JP2015059531A - Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法 - Google Patents

Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法 Download PDF

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高橋功一
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Abstract

【課題】200℃程度の使用温度にて安定した耐熱強度性を示し、かつ、生産性に優れたアルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラーを提供する。
【解決手段】ボス部と、羽根部と、ディスク部とを備えるAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーにおいて、内部に存在するポロシティの円相当径が120μm以下であり、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が0.6%以下であることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー、ならびに、その製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や船舶の内燃機関用のターボチャージャーに使用される、アルミニウム合金鋳物製のコンプレッサーインペラー及びその製造方法に関する。
自動車や船舶用の内燃機関に用いられるターボチャージャーには、高速回転によって空気を圧縮して内燃機関に供給するためのコンプレッサーインペラーが設けられている。このコンプレッサーインペラーは、高速回転中には150℃程度の高温に達し、さらに回転中心近傍、特にディスク部には回転軸からのねじり応力や遠心力などによる高い応力が発生する。
コンプレッサーインペラーは、ターボチャージャーの要求性能に応じて種々の素材によって形成される。船舶用などの大型の用途には通常アルミニウム合金の熱間鍛造材からインペラー形状に削り出したものが使用されている。乗用車、トラックなどの自動車用や小型船舶用などの比較的小型なものは、大量生産性やコストが重視される。そのため、鋳造性の良好なJIS−AC4CH(Al−7%Si−0.3%Mg合金)、ASTM−354.0(Al−9%Si−1.8%Cu−0.5%Mg合金)、ASTM−C355.0(Al−5%Si−1.3%Cu−0.5%Mg合金)等、Siを主要添加元素とした易鋳造性アルミニウム合金を、石膏型(プラスターモールド)を用いて低圧鋳造法、減圧鋳造法又は重力鋳造法などによって鋳造し、これを溶体化処理や時効処理により強化したものが広く使用されている。この基本的な製造方法は、特許文献1に詳細に開示されている。
近年になって、エンジンの小型化、高出力化や排気再循環量増加に伴う空気の高圧縮比化が要求される中、ターボチャージャーのより高速な回転が指向されている。しかしながら、回転数の増大によって空気の圧縮による発熱量が増加し、また排気側のタービンインペラーも同時に高温化するため、その伝熱によりコンプレッサーインペラーに発生する温度は増大する。このため、上述の従来用いられていたSiを主要添加元素とした易鋳造性アルミニウム合金製のコンプレッサーインペラーでは使用中に変形したり、更には疲労破壊したりする不具合が発生し易く、正常な回転の継続が不可能となることが判明した。具体的には、これらの既存のコンプレッサーインペラーでは150℃程度が使用可能な温度の上限であるが、上述の高速回転指向のため、200℃程度でも使用可能なコンプレッサーインペラーの開発が強く望まれている。
そこで、アルミニウム合金組成をより高温強度の優れた、例えばJIS−AC1B(Al−5%Cu−0.3%Mg合金)などに変更することが考えられる。しかしながら、特許文献2に記載されているように、コンプレッサーインペラーのように複雑形状で、かつ薄肉の羽根の部分を有する場合には、同合金では溶湯の良好な流動性に欠け、薄肉部への湯回り不良(充填不良)が発生し易い問題点があった。
特許文献2では上記問題点を解消すべく、湯回り性の重要視される羽根部にはAC4CHなどのAl−Si系の易鋳造性の合金を用い、強度の必要な回転軸に結合されるボス部からディスク部にかけてはAC1BなどのAl−Cu系の高強度の合金を用いて、これらを2回に分けて注湯して合体させ、コンプレッサーインペラーを形成する方法が提案されている。
また、特許文献3には、羽根部には鋳造性の良好な合金を用い、応力が加わるボス部からディスク部中央部にかけては25%Bを含有するアルミニウムウィスカーなどの強化材にアルミニウムを含浸させて強化した強化複合材を別途製造して用い、これらを接合してコンプレッサーインペラーを形成する方法が提案されている。
特許文献4には、羽根部とボス部(及びディスク部)を摩擦圧接によって接合する方法が提案されている。しかしながら、これら各部に異なる材料を併用する方法では、生産性が劣りコスト増加となる問題点が残り、未だに工業化は達成されていない。
このような異なる材料を用いる問題点に鑑み、特許文献5には、Al−Cu−Mg基合金の添加元素とその組み合わせの範囲を適正化することで単一合金での鋳造を可能とし、180℃での耐力値を250MPa以上としたコンプレッサーインペラーが提案されている。特許文献6には、Al−Cu−Mg基合金の添加元素とその組み合わせの範囲を更に適正化して結晶粒径を制御することで鋳造歩留まりを改善し、200℃での耐力値を260MPa以上としたコンプレッサーインペラーが提案されている。
しかしながら、上記Al−Cu−Mg基合金の単一合金鋳造においては、ターボチャージャーの更なる高速回転化に伴い、200℃付近での高温使用に対して長期間にわたって安定して耐えられることが課題となっている。また、安定した生産性の確保のために、鋳造歩留の向上も課題として残っている。更に、コンプレッサーインペラー内部のポロシティ分布については、何等の検討もなされていない。
米国特許第4,556,528号明細書 特開平10−58119号公報 特開平10−212967号公報 特開平11−343858号公報 特開2005−206927号公報 特開2012−25986号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、200℃程度の使用温度においても長期間にわたって安定した強度が得られ、かつ生産性に優れたアルミニウム合金(以下、「Al合金」と記す)鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明は請求項1において、ボス部と、羽根部と、ディスク部とを備えるAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーにおいて、内部に存在するポロシティの円相当径が120μm以下であり、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が0.60%以下であることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーとした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記ボス部に存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が0.40%以下であり、前記羽根部に存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が0.60%以下であり、前記ディスクに存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が0.20%以下であるものとした。
本発明は請求項3では請求項1又は2において、前記Al合金鋳物が、Cu:1.40〜3.20mass%、Mg:1.00〜2.00mass%、Ni:0.50〜2.00mass%、Fe:0.50〜2.00mass%、Ti:0.010〜0.350mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl合金からなるものとした。
本発明は請求項4では、720〜780℃のAl合金溶湯を調製する溶湯調製工程と;当該Al合金溶湯中の水素ガス量を0.30cc/100gAl以下に調整する水素ガス量調整工程と;水素ガス量を調整したAl合金溶湯を、水分量を0.09wt%以下に調整され、かつ、200〜350℃に予熱された石膏型とインペラーディスク面に接する面に配置された100〜250℃の冷やし金とで構成される製品形状の空間に圧入する圧力鋳造法によりAl合金鋳物を鋳造する鋳造工程と;当該Al合金鋳物を溶体化処理する溶体化処理工程と;溶体化処理したAl合金鋳物を時効処理する時効処理工程と;を備えることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法とした。
本発明は請求項5では請求項4において、前記Al合金が、Cu:1.40〜3.20mass%、Mg:1.00〜2.00mass%、Ni:0.50〜2.00mass%、Fe:0.50〜2.00mass%、Ti:0.010〜0.350mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるものとした。
本発明によれば、200℃付近での高温領域においても長期間にわたって安定した耐熱強度を示し、かつ、鋳造歩留などの生産性に優れたアルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラーを得ることができる。
本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの構造の一例を示す斜視図である。 本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー内部のポロシティ分布測定箇所を示す説明図である。
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。
A.本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの特徴
本発明者等は、上述の課題を解決するために種々実験検討を重ねた結果、アルミニウム合金において、Al合金中の水素ガス量、石膏型中の水分量、及び、鋳造中の冷却速度分布を制御し、コンプレッサーインペラー内部のポロシティ分布を適正化することで鋳造歩留を格段に向上させ、かつ、200℃程度の高温使用時においてもボス部、ディスク部及び羽根部での破損がなく、耐熱強度が長期間にわたって安定して優れているコンプレッサーインペラーが得られることを見出した。
なお、本発明において「耐熱強度が長期間にわたって安定して優れる」とは200℃程度での使用温度でも、変形や疲労破壊が長期間にわたって発生しないことを意味する。具体的には、200℃での引張試験により得られる0.2%耐力値が260MPa以上、かつ、200℃、15万rpm×200時間でのターボ組み付け耐久試験による破損が無いこととする。
B.Al合金鋳物製コンプレッサーインペラーの形状
図1に本実施形態に係るアルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラー(以下、単に「コンプレッサーインペラー」と記す)の形状の一例を示す。コンプレッサーインペラー1は、回転中心軸(ボス部)2と、これに一体に連なるディスク部3と、このディスク部3から突出する複数枚の薄肉の羽根4を有する。このコンプレッサーインペラー1の温度は、高速回転中には200℃程度の高温に達し、回転中心の近傍、特にディスク部や羽根部には回転軸からのねじり応力や遠心力などによる高い応力が発生する。
C.ポロシティ分布
本発明において用いるアルミニウム合金は、従来のAl−Si系アルミニウム合金鋳物の製造方法に準じて、石膏型(プラスターモールド)を使用した圧力鋳造法(低圧鋳造法、減圧鋳造法又は差圧鋳造法)によってコンプレッサーインペラー形状に鋳造される。
一般に、耐熱疲労強度を向上させるためにはポロシティ(「空隙」)の量を低減することが有効である。特に、繰り返し応力がかかるディスク部においてポロシティ量を低減することは重要である。アルミニウム合金内のポロシティ量及びサイズを低減するためには、アルミニウム合金溶湯内の水素ガス量、アルミニウム合金と接する水分(水蒸気)量、凝固の際におけるアルミニウム合金溶湯の冷却速度を適切に制御する必要がある。しかし、石膏型を使用した圧力鋳造法に鋳造されるコンプレッサーインペラーにおいて、これらパラメーターを適切に制御することは困難であった。
本発明者らは、コンプレッサーインペラーの部位毎に必要疲労強度が相違することに着目し、コンプレッサーインペラーの各部位において求められるポロシティ量を鋭意研究し、工業製品として製造可能なコンプレッサーインペラー内の最適なポロシティ量分布を見出した。
すなわち、各部位の内部に存在するポロシティの円相当径を120μm以下とし、かつ、各部位における内部のポロシティ分布として、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.60%以下とするものである。これによって、コンプレッサーインペラーの回転の加減速により発生する繰り返し応力による疲労破壊が防止される。そして、各部位毎に40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を更に限定するのが好ましい。具体的には、ボス部に存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.40%以下とし、羽根部に存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.60%以下とし、ディスクに存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.20%以下とするものである。このように各部位毎にポロシティ占有面積率を規定することにより、コンプレッサーインペラーの回転の加減速により発生する繰り返し応力による疲労破壊が更に有効に防止可能となる。
まず、各部位における内部のポロシティ分布として、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が0.60%を超えると、粗大ポロシティによる疲労亀裂の発生、ならびに、疲労亀裂がポロシティ同士を伝播・進展し易くなる。このような弊害を更に有効に防止するためには、ディスク部において、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.20%以下とするのが好ましい。ディスク部には、ディスク部に対して垂直方向の繰り返し応力がかかるので、この繰り返し応力に十分に耐えるようにするためである。次に、ボス部において、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.40%以下とするのが好ましい。ボス部において、高速回転で発生するねじり応力に十分に耐えるようにするためである。なお、羽根部においては、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率は前述の0.60%以下とするのが好ましい。羽根部には一方向のみの引張応力がかかり、この引張応力に十分に耐え得るには0.6%以下とすればよい。ここで重要なことは、これらのディスク部、ボス部及び羽根部におけるポロシティ占有面積率は別個独立に規定されるのではなく、相互に関連しており全体として一体に規定されていることである。
また、ポロシティ占有面積率について、40μm以上の円相当径を有するポロシティを対象とする理由は、40μm未満の円相当径を有するポロシティは破壊起点とならないため考慮する必要がないからである。コンプレッサーインペラーにおける最薄部である羽根部先端においても厚みは200μmであり、厚みに対して1/5未満の欠陥は破壊起点となり得ない。一方、ポロシティの円相当径が120μmを超えると、このようなポロシティにおいては、コンプレッサーインペラー内のいずれの位置であっても破壊起点となる。従って、本発明では、コンプレッサーインペラー内部に存在するポロシティについて、その円相当径が120μmを超えないように制御する。以上のことから、本発明では、40〜120μmの円相当径を有するポロシティを対象とするものである。なお、円相当径とは、各部位の断面を光学顕微鏡によって観察した際のポロシティ断面の断面積を用いて、円相当直径に換算したものである。本発明において、光学顕微鏡によって観察できるポロシティの円相当径の下限値は10μmであった。さらに高分解能の計測機器(例えば、透過型電子顕微鏡など)を用いれば10μm未満のポロシティの存在も確認できるが、破壊起点とならない大きさであるため測定対象外としている。なお、本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーにおいては、10μm未満のポロシティの存在も許容される。
D.製造条件の制御
上述のようなポロシティ分布を得るためには、石膏型に圧入する溶湯の温度、溶湯中の水素ガス量、石膏型中の水分量、ならびに、コンプレッサーホイール内の冷却速度を制御することが必要である。すなわち、溶湯を720〜780℃に温度調整し、溶湯中の水素ガス量を0.30cc/100gAl以下に調整し、石膏型中の水分量を0.09wt%以下に調整する必要がある。更に、コンプレッサーホイール内の冷却速度の制御は、溶湯温度と共に、石膏型の予熱温度と冷やし金(チルプレート)の温度とを適正化することにより可能となる。具体的には、ディスク面に接する面に100〜250℃に温度調整した金属製の冷やし金を配置し、石膏型の予熱温度を200〜350℃とする必要がある。これにより、コンプレッサーホイール内の冷却速度が0.1〜200℃/秒の好適な範囲に調整される。
以上のように、溶湯温度;溶湯中の水素ガス量;石膏型中の水分量;石膏型の予熱温度及び冷やし金の温度による冷却速度を適切に設定することにより、各部位の内部に存在するポロシティの円相当径を120μm以下に、かつ、各部位における内部のポロシティ分布として、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.60%以下に調整することができる。そして、溶湯温度;溶湯中の水素ガス量;石膏型中の水分量;石膏型の予熱温度及び冷やし金の温度による冷却速度を更に適切に設定することにより、ボス部に存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.40%以下に、羽根部に存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.60%以下に、ディスクに存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.20%以下に調整することができる。
D−1.溶湯温度:
溶湯の温度が720℃未満では、圧入された溶湯が製品形状空間内で早期に凝固することから湯回り不良が生じて製品形状が確保できなくなる。一方、溶湯の温度が780℃を超えると溶湯の酸化が進行して水素ガスの吸収が増加する。好ましい溶湯温度の範囲は、
730〜770℃である。
D−2.溶湯中の水素ガス量:
溶湯中の水素ガス量が0.30cc/100gAlを超えると、ポロシティ発生数の増大および酸化物の増加により溶湯品質が悪化し、製品強度を確保することが困難となる。好ましい水素ガス量は、0.20gAl以下である。
D−3.石膏型中の水分量:
石膏型中の水分量が0.09wt%を超えると、石膏型中の水分と石膏型へ樹点された溶湯の反応によって溶湯中の水素ガス量が増加し、内部のポロシティ分布として、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率を0.6%以下に調整することが困難となる。また、石膏型の水分量が0.09wt%を超えると、特に羽根部において、石膏内水分と石膏型内へ充填された溶湯の反応によって溶湯中の水素ガス量が増加し、ポロシティ発生が増大する。好ましい水分量は、0.07以下である。
D−4.石膏型の予熱温度:
石膏型の予熱温度が200℃未満では、型の先端に溶湯が充填される前に凝固が進行してしまうため湯回り不良が生じて製品形状が確保できなくなる。一方、石膏型の予熱温度が350℃を超えると、石膏型内での凝固が遅くなり冷却速度の低下によってポロシティ発生数が増大することとなる。好ましい予熱温度は、250〜300℃である。
D−5.冷やし金の温度:
冷やし金の温度が100℃未満では、凝固の進行が速すぎて湯回り不良が生じることとなる。一方、冷やし金の温度が250℃を超えると、冷やし金からの凝固が遅くなり凝固が遅くなり冷却速度の低下によってポロシティ発生数が増大することとなる。また、冷し金の温度が250℃を超えると、石膏型と冷し金の間に湯が差し込む、所謂バリ不良となる。好ましい冷やし金温度は、150〜200℃である。
冷やし金の材質は、熱伝導率が高い銅及び銅合金が好ましいが、鉄、ステンレス鋼なども使用できる。また、冷やし金の温度調整には、冷やし金内部に水などの冷却媒体を通して鋳造中の過熱を抑制する機構を用いるのが好ましい。
D−6.冷却速度:
上記のように、溶湯温度と共に、石膏型の予熱温度と冷やし金の温度を規定することにより、コンプレッサーホイール内の冷却速度が0.1〜200℃/秒の好適な範囲に調整される。冷却速度が0.1℃/秒未満では、ポロシティ発生数が増大する。一方、冷却速度が200℃/秒を超えると、凝固の進行が速すぎて湯周り不良となる。冷却速度の更に好ましい範囲は、0.5〜150℃/秒である。
E.Al合金の成分組成
次に、本発明で用いるAl合金の成分組成とその限定理由について説明する。
E−1.Cu、Mg:
CuとMgはAl母相中に固溶し、固溶強化によって機械的強度を向上させる効果を有する。また、CuとMgが共存することによって、AlCu、AlCuMg等の析出強化による強度向上にも寄与する。但し、これらの2種の元素は凝固温度範囲を拡大する元素であるため、過剰な添加は鋳造性を劣化させる。
Cu含有量が1.40mass%(以下、単に「%」と記す)未満の場合、Mg含有量が1.00%未満の場合には、200℃の高温において必要とされる機械的強度が得られない場合がある。一方、Cu含有量が3.20%を超える場合、Mg含有量が2.00%を超える場合には、コンプレッサーインペラーとしての鋳造性が劣化し、特に羽根先端部への湯回りが不十分となって欠肉が発生し易くなる場合がある。以上により、Cu含有量を1.40〜3.20%、Mg含有量を1.00〜2.00%とするのが好ましい。なお、使用中の変形などの不具合を確実に防止し、かつ、鋳造時の欠肉発生を可及的に防止して工業的に好適な歩留まりを得るためには、Cu含有量を1.70〜2.80%、Mg含有量を1.30〜1.80%とするのがより好ましい。
E−2.Ni、Fe:
NiとFeは、Alとの間で金属間化合物を形成してAl母相中に分散し、Al合金の高温強度を向上させる効果を奏する。そのためには、Ni含有量を0.50%以上、Fe含有量も0.50%以上とするのが好ましい。しかしながら、両元素は共に過剰に含有されると、金属間化合物が粗大化してしまうだけでなく、高温においてCuFeAlやCuNiAlを形成してAl母相中の固溶Cu量を低減させ、かえって強度を低下させてしまう場合がある。そのため、Ni含有量を2.00%以下、Fe含有量も2.00%以下とするのが好ましい。以上により、Ni含有量を0.50〜2.00%、Fe含有量を0.50〜2.00%とするのが好ましい。なお、Ni含有量を0.50〜1.40%、Fe含有量を0.70〜1.50%とするのがより好ましい。上記より好ましい範囲の下限値は製造の際のバラツキを考慮し工業的に安定的な量産をする上での目安値であり、上限値は効果が飽和しこれ以上の添加は無駄となる添加量の目安値である。
E−3.Ti:
Tiは、鋳造時の初晶アルミニウム結晶粒の成長抑制効果を奏するため、鋳造中の凝固組織を微細化して溶湯補給性を改善し、湯回り性を改善する効果を発揮するため添加される。Ti含有量が0.010%未満では、上記効果が十分に得られない場合がある。一方、Ti含有量が0.350%を超えると、Alとの間に数10〜数100μmの大きさの粗大な金属間化合物を形成して回転時に疲労亀裂の起点となり、コンプレッサーインペラーとしての信頼性を低下させる場合がある。以上により、Ti含有量を0.010〜0.350%とするのが好ましく、0.015〜0.300%とするのがより好ましい。
Al合金の不可避的不純物として、0.30%程度以下のSi、ならびに、それぞれが0.20%以下のZn、Mn、Crなどが含有されていても、コンプレッサーインペラーの特性を損なうことがないので許容される。
F.製造方法
次に、本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法について説明する。この製造方法は、溶湯調整工程、鋳造工程及び熱処理工程から構成される。
F−1.溶湯調整工程:
通常の方法に従って、上述のAl合金組成となるように各成分元素を加えて加熱溶解し、脱水素ガス処理及び介在物除去処理などの溶湯処理を行なう。そして、最終的な溶湯温度が720〜780℃となるように温度が調整される。また、溶湯中の水素ガス量が0.3cc/100gAl以下になるよう調整される。溶湯中の水素ガス量の調整方法としては、例えば、回転ガス吹込み装置を用いてローター回転数100〜800rpm、気体流量0.5〜20Nm/時間の条件にて、アルゴンガスを溶湯中に5〜60分間吹き込む方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
F−2.石膏型の調製:
石膏型を調製する工程、特に石膏型の乾燥段階は石膏の水分量へ多大な影響を及ぼすため重要である。石膏型の調製工程はまず、石膏と水からなるスラリーを、コンプレッサーインペラー形状のゴム型を配置した型枠内に流し入れる。次いで、石膏を常温にて凝結させた後にゴム型と型枠を外す。その後、石膏型を乾燥するため、200℃以上の雰囲気にて2時間以上保持する。乾燥温度が200℃未満では結晶水の放出が起こらず、石膏型中の水分量が0.09wt%を上回ることにより、溶湯中の水素ガス量が増加してポロシティ発生が増大する。乾燥温度の上限は、石膏が変性しない温度であれば特に限定されるものではないが、400℃が好ましい。また、乾燥時間が2時間未満では脱水が不十分となり、石膏型中の水分量が0.09wt%を上回り上述のようにポロシティ発生が増大する。乾燥時間の上限も特に限定されるものではないが、製造管理上の観点から72時間が好ましい。
F−3.鋳造工程:
鋳造工程では、720〜780℃に温度調整された溶湯を、石膏型を用いた圧力鋳造法によってコンプレッサーインペラー形状に鋳造する。上述のように、ディスク面に接する面に配置する冷やし金の温度は100℃〜250℃に調整され、石膏型の予熱温度は200〜350℃に調整される。また、石膏型中の水分量を0.09wt%以下に調整する。溶湯は、通常0.01〜0.4MPaの圧力で石膏型に加圧注入されるが、石膏型内を0.01〜0.4MPaの圧力分だけ減圧してもよい。
F−4.熱処理工程:
鋳造されたAl合金鋳物は、熱処理工程にかけられる。熱処理工程は、溶体化処理工程と時効処理工程とで構成される。熱処理工程により、Cuによる固溶強化;CuとMgによる析出強化;AlとFeとの間、ならびに、AlとNiとの間で形成される金属間化合物による分散強化;を有効に活用することができる。
F−5.溶体化処理工程:
溶体化処理は、固相線温度から5〜25℃低い温度範囲で行うのが好ましい。本発明において好適に用いられるAl合金においては、固相線温度から5〜25℃低い温度範囲は510〜530℃となる。固相線温度から5〜25℃低い温度範囲を超える温度では、結晶粒界の第2相が溶融する危険性が高まり、強度確保が困難となる。一方、この温度範囲未満の温度では、元素拡散が十分に進まずに十分な溶体化が行われないこととなる。溶体化処理時間は2時間以上とするのが好ましい。2時間未満では元素拡散が十分に進まずに十分な溶体化が行われないこととなる。
F−6.時効処理:
時効処理は、180〜230℃で3〜30時間熱処理するのが好ましく、190〜210℃で5〜20時間熱処理するのがより好ましい。処理温度が180℃未満の場合や、処理時間が3時間未満の場合には、強度向上のための析出強化が不十分な場合がある。一方、処理温度が230℃を超える場合や、処理時間が30時間を超える場合には、形成された析出相が粗大化(過時効)して十分な強化作用が得られないとともに、Cuの固溶強化能が低下する。
以下において、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
第1の実施例(本発明例1〜11及び比較例1〜18)
表1に示す組成のAl合金150kgに、通常の溶湯処理を施して溶解し溶湯調製工程にかけた。次いで、この溶湯を用いて表2に示す鋳造条件で鋳造した。溶湯調製工程では、回転ガス吹込み装置を用いてローター回転数400rpm、気体流量2.5Nm/hの条件にて、アルゴンガスを溶湯中に5〜60分間吹き込んだ。アルゴンガスの吹き込み時間(脱ガス時間)を表2に示す。その後、溶湯全体を1時間鎮静保持し除滓して、表2の温度の溶湯を得た。なお、溶湯中の水素ガス量も表2に示す。
Figure 2015059531
Figure 2015059531
次いで、溶湯調製工程で調製したAl合金溶湯は、表2の予熱温度および水分量に調整された石膏型と、インペラーディスク面に接する面に配置され、表2の温度に調整された銅製冷やし金とで構成される所定空間に加圧注入する低圧鋳造法によりAl合金鋳物を作製した。なお、水分量調整のための石膏型の乾燥条件(乾燥温度及び乾燥時間)を表2に示す。
このAl合金鋳物コンプレッサーインペラーは、ディスク直径50mm、高さ40mm、羽根数12枚、羽根先端肉厚0.3mmの形状を有する乗用車ターボチャージャー用コンプレッサーインペラーである。溶湯の注入圧力は100kPaとし、Al合金鋳物全体の凝固が完了するまでこの圧力で加圧保持した。
上記Al合金鋳物を石膏型から取り外した後、530℃で8時間の溶体化処理を施し、その後、200℃で20時間の時効処理を施した。以上のようにして、Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー試料を作製した。
上記のようにして作製した各試料について、羽根部、ボス部及びディスク部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率、高温特性(200℃の0.2%耐力値、耐久試験評価)、ならびに、生産性(鋳造歩留評価)を、以下のようにして評価した。
1.ポロシティ占有面積率の測定
羽根部、ボス部及びディスク部における、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率は以下のようにして測定した。試料を羽根部が通る中心線で切断して断面を研磨した。図2には、コンプレッサーインペラーの中心軸8の片側の研磨断面を示す。このような研磨断面において、羽根部ポロシティ測定断面7、ボス部ポロシティ測定断面5、ならびに、ディスク部ポロシティ測定断面6の各金属組織を光学顕微鏡により倍率100倍で撮像し、画像解析装置に取り込んだ後に円相当径が40μm以上となるポロシティ部のみを抽出した。
次いで、40〜120μmのポロシティ占有面積率を求めるため、ポロシティ観察視野面積に対する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの総面積の割合を算出した。なお、羽根部におけるポロシティ観察視野面積は0.021mm、ボス部におけるポロシティ観察視野面積は0.067mm、ディスク部におけるポロシティ観察視野面積は0.022mmとした。また、試料研磨断面全域について金属組織を光学顕微鏡により観察し、120μmを超えるポロシティの存在有無と超えるものの円相当径についても調べた。更に、参考までに、10μm以上40μm未満の円相当径を有するポロシティの占有面積率についても、上記と同様に測定した。以上の結果を表3に示す。
Figure 2015059531
2.高温特性
試料の中心軸より丸棒試験片(φ8mm)を採取して、200℃における引張試験より0.2%耐力値を測定した。0.2%耐力値が260MPa以上を合格とした。また、耐久試験(ターボ組み付け、150000rpm×200時間、出側温度200℃)により高温疲労強度を評価した。結果を表3に示す。表3に記載の耐久性試験評価では、試験中に破断した場合を「×」、破断はしなかったが亀裂が発生した場合を「△」、破断も亀裂も発生せず健全な状態のままの場合を「○」とした。なお、△と×における括弧内は、亀裂と破断の発生箇所をそれぞれ示す。
3.鋳造歩留評価
各例について1000個の試料を作製して、鋳造歩留評価を行なった。各試料における検査項目は、湯回り及びバリの外観不良検査とした。結果を表3に示す。表3に、全試料のうち各不良品の割合(%)を示す。そして、100%からこれらの不良品割合の合計を差し引いた割合を良品割合(%)とした。良品割合が90%未満である場合を「×」(現行品以下)、90%以上96%未満である場合を「△」(現行品同等)、96%以上100%以下である場合を「○」(現行品より大幅改善)とした。
本発明例1〜11では、羽根部・ボス部・ディスク部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が規定範囲内であることから、鋳造歩留も良好で、かつ高温特性も十分に高かった。
これに対して比較例1では、石膏温度が高く、羽根部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が高くなった。その結果、耐力値が低く羽根部で破断し、高温特性に劣った。
比較例2では、冷やし金の温度が高く、ディスク部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が高くなった。また、バリ不良が多発し鋳造歩留まりが大きく低下した。その結果、耐力値が低くディスク部で亀裂が発生し、高温特性に劣った。
比較例3では、石膏型の温度が低く、羽根部における湯回りの外観不良が多発したため、鋳造歩留が大きく低下した。
比較例4では、冷やし金の温度が低く、ディスク部における湯回りの外観不良が多発し鋳造歩留が大きく低下した。
比較例5では、溶湯温度が低く、羽根部における湯回りの外観不良が多発して鋳造歩留が大幅に低下した。また、ボス部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が高くなり、ボス部にて亀裂が発生して高温特性に劣った。
比較例6では、溶湯温度が高く、120μmを超えるポロシティが発生した。その結果、耐力値が低くボス部で破損し、高温特性に劣った。
比較例7では、Cu成分が少なく、耐力値が低くディスク部で破損し、高温特性に劣った。
比較例8では、Mg成分が少なく、耐力値が低くボス部で亀裂が発生し、高温特性に劣った。
比較例9では、Fe成分が少なく、耐力値が低く羽根部で亀裂が発生し、高温特性に劣った。
比較例10では、Ni成分が少なく、耐力値が低くディスク部で破損し、高温特性に劣った。
比較例11では、Ti成分が少なく、羽根部で破損して高温特性に劣り、また、結晶粒微細化効果が不十分で羽根部における湯回りの外観不良が多発したため鋳造歩留が低下した。
比較例12では、Cu成分が多く、高温特性は良好であるが、羽根部における湯回り不良が多発し鋳造歩留が低下した。
比較例13では、Mg成分が多く、高温特性は良好であるが、羽根部における湯回り不良が多発し鋳造歩留が低下した。
比較例14では、Fe成分が多く、粗大な晶出物相が存在するため、耐力値が低くディスク部で亀裂が発生して高温特性に劣った。
比較例15では、Ni成分が多く、粗大な晶出物相が存在するため、耐力値が低く、且つ、ボス部で亀裂が発生し、高温特性に劣った。
比較例16では、Ti成分が多く、粗大な晶出物相が存在するためにディスク部で亀裂が発生して高温特性に劣った。
比較例17では、溶湯中の水素ガス量が多く、120μmを超えるポロシティが発生した。耐力値が低くボス部で破損し、高温特性に劣った。
比較例18では、石膏型の乾燥温度が低いため石膏型中の水分量が多く、羽根部おける40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が高くなり、羽根部で破損し高温特性に劣った。
第2の実施例(本発明例12〜21及び比較例19〜29)
Al合金として、表4に示すものを用いた。ここで、Si、Zn、Mn、Crは不可避的不純物である。このAl合金150kgに、通常の溶湯処理を施して溶解し溶湯調製工程にかけた。次いで、この溶湯を用いて表5に示す鋳造条件で鋳造した。溶湯調製工程では、回転ガス吹込み装置を用いてローター回転数300rpm、気体流量3.0Nm/hの条件にて、アルゴンガスを溶湯中に30分間吹き込んだ。その後、溶湯全体を1時間鎮静保持し除滓して、表5の温度の溶湯を得た。なお、溶湯中の水素ガス量も表5に示す。
Figure 2015059531
Figure 2015059531
次いで、溶湯調製工程で調製したAl合金溶湯は、表5の予熱温度および水分量に調整された石膏型と、インペラーディスク面に接する面に配置され、表5の温度に調整された銅製冷やし金とで構成される所定空間に加圧注入する低圧鋳造法によりAl合金鋳物を作製した。なお、水分量調整のための石膏型の乾燥条件(乾燥温度及び乾燥時間)を表5に示す。
このAl合金鋳物コンプレッサーインペラーは、ディスク直径92mm、高さ70mm、羽根数14枚、羽根先端肉厚0.4mmの形状を有するトラックターボチャージャー用コンプレッサーインペラーである。溶湯の注入圧力は100kPaとし、Al合金鋳物全体の凝固が完了するまでこの圧力で加圧保持した。
上記Al合金鋳物を石膏型から取り外した後、表5に示す条件で溶体化処理を施し、その後、同じく表5に示す条件で時効処理を施した。以上のようにして、Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー試料を作製した。
上記のようにして作製した各試料について、羽根部、ボス部及びディスク部における40〜120μm、ならびに、10μm以上40μm未満の円相当径を有するポロシティの占有面積率、120μmを超えるポロシティの存在有無と超えるものの円相当径、高温特性(200℃の0.2%耐力値、耐久試験評価)、生産性(鋳造歩留評価)を、第1の実施例と同じに評価した。結果を表6に示す。
Figure 2015059531
本発明例12〜21では、適正な鋳造条件が採用され、かつ、熱処理が施されているので、羽根部、ボス部及びディスク部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が規定範囲内となった。その結果、高温特性値も十分に高く、かつ、鋳造歩留も良好であった。特に、本発明例12〜15では、好ましい熱処理条件が採用されているため、非常に良好な高温特性値が得られた。
これに対して比較例19では、溶湯温度が低く、ボス部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が高くなった。その結果、耐力値が低くボス部で破損し、高温特性に劣った。
比較例20では、溶湯温度が高く、かつ、石膏型温度が低かったので、バリ不良が多発し鋳造歩留まりが低下した。
比較例21では、石膏型の温度が低く、かつ、冷やし金の温度が低かったので、羽根部における湯周りの外観不良が多発し鋳造歩留が低下した。
比較例22では、石膏型の温度が高く、かつ、冷やし金の温度が高かったので、羽根部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が高くなり、羽根部で破損し高温特性に劣った。
比較例23では、冷やし金の温度が低く、ディスク部における湯回りの外観不良が多発し鋳造歩留が低下した。
比較例24では、冷やし金の温度が高く、バリ不良が多発し鋳造歩留まりが低下した。また、ディスク部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が高くなり、ディスク亀裂が発生し高温特性に劣った。
比較例25では、溶湯中水素ガス量が多く、120μmを超える円相当直径を有するポロシティがインペラー内部に存在した。このため、ボス部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が高くなり、耐力値が低くボス部で破損し、高温特性に劣った。
比較例26では溶体化処理工程が実施されず、比較例27では時効処理工程が実施されなかった。その結果、いずれも耐力値が低くディスク部で破損し高温特性に劣った。
比較例28では、石膏型の乾燥温度が低いため石膏型の水分量が多く、羽根部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が高くなった。その結果、羽根部で破損し高温特性に劣った。
比較例29では、石膏型の乾燥時間が短いため石膏型の水分量が多く、羽根部における40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が高くなった。その結果、羽根部で破損し高温特性に劣った。
本発明により、回転数の増大に伴う温度の増加に長期間にわたって安定して耐え得る、耐熱強度に優れたAl合金製コンプレッサーインペラーを低コストで供給することが可能である。また、本発明は、ターボチャージャーの加給能力を増加して内燃機関の出力向上に寄与することができるという工業上顕著な効果を奏する。
1・・・コンプレッサーインペラー
2・・・ボス部
3・・・ディスク部
4・・・羽根部
5・・・ボス部におけるポロシティ占有面積率の測定断面
6・・・ディスク部におけるポロシティ占有面積率の測定断面
7・・・羽根部におけるポロシティ占有面積率の測定断面
8・・・コンプレッサーインペラーの中心軸

Claims (5)

  1. ボス部と、羽根部と、ディスク部とを備えるAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーにおいて、内部に存在するポロシティの円相当径が120μm以下であり、40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が0.60%以下であることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー。
  2. 前記ボス部に存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が0.40%以下であり、前記羽根部に存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が0.60%以下であり、前記ディスクに存在する40〜120μmの円相当径を有するポロシティの占有面積率が0.20%以下である、請求項1に記載のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー。
  3. 前記Al合金鋳物が、Cu:1.40〜3.20mass%、Mg:1.00〜2.00mass%、Ni:0.50〜2.00mass%、Fe:0.50〜2.00mass%、Ti:0.010〜0.350mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl合金からなる、請求項1又は2に記載のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー。
  4. 720〜780℃のAl合金溶湯を調製する溶湯調製工程と;当該Al合金溶湯中の水素ガス量を0.30cc/100gAl以下に調整する水素ガス量調整工程と;水素ガス量を調整したAl合金溶湯を、水分量を0.09wt%以下に調整され、かつ、200〜350℃に予熱された石膏型とインペラーディスク面に接する面に配置された100〜250℃の冷やし金とで構成される製品形状の空間に圧入する圧力鋳造法によりAl合金鋳物を鋳造する鋳造工程と;当該Al合金鋳物を溶体化処理する溶体化処理工程と;溶体化処理したAl合金鋳物を時効処理する時効処理工程と;を備えることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法。
  5. 前記Al合金が、Cu:1.40〜3.20mass%、Mg:1.00〜2.00mass%、Ni:0.50〜2.00mass%、Fe:0.50〜2.00mass%、Ti:0.010〜0.350mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる、請求項4に記載のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法。
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