JP2017155268A - Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー - Google Patents

Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー Download PDF

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Abstract

【課題】200℃程度の使用温度においても安定した耐熱強度を示すアルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラーを提供する。
【解決手段】ハブ部、複数の羽根部及びディスク部を備えるAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーにおいて、Al合金鋳物が、Cu:1.40〜3.20mass%(以下、「%」)、Mg:1.00〜2.00%、Ni:0.50〜2.00%、Fe:0.50〜2.00%、Ti:0.010〜0.350%、Si:0.10〜5.00%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl合金からなり、ハブ部の表面及び羽根部の表面に存在する開口した巣穴において、開口部の面積が3000μm以下、開口部の長辺の長さが800μm以下、かつ、開口面から巣穴の最深部までの深さが200μm以下であることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や船舶の内燃機関用のターボチャージャーに使用される、高温疲労強度に優れたアルミニウム合金鋳物製のコンプレッサーインペラー及びその製造方法に関する。
自動車や船舶用の内燃機関に用いられるターボチャージャーには、高速回転によって空気を圧縮して内燃機関に供給するためのコンプレッサーインペラーが設けられている。このコンプレッサーインペラーは、高速回転中には150℃程度の高温に達し、更に回転中心近傍、特にディスク部には回転軸からのねじり応力や遠心力などによる高い応力が発生する。
コンプレッサーインペラーは、ターボチャージャーの要求性能に応じて種々の素材によって形成される。船舶用などの大型の用途には、アルミニウム合金(以下、「Al合金」と記す)の熱間鍛造材からインペラー形状に削り出したものが、通常使用されている。乗用車、トラックなどの自動車用や小型船舶用などの比較的小型なものは、大量生産性やコストが重視される。そのため、鋳造性の良好なJIS−AC4CH(Al−7%Si−0.3%Mg合金)、ASTM−354.0(Al−9%Si−1.8%Cu−0.5%Mg合金)、ASTM−C355.0(Al−5%Si−1.3%Cu−0.5%Mg合金)等、Siを主要添加元素とした易鋳造性アルミニウム合金を、石膏型(プラスターモールド)を用いて低圧鋳造法、減圧鋳造法又は重力鋳造法などによって鋳造し、これを溶体化処理や時効処理により強化したものが広く使用されている。この基本的な製造方法は、特許文献1に詳細に開示されている。
近年になって、エンジンの小型化、高出力化や排気再循環量増加に伴う空気の高圧縮比化が要求される中、ターボチャージャーのより高速な回転が指向されている。しかしながら、回転数の増大によって空気の圧縮による発熱量が増加し、また、排気側のタービンインペラーも同時に高温化するため、これらの伝熱により操作中におけるコンプレッサーインペラーの温度は増大する。このため、上述の従来用いられていたSiを主要添加元素とした易鋳造性アルミニウム合金製のコンプレッサーインペラーでは使用中に変形したり、更には疲労破壊したりする不具合が発生し易く、正常な回転の継続が不可能となることが判明した。具体的には、これらの既存のコンプレッサーインペラーでは150℃程度が使用可能な温度の上限であるが、上述の高速回転指向により、200℃程度でも使用可能なコンプレッサーインペラーの開発が強く望まれている。
そこで、アルミニウム合金組成をより高温強度の優れた、例えばJIS−AC1B(Al−5%Cu−0.3%Mg合金)などに変更することが考えられる。しかしながら、特許文献2に記載されているように、コンプレッサーインペラーのように複雑形状で、かつ、薄肉の羽根部を有する場合には、このような合金では溶湯の良好な流動性に欠け、薄肉部への湯回り不良(充填不良)が発生し易い問題点があった。
特許文献2では上記問題点を解消すべく、湯回り性の重要視される羽根部にはAC4CHなどのAl−Si系の易鋳造性の合金を用い、強度の必要な回転軸に結合されるボス部からディスク部にかけてはAC1BなどのAl−Cu系の高強度の合金を用いて、これらを2回に分けて注湯して合体させ、コンプレッサーインペラーを形成する方法が提案されている。
また、特許文献3には、羽根部には鋳造性の良好な合金を用い、応力が加わるボス部からディスク部の中央部分にかけては25%Bを含有するアルミニウムウィスカーなどの強化材にアルミニウムを含浸させて強化した強化複合材を別途製造して用い、これらを接合してコンプレッサーインペラーを形成する方法が提案されている。特許文献4には、羽根部とボス部(及びディスク部)を摩擦圧接によって接合する方法が提案されている。
しかしながら、これら各部に異なる材料を併用する方法では、生産性が劣りコスト増加となる問題点が残り、工業化は未だに達成されていない。
このような異なる材料を用いる問題点に鑑み、特許文献5には、Al−Cu−Mg基合金の添加元素とその組み合わせの範囲を適正化することで単一合金での鋳造を可能とし、180℃での耐力値を250MPa以上としたコンプレッサーインペラーが提案されている。また、特許文献6には、Al−Cu−Mg基合金の添加元素とその組み合わせの範囲を更に適正化して結晶粒径を制御することで鋳造歩留まりを改善し、200℃での耐力値を260MPa以上としたコンプレッサーインペラーが提案されている。
しかしながら、上記Al−Cu−Mg基合金の単一合金鋳造に関する一連の特許文献は、合金強度を高め、かつ、内部組織を健全化することに主眼が置かれており、コンプレッサーインペラー製品の疲労寿命の低下を引き起こす原因の一つである、製品表面部の小さな引け巣については何ら言及していない。鋳造で製造される製品の表面には、ミクロンオーダーの寸法を有する小さな引け巣(以下、巣穴)が多数存在する。製品表面の巣穴が大きくなると、疲労破断の起点となることや疲労亀裂の進展を助長するため、製品の高温疲労強度を安定化させるためには巣穴を極力小さくする必要がある。
米国特許第4,556,528号明細書 特開平10−58119号公報 特開平10−212967号公報 特開平11−343858号公報 特開2005−206927号公報 特開2012−25986号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、長期間にわたって安定した高温疲労強度が得られる優れた耐熱性アルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラーを提供することを目的とするものである。具体的には、疲労破壊の起点となり得るコンプレッサーインペラー表面部に発生する巣穴の構造を規制するものである。
本発明は請求項1において、ハブ部、複数の羽根部及びディスク部を備えるAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーにおいて、前記Al合金鋳物が、Cu:1.40〜3.20mass%、Mg:1.00〜2.00mass%、Ni:0.50〜2.00mass%、Fe:0.50〜2.00mass%、Ti:0.010〜0.350mas%、Si:0.10〜5.00mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl合金からなり、前記ハブ部の表面及び羽根部の表面に存在する開口した巣穴において、開口部の面積が3000μm以下、開口部の長辺の長さが800μm以下、かつ、開口面から巣穴の最深部までの深さが200μm以下であることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーとした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記Al合金においてSi:0.30〜4.00mass%であるものとした。
本発明によれば、200℃付近での高温領域においても長期間にわたって安定した高温疲労強度を示すアルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラーを得ることができる。
本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの構造の一例を示す斜視図である。 本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー表面の巣穴測定部位を示す説明図である。 本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー表面の巣穴寸法を詳細に示す説明図である。
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
A.Al合金鋳物製コンプレッサーインペラーの形状
本実施形態に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー(以下、単に「コンプレッサーインペラー」と記す)の形状の一例を、図1に示す。コンプレッサーインペラー1は、回転中心軸に沿って裾野状に広がる領域であるハブ部2と、これに一体に連なるディスク部3と、このディスク部3から突出する複数枚の薄肉の羽根部4を有する。このコンプレッサーインペラー1の温度は、高速回転中には200℃程度の高温に達し、回転中心の近傍、特にハブ部や羽根部には回転軸からのねじり応力や遠心力などによる高い繰り返し応力が発生する。疲労破壊の形態は、高い応力が加わるハブ部や羽根部の表層付近にクラックが発生し、亀裂が内部へと進展することで破壊へ至るものである。
本発明者等は、上述の課題を解決するために種々実験検討を重ねた結果、鋳物用Al−Cu−Mg基合金において、Si濃度を適正な範囲に調整することで、製品表面における巣穴を縮小化することができ、200℃程度の高温使用時においても、ハブ部、ディスク部及び羽根部での破損のない高温疲労強度が長期間にわたって安定して優れるコンプレッサーインペラーが得られることを見出した。
なお、本発明において「高温疲労強度が長期間にわたって安定して優れる」とは200℃程度での使用温度でも、変形や疲労破壊が長期間にわたって発生しないことを意味する。具体的には、200℃、15万rpm×240時間でのターボ組み付け耐久試験による亀裂、破損が無いこととする。
B.Al合金の成分組成
次に、本発明で用いるAl合金の成分組成とその限定理由について説明する。
Cu、Mg:
CuとMgはAl母相中に固溶し、固溶強化によって機械的強度を向上させる効果を有する。また、CuとMgが共存することによって、AlCu、AlCuMg等の析出強化による強度向上にも寄与する。但し、これらの2種の元素は凝固温度範囲を拡大する元素であるため、過剰な添加は鋳造性を劣化させ、巣穴を粗大化させる。
Cu含有量が1.40mass%(以下、単に「%」と記す)未満の場合や、Mg含有量が1.00%未満の場合には、200℃の高温において必要とされる機械的強度が得られない。一方、Cu含有量が3.20%を超える場合やMg含有量が2.00%を超える場合には、コンプレッサーインペラーとしての鋳造性が劣化し、粗大な巣穴が発生する。従って、Cu含有量を1.40〜3.20%に規定し、Mg含有量を1.00〜2.00%に規定する。なお、使用中の変形などの不具合を確実に防止し、かつ、鋳造時の欠肉発生を可及的に防止して工業的に好適な歩留まりを得るためには、Cu含有量を1.70〜3.00%とするのが好ましく、Mg含有量を1.30〜1.80%とするのが好ましい。
Ni、Fe:
NiとFeは、Alとの間で金属間化合物を形成してAl母相中に分散して、Al合金の高温強度を向上させる効果を奏する。そのためには、Ni含有量を0.50%以上とし、Fe含有量を0.50%以上とする。しかしながら、これら両元素は共に過剰に含有されると、金属間化合物が粗大化してしまうだけでなく、高温においてCuFeAlやCuNiAlを形成してAl母相中の固溶Cu量を低減させ、却って強度を低下させてしまう。そのため、Ni含有量を2.00%以下とし、Fe含有量を2.00%以下とする。従って、Ni含有量を0.50〜2.00%に規定し、Fe含有量を0.50〜2.00%に規定する。なお、Ni含有量を0.50〜1.40%とするのが好ましく、Fe含有量を0.70〜1.50%とするのが好ましい。これら好ましい範囲の下限値は製造の際のバラツキを考慮し工業的に安定的な量産をする上での目安値であり、上限値は効果が飽和しこれ以上の添加は不経済となる添加量の目安値である。
Ti:
Tiは、鋳造時の初晶アルミニウム結晶粒の成長抑制効果を奏するため、鋳造中の凝固組織を微細化して溶湯補給性を改善し、湯回り性を改善する効果を発揮する。Ti含有量が0.010%未満では、上記効果が十分に得られない。一方、Ti含有量が0.350%を超えると、Alとの間に数十〜数百μmの大きさの粗大な金属間化合物を形成して回転時に疲労亀裂の起点となり、コンプレッサーインペラーとしての信頼性を低下させる。従って、Ti含有量を0.010〜0.350%に規定する。Ti含有量は、0.020〜0.300%とするのが好ましい。
Si:
Siは、固液共存温度領域内での液相体積率が高いために、鋳造時の湯流れ性を確保する効果を有する。Si含有量が0.10%未満では、最終凝固時の引け巣への溶湯充填が不十分となる。一方、Si含有量が5.00%を超えると、Al母相中に固溶しきれないSiが晶出物として粒界に残存し、Si粒は疲労破壊の起点となるため疲労強度を大幅に低下させる。従って、Si含有量を0.10〜5.00%に規定する。さらに、良好な流動性を確保しつつ優れた高温疲労強度を得るためには、Si含有量は0.30〜4.00%とするのが好ましい。
Al合金の不可避的不純物として、各々が0.20%程度以下であって全体で0.60%以下のZn、Mn、Crなどが含有されていても、コンプレッサーインペラーの特性を損なうことがないので許容される。
C.高温疲労強度
本発明に係るコンプレッサーインペラーは、200℃程度の高温の使用温度においても長期間にわたって安定した高温疲労強度を維持できる。具体的には、200℃での引張試験における0.2%耐力値を260MPa以上と規定する。この耐力値は、好ましくは265MPa以上である。なお、耐力値の上限値は、アルミニウム基材合金組成や製造条件によって自ずと決まるが、本発明では380MPaとする。
D.製造方法
次に、本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法について説明する。この製造方法は、溶湯調整工程、鋳造工程及び熱処理工程から構成される。
D−1.溶湯調整工程:
通常の方法に従って、上述のAl合金組成となるように各成分元素を加えて加熱溶解し、脱水素ガス処理及び介在物除去処理などの溶湯処理を行なう。そして、最終的な溶湯温度が700〜800℃となるように、溶湯温度を調整する。
D−2.鋳造工程:
鋳造工程では、溶湯調整工程において700〜800℃に温度調整された溶湯を、石膏型(プラスターモールド)を用いた圧力鋳造法(低圧鋳造法、減圧鋳造法又は差圧鋳造法)によってコンプレッサーインペラー形状に鋳造する。石膏型の予熱温度は100〜400℃に調整される。
鋳造の際の溶湯温度が700℃未満では、圧入された溶湯が製品形状空間内で早期に凝固することから湯回り不良が生じて製品形状が確保できなくなる。一方、この溶湯温度が800℃を超えると溶湯の酸化が進行して水素ガスの吸収及び酸化物の増加により溶品質が悪化し、製品強度を確保することが困難となる。また、石膏型の予熱温度が100℃未満では、型の先端に溶湯が充填される前に凝固が進行してしまうため湯回り不良が生じて製品形状が確保できなくなる。一方、石膏型の予熱温度が400℃を超えると、石膏型内での凝固が遅くなり内部ポロシティが発生する。
なお、石膏型に接してこれを冷却する冷やし金が用いられる。冷やし金の材質は、熱伝導率が高い銅及び銅合金が好ましいが、鉄、ステンレス鋼なども使用できる。また、冷やし金の温度調整には、冷やし金内部に水などの冷却媒体を通して鋳造中の過熱を抑制する機構を用いるのが好ましい。
熱処理工程:
鋳造されたAl合金鋳物は、熱処理工程にかけられる。熱処理工程は、溶体化処理工程と時効処理工程とで構成される。熱処理工程により、Cuによる固溶強化;CuとMgによる析出強化;AlとFeとの間、ならびに、AlとNiとの間で形成される金属間化合物による分散強化;を有効に活用することができる。
溶体化処理工程:
溶体化処理は、固相線温度から5〜25℃低い温度範囲で行うのが好ましい。本発明において好適に用いられるAl合金においては、固相線温度から5〜25℃低い温度範囲は510〜530℃となる。固相線温度から5〜25℃低い温度範囲を超える温度では、結晶粒界の第2相が溶融する危険性が高まり、強度確保が困難となる。一方、この温度範囲未満の温度では、元素拡散が十分に進行せず十分な溶体化が行われない。
時効処理:
時効処理は、150〜250℃で3〜50時間熱処理するのが好ましい。処理温度が150℃未満の場合や、処理時間が3時間未満の場合には、強度向上のための析出強化が不十分な場合がある。一方、処理温度が250℃を超える場合や、処理時間が50時間を超える場合には、形成された析出相が粗大化(過時効)して十分な強化作用が得られないとともに、Cuの固溶強化能が低下する。
D.コンプレッサーインペラー表面の巣穴
鋳造工程では、予熱された石膏型にアルミニウム合金溶湯を圧入し、ハブ部や羽根部が形成されていない側のディスク面に接した冷やし金(チルプレート)によりディスク部からハブ部や羽根部に向けてアルミニウム合金を凝固させる。冷やし金の温度は石膏型の温度よりも低く設定するため、コンプレッサーインペラー製品のハブ部及び羽根部の側(石膏型側)は凝固終了側となる。そのため、ハブ部及び羽根部の表面に開口した巣穴が発生することになる。
巣穴が大きくなると、疲労破断の起点になることから、巣穴は極力小さくする必要がある。疲労強度に影響する巣穴の寸法として、開口部の面積が3000μmを超える場合や、開口部の長辺の長さが800μmを超える場合や、開口面から巣穴の最深部までの距離が200μmを超える場合には、疲労破断の起点として作用する。従って、巣穴の寸法として、開口部の面積を3000μm以下、かつ、開口部の長辺の長さを800μm以下、かつ、開口面から巣穴の最深部までの距離を200μm以下に規定する。なお、母材強度が低下する高温域での疲労強度を考慮すると、巣穴寸法として、開口部の面積を2000μm以下、かつ、開口部の長辺距離を500μm以下、かつ、開口面から巣穴の最深部までの距離を150μm以下とするのが好ましい。なお、これらの数値については、小さいほど望ましいが、合金組成や製造方法などに基づいて工業的に生産する上において下限値が存在する。本発明においては、開口部の面積を1μm以下に、開口部の長辺の長さを1μm以下に、また、開口面から巣穴の最深部までの距離を1μm以下にするのは困難である。
巣穴は、凝固進行中に凝固収縮によって生じた間隙にアルミニウム合金溶湯が供給されないまま凝固が終了することで発生する。従って、このような巣穴の発生を低減し、或いは、発生してもその寸法を小さいものとするためには、凝固中のアルミニウム合金溶湯の湯流れ性を良くすることが重要となる。上述のように、Siを添加することで、アルミニウム合金溶湯の粘性を低下させ、更には、固液共存温度領域での液相率を大きくすることができるために、凝固中のアルミニウム合金溶湯の良好な湯流れ性が確保される。その結果、発生する巣穴の数を低減し、或いは、発生してもその寸法を小さいものにできる。
E.コンプレッサーホイール形状
本発明に係るコンプレッサーインペラーの形状や寸法、ならびに、羽根の枚数は特に限定されるものではなく、船舶用の大型用途や自動車などの小型用途など多くの用途のものに適用することができる。例えば、船舶用の大型用途の場合には、ボス部の高さ、ディスク部の直径及び羽根部の高さは、それぞれ、200〜80mm、300〜100mm、180〜60mm、好ましくは180〜100mm、260〜120mm、160〜90mmであり、羽根先端肉厚は4.0〜0.4mm、好ましくは3.0〜0.6mmである。羽根の枚数は、30〜10枚、好ましくは26〜12枚である。また、自動車などの小型用途の場合には、ボス部の高さ、ディスク部の直径及び羽根部の高さは、それぞれ、100〜20mm、120〜25mm、90〜5mm、好ましくは90〜25mm、100〜30mm、80〜8mmであり、羽根先端肉厚は3.0〜0.1mm、好ましくは2.0〜0.2mmである。羽根の枚数は、20〜4枚、好ましくは18〜6枚である。
以下において、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
表1に示す組成のAl合金を、通常の溶湯処理を施して溶解し、溶湯を720℃に調整する溶湯調製工程にかけた。溶湯調製工程では、表1に示す組成のAl合金150kgを溶解して溶湯を得た。次いで、回転ガス吹込み装置を用いてローター回転数400rpm、気体流量2.5Nm/hの条件にて、アルゴンガスを溶湯中に20分間吹き込み脱ガス処理を実施した。その後、溶湯全体を1時間鎮静保持し、除滓した。
Figure 2017155268
次いで、溶湯調製工程で調製したAl合金溶湯は、250℃に調整された石膏型と、インペラーディスク面に接する面に配置され、200℃に調整された銅製冷やし金とで構成される所定空間に加圧注入する低圧鋳造法によりAl合金鋳物を作製した。このAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーは、ボス部高さ40mm、ディスク部直径40mm、羽根部高さ35mm、羽根数12枚、羽根先端肉厚0.3mmの形状を有する乗用車ターボチャージャー用コンプレッサーインペラーである。溶湯の注入圧力は100kPaとし、Al合金鋳物全体の凝固が完了するまでこの圧力で加圧保持した。
上記Al合金鋳物を石膏型から取り外した後、530℃で8時間の溶体化処理を施し、その後、200℃で20時間の時効処理を施した。以上のようにして、Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー試料を作製した。
上記のようにして作製した各試料について、ハブ部及び羽根部の表面の巣穴の形状、高温疲労強度(耐久試験評価)を、以下のようにして評価した。
1.表面の巣穴の寸法測定
図2に、ハブ部の中心を通り、かつ、羽根部も通る中心線に沿ったコンプレッサーインペラーの片側半分の切断面を示す。この切断面を研磨し、3次元X線CTスキャンによって試料における内部巣穴の各寸法を計測した。このような切断面において、ハブ部の表面5、羽根部の断面6の巣穴を島津製作所製マイクロフォーカスX線CT検査装置(SMX−225CT)によって、50μmの分解能で検査を実施した。本検査装置により、試料内部の3次元像が得られることから、図3に示す巣穴の特徴寸法(開口部の面積8、開口部の長辺の長さ9、開口面から巣穴の最深部までの深さ10)を容易に測定することができる。なお、分解能以下の巣穴は検査できないが、微小な引け巣は疲労強度に影響を及ぼさないため、検査対象から除外しても問題ない。検査結果を表2に示す。表2に示す巣穴寸法の数値は、試料に存在する全ての巣穴の最大値を示す。
Figure 2017155268
2.高温疲労強度
高温での耐久試験(ターボ組み付け、150000rpm×240時間、出側温度200℃)により高温疲労強度を評価した。結果を表2に示す。表2に記載の耐久性試験評価では、試験中に破断した場合を「×」、破断も亀裂も発生せず健全な状態のままの場合を「○」とした。
発明例1〜9では、ハブ部と羽根部の巣穴寸法、ならびに、Al合金の主要成分が本発明の規定範囲内であることから、高温疲労強度に優れる。
これに対して比較例1では、Si成分が少なく、巣穴開口部の面積が大きくなり高温疲労強度が劣った。
比較例2では、Si成分が少なく、巣穴開口部の長辺の長さが大きくなり高温疲労強度が劣った。
比較例3では、Si成分が少なく、巣穴開口部の開口面から巣穴の最深部までの深さが大きくなり高温疲労強度が劣った。
比較例4では、Si成分が多く、Si粒を起点とした破壊が生じ高温疲労強度が劣った。
比較例5では、Cu成分が少なく、強度が低く高温疲労強度が劣った。
比較例6〜8では、Mg成分が少なく、強度が低く高温疲労強度が劣った。
比較例9では、Fe成分が少なく、強度が低く高温疲労強度が劣った。
比較例10では、Ni成分が少なく、強度が低く高温疲労強度が劣った。
比較例11では、Ti成分が少なく、結晶粒微細化効果が不十分で強度が低く高温疲労強度が劣った。
比較例12では、Cu成分が多く、巣穴開口部の面積が大きくなり、巣穴開口部の開口面から巣穴の最深部までの深さも大きくなり、また、粗大な晶出物相が存在するために亀裂が発生して高温疲労強度が劣った。
比較例13では、Cu成分が多く、巣穴開口部の面積が大きくなり、巣穴開口部の長辺の長さも大きくなり、巣穴開口部の開口面から巣穴の最深部までの深さも大きくなり、また、粗大な晶出物相が存在するために亀裂が発生して高温疲労強度が劣った。
比較例14では、Cu成分が多く、巣穴開口部の開口面から巣穴の最深部までの深さが大きくなり、また、粗大な晶出物相が存在するために亀裂が発生して高温疲労強度が劣った。
比較例15では、Mg成分が多く、巣穴開口部の長辺の長さが大きくなり、巣穴開口部の開口面から巣穴の最深部までの深さも大きくなり、また、粗大な晶出物相が存在するために亀裂が発生して高温疲労強度が劣った。
比較例16では、Fe成分が多く、粗大な晶出物相が存在するために亀裂が発生して高温疲労強度が劣った。
比較例17では、Ni成分が多く、粗大な晶出物相が存在するために亀裂が発生して高温疲労強度が劣った。
比較例18では、Ti成分が多く、粗大な晶出物相が存在するために亀裂が発生して高温疲労強度が劣った。
本発明により、回転数の増大に伴う温度の増加に長期間にわたって安定して耐え得る、耐熱強度に優れたAl合金製コンプレッサーインペラーを供給することが可能となる。また、本発明は、ターボチャージャーの加給能力を増加して内燃機関の出力向上に寄与することができるという工業上顕著な効果を奏する。
1・・・Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー
2・・・ハブ部
3・・・ディスク部
4・・・羽根部
5・・・ハブ部の引け巣測定面
6・・・羽根部の引け巣測定面
7・・・表面に存在する巣穴
8・・・巣穴の開口部の面積
9・・・巣穴の開口部の長辺長さ
10・・開口面から巣穴の最深部までの深さ

Claims (2)

  1. ハブ部、複数の羽根部及びディスク部を備えるAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーにおいて、前記Al合金鋳物が、Cu:1.40〜3.20mass%、Mg:1.00〜2.00mass%、Ni:0.50〜2.00mass%、Fe:0.50〜2.00mass%、Ti:0.010〜0.350mas%、Si:0.10〜5.00mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl合金からなり、前記ハブ部の表面及び羽根部の表面に存在する開口した巣穴において、開口部の面積が3000μm以下、開口部の長辺の長さが800μm以下、かつ、開口面から巣穴の最深部までの深さが200μm以下であることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー。
  2. 前記Al合金においてSi:0.30〜4.00mass%である、請求項1に記載のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー。
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