JP7311369B2 - タイヤ加硫金型の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ加硫金型の製造方法に関する。
新品の空気入りタイヤは、表面が滑面状であるため、十分な走行性能が発揮できないことがある。この場合、本来の走行性能を発揮するために、慣らし走行が必要となる。この慣らし走行を不要とするために、空気入りタイヤのトレッドの表面に微小な凹凸を設けて、新品時の走行性能を確保したいという要望がある。
特許文献1のタイヤ加硫金型の製造方法では、タイヤのトレッド部の踏面の少なくとも一部に微小な凹凸を形成するために、トレッド部の踏面を形成するタイヤ加硫金型のタイヤ成形面は、投射材を投射してタイヤ成形面に衝突させる投射材投射工程により形成される。
特開2013-136279号公報
しかし、特許文献1のタイヤ加硫金型の製造方法では、タイヤ加硫金型を鋳造などにより成形した後に投射材投射工程を行う必要があるため、タイヤ成形面に微小な凹凸を有するタイヤ加硫金型を効率的に製造できないという問題がある。
本発明は、タイヤ成形面に微小な凹凸を有するタイヤ加硫金型を効率的に製造できるタイヤ加硫金型の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、タイヤ加硫金型を成形するための金型成形面を有する石膏鋳型を準備し、前記石膏鋳型の前記金型成形面に水又は油を塗布し、前記石膏鋳型に溶湯を流して固めることを含み、前記石膏鋳型は、前記石膏鋳型を成形するための鋳型成形面を有するゴム型を用いて形成され、前記石膏鋳型を形成するときの前記ゴム型の前記鋳型成形面の油の付着量は、0.008mg/cm以上0.08mg/cm以下である、タイヤ加硫金型の製造方法を提供する
本発明に係るタイヤ加硫金型の製造方法によれば、石膏鋳型の金型成形面に水又は油が塗布された状態で石膏鋳型に溶湯が流し込まれると、溶湯の熱を受けた水又は油がガスとしてタイヤ加硫金型に巻き込まれることで、タイヤ加硫金型の表面に鋳巣が形成される。これにより、タイヤ加硫金型の鋳造と同時にタイヤ加硫金型のタイヤ成形面に多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面に多数の微小な凹凸を形成するためにタイヤ加硫金型の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面に微小な凹凸を有するタイヤ加硫金型を効率的に製造できる。また、ゴム型の鋳型成形面に油を付着させた状態で石膏鋳型を形成すると、石膏鋳型を乾燥させるときに、ゴム型の鋳型成形面の油が乾燥熱によって気化して、石膏鋳型の金型成形面に微小な凹凸が形成される。この石膏鋳型を用いてタイヤ加硫金型を鋳造することで、石膏鋳型の金型成形面に形成された微小な凹凸がタイヤ加硫金型のタイヤ成形面に転写されて、タイヤ加硫金型のタイヤ成形面に多数の微小な凹凸が形成される。これにより、タイヤ成形面に多数の微小な凹凸を形成するためにタイヤ加硫金型の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面に微小な凹凸を有するタイヤ加硫金型を効率的に製造できる。
ゴム型の鋳型成形面の油の付着量が0.008mg/cmよりも少ないと、石膏鋳型の金型成形面に十分な量の微小な凹凸を形成できないことがある。また、ゴム型の鋳型成形面の油の付着量が0.08mg/cmよりも多いと、石膏鋳型の金型成形面が必要以上に荒れることがある。
本発明の他の態様は、タイヤ加硫金型を成形するための金型成形面を有する石膏鋳型を準備し、前記石膏鋳型の前記金型成形面に水又は油を塗布し、前記石膏鋳型に溶湯を流して固めることを含み、前記石膏鋳型に前記溶湯を流した後に、前記石膏鋳型を自然冷却し、前記石膏鋳型を自然冷却した後に、前記石膏鋳型を強制冷却し、前記溶湯は、溶解されたアルミニウム合金であり、前記自然冷却の時間は、前記強制冷却した後の鋳造物の密度が2.6g/cmになる時間の1.5倍より長い、タイヤ加硫金型の製造方法を提供する
本発明に係るタイヤ加硫金型の製造方法によれば、石膏鋳型の金型成形面に水又は油が塗布された状態で石膏鋳型に溶湯が流し込まれると、溶湯の熱を受けた水又は油がガスとしてタイヤ加硫金型に巻き込まれることで、タイヤ加硫金型の表面に鋳巣が形成される。これにより、タイヤ加硫金型の鋳造と同時にタイヤ加硫金型のタイヤ成形面に多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面に多数の微小な凹凸を形成するためにタイヤ加硫金型の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面に微小な凹凸を有するタイヤ加硫金型を効率的に製造できる。また、一般的な鋳造用アルミニウム合金の密度は、2.6~2.8g/cm程度である。鋳造では、溶湯の凝固及び冷却が遅いと、金属組織が粗くなり、鋳造品に形成される鋳巣が増加することがある。また、鋳造品に形成される鋳巣が増加すると、鋳造品の密度が低下する。このタイヤ加硫金型の製造方法によれば、自然冷却の時間が、強制冷却した後の鋳造物の密度が2.6g/cmになる時間の1.5倍より長いので、この方法で製造されたタイヤ加硫金型には、密度が2.6g/cmであるタイヤ加硫金型よりも多くの鋳巣が発生する。これにより、タイヤ加硫金型1の鋳造と同時に、タイヤ加硫金型のタイヤ成形面に多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面に多数の微小な凹凸を形成するためにタイヤ加硫金型の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面に微小な凹凸を有するタイヤ加硫金型を効率的に製造できる。
例えば、タイヤサイズが195/65R15であるサマータイヤを製造する場合、タイヤ加硫金型の密度を2.6g/cm以上としようとすると、自然冷却の時間は、溶湯が石膏鋳型に流し込まれてから約30分間に設定される。これに対して、本発明に係るタイヤ加硫金型の製造方法では、タイヤサイズが195/65R15であるサマータイヤを製造する場合、自然冷却の時間は、溶湯が石膏鋳型に流し込まれてから45分間以上である。
前記自然冷却の時間は、前記強制冷却した後の前記鋳造物の密度が2.0g/cm以下になるように設定されていてもよい。
一般的な鋳造用アルミニウム合金の密度は、2.6~2.8g/cm程度である。このタイヤ加硫金型の製造方法によれば、石膏鋳型を用いた鋳造により製造された鋳造物の密度が2.0g/cm以下であるので、タイヤ加硫金型には、密度が2.6~2.8g/cmであるタイヤ加硫金型と比較して、多くの鋳巣が発生している。これにより、タイヤ加硫金型の鋳造と同時に、タイヤ加硫金型のタイヤ成形面に多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面に多数の微小な凹凸を形成するためにタイヤ加硫金型の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面に微小な凹凸を有するタイヤ加硫金型を効率的に製造できる。
本発明のさらに他の態様は、タイヤ加硫金型を成形するための金型成形面を有する石膏鋳型を準備し、前記石膏鋳型の前記金型成形面に水又は油を塗布し、前記石膏鋳型に溶湯を流して固めることを含み、前記溶湯中の水素ガスの含有量は、0.5cc/100g以上である、タイヤ加硫金型の製造方法を提供する
本発明に係るタイヤ加硫金型の製造方法によれば、石膏鋳型の金型成形面に水又は油が塗布された状態で石膏鋳型に溶湯が流し込まれると、溶湯の熱を受けた水又は油がガスとしてタイヤ加硫金型に巻き込まれることで、タイヤ加硫金型の表面に鋳巣が形成される。これにより、タイヤ加硫金型の鋳造と同時にタイヤ加硫金型のタイヤ成形面に多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面に多数の微小な凹凸を形成するためにタイヤ加硫金型の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面に微小な凹凸を有するタイヤ加硫金型を効率的に製造できる。また、鋳造に使用する溶湯を製造するために金属を溶解すると、金属を溶解するために用いるるつぼ内には、水素ガスが発生する。このるつぼ内の水素ガスが溶湯に取り込まれると、鋳巣の発生要因となる。そのため、一般的には、溶湯中の水素ガスの含有量は、0.15cc/100g以下に保たれる。これに対して、本発明に係るタイヤ加硫金型の製造方法によれば、溶湯中の水素ガスの含有量が、0.5cc/100g以上であるので、この製造方法で製造されたタイヤ加硫金型には、溶湯中の水素ガスの含有量が0.15cc/100g以下である場合と比較して、多くの鋳巣が発生する。これにより、タイヤ加硫金型1の鋳造と同時に、タイヤ加硫金型のタイヤ成形面に多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面に多数の微小な凹凸を形成するためにタイヤ加硫金型の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面に微小な凹凸を有するタイヤ加硫金型を効率的に製造できる。
例えば、一般的なタイヤ加硫金型の製造方法では、タイヤサイズが195/65R15であるサマータイヤを製造する場合、鋳巣の発生を抑制するために、5分間の脱ガス処理が3回行うことで、溶湯中の水素ガスの含有量を0.15cc/100gに保っている。これに対して、本発明に係るタイヤ加硫金型の製造方法では、例えば、脱ガス処理の回数を減らす及び/又は脱ガス処理の1回当たりの時間を短くして、溶湯中の水素ガスの含有量を0.5cc/100g以上に保つことで、溶湯中の水素ガスの含有量が0.15cc/100g以下である場合と比較して、タイヤ加硫金型に多くの鋳巣を形成する。
本発明によれば、タイヤ成形面に微小な凹凸を有するタイヤ加硫金型を効率的に製造できる。
本発明の実施形態に係るタイヤ加硫金型の概略構成を示す断面図。 タイヤのマスターモデルを示す模式的な断面図。 タイヤのマスターモデルを用いたゴム型の製作を説明するための模式図。 ゴム型を用いた石膏鋳型の製作を説明するための模式図。 複数の石膏鋳型を組み合わせることを説明するための模式図。 組み合わせた複数の石膏鋳型を用いたタイヤ加硫金型の鋳造を説明するための模式図。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1から図6を参照して、本実施形態に係るタイヤ加硫金型の製造方法について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫金型1の概略構成を示す断面図であり、タイヤ径方向の一方側(図1において右側)のみ示している。なお、図1には、タイヤ加硫金型1において加硫成形される空気入りタイヤ101が、仮想線(二点鎖線)で併せて示されている。空気入りタイヤ101は、グリーンタイヤをタイヤ軸線が上下方向に向くようにタイヤ加硫金型1にセットして加硫成形することによって製造される。
図1に示すように、タイヤ加硫金型1は、環状のセクターモールド2と、この内径側に位置する上下一対のサイドプレート3,4と、この更に内径側に位置する上下一対のビードリング5,6とを有し、これらの内側に空気入りタイヤ101が加硫成形されるキャビティ7が画定された、所謂セグメンテッドモールドとして構成されている。
セクターモールド2、サイドプレート3,4、及びビードリング5,6のキャビティ7を画定する内壁面はそれぞれ、空気入りタイヤ101のトレッド部102、サイドウォール部103,104、及びビード部105,106をそれぞれ加硫成形する成形面として構成されている。
空気入りタイヤ101のトレッド部102の踏面には、微小な凹凸が形成されている。これにより、この空気入りタイヤ101は、トレッドの踏面が滑面状である場合と比較して、新品時の走行性能が高いため、慣らし走行が不要である。
本実施形態では、空気入りタイヤ101のトレッド部102を成型するためのセクターモールド2の製造方法を説明する。より詳細には、本実施形態では、踏面に微小な凹凸を有する空気入りタイヤ101のトレッド部102を成形するためのセクターモールド2の製造方法を説明する。
本実施形態に係るタイヤ加硫金型1の製造方法では、まず、図2に示すように樹脂などを用いて、タイヤ加硫金型1により製造する空気入りタイヤ101のトレッド部102(図1に示す)を模したマスターモデル10を製作する。
次に、図3に示すように、マスターモデル10を型枠11内に配置して、マスターモデル10と型枠11内との間のキャビティ12にシリコンゴムを流し込んで、シリコンゴムを硬化させることで、ゴム型20を製作する。ここで、ゴム型20には、マスターモデル10の表面形状が転写された鋳型成形面20aが形成されている。
そして、図4に示すように、ゴム型20を型枠21内に配置し、ゴム型20と型枠21との間のキャビティ22に石膏を流し込んで、固めることで石膏鋳型30を製作する。ここで、石膏鋳型30には、ゴム型20の鋳型成形面20aの表面形状が転写された金型成形面30aが形成されている。
次いで、図5に示すように、複数(本実施形態では8つ)の石膏鋳型30をリング状に組み立てる。
さらに、石膏鋳型30の金型成形面30aに、シリコンオイルを乳化剤で乳化したエマルジョン型のシリコンオイル離型剤を塗布する。具体的には、石膏鋳型30の金型成形面30aにエマルジョン型のシリコンオイル離型剤を噴霧する。これにより、エマルジョン型のシリコンオイル離型剤は、石膏鋳型30の金型成形面30aに均一に塗布される。本実施形態に係るシリコンオイル離型剤は、本発明に係る油の一例である。なお、シリコンオイル離型剤のような油に代えて、石膏鋳型30の金型成形面30aに水を塗布してもよい。
最後に、図6に示すようにリング状に配置された石膏鋳型30を主型31に配置して、石膏鋳型30と主型31との間のキャビティ32にアルミニウム合金を溶解した溶湯を流し込んで、溶湯を冷却及び凝固させることで、セクターモールド2を製造する。ここで、セクターモールド2には、石膏鋳型30の金型成形面30aの表面形状が転写されたタイヤ成形面2aが形成されている。
より詳細には、本実施形態では、溶湯が流し込まれた石膏鋳型30を放置して、大気との熱交換により徐々に冷却する自然冷却を行った後に、冷却ファンを用いて、溶湯が流し込まれた石膏鋳型30を急冷する強制冷却を行う。本実施形態に係るタイヤ加硫金型1の製造方法によりタイヤサイズが195/65R15のサマータイヤ用のタイヤ加硫金型1を製造する場合、石膏鋳型30への入湯が完了してから、30分程度の自然冷却を行った後に強制冷却を行う。
また、セクターモールド2の鋳造に用いられるアルミニウム合金は、るつぼ炉(図示せず)を用いて溶解される。このとき、るつぼ炉の内部では、溶解したアルミニウム合金(溶湯)から水素ガスが発生している。本実施形態に係るタイヤ加硫金型1の製造方法では、アルミニウム合金の溶解中に、脱ガス装置(図示せず)を用いて溶湯から水素ガスを取り除く脱ガス処理が行われる。本実施形態では、5分間の脱ガス処理を3回行う。これにより、本実施形態の溶湯中の水素ガスの含有量は、0.15cc/100g以下に保たれている。
本実施形態のタイヤ加硫金型1の製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。
石膏鋳型30の金型成形面30aにエマルジョン型のシリコンオイル離型剤のような油が塗布された状態で石膏鋳型30に溶湯が流し込まれると、溶湯の熱を受けたエマルジョン型のシリコンオイル離型剤のような油がガスとしてセクターモールド2に巻き込まれることで、セクターモールド2の表面に鋳巣が形成される。これにより、セクターモールド2の鋳造と同時にセクターモールド2のタイヤ成形面2aに多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面2aに微小な凹凸を形成するためにセクターモールド2の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面2aに微小な凹凸を有するセクターモールド2(空気入りタイヤ101)を効率的に製造できる。
また、本実施形態では、タイヤ成形面2aの全体に渡って微小な凹凸が形成される。これより、このタイヤ加硫金型1の製造方法により製造されたセクターモールド2を用いて空気入りタイヤ101を製造すると、トレッド部102の踏面に設けられた溝内に微小な凹凸を容易に形成できる。その結果、空気入りタイヤ101の雪上性能を向上できる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、ゴム型20の鋳型成形面20aの油の付着量を除いて、第1実施形態と同様であり、図1から図6を援用する。また、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。
図4を参照すると、ゴム型20を用いた石膏鋳型30の製作において、ゴム型20の鋳型成形面20aには、油(例えば、エマルジョン型のシリコンオイル離型剤)が塗布されている。言い換えれば、本実施形態では、ゴム型20を型枠21内に配置し、ゴム型20の鋳型成形面20aに油を塗布した後に、ゴム型20と型枠21との間のキャビティ22に石膏を流し込んで、固めることで石膏鋳型30を製作する。本実施形態では、ゴム型20から石膏鋳型30を製作するときのゴム型20の鋳型成形面20aでの油の付着量を0.008mg/cm以上0.08mg/cm以下にする。
本実施形態のタイヤ加硫金型の製造方法によれば、第1実施形態に係るタイヤ加硫金型1の製造方法と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態のタイヤ加硫金型1の製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。
この製造方法によれば、ゴム型20の鋳型成形面20aに油を付着させた状態で石膏鋳型30を形成すると、石膏鋳型30を乾燥させるときに、ゴム型20の鋳型成形面20aの油が乾燥熱によって気化して、石膏鋳型30の金型成形面30aに微小な凹凸が形成される。この石膏鋳型30を用いてセクターモールド2を鋳造することで、石膏鋳型30の金型成形面30aに形成された微小な凹凸がセクターモールド2のタイヤ成形面2aに転写される。これにより、セクターモールド2の鋳造と同時にセクターモールド2のタイヤ成形面2aに多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面2aに微小な凹凸を形成するためにセクターモールド2の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面2aに微小な凹凸を有するセクターモールド2(空気入りタイヤ101)を効率的に製造できる。
ゴム型20の鋳型成形面20aの油の付着量が0.008mg/cmよりも少ないと、石膏鋳型30の金型成形面30aに十分な量の微小な凹凸を形成できないことがある。また、ゴム型20の鋳型成形面20aの油の付着量が0.08mg/cmよりも多いと、石膏鋳型30の金型成形面30aが必要以上に荒れることがある。
(第3実施形態)
第3実施形態では、溶湯の自然冷却の時間を除いて、第1実施形態と同様であり、図1から図6を援用する。また、第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成には同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。
図6を参照すると、石膏鋳型30を用いたタイヤ加硫金型1の鋳造において、溶湯が流し込まれた石膏鋳型30を放置して、大気との熱交換により徐々に冷却する自然冷却を行った後に、冷却ファンを用いて、溶湯が流し込まれた石膏鋳型30を急冷する強制冷却を行う。本実施形態のタイヤ加硫金型1の製造方法では、自然冷却の時間は、強制冷却した後の鋳造物の密度が2.6g/cmになる時間の1.5倍より長い。具体的には、本実施形態では、自然冷却の時間は、強制冷却した後の鋳造物の密度が2.0g/cm以下になるように設定されている。
例えば、タイヤサイズが195/65R15であるサマータイヤを製造する場合、タイヤ加硫金型の密度を2.6g/cm以上としようとすると、自然冷却の時間は、溶湯が石膏鋳型30に流し込まれてから30分間より短く設定される。これに対して、このタイヤ加硫金型1の製造方法では、タイヤサイズが195/65R15であるサマータイヤを製造する場合、自然冷却の時間は、溶湯が石膏鋳型30に流し込まれてから45分間より長く設定される。
本実施形態のタイヤ加硫金型1の製造方法によれば、第1実施形態に係るタイヤ加硫金型1の製造方法と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態のタイヤ加硫金型1の製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。
一般的な鋳造用アルミニウム合金の密度は、2.6~2.8g/cm程度である。鋳造では、溶湯の凝固及び冷却が遅いと、金属組織が粗くなり、鋳造品に形成される鋳巣が増加することがある。また、鋳造品に形成される鋳巣が増加すると、鋳造品の密度が低下する。このタイヤ加硫金型1の製造方法によれば、自然冷却の時間が、強制冷却した後の鋳造物の密度が2.6g/cmになる時間の1.5倍より長いので、この方法で製造されたセクターモールド2には、密度が2.6g/cmである鋳造品よりも多くの鋳巣が発生する。これにより、セクターモールド2の鋳造と同時にセクターモールド2のタイヤ成形面2aに多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面2aに微小な凹凸を形成するためにセクターモールド2の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面2aに微小な凹凸を有するセクターモールド2(空気入りタイヤ101)を効率的に製造できる。
また、このタイヤ加硫金型の製造方法によれば、石膏鋳型を用いた鋳造により製造された鋳造物の密度が2.0g/cm以下であるので、タイヤ加硫金型には、密度が2.6~2.8g/cmである鋳造品と比較して、多くの鋳巣が発生している。これにより、セクターモールド2の鋳造と同時にセクターモールド2のタイヤ成形面2aに多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面2aに微小な凹凸を形成するためにセクターモールド2の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面2aに微小な凹凸を有するセクターモールド2(空気入りタイヤ101)を効率的に製造できる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、溶湯中の水素ガスの含有量を除いて、第1実施形態と同様であり、図1から図6を援用する。また、第4実施形態において、第1実施形態と同様の構成には同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、図6に示す石膏鋳型30を用いた鋳造において、溶湯中の水素ガスの含有量は、0.5cc/100g以上である。
例えば、一般的なタイヤ加硫金型の製造方法では、タイヤサイズが195/65R15であるサマータイヤを製造する場合、鋳巣の発生を抑制するために、5分間の脱ガス処理が3回行われることで、溶湯中の水素ガスの含有量を0.15cc/100gに保っている。これに対して、本実施形態に係るタイヤ加硫金型1の製造方法では、例えば、脱ガス処理の回数を減らす及び/又は脱ガス処理の1回当たりの時間を短くして、溶湯中の水素ガスの含有量を0.5cc/100g以上に保つことで、溶湯中の水素ガスの含有量が0.5cc/100g未満である場合と比較して、セクターモールド2に多くの鋳巣を形成する。例えば、2分30秒の脱ガス処理を3回行うことで、溶湯中の水素ガスの含有量を0.5cc/100g以上にしてもよい。または、例えば、5分の脱ガス処理を1回行うことで、溶湯中の水素ガスの含有量を0.5cc/100g以上にしてもよい。
本実施形態のタイヤ加硫金型1の製造方法によれば、第1実施形態に係るタイヤ加硫金型1の製造方法と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態のタイヤ加硫金型1の製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。
鋳造に使用する溶湯を製造するために金属を溶解すると、金属を溶解するために用いるるつぼ内には、水素ガスが発生する。このるつぼ内の水素ガスが溶湯に取り込まれると、鋳巣の発生要因となる。そのため、一般的には、溶湯中の水素ガスの含有量は、0.15cc/100g以下に保たれる。これに対して、本発明に係るタイヤ加硫金型1の製造方法によれば、溶湯中の水素ガスの含有量が、0.5cc/100g以上であるので、この製造方法で製造されたセクターモールド2には、溶湯中の水素ガスの含有量が0.15cc/100g以下の場合と比較して、多くの鋳巣が発生する。これにより、セクターモールド2の鋳造と同時に、セクターモールド2のタイヤ成形面2aに多数の微小な凹凸が形成されるので、タイヤ成形面2aに微小な凹凸を形成するためにセクターモールド2の鋳造後に他の加工を別途施す必要がない。その結果、タイヤ成形面2aに微小な凹凸を有するセクターモールド2(空気入りタイヤ101)を効率的に製造できる。
本実施形態では、脱ガス処理の回数を減らす及び/又は脱ガス処理の1回当たりの時間を短くして、溶湯中の水素ガスの含有量を0.5cc/100g以上にしていたが、この場合であっても、溶湯中の水素ガスの含有量は、5.0cc/100g以下に保たれている。
以上、実施形態を説明したが、特許請求の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
例えば、第1実施形態から第5実施形態をそれぞれ組み合わせてもよい。
1 タイヤ加硫金型
2 セクターモールド
2a タイヤ成形面
3,4 サイドプレート
5,6 ビードリング
7 キャビティ
10 マスターモデル
11 型枠
12 キャビティ
20 ゴム型
20a 鋳型成形面
21 型枠
22 キャビティ
30 石膏鋳型
30a 金型成形面
31 主型
32 キャビティ
101 空気入りタイヤ
102 トレッド部
103,104 サイドウォール部
105,106 ビード部

Claims (4)

  1. タイヤ加硫金型を成形するための金型成形面を有する石膏鋳型を準備し、
    前記石膏鋳型の前記金型成形面に水又は油を塗布し、
    前記石膏鋳型に溶湯を流して固める、
    ことを含み、
    前記石膏鋳型は、前記石膏鋳型を成形するための鋳型成形面を有するゴム型を用いて形成され
    前記石膏鋳型を形成するときの前記ゴム型の前記鋳型成形面における油の付着量は、0.008mg/cm以上0.08mg/cm以下である、タイヤ加硫金型の製造方法。
  2. タイヤ加硫金型を成形するための金型成形面を有する石膏鋳型を準備し、
    前記石膏鋳型の前記金型成形面に水又は油を塗布し、
    前記石膏鋳型に溶湯を流して固める、
    ことを含み、
    前記石膏鋳型に前記溶湯を流した後に、前記石膏鋳型を自然冷却し、
    前記石膏鋳型を自然冷却した後に、前記石膏鋳型を強制冷却し、
    前記溶湯は、溶解されたアルミニウム合金であり、
    前記自然冷却の時間は、前記強制冷却した後の鋳造物の密度が2.6g/cmになる時間の1.5倍より長い、タイヤ加硫金型の製造方法。
  3. 前記自然冷却の時間は、前記強制冷却した後の前記鋳造物の密度が2.0g/cm以下になるように設定されていることを特徴とする、請求項に記載のタイヤ加硫金型の製造方法。
  4. タイヤ加硫金型を成形するための金型成形面を有する石膏鋳型を準備し、
    前記石膏鋳型の前記金型成形面に水又は油を塗布し、
    前記石膏鋳型に溶湯を流して固める、
    ことを含み、
    前記溶湯中の水素ガスの含有量は、0.5cc/100g以上である、タイヤ加硫金型の製造方法。
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