JP4958292B2 - アルミニウムダイカスト合金、この合金からなる鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウムダイカスト合金、この合金からなる鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4958292B2
JP4958292B2 JP2007188011A JP2007188011A JP4958292B2 JP 4958292 B2 JP4958292 B2 JP 4958292B2 JP 2007188011 A JP2007188011 A JP 2007188011A JP 2007188011 A JP2007188011 A JP 2007188011A JP 4958292 B2 JP4958292 B2 JP 4958292B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alloy
cast
aluminum die
casting
compressor impeller
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007188011A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009024217A (ja
Inventor
正明 古閑
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Proterial Precision Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Precision Ltd
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Precision Ltd, Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Precision Ltd
Priority to JP2007188011A priority Critical patent/JP4958292B2/ja
Publication of JP2009024217A publication Critical patent/JP2009024217A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4958292B2 publication Critical patent/JP4958292B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Supercharger (AREA)
  • Structures Of Non-Positive Displacement Pumps (AREA)

Description

本発明は、例えば過給機に使用されるコンプレッサ羽根車などに好適な高強度と、ダイカストに好適な優れた耐焼付性とを有するアルミニウムダイカスト合金に関わり、また、このアルミニウムダイカスト合金からなる鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法に関するものである。
例えば自動車や船舶等の内燃機関に組み込まれる過給機は、内燃機関からの排気ガスを利用して排気側のタービン羽根車を回転させ、このタービン羽根車と同軸上にある吸気側のコンプレッサ羽根車を回転させて外気を吸気して圧縮する。そして、圧縮した空気を内燃機関に供給して内燃機関の出力向上を図る機能を有する。上述の過給機に使用されるタービン羽根車は、内燃機関から排出される高温の排気ガスに曝されるため、通常は耐熱強度に優れるニッケル合金やチタンアルミニウム合金等が使用される。一方、コンプレッサ羽根車は、外気を吸気する部分で利用されて高温に曝されることがないため、通常はアルミニウム合金等が使用される。
従来、コンプレッサ羽根車に使用されるアルミニウム合金としては、例えば、米国材料試験協会(ASTM)規定のAl−9%Si−1.8%Cu−0.5%Mg合金である354.0(以下、A354という)やAl−5%Si−1.3%Cu−0.5%Mg合金である355.0、JIS−AC4C(Al−7%Si−0.3%Mg合金)等が実用され、前記A354からなる鋳造コンプレッサ羽根車は多く利用されている。また近年は、内燃機関の燃焼効率をさらに向上させる目的でタービン羽根車およびコンプレッサ羽根車をより高速回転させるための種々の検討がなされ、高速回転によってコンプレッサ羽根車に作用する遠心力が増大すると予測されている。また、コンプレッサ羽根車は、高速回転することで曝露温度が従来よりも上昇して180〜200℃にも達すると予測されている。このため、常温に加え、180〜200℃といった高温域においても高強度を有するコンプレッサ羽根車が必要になると予測され、従来のA354よりも高強度な材質の開発が望まれている。
また、コンプレッサ羽根車は、例えば、ハブ軸部と、該ハブ軸部から半径方向に延在するとともにハブ面とディスク面を有するハブディスク部と、前記ハブ面に配列された複数の羽根部とを含み、各々の羽根部が複雑な空力学的曲面形状のブレード面を表裏に有する、複雑な形状を有している。そこで、従来、コンプレッサ羽根車は、鍛造素材から削り出して形成されるか、または、例えば特許文献1に開示されるようにプラスターモールド法により鋳造して形成される。前記A354からなる鋳造コンプレッサ羽根車もプラスターモールド法により製造されている。
前記プラスターモールド法は、製品と実質的に同一形状を有するゴム模型の周りに石膏などを被覆して鋳型を形成する鋳造方法である。鋳型の形成においてはゴム模型が内包されることとなるが、ゴム模型は大きく弾性変形させることができるため、上述した複雑な形状を有するコンプレッサ羽根車であっても、ゴム模型を鋳型から簡単に離型できる。よって、プラスターモールド法は、コンプレッサ羽根車のハブ部と複雑な形状を有する羽根部とを一体かつ一括で形成できる優れた製造方法である。しかしながら、ゴム模型や石膏鋳型の製作、鋳造後の石膏鋳型の解体やブラスト等による鋳型滓除去清浄など、製造工程が長いために生産性や製造コストの点では不利であり、改善が望まれている。
また、アルミニウム合金に適用される鋳造方法のひとつとして、優れた生産性やコストパフォーマンスを有しているダイカスト(高圧射出鋳造)が知られている。ダイカストでは、高圧力での溶湯射出に耐えられる鋳型として金型が使用され、金型のキャビティは一般的にはFe基合金を用いて画成される。このため、鋳造時の溶湯凝固速度(冷却速度)が特段に速くなり、これにより含有元素に拠らなくとも微細で緻密な鋳造組織が形成され、引張強さなどの機械特性の特段の向上が期待できる。
しかしながら、アルミニウム合金はFe基合金との親和性が高く、金型のキャビティにおいて焼付現象を生じやすい。このため、アルミニウム合金に対してFeやMnを添加することにより、ダイカスト用途に使用できる合金を得ることもあり、例えば特許文献2には、Al−Si−Cu−Mg系合金に対して質量%でFe:0.19〜0.30%およびMn:0〜0.49%を添加し、これにより合金の耐焼付性を向上させる提案もなされている。
また、アルミニウムダイカスト合金として一般的によく知られ、前記A354などよりもMg含有量が少ないAl−Si−Cu系合金であるJIS−H2118規定のADC12では、例えば非特許文献1(P.309、図1.7 試験片による鉄含有量と機械的性質(ADC−12))には、Fe含有量が0.5%違うだけで13%もの引張強さの違いを生じることが開示され、Fe含有量によっては引張強さを大きく損ねてしまうことが知られている。
特開2005−206927号公報 特開平10−298689号公報 文献名:鋳造技術シリーズ6 軽合金鋳物・ダイカストの生産技術、P.309図1.7試験片による鉄含有量と機械的性質(ADC−12)、編者:軽合金の生産技術教本編集部会、発行者:財団法人素形材センター、発行年:1993年12月27日
コンプレッサ羽根車に適用されている従来合金A354は、Si含有量を増し、Si含有量が増すことで多く形成されてしまい合金の強度を阻害する共晶Siを球状化するためにSrを添加し、これにより常温における強度を得ている。しかしながら、180〜200℃といった高温域における強度を得るためには、Siの作用効果では不十分であった。また、従来合金A354をそのままダイカストに適用しようとすると、金型に対する焼付現象を生じやすいという問題があった。
本発明の目的は、例えば鋳造コンプレッサ羽根車に用いられる従来合金A354よりも高強度を有することができる新規な合金組成であって、耐焼付性に優れるアルミニウムダイカスト合金を提供することである。また、前記アルミニウムダイカスト合金から成る鋳造コンプレッサ羽根車、および、その製造方法を提供することである。
本発明者は、常温(25℃)に加え、180〜200℃といった高温域でも合金が高強度を有するように、従来合金A354においてSiをNiに置換することが有効であることを見出し、さらに、Feの添加がSi含有量の少ない合金においても金型に対する合金の耐焼付性向上効果が有効に作用することを見出した。これらの知見をもとに他の添加元素との適正なバランスを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明のアルミニウムダイカスト合金は、質量%で、Cu:3.2〜5.0%、Ni:0.8〜3.0%、Mg:1.0〜3.0%、Ti:0.05〜0.20%、Si:1.0%以下、さらに0.3%を超えて1.5%以下のFeを含み、残部がAlおよび不可避的不純物から成る、耐焼付性に優れるアルミニウムダイカスト合金である。
本発明のアルミニウムダイカスト合金は、望ましくは、質量%で、Cu:4.0〜5.0%、Ni:1.0〜2.0%を含む。
より望ましくは、本発明のアルミニウムダイカスト合金は、質量%で、Fe:0.5〜1.5%を含む。
また、さらに望ましくは、本発明のアルミニウムダイカスト合金は、質量%で、Mg:1.2〜2.5%、Si:0.3〜1.0%を含む。
また、本発明のアルミニウムダイカスト合金は、質量%で、B:0.06%以下を含むことができる。
そして、本発明においては、自動車等に使用され、ハブ軸部と、該ハブ軸部から半径方向に延在するとともにハブ面とディスク面を有するハブディスク部と、前記ハブ面に配設された複数の羽根部とを含む羽根車形状体である鋳造コンプレッサ羽根車に、前記本発明のアルミニウムダイカスト合金を用いることが好適である。
また、前記複数の羽根部が、長羽根と短羽根とが交互に配列されて成る鋳造コンプレッサ羽根車にも、前記本発明のアルミニウムダイカスト合金を用いることができる。
前記鋳造コンプレッサ羽根車は、ハブ軸部と、該ハブ軸部から半径方向に延在するとともにハブ面とディスク面を有するハブディスク部と、前記ハブ面に配設された複数の羽根部とを含む、前記本発明のアルミニウムダイカスト合金を用いて羽根車形状にダイカスト形成した成形体を用意し、該成形体に対して溶体化処理を施し、前記溶体化処理された前記成形体に対して時効処理を施すことで、機械特性を改善することができる。それ故に、優れた鋳造コンプレッサ羽根車を得ることができる。
本発明のアルミニウムダイカスト合金は、鋳造コンプレッサ羽根車等に用いられていた従来のA354に比べ、常温(25℃)に加え、180〜200℃といった高温域においても高強度を有することができるとともに、ダイカストに適用できる優れた耐焼付性を有することが期待できる。
前記本発明のアルミニウムダイカスト合金を用い、例えば自動車などに搭載される過給機用の鋳造コンプレッサ羽根車を形成することにより、従来よりも高速回転であっても、また180〜200℃の高温環境下であっても使用可能な鋳造コンプレッサ羽根車を安定量産することができるので、本発明は工業上極めて有益な技術となる。
本発明のアルミニウムダイカスト合金における重要な特徴は、従来合金A354などのAl−Si−Cu−Mg系合金において、Siに代えてNiを添加し、さらにFeを添加した合金とし、該合金に含まれる各合金元素の含有量を適正化したことである。
以下、本発明のアルミニウムダイカスト合金について、Alに対する添加合金元素と各合金元素の含有量の限定理由について詳細に説明する。また、各合金元素の含有量は、特に断らない場合には質量%で示す。
Ni:0.8〜3.0%
本発明において、Niは、180〜200℃といった高温域において強度を向上させるために重要な元素である。例えば、従来合金A354におけるSiをNiに置換することで、Siによって得ていた常温(25℃)での強度を確保することに加え、Siでは不十分であった150℃や200℃といった高温域での強度の向上が期待できる。本発明において、Niは、合金の強度向上効果を有する他のCuおよびMgの含有量を考慮して0.8〜3.0%とする。Ni含有量が0.8%未満では、Ni系の金属間化合物の晶出量あるいは析出量が不足するので強度の向上が期待できない。また、Ni含有量が3.0%を超えると、Ni系の晶出物あるいは析出物が過剰に生成されてしまい、伸びを低下させることとなる。Ni含有量は、望ましくは1.0〜2.0%とする。このように合金に対して適量のNiを含ませることにより、Ni系の金属間化合物が好適に生成され、上述したように高温域での強度の向上が期待できるようになる。
Fe:0.3%を超えて1.5%以下
本発明において、Feは、合金をダイカスト用途に用いる場合、金型に対する耐焼付性を向上させ、ダイカスト形成に使用する金型に対する焼付現象を抑制させるために重要な元素である。本発明において、Feは0.3%を超えて添加することが望ましく、CuやNiおよびMgの含有量を考慮して0.3〜1.5%とする。これにより、合金の強度を阻害させることなく耐焼付性の向上が期待できる。それ故に、従来合金A354と同様に実用に適うようになり、また、ダイカスト用途に好適なアルミニウムダイカスト合金となる。Fe含有量が0.3%以下では、ダイカストに適用した場合に金型の焼付現象を防止することができない。また、Fe含有量が1.5%を超えると脆化しやすくなって強度が劣化してしまう。こうなると、例えば鋳造コンプレッサ羽根車用途等では致命的である。
なお、従来合金A354では、Feは、強度や伸びを劣化させる元素であるとして、ASTMでは0.2%以下に規制されていた。これは、FeがSiとの間で金属間化合物を生成しやすく、また、Feが多く含まれると共晶Siの球状化が阻害されて強度が阻害されることによる。また、上述の非特許文献1が開示するように、Feは、合金の引張強さに対して鋭敏に影響しやすい元素であり、合金におけるFe含有量をできるだけ低く規制しておくことが望ましいことによる。本発明では、Siを1.0%以下に規制することでFeとSiとの金属間化合物や共晶Siの生成を抑え、この問題の発生を防止している。
Si:1.0%以下
本発明においては、Siは、上述したようにFeとの金属間化合物や共晶Siを生成し、また、Mgと結び付いてMgSiを生成する。これらの生成物が過多になると合金の強度が阻害されるため、Si含有量を1.0%以下とする。なお、Mg含有量を考慮した上で、Siを少量添加することは望ましい。生成されたMgSiを溶体化処理によりAlマトリックス内へ固溶させ、次いで時効処理により均一かつ微細に析出させることにより、合金の常温での強度をさらに向上させることができる。しかしながら、本発明においては、Si含有量を1.0%超にすると、Alマトリックス内に固溶しきれないSiが析出物として粒界に残存し、これにより伸びを劣化させることがある。また、Siは、Mgに対して優先的に結合するため、Alマトリックス内に固溶するMg量が減少することとなって強度を低下させることがある。望ましくは、Si含有量を0.3〜1.0%とし、これによりダイカストにおける鋳造性を確保するとともに合金の強度をさらに向上させる。例えばコンプレッサ羽根車をダイカスト形成する場合、コンプレッサ羽根車の薄肉の羽根部に対する湯流れ性の向上が期待できる。
以下、上述したNiやFe、およびSi以外の各合金元素について説明する。
本発明においては、SiをNiに置換し、Siを多量に含まない合金とした。しかしながら、単純に置換しただけでは、常温(25℃)での合金の強度は十分ではない。そこで、常温(25℃)での強度低下を補償するために、CuおよびMgの含有量を最適化した。
CuおよびMgは、Siを多量に含ませない場合には、Alマトリックス内に固溶することで合金の強度を向上させる固溶強化や、鋳造後に熱処理(T6処理:JIS−H0001)を施すことで合金の強度を向上させる析出強化といった作用効果を発現する重要な元素である。
Cu:3.2〜5.0%
本発明において、Cu含有量は3.2〜5.0%とし、十分な強度を得る。Cu含有量が3.2%以下では、Alマトリックス内への固溶量が不足するので、合金が十分な強度を有さないことがある。また、Cu含有量が5.0%を超えると、粒界にCuAl(θ相)等の金属間化合物が多量に晶出したり析出したりするので破断伸び(以下、伸びという)を低下させることがある。Cu含有量は、望ましくは4.0〜5.0%とする。
Mg:1.0〜3.0%
本発明において、Mg含有量は1.0〜3.0%とし、Alマトリックス内にMgを固溶させる。もしくは、Siを含む場合には、MgとSiとで金属間化合物(MgSi)を生成させて固溶させる。これにより伸びを向上させる作用効果を得る。よって、Mg含有量を好適にすることでFeを含ませても適度な伸びを有することができる合金となることが期待できる。しかしながら、Mg含有量が1.0%未満では、Alマトリックス内への固溶量が少なすぎて固溶強化が期待できない。また、Mg含有量が3.0%を超えると、余剰となったMgによって伸びが低下してしまうばかりか、鋳造性を著しく阻害することがある。Mg含有量は、望ましくは1.2〜2.5%とする。
また、CuおよびNiを含むアルミニウム合金を鋳造した場合、鋳造の凝固時にAlNiCu(Y相)やCuAl(θ相)といった晶出物が生成される。さらにMgおよびSiを含む場合には、凝固時にMgSiといった晶出物が生成される。そして、凝固時に生成される各金属間化合物のなかでも、Niを含む金属間化合物であるAlNiCu(Y相)が優先的に晶出する。Y相は、高温での強度を向上させるが、過剰な晶出は伸びを低下させてしまう。また、このY相に取り込まれなかったCuは、主としてCuAl(θ相)を生成し、溶体化処理および時効処理を経て得られる析出強化に寄与する。それ故に、CuおよびNiを適正に含ませるようにしてY相およびθ相の生成を調整することが望ましく、合金における強度と伸びのバランスをより好適にでき、常温における強度がさらに向上されることが期待できる。あるいはさらに150〜200℃といった高温における強度の向上も期待できるものとなる。
Ti:0.05〜0.20%
本発明において、Ti含有量を0.05〜0.20%にすると、Alマトリックスが生成される過程でTiAl等の結晶核が結晶粒界に晶出する。これにより、Alマトリックスの結晶粒の成長を抑制してAlマトリックスの結晶粒を微細化させ、合金の強度をさらに向上させる。例えばコンプレッサ羽根車をダイカスト形成する場合に、急冷凝固によって薄肉である羽根部の凝固組織は微細化されやすく、羽根部に比べて鋳造容量の大きいハブ部の凝固速度は極端に遅くなることが予測される。よって、適量のTiを添加して鋳造容量の大きいハブ部における結晶粒を微細化させることにより、鋳造コンプレッサ羽根車の強度の向上が期待できる。なお、従来のA354では、Tiは0.20%以下とされ、必ずしも含まなくともよいとされる元素である。しかしながら、本発明においては、Tiが0.05%未満では結晶粒を微細化させる効果が小さく、例えば上述したハブ部において十分な強度が得られないことがある。一方、Tiが0.20%を超えると、結晶粒の微細化に寄与しない余剰のTiが他元素とTiAlなどの金属間化合物を生成し、Alマトリックスの結晶粒界に過剰に晶出して伸びを低下させることがある。
本発明のアルミニウムダイカスト合金においては、前記Ni、Fe、Cu、Mg、Tiは積極的に添加することで有効な作用効果を得るための重要な元素である。また、前記Siは、Mg含有量を考慮して添加することで有効な作用効果が得られる元素である。また、後述するように、Ti含有量を考慮してBを添加することで、Tiの作用効果を促進させることもできる。これらの元素以外の残部は、マトリックスとなるAlと、不可避的不純物である。
本発明においては、Bは必ずしも含まなくともよい元素である。しかしながら、原料としてTiBを使用することで、原料として純Tiを使用するよりも、コスト面で格段に有利となる。例えばTiBを使用する場合、Ti含有量の20%程度のBを含むように調整することが望ましい。これにより、BはTiB等を生成し、Alマトリックスの結晶粒の微細化を促進させるといったTiの作用効果をより高めるように作用する。例えばTi含有量を0.05〜0.20%とする場合、B含有量を0.001〜0.06%となるように調整することが望ましい。この場合、0.06%を超えてBを含ませても効果の向上は期待できず、TiB等が多量に晶出することとなって伸びを低下させることがある。
本発明における不可避的不純物としては、Mn、Zn、Pb、Sn、Cr、C、N、Oといった元素が混入する場合がある。不可避的不純物のうちMnは、Al−Si系合金においては、Feには及ばないものの、Fe基合金から成る金型に対する合金の焼付性を改善する作用効果が知られている。本発明においては、例えば不純物としてのMnは、0.20%以下であれば本発明の作用効果を阻害することがない。
本発明のアルミニウムダイカスト合金は、上述した通り、質量%でCu:3.2〜5.0%、Ni:0.8〜3.0%、Mg:1.0〜3.0%、Ti:0.05〜0.20%、Si:1.0%以下、さらに0.3%を超えて1.5%以下のFeを含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成とすることが重要である。また、本発明のアルミニウムダイカスト合金は、その組成によってダイカスト形成されたままの状態よりもさらに優れた機械特性を得るために、HIP処理(熱間静水圧加圧処理)や、溶体化処理および時効処理(T6処理:JIS−H0001)を施すことができる。これにより、常温(25℃)や、150℃や200℃といった高温においても優れた強度が期待できるアルミニウムダイカスト合金を得ることができる。
HIP処理は、ダイカスト形成したままの状態において鋳造時の内部欠陥が存在する場合、この欠陥を押し潰して微小化することができ、上述の溶体化処理および時効処理を施す前に施すことが望ましい。HIP条件は、高温環境下で軟化させて塑性変形させる処理であることから、合金を溶融させない程度の高温が望ましく480〜550℃が好適である。また、圧力もできる限り高圧力が望ましく90MPa以上が好適である。そして、前記温度および前記圧力により1〜5時間で保持することが好適である。これにより、鋳造時の内部欠陥の微小化が期待できる。なお、HIP処理は、溶体化処理の処理条件と同等であることから、コストや生産性を考慮すれば、溶体化処理と同時に実施することが望まれる。しかしながら、HIP処理は、装置上の制約によって水冷等による急冷が難しく、HIP処理によって一旦Alマトリックス内に固溶した金属間化合物が徐冷されて析出してしまうため、溶体化処理と同等の効果を得ることは難しい。
溶体化処理は、前記各種金属間化合物をAlマトリックス内へ固溶させるために実施するものであり、対象となる合金組成に好適な処理条件を選定することができる。例えば、保持する温度や時間の条件を、温度480〜550℃、時間:6〜16hの範囲で幾つか変えて仮に溶体化処理を施し、各々の引張強さや伸びなどの機械特性を測定し、処理条件として好適な温度と時間を決定することができる。また、鋳造コンプレッサ羽根車などの用途に好適となる強度を確保するためには、次工程で施す時効処理による伸びの低下分を勘案し、処理条件を選定することが望ましい。
時効処理は、先に選定した処理条件で溶体化処理を施した後に、前記各種の金属間化合物を析出させて、所望する0.2%耐力、伸び、引張強さなどの機械特性を確保するために実施する。時効処理条件は、対象となる合金組成に好適な処理条件を選定すればよく、例えば、保持する温度や時間の条件を、温度150〜200℃、時間:3〜16hの範囲で幾つか変えて仮に時効処理を施し、各々の引張強さや伸びなどの機械特性を測定し、処理条件として好適な温度と時間を決定することができる。また、鋳造コンプレッサ羽根車などの用途に好適となる強度や伸びが得られる処理条件を選定することができる。
次に、本発明の鋳造コンプレッサ羽根車について説明する。
本発明の鋳造コンプレッサ羽根車は、上述の本発明のアルミニウムダイカスト合金を用いてダイカスト形成することにより得られるものであり、ハブ軸部と、該ハブ軸部から半径方向に延在するとともにハブ面とディスク面を有するハブディスク部と、前記ハブ面に配設された複数の羽根部とを有してなる羽根車形状を有している。また、複数の羽根部は、長羽根と短羽根とが交互に配列されたものであってもよい。
本発明の鋳造コンプレッサ羽根車の一例を、図1(a)および図1(b)に模式的に示す。鋳造コンプレッサ羽根車1(以下、羽根車1という)は、ハブ軸部2と、該ハブ軸部2から半径方向に延在するとともにハブ面4とディスク面5を有するハブディスク部3、前記ハブ面4に配設された複数の羽根部とを含む羽根車形状を有している。また、この羽根車1の羽根部は、長羽根6と短羽根となるスプリッタ羽根7とが交互に配列され、各々が複雑な空力学的曲面形状のブレード面を表裏に有している。
また、本発明の鋳造コンプレッサ羽根車は、上述の本発明のアルミニウムダイカスト合金と同じ組成成分を有することから、本発明のアルミニウムダイカスト合金と同等の機械特性を有することが期待できる。これとともに、ダイカスト形成によって得た鋳造コンプレッサ羽根車であることから、微細で緻密な鋳造組織が形成されており、従来合金A354などのAl−Si−Cu−Mg系合金を用いてプラスターモールド法によって得る鋳造コンプレッサ羽根車よりも、高強度を有する鋳造コンプレッサ羽根車となっていることが期待できる。
本発明の鋳造コンプレッサ羽根車を製造する方法としては、例えば以下のような手段を採用できる。
まず、ダイカスト成形装置により、上述の本発明のアルミニウムダイカスト合金からなる溶湯を用いてダイカスト形成することにより、コンプレッサ羽根車の形状を有する成形体を得る。次いで、得られた成形体に対して好適な条件で溶体化処理および時効処理を施す。具体的には、例えば、温度:480〜550℃、時間:6〜16hで溶体化処理した後に、温度:150〜200℃、時間:3〜16hで時効処理を施すことが好適である。また、必要に応じてバリ取りや研磨等の後処理を施すといった手段である。また、ダイカスト形成後の成形体に対し、HIP処理を施してもよい。
また、前記成形体のダイカスト形成においては、合金溶湯の射出温度、射出圧力、射出速度、および溶湯射出後の冷却パターン等のダイカスト条件は、コンプレッサ羽根車の形状や、溶湯やダイカスト成形装置等により適宜選択することができる。
また、溶体化処理は、Alマトリックス内への金属間化合物の固溶量の確保や、固溶において金属間化合物を均一に分布させることを考慮し、より望ましくは、温度:530〜550℃、時間:8〜12hで処理する。また、時効処理は、金属間化合物の析出量の確保や、析出において金属間化合物を均一に分布させることを考慮し、より望ましくは、温度:170〜190℃、時間:6〜10hで処理する。
また、本発明の鋳造コンプレッサ羽根車は、ダイカスト形成用の金型から離型可能な程度のアンダーカットを羽根部に有していてもよい。この場合、以下のような手段を採用すればよい。例えば、ダイカスト形成する羽根車形状を有する成形体の羽根部の形状を型開き可能な形状とし、ダイカスト形成後、例えば切削、押圧、曲げなどの機械加工を施すことにより、得られた成形体の羽根部を最終形状とするといった手段である。また例えば、鋳造コンプレッサ羽根車の隣接する各羽根間の空間形状を有するスライド金型を中心軸に向かって複数対向させ、これによって形成された空間に溶湯を射出充填して羽根車形状を有する成形体を形成後、スライド金型を回動させつつ中心軸の半径方向に移動させて型開きするといった手段である。
上述の本発明のアルミニウムダイカスト合金からなる溶湯は、以下のような手段によって製造することができる。まず所要の原料を溶解して金型等のインゴットケースに鋳造してインゴットを形成し、上述の各合金元素を規定量だけ含むアルミニウムダイカスト合金のマスター合金を得る。次いで、得られたマスター合金を溶解し、鋳造羽根車のダイカスト形成に用いるといった手段である。また、溶解にはガス式や電気式等の直接加熱炉や間接加熱炉、鋳造装置に設けられた溶解坩堝等を用いることができ、攪拌や脱ガス処理を施す等ことが望ましい。また、溶湯は大気中や不活性ガス雰囲気中で取り扱うことが望ましい。
(アルミニウムダイカスト合金)
以下、本発明のアルミニウムダイカスト合金につき、実施例によりさらに具体的に説明する。
表1に示す各組成の合金を用いて試験片を作製し、各試験片の機械特性を確認した。具体的には、各試験片を用い、温度:25℃(常温)、150℃、および200℃において、0.2%耐力(JIS−Z2241)、伸び(JIS−Z2241:破断伸び)、引張強さ(JIS−Z2241)を測定して評価した。また、温度180℃において低サイクル疲労試験を実施して評価した。以下、各元素の含有量はすべて質量%で記載する。なお、表1には、不可避的不純物の一例としてMnの含有量を示している。
前記試験片は、以下の手段により作製した。まず、大気雰囲気の電気溶解炉を用いて各合金溶湯を製造し、温度720℃の試料溶湯をスプーンにより採取し、型温100℃のJIS4号舟形金型(高さ40mm、長さ180mm下部幅20mm、上部幅30mm)に大気中で鋳造形成することにより、各々複数の試供体を製作した。得られた各試供体に対して、温度525℃、加圧力103MPaで2時間保持する条件でHIP処理を施した。次いで、組成を鑑みて好適と考えられる処理条件を選定し、温度540℃で12時間保持した後に湯冷する溶体化処理を施し、さらに温度180℃で8時間保持した後に空冷する時効処理を施した。
次に、得られた各試供体から、機械加工によって全長95.0mmで外径12.7mm、平行部は長さ18.5mmで直径6.35mmの試験片を切り出した。これにより、表1におけるNo.1〜6の試験片を得た。なお、表1において、本発明のアルミニウムダイカスト合金の実施例としてはNo.2〜5試験片、比較例としてはFe含有量が過少のNo.1試験片、Fe含有量が過多のNo.6試験片である。また、従来合金A354から成るNo.7試験片も同様に製作した。上述のJIS4号舟形金型を用いて得た各々の試験片は、ダイカスト形成によって得た試験片よりも凝固組織が粗く形成される。このため、0.2%耐力、引張強さ、伸びなどの機械特性は、ダイカスト形成によって得た試験片よりも低下してしまう。しかしながら、それぞれの合金組成の機械特性を相対評価することは可能であり、このようなJIS4号舟型金型を用いる合金の特性評価手段は従来用いられている。
上述のように製作したNo.1〜7の各試験片を用い、25℃(常温)、150℃、200℃の各温度において、0.2%耐力、伸び、引張強さを測定した。そして、従来合金A354においてSiに換えてNiを添加し、さらにFeを添加することにより、従来合金A354と同等もしくはより高い0.2%耐力や引張強さが得られるのか、また、適度な伸びが得られるのかを確認した。そしてまた、従来はFe含有量が多くなると強度を阻害するとされていた点について、本発明のアルミニウムダイカスト合金の実施例であるNo.2〜5と、比較例であるNo.1、No.6とを比較して確認した。その結果を表2に示す。
0.2%耐力(JIS−Z2241)
25℃、150℃、および200℃における0.2%耐力は、従来合金A354(No.7)ではそれぞれ298MPa、274MPa、および252MPaに達し、Niを添加したNo.1〜6ではそれぞれ299〜316MPa、288〜303MPa、および280〜289MPaに達していた。よって、従来合金A354においてSiに換えてNiを添加し、さらにFeを添加した本発明の実施例(No.2〜5)を含むNo.1〜6のアルミニウムダイカスト合金は、25℃においては従来合金A354に比べて同等もしくはそれ以上の0.2%耐力を有していることが確認できた。また、150℃や200℃といった高温においては、従来合金A354よりもより高い0.2%耐力を有していることが確認できた。
次に、No.1〜6において、25℃における0.2%耐力は、Feが0.15%と少ないNo.1では306MPaであり、Feが1.70%と多いNo.6では310MPaであって、Fe含有量が増えると0.2%耐力が低下するといった傾向は認められなかった。また、本発明の実施例であるNo.2〜5は、従来合金A354と同等もしくはより高い0.2%耐力を有することが確認できた。さらに、本発明の実施例であるNo.3(Fe:0.55%)は316MPaと最も高い0.2%耐力を有しており、適度なNiやFeを含む本発明のアルミニウムダイカスト合金は優れた0.2%耐力を有する合金となることが確認できた。
また、No.1〜6において、150℃における0.2%耐力は、No.1では296MPaであり、No.6では290MPaであった。また、200℃における0.2%耐力は、No.1では286MPaであり、No.6では280MPaであった。よって、150℃や200℃といった高温域では、Fe含有量が増えると0.2%耐力がわずかに低下するような傾向が認められたものの、従来合金A354よりも高い0.2%耐力を有しており、実用に適うことがわかった。また、本発明の実施例であるNo.2〜5は、150℃や200℃といった高温域であっても、従来合金A354よりも高い0.2%耐力を有していることが確認できた。さらに、150℃において本発明の実施例であるNo.3は303MPaと最も高い0.2%耐力を有し、200℃において本発明の実施例であるNo.2(Fe:0.35%)は289MPaと最も高い0.2%耐力を有していた。よって、適度なNiやFeを含む本発明のアルミニウムダイカスト合金は、150℃や200℃といった高温域であっても、優れた0.2%耐力を有する合金となることが確認できた。
以上より、従来合金A354においてSiに換えてNiを添加して高強度とし、さらに、ダイカストに使用する金型に対する耐焼付性を向上させるためにFeを0.30〜1.50%含ませた本発明のアルミニウムダイカスト合金は、従来のA354と比べても0.2%耐力が低下せず、むしろ、さらに高い0.2%耐力を有することができることが確認できた。よって、本発明のアルミニウムダイカスト合金が、従来のA354と同様に0.2%耐力について実用に適う合金であることを確認でき、また、Fe含有量が多いことから優れた耐焼付性が期待できるアルミニウムダイカスト合金であることが確認できた。
引張強さ(JIS−Z2241)
25℃、150℃、および200℃における引張強さは、従来合金A354(No.7)ではそれぞれ396MPa、321MPa、および277MPaに達し、Niを添加したNo.1〜6ではそれぞれ358〜388MPa、348〜362MPa、および320〜342MPaに達していた。
なお、25℃においては、本発明の比較例でありFeを1.70%と多く含むNo.6では、引張強さが358MPaと従来合金A354よりも低くなっていた。また、Feが0.35〜1.47%の本発明の実施例(No.2〜5)や、Feがさらに少ない0.15%のNo.1では、従来合金A354にはやや及ばないものの実用に適う引張強さを有していた。よって、常温(25℃)においては、Fe含有量が1.50%を超えて過多になると、合金の引張強さを低下させることがわかった。
また、150℃や200℃といった高温においては、従来合金A354においてSiに換えてNiを添加し、さらにFeを添加した本発明の実施例(No.2〜5)を含むNo.1〜6のアルミニウムダイカスト合金は、従来合金A354よりもより高い引張強さを有しており、実用に適う合金であることが確認できた。さらに、Feを添加したNo.1〜6のアルミニウムダイカスト合金のなかにあっても、本発明の実施例であるNo.3(Fe:0.55%)は25℃および150℃において388MPaおよび362MPaと最も高い引張強さを有し、本発明の実施例であるNo.5(Fe:1.47%)は200℃において342MPaと最も高い引張強さを有していた。よって、適度なNiやFeを含む本発明のアルミニウムダイカスト合金は優れた引張強さを有する合金となることが確認できた。
以上より、本発明のアルミニウムダイカスト合金は、従来のA354と比べてもあまり引張強さが低下せず、150℃や200℃といった高温域では、むしろ、さらに高い引張強さを有することができることが確認できた。よって、本発明のアルミニウムダイカスト合金が、従来のA354と同様に引張強さについて実用に適う合金であることを確認でき、また、Fe含有量が多いことから優れた耐焼付性が期待できるアルミニウムダイカスト合金であることが確認できた。
伸び(JIS−Z2241:破断伸び)
前記表2に示すように、溶体化処理および時効処理をすべて同じ処理条件として実施したところ、25℃、150℃、および200℃のいずれにおいても従来合金A354の伸びが大きくなった。また、Feが1.47%以下のNo.1〜5では、いずれの温度においても伸びが5%を超えていた。しかしながら、Feが1.70%と過多のNo.6では、25℃で4.7%、150℃で5.0%、200℃で4.8%と、最も小さい伸びとなっていた。これより、Fe含有量が過多になると、合金の伸びを低下させることがわかった。
また、伸びは、例えばコンプレッサ羽根車用途に使用される合金においては少なくとも5%を超えることが望まれ、Feを添加した本発明の実施例(No.2〜5)を含むNo.1〜5のアルミニウムダイカスト合金が有する伸びは、例えばコンプレッサ羽根車用途に適うことが確認できた。
以上より、本発明のアルミニウムダイカスト合金は、従来のA354と比べてもあまり伸びが低下せず、150℃や200℃といった高温域においても、むしろ、常温(25℃)とほぼ同等で安定した伸びを有することができることが確認できた。よって、本発明のアルミニウムダイカスト合金が、従来のA354と同様に伸びについて実用に適う合金であることを確認でき、また、Fe含有量が多いことから優れた耐焼付性が期待できるアルミニウムダイカスト合金であることが確認できた。
(低サイクル疲労特性)
次に、前記試験片のうち本発明のアルミニウムダイカスト合金の実施例となるNo.3、4と、Fe含有量が過少で比較例となるNo.1と、従来合金A354である7を用い、高周波加熱装置を用いて180℃に加熱した試験片に対し、10000回以下で破壊されると考えられる0.8%の歪量を制御しながら繰り返し負荷する低サイクル疲労試験を実施した。その結果を図2に示す。なお、180℃の環境下を選定したのは、例えばコンプレッサ羽根車用途における常用中の最高温度とされていることによる。
従来合金に比べFe含有量を増した本発明の実施例となるアルミニウムダイカスト合金は、No.4が約3530回、No.3が約3960回で破壊に到った。また、本発明の合金よりもFe含有量が過少なNo.1は約4390回で破壊に到った。一方、従来合金A354は約2940回で破壊に到った。
よって、従来は機械特性が劣化するとされていたFeを0.3〜1.5%と多く添加した本発明のアルミニウムダイカスト合金は、従来合金A354よりも良好な低サイクル疲労特性を有していることがわかった。また、Fe含有量が多くなると低サイクル疲労特性が低下していく傾向が認められ、従来合金A354の低サイクル疲労特性と比べてもFe含有量は1.5%を超えない範囲が好適であることが推測できた。それ故に、本発明のアルミニウムダイカスト合金は、実用に適う低サイクル疲労特性を有するとともに、Fe含有量が多いことから優れた耐焼付性が期待できるアルミニウムダイカスト合金であることが確認できた。
(鋳造コンプレッサ羽根車)
次に、本発明のアルミニウムダイカスト合金を用いて、図1に示す鋳造コンプレッサ羽根車1(羽根車1)を製作した。
具体的には、まず、ハブ軸部2と、該ハブ軸部2から半径方向に延在するとともにハブ面4とディスク面5を有するハブディスク部3、前記ハブ面4に配設された複数の羽根部とを含む羽根車形状体である羽根車1と、実質的に同形状の空間からなるキャビティを6台のスライド金型を用いて画成したダイカスト形成用金型を準備した。次に、前記ダイカスト形成用金型を組み込んだダイカスト成形機に対して、上述の表1に示すFe含有量0.55%の試験片No.3と同じ組成成分を有する溶湯を供給し、ダイカスト形成用金型のキャビティ内に溶湯を射出して充填した。そして、充填した溶湯が十分に凝固するまで放冷した。放冷後、ダイカスト形成用金型のキャビティを画成していたスライド金型を、ハブ軸部2の軸心から半径方向に移動しながら回転させて離型し、羽根車1と実質的に同形状にダイカスト形成された成形体を得た。離型の際、前記成形体は金型から滑らかに離型できた。また、前記成形体には、外観上、金型との焼付現象と考えられる疵等は認められず、溶湯の不廻り、ヒケ、ピンホールといった鋳造欠陥も認められなかった。
この後に、得られた成形体に対し、525℃、103MPaで2時間保持するHIP処理を施した。これにより、前記成形体において生じたミクロシュリンケージ等の鋳造欠陥を鋳造コンプレッサ羽根車として所望される機械特性を損ねない程度に微小化することができた。さらに、HIP処理した前記成形体に対し、540℃で12時間保持する溶体化処理を施した後に180℃で8時間保持する時効処理を施し、仕上げとして清浄化処理を行って、図1に示す形状のダイカスト形成された本発明の鋳造コンプレッサ羽根車1を得ることができた。
本発明の鋳造コンプレッサ羽根車の一例を模式的に示す斜視図(a)および側面図(b)である。 本発明のアルミニウムダイカスト合金から成る試験片を用いた低サイクル疲労試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
1.鋳造コンプレッサ羽根車、2.ハブ軸部、3.ハブディスク部、4.ハブ面、5.ディスク面、6.長羽根、7.スプリッタ羽根

Claims (9)

  1. 質量%で、Cu:3.2〜5.0%、Ni:0.8〜3.0%、Mg:1.0〜3.0%、Ti:0.05〜0.20%、Si:1.0%以下、さらに0.3%を超えて1.5%以下のFeを含み、残部がAlおよび不可避的不純物から成る耐焼付性に優れていることを特徴とするアルミニウムダイカスト合金。
  2. 質量%で、Cu:4.0〜5.0%、Ni:1.0〜2.0%を含む、耐焼付性に優れていることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムダイカスト合金。
  3. 質量%で、Fe:0.5〜1.5%を含む、耐焼付性に優れていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウムダイカスト合金。
  4. 質量%で、Mg:1.2〜2.5%、Si:0.3〜1.0%を含む、耐焼付性に優れていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアルミニウムダイカスト合金。
  5. 質量%で、B:0.06%以下を含む、耐焼付性に優れていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアルミニウムダイカスト合金。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のアルミニウムダイカスト合金で形成された鋳造コンプレッサ羽根車であり、ハブ軸部と、該ハブ軸部から半径方向に延在するとともにハブ面とディスク面を有するハブディスク部と、前記ハブ面に配設された複数の羽根部とを含むことを特徴とする鋳造コンプレッサ羽根車。
  7. 複数の羽根部が、交互に配列された長羽根と短羽根からなることを特徴とする請求項6に記載された鋳造コンプレッサ羽根車。
  8. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のアルミニウムダイカスト合金を用いて、ハブ軸部と、該ハブ軸部から半径方向に延在するとともにハブ面とディスク面を有するハブディスク部と、前記ハブ面に配設された複数の羽根部とを含む、羽根車形状にダイカスト形成した成形体を用意する段階と、該成形体に対して溶体化処理を施す段階と、前記溶体化処理された前記成形体に対して時効処理を施す段階とを含む、ことを特徴とする鋳造コンプレッサ羽根車の製造方法。
  9. 前記成形体に対してHIP処理を施す段階を含むことを特徴とする請求項8に記載の鋳造コンプレッサ羽根車の製造方法。
JP2007188011A 2007-07-19 2007-07-19 アルミニウムダイカスト合金、この合金からなる鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4958292B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007188011A JP4958292B2 (ja) 2007-07-19 2007-07-19 アルミニウムダイカスト合金、この合金からなる鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007188011A JP4958292B2 (ja) 2007-07-19 2007-07-19 アルミニウムダイカスト合金、この合金からなる鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009024217A JP2009024217A (ja) 2009-02-05
JP4958292B2 true JP4958292B2 (ja) 2012-06-20

Family

ID=40396315

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007188011A Expired - Fee Related JP4958292B2 (ja) 2007-07-19 2007-07-19 アルミニウムダイカスト合金、この合金からなる鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4958292B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106170572A (zh) * 2014-03-15 2016-11-30 株式会社Uacj Al合金铸件制压缩机叶轮及其制造方法

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5598895B2 (ja) * 2009-01-14 2014-10-01 株式会社日立メタルプレシジョン アルミニウムダイカスト合金、この合金からなる鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法
JP2015059531A (ja) * 2013-09-19 2015-03-30 株式会社Uacj Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法
CA2911265A1 (en) * 2013-12-13 2015-06-18 Rio Tinto Alcan International Limited Aluminum casting alloy with improved high-temperature performance
CN105483473A (zh) * 2015-12-18 2016-04-13 百色学院 一种铸造轮毂用铝合金铸棒及其制备方法
JP6875795B2 (ja) * 2016-05-31 2021-05-26 アート金属工業株式会社 内燃機関用ピストン及びその製造方法
CN106756321A (zh) * 2016-12-19 2017-05-31 镇江创智特种合金科技发展有限公司 一种铝合金铸棒生产工艺

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5811760A (ja) * 1981-07-16 1983-01-22 Hitachi Metals Ltd 鋳造用アルミニウム合金
JPH07242976A (ja) * 1994-03-01 1995-09-19 Nippon Steel Corp 耐熱性に優れた展伸用アルミニウム合金およびその製造方法
JP4290024B2 (ja) * 2004-01-26 2009-07-01 古河スカイ株式会社 耐熱強度に優れたターボチャージャー用アルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラー
JP2007169731A (ja) * 2005-12-22 2007-07-05 Hitachi Metal Precision:Kk アルミニウム鋳造合金およびこれを用いたコンプレッサ羽根車
EP2036993A4 (en) * 2006-06-29 2011-01-26 Hitachi Metals Ltd ALLOY ALLOY FOR CASTING, MOLDED COMPRESSOR ROTOR COMPRISING ALLOY AND PROCESS FOR PRODUCING THE SAME

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106170572A (zh) * 2014-03-15 2016-11-30 株式会社Uacj Al合金铸件制压缩机叶轮及其制造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009024217A (ja) 2009-02-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8292589B2 (en) Casting aluminum alloy, cast compressor impeller comprising the alloy, and process for producing the same
JP4958292B2 (ja) アルミニウムダイカスト合金、この合金からなる鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法
US9410445B2 (en) Castable high temperature aluminum alloy
JP5598895B2 (ja) アルミニウムダイカスト合金、この合金からなる鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法
JP4845201B2 (ja) アルミニウムダイカスト合金およびこれを用いたコンプレッサ羽根車
JP5758402B2 (ja) 機械的強度が高く、耐熱クリープ性も高い、銅アルミニウム合金製の鋳造部品
JP2007169712A (ja) 塑性加工用アルミニウム合金
WO2014064876A1 (ja) Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法
CN103334034A (zh) 一种涡轮增压器压气机蜗壳的制备方法
JP2010053743A (ja) ダイカスト製コンプレッサ羽根車
WO2015141191A1 (ja) Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法
JPH07109536A (ja) 鍛造用アルミニウム合金及びその熱処理
CN103334035B (zh) 一种涡轮增压器压气机背盘及其制备方法
JP4390762B2 (ja) デファレンシャルギアケース及びその製造方法
JP4905680B2 (ja) マグネシウム鋳造合金およびこれを用いたコンプレッサ羽根車
JPH1112674A (ja) 内燃機関ピストン用アルミニウム合金およびアルミニウム合金製ピストン
JP2007169731A (ja) アルミニウム鋳造合金およびこれを用いたコンプレッサ羽根車
JP2009041066A (ja) 耐熱性に優れたマグネシウムダイカスト部品、鋳造コンプレッサ羽根車およびその製造方法
JP5083965B2 (ja) 鋳造コンプレッサ羽根車
JPH11246925A (ja) 高靱性アルミニウム合金鋳物およびその製造方法
JP2008088460A (ja) 高強度アルミニウム鋳造合金およびこれを用いたコンプレッサ羽根車
JP2008196367A (ja) コンプレッサ用鋳造羽根車およびその製造方法
JP2019210502A (ja) プリフォーム及びTiAl系タービンホイールの製造方法
JP2006161103A (ja) アルミニウム合金部材およびその製造方法
JP4796563B2 (ja) 熱処理用アルミニウム鋳造合金及び剛性に優れたアルミニウム合金鋳物の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100324

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110509

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120313

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120316

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120316

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150330

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees