JP4845201B2 - アルミニウムダイカスト合金およびこれを用いたコンプレッサ羽根車 - Google Patents

アルミニウムダイカスト合金およびこれを用いたコンプレッサ羽根車 Download PDF

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Description

本発明は、ダイカストに好適な優れた耐焼付性を有するアルミニウムダイカスト合金およびこれを用いたコンプレッサ羽根車に関する。
例えば自動車や船舶等の内燃機関に組み込まれる過給機は、内燃機関からの排気ガスを利用して排気側のタービン羽根車を回転させ、このタービン羽根車と同軸上にある吸気側のコンプレッサ羽根車を回転させて外気を吸気して圧縮する。そして、圧縮した空気を内燃機関に供給して内燃機関の出力向上を図る機能を有する。
上述の過給機に使用されるタービン羽根車は、内燃機関から排出される高温の排気ガスに曝されるため、通常は耐熱強度に優れるニッケル合金やチタンアルミニウム合金等が使用される。一方、コンプレッサ羽根車は、高速回転に耐えることは要求されるものの、外気を吸気する部分で利用されるため高温に曝されることがないので、通常はアルミニウム合金等が使用され、適度な伸びを有しつつ引張強度に優れる、例えば米国材料試験協会(ASTM)規定のAl−9%Si−1.8%Cu−0.5%Mg合金である354.0(以下、A354という)が実用されている。
コンプレッサ羽根車は、例えば図1に示すように、長羽根3と短羽根4とが、中心軸20から半径方向に広がるハブ部2に交互に隣接して各々複数枚放射状に突設され、各々が複雑な空力学的曲面形状のブレード面5を表裏に有する、複雑な形状を有している。そこで、従来は、鍛造素材から削出形成するか、または、例えば特許文献1に開示されるようにプラスターモールド法により鋳造形成されている。上述した実用されているA354からなるコンプレッサ羽根車もプラスターモールド法により製造されている。
プラスターモールド法は、製品と実質的に同一形状を有するゴム模型の周りに石膏などを被覆して鋳型を形成する鋳造方法である。鋳型の形成においてはゴム模型が内包されることとなるが、ゴム模型は大きく弾性変形させることができるため、上述した複雑な形状を有するコンプレッサ羽根車であっても、ゴム模型を鋳型から簡単に離型できる。よって、プラスターモールド法は、コンプレッサ羽根車のハブ部と複雑な形状を有する羽根部とを一体かつ一括で鋳造形成できる優れた製造方法である。しかし、ゴム模型や石膏鋳型の製作、鋳造後の石膏鋳型の解体やブラスト等による鋳型滓除去清浄など、製造工程が長いために生産性や製造コストの点では不利であり、改善が望まれている。
また、アルミニウム合金に適用される鋳造方法のひとつとして、優れた生産性やコストパフォーマンスを有しているダイカスト(高圧射出鋳造)が知られている。ダイカストでは、高圧力での溶湯射出に耐えられる鋳型として金型が使用され、金型のキャビティは一般的にはFe基合金を用いて画成される。このため、鋳造時の溶湯凝固速度(冷却速度)が特段に速くなり、これにより含有元素に拠らなくとも微細で緻密な鋳造組織が形成され、引張強度などの機械的特性の特段の向上が期待できる。
しかし、アルミニウム合金はFe基合金との親和性がよく、金型のキャビティにおいて焼付現象を生じやすい。このため、例えば特許文献2の0012段や0032段に開示されるように、アルミニウム合金に対して、Fe:0.19〜0.30質量%およびMn:0〜0.49質量%を含有させて耐焼付性を向上させる提案もなされている。
また、アルミニウムダイカスト合金として一般的によく知られるAl−Si−Cu系合金であるJIS−H2118規定のADC12では、例えば非特許文献1(P.309、図1.7 試験片による鉄含有量と機械的性質(ADC−12))には、Feの含有量が0.5%違うだけで13%もの引張強度の違いを生じることが開示され、Feの含有量によっては引張強度を大きく損ねてしまうことが知られている。
特開2005−206927号公報 特開平10−298689号公報 文献名:鋳造技術シリーズ6 軽合金鋳物・ダイカストの生産技術、P.309図1.7試験片による鉄含有量と機械的性質(ADC−12)、編者:軽合金の生産技術教本編集部会、発行者:財団法人素形材センター、発行年:1993年12月27日
本発明者は、従来はプラスターモールド法を適用して製造されていたA354からなるコンプレッサ羽根車を、従来よりも微細で緻密な鋳造組織を形成できるダイカストを適用して形成することを検討した。
しかし、A354をそのままダイカストに供しようとすれば、上述したように金型のキャビティにおいて焼付現象を生じることが予測されたため、従来のA354に対して、上述した特許文献2に開示されるようにFeやMnを添加して耐焼付性を向上させることを検討した。
しかしながら、Feは、金型を用いるダイカストでは比較的混入しやすい元素であって、上述した非特許文献1が開示するように、Feの含有量が引張強度に対して鋭敏に影響しやすい。また、特許文献2が開示するFe:0.19〜0.30質量%といった多量のFeを含有させると、アルミニウムダイカスト合金の引張強度や伸び(JIS−Z2241:破断伸び)が劣化してコンプレッサ羽根車として供用できなくなるという問題を確認した。
本発明の目的は、例えばコンプレッサ羽根車に用いられる従来のA354に対して、耐焼付性に優れたアルミニウムダイカスト合金を提供することである。また、これを用いたコンプレッサ羽根車を提供することである。
本発明者は、上述したように、金型を用いるダイカストでは比較的混入しやすく制御性に劣るFeの含有量を規制し、その代替えとしてMnを添加することにより耐焼付性を向上させることを検討し、従来のA354に対するMn並びにFeの適正な含有範囲を見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、質量%で、Cu:1.6〜2.0、Si:8.6〜9.4、Mg:0.4〜0.6、Ti:0.05〜0.3、Sr:0.005〜0.08、Mn:0.3〜0.8、Fe:0.2以下、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、耐焼付性に優れているアルミニウムダイカスト合金である。
また、本発明において望ましくは、Mn:0.3〜0.5であるアルミニウムダイカスト合金である。
そして、本発明においては、自動車等に使用され、ハブ軸の周りに配列された羽根部が形成された羽根車形状に、ダイカスト形成されるコンプレッサ羽根車には、上述の本発明のアルミニウムダイカスト合金を用いることが好適である。
本発明のアルミニウムダイカスト合金は、コンプレッサ羽根車等に用いられる従来のA354と同等の引張強度を有しつつ、ダイカストに適用できる優れた耐焼付性を有することができる。このアルミニウムダイカスト合金を用い、例えば自動車などに搭載される過給機用のコンプレッサ羽根車を形成することにより、従来よりも安価なコンプレッサ羽根車を安定量産することができるので、本発明は工業上極めて有益な技術となる。
本発明のアルミニウムダイカスト合金における重要な特徴は、Al−9%Si−1.8%Cu−0.5%Mg合金であるA354と同等の引張強度や伸びを有した上で、A354に対するFeの含有量を規制してMnの含有量を可能な限り増量させて、合金に優れた耐焼付性を持たせたことである。
以下、本発明のアルミニウムダイカスト合金について、Alに対する含有成分と各成分の含有範囲の限定理由について詳細に説明する。
Mn:0.3〜0.8(質量%)
本発明においては、Feの含有量を一定量以下に規制した上で、Mnを0.3%〜0.8%の範囲で含有させる。Mnは、Feと同様に、ダイカスト形成に使用する金型に対する耐焼付性を向上させる効果を有する元素であり、Mnを上記範囲に規制して含有させることにより、合金の引張強度や伸びを阻害することなく金型に対する耐焼付性を向上させることができる。そして、従来のA354と同様に実用に適うアルミニウムダイカスト合金となる。望ましくは、Mnを0.3%〜0.5%とする。
なお、従来のA354では、Mnは、伸びや引張強度を劣化させる元素であるとして、0.1%以下に規制されて実用されていた。しかしながら、Mnが0.3%未満では、ダイカストに適用した場合に金型の焼付現象を防止することができない。一方、Mnが0.8%を超えると伸びや引張強度が劣化してしまう。特に伸びの劣化は顕著に現れ、脆化しやすくなる。こうなると、例えばコンプレッサ羽根車用途等では致命的である。
Fe:0.2以下(質量%)
本発明において、Feの含有量は0.2%以下に規制する。Feは、Mnと同様に、ダイカスト形成に使用する金型に対する耐焼付性を向上させる効果を有する元素であり、その効果はMnよりも大きいと考えられている。しかしながら、上述した通りFeは、金型を用いるダイカストではMnと比べて混入しやすい元素であり、このために耐焼付性を確保する上では、Mnに依るよりも含有量の制御性がかなり劣る元素でもある。
また、従来のA354では、FeはMnと同様に、合金の伸びや引張強度を劣化させる元素であるとして、0.2%以下に規制されて実用されていた。これは、FeがSiとの間で金属間化合物を生成しやすく、Feの含有量が多くなると共晶Siの球状化が阻害されて伸びが劣化してしまうことによる。また、上述した通りFeは、合金の引張強度に対して鋭敏に影響しやすい元素であり、安定した機械特性を有する合金を量産するためには、Feの含有量をできるだけ低く規制しておくことが望ましい。
よって、本発明においては、Feの含有量を0.2%以下に規制することとした。これにより、合金の機械特性をより安定させるとともに、合金に含有可能なMn量を増量させることができる。なお、Feの含有量は限りなく低く抑えることが望ましい。それでもFeを低く抑えることは難しいため、本発明におけるFeは0.15%以上でもよい。
以下、本発明において含有させるMn、Fe以外の各元素について説明する。
Cu:1.6〜2.0(質量%)
本発明においては、Cuを1.6%〜2.0%の範囲で含有させる。これにより、伸びを阻害することなく十分な引張強度を得ることができる。なお、Cuが1.6%未満では、Al母相(マトリックス)中への固溶量が不足し、十分な引張強度が得られないことがある。一方、Cuが2.0%を超えると、CuAl等の金属間化合物が粒界に多量に晶出し、伸びを低下させることがある。
Si:8.6〜9.4(質量%)
本発明においては、Siを8.6%〜9.4%の範囲で含有させる。これにより、ダイカストにおける鋳造性が確保できるとともに、引張強度を向上させることができる。なお、Siが8.6%未満では、例えばコンプレッサ羽根車をダイカスト形成するにおいては、コンプレッサ羽根車の薄肉の羽根部に対する湯周りが不十分になるといったように、鋳造性を損ねてしまうことがある。一方、Siが9.4%を超えると、鋳造性や引張強度は向上するもののSiと他元素との金属間化合物が粒界に多量に晶出し、伸びを低下させることがある。
Mg:0.4〜0.6(質量%)
本発明においては、Mgを0.4%〜0.6%の範囲で含有させる。これにより、上述したCuと同様に、伸びを阻害することなく十分な引張強度を得ることができる。なお、Mgが0.4%未満では、Al母相(マトリックス)中への固溶量が少なすぎてMgSiの析出量が不足し、十分な引張強度が得られないことがある。一方、Mgが0.6%を超えると、MgSiの析出量が過剰となって伸びを低下させることがある。
Ti:0.05〜0.3(質量%)
本発明においては、Tiを0.05%〜0.3%の範囲で含有させる。例えばコンプレッサ羽根車をダイカスト形成する場合に、薄肉である羽根部に比べて鋳造容量の大きいハブ部の凝固速度は極端に遅くなることが予測できる。このため、鋳造時の凝固組織つまり結晶粒を微細化させる効果を有するTiを含有させることにより、鋳造容量の大きいハブ部における結晶粒を微細化させて引張強度を向上させる。
なお、従来のA354では、Tiは0.2%以下とされ、必ずしも含有されない元素である。しかし、Tiが0.05%未満では、結晶粒を微細化させる効果が小さく、例えば上述したハブ部において十分な引張強度が得られないことがある。一方、Tiが0.3%を超えると、結晶粒の微細化に寄与しない余剰のTiが他元素と金属間化合物を形成するなどによって伸びを低下させることがある。
Sr:0.005〜0.08(質量%)
本発明においては、Mnの含有により共晶Siの球状化が阻害されやすくなると考えられる。よって、生成される共晶Siの球状化を促進させるためにSrを0.005%〜0.08%の範囲で含有させる。これにより、共晶Siの球状化が促進されて針状や繊維状への成長を抑制でき、伸びの低下を防止することができる。なお、Srが0.005%未満では、共晶Siの球状化効果が期待できない。一方、Srが0.08%を超えると、共晶Siの球状化に寄与しない余剰のSrが他元素と金属間化合物を形成するなどによって伸びを低下させることがある。さらには、ピンホールやヒケといった鋳造不良を発生させることがあり、これはSrがHガスを吸着しやすいこと、また、鋳造時の凝固形態に影響を及ぼすことによると考えられる。
次に、本発明のコンプレッサ羽根車について説明する。
本発明のコンプレッサ羽根車は、耐焼付性に優れる上述した本発明のアルミニウムダイカスト合金を用いてダイカスト形成することにより得られるものであり、例えば図1に示す複雑な形状を有している。また、ダイカスト形成によって得たコンプレッサ羽根車であることから、微細で緻密な鋳造組織が形成されており、これにより適度な伸びを有しつつ従来よりも高い引張強度を有するコンプレッサ羽根車となっている。
本発明のコンプレッサ羽根車の形成手段としては、例えば以下のような手段が採用できる。まず、ダイカスト成形装置により、コンプレッサ羽根車の形状を有する羽根車素材を上述の本発明のアルミニウムダイカスト合金からなる溶湯を用いてダイカスト形成する。次いで、この羽根車素材に対して好適な条件で溶体化処理および時効処理等を施し、必要に応じてバリ取りや研磨等の後処理を施すといった手段である。また、途中にHIP処理を施してもよい。
また、上述の羽根車素材のダイカスト形成における溶湯の射出温度や射出圧力および射出速度、溶湯射出後の冷却パターン等のダイカスト条件は、コンプレッサ羽根車の形状や、溶湯やダイカスト成形装置等により適宜選択することができる。
また、本発明のコンプレッサ羽根車は、ダイカスト形成用の金型から離型可能な程度のアンダーカットを羽根部に有していてもよい。この場合、以下のような手段を採用すればよい。例えば、鋳造形成する羽根車素材の羽根部の形状を型開き可能な形状とし、鋳造形成後、例えば切削、押圧、曲げなどの機械加工を施すことにより羽根部を最終形状とするような手段である。また例えば、コンプレッサ羽根車の隣接する各羽根間の空間形状を有するスライド金型を中心軸に向かって複数対向させ、これによって形成された空間に溶湯を鋳造して成形後、スライド金型を回動させつつ中心軸の半径方向に移動させて型開きするような手段である。
上述の本発明のアルミニウムダイカスト合金からなる溶湯は、以下のような手段によって製造することができる。まず所要の原料を溶解して金型等のインゴットケースにより鋳造成形し、上述した各元素を規定量だけ含有するアルミニウムダイカスト合金素材を得る。溶解にはガス式や電気式等の直接加熱炉や間接加熱炉、鋳造装置に設けられた溶解坩堝等を用いることができ、攪拌や脱ガス処理を施す等ことが好ましい。また、溶湯は大気中や不活性ガス雰囲気中で取り扱うことが好ましい。
本発明のアルミニウムダイカスト合金は、その組成によってダイカスト形成されたままの状態よりもさらに優れた機械特性を得るために、HIP処理(熱間静水圧加圧処理)や溶体化処理および時効処理(T6処理:JIS−H0001)を施すことも好ましい。
HIP処理は、ダイカスト形成したままの状態において鋳造時の内部欠陥が存在する場合、この欠陥を押し潰して微小化することができる。
溶体化処理は、保持時間を幾つか変えて各々の引張強度や伸びを測定し、好適な保持温度と保持時間を決定する等の手段を採用すればよい。例えば、少なくとも5%以上の伸びを確保したい場合、次工程で施す時効処理による伸びの低下分を勘案して伸びが6%を超える条件を目安とするといった具合である。
時効処理は、先に決定した条件で溶体化処理を施した後、時効処理における保持時間を幾つか変えて各々の引張強度や伸びを測定する等の手段を採用すればよい。そして、所望の引張強度や伸びが確保できる条件を選定すればよい。
以下、本発明のアルミニウムダイカスト合金について、実施例によりさらに具体的に説明する。
表1に示す各組成の合金のそれぞれの機械特性を、具体的には硬さ、0.2%耐力、引張強度、伸び(JIS−Z2241:破断伸び)を、試験片を用いて測定評価した。以下、各元素の含有量はすべて質量%で記載する。
試験片は、以下の手段により鋳造形成して得た。まず、大気雰囲気の電気溶解炉を用いて各合金溶湯を製造し、温度720℃の試料溶湯をスプーンにより採取し、型温100℃のJIS4号舟形金型(高さ40mm、長さ180mm下部幅20mm、上部幅30mm)に大気中で鋳造形成することにより、各々複数の試供材を得た。
次いで、得られた試供材の半数に対して、溶体化処理および時効処理(T6処理)をすべて同一条件で施した。具体的には、溶体化処理は500℃で8h保持した後に湯冷し、時効処理は163℃で8h保持した後に空冷した。
次に、得られたすべての試供材から、機械加工によって全長95.0mmで外径12.7mm、平行部は長さ18.5mmで直径6.35mmの試験片を切り出した。これにより、表1において、T6処理を施さない本発明の実施例となる試験片Ao〜Doと、比較例となる試験片Po〜So、および、T6処理を施した本発明の実施例となる試験片A〜Dと、比較例となる試験片P〜Sを得た。なお、試験片PoおよびPは従来のA354からなる。
上述のように鋳造形成した各々の試験片は、ダイカスト形成した試験片よりも鋳造組織が粗く形成されることにより、硬さ、0.2%耐力、引張強度が低下してしまうものの、それぞれの合金組成の機械特性を相対評価することは可能であり、このようなJIS4号舟型金型を用いる合金の特性評価手段は従来用いられている。
硬さ(JIS−Z2244)
試験片を用いて、ロックウェル硬さ(HRB)を測定した。表2に、測定した硬さを示すとともに、従来のA354からなる試験片Poに対する試験片Ao〜DoおよびQo〜So、試験片Pに対する試験片A〜DおよびQ〜Sの硬さの増減度を示す。
いずれの試験片においても、従来のA354である試験片Poおよび試験片P(いずれもMn:0.03%)に対して含有させるMn量を増やすに連れて合金の硬さが増加する傾向が認められた。また、Mnを1.0%含有させた試験片SoやSでも、硬さは低下していなかった。さらにまた、試験片Po(Mn:0.03%)に対する硬さの増減度を比べると、試験片Qo(Mn:0.23%)では1.05、試験片Ao(Mn:0.33%)では1.15と、試験片Aoの方が大きくなっていた。これは、試験片Bo〜Doについても同様であり、Mnを0.3%以上含有させると硬さの向上効果があることがわかった。
以上より、ダイカストに使用する金型に対する耐焼付性を向上させるために従来のA354に対してMnを0.3%〜0.8%含有させた本発明のアルミニウムダイカスト合金では、従来のA354と比べても硬さは低下せず、むしろMnを0.3%以上含有させた場合には硬さが向上できることが確認できた。よって、本発明のアルミニウムダイカスト合金が、従来のA354と同等以上の硬さを有する実用に適う合金であることを確認できた。
0.2%耐力(JIS−Z2241)
試験片を用いて、0.2%耐力(MPa)を測定した。表3に、測定した0.2%耐力を示すとともに、従来のA354からなる試験片Poに対する試験片Ao〜DoおよびQo〜So、試験片Pに対する試験片A〜DおよびQ〜Sの0.2%耐力の増減度を示す。
いずれの試験片においても、従来のA354である試験片Poおよび試験片P(いずれもMn:0.03%)に対して含有させるMn量を増やしても合金の0.2%耐力への影響はほとんど認められず、特にT6処理を施した場合には従来のA354と同等であった。
以上より、ダイカストに使用する金型に対する耐焼付性を向上させるために従来のA354に対してMnを0.3%〜0.8%含有させた本発明のアルミニウムダイカスト合金では、従来のA354と比べても0.2%耐力は変化しないことが確認できた。よって、本発明のアルミニウムダイカスト合金が、従来のA354と同等の0.2%耐力を有する実用に適う合金であることを確認できた。
引張強度(JIS−Z2241)
試験片を用いて、引張強度(MPa)を測定した。表4に、測定した引張強度を示すとともに、従来のA354からなる試験片Poに対する試験片Ao〜DoおよびQo〜So、試験片Pに対する試験片A〜DおよびQ〜Sの引張強度の増減度を示す。
全体としては、従来のA354である試験片Poおよび試験片P(いずれもMn:0.03%)に対して含有させるMn量を増やすに連れて合金の引張強度が低下する傾向が認められた。また、Mnの含有により合金の引張強度は大きく阻害されると考えていたものの、Mnを0.75%含有するT6処理を施した試験片Dであっても試験片Pに対する引張強度の増減度は0.92であって、引張強度の低下は8%に留まっていた。さらにまた、Mnの含有量が0.3%〜0.5%程度のT6処理を施した試験片A(Mn:0.33%)や試験片B(Mn:0.50%)では、試験片Pと同等の引張強度を有していることがわかった。
以上より、ダイカストに使用する金型に対する耐焼付性を向上させるために従来のA354に対してMnを0.3%〜0.8%含有させた本発明のアルミニウムダイカスト合金では、従来のA354と比べても引張強度の低下は10%以下に抑えられることが確認できた。また、Mnの含有量が0.3%〜0.5%であれば従来のA354と同等の引張強度を確保できることが確認できた。よって、本発明のアルミニウムダイカスト合金が、従来のA354と同様に実用に適う合金であることを確認できた。
伸び(JIS−Z2241:破断伸び)
試験片を用いて、伸び(%)を測定した。表5に、示すとともに、測定した伸びを示すとともに、従来のA354からなる試験片Poに対する試験片Ao〜DoおよびQo〜So、試験片Pに対する試験片A〜DおよびQ〜Sの伸びの増減度を示す。
従来のA354では、T6処理の有無に拠らず、Mnの含有によって合金の伸びは大きく阻害されると考えられていた。今回、まず、T6処理を施さない場合について調べたところ、従来のA354に対して含有させるMn量を増やすに連れて、合金の伸びが低下していくことが確かめられた。つまり、最もMn含有量の少ない従来のA354と同じ組成である試験片Po(Mn:0.03%)の伸びが最大となっていた。また、T6処理を施した場合についてもT6処理を施さない場合と同様に、従来のA354に対して含有させるMn量を増やすに連れて、確かに合金の伸びが低下していく傾向が認められた。
一方、Mnの含有量を0.33%としてT6処理を施した本発明の実施例である試験片Aでは、従来のA354と同じ組成である試験片Pよりも伸びが低下せず、逆に明らかな伸びの向上が認められた。このことより、従来のA354に対してMnを含有させるにも関わらず伸びが向上するという、従来まったく考えられていなかった新たな作用効果について、今回初めてつきとめることができた。そして、従来のA354に対して含有させるMn量には、本発明で規定するように適正範囲が存在することが確認できた。
また、本発明の実施例である試験片B(Mn:0.50%)では、増減度が0.85であって伸びの低下が15%に抑えられていることがわかった。さらに、本発明の実施例である試験片C(Mn:0.63%)や試験片D(Mn:0.75%)でも、増減度が0.46であって伸びの低下が54%に抑えることができていた。これより、従来のA354に対して含有させるMn量が0.80%以下であれば、T6処理条件をより適正に選定することにより、所望の伸びを確保できることがわかった。
また、本発明で規定する範囲を超えて、従来のA354に対して多すぎるMnを含有させた場合には、従来考えられていたように伸びが劣化してしまうことが確かめられた。具体的には、従来のA354に対するMn含有量が0.84%のT6処理を施さない試験片RoやQoでは、試験片Poに対する伸びの増減度が0.31や0.30となっていた。また、従来のA354に対するMn含有量が0.84%のT6処理を施した試験片RやQでは、試験片Pに対する伸びの増減度が0.23や0.10となっていた。これより、従来のA354に対するMn含有量が0.80%を超えてしまうほどの試験片RoやQoあるいはRやQでは、たとえT6処理条件を適正に選定したとしても所望の伸びの確保が難しいところまでの伸びの低下があるということが確かめられた。
以上より、ダイカストに使用する金型に対する耐焼付性を向上させるために従来のA354に対してMnを0.3%〜0.8%含有させた本発明のアルミニウムダイカスト合金では、従来のA354と比べても、T6処理を施すといった手段によって伸びを確保することができることが確認できた。また、Mnの含有量が0.3%〜0.5%あるいは0.3%〜0.4%であれば、従来のA354と同等またはそれ以上の伸びを有するであろうことが確認できた。よって、本発明のアルミニウムダイカスト合金が、従来のA354と同様に実用に適う合金であることを確認できた。
次に、本発明のアルミニウムダイカスト合金を用いて、図1に示すコンプレッサ羽根車1を製作した。
具体的には、まず、長羽根3と短羽根4とが中心軸20から半径方向に広がるハブ部2に交互に隣接して各々複数枚放射状に突設された複雑な形状を有する、コンプレッサ羽根車1と実質的に同形状の空間からなるキャビティを6台のスライド金型によって画成したダイカスト形成用金型を準備した。
次に、このダイカスト形成用金型を組み込んだダイカスト成形機に対して、上述した表1に示した試験片AoおよびAと同じ組成成分を有する溶湯を供給し、ダイカスト形成用金型のキャビティ内に溶湯を射出充填した。そして、充填した溶湯が十分に凝固するまで放冷後、ダイカスト形成用金型のキャビティを画成していたスライド金型を、中心軸20から半径方向に移動しながら回転させて離型し、コンプレッサ羽根車1と実質的に同形状を有するダイカスト形成された成形体を得た。この後、得られた成形体をHIP処理し、さらに溶体化処理および時効処理し、仕上げとして清浄化処理を行って、図1に示す形状のダイカスト形成された本発明のコンプレッサ羽根車1を得ることができた。
本発明のコンプレッサ羽根車の一例を示す模式図である。
符号の説明
1.コンプレッサ羽根車、2.ハブ部、3.長羽根、4.スプリッタ羽根、5.ブレード面、20.中心軸、21.トレイリングエッジ面、22.フィレット面、23.リーディングエッジ部

Claims (3)

  1. 質量%で、Cu:1.6〜2.0、Si:8.6〜9.4、Mg:0.4〜0.6、Ti:0.05〜0.3、Sr:0.005〜0.08、Mn:0.3〜0.8、Fe:0.2以下、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、耐焼付性に優れていることを特徴とするアルミニウムダイカスト合金。
  2. 質量%で、Mn:0.3〜0.5であり、耐焼付性に優れていることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムダイカスト合金。
  3. ハブ軸の周りに配列された羽根部が形成された羽根車形状に、請求項1または2に記載のアルミニウムダイカスト合金がダイカスト成形されていることを特徴とするコンプレッサ羽根車。
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