JP2016160676A - 床版防水用シート、床版防水構造の施工方法、及び床版防水構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】施工が容易で、高い防水効果を有する床版防水用シート、その床版防水用シートを用いた床版防水構造の施工方法、及びその床版防水用シートを備えた床版防水構造を提供することを目的とする。【解決手段】熱可塑性樹脂を含む舗装接着剤層(12)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂を含み、厚さが0.05mm以上0.3mm未満である防水層(14)、及び床版接合層(16)を備える床版防水用シートである。【選択図】図1
Description
本発明は、橋梁等の床版を防水するための床版防水用シート、その床版防水シートを用いた床版防水構造の施工方法、及びその床版防水シートを備えた床版防水構造に関する。
近年、橋梁等のコンクリート床版では、雨水等の水分が浸入することによる劣化亀裂が問題となっている。この問題を解決するために、従来型のアスファルト系の工法から、耐熱性能及び長期に弾性を維持できる高性能な樹脂を用いた工法まで、各種防水層を利用した工法が考案されている。
しかし、高性能なウレタン系やアクリル系樹脂の防水層は、現場で反応硬化させるため、養生や施工に時間がかかる。したがって、新設橋梁の施工では徐々に利用されてきているが交通規制を伴う補修床板の防水には施工が簡単で安価ではあるものの、防水性能の耐久性が乏しいアスファルト塗膜系床版防水工法が主に利用されている。
例えば、特許文献1には、橋梁等のコンクリート床版上に、ウレタン系防水材層、アスファルト舗装体を積層してなる床版防水構造であって、前記ウレタン系防水材層とアスファルト舗装体が熱可塑性樹脂シートを介して接合してなることを特徴とする床版防水構造が開示されている。また、特許文献2には、下地上にウレタン樹脂を塗布して防水層を形成し、このポリウレタン系防水層の上面にウレタン系プライマーを塗布し、ウレタン系プライマーの硬化前に軟化点が35〜130℃の熱可塑性樹脂を布設し、その上に加熱アスファルトコンクリート舗装合材を舗設して、ポリウレタン系プライマー層とアスファルトコンクリート層の間に熱可塑性樹脂層を形成し、かつ熱可塑性樹脂層の一部とウレタン系プライマーの少なくとも一部を接着一体化させる舗装方法が開示されている。
また、例えば、樹脂系床版防水工法による施工時間を短縮するために、特許文献3には、熱可塑性樹脂層と樹脂系防水層を接合したシートを、床版に接着剤を介し張り合わせることが記載されている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の床版防水方法においては、コンクリート床版とアスファルト舗装体の間に配置される防水層を含む各層を、施工の際に塗布して硬化させる必要があり、施工に時間を要するという問題がある。
特許文献3に記載の補修方法においては、予め製造した複合防水シートを敷設すればよいので、施工時間を短縮できる。しかし、特許文献3に記載の複合防水シートは、十分な防水効果を得るためには、防水層を厚くする必要があり、その結果として防水シート全体が厚くなる。実際の現場では、このような厚みのある複合防水シートを床版用接着剤で張り付ける際の取り扱いは困難である。また、この厚さのシートは、特に高欄部などの立ち上げ部には密着しづらいので、十分な防水効果が得られないという問題がある。そこで本発明は、施工が容易で、高い防水効果を有する床版防水用シート及びそれを用いた床版防水構造の施工方法、及びその床版防水シートを備えた床版防水構造を提供することを目的とする。
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の層を備えることにより、施工が容易で、高い防水効果を有する床版防水用シートが得られることを見出した。すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂を含む舗装接着剤層、熱可塑性ポリウレタン系樹脂を含み、厚さが0.05mm以上0.3mm未満である防水層、及び床版接合層を備える床版防水用シートである。
また、本発明は、舗装の対象となる床版表面上に不陸調整材を施工する工程、及び前記床版防水用シートを前記不陸調整材が施工された前記床版表面の上に敷設する工程を備える床版防水構造の施工方法である。
さらに、本発明は、前記施工方法により形成された床版防水構造である。
以上のように、本発明によれば、施工が容易で、高い防水効果を有する床版防水用シート、その床版防水用シートを用いた床版防水構造の施工方法、及びその床版防水用シートを備えた床版防水構造を提供することができる。
<第1実施形態>
次に、本発明に係る床版補修用防水シートの一つの実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、第1実施形態に係る床版防水用シート10の断面図である。床版防水用シート10は、アスファルト舗装体と接する側から順に、舗装接着剤層12、防水層14、及び床版接合層16のように積層されている。なお、図1において、各層の厚みは、理解が容易なように記載されており、正確ではない。
次に、本発明に係る床版補修用防水シートの一つの実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、第1実施形態に係る床版防水用シート10の断面図である。床版防水用シート10は、アスファルト舗装体と接する側から順に、舗装接着剤層12、防水層14、及び床版接合層16のように積層されている。なお、図1において、各層の厚みは、理解が容易なように記載されており、正確ではない。
(舗装接着剤層)
舗装接着剤層12は、舗装体と防水層14とを熱により接着可能であればよい。舗装接着剤層12の融点は、好ましくは40℃以上150℃以下であり、より好ましくは、50℃以上100℃以下である。融点がこの範囲であると、アスファルト舗装体と熱により圧着が良好となる。融点が低すぎると、夏期にアスファルト舗装体が車両通行による輪荷重により、轍掘れを生じることがあり、融点が高すぎると、冬期舗設時にアスファルト舗装体と十分な接着強度が得られず、舗装体が剥がれる場合がある。舗装接着剤層12は、引張伸度が100%以上であることが好ましく、300%以上であることがより好ましい。引張伸度が低すぎると、アスファルト舗装体の変形により舗装接着剤層12が破断することがあり、好ましくない。
舗装接着剤層12は、舗装体と防水層14とを熱により接着可能であればよい。舗装接着剤層12の融点は、好ましくは40℃以上150℃以下であり、より好ましくは、50℃以上100℃以下である。融点がこの範囲であると、アスファルト舗装体と熱により圧着が良好となる。融点が低すぎると、夏期にアスファルト舗装体が車両通行による輪荷重により、轍掘れを生じることがあり、融点が高すぎると、冬期舗設時にアスファルト舗装体と十分な接着強度が得られず、舗装体が剥がれる場合がある。舗装接着剤層12は、引張伸度が100%以上であることが好ましく、300%以上であることがより好ましい。引張伸度が低すぎると、アスファルト舗装体の変形により舗装接着剤層12が破断することがあり、好ましくない。
舗装接着剤層12は、アスファルト舗装体の舗設時の熱により融着し、その後十分な接着性能を維持できる材料が好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、及びエラストマー系を例示できる。より具体的には、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレンアクリル共重合体(EAA)、及びスチレンブチレンエラストマー(SBS)等を挙げることができる。長期耐久性の観点から耐水性を備えたエラストマー系樹脂であることが好ましく、その中でも、舗装合材との接着力が優れるので、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が特に好ましい。
従来、樹脂系防水層とアスファルト舗装体を接合するために、熱可塑性樹脂の粉末やペレットをウレタン系防水材層表面に散布する方法が試みられている。しかし、アスファルト舗装のためにトラックやフィニッシャーが面上を走行するので、樹脂の飛散や偏りが生じ、表面に樹脂を均一に分散させにくい。その結果として樹脂系防水層とアスファルト舗装体について、十分な接合が達成されにくくなる。また特許文献1に見られる通気孔を有する熱可塑性接着シートは、アスファルト舗設時、表面に水が滞留しても発見されにくく、アスファルト舗装体と防水層の接着を阻害し、供用時にアスファルト舗装体が破壊されるなどの不具合が生じることがある。本実施形態においては、舗装接着剤層12は、床版防水用シートを構成する層として防水層14と一体となったシートなので、このような問題はない。
舗装接着剤層12の厚さは、好ましくは0.3mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.4mm以上0.8mm以下である。舗装接着剤層12が薄すぎると、アスファルト舗装体との良好な接着性が維持できず、加重や加熱時に熱可塑性樹脂が破壊されることがある。一方、舗装接着剤層12が厚すぎると、均一な厚みの舗装接着剤層を形成することが困難で、取り扱いも難しくなるので、好ましくない。
(防水層)
防水層14は、融点が、好ましくは80℃以上250℃以下、より好ましくは120℃以上200℃以下である。融点が低すぎると、舗装合材の熱により、穴が開きやすくなることがあり、融点が高すぎると、フィルム状にするのが難しくなる場合がある。
防水層14は、融点が、好ましくは80℃以上250℃以下、より好ましくは120℃以上200℃以下である。融点が低すぎると、舗装合材の熱により、穴が開きやすくなることがあり、融点が高すぎると、フィルム状にするのが難しくなる場合がある。
防水層14は、熱可塑性ポリウレタン系樹脂を含む。熱可塑性ポリウレタン系樹脂を用いることにより、防水層を薄くすることができ、且つ防水効果も高くすることができる。防水層14が薄くなることにより、結果として、床版防水用シートの厚さを薄くすることができ、取り扱いも容易となる。
防水層14の厚さは、0.05mm以上0.3mm未満であり、好ましくは0.1mm以上0.3mm未満である。厚みが0.3mm未満であれば、均一な厚みの防水層14を形成することが容易であり、取り扱いも容易である。
(床版接合層)
防水層14は、床版接合層16と接している。床版接合層16は、床版と防水層14とを接着させるものであり、防水層、コンクリートに接着性の良好なものであって、且つ、コンクリートから拡散するアルカリ成分により粘着性が失われなければ、その種類は特に限定されるものではない。通常、溶剤型アクリル系粘着剤、溶剤型天然ゴム系粘着剤、溶剤型ブロックコポリマー系粘着剤、エマルジョン型アクリル系粘着剤、又はホットメルト型アクリル系粘着剤等を用いることができる。耐久性の面から、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。床版や防水層14との接着力は、道路橋床版防水便覧(社団法人日本道路協会発行,平成19年3月,128〜131頁)に記載されている23℃での引張接着強度が0.6N/mm2以上であることが好ましい。床版接合層16は、夏期における高温時、例えば50℃でも十分な接着性能を有し、コンクリート床版から生じる水蒸気に耐えうる耐水性及び接着性能を有するものが好ましい。このような性能は、長期にわたり、床版からの水分によって接合層が加水分解されず、夏期においても床版からの蒸気圧により、防水層と剥がれないことを意味する。
防水層14は、床版接合層16と接している。床版接合層16は、床版と防水層14とを接着させるものであり、防水層、コンクリートに接着性の良好なものであって、且つ、コンクリートから拡散するアルカリ成分により粘着性が失われなければ、その種類は特に限定されるものではない。通常、溶剤型アクリル系粘着剤、溶剤型天然ゴム系粘着剤、溶剤型ブロックコポリマー系粘着剤、エマルジョン型アクリル系粘着剤、又はホットメルト型アクリル系粘着剤等を用いることができる。耐久性の面から、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。床版や防水層14との接着力は、道路橋床版防水便覧(社団法人日本道路協会発行,平成19年3月,128〜131頁)に記載されている23℃での引張接着強度が0.6N/mm2以上であることが好ましい。床版接合層16は、夏期における高温時、例えば50℃でも十分な接着性能を有し、コンクリート床版から生じる水蒸気に耐えうる耐水性及び接着性能を有するものが好ましい。このような性能は、長期にわたり、床版からの水分によって接合層が加水分解されず、夏期においても床版からの蒸気圧により、防水層と剥がれないことを意味する。
床版接合層16の厚さは、好ましくは0.05〜5.0mmであり、より好ましくは0.1〜1.5mmである。0.05mm未満では、せん断接着力及び引張接着力が高まるが、下地との空間や粗面との接着性が悪くなることがある。5.0mmを超えると、下地の凹凸への追従性がよく、密着性は向上するが、輪過重負荷に対し粘着材の強度が悪影響を及ぼすことがある。
本発明においては、床版接合層16も防水層14と一体となったシートであるので、施工時間を短縮できる。特許文献3などに記載されている従来法においては、施工する段階において、コンクリート床版の上に床版接着層として接着剤組成物を塗布する。
床版接合層16は、図示されていない離形層で覆われていてもよい。離形層は、公知のものを用いることができる。離形層は、床版防水用シート10の敷設直前まで、床版接合層16を保護し、敷設する際には容易に剥がすことができる。
床版防水用シートと床版及び舗装との引張接着強度は、中日本高速道路発行「構造物施工管理要綱」規格値に従い、23℃においては、0.6N/mm2以上であることが好ましく、50℃においては、0.07N/mm2以上であることが好ましい。床版防水用シートと床版及び舗装とのせん断強度は、23℃においては、0.15N/mm2であることが好ましく、50℃においては、0.01N/mm2以上であることが好ましく、舗装の耐久性を向上する意味において0.03N/mm2以上であることがより好ましい。
<第2実施形態>
次に、本発明に係る床版防水用シートの別の実施形態を、図2に基づいて説明する。第2実施形態に係る床版防水用シート20は、舗装接着剤層12と防水層14との間に、高融点保護層13がある以外は、第1実施形態に係る床版防水用シートと同様である。したがって、高融点保護層13以外の説明は、省略する。なお、図2において、各層の厚みは、理解が容易なように記載されており、正確ではない。
次に、本発明に係る床版防水用シートの別の実施形態を、図2に基づいて説明する。第2実施形態に係る床版防水用シート20は、舗装接着剤層12と防水層14との間に、高融点保護層13がある以外は、第1実施形態に係る床版防水用シートと同様である。したがって、高融点保護層13以外の説明は、省略する。なお、図2において、各層の厚みは、理解が容易なように記載されており、正確ではない。
(高融点保護層)
床版防水用シート20は、舗装接着剤層12と防水層14との間に、高融点保護層13を備える。高融点保護層13は、舗装接着剤層12よりも融点が高い。高融点保護層13は、融点が80℃以上250℃以下であるのが好ましく、80℃以上150℃以下であるのがより好ましい。
床版防水用シート20は、舗装接着剤層12と防水層14との間に、高融点保護層13を備える。高融点保護層13は、舗装接着剤層12よりも融点が高い。高融点保護層13は、融点が80℃以上250℃以下であるのが好ましく、80℃以上150℃以下であるのがより好ましい。
高融点保護層13は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、及びエラストマー系を例示できる。より具体的には、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレンアクリル共重合体(EAA)、及びスチレンブチレンエラストマー(SBS)等を挙げることができる。高融点保護層13は、防水層と舗装接着剤層の中間に位置するとの観点から、両方の材料と接着性が高い樹脂であることが好ましい。したがって、エラストマー系樹脂であることが好ましく、その中で、特にエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)であることが好ましい。
高融点保護層13は、防水シートの形状性を付与するため防水層14と舗装接着剤層12より曲げ強度が高いのが好ましい。また、伸び特性はひび割れ開閉に追随し、防水層14とのせん断力が発生しないために、防水層14と同程度のものが好ましい。
高融点保護層13は、アスファルト舗装体を圧着させる際に溶融しにくく、高温で鋭角な舗装骨材の防水層14への侵入を防ぐ保護材の役目を果たす。
高融点保護層13の厚さは、好ましくは0.05mm以上0.3mm以下、より好ましくは0.1mm以上0.2mm以下である。高融点保護層13が薄すぎると、舗設時の保護層としての効果が低く、一方、高融点保護層13が厚すぎると、薄膜防水シートとしての特徴がなくなり高欄などの立ち上がり部での施工が困難になることがある。
<施工方法>
本発明に係る床版防水用シートは、例えば、橋梁等の新設の際や、橋梁等の補修をする際に利用することができる。特に、本発明に係る床版防水用シートは、薄く取り扱いが容易で、且つ短時間で敷設できるので、交通規制を伴う床版補修に有用である。
本発明に係る床版防水用シートは、例えば、橋梁等の新設の際や、橋梁等の補修をする際に利用することができる。特に、本発明に係る床版防水用シートは、薄く取り扱いが容易で、且つ短時間で敷設できるので、交通規制を伴う床版補修に有用である。
橋梁等の床版補修の際は、例えば、従来は切削機によってコンクリート床版上のアスファルト舗装を床版面まで切削した後、既設の残存した防水層やアスファルト分を除去し、劣化した床版を補修し、再度アスファルト系の塗膜で防水を行っている。この方法は容易に施工できるが、凹凸面のある床版面の防水が十分にできないのが現状で、数年後には再度床版層の補修が必要になる。
かかる問題から近年、切削機による切削はアスファルト舗装体をある程度残した状態までとし、バックフォーなどの掘削機で平坦な床版面を得、その後、表面の残存アスファルトやアスファルト系プライマーなどのアスファルト残存物をショットブラストやウォータジェットなどにより除去し、平坦で無垢なコンクリート床版面を得る方法が行われている。かかるのち特許文献1に示された耐久性のある床版防水工などが行われている。この方法は耐久性のある防水層が得られるが、前述のように、下地処理の時間及び床版防水工の時間を多大に要し、長時間の交通規制が行えない場合などには、施工できない。例えば、欧米では橋梁の車線数が多く、交通規制を行っても2車線以上確保できるため激しい交通渋滞もおきにくく、長期間、床版防水の補修作業を行えることもある。しかし、車線数の少ない日本などの橋梁は常に交通渋滞を招く可能性があり、床版補修の工事は短時間で行わなければならない。
本発明に係る床版防水構造の施工方法においては、舗装の対象となる床版表面上に不陸調整材を施工する工程、及び床版防水用シートを不陸調整材が施工された床版表面の上に敷設する工程を備えるので、ショットブラストやウォータジェットなどによりアスファルト残存物を除去する必要がない。そして、床版防水用シートには、予め床版接合層を備えているので、短時間に容易に施工することができる。
本発明に係る床版防水構造の施工方法の一つ実施形態(施工実施形態1)について説明する。まず、既設のアスファルト舗装体を切削機などにより切削する。さらにバックフォーなどの掘削機を用いてもよい。このようにして床版表面上のアスファルト舗装体を除去する。得られた床版表面上には、アスファルト残存物が存在してもよい。アスファルト残存物としては、例えば、残存アスファルト及びアスファルト系プライマーが挙げられる。
得られた床版表面上に、例えばエポキシアスファルトの不陸調整材をフィニシャーにより下地切削面の凹凸が平滑になる厚さに敷設し、その後鉄輪などの転圧機によりエポキシアスファルトを締め固める。エポキシアスファルトの冷却後、床版用防水シートを敷設するだけで直ちに防水層を形成できる。不陸調整材表面に多少の凹凸があったとしても、本発明に係る床版防水用シートは薄く、凹凸面に高い接着力で密着するので、不陸調整材により厳密に平滑にする必要がない。一般に防水シートを床版に設置するときは、床版表面が滑らかで凹凸がないことが求められる。これはシートを設置した下面に空気が入ると、そこに床版面からの水蒸気がたまり、徐々に防水シートが剥離すると考えられるからである。
また、本発明に係る床版防水構造の施工方法の他の実施形態(施工実施形態2)においては、床版表面上の既設アスファルト舗装体を除去し、床版の表面を主として露出させる。すなわち、床版と接する位置まで、又は床版の表層部を削って床版の表面を露出させる。この際、大部分の床版表面が露出していればよく、全ての床版表面が露出している必要はない。この場合は、アスファルト残存物は、床版表面には殆ど存在しないのが好ましい。床版の表面を露出させた後は施工実施形態1と同様に不陸調整材を施工して床版用防水シートを敷設する。
不陸調整材としては、例えば、ラテックス変性モルタル、エポキシアスファルト合材、グースアスファルト合材、アクリル系樹脂モルタルなどの樹脂モルタル、及びエポキシやアクリルなどの熱硬化性樹脂が挙げられる。不陸の補修に使われる樹脂モルタルや熱硬化性樹脂は、一般に硬化に時間がかかり、下地の不純物を完全に取り除かなければならない。一方、エポキシアスファルト合材は短時間で施工でき、且つ下地の不純物を完全に取り除く必要はなく、アスファルト残存物との接着性にも優れているので、施工実施形態1において好ましく用いられる。また、一般的には、床版の表層部を削るのは、床版の強度等が落ちるので好ましくないと考えられているが、ラテックス変性モルタルは床板表層部を切削しても、薄膜で構造体として回復できる材料であり、靱性がありひび割れしにくく、耐久性のある短時間施工の不陸調整材として使用できる。したがって、施工実施形態2において好ましく用いられる。不陸調整材は、厚さが5〜30mm、好ましくは10〜20mmの厚さで施工することができる。
本発明に係る床版防水構造の施工方法においては、床版防水用シートを敷設する際、端部を約90℃に折り曲げて、床版面と橋梁の立ち上げ部を覆うように敷設してもよい。従来の防水シートは、防水層が厚く、仮に折り曲げて橋梁の立ち上げ部に敷設したとしても、立ち上げ部に密着しにくく、十分な防水効果が得られない。本発明に係る床版防水用シートは、薄く且つ密着性に優れているので、立ち上げ部においても優れた防水効果を有する。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
(実施例1〜4,比較例1)
市販のJIS規格の舗道板(30×30×6cm)のコンクリート表面をグラインダーなどにより表面のレイタンスを除去し、次に、表1に示される実施例1〜4、比較例1の床版防水用シートを敷設した。この床版防水用シートの上に、常法により180℃で加熱されたアスファルト合材(ストーンマスチックアスファルト;厚さ4cm)を施し、床版防水構造を有する試作品を得た。
市販のJIS規格の舗道板(30×30×6cm)のコンクリート表面をグラインダーなどにより表面のレイタンスを除去し、次に、表1に示される実施例1〜4、比較例1の床版防水用シートを敷設した。この床版防水用シートの上に、常法により180℃で加熱されたアスファルト合材(ストーンマスチックアスファルト;厚さ4cm)を施し、床版防水構造を有する試作品を得た。
得られた各試作品につき、以下の試験を行った。結果を表2に示す。
引張接着強度:
道路橋床版防水便覧(社団法人日本道路協会発行,平成19年3月,128〜131頁)の記載に従って、+50℃及び+23℃における、床版防水用シートと床版及び舗装との引張接着強度を測定した。なお、中日本高速道路発行「構造物施工管理要綱」規格値は、23℃においては、0.6N/mm2であり、50℃においては、0.07N/mm2である。
せん断強度:
道路橋床版防水便覧(社団法人日本道路協会発行,平成19年3月,132〜134頁)の記載に従って、+50℃及び+23℃における、床版防水用シートと床版及び舗装とのせん断強度を測定した。なお、中日本高速道路発行「構造物施工管理要綱」規格値は、23℃においては、0.15N/mm2であり、50℃においては、0.01N/mm2である。
防水性:
道路橋床版防水便覧(社団法人日本道路協会発行,平成19年3月,153〜155頁)の記載に従って、ひび割れ開閉負荷試験用の試験体を作成し、480万回のひび割れ開閉試験を実施後、防水試験II法により防水試験を行った。
引張接着強度:
道路橋床版防水便覧(社団法人日本道路協会発行,平成19年3月,128〜131頁)の記載に従って、+50℃及び+23℃における、床版防水用シートと床版及び舗装との引張接着強度を測定した。なお、中日本高速道路発行「構造物施工管理要綱」規格値は、23℃においては、0.6N/mm2であり、50℃においては、0.07N/mm2である。
せん断強度:
道路橋床版防水便覧(社団法人日本道路協会発行,平成19年3月,132〜134頁)の記載に従って、+50℃及び+23℃における、床版防水用シートと床版及び舗装とのせん断強度を測定した。なお、中日本高速道路発行「構造物施工管理要綱」規格値は、23℃においては、0.15N/mm2であり、50℃においては、0.01N/mm2である。
防水性:
道路橋床版防水便覧(社団法人日本道路協会発行,平成19年3月,153〜155頁)の記載に従って、ひび割れ開閉負荷試験用の試験体を作成し、480万回のひび割れ開閉試験を実施後、防水試験II法により防水試験を行った。
(実施例5)
市販のJIS規格の舗道板(30×30×6cm)のコンクリート表面をグラインダーなどにより表面を削り、実際の切削床版に模した、深さ5mm程度の不陸形状の鋪道板を作成した。次に、不陸調整材としてエポキシアスファルト合材をその表面に20mm舗設し、養生後、表1に示される実施例2の床版防水用シートを敷設した。この床版防水用シートの上に、常法により180℃で加熱されたアスファルト合材(ストーンマスチックアスファルト;厚さ4cm)を転圧し、床版防水構造を有する試作品を得た。引張接着強度とせん断強度につき、実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
市販のJIS規格の舗道板(30×30×6cm)のコンクリート表面をグラインダーなどにより表面を削り、実際の切削床版に模した、深さ5mm程度の不陸形状の鋪道板を作成した。次に、不陸調整材としてエポキシアスファルト合材をその表面に20mm舗設し、養生後、表1に示される実施例2の床版防水用シートを敷設した。この床版防水用シートの上に、常法により180℃で加熱されたアスファルト合材(ストーンマスチックアスファルト;厚さ4cm)を転圧し、床版防水構造を有する試作品を得た。引張接着強度とせん断強度につき、実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
(実施例6)
不陸調整材としてラテックス変性モルタルを用いた以外は、実施例5と同様にして床版防水構造を有する試作品を得た。引張接着強度とせん断強度につき、実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
不陸調整材としてラテックス変性モルタルを用いた以外は、実施例5と同様にして床版防水構造を有する試作品を得た。引張接着強度とせん断強度につき、実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
(実施例7)
不陸調整材としてアクリル系樹脂モルタルを用い、10mm塗布した以外は、実施例5と同様にして床版防水構造を有する試作品を得た。引張接着強度とせん断強度につき、実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
不陸調整材としてアクリル系樹脂モルタルを用い、10mm塗布した以外は、実施例5と同様にして床版防水構造を有する試作品を得た。引張接着強度とせん断強度につき、実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
(実施例8,比較例2)
施工時間及び施工に要する人役を調査した。
施工時間及び施工に要する人役を調査した。
実施例8においては、表1の実施例1の床版防水用シートを使用し、試験ヤード(4mx5m)の模擬舗装床版に敷設する施工時間と作業に必要となる人数を調査した。具体的には、舗装された舗装合材を切削し、不陸調整材としてエポキシアスファルト合材を舗設した後、防水工を行った。その後必要な養生時間経過後舗装合材4cmの転圧を行った。具体的な工程及び結果を表4に示す。
比較例2においては、特許文献2に記載されているウレタン樹脂系吹付防水の試験施工に従い、試験ヤード(4mx5m)の模擬舗装床版に防水層を形成する施工時間と作業に必要となる人数を調査した。具体的な工程及び結果を表4に示す。
本発明に係る床版用防水シートを用いると、切削機で切削後簡単な清掃で次工程の不陸調整工に移行できる。また、舗装接着材工の手間なく高性能床版防水を実現できる。実施例8の結果から、舗装切削から基層転圧まで合計約280分、4人程度で施工できた。一方、比較例2の結果から、ウレタン系の吹付工法は、吹付工程に人数をとられ、さらに反応養生などの施工インターバルの為、合計約510分、8人程度で施工できた。実施例8と比較例2との対比から、本発明に係る床版防水シートを利用しての工法は、短時間に人役も少なく施工できることが分かる。
10 床版防水用シート
12 舗装接着剤層
13 高融点保護層
14 防水層
16 床版接合層
20 床版防水用シート
12 舗装接着剤層
13 高融点保護層
14 防水層
16 床版接合層
20 床版防水用シート
Claims (10)
- 熱可塑性樹脂を含む舗装接着剤層、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂を含み、厚さが0.05mm以上0.3mm未満である防水層、及び
床版接合層
を備えることを特徴とする床版防水用シート。 - 前記舗装接着剤層と前記防水層との間に、前記舗装接着剤層よりも融点が高い高融点保護層を備える請求項1記載の床版防水用シート。
- 前記床版接合層が、アクリル系粘着材を含む請求項1又は2記載の床版防水用シート。
- 舗装の対象となる床版表面上に不陸調整材を施工する工程、及び
請求項1乃至3いずれか記載の床版防水用シートを前記不陸調整材が施工された前記床版表面の上に敷設する工程
を備えることを特徴とする床版防水構造の施工方法。 - 既設の舗装体を前記床版表面まで除去して、前記床版表面に前記不陸調整材を施工する請求項4記載の床版防水構造の施工方法。
- 前記不陸調整材がラテックス変性モルタルである請求項4又は5記載の床版防水構造の施工方法。
- 既設の舗装体を前記床版表面まで除去して、前記床版表面にアスファルト残存物が存在する状態で、前記不陸調整材を施工する請求項4記載の床版防水構造の施工方法。
- 前記不陸調整材がエポキシアスファルト合材である請求項4又は7記載の床版防水構造の施工方法。
- 請求項1乃至3いずれか記載の床版防水用シートの端部を折り曲げ高欄の立ち上げ部を覆って敷設する請求項4乃至8いずれか記載の床版防水構造の施工方法。
- 請求項4乃至9いずれか記載の施工方法により形成されたことを特徴とする床版防水構造。
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CN109056525A (zh) * | 2018-09-06 | 2018-12-21 | 宁波路宝科技实业集团有限公司 | 一种钢桥面复合式铺装结构及铺装方法 |
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CN112763321A (zh) * | 2020-12-30 | 2021-05-07 | 江苏省建筑工程质量检测中心有限公司 | 一种试验箱及防水涂料耐根穿刺性能试验方法和其在种植屋面检测的应用 |
-
2015
- 2015-03-03 JP JP2015041182A patent/JP2016160676A/ja active Pending
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