図1は、電解セルの一例である固体酸化物形燃料電池セル(以下、燃料電池セルと略す場合がある)を示すものであり、(a)はその横断面図、(b)は(a)の側面図である。なお、両図面において、燃料電池セル10の各構成の一部を拡大して示している。
この燃料電池セル10は中空平板型で、断面が扁平状で、全体的に見て楕円柱状をしたNiを含有してなる多孔質の導電性の支持体1を備えている。支持体1の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス通路2が燃料電池セル10の長さ方向Lに貫通して形成されてお
り、燃料電池セル10は、この支持体1上に各種の部材が設けられた構造を有している。
支持体1は、図1に示されている形状から理解されるように、互いに平行な一対の平坦面nと、一対の平坦面nをそれぞれ接続する弧状面(側面)mとで構成されている。平坦面nの両面は互いにほぼ平行に形成されており、一方の平坦面n(一方側主面:下面)と両側の弧状面mを覆うように多孔質な燃料極層(第1電極層)3が配置されており、さらに、この燃料極層3を覆うように、ガス遮断性を有するセラミックスからなる固体電解質層4が配置されている。固体電解質層4の厚みは、20μm以下、さらには15μm以下であることが発電性能向上という点から望ましい。
また、固体電解質層4の表面には、中間層9を介して、燃料極層3と対面するように、多孔質な酸素極層(第2電極層)6が配置されている。中間層9は、酸素極層6が形成される固体電解質層4上に形成されている。
燃料極層3および固体電解質層4が積層されていない他方の平坦面n(他方側主面:上面)には、図示しない密着層を介してガス遮断性を有するLaCrO3系酸化物からなるインターコネクタ8が形成されている。
すなわち、燃料極層3、固体電解質層4は、一方の平坦面(一方側主面:下面)から両端の弧状面mを経由して他方の平坦面n(他方側主面:上面)まで形成されており、固体電解質層4の両端部にはインターコネクタ層8の両端部が積層されて接合されている。
つまり、ガス遮断性を有する固体電解質層4とインターコネクタ層8とで支持体1を取り囲み、内部を流通する燃料ガスが外部に漏出しないように構成されている。言い換えれば、固体電解質層4とインターコネクタ層8とで、ガス遮断性を有する楕円筒状体を形成し、この楕円筒状体の内部が燃料ガス流路とされ、燃料極層3に供給される燃料ガスと、酸素極層6に供給される酸素含有ガスとが、楕円筒状体で遮断されている。
酸素極6は、図1(b)に示すように、平面形状が矩形状であり、支持体1の上下端部を除いて形成されており、一方、インターコネクタ層8は、図示しないが、支持体1の上端から下端まで形成されており、その左右両端部が、固体電解質層4の左右両端部の表面に接合されている。
ここで、燃料電池セル10は、燃料極層3と酸素極層6とが固体電解質層4を介して対面している部分が燃料電池として機能して発電する。即ち、酸素極層6の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ支持体1内の燃料ガス通路2に燃料ガス(水素含有ガス)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより発電する。そして、かかる発電によって生成した電流は、支持体1に設けられているインターコネクタ層8を介して集電される。
そして、本実施形態では、図1(a)、図2(a)に示すように、固体電解質層4が、支持体1側の第1電解質層4aと、該第1電解層4a上に配置された第2電解質層4bとを具備するとともに、第1電解質層4aの空隙率V1が5〜20%、第2電解質層4bの空隙率V2が5%未満である。
第1電解質層4aの空隙率V1を5〜20%としたのは、この範囲の空隙率であれば、燃料電池セルに生じる応力が、直接緻密な第2電解質層4bに生じることがなく、燃料電池セルにおけるクラックの発生を抑制できるからである。一方、第1電解質層4aの空隙率V1が5%よりも小さい場合には応力吸収能力が小さく、15%よりも大きいと電解質の有効面積が狭くなるので発電効率が低下するからである。第1電解質層4aの空隙率V1は、特に8〜15%が望ましい。
第2電解質層4bの空隙率V2を5%未満としたのは、この範囲の空隙率であれば、所定のガス遮断性能を得ることができ、強度を向上できるからである。一方、第2電解質層4bの空隙率V2が5%よりも大きい場合にはガス遮断性能が小さくなるからである。第2電解質層4bの空隙率V2は、特に1〜4.5%が望ましい。
空隙率V1、V2は、第1電解質層4a、第2電解質層4bの断面の1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に基づき、画像解析装置を用いて得ることができる。なお、第1電解質層4a、第2電解質層4bの境界が不明瞭な場合があるが、この場合には、固体電解質層4の表面から厚さ方向に1μmづつ空隙率を測定し、5%以上となった層よりも支持体側を第1電解質層4aとする。
また、第1電解質層4aの気孔の大きさは、平均気孔径0.5〜2.0μm、第2電解質層4bの気孔の大きさは、平均気孔径0.1〜1.0μmとされている。
さらに、第1電解質層4aの厚みt1が5〜9μm、第2電解質層4bの厚みt2が1〜5μmであり、t2/t1が0.1〜1の範囲であることが望ましい。この範囲であれば、固体電解質層4におけるガス遮断性能を高く維持した状態で、クラック発生をさらに抑制できるからである。
また、第1電解質層4aを構成するセラミック粒子の平均粒径d1が0.2〜1.5μm、第2電解質層4bを構成するセラミック粒子の平均粒径d2が1〜3.5μmであり、d2>d1であることが望ましい。この範囲であれば、固体電解質層4におけるガス遮断性能を高く維持した状態で、クラック発生をさらに抑制できるからである。平均気孔径、平均粒径は、SEM写真を用いてインターセプト法で算出できる。
以上のように構成された燃料電池セルでは、第2電解質層4bでガスを遮断できるとともに、第1電解質層4aで燃料電池セルに発生する応力を緩和でき、燃料電池セルにおけるクラックの発生を抑制できる。
なお、図2(b)は燃料極層が支持体となる場合を示している。すなわち、図1の形態では、支持体1上に燃料極層3、固体電解質層4、酸素極層6を積層したが、この形態では、燃料極層自体を支持体1とし、この支持体1に、固体電解質層4、酸素極層6を設けている。この場合であっても、図1と同様な作用効果を得ることができる。
図3は、他の形態を示すもので、この形態では、燃料極層3と酸素極層6とで挟まれている部分以外の固体電解質層4は、第1電解質層4aと第2電解質層4bとが積層して構成されており、燃料極層3と酸素極層6とが重畳した部分の固体電解質層4は、第2電解質層4bのみから構成されている。
この場合には、燃料極層3と酸素極層6との間には緻密な薄い第2電解質層4bが介在しているだけなので、発電性能を向上でき、しかも、発電する部分以外は、第1電解質層4aと第2電解質層4bとが積層して構成されているため、ガス遮断性能が高く、しかもクラックの発生を抑制できる。
図4は、さらに他の形態を示すもので、図1の形態と同様に、固体電解質層4が、第1電解質層4aおよび第2電解質層4bからなるとともに、固体電解質層4上に、固体電解質材料からなる補強層7が設けられている。固体電解質層4および補強層7を構成する固体電解質材料は、例えば、ジルコニア系酸化物、ランタンガレード系酸化物等を用いることができる。特には、希土類元素を含有するZrO2から構成されていることが望ましく
、この場合、補強層7は、固体電解質層4よりも希土類元素の含有量が少ないことが望ましい。
特には、固体電解質層4は部分安定化ジルコニア、例えば、7〜9モル%のY2O3が固溶したZrO2からなることが、発電性能を向上させる点で望ましい。また、補強層7を構成する固体電解質材料は同じ部分安定化ジルコニアで、希土類元素として、固体電解質層4と同じものを含有することが望ましい。さらに、希土類元素は、固体電解質層4よりも少なく、例えば、3〜5モル%のY2O3が固溶したZrO2からなることが強度向上という点から望ましい。
補強層7は、図5(a)に示すように、燃料電池セル10の長さ方向Lに沿って2本棒状に形成されており、2本の補強層7は、支持体1の一方側主面における燃料電池セル10の幅方向Wの両側に配置されている。補強層7の長さ方向Lの端は、支持体1の端から所定間隔をおいて位置しており、長さ方向L全体には形成されていない。
2本の補強層7の間には酸素極層6が位置している。なお、酸素極層6は、補強層7の上面の一部を被覆していてもよく、また、完全に覆っていても良い。図4に示すように、補強層7の上面の一部を酸素極層6で被覆する場合には、この部分でも発電することができる。この場合、発電性能を向上させるという点からは、補強層7の一部と酸素極層6との間の相互の反応を防止するため、これらの間にも中間層9を形成することが望ましい。
補強層7の幅(燃料電池セル10の幅方向Wの長さ)は、燃料電池セル10の幅にもよるが、例えば、1.0〜3.0mmとされ、発電領域をなるべく狭めないように設定されている。また、補強層7の厚みは、例えば、30〜100μmとされている。補強層7は、固体電解質層4と接合し、一体となっている。補強層7の厚みは、燃料電池セル10の長さ方向Lにおける中央部が、両端部よりも厚く形成することができる。燃料電池セル10の長さ方向Lにおける中央部に高い応力が生じやすいが、長さ方向Lにおける中央部の補強層7の厚みを、両端部よりも厚く形成することで、中央部を補強できる。
以上のような燃料電池セル10では、固体電解質層の厚みが20μm以下と薄い場合にも、発電性能を向上できるとともに、燃料電池セル10が変形しようとしても、補強層7により燃料電池セル10の変形を抑制し、燃料電池セル10におけるクラックの発生を防止できる。これにより、発電性能が高く、長期信頼性が高い燃料電池セル10を提供できる。
すなわち、LaCrO3系酸化物からなるインターコネクタ8は、還元雰囲気に曝されると膨張するため、燃料電池セル10が還元雰囲気に曝されると、固体電解質層4に大きな応力が作用するが、本実施形態では補強層7を有するため、固体電解質層4を補強でき、燃料電池セル10におけるクラックの発生を防止できる。
図5(b)は、2本の補強層7aを、支持体1の一方側主面側の両側に配置するとともに、その間には、1本の補強層7bが配置されている。酸素極層6は、2本の補強層7aの間に配置されており、補強層7bを被覆している。補強層7bの上面にも中間層9を介して酸素極層6が形成されており、この部分でも発電することになる。
補強層7a、補強層7bは固体電解質材料から構成されており、特に希土類元素を含有するZrO2から構成されており、補強層7aは、固体電解質層4よりも希土類元素の含有量が少ない。
固体電解質層4は部分安定化ジルコニア、例えば、7〜9モル%のY2O3が固溶した
ZrO2からなることが、発電性能を向上させる点で望ましい。また、補強層7aを構成する固体電解質材料は同じ部分安定化ジルコニアで、希土類元素として、固体電解質層4と同じものを含有することが望ましい。さらに、希土類元素は、固体電解質層4よりも少なく、例えば、3〜5モル%のY2O3が固溶したZrO2からなることが強度向上という点から望ましい。
補強層7bは、補強層7aよりも希土類元素が多い固体電解質材料で構成され、発電性能を向上させるべく、固体電解質層4と同じ材料で構成することが望ましい。この場合には、補強層7bが形成された部分は、固体電解質層4の厚みが厚いということができる。
以上のような燃料電池セル10では、補強層7bによりさらに固体電解質4を補強でき、燃料電池セル10におけるクラックの発生を防止できる。
図5(c)は、燃料電池セル10の長さ方向Lの下端部(燃料上流部)では温度が低いため、また、上端部(燃料下流部)では燃料濃度が薄いため、これらの部分での発電量が少なくなる傾向にあることから、補強層7aの長さ方向Lの両端に向けて次第に幅を広くしている。このような燃料電池セル10では、発電性能を十分に発揮できるとともに、補強層7aにより燃料電池セル10におけるクラック発生抑制効果も十分に発揮できる。
図5(d)は、燃料電池セル10の長さ方向Lの下端部では温度が低く、発電量が少なくなる傾向にあるため、2本の補強層7aの長さ方向Lの下端部間に、3本の補強層7cが所定間隔をおいて設けられている。このような燃料電池セル10では、発電性能を十分に発揮できるとともに、補強層7aにより燃料電池セル10におけるクラック発生抑制効果も十分に発揮できる。さらに、後述するように、燃料電池セル10の下端部をガスタンクに接合して固定する場合において、燃料電池セル10の下端部を補強することができ、クラックの発生を防止することができる。
図5(e)は、燃料電池セル10の長さ方向Lの下端部では温度が低く、発電量が少なくなる傾向にあるため、2本の補強層7aの長さ方向Lの下端部同士を連結するように、補強層7cが設けられている。このような燃料電池セル10では、発電性能を十分に発揮できるとともに、補強層7aにより燃料電池セル10におけるクラック発生抑制効果も十分に発揮できる。さらに、後述するように、燃料電池セル10の下端部をガスタンクに接合して固定する場合において、燃料電池セル10の下端部を補強することができ、クラックの発生を防止することができる。
図5(f)は、燃料電池セル10の長さ方向Lの下端部(燃料上流部)では温度が低いため、また、上端部(燃料下流部)では燃料濃度が薄いため、これらの部分での発電量が少なくなる傾向にあることから、2本の補強層7aの長さ方向Lの両端部同士を連結するように、補強層7cが設けられている。このような燃料電池セル10では、発電性能を十分に発揮できるとともに、補強層7aにより燃料電池セル10におけるクラック発生抑制効果も十分に発揮できる。さらに、後述するように、燃料電池セル10の下端部をガスタンクに接合して固定する場合において、燃料電池セル10の下端部を補強することができ、クラックの発生を防止することができるとともに、燃料電池セル10の上端から放出される燃料ガスが燃焼する場合に、燃料電池セル10の上端部を補強することができる。
以下に、本実施形態の燃料電池セル10を構成する各部材について説明する。導電性の支持体1は、燃料ガスを燃料極層3まで透過させるためにガス透過性であること、インターコネクタ層8を介して集電を行うために導電性であることが要求されることから、例えば、Niおよび/またはNiOと、無機酸化物、例えば特定の希土類酸化物とにより形成されることが好ましい。
特定の希土類酸化物とは、支持体1の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨張係数に近づけるために使用されるものであり、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む希土類酸化物が、Niおよび/またはNiOとの組み合わせで使用することができる。このような希土類酸化物の具体例としては、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、Tm2O3、Er2O3、Ho2O3、Dy2O3、Gd2O3、Sm2O3、Pr2O3を例示することができ、Niおよび/またはNiOとの固溶、反応が殆どなく、また、熱膨張係数が固体電解質層4と同程度であり、かつ安価であるという点から、Y2O3、Yb2O3が好ましい。
また、本実施形態においては、支持体1の良好な導電率を維持し、かつ熱膨張係数を固体電解質層4と近似させるという点で、Niおよび/またはNiO:希土類酸化物=35:65〜65:35の体積比で存在することが好ましい。なお、支持体1中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で、他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
また、支持体1は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、多孔質であり、通常、開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあることが好ましい。また、支持体1の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
なお、支持体1の平坦面nの長さ(支持体1の幅方向Wの長さ)は、例えば、15〜35mm、弧状面mの長さ(弧の長さ)は、2〜8mmであり、支持体1の厚み(平坦面n間の厚み)は1.5〜5mmである。支持体1の長さは、例えば、100〜300mmとされている。
燃料極層3は、電極反応を生じさせるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスにより形成することができる。例えば、希土類元素が固溶したZrO2または希土類元素が固溶したCeO2と、Niおよび/またはNiOとから形成することができる。なお、希土類元素としては、導電性支持体1において例示した希土類元素を用いることができ、例えばYが固溶したZrO2(YSZ)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
燃料極層3中の希土類元素が固溶したZrO2または希土類元素が固溶しているCeO2の含有量は、35〜65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNiあるいはNiOの含有量は、65〜35体積%であるのが好ましい。さらに、この燃料極層3の開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのが好ましく、その厚みは、1〜30μmであるのが好ましい。
また、燃料極層3は、酸素極層6に対面する位置に形成されていればよいため、例えば酸素極層6が設けられている支持体1の下側の平坦面nにのみ燃料極層3が形成されていてもよい。すなわち、燃料極層3は支持体1の下側の平坦面nにのみ設けられ、固体電解質層4が燃料極層3表面、支持体1の両弧状面m表面および燃料極層3が形成されていない支持体1の上側の平坦面n上に形成された構造をしたものであってもよい。
固体電解質層4は、Y、Sc、Yb等の希土類元素を含有した部分安定化あるいは安定化ZrO2からなるセラミックスを用いるのが好ましい。また、希土類元素としては、安価であるという点からYが好ましい。固体電解質層4は、部分安定化あるいは安定化ZrO2からなるセラミックスに限定されるものではなく、従来、公知の、例えば、ランタンガレード系の固体電解質層であっても良いことは勿論である。
固体電解質層4と後述する酸素極層6との間に、固体電解質層4と酸素極層6との接合を強固とするとともに、固体電解質層4の成分と酸素極層6の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることを抑制する目的で中間層9が形成されている。
中間層9としては、Ce以外の他の希土類元素を含有するCeO2系焼結体からなるもので、例えば、(CeO2)1−x(REO1.5)x(式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数)で表される組成を有していることが好ましい。さらには、電気抵抗を低減するという点から、REとしてSmやGdを用いることが好ましく、例えば10〜20モル%のSmO1.5またはGdO1.5が固溶したCeO2からなることが好ましい。
酸素極層6としては、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスにより形成することが好ましい。かかるペロブスカイト型酸化物としては、Laを含有する遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにSrとLaが共存するLaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物、LaCoO3系酸化物の少なくとも1種が好ましく、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaCoO3系酸化物が特に好ましい。なお、上記ペロブスカイト型酸化物においては、Bサイトに、CoとともにFeやMnが存在しても良い。
また、酸素極層6は、ガス透過性を有する必要があり、従って、酸素極層6を形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。さらに、酸素極層6の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが好ましい。
インターコネクタ層8としては導電性セラミックスにより形成されている。燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、耐還元性、耐酸化性を有する導電性セラミックスとしては、例えば、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)が使用され、特に支持体1および固体電解質層4の熱膨張係数に近づける目的から、BサイトにMgが存在するLaCrMgO3系酸化物が用いられる。インターコネクタ層8材料は導電性セラミックスであればよく、特に限定されるものではない。
また、インターコネクタ層8の厚みは、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜60μmであることが好ましい。この範囲ならばガスのリークを防止できるとともに、電気抵抗を小さくできる。
さらに、支持体1とインターコネクタ層8との間には、インターコネクタ層8と支持体1との間の熱膨張係数差を軽減する等のために密着層(図示せず)を形成することができる。
このような密着層としては、燃料極層3と類似した組成とすることができる。例えば、希土類酸化物、希土類元素が固溶したZrO2、希土類元素が固溶したCeO2のうち少なくとも1種と、Niおよび/またはNiOとから形成することができる。より具体的には、例えばY2O3とNiおよび/またはNiOからなる組成や、Yが固溶したZrO2(YSZ)とNiおよび/またはNiOからなる組成、Y、Sm、Gd等が固溶したCeO2とNiおよび/またはNiOからなる組成から形成することができる。なお、希土類酸化物や希土類元素が固溶したZrO2(CeO2)と、Niおよび/またはNiOとは、体積比で40:60〜60:40の範囲とすることが好ましい。
以上説明した本実施形態の燃料電池セル10の作製方法の一例について説明する。先ず、例えば、Niおよび/またはNiO粉末と、Y2O3などの希土類酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して坏土を調製し、この坏土を用いて押出成形により支持体成形体を作製し、これを乾燥する。なお、支持体成形体として、支持体成形体を900〜1000℃にて2〜6時間仮焼した仮焼体を用いてもよい。
次に、例えば所定の調合組成に従い、NiOと、Y2O3が固溶したZrO2(YSZ)との素原料を秤量、混合する。この後、混合した粉体に、有機バインダーおよび溶媒を混合して燃料極層用スラリーを調製する。
そして、希土類元素が固溶したZrO2粉末に、トルエン、バインダー粉末(下記、ZrO2粉末に付着させるバインダー粉末よりも高分子、例えばアクリル系樹脂)、市販の分散剤等を加えてスラリー化したものをドクターブレード等の方法により、成形してシート状の固体電解質層成形体を作製する。
空隙率の異なる第1電解質層4aおよび第2電解質層4bにより固体電解質層4を構成するには、気孔を形成する造孔材を添加してシート状の第1電解質層4aを形成する第1電解質層成形体を作製する一方で、第2電解質層4bを形成する第2解質層成形体には、造孔材を添加しないで、もしくは少量の造孔材を添加して作製し、これらの成形体を積層することで、固体電解質層成形体を作製できる。
得られたシート状の固体電解質層成形体上(第1電解質層4aの成形体上)に燃料極層用スラリーを塗布し乾燥して燃料極層成形体を形成し、シート状の積層成形体を形成する。この燃料極層成形体および固体電解質層成形体が積層したシート状の積層成形体の燃料極層成形体側の面を導電性支持体成形体に積層し、成形体を形成する。
次いで、上記の積層成形体を800〜1200℃で2〜6時間仮焼する。補強層を形成する場合には、この後、固体電解質成形体(仮焼体)に、補強層となるスラリーを図5(a)〜(f)で示すような形状で塗布し、乾燥させる。
続いて、インターコネクタ層材料(例えば、LaCrMgO3系酸化物粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを作製する。この後の工程は、密着層を有する燃料電池セルの製法について説明する。
続いて、支持体1とインターコネクタ層8との間に位置する密着層成形体を形成する。例えば、Yが固溶したZrO2とNiOが体積比で40:60〜60:40の範囲となるように混合して乾燥し、有機バインダー等を加えて密着層用スラリーを調整し、固体電解質層成形体の両端部間における支持体成形体上に塗布して密着層成形体を形成する。
続いて固体電解質層4と酸素極層6との間に配置する中間層を形成する。例えば、GdO1.5が固溶したCeO2粉末を800〜900℃にて2〜6時間、熱処理を行い、中間層成形体用の原料粉末を調整する。この原料粉末に、溶媒としてトルエンを添加し、中間層用スラリーを作製し、このスラリーを固体電解質層成形体上および補強層成形体上に塗布して中間層成形体を作製する。
この後、固体電解質成形体(仮焼体)の両端部上に、インターコネクタ層用成形体の両端部が積層されるように、密着層成形体上面にインターコネクタ層用スラリーを塗布し、積層成形体を作製する。なお、インターコネクタ層用スラリーを調製し、インターコネクタ層用シートを作製し、固体電解質成形体の両端部上に、インターコネクタ層用シートの両端部が積層されるように、密着層成形体上面にインターコネクタ層用シートを積層し、
積層成形体を作製することもできる。
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中、1400〜1450℃にて2〜6時間、同時焼結(同時焼成)する。
さらに、酸素極層用材料(例えば、LaCoO3系酸化物粉末)、溶媒および増孔剤を含有するスラリーをディッピング等により中間層上に塗布し、1000〜1300℃で、2〜6時間焼き付けることにより、図1に示す構造の本実施形態の燃料電池セル10を製造できる。
図6は、上述した燃料電池セル10の複数個を、集電部材13を介して電気的に直列に接続して構成されたセルスタック装置の一例を示したものであり、(a)はセルスタック装置11を概略的に示す側面図、(b)は(a)のセルスタック装置11の一部拡大断面図であり、(a)で示した破線で囲った部分を抜粋して示している。なお、(b)において(a)で示した破線で囲った部分に対応する部分を明確とするために矢印にて示しており、(b)で示す燃料電池セル10においては、上述した中間層9等の一部の部材を省略して示している。
なお、セルスタック装置11においては、各燃料電池セル10を、集電部材13を介して配列することでセルスタック12を構成しており、各燃料電池セル10の下端部が、燃料電池セル10に燃料ガスを供給するためのガスタンク16に、ガラスシール材等の接着剤により固定されている。また、ガスタンク16に下端部が固定された弾性変形可能な導電部材14により、燃料電池セル10の配列方向の両端から、セルスタック12を挟持している。
また、図6に示す導電部材14においては、燃料電池セル10の配列方向に沿って外側に向けて延びた形状で、セルスタック12(燃料電池セル10)の発電により生じる電流を引出すための電流引出し部15が設けられている。
図7に、補強層7を有する燃料電池セル10のガスタンク16への固定構造を示す。補強層7を有しない燃料電池セル10の場合も同様である。燃料電池セル10の下端部は、ガスタンク10の上面に形成された開口部内に挿入され、ガラスシール材等の接着剤17により固定されている。図7(a)では補強層7の下端部はガラスシール材等の接着剤17に埋設され、これにより、燃料電池セル10の接着剤17で接合された部分を補強でき、燃料電池セル10の下端部を補強できる。すなわち、耐熱性合金からなるガスタンク16、燃料電池セル10、接着剤17を構成する材料の違いにより、燃料電池セル10の下端部に応力が生じ、クラック等が発生するおそれがあるが、補強層7の下端部は接着剤17に埋設されているため、燃料電池セル10の下端部におけるクラックの発生を防止できる。
図7(b)では、2本の補強層7aの下端部に、3本の補強層7cが所定間隔をおいて形成されており、補強層7cの部分がガラスシール材等の接着剤17で接合され、補強層7cの上端部は、接着剤17から露出している。このようなセルスタック装置では、燃料電池セルの下端部におけるクラックの発生をさらに防止できる。接着剤17の存在している部分と存在していない部分の境界線上において連続でなくてもよく、幅方向に対して30%以上の部分に補強層7cが露出していることが望ましい。
また、燃料電池セル10において、接着剤17の存在している部分と存在していない部分との境界で高い応力が発生し易いが、補強層7cの上端部は接着剤17から露出しているため、燃料電池セル10における上記境界部分を補強することができる。接着剤17か
ら露出する補強層7cの長さは、2〜10mmあることが望ましい。
図7(c)では、2本の補強層7aの下端部同士が、補強層7cで連結されており、補強層7cの部分がガラスシール材等の接着剤17で接合され、補強層7cの上端部は、接着剤17から露出している。このようなセルスタック装置では、燃料電池セル10の下端部におけるクラックの発生をさらに防止できる。
また、燃料電池セル10において、接着剤17の存在している部分と存在していない部分との境界で高い応力が発生し易いが、補強層7cの上端部は接着剤17から露出しているため、燃料電池セル10における上記境界部分を補強することができる。接着剤17から露出する補強層7cの長さは、2〜10mmあることが望ましい。
図7(d)では、2本の補強層7aの上下両端部同士が、補強層7cで連結されており、下側の補強層7cの部分がガラスシール材等の接着剤17で接合されている。このようなセルスタック装置では、燃料電池セルの下端部におけるクラックの発生をさらに防止できる。また、燃料電池セル10の上方で燃焼する場合には、上端部の補強層7cにより燃料電池セル10を補強できる。
ここで、本実施形態のセルスタック装置11においては、上述した燃料電池セル10を用いて、セルスタック12を構成することにより、発電性能が高く、長期信頼性が向上したセルスタック装置11とすることができる。
図8は、セルスタック装置11を収納容器内に収納してなる燃料電池モジュール18の一例を示す外観斜視図であり、直方体状の収納容器19の内部に、図6に示したセルスタック装置11を収納して構成されている。
なお、燃料電池セル10にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器20をセルスタック12の上方に配置している。そして、改質器20で生成された燃料ガスは、ガス流通管21を介してガスタンク16に供給され、ガスタンク16を介して燃料電池セル10の内部に設けられた燃料ガス通路2に供給される。
なお、図8においては、収納容器19の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されているセルスタック装置11および改質器20を後方に取り出した状態を示している。図8に示した燃料電池モジュール18においては、セルスタック装置11を、収納容器19内にスライドして収納することが可能である。なお、セルスタック装置11は、改質器20を含むものとしても良い。
また収納容器19の内部に設けられた酸素含有ガス導入部材22は、図8においてはガスタンク16に並置された一対のセルスタック12の間に配置されるとともに、酸素含有ガスが燃料ガスの流れに合わせて、燃料電池セル10の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、燃料電池セル10の下端部に酸素含有ガスを供給する。そして、燃料電池セル10の燃料ガス通路2より排出される燃料ガスを酸素含有ガスと反応させて燃料電池セル10の上端部側で燃焼させることにより、燃料電池セル10の温度を上昇させることができ、セルスタック装置11の起動を早めることができる。また、燃料電池セル10の上端部側にて、燃料電池セル10のガス通路2から排出される燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させることにより、燃料電池セル10(セルスタック12)の上方に配置された改質器20を温めることができる。それにより、改質器20で効率よく改質反応を行うことができる。
さらに、本実施形態の燃料電池モジュール18では、上述した燃料電池セル10を用いたセルスタック装置11を収納容器19内に収納してなることから、発電性能が高く、長期信頼性が向上した燃料電池モジュール18とすることができる。
図9は、外装ケース内に図8で示した燃料電池モジュール18と、セルスタック装置11を動作させるための補機とを収納してなる燃料電池装置の一例を示す斜視図である。なお、図9においては一部構成を省略して示している。
図9に示す燃料電池装置23は、支柱24と外装板25とから構成される外装ケース内を仕切板26により上下に区画し、その上方側を上述した燃料電池モジュール18を収納するモジュール収納室27とし、下方側を燃料電池モジュール18を動作させるための補機類を収納する補機収納室28として構成されている。なお、補機収納室28に収納する補機類は省略して示している。
また、仕切板26には、補機収納室28の空気をモジュール収納室27側に流すための空気流通口29が設けられており、モジュール収納室27を構成する外装板25の一部に、モジュール収納室27内の空気を排気するための排気口30が設けられている。
このような燃料電池装置23においては、上述したように、発電性能が高く、信頼性を向上することができる燃料電池モジュール18をモジュール収納室27に収納して構成されることにより、発電性能が高く、信頼性の向上した燃料電池装置23とすることができる。
以上、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
例えば、上記実施形態では、中空平板型の固体酸化物形燃料電池セルについて説明したが、円筒型、平板型の固体酸化物形燃料電池セルであっても良いことは勿論である。また、各部材間に機能に合わせて各種中間層を形成しても良い。
上記形態では、補強層7の上面にまで酸素極層3を形成した状態について記載したが、補強層7間に酸素極層3を形成しても良いことは勿論である。
さらに、上記形態では燃料電池セル、セルスタック装置、燃料電池モジュールならびに燃料電池装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電解セルに水蒸気と電圧とを付与して水蒸気(水)を電気分解することにより、水素と酸素(O2)を生成する電解セル(SOEC)およびこの電解セルを備える電解モジュールおよび電解装置にも適用することができる。
先ず、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径0.9μmのY2O3粉末を混合し、有機バインダーと溶媒にて作製した坏土を押出成形法にて成形し、乾燥、脱脂して導電性の支持体成形体を作製した。支持体成形体は、還元後における体積比率が、NiOが48体積%、Y2O3が52体積%であった。
次に、8mol%のY2O3が固溶したマイクロトラック法による粒径が0.8μmのZrO2粉末(固体電解質層原料粉末)に、バインダー粉末と溶媒と、所望により造孔材を混合して得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法にて第2電解質層4bを構成する第2電解質層用シートを作製した。また、同じスラリーに造孔材を所定量だけ添加し、ドクターブレード法にて第1電解質層4aを構成する第1電解質層用シートを作製し、
第1電解質層用シートに第2電解質層用シートを積層し、固体電解質層シートを作製した。また、第1電解質層4a、第2電解質層4bの空隙率は、ZrO2粉末の粒径、造孔材量を変化させて作製した。
中間層成形体を形成するためのスラリーは、CeO2を90モル%、希土類元素の酸化物(GdO1.5、SmO1.5)を10モル%含む複合酸化物を、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を用いて振動ミル又はボールミルにて粉砕し、900℃にて4時間仮焼処理を行い、再度ボールミルにて解砕処理し、セラミック粒子の凝集度を調製し、この粉体に、バインダーと溶媒とを添加し、混合して作製した。
次に平均粒径0.5μmのNiO粉末とY2O3が固溶したZrO2粉末と有機バインダーと溶媒とを混合した燃料極層用スラリーを作製し、第1電解質層用シート上にスクリーン印刷法にて塗布し乾燥して燃料極層成形体を形成した。
固体電解質層用シートに燃料極層成形体を形成したシート状の積層成形体を、その燃料極層成形体側の面を内側にして支持体成形体の所定位置に積層した。
続いて、上記のような成形体を積層した積層成形体を1000℃にて3時間仮焼処理した。この後、中間層成形体を形成するためのスラリーを、スクリーン印刷法にて、固体電解質仮焼体の上面に塗布し乾燥して、中間層成形体を形成した。
続いて、平均粒径0.7μmのLa(Mg0.3Cr0.7)0.96O3と、有機バインダーと溶媒とを混合したスラリーを作製した。
NiとYSZとからなる原料を混合して乾燥し、有機バインダーと溶媒とを混合して密着層用スラリーを調整した。調整した密着層用スラリーを、支持体の燃料極層(および固体電解質層)が形成されていない部位(支持体が露出した部位)に塗布して密着層成形体を積層し、密着層成形体の上に、インターコネクタ層用スラリーを塗布した。
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中で1450℃にて2時間同時焼成した。
次に、平均粒径2μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3粉末と、イソプロピルアルコールとからなる混合液を作製し、固体電解質上面における中間層の表面に噴霧塗布し、酸素極層成形体を形成し、1100℃にて4時間で焼き付け、酸素極層を形成し、図1に示す燃料電池セルを作製した。
なお、作製した燃料電池セルの寸法は25mm×200mmで、支持体の厚み(平坦面n間の厚み)は2mm、開気孔率35%、燃料極層の厚さは30μm、開気孔率24%、酸素極層の厚みは50μm、開気孔率40%、インターコネクタ層の厚みは40μmであった。
作製した7本の燃料電池セル10を、図6に示したように、集電部材を介して電気的に接続したセルスタックの下端部を、ガスタンクの開口部内に挿入し、結晶化ガラスからなる接着剤17で接合固定し、セルスタック装置を作製した。
これらのセルスタック装置のガスタンク内に水素ガスを供給し、燃料電池セルの内部に水素ガスを流し、850℃で10時間、支持体および燃料極層の還元処理を施し、冷却した。
そして、燃料電池セルの強度を3点曲げ試験で測定した。また、燃料電池セルのクラッ
ク発生有無を、目視にて確認した。
また、それぞれの第1電解質層、第2電解質層の空隙率V1、V2、厚みt1、t2、平均粒径d1、d2を測定し、表1に記載した。空隙率V1、V2は、第1電解質層4a、第2電解質層4bの断面の1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に基づき、画像解析装置を用いて算出した。
この表1から、第1電解質層の空隙率V1が5〜20%、第2電解質層の空隙率V2が5%未満である試料No.1〜4,6〜8は、燃料電池セルの強度が高く、クラックの発生がないことがわかる。一方、空隙率V1が24%、V2が5%の試料No.5では、強度が低く、クラックが発生した。
第1電解質層、第2電解質層を有するとともに、補強層を有する燃料電池セルを用いてセルスタック装置を作製し、実施例1と同様に評価した。
セルスタック装置は、上記実施例1の製造工程において、積層成形体を1000℃にて3時間仮焼処理する工程と、中間層成形体を形成するためのスラリーを、スクリーン印刷する工程との間に、下記工程を追加して作製した。
固体電解質の仮焼体に、補強層を構成するスラリー(4モル%のY2O3が固溶した粒径0.8μmのZrO2粉末を含有する)を、図5(e)に示す形状に塗布し、乾燥した。
この表1から、補強層を有する燃料電池セルでは、燃料電池セルの強度が大きくなり、クラックの発生を抑制できることがわかる。
図1は、セルの一例である固体酸化物形燃料電池セル(以下、燃料電池セルと略す場合がある)を示すものであり、(a)はその横断面図、(b)は(a)の側面図である。なお、両図面において、燃料電池セル10の各構成の一部を拡大して示している。
この燃料電池セル10は中空平板型で、断面が扁平状で、全体的に見て楕円柱状をした
Niを含有してなる多孔質の導電性の支持体1を備えている。支持体1の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス通路2が燃料電池セル10の長さ方向Lに貫通して形成されており、燃料電池セル10は、この支持体1上に各種の部材が設けられた構造を有している。
支持体1は、図1に示されている形状から理解されるように、互いに平行な一対の平坦面nと、一対の平坦面nをそれぞれ接続する弧状面(側面)mとで構成されている。平坦面nの両面は互いにほぼ平行に形成されており、一方の平坦面n(一方側主面:下面)と両側の弧状面mを覆うように多孔質な燃料極層(第1電極層)3が配置されており、さらに、この燃料極層3を覆うように、ガス遮断性を有するセラミックスからなる固体電解質層4が配置されている。固体電解質層4の厚みは、20μm以下、さらには15μm以下であることが発電性能向上という点から望ましい。
また、固体電解質層4の表面には、中間層9を介して、燃料極層3と対面するように、多孔質な酸素極層(第2電極層)6が配置されている。中間層9は、酸素極層6が形成される固体電解質層4上に形成されている。
燃料極層3および固体電解質層4が積層されていない他方の平坦面n(他方側主面:上面)には、図示しない密着層を介してガス遮断性を有するLaCrO3系酸化物からなるインターコネクタ8が形成されている。
すなわち、燃料極層3、固体電解質層4は、一方の平坦面(一方側主面:下面)から両端の弧状面mを経由して他方の平坦面n(他方側主面:上面)まで形成されており、固体電解質層4の両端部にはインターコネクタ層8の両端部が積層されて接合されている。
つまり、ガス遮断性を有する固体電解質層4とインターコネクタ層8とで支持体1を取り囲み、内部を流通する燃料ガスが外部に漏出しないように構成されている。言い換えれば、固体電解質層4とインターコネクタ層8とで、ガス遮断性を有する楕円筒状体を形成し、この楕円筒状体の内部が燃料ガス流路とされ、燃料極層3に供給される燃料ガスと、酸素極層6に供給される酸素含有ガスとが、楕円筒状体で遮断されている。
酸素極6は、図1(b)に示すように、平面形状が矩形状であり、支持体1の上下端部を除いて形成されており、一方、インターコネクタ層8は、図示しないが、支持体1の上端から下端まで形成されており、その左右両端部が、固体電解質層4の左右両端部の表面に接合されている。
ここで、燃料電池セル10は、燃料極層3と酸素極層6とが固体電解質層4を介して対面している部分が燃料電池として機能して発電する。即ち、酸素極層6の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ支持体1内の燃料ガス通路2に燃料ガス(水素含有ガス)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより発電する。そして、かかる発電によって生成した電流は、支持体1に設けられているインターコネクタ層8を介して集電される。
そして、本実施形態では、図1(a)、図2(a)に示すように、固体電解質層4が、支持体1側の第1電解質層4aと、該第1電解質層4a上に配置された第2電解質層4bとを具備するとともに、第1電解質層4aの空隙率V1が5〜20%、第2電解質層4bの空隙率V2が5%未満である。
第1電解質層4aの空隙率V1を5〜20%としたのは、この範囲の空隙率であれば、燃料電池セルに生じる応力が、直接緻密な第2電解質層4bに生じることがなく、燃料電池セルにおけるクラックの発生を抑制できるからである。一方、第1電解質層4aの空隙率V1が5%よりも小さい場合には応力吸収能力が小さく、15%よりも大きいと電解質
の有効面積が狭くなるので発電効率が低下するからである。第1電解質層4aの空隙率V1は、特に8〜15%が望ましい。
第2電解質層4bの空隙率V2を5%未満としたのは、この範囲の空隙率であれば、所定のガス遮断性能を得ることができ、強度を向上できるからである。一方、第2電解質層4bの空隙率V2が5%よりも大きい場合にはガス遮断性能が小さくなるからである。第2電解質層4bの空隙率V2は、特に1〜4.5%が望ましい。
空隙率V1、V2は、第1電解質層4a、第2電解質層4bの断面の1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に基づき、画像解析装置を用いて得ることができる。なお、第1電解質層4a、第2電解質層4bの境界が不明瞭な場合があるが、この場合には、固体電解質層4の表面から厚さ方向に1μmづつ空隙率を測定し、5%以上となった層よりも支持体側を第1電解質層4aとする。
また、第1電解質層4aの気孔の大きさは、平均気孔径0.5〜2.0μm、第2電解質層4bの気孔の大きさは、平均気孔径0.1〜1.0μmとされている。
さらに、第1電解質層4aの厚みt1が5〜9μm、第2電解質層4bの厚みt2が1〜5μmであり、t2/t1が0.1〜1の範囲であることが望ましい。この範囲であれば、固体電解質層4におけるガス遮断性能を高く維持した状態で、クラック発生をさらに抑制できるからである。
また、第1電解質層4aを構成するセラミック粒子の平均粒径d1が0.2〜1.5μm、第2電解質層4bを構成するセラミック粒子の平均粒径d2が1〜3.5μmであり、d2>d1であることが望ましい。この範囲であれば、固体電解質層4におけるガス遮断性能を高く維持した状態で、クラック発生をさらに抑制できるからである。平均気孔径、平均粒径は、SEM写真を用いてインターセプト法で算出できる。
以上のように構成された燃料電池セルでは、第2電解質層4bでガスを遮断できるとともに、第1電解質層4aで燃料電池セルに発生する応力を緩和でき、燃料電池セルにおけるクラックの発生を抑制できる。
なお、図2(b)は燃料極層が支持体となる場合を示している。すなわち、図1の形態では、支持体1上に燃料極層3、固体電解質層4、酸素極層6を積層したが、この形態では、燃料極層自体を支持体1とし、この支持体1に、固体電解質層4、酸素極層6を設けている。この場合であっても、図1と同様な作用効果を得ることができる。
図3は、他の形態を示すもので、この形態では、燃料極層3と酸素極層6とで挟まれている部分以外の固体電解質層4は、第1電解質層4aと第2電解質層4bとが積層して構成されており、燃料極層3と酸素極層6とが重畳した部分の固体電解質層4は、第2電解質層4bのみから構成されている。
この場合には、燃料極層3と酸素極層6との間には緻密な薄い第2電解質層4bが介在しているだけなので、発電性能を向上でき、しかも、発電する部分以外は、第1電解質層4aと第2電解質層4bとが積層して構成されているため、ガス遮断性能が高く、しかもクラックの発生を抑制できる。
図4は、さらに他の形態を示すもので、図1の形態と同様に、固体電解質層4が、第1電解質層4aおよび第2電解質層4bからなるとともに、固体電解質層4上に、固体電解質材料からなる補強層7が設けられている。固体電解質層4および補強層7を構成する固
体電解質材料は、例えば、ジルコニア系酸化物、ランタンガレード系酸化物等を用いることができる。特には、希土類元素を含有するZrO2から構成されていることが望ましく、この場合、補強層7は、固体電解質層4よりも希土類元素の含有量が少ないことが望ましい。
特には、固体電解質層4は部分安定化ジルコニア、例えば、7〜9モル%のY2O3が固溶したZrO2からなることが、発電性能を向上させる点で望ましい。また、補強層7を構成する固体電解質材料は同じ部分安定化ジルコニアで、希土類元素として、固体電解質層4と同じものを含有することが望ましい。さらに、希土類元素は、固体電解質層4よりも少なく、例えば、3〜5モル%のY2O3が固溶したZrO2からなることが強度向上という点から望ましい。
補強層7は、図5(a)に示すように、燃料電池セル10の長さ方向Lに沿って2本棒状に形成されており、2本の補強層7は、支持体1の一方側主面における燃料電池セル10の幅方向Wの両側に配置されている。補強層7の長さ方向Lの端は、支持体1の端から所定間隔をおいて位置しており、長さ方向L全体には形成されていない。
2本の補強層7の間には酸素極層6が位置している。なお、酸素極層6は、補強層7の上面の一部を被覆していてもよく、また、完全に覆っていても良い。図4に示すように、補強層7の上面の一部を酸素極層6で被覆する場合には、この部分でも発電することができる。この場合、発電性能を向上させるという点からは、補強層7の一部と酸素極層6との間の相互の反応を防止するため、これらの間にも中間層9を形成することが望ましい。
補強層7の幅(燃料電池セル10の幅方向Wの長さ)は、燃料電池セル10の幅にもよるが、例えば、1.0〜3.0mmとされ、発電領域をなるべく狭めないように設定されている。また、補強層7の厚みは、例えば、30〜100μmとされている。補強層7は、固体電解質層4と接合し、一体となっている。補強層7の厚みは、燃料電池セル10の長さ方向Lにおける中央部が、両端部よりも厚く形成することができる。燃料電池セル10の長さ方向Lにおける中央部に高い応力が生じやすいが、長さ方向Lにおける中央部の補強層7の厚みを、両端部よりも厚く形成することで、中央部を補強できる。
以上のような燃料電池セル10では、固体電解質層の厚みが20μm以下と薄い場合にも、発電性能を向上できるとともに、燃料電池セル10が変形しようとしても、補強層7により燃料電池セル10の変形を抑制し、燃料電池セル10におけるクラックの発生を防止できる。これにより、発電性能が高く、長期信頼性が高い燃料電池セル10を提供できる。
すなわち、LaCrO3系酸化物からなるインターコネクタ8は、還元雰囲気に曝されると膨張するため、燃料電池セル10が還元雰囲気に曝されると、固体電解質層4に大きな応力が作用するが、本実施形態では補強層7を有するため、固体電解質層4を補強でき、燃料電池セル10におけるクラックの発生を防止できる。
図5(b)は、2本の補強層7aを、支持体1の一方側主面側の両側に配置するとともに、その間には、1本の補強層7bが配置されている。酸素極層6は、2本の補強層7aの間に配置されており、補強層7bを被覆している。補強層7bの上面にも中間層9を介して酸素極層6が形成されており、この部分でも発電することになる。
補強層7a、補強層7bは固体電解質材料から構成されており、特に希土類元素を含有するZrO2から構成されており、補強層7aは、固体電解質層4よりも希土類元素の含有量が少ない。
固体電解質層4は部分安定化ジルコニア、例えば、7〜9モル%のY2O3が固溶したZrO2からなることが、発電性能を向上させる点で望ましい。また、補強層7aを構成する固体電解質材料は同じ部分安定化ジルコニアで、希土類元素として、固体電解質層4と同じものを含有することが望ましい。さらに、希土類元素は、固体電解質層4よりも少なく、例えば、3〜5モル%のY2O3が固溶したZrO2からなることが強度向上という点から望ましい。
補強層7bは、補強層7aよりも希土類元素が多い固体電解質材料で構成され、発電性能を向上させるべく、固体電解質層4と同じ材料で構成することが望ましい。この場合には、補強層7bが形成された部分は、固体電解質層4の厚みが厚いということができる。
以上のような燃料電池セル10では、補強層7bによりさらに固体電解質4を補強でき、燃料電池セル10におけるクラックの発生を防止できる。
図5(c)は、燃料電池セル10の長さ方向Lの下端部(燃料上流部)では温度が低いため、また、上端部(燃料下流部)では燃料濃度が薄いため、これらの部分での発電量が少なくなる傾向にあることから、補強層7aの長さ方向Lの両端に向けて次第に幅を広くしている。このような燃料電池セル10では、発電性能を十分に発揮できるとともに、補強層7aにより燃料電池セル10におけるクラック発生抑制効果も十分に発揮できる。
図5(d)は、燃料電池セル10の長さ方向Lの下端部では温度が低く、発電量が少なくなる傾向にあるため、2本の補強層7aの長さ方向Lの下端部間に、3本の補強層7cが所定間隔をおいて設けられている。このような燃料電池セル10では、発電性能を十分に発揮できるとともに、補強層7aにより燃料電池セル10におけるクラック発生抑制効果も十分に発揮できる。さらに、後述するように、燃料電池セル10の下端部をガスタンクに接合して固定する場合において、燃料電池セル10の下端部を補強することができ、クラックの発生を防止することができる。
図5(e)は、燃料電池セル10の長さ方向Lの下端部では温度が低く、発電量が少なくなる傾向にあるため、2本の補強層7aの長さ方向Lの下端部同士を連結するように、補強層7cが設けられている。このような燃料電池セル10では、発電性能を十分に発揮できるとともに、補強層7aにより燃料電池セル10におけるクラック発生抑制効果も十分に発揮できる。さらに、後述するように、燃料電池セル10の下端部をガスタンクに接合して固定する場合において、燃料電池セル10の下端部を補強することができ、クラックの発生を防止することができる。
図5(f)は、燃料電池セル10の長さ方向Lの下端部(燃料上流部)では温度が低いため、また、上端部(燃料下流部)では燃料濃度が薄いため、これらの部分での発電量が少なくなる傾向にあることから、2本の補強層7aの長さ方向Lの両端部同士を連結するように、補強層7cが設けられている。このような燃料電池セル10では、発電性能を十分に発揮できるとともに、補強層7aにより燃料電池セル10におけるクラック発生抑制効果も十分に発揮できる。さらに、後述するように、燃料電池セル10の下端部をガスタンクに接合して固定する場合において、燃料電池セル10の下端部を補強することができ、クラックの発生を防止することができるとともに、燃料電池セル10の上端から放出される燃料ガスが燃焼する場合に、燃料電池セル10の上端部を補強することができる。
以下に、本実施形態の燃料電池セル10を構成する各部材について説明する。導電性の支持体1は、燃料ガスを燃料極層3まで透過させるためにガス透過性であること、インターコネクタ層8を介して集電を行うために導電性であることが要求されることから、例え
ば、Niおよび/またはNiOと、無機酸化物、例えば特定の希土類酸化物とにより形成されることが好ましい。
特定の希土類酸化物とは、支持体1の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨張係数に近づけるために使用されるものであり、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む希土類酸化物が、Niおよび/またはNiOとの組み合わせで使用することができる。このような希土類酸化物の具体例としては、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、Tm2O3、Er2O3、Ho2O3、Dy2O3、Gd2O3、Sm2O3、Pr2O3を例示することができ、Niおよび/またはNiOとの固溶、反応が殆どなく、また、熱膨張係数が固体電解質層4と同程度であり、かつ安価であるという点から、Y2O3、Yb2O3が好ましい。
また、本実施形態においては、支持体1の良好な導電率を維持し、かつ熱膨張係数を固体電解質層4と近似させるという点で、Niおよび/またはNiO:希土類酸化物=35:65〜65:35の体積比で存在することが好ましい。なお、支持体1中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で、他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
また、支持体1は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、多孔質であり、通常、開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあることが好ましい。また、支持体1の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
なお、支持体1の平坦面nの長さ(支持体1の幅方向Wの長さ)は、例えば、15〜35mm、弧状面mの長さ(弧の長さ)は、2〜8mmであり、支持体1の厚み(平坦面n間の厚み)は1.5〜5mmである。支持体1の長さは、例えば、100〜300mmとされている。
燃料極層3は、電極反応を生じさせるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスにより形成することができる。例えば、希土類元素が固溶したZrO2または希土類元素が固溶したCeO2と、Niおよび/またはNiOとから形成することができる。なお、希土類元素としては、導電性支持体1において例示した希土類元素を用いることができ、例えばYが固溶したZrO2(YSZ)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
燃料極層3中の希土類元素が固溶したZrO2または希土類元素が固溶しているCeO2の含有量は、35〜65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNiあるいはNiOの含有量は、65〜35体積%であるのが好ましい。さらに、この燃料極層3の開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのが好ましく、その厚みは、1〜30μmであるのが好ましい。
また、燃料極層3は、酸素極層6に対面する位置に形成されていればよいため、例えば酸素極層6が設けられている支持体1の下側の平坦面nにのみ燃料極層3が形成されていてもよい。すなわち、燃料極層3は支持体1の下側の平坦面nにのみ設けられ、固体電解質層4が燃料極層3表面、支持体1の両弧状面m表面および燃料極層3が形成されていない支持体1の上側の平坦面n上に形成された構造をしたものであってもよい。
固体電解質層4は、Y、Sc、Yb等の希土類元素を含有した部分安定化あるいは安定化ZrO2からなるセラミックスを用いるのが好ましい。また、希土類元素としては、安価であるという点からYが好ましい。固体電解質層4は、部分安定化あるいは安定化Zr
O2からなるセラミックスに限定されるものではなく、従来、公知の、例えば、ランタンガレード系の固体電解質層であっても良いことは勿論である。
固体電解質層4と後述する酸素極層6との間に、固体電解質層4と酸素極層6との接合を強固とするとともに、固体電解質層4の成分と酸素極層6の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることを抑制する目的で中間層9が形成されている。
中間層9としては、Ce以外の他の希土類元素を含有するCeO2系焼結体からなるもので、例えば、(CeO2)1−x(REO1.5)x(式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数)で表される組成を有していることが好ましい。さらには、電気抵抗を低減するという点から、REとしてSmやGdを用いることが好ましく、例えば10〜20モル%のSmO1.5またはGdO1.5が固溶したCeO2からなることが好ましい。
酸素極層6としては、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスにより形成することが好ましい。かかるペロブスカイト型酸化物としては、Laを含有する遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにSrとLaが共存するLaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物、LaCoO3系酸化物の少なくとも1種が好ましく、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaCoO3系酸化物が特に好ましい。なお、上記ペロブスカイト型酸化物においては、Bサイトに、CoとともにFeやMnが存在しても良い。
また、酸素極層6は、ガス透過性を有する必要があり、従って、酸素極層6を形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。さらに、酸素極層6の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが好ましい。
インターコネクタ層8としては導電性セラミックスにより形成されている。燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、耐還元性、耐酸化性を有する導電性セラミックスとしては、例えば、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)が使用され、特に支持体1および固体電解質層4の熱膨張係数に近づける目的から、Bサ
イトにMgが存在するLaCrMgO3系酸化物が用いられる。インターコネクタ層8材料は導電性セラミックスであればよく、特に限定されるものではない。
また、インターコネクタ層8の厚みは、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜60μmであることが好ましい。この範囲ならばガスのリークを防止できるとともに、電気抵抗を小さくできる。
さらに、支持体1とインターコネクタ層8との間には、インターコネクタ層8と支持体1との間の熱膨張係数差を軽減する等のために密着層(図示せず)を形成することができる。
このような密着層としては、燃料極層3と類似した組成とすることができる。例えば、希土類酸化物、希土類元素が固溶したZrO2、希土類元素が固溶したCeO2のうち少なくとも1種と、Niおよび/またはNiOとから形成することができる。より具体的には、例えばY2O3とNiおよび/またはNiOからなる組成や、Yが固溶したZrO2(YSZ)とNiおよび/またはNiOからなる組成、Y、Sm、Gd等が固溶したCeO2とNiおよび/またはNiOからなる組成から形成することができる。なお、希土類酸化物や希土類元素が固溶したZrO2(CeO2)と、Niおよび/またはNiOとは
、体積比で40:60〜60:40の範囲とすることが好ましい。
以上説明した本実施形態の燃料電池セル10の作製方法の一例について説明する。先ず、例えば、Niおよび/またはNiO粉末と、Y2O3などの希土類酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して坏土を調製し、この坏土を用いて押出成形により支持体成形体を作製し、これを乾燥する。なお、支持体成形体として、支持体成形体を900〜1000℃にて2〜6時間仮焼した仮焼体を用いてもよい。
次に、例えば所定の調合組成に従い、NiOと、Y2O3が固溶したZrO2(YSZ)との素原料を秤量、混合する。この後、混合した粉体に、有機バインダーおよび溶媒を混合して燃料極層用スラリーを調製する。
そして、希土類元素が固溶したZrO2粉末に、トルエン、バインダー粉末(下記、ZrO2粉末に付着させるバインダー粉末よりも高分子、例えばアクリル系樹脂)、市販の分散剤等を加えてスラリー化したものをドクターブレード等の方法により、成形してシート状の固体電解質層成形体を作製する。
空隙率の異なる第1電解質層4aおよび第2電解質層4bにより固体電解質層4を構成するには、気孔を形成する造孔材を添加してシート状の第1電解質層4aを形成する第1電解質層成形体を作製する一方で、第2電解質層4bを形成する第2解質層成形体には、造孔材を添加しないで、もしくは少量の造孔材を添加して作製し、これらの成形体を積層することで、固体電解質層成形体を作製できる。
得られたシート状の固体電解質層成形体上(第1電解質層4aの成形体上)に燃料極層用スラリーを塗布し乾燥して燃料極層成形体を形成し、シート状の積層成形体を形成する。この燃料極層成形体および固体電解質層成形体が積層したシート状の積層成形体の燃料極層成形体側の面を導電性支持体成形体に積層し、成形体を形成する。
次いで、上記の積層成形体を800〜1200℃で2〜6時間仮焼する。補強層を形成する場合には、この後、固体電解質成形体(仮焼体)に、補強層となるスラリーを図5(a)〜(f)で示すような形状で塗布し、乾燥させる。
続いて、インターコネクタ層材料(例えば、LaCrMgO3系酸化物粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを作製する。この後の工程は、密着層を有する燃料電池セルの製法について説明する。
続いて、支持体1とインターコネクタ層8との間に位置する密着層成形体を形成する。例えば、Yが固溶したZrO2とNiOが体積比で40:60〜60:40の範囲となるように混合して乾燥し、有機バインダー等を加えて密着層用スラリーを調整し、固体電解質層成形体の両端部間における支持体成形体上に塗布して密着層成形体を形成する。
続いて固体電解質層4と酸素極層6との間に配置する中間層を形成する。例えば、GdO1.5が固溶したCeO2粉末を800〜900℃にて2〜6時間、熱処理を行い、中間層成形体用の原料粉末を調整する。この原料粉末に、溶媒としてトルエンを添加し、中間層用スラリーを作製し、このスラリーを固体電解質層成形体上および補強層成形体上に塗布して中間層成形体を作製する。
この後、固体電解質成形体(仮焼体)の両端部上に、インターコネクタ層用成形体の両端部が積層されるように、密着層成形体上面にインターコネクタ層用スラリーを塗布し、積層成形体を作製する。なお、インターコネクタ層用スラリーを調製し、インターコネク
タ層用シートを作製し、固体電解質成形体の両端部上に、インターコネクタ層用シートの両端部が積層されるように、密着層成形体上面にインターコネクタ層用シートを積層し、積層成形体を作製することもできる。
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中、1400〜1450℃にて2〜6時間、同時焼結(同時焼成)する。
さらに、酸素極層用材料(例えば、LaCoO3系酸化物粉末)、溶媒および増孔剤を含有するスラリーをディッピング等により中間層上に塗布し、1000〜1300℃で、2〜6時間焼き付けることにより、図1に示す構造の本実施形態の燃料電池セル10を製造できる。
図6は、上述した燃料電池セル10の複数個を、集電部材13を介して電気的に直列に接続して構成されたセルスタック装置の一例を示したものであり、(a)はセルスタック装置11を概略的に示す側面図、(b)は(a)のセルスタック装置11の一部拡大断面図であり、(a)で示した破線で囲った部分を抜粋して示している。なお、(b)において(a)で示した破線で囲った部分に対応する部分を明確とするために矢印にて示しており、(b)で示す燃料電池セル10においては、上述した中間層9等の一部の部材を省略して示している。
なお、セルスタック装置11においては、各燃料電池セル10を、集電部材13を介して配列することでセルスタック12を構成しており、各燃料電池セル10の下端部が、燃料電池セル10に燃料ガスを供給するためのガスタンク16に、ガラスシール材等の接着剤により固定されている。また、ガスタンク16に下端部が固定された弾性変形可能な導電部材14により、燃料電池セル10の配列方向の両端から、セルスタック12を挟持している。
また、図6に示す導電部材14においては、燃料電池セル10の配列方向に沿って外側に向けて延びた形状で、セルスタック12(燃料電池セル10)の発電により生じる電流を引出すための電流引出し部15が設けられている。
図7に、補強層7を有する燃料電池セル10のガスタンク16への固定構造を示す。補強層7を有しない燃料電池セル10の場合も同様である。燃料電池セル10の下端部は、ガスタンク10の上面に形成された開口部内に挿入され、ガラスシール材等の接着剤17により固定されている。図7(a)では補強層7の下端部はガラスシール材等の接着剤17に埋設され、これにより、燃料電池セル10の接着剤17で接合された部分を補強でき、燃料電池セル10の下端部を補強できる。すなわち、耐熱性合金からなるガスタンク16、燃料電池セル10、接着剤17を構成する材料の違いにより、燃料電池セル10の下端部に応力が生じ、クラック等が発生するおそれがあるが、補強層7の下端部は接着剤17に埋設されているため、燃料電池セル10の下端部におけるクラックの発生を防止できる。
図7(b)では、2本の補強層7aの下端部に、3本の補強層7cが所定間隔をおいて形成されており、補強層7cの部分がガラスシール材等の接着剤17で接合され、補強層7cの上端部は、接着剤17から露出している。このようなセルスタック装置では、燃料電池セルの下端部におけるクラックの発生をさらに防止できる。接着剤17の存在している部分と存在していない部分の境界線上において連続でなくてもよく、幅方向に対して30%以上の部分に補強層7cが露出していることが望ましい。
また、燃料電池セル10において、接着剤17の存在している部分と存在していない部
分との境界で高い応力が発生し易いが、補強層7cの上端部は接着剤17から露出しているため、燃料電池セル10における上記境界部分を補強することができる。接着剤17から露出する補強層7cの長さは、2〜10mmあることが望ましい。
図7(c)では、2本の補強層7aの下端部同士が、補強層7cで連結されており、補強層7cの部分がガラスシール材等の接着剤17で接合され、補強層7cの上端部は、接着剤17から露出している。このようなセルスタック装置では、燃料電池セル10の下端部におけるクラックの発生をさらに防止できる。
また、燃料電池セル10において、接着剤17の存在している部分と存在していない部分との境界で高い応力が発生し易いが、補強層7cの上端部は接着剤17から露出しているため、燃料電池セル10における上記境界部分を補強することができる。接着剤17から露出する補強層7cの長さは、2〜10mmあることが望ましい。
図7(d)では、2本の補強層7aの上下両端部同士が、補強層7cで連結されており、下側の補強層7cの部分がガラスシール材等の接着剤17で接合されている。このようなセルスタック装置では、燃料電池セルの下端部におけるクラックの発生をさらに防止できる。また、燃料電池セル10の上方で燃焼する場合には、上端部の補強層7cにより燃料電池セル10を補強できる。
ここで、本実施形態のセルスタック装置11においては、上述した燃料電池セル10を用いて、セルスタック12を構成することにより、発電性能が高く、長期信頼性が向上したセルスタック装置11とすることができる。
図8は、セルスタック装置11を収納容器内に収納してなる燃料電池モジュール18の一例を示す外観斜視図であり、直方体状の収納容器19の内部に、図6に示したセルスタック装置11を収納して構成されている。
なお、燃料電池セル10にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器20をセルスタック12の上方に配置している。そして、改質器20で生成された燃料ガスは、ガス流通管21を介してガスタンク16に供給され、ガスタンク16を介して燃料電池セル10の内部に設けられた燃料ガス通路2に供給される。
なお、図8においては、収納容器19の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されているセルスタック装置11および改質器20を後方に取り出した状態を示している。図8に示した燃料電池モジュール18においては、セルスタック装置11を、収納容器19内にスライドして収納することが可能である。なお、セルスタック装置11は、改質器20を含むものとしても良い。
また収納容器19の内部に設けられた酸素含有ガス導入部材22は、図8においてはガスタンク16に並置された一対のセルスタック12の間に配置されるとともに、酸素含有ガスが燃料ガスの流れに合わせて、燃料電池セル10の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、燃料電池セル10の下端部に酸素含有ガスを供給する。そして、燃料電池セル10の燃料ガス通路2より排出される燃料ガスを酸素含有ガスと反応させて燃料電池セル10の上端部側で燃焼させることにより、燃料電池セル10の温度を上昇させることができ、セルスタック装置11の起動を早めることができる。また、燃料電池セル10の上端部側にて、燃料電池セル10のガス通路2から排出される燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させることにより、燃料電池セル10(セルスタック12)の上方に配置された改質器20を温めることができる。それにより、改質器20で効率よく改質反応を行うこと
ができる。
さらに、本実施形態の燃料電池モジュール18では、上述した燃料電池セル10を用いたセルスタック装置11を収納容器19内に収納してなることから、発電性能が高く、長期信頼性が向上した燃料電池モジュール18とすることができる。
図9は、外装ケース内に図8で示した燃料電池モジュール18と、セルスタック装置11を動作させるための補機とを収納してなる燃料電池装置の一例を示す斜視図である。なお、図9においては一部構成を省略して示している。
図9に示す燃料電池装置23は、支柱24と外装板25とから構成される外装ケース内を仕切板26により上下に区画し、その上方側を上述した燃料電池モジュール18を収納するモジュール収納室27とし、下方側を燃料電池モジュール18を動作させるための補機類を収納する補機収納室28として構成されている。なお、補機収納室28に収納する補機類は省略して示している。
また、仕切板26には、補機収納室28の空気をモジュール収納室27側に流すための空気流通口29が設けられており、モジュール収納室27を構成する外装板25の一部に、モジュール収納室27内の空気を排気するための排気口30が設けられている。
このような燃料電池装置23においては、上述したように、発電性能が高く、信頼性を向上することができる燃料電池モジュール18をモジュール収納室27に収納して構成されることにより、発電性能が高く、信頼性の向上した燃料電池装置23とすることができる。
以上、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
例えば、上記実施形態では、中空平板型の固体酸化物形燃料電池セルについて説明したが、円筒型、平板型の固体酸化物形燃料電池セルであっても良いことは勿論である。また、各部材間に機能に合わせて各種中間層を形成しても良い。
上記形態では、補強層7の上面にまで酸素極層3を形成した状態について記載したが、補強層7間に酸素極層3を形成しても良いことは勿論である。
さらに、上記形態では燃料電池セル、セルスタック装置、燃料電池モジュールならびに燃料電池装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、セルに水蒸気と電圧とを付与して水蒸気(水)を電気分解することにより、水素と酸素(O2)を生成する電解セル(SOEC)およびこの電解セルを備える電解モジュールおよび電解装置にも適用することができる。
先ず、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径0.9μmのY2O3粉末を混合し、有機バインダーと溶媒にて作製した坏土を押出成形法にて成形し、乾燥、脱脂して導電性の支持体成形体を作製した。支持体成形体は、還元後における体積比率が、NiOが48体積%、Y2O3が52体積%であった。
次に、8mol%のY2O3が固溶したマイクロトラック法による粒径が0.8μmのZrO2粉末(固体電解質層原料粉末)に、バインダー粉末と溶媒と、所望により造孔材を混合して得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法にて第2電解質層4bを構成
する第2電解質層用シートを作製した。また、同じスラリーに造孔材を所定量だけ添加し、ドクターブレード法にて第1電解質層4aを構成する第1電解質層用シートを作製し、第1電解質層用シートに第2電解質層用シートを積層し、固体電解質層シートを作製した。また、第1電解質層4a、第2電解質層4bの空隙率は、ZrO2粉末の粒径、造孔材量を変化させて作製した。
中間層成形体を形成するためのスラリーは、CeO2を90モル%、希土類元素の酸化物(GdO1.5、SmO1.5)を10モル%含む複合酸化物を、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を用いて振動ミル又はボールミルにて粉砕し、900℃にて4時間仮焼処理を行い、再度ボールミルにて解砕処理し、セラミック粒子の凝集度を調製し、この粉体に、バインダーと溶媒とを添加し、混合して作製した。
次に平均粒径0.5μmのNiO粉末とY2O3が固溶したZrO2粉末と有機バインダーと溶媒とを混合した燃料極層用スラリーを作製し、第1電解質層用シート上にスクリーン印刷法にて塗布し乾燥して燃料極層成形体を形成した。
固体電解質層用シートに燃料極層成形体を形成したシート状の積層成形体を、その燃料極層成形体側の面を内側にして支持体成形体の所定位置に積層した。
続いて、上記のような成形体を積層した積層成形体を1000℃にて3時間仮焼処理した。この後、中間層成形体を形成するためのスラリーを、スクリーン印刷法にて、固体電解質仮焼体の上面に塗布し乾燥して、中間層成形体を形成した。
続いて、平均粒径0.7μmのLa(Mg0.3Cr0.7)0.96O3と、有機バインダーと溶媒とを混合したスラリーを作製した。
NiとYSZとからなる原料を混合して乾燥し、有機バインダーと溶媒とを混合して密着層用スラリーを調整した。調整した密着層用スラリーを、支持体の燃料極層(および固体電解質層)が形成されていない部位(支持体が露出した部位)に塗布して密着層成形体を積層し、密着層成形体の上に、インターコネクタ層用スラリーを塗布した。
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中で1450℃にて2時間同時焼成した。
次に、平均粒径2μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3粉末と、イソプロピルアルコールとからなる混合液を作製し、固体電解質上面における中間層の表面に噴霧塗布し、酸素極層成形体を形成し、1100℃にて4時間で焼き付け、酸素極層を形成し、図1に示す燃料電池セルを作製した。
なお、作製した燃料電池セルの寸法は25mm×200mmで、支持体の厚み(平坦面n間の厚み)は2mm、開気孔率35%、燃料極層の厚さは30μm、開気孔率24%、酸素極層の厚みは50μm、開気孔率40%、インターコネクタ層の厚みは40μmであった。
作製した7本の燃料電池セル10を、図6に示したように、集電部材を介して電気的に接続したセルスタックの下端部を、ガスタンクの開口部内に挿入し、結晶化ガラスからなる接着剤17で接合固定し、セルスタック装置を作製した。
これらのセルスタック装置のガスタンク内に水素ガスを供給し、燃料電池セルの内部に水素ガスを流し、850℃で10時間、支持体および燃料極層の還元処理を施し、冷却し
た。
そして、燃料電池セルの強度を3点曲げ試験で測定した。また、燃料電池セルのクラッ
ク発生有無を、目視にて確認した。
また、それぞれの第1電解質層、第2電解質層の空隙率V1、V2、厚みt1、t2、平均粒径d1、d2を測定し、表1に記載した。空隙率V1、V2は、第1電解質層4a、第2電解質層4bの断面の1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に基づき、画像解析装置を用いて算出した。
この表1から、第1電解質層の空隙率V1が5〜20%、第2電解質層の空隙率V2が5%未満である試料No.1〜4,6〜8は、燃料電池セルの強度が高く、クラックの発生がないことがわかる。一方、空隙率V1が24%、V2が5%の試料No.5では、強度が低く、クラックが発生した。
第1電解質層、第2電解質層を有するとともに、補強層を有する燃料電池セルを用いてセルスタック装置を作製し、実施例1と同様に評価した。
セルスタック装置は、上記実施例1の製造工程において、積層成形体を1000℃にて3時間仮焼処理する工程と、中間層成形体を形成するためのスラリーを、スクリーン印刷する工程との間に、下記工程を追加して作製した。
固体電解質の仮焼体に、補強層を構成するスラリー(4モル%のY2O3が固溶した粒径0.8μmのZrO2粉末を含有する)を、図5(e)に示す形状に塗布し、乾燥した。
この表1から、補強層を有する燃料電池セルでは、燃料電池セルの強度が大きくなり、
クラックの発生を抑制できることがわかる。