転子8B(上部バランス用回転子8B1および下部バランス用回転子8B2)が主なる回転子8Aだけでは低減できない高速高負荷運転時におけるクランク軸6(主軸6a)および回転子8(8A,8B)の振れ回り運動を低減して、トルク脈動を低減することができる。
<作用・効果>
本実施形態に係るスクロール圧縮機の作用・効果について、図17、図18および図24を用いて説明する。
図24は、比較例に係るスクロール圧縮機Sxのモータトルク(トルク脈動)を示すグラフであり、(a)は圧縮反力による回転電機10xのモータトルク(トルク脈動)であり、(b)は回転電機10xの単体運転時のモータトルク(トルク脈動)である。なお、縦軸がモータトルク(トルク脈動)を示し、横軸が時間を示す。
図24(b)に示すように、比較例の回転電機10x単体運転時のモータトルク(トルク脈動)は、一定の振幅からなる正弦波形に近似している。しかし、図24(a)に示すように、回転電機10xをスクロール圧縮機Sxに搭載した場合、高速高負荷運転時において、圧縮室の圧縮反力により、回転電機10xモータトルク(トルク脈動)は、バランスウェイト13A,13Bを用いても、トルク脈動を十分に抑制することは困難であった。
図17は、本実施形態に係るスクロール圧縮機Sのモータトルク(トルク脈動)を示すグラフであり、(a)は圧縮反力によるモータトルク(トルク脈動)であり、(b)は回転電機10のうち、主なる回転子8Aと固定子9の単体運転時のモータトルク(トルク脈動)であり、(b)は回転電機10のうち、従なる回転子8Bと固定子9の単体運転時のモータトルク(トルク脈動)であり、(c)は回転電機10のモータトルク(トルク脈動)である。なお、縦軸がモータトルク(トルク脈動)を示し、横軸が時間を示す。
図17(b)に示すように、回転電機10の主なる回転子8Aと固定子9の単体運転時のモータトルク(トルク脈動)は、一定の振幅からなる正弦波形に近似している。しかし、図17(a)に示すように、回転電機10をスクロール圧縮機Sに搭載した場合、高速高負荷運転時において、圧縮室の圧縮反力により、トルク脈動が生じる。
これに対し、本実施形態に係るスクロール圧縮機Sの回転電機10は、回転子8として、主なる回転子8Aに加え、主なる回転子8Aが受ける(または、発生する)トルク脈動特性(図17(b)参照)とは異なるトルク脈動(図17(c)参照)特性を有する従なる回転子8Bを備えている。従なる回転子8Bは、主なる回転子8A(回転子8)が振れ回るようなトルク脈動の振動(振幅や周期)を収束、もしくは、減衰するように打ち消すトルクを発生させる。これにより、図17(d)に示すように、本実施形態に係るスクロール圧縮機S(図1参照)は、回転子8の振れ回りによるトルク脈動を低減させることができる。
図18は、本実施形態に係るスクロール圧縮機Sおよび比較例に係るスクロール圧縮機Sxの振動周波数と音圧レベルとの関係を示すグラフである。なお、縦軸は音圧レベルを示し、横軸は振動周波数を示す。
図18に示すように、振動している固有の周波数成分は、(回転速度/60/磁極数)に依存しているため、比較例に係るスクロール圧縮機Sxの音圧レベルSPxは、圧縮反力によるトルク脈動が回転子8xを振れ回りさせて成長振動しているので、固有振動成分が低い領域から高い振動周波数帯域まで一定の音圧レベルで振動している。
これに対し、本実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、主なる回転子8Aおよび従なる回転子8Bを備えることで、圧縮反力によるトルク脈動が低減したトルク脈動を発生させるので、(回転速度/60/(磁極数/(磁極数×2)))の条件で、図18の本実施形態に係るスクロール圧縮機Sの音圧レベルSPのように、音圧レベルを低減することができる。
また、図2から図5に示す回転電機10の回転子8(主なる回転子8A、従なる回転子8B)のロータコア81に埋め込まれる永久磁石82,83の配置は、図6から図9に示すように、広域な位相角(θa〜θd)で位相制御が可能となる。また、図10に示すように、各角度区分における磁極(S極,N極)の組み合わせを選択することにより、要求する磁束に対するトルク脈動率(トルク脈動率/磁束比)を選択ことができる。これにより、従なる回転子8Bを、主なる回転子8A(回転子8)が振れ回るようなトルク脈動の振動(振幅や周期)を収束、もしくは、減衰するように打ち消すトルクを発生させるように、永久磁石82,83を配置することができる。
また、本実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、バランスウェイト13A,13Bを備えていなくてもよい。これにより、主軸受11から下軸受12までのクランク軸6の主軸6aの長さを短くすることができ、高速高負荷運転時における回転子8の振れ回りを低減させ、回転子8の振れ回りによるトルク脈動を低減させることができる。また、クランク軸6(主軸6a)に掛かる荷重を軽くすることができるので、高速高負荷運転時における回転子8の振れ回りを低減させ、回転子8の振れ回りによるトルク脈動を低減させることができる。
また、クランク軸6の主軸6aの長さを短くすることにより、スクロール圧縮機Sを小型化することができる。加えて、クランク軸6(主軸6a)に掛かる荷重を軽くすることができるので、比較例よりも小型・低出力の回転電機10を用いることができ、回転電機10を搭載するスクロール圧縮機Sも小型化することができる。
また、本実施形態に係るスクロール圧縮機Sに搭載する回転電機10の固定子9のティース94a,94bの形状は、コギングトルクを低減することができるようになっている。これにより、低速低負荷運転時におけるコギングトルクによるトルク脈動を低減させることができる。
≪変形例≫
なお、本実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
図2から図5を用いて、主なる回転子8Aおよび従なる回転子8Bに埋め込まれる永久磁石82,83の配置を説明したが、これに限られるものではない。図19は、第1変形例に係る回転電機の回転子の分解斜視図である。図20は、第2変形例に係る回転電機の回転子の分解斜視図である。図19および図20に示すように、永久磁石の形状(ブロック型、V字型、アーク型、U字型、凹型など)や磁極数は、図2の例に限定されるものではない。
また、圧縮機としてスクロール圧縮機を例に説明したが、本発明に係る圧縮機はスクロール圧縮機に限られるものではない。例えば、本発明に係る圧縮機の回転電機を、その他の方式の圧縮機構部を備える圧縮機の回転電機に適用してもよい。
S スクロール圧縮機
1 密閉容器
2 旋回スクロール
3 固定スクロール
4 フレーム
5 圧縮機構部
6 クランク軸
6a 主軸
6b 偏心部
7 オルダムリング
8 回転子
8A 主なる回転子(第1回転子)
8B 従なる回転子(第2回転子)
8B1 上部バランス用回転子
8B2 下部バランス用回転子
9 固定子
10 回転電機
11 主軸受
12 下軸受
81 ロータコア
82 第1永久磁石
83 第2永久磁石
84 リベット挿入孔
85 潤滑油孔
86 主軸挿入孔
88 エアギャップ
91 コアバック
92a,92b 延在部
93a,93b 鍔部
94a,94b ティース
95 電機子巻線
96 磁極面

Claims (10)

  1. 第1回転子と、
    前記第1回転子とは異なるトルク脈動特性を有する第2回転子と、
    固定子と、からなる回転電機を備える
    ことを特徴とする圧縮機。
  2. 前記第2回転子は、
    高速回転時における前記第1回転子の振れ回りを低減するようなトルク脈動特性を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
  3. 前記第1回転子および前記第2回転子は、永久磁石が埋め込まれ、
    前記第1回転子の永久磁石と、前記第2回転子の永久磁石とは、駆動電流波形が界磁の位相差を有するように配置される
    ことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
  4. 前記第1回転子および前記第2回転子に埋め込まれる永久磁石は、
    磁性体材料からなる第1永久磁石と、
    前記第1永久磁石の磁性体材料とは異なる磁性体材料からなる第2永久磁石と、を有する
    ことを特徴とする請求項3に記載の圧縮機。
  5. 前記第1永久磁石は、前記第2永久磁石の磁性体材料で覆われ、一体に形成される
    ことを特徴とする請求項4に記載の圧縮機。
  6. 前記第1永久磁石は、希土類磁石であり、
    前記第2永久磁石は、フェライト磁石である
    ことを特徴とする請求項5に記載の圧縮機。
  7. 前記固定子のティースは、
    非対称な形状を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
  8. 前記固定子のティースは、
    前記固定子のコアバックから延在する延在部と、
    該延在部の先端に形成される鍔部と、を有し、
    該鍔部の形状は、
    前記回転子の回転方向と対向する側が、前記回転子の回転方向と沿う側よりも短い
    ことを特徴とする請求項7記載の圧縮機。
  9. 前記圧縮機は、密閉型圧縮機である
    ことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
  10. 前記圧縮機は、スクロール圧縮機である
    ことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
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