JP2019218612A - 耐クリープ性に優れたアルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法 - Google Patents

耐クリープ性に優れたアルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法 Download PDF

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Akihiro Minagawa
高橋功一
Koichi Takahashi
牛山俊男
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Abstract

【課題】200℃程度の時効温度域においても、耐クリープ性に優れた耐熱性を有するAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法を提供する。【解決手段】ボス部、複数の羽根部及びディスク部を備えるAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーにおいて、前記Al合金鋳物が、Si:0.10〜5.00mass%(以下、「%」と記す)、Fe:0.50〜2.00%、Cu:1.40〜3.20%、Mg:1.00〜2.00%、Ni:0.50〜2.00%、B:X%、Ti:Y%を含有し、B及びTiの含有量が0.001≦X≦0.060、0.10≦Y—2.2X≦0.30の関係を充足し、残部Al及び不可避不純物からなるAl合金からなり、200℃、200MPaの条件下でのクリープ試験における破断時間が200時間以上であることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー、ならびに、その製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や船舶の内燃機関用のターボチャージャーに使用される、耐クリープ性に優れたアルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法に関する。
自動車や船舶用の内燃機関に用いられるターボチャージャーには、高速回転によって空気を圧縮して内燃機関に供給するためのコンプレッサーインペラーが設けられている。このコンプレッサーインペラーは、高速回転中には150℃程度の高温に達し、更に回転中心近傍、特にディスク部には回転軸からのねじり応力や遠心力などによる高い応力が発生する。
コンプレッサーインペラーは、ターボチャージャーの要求性能に応じて種々の素材によって形成される。船舶用などの大型の用途には、アルミニウム合金(以下、「Al合金」と記す)の熱間鍛造材からインペラー形状に削り出したものが、通常使用されている。乗用車、トラックなどの自動車用や小型船舶用などの比較的小型なものは、大量生産性やコストが重視される。そのため、鋳造性の良好なJIS−AC4CH(Al−7%Si−0.3%Mg合金)、ASTM−354.0(Al−9%Si−1.8%Cu−0.5%Mg合金)、ASTM−C355.0(Al−5%Si−1.3%Cu−0.5%Mg合金)等、Siを主要添加元素とした易鋳造性アルミニウム合金を、石膏型(プラスターモールド)を用いて低圧鋳造法、減圧鋳造法又は重力鋳造法などによって鋳造し、これを溶体化処理や時効処理により強化したものが広く使用されている。この基本的な製造方法は、特許文献1に詳細に開示されている。
近年になって、エンジンの小型化、高出力化や排気再循環量増加に伴う空気の高圧縮比化が要求される中、ターボチャージャーのより高速な回転が指向されている。しかしながら、回転数の増大によって空気の圧縮による発熱量が増加し、また、排気側のタービンインペラーも同時に高温化するため、これらの伝熱により操作中におけるコンプレッサーインペラーの温度は増大する。このため、上述の従来用いられていたSiを主要添加元素とした易鋳造性アルミニウム合金製のコンプレッサーインペラーでは使用中に変形したり、更には疲労破壊したりする不具合が発生し易く、正常な回転の継続が不可能となることが判明した。具体的には、これらの既存のコンプレッサーインペラーでは150℃程度が使用可能な温度の上限であるが、上述の高速回転指向により、200℃程度でも使用可能なコンプレッサーインペラーの開発が強く望まれている。
そこで、アルミニウム合金組成をより高温強度の優れた、例えばJIS−AC1B(Al−5%Cu−0.3%Mg合金)などに変更することが考えられる。しかしながら、特許文献2に記載されているように、コンプレッサーインペラーのように複雑形状で、かつ、薄肉の羽根部を有する場合には、このような合金では溶湯の良好な流動性に欠け、薄肉部への湯回り不良(充填不良)が発生し易い問題点があった。
特許文献2では上記問題点を解消すべく、湯回り性の重要視される羽根部にはAC4CHなどのAl−Si系の易鋳造性の合金を用い、強度の必要な回転軸に結合されるボス部からディスク部にかけてはAC1BなどのAl−Cu系の高強度の合金を用いて、これらを2回に分けて注湯して合体させ、コンプレッサーインペラーを形成する方法が提案されている。
また、特許文献3には、羽根部には鋳造性の良好な合金を用い、応力が加わるボス部からディスク部の中央部分にかけては25%Bを含有するアルミニウムウィスカーなどの強化材にアルミニウムを含浸させて強化した強化複合材を別途製造して用い、これらを接合してコンプレッサーインペラーを形成する方法が提案されている。特許文献4には、羽根部とボス部(及びディスク部)を摩擦圧接によって接合する方法が提案されている。
しかしながら、これら各部に異なる材料を併用する方法では、生産性が劣りコスト増加となる問題点が残り、工業化は未だに達成されていない。
このような異なる材料を用いる問題点に鑑み、特許文献5には、Al−Cu−Mg基合金の添加元素とその組み合わせの範囲を適正化することで単一合金での鋳造を可能とし、180℃での耐力値を250MPa以上としたコンプレッサーインペラーが提案されている。また、特許文献6には、Al−Cu−Mg基合金の添加元素とその組み合わせの範囲を更に適正化して結晶粒径を制御することで鋳造歩留まりを改善し、200℃での耐力値を260MPa以上としたコンプレッサーインペラーが提案されている。また、特許文献7にはAl−Cu−Mg基合金にSiを多く添加し、表面の巣穴の構造を規定することで高温での疲労強度に優れたコンプレッサーインペラーが提案されている。
しかしながら、上記Al−Cu−Mg基合金の単一合金鋳造に関する一連の特許文献は、合金強度を高め、かつ、内部組織及び表面組織を健全化することに主眼が置かれており、コンプレッサーインペラー製品の固溶、析出状態や、耐クリープ性については何ら言及していない。高温で長時間使用されるコンプレッサーインペラーは、耐クリープ性が優れているほど高寿命、高出力が可能となる。熱処理型合金であるAl−Cu−Mg基合金の固溶、析出状態は高温で保持する耐クリープ性に大きく影響するため、適切に調質する必要がある。
米国特許第4,556,528号明細書 特開平10−58119号公報 特開平10−212967号公報 特開平11−343858号公報 特開2005−206927号公報 特開2012−25986号公報 特開2017−155268号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、200℃程度の時効温度域においても耐クリープ性に優れた耐熱性のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーを提供することを目的とするものである。
本発明は請求項1において、ボス部、複数の羽根部及びディスク部を備えるAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーにおいて、前記Al合金鋳物が、Si:0.10〜5.00mass%、Fe:0.50〜2.00mass%、Cu:1.40〜3.20mass%、Mg:1.00〜2.00mass%、Ni:0.50〜2.00mass%、B:Xmass%、Ti:Ymass量%を含有し、B及びTiの含有量が0.001≦X≦0.060、0.10≦Y―2.2X≦0.30の関係を充足し、残部Al及び不可避不純物からなるAl合金からなり、200℃、200MPaの条件下でのクリープ試験における破断時間が200時間以上であることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーとした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記Al合金においてSi:0.30〜3.00mass%であるものとした。
本発明は請求項3では請求項2において、200℃、200MPaの条件下でのクリープ試験における破断時間が250時間以上であるものとした。
本発明は請求項4において、請求項1〜3のいずれか一項に記載のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法であって、前記Al合金の溶湯調製工程と、溶湯調製工程で調整した溶湯を鋳造する鋳造工程と、鋳造したAl合金鋳物を熱処理する熱処理工程とを含み、当該熱処理工程が、溶体化処理段階と、焼入れ処理段階と、時効処理段階とを含むことを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法とした。
本発明は請求項5では請求項4において、前記焼入れ処理段階における焼入れ速度が36℃/s以下であるものとした。
本発明は請求項6では請求項5において、前記焼入れ処理段階における焼入れ速度が15〜36℃/sであるものとした。
本発明により、200℃付近での高温領域においても優れた耐クリープ性を有するアルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラーを得ることができる。
本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの構造の一例を示す斜視図である。
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
A.Al合金鋳物製コンプレッサーインペラーの形状
本実施形態に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー(以下、単に「コンプレッサーインペラー」と記す)の形状の一例を、図1に示す。コンプレッサーインペラー1は、回転中心軸に沿って裾野状に広がる領域であるボス部2と、これに一体に連なるディスク部3と、このディスク部3から突出する複数枚の薄肉の羽根部4を有する。このコンプレッサーインペラー1の温度は、高速回転中には200℃程度の高温に達し、回転中心の近傍、特にボス部や羽根部には回転軸からのねじり応力や遠心力などによる高い繰り返し応力が発生する。Al−Cu−Mg基合金の時効温度は150〜250℃程度であるため、数十時間で過時効となり、短時間で破損してしまう。
本発明者等は、上述の課題を解決するために種々実験検討を重ねた結果、鋳物用Al−Cu−Mg基合金において、Si濃度及びTi濃度を適切に管理することで200℃程度の高温使用時においても、固溶強化を持続可能であり、亀裂伝播の起点となる内部ポロシティを発生させず、長期間にわたってボス部、ディスク部及び羽根部での破損のない耐クリープ性に優れるコンプレッサーインペラーが得られることを見出した。
なお、本発明において「耐クリープ性に優れる」とは200℃−200MPaの条件下でのクリープ試験における破断時間が200時間以上であることを意味する。
B.Al合金の成分組成
次に、本発明で用いるAl合金の成分組成とその限定理由について説明する。
Cu、Mg:
CuとMgはAl母相中に固溶し、固溶強化によって機械的強度を向上させる効果を有する。また、CuとMgが共存することによって、AlCu、AlCuMg等の析出強化による強度向上にも寄与する。但し、これらの2種の元素は凝固温度範囲を拡大する元素であるため、過剰な添加は鋳造性を劣化させ、巣穴の発生を引き起こし、疲労強度を低下させる。
Cu含有量が1.40mass%(以下、単に「%」と記す)未満の場合や、Mg含有量が1.00%未満の場合には、200℃の高温において必要とされる機械的強度が得られない。一方、Cu含有量が3.20%を超える場合やMg含有量が2.00%を超える場合には、コンプレッサーインペラーとしての鋳造性が劣化し、粗大な巣穴が発生する。従って、Cu含有量を1.40〜3.20%に規定し、Mg含有量を1.00〜2.00%に規定する。なお、使用中の変形などの不具合を確実に防止し、かつ、鋳造時の欠肉発生を可及的に防止して工業的に好適な歩留まりを得るためには、Cu含有量を1.70〜3.00%とするのが好ましく、Mg含有量を1.30〜1.80%とするのが好ましい。
Ni、Fe:
NiとFeは、Alとの間で金属間化合物を形成してAl母相中に分散して、Al合金の高温強度を向上させる効果を奏する。そのためには、Ni含有量を0.50%以上とし、Fe含有量を0.50%以上とする。しかしながら、これら両元素は共に過剰に含有されると、金属間化合物が粗大化してしまうだけでなく、高温においてCuFeAlやCuNiAlを形成してAl母相中の固溶Cu量を低減させ、却って強度を低下させてしまう。そのため、Ni含有量を2.00%以下とし、Fe含有量を2.00%以下とする。従って、Ni含有量を0.50〜2.00%に規定し、Fe含有量を0.50〜2.00%に規定する。なお、Ni含有量を0.50〜1.40%とするのが好ましく、Fe含有量を0.70〜1.50%とするのが好ましい。これら好ましい範囲の下限値は製造の際のバラツキを考慮し工業的に安定的な量産をする上での目安値であり、上限値は効果が飽和しこれ以上の添加は不経済となる添加量の目安値である。
Ti、B:
Tiは、鋳造時の初晶アルミニウム結晶粒の成長抑制効果を奏するため、TiAlとTiB共に鋳造中の凝固組織を微細化して溶湯補給性を改善し、湯回り性を改善する効果を発揮する。またTi固溶体は高温で安定のため、200℃で保持した場合でも析出せず、固溶強化に寄与する。特に転位の移動速度が遅いクリープ現象では固溶強化の効果が大きい。Ti原料の一つである微細化剤中のTiは、溶湯調製時に溶解するTiAlと高温安定で溶解しないTiBの2つの形態で存在する。固溶Tiとして寄与するのは溶解するTiAlのみであることから、Bとの関係を明確化する必要がある。TiB中のTiとBの質量比はTi:B=2.2:1である。B量が0.001%未満では微細化効果が十分ではなく、強度の低下や耐クリープ性の低下を招き、0.060%を超えると有効核として作用しなかったTiBが介在物として有害となる。固溶に寄与するTi量が0.10%未満では固溶量が不十分であり、0.30を超えると粗大晶出物を生成し、亀裂伝播の起点となり耐クリープ性を低下させる。従って、Bの含有量がX%、Tiの含有量がY%である場合、Bについては、0.001≦X≦0.060、好ましくは0.002≦X≦0.030と規定し、TiについてはBとの関係で、0.10≦Y―2.2X≦0.30、好ましくは0.10≦Y―2.2X≦0.20を充足することを規定する。
Si:
Siは、固液共存温度領域内での液相体積率が高いために、鋳造時の湯流れ性を確保する効果を有する。Si含有量が0.10%未満では、最終凝固時の引け巣への溶湯充填が不十分となる。一方、Si含有量が5.00%を超えると、Al母相中に固溶しきれないSiが晶出物として粒界に残存し、Si粒は疲労破壊の起点となるため疲労強度を大幅に低下させる。従って、Si含有量を0.10〜5.00%に規定する。更に、内部ポロシティを抑制することで優れた耐クリープ性を得るためには、Si含有量は0.30〜3.00%とするのが好ましい。
Al合金の不可避的不純物として、各々が0.20%程度以下であって全体で0.60%以下のZn、Mn、Crなどが含有されていても、コンプレッサーインペラーの特性を損なうことがないので許容される。
C.耐クリープ性
本発明に係るコンプレッサーインペラーは、200℃程度の高温の使用温度においても優れた耐クリープ性を有し、具体的には、200℃、200MPaの条件下でのクリープ試験における破断時間が200時間以上の特性を有する。
D.製造方法
次に、本発明に係るAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法について説明する。この製造方法は、溶湯調整工程、鋳造工程及び熱処理工程から構成され、熱処理工程は、溶体化処理段階と、焼入れ処理段階と、時効処理段階とを含む。
D−1.溶湯調整工程:
通常の方法に従って、上述のAl合金組成となるように各成分元素を加えて加熱溶解し、脱水素ガス処理及び介在物除去処理などの溶湯処理を行なう。そして、最終的な溶湯温度が700〜800℃となるように、溶湯温度を調整する。
D−2.鋳造工程:
鋳造工程では、溶湯調整工程において700〜800℃に温度調整された溶湯を、石膏型(プラスターモールド)を用いた圧力鋳造法(低圧鋳造法、減圧鋳造法又は差圧鋳造法)によってコンプレッサーインペラー形状に鋳造する。石膏型の予熱温度は100〜400℃に調整される。
鋳造の際の溶湯温度が700℃未満では、圧入された溶湯が製品形状空間内で早期に凝固することから湯回り不良が生じて製品形状が確保できなくなる。一方、この溶湯温度が800℃を超えると溶湯の酸化が進行して水素ガスの吸収及び酸化物の増加により溶湯品質が悪化し、製品強度を確保することが困難となる。また、石膏型の予熱温度が100℃未満では、型の先端に溶湯が充填される前に凝固が進行してしまうため湯回り不良が生じて製品形状が確保できなくなる。一方、石膏型の予熱温度が400℃を超えると、石膏型内での凝固が遅くなり内部ポロシティが発生する。
なお、石膏型に接してこれを冷却する冷やし金が用いられる。冷やし金の材質は、熱伝導率が高い銅及び銅合金が好ましいが、鉄、ステンレス鋼なども使用できる。また、冷やし金の温度調整には、冷やし金内部に水などの冷却媒体を通して鋳造中の過熱を抑制する機構を用いるのが好ましい。
熱処理工程:
鋳造されたAl合金鋳物は、熱処理工程にかけられる。熱処理工程は、溶体化処理段階と、焼入れ処理段階と、時効処理段階とで構成される。熱処理工程により、Cuによる固溶強化;CuとMgによる析出強化;AlとFeとの間、ならびに、AlとNiとの間で形成される金属間化合物による分散強化;を有効に活用することができる。
溶体化処理段階:
溶体化処理は、固相線温度から5〜25℃低い温度範囲で行なうのが好ましく、5〜20℃低い温度範囲で行うのがより好ましい。本発明において好適に用いられるAl合金においては、固相線温度から5〜25℃低い温度範囲は510〜530℃となる。固相線温度から5〜25℃低い温度範囲を超える温度では、結晶粒界の第2相が溶融する危険性が高まり、強度確保が困難となる。一方、この温度範囲未満の温度では、元素拡散が十分に進行せず十分な溶体化が行われない。
焼入れ処理段階:
焼入れ処理段階における焼入れ速度が36℃/sを超える場合には、残留応力による翼曲りが発生するので、焼入れ速度は36℃/s以下とするのが好ましい。また、焼入れ速度が15℃/s以上の場合には十分な固溶量を確保でき、より優れたクリープ特性が得られるので、焼入れ速度は15℃/s以上とするのが好ましい。このように、翼曲りの発生抑制と高クリープ特性との観点から、焼入れ速度は15〜36℃/sとするのがより好ましく、20〜30℃/sとするのが更に好ましい。
時効処理:
時効処理は、150〜250℃で3〜50時間熱処理するのが好ましく、170〜230℃で5〜40時間熱処理するのがより好ましい。処理温度が150℃未満の場合や、処理時間が3時間未満の場合には、強度向上のための析出強化が不十分な場合がある。一方、処理温度が250℃を超える場合や、処理時間が50時間を超える場合には、形成された析出相が粗大化(過時効)して十分な強化作用が得られないとともに、Cuの固溶強化能が低下する。
E.コンプレッサーホイール形状
本発明に係るコンプレッサーインペラーの形状や寸法、ならびに、羽根の枚数は特に限定されるものではなく、船舶用の大型用途や自動車などの小型用途など多くの用途のものに適用することができる。例えば、船舶用の大型用途の場合には、ボス部の高さ、ディスク部の直径及び羽根部の高さは、それぞれ、200〜80mm、300〜100mm、180〜60mm、好ましくは180〜100mm、260〜120mm、160〜90mmであり、羽根先端肉厚は4.0〜0.4mm、好ましくは3.0〜0.6mmである。羽根の枚数は、30〜10枚、好ましくは26〜12枚である。また、自動車などの小型用途の場合には、ボス部の高さ、ディスク部の直径及び羽根部の高さは、それぞれ、100〜20mm、120〜25mm、90〜5mm、好ましくは90〜25mm、100〜30mm、80〜8mmであり、羽根先端肉厚は3.0〜0.1mm、好ましくは2.0〜0.2mmである。羽根の枚数は、20〜4枚、好ましくは18〜6枚である。
以下において、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
Cu:2.50%、Mg:1.60%、Fe:1.10%、Ni:1.10%をベースとし、Si量、Ti量、B量を変化させた表1に示す組成のAl合金に、通常の溶湯処理を施して溶解し、溶湯を720℃に調整する溶湯調製工程にかけた。溶湯調製工程では、表1に示す組成のAl合金150kgを溶解して溶湯を得た。次いで、回転ガス吹込み装置を用いてローター回転数400rpm、気体流量2.5Nm/hの条件にて、アルゴンガスを溶湯中に20分間吹き込み脱ガス処理を実施した。その後、溶湯全体を1時間鎮静保持し、除滓した。
Figure 2019218612
次いで、溶湯調製工程で調製したAl合金溶湯は、250℃に調整された石膏型と、インペラーディスク面に接する面に配置され、200℃に調整された銅製冷やし金とで構成される所定空間に加圧注入する低圧鋳造法によりAl合金鋳物を作製した。このAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーは、ボス部高さ80mm、ディスク部直径100mm、羽根部高さ70mm、羽根数18枚、羽根先端肉厚0.5mmの形状を有する乗用車ターボチャージャー用コンプレッサーインペラーである。溶湯の注入圧力は100kPaとし、Al合金鋳物全体の凝固が完了するまでこの圧力で加圧保持した。
上記Al合金鋳物を石膏型から取り外した後、530℃で8時間保持後、表1に示す焼入れ速度で焼入れし、その後、200℃で20時間の時効処理を施した。以上のようにして、Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー試料を作製した。
上記のようにして作製した各試料について、ボス部中心から軸部に平行に試料を切り出し、長さ54.1mm、掴み部M6、平行部φ4.06mmの丸棒試験片を作製し、耐クリープ性を評価した。クリープ試験は200℃−200MPaの条件で実施した際の破断時間を測定した。破断時間が300時間以上を○○○(最優良)、250時間以上300時間未満を○○(優良)、200時間以上250時間未満を○(良)、200時間未満を×(不良)として評価した。
また、コンプレッサーインペラーの製品としては得られるが、焼入れに伴う翼曲り発生による歩留り性についても評価した。歩留まりが98%以上を○(優良)、98%未満を△(良)とした。
発明例1〜7では、Al合金の主要成分が本発明の規定範囲内であることから、耐クリープ性に優れている。発明例8〜17ではSi含有量が本発明の好ましい範囲内であることから、耐クリープ性が優良となって更に優れていた。発明例15〜17では焼入れ速度がより好ましい範囲内に制御されているため、耐クリープ性が最優良であると共に翼曲り発生による歩留まり性も優良であった。
これに対して比較例1では、Si含有量が多過ぎたため、Si粒を起点とした破壊が生じ、耐クリープ性が不良となった。
比較例2では、Si含有量が少な過ぎたため、内部ポロシティを起点とした破壊が生じ、耐クリープ性が不良となった。
比較例3では、Ti含有量が多過ぎたため、粗大なTi系晶出物を起点とした破壊が生じ、耐クリープ性が不良となった。
比較例4では、Ti含有量自体は0.1%を超えているが、TiBの化学量論比に基づく溶解可能なTi含有量が少な過ぎた。その結果、固溶Tiとして寄与する量が少なくなり、耐クリープ性が不良となった。
比較例5では、B成分の含有量が多過ぎたため、TiBを起点とした破壊が生じ、耐クリープ性が不良となった。
比較例6では、B含有量が少な過ぎたため、鋳造中の凝固組織が十分に微細化されずに強度が劣り、それに伴って耐クリープ性も不良となった。
比較例7では、Ti成分が少な過ぎたため、固溶Tiとして寄与する量が少なくなり、耐クリープ性が不良となった。また焼入れ速度が大きいため、翼曲り発生による歩留まり性が優良にはならなかった。
本発明により、回転数の増大に伴う温度の増加に対して長期間にわたって安定して耐え得る、耐熱強度に優れたAl合金製コンプレッサーインペラーを供給することが可能となる。また、本発明は、ターボチャージャーの加給能力を増加して内燃機関の出力向上に寄与することができるという工業上顕著な効果を奏する。
1・・・Al合金鋳物製コンプレッサーインペラー
2・・・ボス部
3・・・ディスク部
4・・・羽根部

Claims (6)

  1. ボス部、複数の羽根部及びディスク部を備えるAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーにおいて、前記Al合金鋳物が、Si:0.10〜5.00mass%、Fe:0.50〜2.00mass%、Cu:1.40〜3.20mass%、Mg:1.00〜2.00mass%、Ni:0.50〜2.00mass%、B:Xmass%、Ti:Ymass%を含有し、B及びTiの含有量が0.001≦X≦0.060、0.10≦Y―2.2X≦0.30の関係を充足し、残部Al及び不可避不純物からなるAl合金からなり、200℃、200MPaの条件下でのクリープ試験における破断時間が200時間以上であることを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー。
  2. 前記Al合金においてSi:0.30〜3.00mass%である、請求項1に記載のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー。
  3. 200℃、200MPaの条件下でのクリープ試験における破断時間が250時間以上である、請求項2に記載のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラー。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法であって、前記Al合金の溶湯調製工程と、溶湯調製工程で調整した溶湯を鋳造する鋳造工程と、鋳造したAl合金鋳物を熱処理する熱処理工程とを含み、当該熱処理工程が、溶体化処理段階と、焼入れ処理段階と、時効処理段階とを含むことを特徴とするAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法。
  5. 前記焼入れ処理段階における焼入れ速度が36℃/s以下である、請求項4に記載のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法。
  6. 前記焼入れ処理段階における焼入れ速度が15〜36℃/sである、請求項5に記載のAl合金鋳物製コンプレッサーインペラーの製造方法。
JP2018117389A 2018-06-20 2018-06-20 耐クリープ性に優れたアルミニウム合金鋳物製コンプレッサーインペラー及びその製造方法 Pending JP2019218612A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023209810A1 (ja) * 2022-04-26 2023-11-02 日本軽金属株式会社 Al-Mg-Si-Ni系合金及びAl-Mg-Si-Ni系合金材

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