JP2015059502A - 内燃機関及び自動車 - Google Patents

内燃機関及び自動車 Download PDF

Info

Publication number
JP2015059502A
JP2015059502A JP2013193493A JP2013193493A JP2015059502A JP 2015059502 A JP2015059502 A JP 2015059502A JP 2013193493 A JP2013193493 A JP 2013193493A JP 2013193493 A JP2013193493 A JP 2013193493A JP 2015059502 A JP2015059502 A JP 2015059502A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
internal combustion
combustion engine
group
nitride layer
engine
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013193493A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5991956B2 (ja
Inventor
貴士 泉
Takashi Izumi
貴士 泉
石川 裕幸
Hiroyuki Ishikawa
裕幸 石川
浩司 森谷
Koji Moriya
浩司 森谷
遠山 護
Mamoru Toyama
護 遠山
広行 森
Hiroyuki Mori
広行 森
公介 藤本
Kosuke Fujimoto
公介 藤本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp, Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2013193493A priority Critical patent/JP5991956B2/ja
Publication of JP2015059502A publication Critical patent/JP2015059502A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5991956B2 publication Critical patent/JP5991956B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Valve-Gear Or Valve Arrangements (AREA)
  • Lubrication Of Internal Combustion Engines (AREA)
  • Lubricants (AREA)

Abstract

【課題】水分を比較的多く含む潤滑油中で摺動させた場合の摺動部材の耐摩耗性に優れた内燃機関を提供する。
【解決手段】水分及びジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む潤滑油と、鋼材上に、鋼材が窒化された窒化化合物を含む窒化物層25、及び亜鉛(Zn)、硫黄(S)、及びリン(P)を含む被膜15をこの順で有し潤滑油の存在下、被膜を摺動面として摺動する摺動部材と、を備え、潤滑油の温度及び内燃機関内の水温のいずれかを30℃以下の温度条件に維持して15分以上運転させた後に採取した潤滑油に含有される水分の含有比率が0.2質量%〜10質量%である。
【選択図】図2

Description

本発明は、内燃機関及びこれを備えた自動車に関する。
従来より、自動車用エンジンに使用されているピストンリングなどの摺動部品の材料として、窒化処理が施された鋼材は、優れた耐摩耗性能を示すことが知られている。また、窒化処理が施された鋼材は、エンジン油の存在下で摺動される摺動部品として使用されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
これらの摺動部品は、ガソリンを燃料とするガソリンエンジン車のエンジン油中、すなわち水分をほぼ含有しないエンジン油中で使用されることを想定して作製されたものである。
また、ステンレス鋼の耐摩耗性と塩水に対する耐食性とを、窒化処理により向上させる技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この技術は、エンジン油中での使用を想定したものではない。また、耐食性を実現するために、クロム酸化物層が不可欠な成分とされている。つまり、被処理鋼材がクロムという特定の元素を含む組成となっている。
一方、カーボンニュートラルな自動車用燃料として、現在、ブラジルや米国などでエタノール燃料が使用されるに至っており、今後もエタノール燃料の使用は拡大していくことが予想されている。このエタノール燃料は、吸湿性が高く、燃料自身の中に水分を含んだり、燃焼による水分生成量がガソリンよりも多いことから、エタノール燃料の使用拡大によりエンジン油中に多量の水分が混入する機会が増加している。ところが、これまでに普及している自動車、すなわちハイブリッドシステムや停車時運転停止システム(アイドルストップシステム)等の、比較的頻繁にエンジンが停止されるシステム(以下、「環境適応システム」ともいう。)を備えず、エンジンが始動した後は車両の走行中及び停止中に関わらず継続的にエンジンが稼働する従来型の自動車(以下、「従来車」ともいう。)では、エンジン環境として、車両走行時の定常的なエンジン油温は80℃〜90℃に達し、したがって水分が蒸発しやすい環境にある。そのため、エタノール燃料を使用した場合にも、混入した水分がエンジン油中に蓄積することは少ない。
特開2012−149743号公報 特開2006−2814号公報 特開2011−42862号公報
しかしながら、エタノール燃料を用いるエンジンを備えた自動車において、比較的頻繁にエンジンが停止される上記のような環境適応システム(ハイブリッドシステム、アイドルストップシステムなど)が搭載される等、エンジン環境として、定常的なエンジン油温が50℃前後の比較的低い温度領域になると、エンジン油中に混入した水分は蒸発せずに、エンジン内に多量に蓄積されるおそれがある。
このようにエンジン内に水分が多く存在すると、摺動面に存在するエンジン油中に存在する水分量も多くなり、摺動部材が水分を多く含むエンジン油中で摺動する時間も長くなる。このように、摺動部材が摺動するエンジン油中に水分が多く存在すると、摺動部材の摩耗量が増加する傾向があり、耐摩耗性の低下が懸念される。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、エンジンが高頻度で停止する環境適応システムが搭載されていない従来車の潤滑油に比べて水分をより多く含む潤滑油中で摺動させた場合の摺動部材の耐摩耗性に優れた内燃機関及びこれを備えた自動車を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
本発明は、下記の知見に基づいて達成されたものである。すなわち、
水分を比較的多く含有するエンジンオイル等の潤滑油中で摺動部材を摺動させると、水分をほとんど含まない潤滑油中で摺動させる場合に比べ、摺動面の耐摩耗性が低下しやすいとの知見、及び摺動部材を構成する鋼材の窒化処理された面は摩耗防止剤であるジアルキルジチオリン酸亜鉛と相互作用しやすく、潤滑油中での摺動面の耐摩耗性に大きな影響を及ぼすとの知見である。つまり、水分を含有するエンジンオイル等の潤滑油中では、従来から一般に使用されている摺動部材、具体的には浸炭処理又は焼き入れ処理された鋼材を用いた摺動部材(以下、「従来の摺動部材」ともいう。)は、摺動時の摺動面における摩耗が増加する傾向がある。このように水分を含有する潤滑油中において摩耗が増加する原因の1つとして、摺動面に潤滑油中の摩耗防止剤によって形成される摩耗防止被膜の形成量が少ないとの知見を得た。
本発明においては、上記の知見に基づき、鋼材の窒化物層と潤滑油中の摩耗防止剤との間で発現する相互作用を利用する。上記した課題を達成するための具体的な手段は、次の通りである。すなわち、前記目的を達成するため、第1の発明は、
水分及びジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む潤滑油と、鋼材、該鋼材中の少なくとも金属成分が窒化された窒化化合物を含む窒化物層、及び亜鉛(Zn)、硫黄(S)、及びリン(P)を含む被膜をこの順に有し、潤滑油の存在下、被膜を摺動面として摺動する摺動部品と、を設けて構成された自動車用の内燃機関である。第1の発明の内燃機関は、潤滑油の温度(油温)及び内燃機関内部の冷却水の温度のいずれかを30℃以下の温度条件に維持して15分以上運転させた後に採取した潤滑油に含有される水分の含有比率は、0.2質量%〜10質量%とされている。
第1の発明においては、水分を含む潤滑油がさらに摩耗防止剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛を含み、摺動部材を構成する鋼材上に窒化物層を有し、かつこの窒化物層が摺動時に前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛と相互作用することにより、前記窒化物層上にさらにZn、S、及びPを含む被膜が形成されている。これにより、水分を含有する潤滑油中で摺動された場合でも、摩耗が、従来の摺動部材に比べてより効果的に軽減される。すなわち、本発明の内燃機関では、潤滑油全体に対し0.2質量%以上となる比較的多量の水分が含まれる潤滑油中において摺動する摺動部材の耐摩耗性が、水分非含有(潤滑油全体に対する水分含量が0.05質量%未満)の潤滑油中で摺動された場合と同等以上に維持される。
始動後の内燃機関の運転停止が高頻度に発生する環境適応システム(ハイブリッドシステムや停車時運転停止システム(アイドルストップシステム)など)と共に搭載される内燃機関に使用される摺動部材では、環境適応システムを搭載していない従来の標準的な自動車(従来車)用の内燃機関に使用される摺動部材に比べ、水分を従来車より多く含む潤滑油中における摺動面の耐摩耗性が低下しやすい傾向がある。しかし、第1の発明は、既述のように、摺動部材上の窒化物層の上に特定の被膜を設けて構成されていることで、水分を従来車より多く含む潤滑油中での耐摩耗性を良好に維持することができる。即ち、
本発明の内燃機関は、摩耗防止剤(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)と窒化処理表面との相互作用により摺動面に被膜が形成されることが重要である。これにより、潤滑油中に%オーダーの水分が存在する場合(例えば、エタノール燃料エンジンとハイブリッドシステムとを組み合わせた駆動システムの場合)にも、潤滑油中に水分をほとんど含まず水分含量がppmオーダーの場合(例えば、環境適応システムを備えない従来車の場合)と同等の摩耗量を実現できる。
また、鋼材が特定の金属元素を含有していることを必要としない点でも有意義である。
このような潤滑油中への%オーダーの水分混入・蓄積は、水分を含み燃焼時等に水分を放出しやすい燃料(例えばエタノールなど)の使用と、始動後に内燃機関の運転停止が高頻度に発生する環境適応システムと、を組み合わせた動力源を構築する場合により生じやすい。
ここで、水分が混入、蓄積しやすい理由を以下に示す。
(1)エタノール等の燃料を使用した場合、エタノール等の燃料中に水分が含まれることから、その水分が燃料噴射の際に燃焼室近傍のエンジン油と混合(燃料希釈)し、油中に水分が混入する。また、燃焼により水分を生成しやすいことから、水蒸気を含んだ燃焼排気ガスが内燃機関内部のエンジン油経路で凝集し、油中に水分が混入する。
(2)高頻度に内燃機関が停止する環境適応システムでは、従来車に比べ、燃焼や摩擦熱による油温上昇が少なく、低い油水温が保たれるため、水分が蒸発せずに蓄積しやすい。
第1の発明においては、窒化物層に含まれる窒化化合物が、Fe2−3N及びFeNから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。Fe2−3N又はFeNを含んでいると、耐摩耗性に優れる点で有利である。
第1の発明では、窒化物層に含まれる窒化化合物の含有量を、窒化物層の全質量に対して、窒素元素換算値が3原子%(at%(atomic percent);以下同様)〜30原子%(at%)となる量とすることができる。窒化処理の程度が窒素元素換算値で上記範囲であることで、鋼材表面の硬化性が良好である。
第1の発明における自動車としては、エタノール燃料自動車が好適である。一般にガソリンを燃料とするガソリンエンジン車は、水分の生成量が比較的少ないのに対し、エタノール燃料自動車は、水分の生成量が比較的多く、エンジン等の内燃機関内の潤滑油に水分が多く混入しやすい。そのため、エタノール燃料自動車の内燃機関が、第1の発明である自動車用の内燃機関である場合に、水を含有する潤滑油中での耐摩耗性の向上効果に優れる。
また、自動車は、ハイブリッドシステム、又は停車時運転停止システム(アイドルストップシステム;idle reduction system)を搭載していることが好ましい。これらのシステムは、比較的頻繁に内燃機関を停止するシステムであるため、エンジンが比較的低い温度で推移し、そのため内燃機関内部に混入した水分は、外部に逃げ難く、潤滑油中の水分量が多くなりやすい。したがって、バイブリッドシステムやアイドルストップシステム等の環境適応システムを搭載した自動車において、本発明の効果がより効果的に奏される。
潤滑油中の水分が摩耗に及ぼす影響は、境界潤滑下(接触圧力が大きく摺動速度が低速となる過酷な潤滑下)において大きい。よって、摺動部材としては、そのような潤滑下で摺動され、水分を比較的多く含む潤滑油中で摺動された際の耐摩耗性の向上効果がより大きい点で、バルブリフタ、アジャスティングシム、カム、カムシャフト、ロッカーアーム、ローラーピン、タペット、ピストンリング、ピストンピン、タイミングギア、タイミングチェーン、並びにオイルポンプのドライブギア、ドリブンギア、及びロータからなる群より選ばれるものがより効果的である。
摺動部材を構成する窒化物層は、鋼材をプラズマ窒化法で窒化処理することで形成された層であることが好ましい。プラズマ窒化処理によることで、緻密な層が得られ、耐摩耗性に優れた窒化物層が得られる。
摺動部材における被膜は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により分析した元素のX線強度比の序列が、硫黄(S)>亜鉛(Zn)>リン(P)であることが好ましい。S>Zn>Pの順に多いことで、水分を含有する潤滑油中で摺動された場合の耐摩耗性がより向上する。
摺動部材を構成する鋼材は、添加元素の有無に関わらず公知の鋼材を選択することができるが、クロムモリブデン鋼、又は炭素鋼をより好適に用いることができる。
次に、第2の発明は、既述の第1の発明の内燃機関を備えた自動車である。
第1の発明の内燃機関を備えていることで、長期耐久性に優れており、自動車の耐用期間が飛躍的に高められる。
本発明によれば、エンジンが高頻度に停止する環境適応システムが搭載されていない従来車の潤滑油に比べて水分をより多く含む潤滑油中で摺動させた場合の摺動部材の耐摩耗性に優れた内燃機関及びこれを備えた自動車が提供される。
本発明の実施形態に係る摺動部材であるピストンリングが取り付けられたピストンを示す斜視図である。 ピストンリングを構成する重層構造を示す概略断面図である。 プラズマ窒化処理後の鋼材の窒化処理面のSEM反射電子像である。 クロムモリブデン鋼(SCM420)を用いたサンプル摺動材に対して行なったXRD分析の結果を示すグラフである。 炭素鋼(S50C)を用いたサンプル摺動材に対して行なったXRD分析の結果を示すグラフである。 摩耗試験に用いるブロック・オン・リング型摩耗試験機を示す概略図である。 エンジン油中の水分が摩耗に及ぼす影響を示すグラフである。 エンジン油中の水分による摩耗増加を示すグラフである。 摩擦試験後の摩耗痕をEPMAにより元素分析した結果を示す図である。
以下、図1〜図9を参照して、本発明の内燃機関及びこれを備えた自動車の実施形態について具体的に説明する。但し、本発明においては、以下に示す実施形態に制限されるものではない。
本実施形態は、動力源として内燃機関とモータとを備えたハイブリッドシステム搭載車の内燃機関であるエンジンにおいて、ピストン外周の溝に摺動部材の1つとしてピストンリングが取り付けられ、このピストンリングがエンジン油中でシリンダボア内壁と摺動するものである。
エンジンとしては、ガソリンを燃料とするガソリンエンジン、エタノールを燃料とするエタノール燃料エンジン、等のいずれでもよい。エンジンに使用される潤滑油中に含まれる水分量が多くなりやすく、摺動時の耐摩耗性に対する向上効果がより期待できる観点から、エタノール燃料エンジンが望ましい。
本実施形態のエンジン(内燃機関)は、図1に示すようなピストン10の溝にはめられる円環状の部品であるピストンリング11を備えている。本実施形態では、始動したエンジンを高頻度に停止しない従来車のエンジンのエンジン油に比べて水分をより多く含有するエンジン油中において、ピストンリング11がシリンダボア内壁と摺動しながらピストンが往復運動する構成となっている。
ピストンリング11は、図2に示すように、重層された断面構造を有している。図2は、ピストンリングの断面構造を示している。
ピストンリング11には、シリンダボア内壁と摺動する側(ピストン本体から離れた側)の表面に、摩耗防止被膜15が所定の厚みで設けられている。摩耗防止被膜15が設けられていることで、摩耗防止被膜の表面を摺動面として相手材と摺動する。これにより、摺動面は、優れた耐摩耗性を示す。
ピストンリング11は、鋼材を用いて成形されており、その鋼材内部から最表層に向かって順に、窒化されていない鋼材21と、鋼材中に窒素原子が拡散して硬化された窒素拡散硬化層23と、窒化処理で窒化化合物が形成されてなる窒化物層25と、を重層した重層構造を有している。ピストンリング11は、運転当初はこの窒化物層25の表面を摺動面としてシリンダボア内を往復運動するが、摺動と同時にエンジン油中の成分と相互作用することで、図2に示すように、窒化物層25の表面に摩耗防止被膜15が形成され、この摩耗防止被膜を摺動面として摺動することになる。
エンジン油中で摺動される場合において、特に、耐摩耗性の低下が抑制され、高耐久性を保持することが可能である。
摩耗防止被膜15は、膜を形成する元素として少なくとも亜鉛(Zn)、硫黄(S)、及びリン(P)を含む。これら元素は、エンジン油中の成分由来の元素である。摩耗防止被膜は、エンジン油中の摩耗防止剤(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)と鋼材の窒化処理面(窒化物層表面)との相互作用により形成されるため、これら元素が含まれている。
この場合、摩耗防止被膜15中に含まれるZn、S、及びPの含有比率は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により分析した元素のX線強度比で確認することができる。具体的には、この含有比率は、JXA−8200(日本電子社製)を用いて得られる値である。
中でも、Zn、S、及びPの摩耗防止被膜中におけるX線強度比は、S>Zn>Pの序列となっていることが好ましい。X線強度比がこの序列になっていることで、特に凝着摩耗に効果を示す硫化鉄の形成が促進されているために耐摩耗性に優れるものと考えられる。
摩耗防止被膜の厚みは、厚み分布を考慮して最大厚みで評価すると、数十nm〜数百nm程度の薄膜であり、好ましくは50nm〜200nmとすることができる。
窒化物層25は、鋼材の表面を窒化処理することで硬化された層であり、主にFe2−3N、FeNなどの鉄系の窒化化合物からなる層である。また、窒素を固溶した層に構成されてもよい。ピストンリング11は、窒化物層を有していることで、エンジン油の摩耗防止剤との間で相互作用して窒化物層上に摩耗防止被膜が形成され、優れた耐摩耗性を発現する。
窒化化合物の窒化物層中における含有量としては、窒素元素換算値で3原子%〜30原子%が好ましい。つまり、窒化物層の窒素濃度が上記範囲内にあることが好ましい。窒化物層中の窒化化合物の含有量、つまり窒素含有量が3原子%以上であることで、摺動材として必要な硬度が得られると共に、エンジン油との相互作用により形成される摩耗防止被膜の形成性がより良好になる。また、窒化物層中の窒素含有量が30原子%以下であると、窒化物層が硬化され過ぎて脆くなるのを防ぎ、荷重を支持する摺動部品の摺動材料としての適性を保つことができる。
中でも、窒化物層中における窒素含有量としては、10原子%〜28原子%の範囲であることがより好ましい。
窒化物層25中の窒素化合物の存在は、X線回折(XRD)分析(例えばD8 ADVANCE(ブルカーAXS社製)を用いた分析)により確認することができる。そして、窒化化合物の窒化物層中における含有量は、窒化物層中の窒素含有量の測定値から換算することが可能であり、窒化物層中における窒素含有量は、電子線マイクロアナライザ(EPMA;JXA−1500F(日本電子社製)を用いて窒素量を測定することで求められる。
窒化物層25は、鋼材中に窒素と化合物を形成する添加元素(例えば、アルミニウム,クロム,モリブデンなど)が含まれる場合には、窒化物層は、それら元素の窒化物を含んでもよい。
窒化物層25の厚みとしては、0.2μm〜50μmの範囲とすることができ、好ましくは5μm〜20μmである。厚みが0.2μm以上であると、自動車用エンジンの耐用年数(約10年)が経過する前に窒化物層が摩滅するおそれを回避できる。逆に、厚みが50mm以下であることで、内部応力による窒化物層の亀裂の発生が抑えられる。
また、窒化物層25のさらに下層に位置する窒素拡散硬化層23は、窒化物層の形成に起因して窒素が層内に拡散したことで鋼材より硬化された層であり、具体的には、窒素を固溶した層、あるいは窒素を固溶した層に鉄系窒化物や添加元素の窒化物が分散析出した複合層として形成されている。
窒素拡散硬化層23の厚みとしては、一般的に数十〜数百μm程度であり、好ましくは5μm〜200μmとすることができる。
次に、窒化処理に用いた鋼材21について説明する。
鋼材としては、従来公知の自動車エンジン用の摺動部品の製造に使用されている一般的な鋼材を用いることができ、例えば、クロムモリブデン鋼、炭素鋼、ダクタイル鋳鉄等を挙げることができる。
鋼材の種類は、既述の添加元素の有無により2つに大別することができ、添加元素を含有する鋼材、及び添加元素を含有しない鋼材のいずれであってもよい。
窒化物層は、例えば、プラズマ窒化法、ガス窒化法、塩浴軟窒化法、ガス軟窒化法、プラズマ軟窒化法などの窒化処理により形成することができる。窒化物層は、一般に多孔質な層として形成される。中でも、耐摩耗性の点では最表層はより緻密に形成されていることが有利なため、プラズマ窒化法で形成される窒化物層が好ましい。プラズマ窒化法で形成される窒化物層は、プラズマ窒化法以外の他の処理法で形成される層と比較してより緻密な層を得やすく、より優れた耐摩耗性を発揮させることができる。
上記の窒化処理法は、窒素源としてガスや水溶液などの流体が用いられ、複雑な形状でも窒素源が表面に到達しやすいため、鋼材の形状を問わず、その表面を窒化することができる。つまり、いかなる摺動面にも窒化物層を形成することが可能である。
また、これらの窒化処理法は、窒化処理に必要なコストも、一般的な浸炭処理や焼き入れ処理とほぼ同等であるので、窒化処理を利用して耐摩耗性を高める利点が大きい。
本実施形態のエンジンに用いられるエンジン油は、含有成分として、少なくとも、基油と、ジアルキルジチオリン酸亜鉛と、を含む潤滑油である。特に、添加剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛を含んでいることで、鋼材の窒化処理面(窒化物層表面)との間で相互作用し、水分が比較的多く存在する油中での耐摩耗性の向上に適した摩耗防止被膜が形成される。
前記基油としては、特に制限はなく、従来からエンジン用潤滑油に使用されている油(オイル)を所望により選択して使用することができる。
前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、下記の化学式で表される化合物であり、エンジン油中に含有することで、耐摩耗性の向上効果がある。
(RORO(=S)P−S)Zn(−SP(=S)OROR
、R、R、及びRは、各々独立に、炭素数1〜24の炭化水素基を表す。
〜Rで表される炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分岐状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は炭素数5〜13の直鎖状若しくは分岐状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数6〜18の直鎖状又は分岐状のアルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等から選ばれるものであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級、及び第3級のいずれであってもよい。
上記のうち、R〜Rで表される炭素数1〜24のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等が挙げられる。
また、R〜Rで表される炭素数3〜24のアルケニル基の例としては、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基(例えばオレイル基)、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられる。
〜Rで表される炭素数5〜13のシクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
〜Rで表される炭素数5〜13のアルキルシクロアルキル基の例としては、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジプロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、エチルメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジプロピルシクロヘキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジプロピルシクロヘプチル基、プロピルエチルメチルシクロヘプチル基等が挙げられる。
〜Rで表される炭素数6〜18のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
〜Rで表される炭素数6〜18のアルキルアリール基の例としては、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等が挙げられる。
〜Rで表される炭素数7〜19のアリールアルキル基の例としては、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基等が挙げられる。
なお、上記の炭化水素基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分岐状構造が含まれ、またアルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキルへの結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意に選択することができる。
ジアルキルジチオリン酸亜鉛の好適な具体例としては、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジオクチルジチオリン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−デシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛、及びこれらの1つ又は2つ以上を任意に組み合わせた混合物、等を挙げることができる。
前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛のエンジン油中における含有量は、エンジン油の全質量に対して、リン元素換算量で0.02質量%〜0.20質量%が好ましく、0.05質量%〜0.10質量%がより好ましい。ジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有比率が0.02質量%以上であることで、窒化物層上に形成される摩耗防止層の形成性がよく、摩耗防止効果に優れる。また、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有比率が0.20質量%以下であると、排気触媒の被毒抑制の点で有利である。
ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、Lubrizol社製のLZ−1371、DOG社製のDeophos Zn 8などを使用することができる。
本実施形態におけるエンジン油中における水分含量は、内燃機関内部の潤滑油の温度及び水温のいずれかを30℃以下の温度条件に維持して15分以上連続運転させた後に採取した際の含有量として、エンジン油の全質量に対して、0.2質量%〜10質量%である。この水分含量は、ハイブリッドシステムやアイドルストップシステム等の、比較的頻繁にエンジンが停止されるシステムに搭載されたエンジンの運転/停止を繰り返した場合に、エンジン油中に含有され得る最大の水分量を想定したものである。
すなわち、水分含量が0.2質量%以上であることは、始動後に高頻度にエンジン停止する環境適応システムを搭載していない従来車のエンジンのエンジン油に比べ、より多量の水分を含んでいることを示している。また、水分含量が10質量%以下であることは、例えば水分量が増えると見込まれるエタノール等の燃料を用いた内燃機関と、ハイブリッドシステム等の環境適応システムと、を組み合わせたシステムを考慮した場合に潤滑油中に含まれる最大量と推定される水分量を示している。
上記のうち、エンジン油中における水分含量は、エンジン油の全質量に対して、0.5質量%〜10質量%が好ましく、1.0質量%〜10質量%がより好ましい。
エンジン油中の水分含量が上記範囲内である場合は、摺動部材の摺動面の耐摩耗性が低下しやすいが、既述のように、内燃機関が、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むエンジン油(潤滑油)と、このエンジン油中で摺動し、鋼材上の窒化物層の上にZn、S、及びPを含む摩耗防止被膜を有する摺動部材と、を組み合わせた構成であることで、耐摩耗性に特に優れている。
上記の実施態様では、ピストンリングを例に説明したが、摺動部材としては、ピストンリングのほか、バルブリフタ、アジャスティングシム、カム、カムシャフト、ロッカーアーム、ローラーピン、タペット、ピストンピン、タイミングギア、タイミングチェーン、並びにオイルポンプのドライブギア、ドリブンギア、及びロータ等が好適に挙げられる。
これら摺動部材の場合も、上記したピストンリングの場合と同様に、摺動部において、鋼材上に、該鋼材が窒化された窒化化合物を含む窒化物層と、Zn、S、及びPを含む被膜(摩耗防止被膜)とをこの順に有していることで、水分を含むエンジン油中において優れた耐摩耗性を発揮することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
<摺動部材の作製>
−1.鋼材の準備−
鋼材として、クロムモリブデン鋼(SCM420)と炭素鋼(S50C)とを用意した。これら鋼材の化学組成を下記の表1に示す。表1に示されるように、クロムモリブデン鋼は、添加元素としてクロム(Cr)とモリブデン(Mo)を含む鋼材であり、炭素鋼は、このような添加元素を含まない鋼材である。

−2.窒化処理−
鋼材として用意したクロムモリブデン鋼(SCM420)と炭素鋼(S50C)のそれぞれに対して、下記の表2に示す窒化処理条件下、プラズマ窒化法により窒化処理を施した。
以上により、図2に示す重層構造と同じように、鋼材上に窒素拡散硬化層と窒化物層とを重層して有する摺動部材(サンプル摺動材1〜2;実施例1〜2)を作製した。

〜EPMA分析〜
作製したサンプル摺動材1〜2に対して、所望とする窒化物層の形成を確認するため、表2に示す条件にてプラズマ窒化処理を施したクロムモリブデン鋼及び炭素鋼を観察すると共に、EPMA(Electron Probe MicroAnalyser Analysis)による分析を行なった。具体的には、プラズマ窒化処理を施したクロムモリブデン鋼及び炭素鋼の断面を研磨し、研磨した断面に対し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影するとともにその反射電子像撮像を観察し、また、電子線マイクロアナライザ(JXA−1500F(日本電子社製)を用いて窒素(N)と鉄(Fe)の定量分析を実施した。
更に、プラズマ窒化処理を施したクロムモリブデン鋼及び炭素鋼の表面にX線回折(XRD)分析を実施し、クロムモリブデン鋼の窒化物層及び炭素鋼の窒化物層について結晶構造解析を行なった。ここでは、未処理(窒化処理前)のクロムモリブデン鋼、炭素鋼に対する分析も実施した。
まず、SEM像(反射電子像)及びEPMA分析の結果を図3及び下記表3に示す。なお、EPMA分析結果は、分析点により多少のばらつきが存在するため、1つの窒化物層に対して5点分析を行ない、それらの平均値を用いて評価した。
図3及び表3に示すように、サンプル摺動材1〜2の両方において、表面から10μm程度に高濃度(窒素元素換算量で20at%以上)に窒素を含有する層が形成されていることがわかる。そして、後述するXRD分析からも明らかなように、この高濃度に窒素を含有する層においては、窒素は窒化化合物として存在していることがわかる。また、高濃度に窒素を含有する層より固体内部側でも深部まで低濃度の窒素を含む層が観察され、深部まで窒素が拡散していることがわかった。
よって、クロムモリブデン鋼及び炭素鋼にプラズマ窒化処理を施すことで、所望とする窒化物層が形成されていることが確認された。

次に、クロムモリブデン鋼(SCM420)又は炭素鋼(S50C)を用いた各サンプル摺動材について、D8 ADVANCE(ブルカーAXS社製)を用い、X線回折(XRD)分析を行なった。XRD分析の結果を図4及び図5に示す。ここで、比較のため、サンプル摺動材1〜2に用いた各鋼材の未処理面に対する結果も示す。
図4及び図5に示すように、クロムモリブデン鋼の窒化物層及び炭素鋼の窒化物層では、FeN相及びFeN相の明瞭なピークが観察されていることが分かる。これより、いずれの窒化物層も、FeN相及びFeN相を含むことが分かる。FeN相及びFeN相は、プラズマ窒化した鋼材の窒化物層に典型的にみられるものである。
<比較材の準備>
比較用の摺動材料として、下記の比較材1(比較例1)及び比較材2(比較例2)を用意した。
・比較材1:
クロムモリブデン鋼(SCM420)に対し、ガス浸炭処理及びショットブラスト処理を施した摺動材料
・比較材2:
炭素鋼(S50C)に対し、焼き入れ処理及びショットブラスト処理を施した摺動材料
なお、上記のガス浸炭処理、焼き入れ処理、及びショットブラスト処理としては、いずれもクロムモリブデン鋼や炭素鋼を自動車エンジン用の摺動部品として使用する際の一般的な表面処理を行なった。
例えば浸炭層は、表面を浸炭処理して形成された層であり、浸炭処理とは、低炭素鋼又は低炭素合金鋼を機械加工した後、その表面における炭素量を増加させて焼入することで、表面に炭素を浸入させ固溶させて硬化する処理法のことをいう。浸炭処理には、固体浸炭、ガス浸炭、液体浸炭、真空ガス浸炭、プラズマ浸炭などがある。
以下において、便宜上、ガス浸炭処理及びショットブラスト処理を総じて「浸炭処理」と、焼き入れ処理及びショットブラスト処理を総じて「焼き入れ処理」と、それぞれ称する。
また、浸炭処理されたクロムモリブデン鋼(SCM420)表面に形成された表面硬化層を「浸炭層」と、また焼き入れ処理された炭素鋼(S50C)表面に形成された表面硬化層を「焼き入れ層」と、それぞれ称する。
上記とは別に、更に、窒化物層の優位性を明確化するための、比較用の摺動材料として、下記の比較材3(比較例3)及び比較材4(比較例4)を用意した。
・比較材3:
上記のサンプル摺動材1の最表層である窒化物層を研磨して窒化物層を除去し、窒素拡散硬化層を露出させて、クロムモリブデン鋼上の窒素拡散硬化層を摺動面とした摺動材料
・比較材4:
上記のサンプル摺動材2の最表層である窒化物層を研磨して窒化物層を除去し、窒素拡散硬化層を露出させて、炭素鋼上の窒素拡散硬化層を摺動面とした摺動材料
なお、上記において、窒化物層を除去するための研磨深さは、上記のようにサンプル摺動材1〜2に対して行なった断面観察の結果に基づいて決定した。また、窒化物層が除去されて窒素拡散硬化層が露出したことは、研磨面のビッカース硬さを計測し、窒化物層に対して硬さが90%以下であることを確認することで判断した。ビッカース硬さは、MVK−E(明石製作所社製)を用い、試験片両端から0.5mmの2点とその中央の計3点の硬さを計測し平均することにより求めた。
<供試エンジン油の準備>
供試エンジン油として、一般的なガソリンエンジン用潤滑油である市販のエンジン油(以下、「市販油」という。)と、基油及び複数の添加剤を用いて調製したエンジン油(以下、「試作油」という。)と、を用意した。
・市販油:
トヨタ自動車社製のILSAC GF−4規格油、粘度グレード:5W−30
・試作油:
下記表4に示す組成を有する試作油
以下に、試作油の作製手順を示す。すなわち、
基油に、試作油全量(質量基準)に対して、過塩基性カルシウムスルホネートをカルシウム元素換算値が0.24質量%となる量と、ホウ素を含有しないコハク酸イミド系無灰分散剤のみからなるコハク酸イミド系無灰分散剤を窒素元素換算値が0.06質量%となる量と、ジアルキルジチオリン酸亜鉛をリン元素換算値が0.08質量%となる量と、を配合した。その後、油温60℃にて1時間撹拌した。なお、試作油の基油及び添加剤の種類・添加量は一般的なエンジン油のそれを模擬したものである。

<エンジン油中に混入する水分の最大混入量に関する予備実験>
摩耗試験に供試するための潤滑油として、水分を含有するエンジン油を調製するにあたり、エンジン油中に混入し得る最大水分量を検討した。
具体的には、まず、エンジン環境によるエンジン油中の水分量への影響を定量的に把握するため、供試燃料の違い(エタノール100%燃料又は市販のハイオクガソリン燃料)と、油温(低温又は高温)と、がエンジン油中の水分量に及ぼす影響を検討した。ここで、高油温条件は、従来車のエンジン環境(すなわちエンジン始動後の車両走行中はエンジンが稼働し続ける環境)を模擬したものであり、低油温条件は、ハイブリッドシステム(環境適応システム)を想定して始動後のエンジンが高頻度で停止するシステムでのエンジン環境を模擬したものである。
エンジン油中の水分量は、実機の自動車用エンジンを用いた台上運転試験を行ないながら、定期的にエンジンよりエンジン油を採取し、この採取油から測定した。採取場所は、オイルパン、ヘッドデッキ、ヘッドカバーとした。結果を下記表5に示す。
なお、表5において、水温は、内燃機関内の冷却水の温度を表し、油温は、内燃機関内の潤滑油の温度を表している。

まず、供試燃料として市販ハイオクガソリン燃料を用いた場合に着目する。
表5に示すように、水温30℃の条件で15分間運転した場合、エンジン油中の水分量は0.16%であった。一方、水温100℃の条件で20分間運転した場合、エンジン油中の水分量は0.034%であった。これより、油水温が低温に保たれた場合には、油中水分量が増加しやすいことが分かる。また、ガソリン燃料を用いたエンジンが、高頻度にエンジン停止するハイブリッドシステム等の環境適応システムと共に搭載された場合、エンジン油中に混入し得る水分量は最大で0.2質量%程度とみることができる。
次に、供試燃料としてエタノール100%燃料を用いた場合に着目する。
水温30℃の条件で15分間運転された場合、エンジン油中の最大水分量は7.8%であった。一方、水温100℃の条件で20分間運転された場合、エンジン油中の水分量は0.032%であった。これより、エタノール100%燃料を用いたエンジンが、従来車の使用環境(すなわちエンジン始動後の車両走行中はエンジンが稼働し続ける環境)で使用された場合、エンジン油中に混入しうる水分量は最大で0.05質量%程度となる。一方、エタノール100%燃料を用いたエンジンが、エンジンが高頻度に停止するハイブリッドシステム等の環境適応システムと共に搭載された場合、エンジン油中に混入し得る水分量は最大で10質量%程度とみることができる。
以上の結果から、エンジン環境とエンジン油中に混入し得る最大水分量との関係は、下記表6に示す通りである。

上記の表6に示すように、始動後にエンジンが高頻度に停止されるシステムでは、低温環境になる結果、エンジン油中の水分量は、従来車のエンジン油に比べて多く、しかもエタノール等の水分を含む燃料を用いた場合は、エンジン油中の水分量が大幅に増えることが分かる。
一方、これまでエタノール等の水分を含む燃料を使用し、かつハイブリッドシステム等の環境適応システムが搭載された自動車は提供されるに至っていないのが実情であり、したがってエンジン油の水分量が格段に増え、エンジン油中の水分量が0.2質量%〜10質量%の範囲にある水分環境下での摺動部材の耐摩耗性についても考慮されていない。
このような状況下、既述のように、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む潤滑油と、鋼材上の窒化物層の上にZn、S、及びPを含む被膜を有する摺動部品と、を設けた構成は、上記のように水分を多く含むエンジン油中での耐摩耗性を維持するのに適している。
<水分含有のエンジン油の調製>
上記の検討を踏まえて、エンジン油中の水分量を、0質量%、0.2質量%、0.5質量%、1質量%、10質量%とした。これら水分を含むエンジン油は、油中へ水を添加した後、室温(25℃)下で24時間撹拌することにより調製した。
<耐摩耗性の評価>
−評価方法−
図6に示すブロック・オン・リング型摩耗試験機を用い、その容器にエンジン油として上記の市販油又は調製した試作油とを順次装填し、エンジン油に一部が漬かるようにリング試験片を配置すると共に、ブロック試験片の摺動面に上記の各摺動材(サンプル摺動材1〜2、比較材1〜4)を順次取り付けた。そして、ブロック試験片に取り付けられた摺動材を、下記の摺動摩耗条件下、所定荷重で回転するリング試験片(硬さ:HV560−770、表面粗さ(Ra):0.35mmの市販のFalex S−10試験片(AISI4620浸炭焼き入れ合金鋼))に押し付けることで、線接触形態における連続すべり条件にて摩擦試験を行ない、摺動材の各々の耐摩耗性を評価した。
ここでは、各々の表面粗さを揃えるため、サンプル摺動材1〜2の各窒化物層、比較材1〜4の浸炭層又は焼き入れ層を、プラズマ窒化処理後に同一条件で研磨したものを用いた。
<摺動摩耗条件>
・荷重(W) :286N
・すべり速度(v):0.3m/sec
・油温(T) :40℃
・試験時間(t) :30min
上記の摺動摩耗条件及び試験片形状で摺動された場合、潤滑状態は境界潤滑となる。境界潤滑とは、油膜が十分に形成されず、固体同士の接触が生じる過酷な潤滑状態のことである。自動車エンジンにおいて、境界潤滑下で摺動される摺動部品には、バルブリフタ、アジャスティングシム、カム、カムシャフト、ロッカーアーム、ローラーピン、タペット、ピストンリング、ピストンピン、タイミングギア、タイミングチェーン、並びにオイルポンプのドライブギア、ドリブンギア、及びロータがある。
耐摩耗性の評価は、摩耗試験後のブロック試験片上の摩耗痕深さを、白色干渉式の非接触表面形状測定機を用いて測定することにより行なった。ここで、摩耗痕深さとは、非摺動部と凹型摩耗痕の最深部との間の高低差である。
−評価結果−
(1)エンジン油中の水分量が摩耗に及ぼす影響について
まず、エンジン油中の水分が、クロムモリブデン鋼の窒化物層、及びクロムモリブデン鋼の浸炭層(現状で一般に使用されているエンジン用摺動部品を想定)の摩耗に及ぼす影響を図7に示す。
図7に示すように、摺動面が浸炭層では、水分量0.2質量%を境に摩耗が著しく増加するのに対し、摺動面を窒化物層としたサンプル摺動材1〜2では、水分量による摩耗への影響はみられるが、著しい摩耗への影響はほとんどみられなかった。更に、浸炭層の摩耗に水分量が及ぼす影響に着目すると、水分量が1質量%における摩耗痕深さは水分0質量%におけるそれの約4倍であった。また、水分量が1質量%以上の領域では、摩耗痕深さは高止まりし、水分量が摩耗に及ぼす影響はおよそみられなかった。
この結果から、窒化物層では、エンジン油中に多量の水分が存在する場合にも、エンジン油中にほとんど水分が含まれない場合と同等の耐摩耗性を維持することができた。一方、従来の摺動材料は、従来車のエンジン油に含まれる水分量の範囲(水分量≦0.2質量%)で使用される場合には摩耗に大きな問題は生じないものの、水分量が0.2質量%以上の範囲では過大摩耗を生じ、使用に耐えないことがわかった。
次に、上記で用意した各摺動材(サンプル摺動材1〜2、比較材1〜4)に対して行なった摩擦試験の結果をもとに、エンジン油中の水分による摩耗増加に対する影響を図8に示す。図8は、試作油を用いて摩擦試験を行なった場合に、油中水分が各摺動材の摩耗に及ぼす影響を示す。
まず、鋼材がクロムモリブデン鋼(SCM420)の場合に着目する。
油中に10質量%の水分を存在させた場合、浸炭層では摩耗痕深さが2.6倍に、窒素拡散硬化層では摩耗痕深さが4.7倍に増加しているのに対し、サンプル摺動材1〜2(実施例1〜2)の窒化物層では、摩耗痕深さの増加が1.4倍に留まった。
次に、鋼材が炭素鋼(S50C)の場合に着目する。
油中に10質量%の水分を存在させた場合、焼き入れ層では摩耗痕深さが4.1倍に、窒素拡散硬化層では摩耗痕深さが2.4倍に増加しているのに対し、サンプル摺動材1〜2(実施例1〜2)の窒化物層では、摩耗痕深さの増加が1.4倍に留まった。
以上のように、クロムモリブデン鋼及び炭素鋼において、窒化物層では、従来の浸炭層や焼き入れ層、及び窒素拡散硬化層と比較し、水分を含有するエンジン油中においても耐摩耗性が維持された。
本実施例では、水分含量を10質量%とした場合を例に示したが、本発明で規定する水分含量(0.2質量%〜10質量%)のうち最も水分量の多い場合において良好な耐摩耗性が得られたことから、10質量%以外の0.2質量%〜10質量%の範囲内においては良好な耐摩耗性を確保することができるものと推察される。
また、本実施例において、添加元素を含有するクロムモリブデン鋼と添加元素を含有しない炭素鋼との双方において同様の結果が得られたことから、この耐摩耗性の向上効果は、鋼材全般に対して奏されるものである。
(2)作用・効果について
−摩耗防止被膜の形成性の保持−
鋼材の窒化物層が水分を含有するエンジン油中において耐摩耗性能を維持する理由を示すのに先立ち、まず背景となるエンジン油中の水分による従来の摺動部品の摩耗増加現象について説明する。
水分を含まないエンジン油中でクロムモリブデン鋼の浸炭層が摺動された場合、エンジン油中のジアルキルジチオリン酸亜鉛(摩耗防止剤)と鋼材とが摺動面で化学反応を生じ、摺動面に亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、鉄(Fe)などから構成される摩耗防止被膜が形成される。この摩耗防止被膜によって、浸炭層の摩耗は抑制される。本現象は、一般的な鋼材を摺動材料として用いた場合にも生じる。
一方、水分を含有するエンジン油中でクロムモリブデン鋼の浸炭層が摺動された場合、摺動面での摩耗防止被膜の形成量が減少する。これは、摩擦面におけるジアルキルジチオリン酸亜鉛、水分、及び炭酸カルシウムの間での化学反応によりジアルキルジチオリン酸亜鉛が変質するためである。なお、炭酸カルシウムは、油成分中の過塩基性カルシウムスルホネートに含まれるものであり、炭酸カルシウムは燃焼により生じる酸を中和する機能を有する。
上記した摩耗増加現象に基づくと、窒化物層が水分を含有するエンジン油中において耐摩耗性を維持する理由として、窒化物層上では、浸炭層上及び焼き入れ層上と比較し、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、水分、及び炭酸カルシウムの存在下での摩耗防止被膜の形成量が多いことが考えられる。
この機構を検証するため、図7の結果を得た摩擦試験後の摩耗痕(サンプル摺動材1)に対し、EPMAによる元素分析を実施した。この元素分析では、摩耗防止被膜に由来する亜鉛(Zn)、硫黄(S)、及びリン(P)に着目した。この元素分析の結果を図9に示す。
図9に示すように、水分量が0質量%の場合、4種の摺動面のいずれにおいても亜鉛(Zn)、硫黄(S)、及びリン(P)が0.20%以上のX線強度比で検出され、十分な摩耗防止被膜が形成されていることが示された。
次に、水分量が10質量%である場合に着目する。
クロムモリブデン鋼の窒化物層及び炭素鋼の窒化物層では、クロムモリブデン鋼の浸炭層及び炭素鋼の焼き入れ層と比較し、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、及びリン(P)のX線強度比が大きいことがわかる。すなわち、クロムモリブデン鋼の窒化物層及び炭素鋼の窒化物層においては、クロムモリブデン鋼の浸炭層及び炭素鋼の焼き入れ層と比較し、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、水分、及び炭酸カルシウムを含有するエンジン油中において、摩耗防止被膜が保持されていたことを示している。
以上の結果より、鋼材の窒化物層は、浸炭層及び焼き入れ層と比較し、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、水分、及び炭酸カルシウムを含有するエンジン油中において、ジアルキルジチオリン酸亜鉛由来の摩耗防止被膜の形成量を維持できることが確認された。このことが、水分を含有するエンジン油中において鋼材の窒化物層が耐摩耗性能を維持する理由と考えられる。
−摺動面と摩耗防止剤との相互作用−
鋼材の窒化物層は、浸炭層及び焼き入れ層と比較し、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、水分、及び炭酸カルシウムを含有するエンジン油中において、ジアルキルジチオリン酸亜鉛由来の摩耗防止被膜の形成量を維持する機構を検討する。
鋼材の摺動面とエンジン油添加剤との相互作用については、例えば「表面化学から見た境界潤滑 −潤滑油添加剤のトライボケミカル反応に対する新生面の役割−、森誠之、JTEKT ENGINEERING JOURNAL,No. 1008 (2010)」において、金属表面を被覆している金属酸化物は脂肪酸やリン系摩耗防止剤などとの化学的親和性が高いことが報告されている。これは、PearsonのHard and Soft Acids and Bases (HSAB)の原理、すなわち硬い酸(Hard Acid)と硬い塩基(Hard Base)との組み合わせ、及び軟らかい酸(Soft Acid)と軟らかい塩基(Soft Base)との組み合わせは、反応しやすく強い結合を形成するという原理に基づくものである(R. G. Pearson (ed.): Hard and Soft Acids and Bases, Dowden, Huchinson & Ross, Inc. (1973) 参照)。具体的には、金属酸化物は、イオン結合性であり極性を持っているため硬い酸に分類され、極性官能基を持ち硬い塩基に分類される脂肪酸やリン系摩耗防止剤と反応しやすく強い結合を形成するという機構である。
ここで、窒化物層の主成分である窒化鉄(Fe2−3N、FeN)は、イオン結合性であるから、炭素を固溶する浸炭層や焼き入れ層、窒素を固溶した層が主体である拡散層と比較して、硬い酸に分類できる。一方、ジアルキルジチオリン酸亜鉛も、試作油中の他の添加剤と比較して高い極性を持つため、硬い塩基に分類できる。上記の機構を応用すると、窒化物層とジアルキルジチオリン酸亜鉛は、浸炭層や焼き入れ層と比較して、反応しやすく強い結合を形成することが推察される。また、窒化物層上の摩耗防止被膜と浸炭層上及び焼き入れ層上の摩耗防止被膜では、構造が異なることが想定される。
図9における各層(摺動面)における水分量が0質量%での結果をみると、クロムモリブデン鋼の浸炭層、炭素鋼の焼き入れ層では、X線強度比の序列が亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)であるのに対し、窒化物層ではX線強度比の序列が硫黄(S)、亜鉛(Zn)、リン(P)となっている。これは、窒化物層では、浸炭層や焼き入れ層と比較して、異なる構造の摩耗防止被膜が形成されていることを示唆している。
窒化物層においてジアルキルジチオリン酸亜鉛由来の摩耗防止被膜の形成量が多い機構は、以上の通りであると推察する。
以上の結果から、摺動面が鋼材の窒化物層で構成されている摺動部材を用いることで、従来の摺動部材では摩耗が増加するような比較的水分含量の多いエンジン油中においても、水分をほぼ含有しない場合と同等の耐摩耗性を維持することが可能になる。
上記において、クロムモリブデン鋼の窒化物層と炭素鋼の窒化物層とを中心に説明したが、耐摩耗性の向上効果は、これら鋼材の窒化物層に限られるものではない。その理由は、他の鋼材を窒化処理した場合にも、耐摩耗性という観点では、その鋼材が添加元素を含有する場合にはクロムモリブデン鋼の化合物層と同様の化合物層を形成し、その鋼材が添加元素を含有しない場合には炭素鋼の化合物と同様の化合物層を形成するためである。
10・・・ピストン
11・・・ピストンリング
15・・・摩耗防止被膜
21・・・鋼材
23・・・窒素拡散硬化層
25・・・窒化物層

Claims (10)

  1. 水分及びジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む潤滑油と、
    鋼材、該鋼材中の少なくとも金属成分が窒化された窒化化合物を含む窒化物層、及び亜鉛(Zn)、硫黄(S)、及びリン(P)を含む被膜をこの順に有し、前記潤滑油の存在下、前記被膜を摺動面として摺動する摺動部材と、
    を備え、前記潤滑油の温度及び内燃機関内の水温のいずれかを30℃以下の温度条件に維持して15分以上運転させた後に採取した前記潤滑油に含有される水分の含有比率が0.2質量%〜10質量%である自動車用の内燃機関。
  2. 前記窒化物層に含まれる窒化化合物が、Fe2−3N及びFeNから選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記窒化物層に含まれる窒化化合物の含有量は、窒化物層の全質量に対して、窒素元素換算値が3原子%〜30原子%となる量である請求項1又は請求項2に記載の内燃機関。
  4. 前記自動車は、エタノール燃料自動車である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関。
  5. 前記自動車は、ハイブリッドシステム又は停車時運転停止システムを搭載している請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関。
  6. 前記摺動部材は、バルブリフタ、アジャスティングシム、カム、カムシャフト、ロッカーアーム、ローラーピン、タペット、ピストンリング、ピストンピン、タイミングギア、タイミングチェーン、並びにオイルポンプのドライブギア、ドリブンギア、及びロータからなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関。
  7. 前記窒化物層は、鋼材をプラズマ窒化法で窒化処理することで形成された層である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の内燃機関。
  8. 電子線マイクロアナライザ(EPMA)により分析した前記被膜中の元素のX線強度比の序列が、硫黄(S)>亜鉛(Zn)>リン(P)である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の内燃機関。
  9. 前記鋼材は、クロムモリブデン鋼又は炭素鋼である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の内燃機関。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の内燃機関を備えた自動車。
JP2013193493A 2013-09-18 2013-09-18 内燃機関及び自動車 Expired - Fee Related JP5991956B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013193493A JP5991956B2 (ja) 2013-09-18 2013-09-18 内燃機関及び自動車

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013193493A JP5991956B2 (ja) 2013-09-18 2013-09-18 内燃機関及び自動車

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015059502A true JP2015059502A (ja) 2015-03-30
JP5991956B2 JP5991956B2 (ja) 2016-09-14

Family

ID=52817231

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013193493A Expired - Fee Related JP5991956B2 (ja) 2013-09-18 2013-09-18 内燃機関及び自動車

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5991956B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115200867A (zh) * 2021-04-13 2022-10-18 潍柴动力股份有限公司 一种发动机及发动机的异常磨损部位识别方法
US20220389345A1 (en) * 2021-06-04 2022-12-08 Afton Chemical Corporation Lubricating compositions for a hybrid engine
JP7291300B1 (ja) * 2022-09-08 2023-06-14 Tpr株式会社 コンプレッションリング

Citations (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04258572A (ja) * 1991-02-13 1992-09-14 Hitachi Zosen Corp 摺動材料
JPH0570786A (ja) * 1991-02-18 1993-03-23 Tonen Corp アルコールエンジン用潤滑油組成物
JP2000290677A (ja) * 1999-04-08 2000-10-17 Tonen Corp ディーゼルエンジン用潤滑油組成物
JP2003301282A (ja) * 2002-04-10 2003-10-24 Kobe Steel Ltd 高面圧下での摺動特性に優れる摺動部材
JP2006002814A (ja) * 2004-06-16 2006-01-05 Honda Motor Co Ltd 窒化処理摺動面の形成方法
JP2008144019A (ja) * 2006-12-08 2008-06-26 Nippon Oil Corp 内燃機関用潤滑油組成物
JP2010242644A (ja) * 2009-04-07 2010-10-28 Toyota Motor Corp アルコール系燃料エンジン用潤滑油の性能維持方法および装置
JP2011042862A (ja) * 2009-08-24 2011-03-03 Toyota Central R&D Labs Inc 耐食耐摩耗部材およびその製造方法
JP2011042792A (ja) * 2009-08-24 2011-03-03 Infineum Internatl Ltd 潤滑油組成物
JP2011252073A (ja) * 2010-06-01 2011-12-15 Idemitsu Kosan Co Ltd 低摩擦摺動材料用潤滑油組成物、及びこれを用いた摺動機構
JP2012149743A (ja) * 2011-01-21 2012-08-09 Ntn Corp エンジン用シャフト
JP2013035973A (ja) * 2011-08-10 2013-02-21 Ntn Corp 拡散性水素抑制潤滑組成物、転動部品、転動装置、および拡散性水素量抑制方法
JP2013087197A (ja) * 2011-10-18 2013-05-13 Idemitsu Kosan Co Ltd 摺動機構

Patent Citations (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04258572A (ja) * 1991-02-13 1992-09-14 Hitachi Zosen Corp 摺動材料
JPH0570786A (ja) * 1991-02-18 1993-03-23 Tonen Corp アルコールエンジン用潤滑油組成物
JP2000290677A (ja) * 1999-04-08 2000-10-17 Tonen Corp ディーゼルエンジン用潤滑油組成物
JP2003301282A (ja) * 2002-04-10 2003-10-24 Kobe Steel Ltd 高面圧下での摺動特性に優れる摺動部材
JP2006002814A (ja) * 2004-06-16 2006-01-05 Honda Motor Co Ltd 窒化処理摺動面の形成方法
JP2008144019A (ja) * 2006-12-08 2008-06-26 Nippon Oil Corp 内燃機関用潤滑油組成物
JP2010242644A (ja) * 2009-04-07 2010-10-28 Toyota Motor Corp アルコール系燃料エンジン用潤滑油の性能維持方法および装置
JP2011042862A (ja) * 2009-08-24 2011-03-03 Toyota Central R&D Labs Inc 耐食耐摩耗部材およびその製造方法
JP2011042792A (ja) * 2009-08-24 2011-03-03 Infineum Internatl Ltd 潤滑油組成物
JP2011252073A (ja) * 2010-06-01 2011-12-15 Idemitsu Kosan Co Ltd 低摩擦摺動材料用潤滑油組成物、及びこれを用いた摺動機構
EP2578669A1 (en) * 2010-06-01 2013-04-10 Idemitsu Kosan Co., Ltd. Lubricant composition for low-friction sliding material and sliding mechanism using same
JP2012149743A (ja) * 2011-01-21 2012-08-09 Ntn Corp エンジン用シャフト
JP2013035973A (ja) * 2011-08-10 2013-02-21 Ntn Corp 拡散性水素抑制潤滑組成物、転動部品、転動装置、および拡散性水素量抑制方法
JP2013087197A (ja) * 2011-10-18 2013-05-13 Idemitsu Kosan Co Ltd 摺動機構

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115200867A (zh) * 2021-04-13 2022-10-18 潍柴动力股份有限公司 一种发动机及发动机的异常磨损部位识别方法
US20220389345A1 (en) * 2021-06-04 2022-12-08 Afton Chemical Corporation Lubricating compositions for a hybrid engine
JP2022186663A (ja) * 2021-06-04 2022-12-15 アフトン・ケミカル・コーポレーション ハイブリッドエンジン用潤滑組成物
US11753599B2 (en) * 2021-06-04 2023-09-12 Afton Chemical Corporation Lubricating compositions for a hybrid engine
JP7291300B1 (ja) * 2022-09-08 2023-06-14 Tpr株式会社 コンプレッションリング
CN117136275A (zh) * 2022-09-08 2023-11-28 帝伯爱尔株式会社 压缩环
WO2024053065A1 (ja) * 2022-09-08 2024-03-14 Tpr株式会社 コンプレッションリング
EP4365433A4 (en) * 2022-09-08 2024-05-15 TPR Co., Ltd. COMPRESSION RING

Also Published As

Publication number Publication date
JP5991956B2 (ja) 2016-09-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Neville et al. Compatibility between tribological surfaces and lubricant additives—how friction and wear reduction can be controlled by surface/lube synergies
US7146956B2 (en) Valve train for internal combustion engine
JP4973971B2 (ja) 摺動部材
JP3555891B2 (ja) 低摩擦摺動材料及びこれに用いる潤滑油組成物
JP4007440B2 (ja) 硬質炭素皮膜摺動部材
KR101003865B1 (ko) 저마찰 접동 기구, 저마찰제 조성물 및 마찰 감소 방법
JP3869192B2 (ja) 転がり摺動部品
US20040092405A1 (en) Low-friction sliding mechanism
JP5991956B2 (ja) 内燃機関及び自動車
JP2005090489A (ja) 内燃機関用バルブリフター
JP2004353456A (ja) 低摩擦摺動カム・フォロワの組合せ及びこれに用いる潤滑油組成物
Shaw et al. Tribological study of diesel piston skirt coatings in CJ-4 and PC-11 engine oils
JP2006144100A (ja) 自動車エンジン用摺動部材
Kano et al. Wear resistance properties of ceramic rocker arm pads
CN111512056B (zh) 低摩擦滑动机构
JP6343581B2 (ja) 摺動部材および摺動機械
JP2005002888A (ja) 自動車エンジン用ピストンリング及びこれに用いる潤滑油組成物
JP2005069249A (ja) ピストンとクランクシャフトの連結構造
Tung et al. Engine oil Effects on friction and wear using 2.2 L direct injection diesel engine components for bench testing part 2-tribology bench test results and surface analyses
Tung et al. Surface Engineering Development Trends and Impact of Surface Coatings and Textures on Automotive Powertrain Friction and Wear Control
JP6574801B2 (ja) 摺動システム
US20130319365A1 (en) Method for in-situ forming of low friction coatings on engine cylinder bores
Ofune Development of single cam rig for accurate simulation of valve train tribochemistry
JP2020158872A (ja) 摺動システム
JP2005061241A (ja) 内燃機関の動弁装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151110

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160727

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160802

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160816

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5991956

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees