JP2015045111A - 吸水速乾性編地 - Google Patents

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Terushige Nakanishi
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【課題】 紡績糸の表層部はセルロース繊維のみを配することにより、セルロース繊維特有のソフトな風合いと吸水吸湿性を維持し、かつ、優れた速乾性を発揮しうる編地を提供する。
【解決手段】 芯部にポリエステル短繊維が配され、鞘部にセルロース短繊維のみが配された芯鞘二層構造紡績糸により構成される編地であり、
ポリエステル短繊維の単糸繊度が1.0デシテックス以下、セルロース短繊維が超長綿あるいは溶剤紡糸セルロース繊維のいずれかであり、
芯鞘二層構造紡績糸の英式綿番手が50/1〜70/1、撚り係数がK=5.0〜7.0となるように単糸追撚が施されてなることを特徴とする吸水速乾性編地。
撚り係数 K=撚り数(t/inch)/√英式綿番手
【選択図】 図1

Description

本発明は、吸水・吸湿性を有し、かつ、優れた速乾性を有する編地に関するものである。
従来から肌着素材は、肌面に直接触れる素材であることから吸水・吸湿性に優れ、ソフトな風合いを有し、肌に安全で安心感のあるコットン素材が主に使用されてきた。一方、コットンに代表されるセルロース繊維は、吸水性に優れるが繊維内部まで水分を保持するため乾きにくい性質があり、疎水性で速乾性に優れるポリエステル繊維などの合成繊維と複合した素材も提案されている。複合素材としては、糸段階で複合紡績する手法が挙げられ、例えば、特許文献1には、芯部にポリエステルフィラメント糸、鞘部にセルロース繊維とポリエステルフィラメントの混繊繊維束からなる複合糸が配され、ポリエステルフィラメントの一部が糸表面にループ状に突出してなる吸汗性と速乾性を有する複合糸が開示され、また、特許文献2には、芯部に異形断面ポリエステルフィラメント糸、鞘部に麻とレーヨンとの混紡糸を配した複合紡績糸によって構成される吸汗速乾編地が開示されている。
しかしながら、特許文献1の技術では、複合糸表面にポリエステルフィラメントの一部がループ状に突出しており、また、特許文献2の技術では、紡績糸表面に麻が混紡されていることから粗硬となり、いずれも、鞘部に配したセルロース繊維本来のソフトで優しい風合いが損なわれている。
特開平11−172539号公報 特開2009−203557号公報
本発明は、紡績糸の表層部はセルロース繊維のみを配することにより、セルロース繊維特有のソフトな風合いと吸水吸湿性を維持し、かつ、優れた速乾性を発揮しうる編地を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、芯部に極細のポリエステル短繊維を配し、鞘部に特定のセルロース短繊維を配した二層構造とし、かつ糸の太さは細番手のものとし、かつ紡績糸を得る際に単糸追撚を施すことで、着用時の風合いはあたかもセルロースのみからなる風合いを感じさせるものでありながら、独特の清涼感、軽量感、吸水速乾性、安全性を併せ持つ編地が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、芯部にポリエステル短繊維が配され、鞘部にセルロース短繊維のみが配された芯鞘二層構造紡績糸により構成される編地であり、
ポリエステル短繊維の単糸繊度が1.0デシテックス以下、セルロース短繊維が超長綿あるいは溶剤紡糸セルロース繊維のいずれかであり、
芯鞘二層構造紡績糸の英式綿番手が50/1〜70/1、撚り係数がK=5.0〜7.0となるように単糸追撚が施されてなることを特徴とする吸水速乾性編地を要旨とするものである。
なお、上記した撚り係数:Kは、下記式により求められる値である。
K=撚り数(t/inch)/√英式綿番手
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の吸水速乾性編地は、芯部と鞘部に異なる短繊維を配した芯鞘二層構造紡績糸により構成される編地である。そして、芯鞘二層構造紡績糸の鞘部には、セルロース短繊維のみが配されている。すなわち、紡績糸表面はセルロース短繊維のみによって構成されているため、糸表面にはセルロース繊維以外の繊維は存在しない。したがって、肌触りが良好となる。本発明では、鞘部に配するセルロース短繊維は、超長綿または溶剤紡糸セルロース繊維(リヨセル)のいずれかを用いる。
超長綿とは、綿繊維であって、平均長さが35mm以上のものをいう。綿繊維は、平均長さによって、短繊維綿(平均長さ21mm以下)、中繊維綿(平均長さ21mmを超え28mm未満)、長繊維綿(平均長さ28mm以上)に分類される。そして、長繊維綿の中でも平均長さが35mm以上のものは、超長綿と呼ばれて珍重されている。カリブ海の西インド諸島で生産される「海島綿(Sea−Island cotton)」や、エジプトの「ギザ45」、ペルーの「ピマ・コットン」が知られており、これらを用いることができる。超長綿は、手触りがよく、糸にしたときの反射率が高くシルクのような光沢を放ち、また、細くてもある程度の強度を有する糸を製造できることから、薄くて上質の布生地を得ることができる。
溶剤紡糸セルロース繊維(リヨセル)は、製造工程段階から一切公害を出さない完全クローズドシステムで生産される環境配慮型の素材であり、ソフトで風合いも良く高い吸放湿性能を有する。中でも、単糸繊度が、0.6dtex〜1.0dtexのマイクロタイプを用いることが好ましい。その理由は、芯鞘二層構造紡績糸の鞘部に用いる際に、良好に芯部を被覆することができるため、紡績糸表面に芯部の繊維を表出させないことにある。
リヨセルは、原綿特性としてスキンコア構造を有しており、繰返しもみ作用が加わると繊維表層が割れて微細化し、フィブリル化という白化現象が起こりやすい繊維である。染色加工中における擦れ当たりや再染色などの加工を繰り返すことにより、著しくフィブリル化が促進することがあり、外観と風合いが悪化することもある。芯部にポリエステル繊維を配するため、ポリエステル繊維特有の高圧高温下での液流染色条件を採用すれば、フィブリル化が顕著に促進することになる。フィブリル化を防止する手法としては、一般的には生地を得た後の後加工で架橋結合による樹脂加工を施すことが挙げられるが、この処理で生地自体の吸水性が阻害されてしまう。したがって、生地段階でのフィブリル化防止加工は好ましくない。本発明では、原綿段階で、リヨセルに抗フィブリル化処理を施すことが好ましい。これは、原綿段階で架橋処理を行い、繊維一本一本を完全ノンフィブリル化することである。抗フィブリル化処理を実施しない場合は、染色加工中の擦れ当たりや着用と洗濯を繰り返し行う中で繊維がフィブリル化し、風合いの硬化や肌への強い刺激および白化現象が生じる。原綿段階で処理することにより、繊維本来の吸水性や吸放湿性を損なうことなく、最も安価にフィブリル化の防止が行える。このような原綿段階でのフィブリル化防止処理は、例えば、特許第4015289号公報に記載の手法、すなわち、溶剤紡糸セルロース繊維を、1分子中に2〜4個のクロルヒドリン基を有する化合物と、水溶液中でアルカリ性を示す化合物と中性塩とからなる反応促進剤とを含む水溶液中で処理することが挙げられる。
本発明においては、紡績糸の鞘部を構成するセルロース短繊維は、上記したように超長綿あるいはリヨセルを用いるが、例えば、他のセルロース短繊維である麻やビスコースレーヨンは本発明において鞘部を構成する繊維として用いない。麻は繊維が太く硬いため肌着に用いた場合粗硬で肌を刺す風合いとなるため本発明には適さず、また、ビスコースレーヨンは、湿潤時の強力低下や寸法安定性に欠けるといった課題があるからである。
本発明における芯鞘二層構造紡績糸における芯部には、単糸繊度が1.0デシテックス以下のポリエステル短繊維を配する。芯部にポリエステル短繊維を配することにより、紡績糸表面を構成するセルロース繊維が吸った汗等の体液は素早くポリエステル短繊維側に移行し、芯部のポリエステル短繊維は保水性を有しないため、良好に拡散して蒸散させることができる。また、本発明では、ポリエステル短繊維の単糸繊度を1.0デシテックス以下とすることにより、ポリエステル特有の剛性が失われ、紡績糸自体が柔軟性な糸となる。また、紡績糸の番手を小さく設計することが可能となり、肌着等のインナー用途に非常に適する薄地の生地を得ることができる。
本発明における芯鞘二層構造紡績糸の芯部と鞘部の質量比は、芯部/鞘部=20/80〜45/55の範囲がよい。質量比率が20/80を下回ると、セルロース短繊維が占める割合が増えて風合いは良好となるが、速乾性や編地の形態安定性の観点から劣る傾向となる。一方、40/60を上回ると、セルロース短繊維による被覆率が低下し、芯部を構成するポリエステル短繊維が表面に発現しやすくない、本発明の目的が達成されにくい傾向となる。
芯鞘二層構造紡績糸の太さとしては、肌着等のインナー用に適する薄地の編地を得ることを考慮して、英式綿番手50/1〜80/1とする。芯鞘二層構造紡績糸における鞘部の被覆安定性やダブル丸編み組織で肌着用途に適した生地厚を得るためには60/1がより好ましい。
本発明における芯鞘二層構造紡績糸は、例えば、図1(概略側面図)及び図2(概略平面図)に示す構造の粗紡機を用いて粗糸を得、得られた粗糸を精紡機にて精紡して紡績糸とし、さらに得られた紡績糸をトータル撚り係数がK=5.0〜7.0となるように単糸追撚を施すことにより得ることができる。本発明においては、特定の撚り係数となるように、さらに単糸追撚することにより、芯鞘二層構造紡績糸における鞘部の芯部に対する被覆率が向上すると共に、シャリ感と独特の清涼感と更なる速乾性の向上効果が図れる。
なお、芯鞘構造の粗糸を得る方法について、図面に基づいて説明する。芯部用のポリエステル短繊維からなる練条上りスライバーS1 と、鞘部用の超長綿もしくはリヨセルによって構成されるセルロース短繊維からなる練条上りスライバーS2を粗紡機に供給して、ローラーパートA〜Dでドラフト後、フロントローラーDとフライヤーヘッドEとの間で芯鞘構造とした粗糸を得る。
本発明の編地は、上記した芯鞘二層構造紡績糸によって製編されることにより得られる。編成される編組織としては、ダイヤルとシリンダによる選針で編成されるダブル丸編み組織であり、フライス組織や針抜きによるテレコ組織が好ましい。フライス組織やテレコ組織は、その特性からヨコ方向への伸縮性に優れ、肌着用途へ広く応用されており、肌着としての素材風合いとフィット感及び着脱時のしやすさの点で適している。特にヨコ方向の伸長率が100%以上であれば、無理なく着脱可能でフィット感もあり、肌着としてアウターへのごわつきなど大きな影響を与えることはない。編地として伸長率が100%を下回るとフィット感及び着脱時の面で不適切なものとなる。
本発明の吸水速乾性編地は、インナー用途として幅広く好適に使用できる。なかでも、特にセルロース短繊維特有のソフトな風合いと吸水吸湿性を要望されるレディース肌着用途に好適である。
本発明では、編地を構成する紡績糸の表層部がセルロース短繊維のみにより構成され、芯部には特定単糸繊度のポリエステル短繊維が配されており、着用時の風合いはあたかも紡績糸がセルロース短繊維のみから構成されると錯覚するほどの柔らかな風合いを有しながら、芯部に特定単糸繊度のポリエステル短繊維が配されているので、優れた吸水速乾性を発揮する編地を提供することができる。
粗紡機の一例を示す概略側面図である。 粗紡機の一例を示す概略平面図である。
A :バックローラー
B :ミドルローラー
C :エプロン
D :フロントローラー
E :フライヤーヘッド
F :フライヤー
G :粗糸
S 1:芯部をなすスライバー
S2:巻き付けスライバー
θ :ドラフト軸方向の延長線と,芯部をなすスライバーの最終ニップ点とフライヤーヘッドを結ぶ線とのなす角を水平面に投影した角
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例、比較例における編地の吸水した水分の拡散性の評価は、下記の方法により実施した。
<拡散性残留水分率>
天秤の上に乗せたガラス板の上に0.6gの蒸留水を中央部に滴下する。10cm×10cmにカットした測定試料の裏面(肌面)に水分が接するように試料を乗せた後、重量変化を測定し、残留水分率が10%に至るまでの時間を測定する。
本発明においては、この拡散性残留水分率が10%以下に至るまでの時間が55分以内であることが好ましい。拡散性残留水分率が10%以下に至るまでの時間が55分を超えると速乾性を体感することができないためである。
実施例1
図1(概略側面図)及び図2(概略平面図)に示す構造の粗紡機を用いて、芯部をなすスライバーS1としてポリエステル短繊維(単糸繊度0.9デシテックス×繊維長38mmの)で構成されたスライバーを供給し、巻き付けスライバーS2として超長綿(商品名「スーピマ」)100%のコーマスライバーを供給し、ドラフト後の各スライバーの質量比率をS1:S2=40:60とし、図2におけるドラフト方向に対する芯部をなすスライバーS1のフライヤーヘットEへの進行角度θを60度としとして、粗糸質量180ゲレン/30ヤードとし、撚数0.7T/インチの粗糸を得た。この粗糸を用いて常用の精紡機で精紡して英式綿番手60/1とし、トータル撚り係数K=6.0となるように単糸追撚を施し、本発明における芯鞘二層構造紡績糸を得た。
次いで、ダブル編機(福原精機製30インチ×22ゲージ、針本数1800本)でフライス生機を作成し、精練・漂白処理を行い、吸水柔軟仕上げにより目付125g/mの実施例1の吸水速乾性編地を得た。得られた編地の残留水分率が10%に至るまでの時間は45.3分であった。編地の手触り感は、あたかもセルロース繊維100%の紡績糸から構成された編地のごとき風合いであり、清涼感に優れたものであった。
実施例2
実施例1において、巻き付けスライバーS2 として原綿段階でフィブリル化防止加工が施されてなるリヨセル(商品名「リヨセルKF」0.9デシテックス×34mm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の吸水速乾性編地を得た。得られた編地の残留水分率が10%に至るまでの時間は50.6分であった。また、編地の手触り感は、あたかもセルロース繊維100%の紡績糸から構成された編地のごとき風合いであり、清涼感に優れたものであった。
比較例1
実施例1において、単糸追撚を施さず、撚り係数K=3.8の芯鞘二層構造紡績糸としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の編地を得た。得られた編地の残留水分率が10%に至るまでの時間は57.5分であった。また、編地の手触り感では、清涼感を感じ難いものであった。

Claims (3)

  1. 芯部にポリエステル短繊維が配され、鞘部にセルロース短繊維のみが配された芯鞘二層構造紡績糸により構成される編地であり、
    ポリエステル短繊維の単糸繊度が1.0デシテックス以下、セルロース短繊維が超長綿あるいは溶剤紡糸セルロース繊維のいずれかであり、
    芯鞘二層構造紡績糸の英式綿番手が50/1〜80/1、撚り係数がK=5.0〜7.0となるように単糸追撚が施されてなることを特徴とする吸水速乾性編地。
    撚り係数 K=撚り数(t/inch)/√英式綿番手
  2. 溶剤紡糸セルロール繊維が、原綿段階でフィブリル化防止加工が施されたものであることを特徴とする請求項1記載の吸水速乾性編地。
  3. 請求項1または2記載の吸水速乾性編地からなる肌着。
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