JP2015036470A - 床版防水構造補修用シート、床版防水構造補修用シートの製造方法および床版防水構造の補修方法 - Google Patents

床版防水構造補修用シート、床版防水構造補修用シートの製造方法および床版防水構造の補修方法 Download PDF

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間  昭徳
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努 大出
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Abstract

【課題】防水層としてウレタン系樹脂を用いた床版防水構造の破損箇所を補修する場合において、短時間に補修工事を完了させられる床版防水構造補修用シートを提供する。
【解決手段】床版とアスファルト舗装体との間に形成された、ウレタン系樹脂を含む防水層を備えた床版防水構造の補修に用いる床版防水構造補修用シートであって、ウレタン系樹脂を含む防水層と、該防水層上に形成された接着層と、該接着層上に形成された熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂着層と、を有し、接着層が、防水層と熱可塑性樹脂層とを接着する樹脂を含んでいる、床版防水構造補修用シートとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、床版とアスファルト舗装体との間に設けられた床版防水構造の補修に用いる床版防水構造補修用シート、該床版防水構造補修用シートの製造方法、および該床版防水構造補修用シートを用いた床版防水構造の補修方法に関する。
近年、橋梁等のコンクリート床版では、雨水等の水分が侵入することによって劣化亀裂が生じる虞があることが問題になっている。そのため、床版とアスファルト舗装体との間に防水層を備えた床版防水構造を設けることが一般的である。当該防水層として、従来は舗装体と同じアスファルト系のものを用いることが一般的であった。この場合、舗装体と防水層とが同種のアスファルト系の素材であり、両者の接着性が良好であるという利点を有する。しかしながら、アスファルト系防水層は耐久性に問題があると言われている。
そこで、アスファルト系防水層に代わる防水層として、高温(50℃以上)で強度を維持しつつ、低温(−30℃以下)では弾性を維持する熱硬化性樹脂を塗布して形成した樹脂塗膜防水層等が注目されている。しかしながら、当該樹脂塗膜防水層はアスファルト舗装体との接合性が不十分であるという問題や、アスファルト舗装体との接合を行うための接着層を設ける際の施工性が悪い等の問題があった。
下記特許文献1に記載された技術では、樹脂塗膜防水層とアスファルト舗装体との間に特定の熱可塑性樹脂シートを利用した接着剤層を設けることによって、上述したような問題の解決を図っている。即ち、下記特許文献1に記載された技術は、橋梁等の床版上に、樹脂塗膜防水材層、アスファルト舗装体を積層してなる床版防水構造であって、樹脂塗膜防水材層とアスファルト舗装体とが特定の熱可塑性樹脂シートを介して接合されているものである。
また、下記特許文献2には、コンクリート床版とアスファルト舗装体との間に設けられる複合防水シートであって、厚さ0.3mm以上5mm以下の樹脂系防水層と、該樹脂系防水層に貼合された、厚さ0.05mm以上3mm以下の熱可塑性樹脂層とを有し、熱可塑性樹脂層がアスファルト舗装体に面するように敷設される複合防水シートが開示されている。
特許第3956757号公報 特開2012−21315号公報
特許文献1には、ウレタン系樹脂を含む樹脂塗膜防水層(ウレタン系防水層)上にウレタン系樹脂などの接着剤を薄く塗布し、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)系熱可塑性樹脂シートを敷き詰めてなる床版防水構造が開示されている。ウレタン系防水層を用いた従来の一般的な床版防水構造は、プライマー樹脂層、ウレタン系防水層、ウレタン系樹脂接着剤層、EVA系熱可塑性樹脂シートを順次積層してなる構成である。このような構成の床版防水構造は、ここ近年大幅に新設または既設の床版に採用されている。また、このような従来の構成の床版防水構造は、プライマー樹脂層およびウレタン系防水層を形成した後、ウレタン系樹脂接着剤の主剤/硬化剤(イソシアネート/ポリオール)を工事現場で混合し、それをローラー刷毛、専用の吹付け機械等で薄く均一に塗布し、熱可塑性樹脂シートを敷き均して施工する。このとき、ウレタン系防水層やウレタン系樹脂接着層の形成(構成材料の塗布および硬化(乾燥))には長時間を費やしていた。即ち、従来の床版防水構造の施工方法は工程数が多く、多くの時間を必要としていた。
上記のような床版防水構造において破損が生じた場合、それが例え小規模なポットホールであったとしても、ウレタン系防水層を形成するために吹き付け機車両等の大型車を準備し、防水層を形成した後に接着剤にて熱可塑樹脂シートを貼り付け、さらにアスファルト舗装体を積層することによって補修していた。しかしながら、このような従来の補修方法は、特殊な吹き付け機が必要とされるため、緊急を要する補修に対応できないという問題があった。また、補修に時間がかかるため、交通規制の時間を長くとらなければならないという問題もあった。
一方、特許文献2に開示されている技術では、短時間で床版防水構造を施工することができる。しかしながら、防水層として高い機能を発揮するウレタン系樹脂を防水層に用いる場合には不向きであった。特許文献2には防水層としてウレタン系樹脂も使用できると記載されているが、ウレタン系樹脂からなる防水層は押出成形できず、特許文献2に開示されているような方法でウレタン系防水層とエチレン酢酸ビニル共重合体等からなる熱可塑性樹脂層とを一体成形することは困難であった。
そこで本発明は、防水層としてウレタン系樹脂を用いた床版防水構造の破損箇所を補修する場合において、短時間に補修工事を完了させられる床版防水構造補修用シート、該床版防水構造補修用シートの製造方法、および該床版防水構造補修用シートを用いた床版防水構造の補修方法を提供する。
本発明者等は、上記課題に鑑み検討を行った結果、ウレタン系樹脂を含む防水層に所定の接着剤で熱可塑性シートを貼り付けたシートを事前に用意し、それを補修箇所に貼り付けてアスファルト舗装体を舗設するだけで補修できるので、ウレタン系樹脂を用いた床版防水構造の破損を短時間で補修できるようになることを見出した。
本発明の第1の態様は、床版とアスファルト舗装体との間に形成された、ウレタン系樹脂を含む防水層を備えた床版防水構造の補修に用いる床版防水構造補修用シートであって、ウレタン系樹脂を含む防水層と、該防水層上に形成された接着層と、該接着層上に形成された熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂着層と、を有し、接着層が、防水層と熱可塑性樹脂層とを接着する樹脂を含んでいる、床版防水構造補修用シートである。
上記本発明の第1の態様において、接着層がウレタン系樹脂を含むことが好ましい。
本発明の第2の態様は、床版とアスファルト舗装体との間に形成された、ウレタン系樹脂を含む防水層を備えた床版防水構造の補修に用いる床版防水構造補修用シートの製造方法であって、離型シート上にウレタン系樹脂を含む組成物を吹き付けて防水層を形成する工程と、防水層上に接着層を形成する工程と、接着層上に熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂着層を形成する工程と、防水層から離型シートを剥離する工程と、を有し、接着層が、防水層と熱可塑性樹脂着層とを接着する樹脂を含んでいる、床版防水構造補修用シートの製造方法である。
上記本発明の第2の態様において、接着層がウレタン系樹脂を含むことが好ましい。
本発明の第3の態様は、床版とアスファルト舗装体との間に形成された、ウレタン系樹脂を含む防水層を備えた床版防水構造の補修方法であって、床版防水構造の破損箇所およびその周辺部において床版防水構造を剥がす工程と、上記本発明の第1の態様にかかる床版防水構造補修用シートを敷設する工程と、アスファルト舗装体を舗設する工程と、を有する、床版防水構造の補修方法である。
本発明によれば、防水層としてウレタン系樹脂を用いた床版防水構造の破損箇所を補修する場合において、吹き付け機車両等の大型車を用いずに短時間で補修することができ、緊急での対応も可能となる。
床版防水構造補修用シート10の構成を概念的に示した断面図である。 図2(A)乃至図2(C)は床版防水構造の補修方法の過程を説明する断面図である。 図3(A)乃至図3(C)は床版防水構造の補修方法の他の過程を説明する断面図である。
本発明の上記作用および利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。なお、以下に示す図は構成を概念的に示したものであり、各構成要素の大きさや形状を正確に示すものではない。
1.床版防水構造補修用シート
図1は床版防水構造補修用シート10(以下、単に「補修用シート10」ということがある。)の構成を概念的に示した断面図である。
補修用シート10は、床版とアスファルト舗装体との間に形成されたウレタン系樹脂を含む防水層を備えた床版防水構造の補修に用いるシートである。補修用シート10を用いた床版防水構造の補修方法については後に説明する。
補修用シート10は、図1に示したように、防水層1、接着層2および熱可塑性樹脂層3を備えている。以下、床版防水構造10を構成するこれらの構成要素について説明する。
防水層1は、床版とアスファルト舗装体との間に形成された床版防水構造において、アスファルト舗装体側から床版側へと水が侵入することを抑制するための層である。防水層1は、ウレタン系樹脂(ウレア樹脂、ウレタン樹脂、ウレアウレタン樹脂等)を含む組成物によって構成されている。防水層1は、例えば、NCO基を有する化合物を主とする主剤と、該主剤と反応して硬化させる架橋剤、充填材、添加剤等を含む硬化剤と、の2液を混合させて架橋硬化して形成することができる。上記主剤の例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のプレポリマー、およびカルボジイミド変性体等の混合物が挙げられ、NCO%が10〜30%程度のものであり、10〜20%のものが好ましく、10〜17%のものがより好ましい。NCO%が10%程度未満であると主剤の粘度が高くなり作業性が低下する。NCO%が30%程度以上であると、反応硬化した防水層1の性能である硬さ、引張り強度、伸び等が防水層1に要求される性能を満たさない虞がある。プレポリマーに使われる水酸基化合物としてはポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカプロラクタムポリール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール等があり、好ましくはポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレングリコールが使われる。また、上記硬化剤の例としては、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、エチレングリコール等ジオール化合物、ポリエーテルポリオール、アミノ化ポリエーテル、アクリロニトリル、スチレン等変性ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレングリコールおよび、それらの混合物などが挙げられる。これらのうち、芳香族ジアミンとエチレングリコール、そして分子量1000以上、好ましくは2000以上のポリエーテルポリオール、変性ポリエーテルポリオールの混合物が好ましい。芳香族ジアミンは防水層1に要求される性能である硬さ、引張り強度、伸びが得られやすく、エチレングリコールは防水層1の性能を維持しつつコストが割高になることを抑制できる。ポリエーテルポリオール、変性ポリエーテルポリオールは硬化剤混合物としての粘度が作業性に適し、防水層1の性能も得られやすい。また、硬化促進剤として金属系、アミン系触媒を使うこともできる。
接着層2は、防水層1と熱可塑性樹脂層3とを接着する樹脂を含む層である。接着層2を構成する組成物としては、ウレタン系樹脂(ウレア樹脂、ウレタン樹脂、ウレアウレタン樹脂等)を含む接着剤組成物を挙げることができる。接着層2は、例えば、NCO基を有する化合物を主とする主剤と、該主剤と反応して硬化させる架橋剤、充填材、添加剤等を含む硬化剤と、の2液を混合させて架橋硬化して形成することができる。上記主剤の例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性MDI等の混合物、またそれらのプレポリマー、が挙げられ、NCO%が10〜33%程度のものが好ましく、20%〜33%程度のものがより好ましい。NCO%が10%を下回ると、防水層1と説可塑性樹脂層3との接着強度を低下させる虞がある。また、上記硬化剤の例としては、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、エチレングリコール等の分子量250以下の水酸基化合物、ポリエーテルポリオール、アミノ化ポリエーテル、ポリブタジエンポリオール、ポリカプロラクタムポリール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール等および、それらの混合物などが挙げられる。また、硬化促進剤として金属系、アミン系触媒を使うこともできる。
熱可塑性樹脂層3は、接着層2と接着し、さらにアスファルト舗装体と接着できる樹脂を含む層である。熱可塑性樹脂層3は自己接着性または加熱によって一旦溶融した後に硬化することによって、アスファルト舗装体に強固に接着する熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂シートによって構成することができる。
熱可塑性樹脂層3は、例えば、ポリアミド樹脂、好ましくは重合脂肪酸系ポリアミド樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合物(EVA)を主成分とする熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂シートによって構成することができる。熱可塑性樹脂の軟化点は、40℃以上150℃以下であり、45℃以上100℃以下であることが好ましく、50℃以上90℃以下であることがより好ましい。軟化点が150℃を超える場合、熱可塑性樹脂層3を溶融させ難くなり、熱可塑性樹脂層3をアスファルト舗装体に溶融接着させ難くなる。一方、軟化点が40℃未満であると、施工現場が高温となりやすい夏季などでは上記シートが意図せず溶融してしまう虞がある。また、上記のように熱可塑性樹脂シートが溶けてベタつくと、アスファルト舗装体を舗設するための機械等を該熱可塑性樹脂シート上に乗せられなくなり、アスファルト舗装体を舗設できなくなる。
また、上記熱可塑性樹脂の200℃における溶融粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂層3を構成する熱可塑性樹脂の溶融粘度がある程度高くなければ、熱可塑性樹脂層3を形成し難くなる、接着層2との接着が悪くなるなどの問題を生じる虞がある。
なお、上記熱可塑性樹脂シートの形態はシート状であればよい。すなわち、熱可塑性樹脂シートは、孔が開いた網状のシートであってもよく、孔の開いていない表面が平滑なシートでもよく、あるいは、織物、編み物、不織布からなるシートであっても良い。
2.床版防水構造補修用シートの製造方法
上述した補修用シート10は以下のようにして製造することができる。すなわち、補修用シート10の製造方法は、離型シート上にウレタン系樹脂を含む組成物を吹き付けて防水層1を形成する工程と、防水層1上に接着層2を形成する工程と、接着層2上に熱可塑性樹脂層3を形成する工程と、防水層1から離型シートを剥離する工程と、を有する。
防水層1は離型シート上に、防水層1を構成する上述した組成物を、塗布または散布することによって形成できる。防水層1は、例えば、スプレー塗布、ローラー刷毛塗布、刷毛塗布などによって形成できる。また、防水層1は、例えば、塗布量が1.0kg/m以上3.0kg/m以下、好ましくは、1.2kg/m以上2.0kg/m以下で上記組成物を塗布または散布して硬化させることによって形成できる。塗布量が1.0kg/m以上であれば防水層1が十分な防水性能を発揮しやすく、塗布量が1.2kg/m以上であれば吹き付けムラや塗りムラの発生を抑制しやすくなる。一方、塗布量が2.0kg/m以下であれば生産コストが割高になることを抑制できる。
接着層2は、上記のようにして形成した防水層1の表面に接着層2を構成する上述した組成物を塗布または散布することよって形成できる。接着層2は、例えば、スプレー塗布、ローラー刷毛塗布、刷毛塗布などによって形成できる。また、接着層2は、例えば、塗布量が0.1kg/m以上0.5kg/m以下、好ましくは0.1kg/m以上0.3kg/m以下で防水層1の表面に上記組成物を塗布または散布することによって形成できる。塗布量が0.1kg/m以上であれば、吹付けムラや塗りムラの発生が少なく、良好な防水性能を得やすくなる。一方、塗布量が0.5kg/m以下であれば、コストが割高になることを抑制し、且つ、材料の混合や塗布にかかる手間を少なくすることができる。
熱可塑性樹脂層3は、上記のようにして接着層2を構成する組成物を塗布または散布した後、上述した熱可塑性樹脂シートを貼り付けることによって形成できる。熱可塑性樹脂層3は、例えば0.4kg/m以上1.2kg/m以下の目付け量で、厚さ0.4mm以上1.5mm程度に形成することができる。目付け量を0.4kg/m以上とすることによって、接着層2およびアスファルト舗装体との接着強度を十分に確保しやすくなる。一方、目付け量を1.2kg/m以下とすることによって、アスファルト舗装体の舗設時に熱可塑性樹脂層3がアスファルト舗装体の熱で溶融しやすくなり、熱可塑性樹脂層3とアスファルト舗装体とが十分に接着しやすくなる、生産コストが割高になることを抑制できるなどの利点を有する。
上記のようにして離型シート上に防水層1、接着層2、および熱可塑性樹脂層3を形成した後、防水層1から離型シートを剥離することによって、防水層1、接着層2、および熱可塑性樹脂層3を備えた補修用シート10を得ることができる。なお、離型シートは防水層1を容易に剥離できるシートであればよい。離型シートを構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等を挙げることができる。
補修用シート10の大きさは特に限定されないが、1辺が1m以上2m以下程度の大きさの四角形に形成されることが好ましい。このような形状とすることによって搬送および施工が容易になる。
なお、補修用シート10は、段ボール、気泡緩衝材等の補修用シート10と接着しない緩衝材を介在させて複数積層して搬送することが好ましい。
3.床版防水構造の補修方法
次に、床版とアスファルト舗装体との間に形成されたウレタン樹脂を含む防水層を備えた床版防水構造の補修方法について説明する。図2(A)乃至図2(C)は床版防水構造の補修方法の過程を説明する断面図である。図3(A)乃至図3(C)床版防水構造の補修方法の他の過程を説明する断面図である。
以下に説明する床版防水構造の補修方法は、床版防水構造の破損箇所およびその周辺部において床版防水構造を剥がす工程と、上述した補修用シート10を敷設する工程と、アスファルト舗装体を舗設する工程と、を有する。
床版防水構造の補修方法が有する各工程の詳細な説明に先立って、図2(A)を参照しつつ補修対象となる床版防水構造について説明する。
補修対象となる床版防水構造は、床版11とアスファルト舗装体12との間に形成されており、少なくとも防水層13を有する。その他、接着層等の公知の層が備えられていてもよい。
床版11は道路や橋等の床版である。床版11を構成する材料は特に限定されない。床版11を構成する材料の例としては、コンクリートや鋼などがあり、コンクリートと鋼とを合成させたものもある。
アスファルト舗装体12は公知のアスファルト舗装体である。アスファルト舗装体12は、例えば20mm以上200mm以下程度の厚さに舗設されている。
防水層13の構成材料や好ましい厚さ等は防水層1と同様である。
このような床版防水構造において破損が生じた場合、まず、図2(B)に示したように床版防水構造の破損箇所およびその周辺部を防水層の床版防水構造を剥がす。このとき、どの程度の範囲を剥がすかについては、目視や打音検査等の従来と同様の方法によって判断する。また、このとき、図2(B)に示したように、既存の防水層13を一部残すようにして剥がすことが好ましい。一部残した既存の防水層13に重ねて補修用シート10を敷設することによって、補修用シート10(防水層1)と既存の防水層13との間から漏水することを抑制できる。
上記のようにして床版防水構造を剥がした箇所に、図2(C)に示したように、プライマー樹脂層21を形成する。プライマー樹脂層21は、床版11の表面を均して床版11および後で形成する接着層22とを接着させるための層である。プライマー樹脂層21を構成する組成物としては、例えば、エポキシ系樹脂を含む接着剤組成物を挙げることができる。
プライマー樹脂層21は、床版11の表面に上述したプライマー樹脂層21を構成する組成物を塗布または散布することよって形成できる。プライマー樹脂層21は、例えば、スプレー塗布、ローラー刷毛塗布、刷毛塗布などによって形成できる。また、プライマー樹脂層21は、例えば、塗布量が0.1kg/m以上0.5kg/m以下、好ましくは0.1kg/m以上0.3kg/m以下で床版11の表面に上記組成物を塗布または散布することによって形成できる。塗布量が0.1kg/m以上であれば、吹付けムラや塗りムラの発生が少なく、良好な防水性能を得やすくなる。一方、塗布量が0.5kg/m以下であれば、生産コストが割高になることを抑制し、且つ、材料の混合や塗布にかかる手間を少なくすることができる。
プライマー樹脂層21を形成する際、上記組成物を塗布または散布する前に、床版11の表面からコンクリートのレイタンスなどの脆弱層や油などの異物、また補修床版における以前の防水層などはきれいに除去しておくことが好ましい。このような場合は、床版11の表面を、研掃、清掃、洗浄、および乾燥後、必要に応じて、ショットブラスト処理を行うことが好ましい。
またプライマー樹脂層21は、補修床版などにおける切削不陸や欠損部などを平滑にすることが好ましい。このような方法としては、プライマー樹脂層21を構成する組成物に硅砂などの骨材を予め混合し不陸部を補修する方法や、プライマー樹脂層21を構成する組成物を塗布した後に、その上から硅砂などの骨材を散布し、その上にさらにプライマー樹脂層21を構成する組成物を塗布する方法等がある。このようにしてプライマー樹脂層21をできるだけ平坦に形成することによって、以下に説明する接着層22を構成する組成物を平滑かつ均一に所定量で散布または塗布しやすくなる。
次に、図3(A)に示したように接着層22を形成する。接着層22はプライマー樹脂層21と補修用シート10とを接着させるための層である。接着層22は上記のようにして形成されたプライマー樹脂層21上に形成する。接着層22を構成する組成物としては、接着層2と同様に、ウレタン系樹脂(ウレア樹脂、ウレタン樹脂、ウレアウレタン樹脂等)を含む接着剤組成物を挙げることができる。接着層22は、接着層22を構成する組成物を、スプレー塗布、ローラー塗布、刷毛塗布などによって塗布して硬化させることで形成することができる。
次に、図3(B)に示したように補修用シート10を敷設する。補修用シート10は、防水層1が床版11側、熱可塑性樹脂層3がアスファルト舗装体23(図3(C)参照)となるようにして敷設する。接着層22が硬化(乾燥)する前に補修用シート10を敷設することによって、接着層22と補修用シート10とを接着することができる。また、補修用シート10は、敷設する箇所(補修箇所)の大きさに合わせて事前に裁断しておくことが好ましい。なお、補修用シート10を敷設する箇所が大きい場合は、補修用シート10を複数並べて敷設することができる。このとき、隣り合う補修用シート10同士の間から漏水することを抑制するため、隣り合う補修用シート10は端部を重ねて敷設することが好ましい。
最後に、図3(C)に示したように補修用シート10上にアスファルト舗装体23を舗設する。アスファルト舗装体23は、既存のアスファルト舗装体12の表面と面一になるように舗設する。アスファルト舗装体23の構成材料はアスファルト舗装体12と同様である。アスファルト舗装体23は、施工時の環境や構成材料などによって異なるが、例えば110℃以上や130℃以上、または180℃以上の温度で加熱転圧して舗設される。このとき、アスファルト舗装体23の下部にある熱可塑性樹脂層3は少なくとも一部が一時的に溶融してアスファルト舗装体23に絡んで硬化することで、熱可塑性樹脂層3をアスファルト舗装体23に簡易かつ強固に接着させることができる。
上述したようにして、床版防水構造の補修方法によれば、防水層としてウレタン系樹脂を用いた床版防水構造の破損箇所を補修する場合において、吹き付け機車両等の大型車を用いずに短時間で補修することができ、緊急での対応も可能となる。このような床版防水構造の補修方法は、小規模な破損箇所を補修する場合に特に好適である。また、床版防水構造補修用シートが既存の床版防水構造と同様にウレタン系樹脂を用いた防水層を備えているので、床版防水構造の防水性能を破損前と同様の状態に戻すことができる。
1 防水層
2 接着層
3 熱可塑性樹脂層
10 床版防水構造補修用シート
11 床版
12 アスファルト舗装体
13 防水層
21 プライマー樹脂層
22 接着層
23 アスファルト舗装体

Claims (5)

  1. 床版とアスファルト舗装体との間に形成された、ウレタン系樹脂を含む防水層を備えた床版防水構造の補修に用いる床版防水構造補修用シートであって、
    ウレタン系樹脂を含む防水層と、該防水層上に形成された接着層と、該接着層上に形成された熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂着層と、を有し、
    前記接着層が、前記防水層と前記熱可塑性樹脂層とを接着する樹脂を含んでいる、
    床版防水構造補修用シート。
  2. 前記接着層がウレタン系樹脂を含む、請求項1に記載の床版防水構造補修用シート。
  3. 床版とアスファルト舗装体との間に形成された、ウレタン系樹脂を含む防水層を備えた床版防水構造の補修に用いる床版防水構造補修用シートの製造方法であって、
    離型シート上にウレタン系樹脂を含む組成物を吹き付けて防水層を形成する工程と、
    前記防水層上に接着層を形成する工程と、
    前記接着層上に熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂着層を形成する工程と、
    前記防水層から前記離型シートを剥離する工程と、を有し、
    前記接着層が、前記防水層と前記熱可塑性樹脂着層とを接着する樹脂を含んでいる、
    床版防水構造補修用シートの製造方法。
  4. 前記接着層がウレタン系樹脂を含む、請求項3に記載の床版防水構造補修用シートの製造方法。
  5. 床版とアスファルト舗装体との間に形成された、ウレタン系樹脂を含む防水層を備えた床版防水構造の補修方法であって、
    前記床版防水構造の破損箇所およびその周辺部において前記床版防水構造を剥がす工程と、
    請求項1または2に記載の床版防水構造補修用シートを敷設する工程と、
    アスファルト舗装体を舗設する工程と、
    を有する、床版防水構造の補修方法。
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