JP2015031779A - 像振れ補正装置およびその制御方法、レンズ鏡筒、光学機器、並びに撮像装置 - Google Patents

像振れ補正装置およびその制御方法、レンズ鏡筒、光学機器、並びに撮像装置 Download PDF

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Abstract

【課題】パンニング等により大きな揺れが生じた場合でも安定した像振れ補正、および広い周波数帯域での像振れ補正装置を提供する。【解決手段】カメラ101のCPU105は角速度計103の出力を取得し、振れ補正部108により像振れ補正を行う。角度1算出部110は、HPF109によりオフセット成分を除去した信号を積分して角度1を算出する。角速度減算量算出部115は、角速度計103の出力から第1オフセットを減算した信号と、角度2算出部117の出力から第2オフセットを減算した信号に基づいて角速度減算量を演算する。角度2算出部117は、角速度計103の出力から角速度減算量を減算した信号を積分して角度2を算出する。CPU105はレリーズSW104の操作前には角度1に基づく補正量を用いて像振れ補正を行い、レリーズSW104が操作された後では角度2に基づく補正量を用いて像振れ補正を行う。【選択図】図2

Description

本発明は、手振れ等の振れによる画像振れを補正する像振れ補正技術に関し、振れの低周波成分を円滑に補正する処理に関するものである。
手振れ等による像振れを防ぐ像振れ補正装置を搭載したカメラでは、シャッタレリーズ時点で手振れが起きても像振れの無い撮影が可能である。手振れ等によるカメラの角度振れが検出され、検出値に応じて像振れ補正用レンズ(以下、補正レンズという)が駆動される。その際、カメラ振動を正確に検出して振れによる光軸変化を補正することが要件となる。原理的には角速度等の検出結果を得る振動検出部と、演算処理結果に基づいて補正レンズを変位させる駆動制御部がカメラに搭載され、画像振れが抑制される。
カメラ振動を検出するセンサの出力信号には、センサの個体差による基準電圧のバラツキ等の直流成分が含まれ、温度変化によってドリフトしていく。センサ出力に低周波成分ノイズが含まれる場合、補正精度が低下する可能性がある。そこで、オフセット成分を除去するために、HPF(ハイパスフィルタ)によってセンサの出力信号から低周波成分を除去し、像振れ補正用信号を得ることが一般的に行われている。
また、パンニングまたはチルティングのように、撮像装置を一方向に比較的長時間に亘って移動させる動作をユーザが行う場合、センサの出力信号は低周波成分を多く含むので、像振れ補正を行う際、低周波成分を減衰させる必要がある。角速度及び角速度を積分した角度のデータに基づいて、パンニングまたはチルティングの判定を行い、パンニングまたはチルティングに適した補正特性に切り替える制御が知られている。HPFや積分フィルタのカットオフ周波数を高域側に変移させることで、低域周波数に対しては像振れ補正が応答しないように制御が行われる。特許文献1には、低域周波数の応答を抑制しつつ、高域周波数の像振れ補正を行える、パンニング状態またはチルティング状態での像振れ補正制御が開示されている。特許文献2には、撮像(露光)中にHPF処理を行わず、撮像中のオフセットを固定にして防振制御を行うことが開示されている。
特開平5−323436号公報 特開平10−010596号公報
オフセット成分を除去するためにHPFを使用して、低周波成分を減衰させる従来の構成では以下のような問題がある。
角速度計の出力に基づいて像振れ補正を行う場合、角速度計の出力に低周波数のノイズ成分が含まれていると、実際の振れに対して適切でない補正が行われてしまう。また、パンニング等において、2次HPFを含んだフィルタ特性の影響を受ける可能性がある。パンニング等による揺れの発生で大きな振幅の低周波成分が減衰され、例えばパンニング終了時にパンニング方向とは逆方向の信号が生じる(いわゆる揺り戻し現象)。この信号はその後、ゆっくりとゼロに収束していくが、この信号に基づいて像振れ補正を行った場合、実際の撮像装置の振れとは異なる信号によって補正量の演算が行われてしまう。よって、補正精度が低下する可能性がある。
HPFを含むフィルタ構成にて、HPFのカットオフ周波数を低く設定すれば、撮影者の体の揺れ等に伴う低周波成分の像振れ補正の性能を向上させることはできる。この場合、パンニング等の大きな揺れが生じた後で、揺り戻しの信号の大きさとゼロに収束するまでの時間が大きくなるという問題がある。従って、撮像装置の揺れが大きくならないように、撮影者がしっかりとカメラを構えて撮影した状態でしか適切な像振れ補正効果が得られないという課題がある。
また、特許文献2に開示の技術では、撮像直前に角速度のオフセットを固定する場合、固定した角速度のオフセットに誤差が生じると、実際の手振れとは異なる状態で補正が行われてしまう。つまり、撮像直前の角速度にオフセット誤差が生じた場合、撮像中はオフセット誤差分の角速度を、手振れ成分の信号に加算し続けた状態で像振れ補正が実行される。このため、像振れ補正が意図しない方向で行われると、補正効果が低下する。
本発明の目的は、パンニング等により大きな揺れが生じた場合でも安定した像振れ補正、および広い周波数帯域での像振れ補正を実現することである。
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、装置の振れを検出する振れ検出手段と、前記振れ検出手段の出力する振れ検出信号を取得して像振れ補正量を算出する演算手段と、前記演算手段により算出された前記像振れ補正量に従って像振れを補正する振れ補正手段と、を備える。前記演算手段は、前記振れ検出信号から、第1オフセットを算出する第1オフセット算出手段および第2オフセットを算出する第2オフセット算出手段と、前記振れ検出信号から前記第1オフセットを減算した信号、および前記像振れ補正量から前記第2オフセットを減算した信号を取得して減算量を算出する減算量算出手段を有しており、前記演算手段は、前記振れ検出信号から、前記減算量算出手段が算出した減算量を減算した信号を積分することで前記像振れ補正量を算出する。
本発明によれば、パンニング等の大きな揺れが生じた場合でも、安定した像振れ補正、および広い周波数帯域での像振れ補正を実現できる。
本発明に係る像振れ補正に関する振れ方向の説明図である。 本発明の第1実施形態に係る撮像装置の上面図と制御ブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る減算量算出部の説明図である。 本発明の第1実施形態に係る振れ補正量算出処理の説明図である。 本発明の第1実施形態に係る、撮像中と撮像中以外の期間での振れ補正量算出処理の説明図である。 本発明の第1実施形態に係るフィルタのゲイン特性の説明図である。 本発明の第1実施形態に係る像振れ補正を説明するフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る撮像装置の上面図と制御ブロック図である。 本発明の第3実施形態に係る撮像装置の上面図と制御ブロック図である。 本発明の第3実施形態に係る揺れ判定部の説明図である。 本発明の第3実施形態に係る振れ補正量算出処理の説明図である。 本発明の第3実施形態に係る角速度減算処理の説明図である。 本発明の第3実施形態に係る振れ補正量算出時の角速度減算処理を説明する図である。 本発明の第3実施形態に係る振れ補正量算出の角度算出結果を説明するための図である。 本発明の第4実施形態に係る撮像装置の上面図と制御ブロック図である。
本発明の各実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本発明は、デジタル一眼レフカメラに装着される交換レンズやレンズ鏡筒のような光学機器、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、Webカメラ等の撮影装置、携帯電話やタブレット端末等の撮影装置を具備する電子機器に適用できる。
まず、像振れ補正装置に使用する角度算出フィルタ(後述の角度算出部に含まれる)について説明する。角速度計の出力をもとに像振れ補正を行う場合に使用する角度算出フィルタは、下式(1)の左辺に示すように積分器とHPFを組み合わせたフィルタである。これは、下式(1)の右辺に示すように、時定数Tのローパスフィルタ(LPF)に時定数Tを乗算した式と同じになる。
Figure 2015031779
式(1)の左辺のTはHPFの時定数を表し、式(1)の右辺のTはLPFの時定数を表す。
角速度計の出力に低周波数のノイズ成分が含まれている場合、実際の振れとは異なる補正が行われてしまい、逆に振れを誘発してしまう可能性がある。積分演算において角度信号の演算結果の飽和を防ぐため、式(1)の右辺に示す特性のフィルタを用いる。角度算出フィルタはHPFを含むので、角度算出フィルタの前段に別のHPFを接続すると、角速度計の出力から角度算出までのフィルタは2次HPFで構成される。このため、手振れの低周波帯域では大きく位相が進んでしまい、補正効果が低下する可能性がある。
以下では、撮像中に広い周波数帯域で精度の高い振れ補正を行うための構成について、各実施形態に従って順次説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る像振れ補正装置を備える撮像装置を模式的に示す斜視図である。図2は撮像装置の撮像部の構成と、CPU(中央演算処理装置)105が実行する像振れ補正処理の機能ブロックを示す。
カメラ101の本体部はレリーズボタンを備え、該ボタンの操作によるスイッチ(レリーズSW)104の開閉信号がカメラ101のCPU105に送られる。撮像光学系の光軸102(図1のz軸)上には、振れ補正部108の補正レンズと撮像素子106が位置する。角速度計103は、矢印103pで示すピッチ方向、および矢印103yで示すヨー方向の角度振れを検出して振れ検出信号を出力する振れ検出手段である。図1のx軸はz軸に直交する第1軸(ピッチ回転軸)を示し、y軸はz軸およびx軸に直交する第2軸(ヨー回転軸)を示す。
角速度計103の出力する振れ検出信号(角速度検出信号)は、CPU105に入力される。HPF(ハイパスフィルタ)109は、角速度計103の出力のDC(直流)成分をカットすることで、検出ノイズとして付加されるオフセット成分を除去する。HPF通過後の角速度信号は、第1の角度算出部(以下、角度1算出部という)110が積分して角度信号に変換する。また、CPU105はパンニングやチルティング動作を、角速度の大きさによって判定する。パンニングやチルティング動作時には、HPF109のカットオフ周波数が高域側にシフトし、低域周波数に対して像振れ補正が応答しないように設定している。以下では、パンニング動作を例にして像振れ補正処理を説明するが、チルティング動作についても同様の処理が行われるものとする。
本実施形態では、角度1算出部110を含む第1演算部による角度演算と並列に、第2の角度算出部(以下、角度2算出部という)117を含む第2演算部による角度演算が実行される。撮像(露光)前には角度1算出部110の出力に基づいて像振れが抑制され、撮像(露光)中には角度2算出部117の出力に基づいて像振れ補正制御が行われる。
角速度計103の出力は減算部116に入力され、角速度計103の出力から角速度減算量算出部(以下、減算量算出部という)115の出力値が減算される。減算部116の出力は角度2算出部117へ入力され、角度信号に変換される。減算量算出部115における演算の詳細については後述する。
角度1算出部110で演算された第1の角度(以下、角度1という)、および角度2算出部117で演算された第2の角度(以下、角度2という)は、信号切り替え部118に入力される。信号切り替え部118により、角度1に基づく第1の像振れ補正量または角度2に基づく第2の像振れ補正量が選択されて像振れ補正が行われる。信号切り替え部118には、レリーズSW104の出力が入力される。レリーズSW104の開閉信号に基づいて撮像動作が開始されたか否かが判断され、信号切り替え部118は、角度1を用いて像振れ補正を行うか、または角度2を用いて像振れ補正を行うかを選択する。信号切り替え部118が選択した角度信号は、敏感度調整部119に入力される。敏感度調整部119はズームレンズおよびフォーカスレンズの位置情報107、並びにそれらにより求まる焦点距離および撮影倍率に基づいて、信号切り替え部118の出力である角度信号を増幅し、像振れ補正の目標値を算出する。これは、フォーカスレンズやズームレンズ等に係る光学情報の変化により、振れ補正部108の振れ補正ストロークに対する撮像面での振れ補正敏感度が変化することを補正するためである。なお、ズームレンズおよびフォーカスレンズの位置情報107は、レンズ鏡筒に配置した既知の位置検出部から取得される。
敏感度調整部119が算出した像振れ補正の目標値は駆動制御部120に入力され、補正レンズを含む振れ補正部108が駆動されることで像振れ補正が行われる。振れ補正部108は、補正レンズを駆動するアクチュータおよび駆動機構部を備える。
図2に示す例では、算出された像振れ補正量に基づき、振れ補正手段として補正レンズを光軸に垂直な面内で移動させる、いわゆる光学防振が採用されている。これに限らず、像振れ補正方法には、撮像素子を光軸に垂直な面内で移動させる方法がある。また、撮像素子が出力する各撮影フレームの画像切り出し位置を変更することで、手振れ等の影響を軽減させる電子防振による方法がある。静止画撮影前に電子防振による振れ補正を行い、静止画撮影中に光学防振を行う等、複数の方法を組み合わせて像振れ補正を行うこともできる。
次に、角速度減算量の算出処理を説明する。
第1のオフセット算出部(以下、オフセット1算出部という)111は、角速度計103の出力に検出ノイズとして含まれる角速度オフセット成分を演算する。角速度オフセット成分である第1オフセットを「オフセット1」と記す。例えば、HPF通過後の角速度の振幅が小さいときや、角速度を微分した角加速度の振幅が小さいとき等のように、撮像装置に加わる手振れ振動が非常に小さいときの角速度計103の出力値が取得される。その出力値を、カットオフ周波数が非常に小さく設定されたLPFによって滑らかに繋げていく方法等により、DC成分であるオフセット1が算出される。
また、第2のオフセット算出部(以下、オフセット2算出部という)113は、角度2算出部117の出力から角度オフセット成分を演算する。角度オフセット成分である第2オフセットを「オフセット2」と記す。この場合の角度2算出部117の出力は、現時点より制御周期だけ過去の時点でのサンプリング値(以下、前回サンプリング値という)である。例えば、これをカットオフ周波数が非常に小さく設定されたLPFに通すとともに、パンニング動作時にはLPF演算を停止させることにより、パンニング動作時のオフセット誤演算を防止してオフセット2が算出される。パンニング判定処理は角速度計103の出力に基づいて行われる。CPU105は所定時間以上に亘って所定振幅以上の角速度が出力されていれば、パンニング動作が行われていると判定する。
上記のようにオフセット1(角速度オフセット)とオフセット2(角度オフセット)がそれぞれ算出される。角速度計103の出力からオフセット1を減算した信号と、減算部114が角度2算出部117で演算された角度2からオフセット2を減算した信号が減算量算出部115に入力される。
次に、減算量算出部115での算出処理を説明する。
図3は、手振れによる角速度が入力されたときの、図2に示す各部111ないし117における信号変化を例示する。図3(A)には、角速度計103の角速度出力301と、オフセット1算出部111が演算した角速度のオフセット値302を示す。角速度出力301を積分して角度を算出した信号は、図3(F)に示す信号308である。角度のオフセット値307を図3(F)に併せて示す。
パンニング動作で大きな角速度が生じた場合、角度算出フィルタの出力(信号308)は、オフセット値307から大きく外れた後、時間をかけてオフセット値307に収束する。算出された角度がオフセット値から大きく乖離した場合、信号308がオフセット値307付近に戻るまでに長い時間を要するので、像振れ補正が不能な状態になってしまう。特に、像振れ補正制御の周波数帯域を低域側まで拡大した場合、つまり角度算出フィルタのカットオフ周波数を小さく設定するほど、像振れ補正の性能が低下する時間が長くなってしまう。よって、角速度が大きい場合、補正対象としない不要な角速度成分をできるだけカットして角度算出フィルタに入力する。角度算出フィルタの出力が角度オフセット値を中心とする、ある角度範囲内で制御できるようにした方が、パンニング直後の像振れ補正性能は向上する。
そこで、本実施形態では、像振れ補正目標値である角度信号(角度2の前回サンプリング値)を用いて、角速度減算量を算出し、角速度から角速度減算量を減算した後に積分する。これにより、補正部材の可動範囲を制限して像振れ補正目標値を算出できるので、パンニング動作により大きな振れが発生した場合でも、パンニング直後に像振れ補正を実行できる。
角速度減算量については、減算量算出部115が以下の量から算出する。
・図3(A)の角速度出力301からオフセット値302を減算したオフセット除去後の角速度303(図3(B)参照)。
・角度2の前回サンプリング値から、オフセット値307を減算したオフセット除去後の角度信号309(図3(D)参照)。
・図3(G)および(H)に示すゲイン算出テーブル。
図3(G)では、横軸にオフセット除去後の角度信号309をとり、縦軸をゲイン係数αとする。オフセット除去後の角度信号309は閾値と比較され、第1閾値A1以下のとき、ゲイン係数αの値は0である。オフセット除去後の角度信号309が第2閾値A2以上のとき、ゲイン係数αの値は1である。オフセット除去後の角度信号309が閾値A1とA2との間に位置するとき、ゲイン係数αは0と1との間を線形補間した値となる。
図3(H)では、横軸にオフセット除去後の角度信号309をとり、縦軸をゲイン係数βとする。オフセット除去後の角度信号309が第3閾値B1以上のとき、ゲイン係数βの値は0である。オフセット除去後の角度信号309が第4閾値B2以下のとき、ゲイン係数βの値は1である。オフセット除去後の角度信号309が閾値B1とB2との間に位置するとき、ゲイン係数βは0と1との間を線形補間した値となる。
減算量算出部115は、上記により求めたゲイン係数αおよびβと、オフセット除去後の角速度303から角速度減算量を算出する。角速度減算量は、下式(2)および(3)により算出され、オフセット減算後の角速度303の符号に応じてゲイン係数が異なる。つまり、オフセット減算後の角速度303の符号がプラスの場合、角速度にゲイン係数αが乗算される。オフセット減算後の角速度303の符号がマイナスの場合、角速度にゲイン係数βが乗算される。
[数2式]
角速度がプラスの場合
角速度減算量 = オフセット減算後の角速度 × α ・・・(2)
[数3式]
角速度がマイナスの場合
角速度減算量 = オフセット減算後の角速度 × β ・・・(3)
図3(C)には、オフセット減算後の角速度303から、さらに角速度減算量を減算した信号304を示す。図3(E)に示す信号305は、角速度出力301から、角速度減算量を減算した信号を示す。図3(F)に示す信号306は、信号305を積分して、角度を算出した信号である。このように上記制御によれば、パンニング動作にて大きな振れが発生した場合、その影響による角速度成分をカットすることができる。その結果、パンニング直後に制御が安定するまでの収束時間が短くなるので、適切な振れ補正を行える。
次に図4を参照して、本実施形態による制御効果を説明する。
図4(A)は、撮像装置の振れ角度の波形401を示す。この場合、像振れ補正の目標角度は波形401と同様になることが好ましい。しかし、実際には像振れ補正装置の補正可能範囲に限りがあること、および振れ検出部の出力にオフセットが含まれ、そのオフセットが温度によってドリフトしてしまうという問題がある。このため、波形401に従って像振れ補正を実行することは難しい。
図4(B)は、振れ検出部(角速度計103)の角速度オフセットを、積分フィルタに通すことで生じる角度オフセット404を示す。目標となる像振れ補正角度は、角度オフセット404を中心として制御されることが望ましい。図2および図3を参照して説明した角速度減算処理を行わない場合、パンニング動作時に像振れ補正角度402が角度オフセット404から大きく離れて、再びオフセットまで戻るまでに長い時間を要してしまう。フィルタのカットオフ周波数が低周波側に設定される程、復帰に時間がかかる。角度オフセット404に戻るまでの間、像振れ補正角度402は、実際の振れ角度を示す波形401とは乖離しており、適切な補正効果が得られない。そこで、図2および図3を参照して説明した角速度減算処理を行うことで、角度403に示すように、角度オフセット404を中心として像振れ補正角を求めることができる。したがって、理想的な振れ目標値(波形401)に相似する制御量(補正角度)を算出できるので、適切な像振れ補正を行える。
上記制御においては、HPF109を用いることなく角度を算出できる。しかし、ここで算出された角度には、角速度計103の出力ノイズ成分の影響によるオフセットが含まれている。そこで、以下では、オフセットを含んだ角度2算出部117の出力に基づいて、どのように像振れ補正の制御を行うかを説明する。
図5は、撮像中と撮像中以外の各期間について、像振れ補正処理をそれぞれ説明する信号波形例を示す。波形501は、角度2算出部117が算出した角度2を示す。波形502は、角度1算出部110が算出した角度1を示す。
角度2の算出にはHPF109を使用しないため、電源投入時点から長時間が経過すると温度ドリフトの影響が現れる。例えば期間504にて角速度計103のオフセット温度ドリフトが生じ、ゼロ中心から離れた角度2が算出されることになる。
図6は、角度算出フィルタに係る周波数−ゲイン特性を示す。グラフ線601は、純積分のフィルタ特性を示し、上式(1)の左辺の1/sに相当する。グラフ線602は、角度算出フィルタ、つまり上式(1)で示す積分およびHPFのフィルタ特性を示す。グラフ線602は、低周波帯域で平坦な特性を示し、角度出力には角速度のオフセット分のゲイン特性が残ることになる。よって、図5の期間504にて、角速度計103の温度ドリフトの影響によって角速度オフセットが大きくなるにつれて、波形501に示す角度2はゼロ中心から次第に乖離していく。
角度1は、図2の角度1算出部110の出力であり、積分フィルタ(積分およびHPF)とHPF109を用いて算出される信号である。よって、グラフ線602で示す特性にHPF109の特性が加わった特性は、グラフ線603で示すように、低周波数領域でゲインが下がっている。つまり、角速度計103の出力に含まれるオフセット成分を除去することができ、ゼロ中心で角度が算出されることになる。但し、HPF109の特性が加味されるため、揺り戻し現象により、パンニング動作等による大きな振れの直後の像振れ補正効果は弱まってしまう。
よって、図5の波形502よりも波形501を用いて、像振れ補正を行う方がより適切である。しかし、波形501の場合、図6のグラフ線602に示すフィルタ特性、つまり低周波数領域にてゲインが減衰せずに平坦なゲイン特性となる。角速度のオフセット成分を含みつつ角度演算が行われることになる。よって、常に波形501を用いて像振れ補正を行うと、角速度のオフセット成分の温度ドリフトによって、波形501に含まれるオフセットも大きくなってしまう。時間経過に伴い、補正部材の可動範囲が不十分となり、可動端に行きつくと制御不能に陥る。そこで、本実施形態では、撮像中か否かを判定し、撮像期間中には波形503に示す信号を用いる。また、撮像前の準備期間中(EVF表示中や、AF(自動焦点調節)/AE(自動露出)動作中等)には、波形502に示す信号を用いる。これにより、撮像期間中は低周波数領域まで拡大したフィルタ特性により像振れ補正効果が向上する。また、撮像期間以外では、ある程度の像振れ補正効果を確保できるので、AF/AE制御の精度が向上し、撮影者によるフレーミング動作のし易さ等が向上する。
図5の時刻505は撮像開始のタイミングを示し、時刻506は撮像終了のタイミングを示す。時刻505から506の撮像期間中において、波形502に示す角度目標位置に従って制御すると、パンニング直後にて、HPF109の影響により揺り戻しが発生し得る。この場合、実際の手振れとは異なる制御が行われるため、像振れ補正効果が低下してしまう。本実施形態では、時刻505での、波形501と波形502との差分がオフセットとして算出され、波形501からこのオフセットが減算される。波形503はオフセット減算後の信号の時間的変化を示す。撮像期間中、波形503に示す信号が使用される。時刻506で撮像が終了すると、波形503を一定速度で波形502に戻すための信号が加算され、最終的に波形503と502が一致する。
以上により、撮像期間中には、HPF109を含まないフィルタ構成により演算された角度に基づいて像振れ補正が実行される。よって、パンニングやチルティングの直後の揺り戻し現象を伴わずに、フィルタ特性を低周波数領域まで拡大できるので、像振れ補正効果が高まる。
次に図7のフローチャートを参照して、本実施形態の像振れ補正動作について説明する。図7に示す処理はカメラの主電源のオン操作で開始し、一定のサンプリング周期ごとにCPU105が実行する。
まずS701でCPU105は、角速度計103の出力を取得する。次のS702でCPU105は、像振れ補正が可能な状態であるか否かを判定する。像振れ補正が可能な状態である場合、S703へ進み、振れ補正が可能な状態でない場合、S716へ処理を進める。S702の判定処理では、電源投入時点から角速度計103の出力が安定するまでの間、像振れ補正が可能な状態でないと判定される。角速度計103の出力が安定した後で、像振れ補正が可能な状態であると判定される。これにより、電源投入直後の出力値が不安定な状態で像振れ補正を行うことによる性能低下を防止できる。
S703でHPF109は、角速度出力からオフセット(これをAと記す)を減算し、減算後の角速度を出力する。S704で角度1算出部110は、オフセットAの減算後の角速度を積分し、角度1を演算する。S705でオフセット1算出部111が、角速度のオフセット(これをBと記す)を演算し、減算部112は角速度からオフセットBを減算し、減算後の角速度を出力する。S706で角度2算出部117の出力(前回サンプリング値)が取得される。S707では、S706で取得した角度2から、オフセット2算出部113がオフセット(これをCと記す)を演算する。減算部114は角度2からオフセットCを減算し、減算後の角度を出力する。S708では、S705で演算したオフセットBの減算後の角速度と、S707で演算したオフセットCの減算後の角度とから、減算量算出部115が角速度減算量を算出する。次にS709で減算部116は、オフセット減算前の角速度から角速度減算量を減算する。S710で角度2算出部117は、角速度から角速度減算量を減算した信号を積分することで角度2を演算する。
S711でレリーズSW104の出力値に基づき、信号切り替え部118は撮像中か否かを判定する。撮像中でない場合、S715に移行し、目標角度に角度1が設定されて、S713に進む。一方、S711で撮像中であると判定された場合、S712に移行し角度2が設定され、図5を参照して説明した波形503に示す目標角度が設定される。次のS713で敏感度調整部119は、ズームレンズおよびフォーカスレンズの位置情報107より得られる焦点距離や撮影倍率に基づく敏感度を、目標角度に乗算することで像振れ補正目標値を演算する。次のS714で駆動制御部120は、像振れ補正目標値に基づいて補正レンズを駆動する。そして像振れ補正サブルーチンが終了し、次回のサンプリング時点まで待ち処理となる。
S716へ移行した場合、駆動制御部120は補正レンズの駆動を停止し、像振れ補正サブルーチンを終了し、次回のサンプリング時点まで待ち処理となる。
本実施形態では、角速度オフセットと角度オフセットをそれぞれ算出し、角速度計の出力から角速度オフセットを減算した信号と、角度2から角度オフセットを減算した信号を取得する。これらの信号を用いて角速度減算量が算出され、角速度計の出力から角速度減算量を減算した信号を積分することにより、目標の像振れ角度が求まる。よって、角速度計103の出力がオフセットを含んでいても、HPF109に通すことなく角度算出フィルタを形成できる。本実施形態によれば、パンニングやチルティング動作により大きな揺れが生じた場合でも、撮像中において、制御帯域を低域側に拡大した広い周波数帯域に亘って精度の高い像振れ補正を行える。
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態において第1実施形態の場合と同様の構成部については既に使用した符号を用いることで、それらの詳細な説明を省略し、主に相違点を説明する。このような説明の省略の仕方は後述の実施形態でも同様である。
図8は本実施形態に係る撮像装置の撮像部の構成と、CPU105が実行する像振れ補正処理の機能ブロックを例示する。第1実施形態にて説明した図2の構成と、図8の構成との違いは以下の通りである。
・図8では、図2のHPF109と、角度1算出部110が削除されていること。
・図2では、信号切り替え部118に角度1算出部110の出力が入力されるが、図8では減算部114で角度2算出部117の出力値から角度オフセットを減算した信号が、信号切り替え部118に入力されること。つまり、第1演算部は、オフセット2算出部113および減算部114により構成される。
本実施形態では、撮影前において、減算部114の出力を用いて像振れ補正を行い、撮影中には角度2算出部117の出力を用いて像振れ補正を行う。角度2算出部117の出力は、角速度計103の出力するオフセット成分を含んだ角度として算出される。オフセット2算出部113は角度オフセットを算出し、減算部114は角速度計103のオフセットの影響による角度オフセットを除去する。つまり、減算部114の出力は、オフセット除去後の角度信号であるので、ゼロを中心とした範囲で演算されることになる。しかしながら、角速度オフセットや角度オフセットについては正確にオフセットを求めることが難しいため、多少の誤差が含まれている。またLPFによりオフセットを算出する場合や、信号の平均値算出等を行う場合には、実際のオフセットに対して位相遅れ等が加わる。このオフセット算出誤差の影響を考慮し、減算部114の出力信号をそのまま撮像中には用いず、角度2算出部117の出力を用いて像振れ補正が実行される。撮影前の状態において、多少位相遅れ等の影響により制御上の揺れ残りがあったとしても支障はなく、ある程度の像振れを抑制できる。
第1実施形態ではHPF109を用いて撮像前の像振れ補正量を算出したが、本実施形態ではHPF109を使用しない。よってHPF109と積分フィルタ(角度1算出部110)を削減できるので、処理回路や処理プログラムの大規模化を回避しつつ、精度のよい像振れ補正を実現できる。また、パンニング等の直後の揺り戻しの影響がなくなり、性能が向上する。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第1および第2実施形態で説明したように、HPF109を含まないフィルタ構成でも、パンニング等での大きな振れが発生した場合、パンニング直後における制御安定性を確保し、適切な像振れ補正を行える。しかし、オフセット算出に大きな誤差が生じた場合、角速度の減算処理での誤演算の影響により、パンニング直後の像振れ補正が安定するまでの時間がかかってしまう可能性がある。そこで、第3実施形態ではオフセットに誤差が生じた場合でも、パンニング直後に像振れ補正が安定するまでの時間を短縮するための処理を説明する。
図9は、本実施形態に係わる撮像装置の撮像部の構成と、CPU105が実行する像振れ補正処理の機能ブロックを例示する。
図2と図9との構成上の違いは以下の通りである。
・図9では、オフセット2算出部113の代わりにローパスフィルタ(LPF)902を使用し、LPF902が角度オフセットを算出すること。
・図9では、揺れ判定部901が角速度計103の出力に基づいて揺れ判定を行い、判定結果をLPF902に出力すること。
本実施形態では、揺れ判定部901およびLPF902により第2オフセット算出処理が行われる。
まず、揺れ判定部901が算出する揺れ状態判定値について、図10を参照して説明する。揺れ判定部901には角速度計103の出力が入力される。図10(A)はオフセット除去後の角速度信号の波形を例示する。これは、角速度計103から出力された角速度信号に対してHPF109でオフセットを除去した信号、または角速度からオフセット1算出部111で算出したオフセットを除去した信号である。図10(B)はオフセット除去後の角速度信号を絶対値変換した、角速度の絶対値信号を示す。図10(C)は角速度絶対値信号を不図示のLPFに通した信号であり、これを揺れレベル量とする。期間ΔTime1と期間ΔTime3では、角速度信号の振幅量が小さく、手振れの小さい状態である。これは、例えば撮影者が撮像装置の振れが起きないように意識して手持ち撮影を行う状態である。期間ΔTime2の状態は、角速度信号の振幅量が大きく、手振れが非常に大きい状態である。期間ΔTime4の状態は、撮影者が構図を変えるためにパンニング動作等、意図的に撮像装置を移動させた状態の一例である。
図10(C)に示す揺れレベル量の信号は揺れ判定部901により検出され、手振れが安定しているか否かが判定される。揺れレベル量の信号が所定の閾値Shake Levelより大きい場合、揺れ判定部901は判定値として「揺れ大」を出力する。この場合、手振れが非常に大きな撮影状態(例えば、片手だけでカメラを把持した状態等)や、パンニング動作中等が挙げられる。また、揺れレベル量信号が所定の閾値以下の場合、揺れ判定部901は判定値として「揺れ小」を出力する。この場合、例えば撮影者がカメラをしっかりと構えており、揺れが非常に小さい状態である。
上記のように揺れ判定部901による判定値は、LPF902に出力される。LPF902は、角度オフセットの算出のため設けられている。角度2算出部117の出力に対し、極低周波のカットオフ周波数に設定されたLPF902を通すことで角度オフセットが算出される。LPF902は、揺れ判定部901の判定値に応じてカットオフ周波数が変更される。揺れ判定部901の判定値が「揺れ大」である場合、LPF902のカットオフ周波数が相対的に小さな値に設定される。一方、揺れ判定部901の判定値が「揺れ小」である場合、LPF902のカットオフ周波数が相対的に大きな値に設定される。LPF902のカットオフ周波数が小さい場合、LPF902による角度オフセット出力は、角度2算出部117の出力に対し、追従速度が遅くなる。即ち、高周波の出力が大きくカットされるため、パンニング動作時の大きな揺れ状態において急激に角度出力が変化する場合に角度2算出部117の出力に素早く追従することがない。そのため、オフセット算出時の誤差が大きくなることはない。また、LPF902のカットオフ周波数が大きい場合には、LPF902による角度オフセット出力は、角度2算出部117の出力に対して追従速度が速くなる。即ち、高周波出力成分を残すことになるので、オフセット算出精度は低下してしまうが、一旦オフセット誤差が大きくなった場合においても実際のオフセット値近くの値まで戻る収束時間を短縮できる。
このように、本実施形態では、揺れ判定結果に応じて、角度オフセットの、目標角度への追従性が変更される。大きな揺れが生じている場合、算出されるオフセットは急激に変化せず、また、揺れが小さい場合にはオフセットが変化し易くなる。
次に、本実施形態による効果について、図11乃至図14を参照して説明する。
図11は、角速度計103から出力される角速度信号の時間的変化を示す。図12は揺れ判定部901の判定値を用いたLPF902のカットオフ周波数変更は行わず、LPF902のカットオフ周波数を固定値にした場合の角速度減算処理について説明する波形図である。図13は揺れ判定部901の出力を用いたLPF902のカットオフ周波数を変更する場合の角速度減算処理について説明する波形図である。図14はLPF902のカットオフ周波数を固定値にした場合と、揺れ判定部901の出力を用いてLPF902のカットオフ周波数を変更する場合と対比して、目標角度の演算結果を示す。
図11(A)は、手持ち撮影時の手振れによる角速度1101を示す。期間1102Aは、撮影者がパンニング動作を行っている期間であり、大きな角速度が発生する。期間1102Bは、パンニング動作が終了して撮影者がしっかりとカメラを構えている期間である。図11(B)は、角速度計103の直流ノイズ成分1103を示し、温度変化に伴うドリフトにより時間経過につれて上昇する。図11(C)は、角速度1101と直流ノイズ成分1103の角速度を加算した出力1104を示し、これは角速度計103から出力されるセンサ出力の角速度である。本実施形態では、図9のオフセット1算出部111が角速度オフセットを算出する。本来、オフセット1算出部111で演算される信号は、実際のセンサのオフセット(直流ノイズ成分1103)と一致することが望ましい。しかし、期間1102Aのような、パンニング動作中や手振れが非常に大きいために角速度が大きくなってしまう状態では、角速度のオフセットを正確に算出することは難しい。その結果、オフセット1算出部111で演算される角速度オフセット(出力1105)は図11(C)のように算出され、実際のオフセット(直流ノイズ成分1103)との間には、ずれが生じる。特に期間1102Aではオフセットを求めることができないため、パンニング動作の時間が非常に長い場合や、揺れが大きい状態が非常に長く続く場合、揺れが小さい状態に遷移した瞬間、オフセットによるずれが発生する。
図12は、揺れ判定部901の判定値を用いたLPF902のカットオフ周波数の変更を行わず、LPF902のカットオフ周波数を固定値とした場合の角速度減算処理を示す。図12(D)は、角速度計103の出力1104から、オフセット1算出部111の出力1105を減算した信号1201を示す。この信号は、図9の減算部112の出力である。信号1202は、角速度計103の出力1104からオフセット1を減算し、さらに、減算量算出部115の出力を減算部116で減算した信号を示す。減算量算出部115の出力については、信号1201と1202の差が出力される。
図12(E)は、角度2算出部117の出力(前回サンプリング値)から、LPF902により算出した角度オフセットを減算部114で減算した信号1203を示す。第1実施形態の図3で説明した通り、信号1203のレベルが閾値を超えたか否かに応じて、ゲイン係数α、βの値が算出される。信号1203にゲイン係数を乗算することで、角速度減算量が算出される。
図12(F)は、角速度計103の出力1104から、減算量算出部115の出力を減算部116が減算した信号1204を示す。図12(G)は、角速度1101からパンニング動作による成分を除去した場合の手振れ角度の信号1205を示し、補正すべき理想的な信号である。目標角度の信号1206は角速度計103の出力1104から、オフセット1算出部111の出力1105を減算部112が減算した信号1204を用いて、角度2算出部117が積分して算出した角度である。信号1207は信号1206からLPF902にて算出された角度オフセットである。
ここで、LPF902のカットオフ周波数を固定値とするとき、パンニング動作等での大きな揺れ状態において、LPF902で求める角度オフセットが角度2算出部117の出力に素早く追従してしまう。よってオフセット算出時の誤差を低減するために、LPF902は低いカットオフ周波数に設定される。例えば、期間1102Aで誤差の大きいオフセットが算出されてしまった場合、信号1205から離れた信号1207が算出されてしまう。この影響で、期間1102Bのように本来手振れ補正が安定している場合において、オフセットが大きいことによる補正への影響が問題となる。期間1102Bにて、信号1206は信号1205へとすぐに収束することが望ましい。しかし、オフセットの誤演算の影響によりプラス方向における角速度を減算するように角速度減算が行われてしまう。信号1206が信号1205に収束するまでの時間(収束時間)が長くかかると、制御が安定するまでの時間が長くなり、性能に影響を及ぼす可能性がある。
次に、揺れ判定値に応じて、角度オフセットの目標角度への追従性を変更することで、収束時間を短縮する処理を説明する。図13は、揺れ判定部901の判定値に応じてLPF902のカットオフ周波数を変更する場合の角速度減算処理を示す波形図である。図13(H)は、角速度計103の出力1104からオフセット1を減算した信号1301を示す。これは、減算部116にて、減算量算出部115の出力を角速度出力から減算した信号である。減算量算出部115は、信号1201と1301との差を出力する。
図13(I)は、角度2算出部117の出力(前回サンプリング値)から、LPF902が算出した角度オフセットを減算部114で減算した信号1302を示す。ここで、揺れ判定部901は、図10を用いて説明した揺れ判定を行う。期間1303と1305では、角速度出力が小さいので、揺れ判定部901は「揺れ小」と判定する。期間1304においては、角速度出力が非常に大きな値となるので揺れ判定部901は「揺れ大」と判定する。揺れの大きさに応じてLPF902のカットオフ周波数が変更される。期間1303と1305にて「揺れ小」と判定されるので、LPF902のカットオフ周波数が高く設定される。また、期間1304においては、「揺れ大」と判定されるので、LPF902のカットオフ周波数が低く設定される。
第1実施形態の図3を用いて説明したとおり、信号1203が閾値を超えたか否かに応じてゲイン係数α、βの値が算出される。信号1302に対し、算出したゲイン係数を乗算することで角速度減算量が算出される。
図13(J)は、角速度計103の出力1104から減算量算出部115の出力を減算部116で減算した信号1306を示す。図13(K)は、角速度計103の出力1104から、オフセット1算出部111の出力1105を減算した信号1306を、角度2算出部117が積分して算出した目標角度の信号1308を示す。信号1307は角度2からLPF902が算出した角度オフセットである。
期間1304では、LPF902のカットオフ周波数は低く設定されているので、急激なオフセット変化が起こらない。期間1305では、LPF902のカットオフ周波数が高く設定されている。例えば期間1304で仮にオフセット演算時の誤差が大きくなったとしても、期間1305への移行時点から、信号1307が信号1308に追従し易くなる。よって、信号1205の近傍への収束時間が短くなるので、安定制御までの時間を短縮できる。期間1305においては、信号1307と信号1308との差が小さくなるので、信号1302が大きくならず、ゲインα、βの値は大きくならない。よって、信号1308が信号1205に収束する時間を短くするように角速度減算が実行されてしまうこと(図12参照)はない。よって、像振れ補正の性能が向上する。
図14は、揺れ判定部901の判定値を用いた、LPF902のカットオフ周波数の変更を行う場合と、変更を行わない場合を対比させて、各目標角度の算出結果を示した波形図である。
信号1205は、図12(G)、図13(K)に示した通りであり、信号1401は、角速度減算処理を行わずに角速度計103の出力1104(図11(C)参照)をそのまま積分処理した場合の目標角度を示す。信号1206は、図12(G)に示した通り、揺れ判定値に応じたLPF902のカットオフ周波数の変更を行わない場合の目標角度を示す。信号1308は、図13(K)に示した通り、揺れ判定結果に応じてLPF902のカットオフ周波数を変更した場合の目標角度を示す。
パンニング直後等では、本実施形態のように、揺れ判定値に応じてLPF902のカットオフ周波数を変更する場合、信号1308が信号1205に最も速く近づくことが分かる。信号1206の場合、信号1401に比べて大幅に信号1205に近づくように目標角度が演算される。しかし信号1308に比べると、信号1205への収束時間が長くかかる。本実施形態によれば、揺れ判定値に応じて角度オフセット算出用のLPF902のカットオフ周波数を変更する制御により、安定までの時間が短くなり性能が向上する。
[第4実施形態]
図15は、第4実施形態に係る撮像装置の撮像部の構成と、CPU105が実行する像振れ補正処理の機能ブロックを示す。
図2と図15に示す構成上の違いは以下の通りである。
・図15では、図2のオフセット2算出部113が削除され、代わりにオフセット2算出部1501が設けられること。
・オフセット2算出部1501にはオフセット1算出部111の出力が入力され、オフセット2算出部1501の出力は減算部114に出力されること。
本実施形態において、オフセット2算出部1501が演算する角度オフセットは、オフセット1算出部111が出力する角速度オフセットから求められる。オフセット1算出部111による演算結果の精度が高い場合、図6のグラフ線602で示すフィルタ特性より、角度オフセットの算出が可能である。以下、オフセット2算出部1501による角度オフセット算出処理を説明する。
オフセット1算出部111が算出した角速度オフセットは、オフセット2算出部1501に入力され、下式(4)を用いて角度オフセットが演算される。
[数式4]
角度オフセット = 角速度オフセット × T ・・・(4)
式(1)にて説明したように、角度2算出部117は、時定数をTに設定したLPFにTを乗算したフィルタで角度信号を演算する。角度2算出部117で演算される信号のオフセットは、LPFのゲイン特性が0dB(デシベル)となる低周波数での角速度オフセットに時定数Tを乗算すれば求められる。角度2算出部117の入力信号のオフセット量は、オフセット1算出部111ですでに算出されているので、オフセット1算出部111の出力に時定数Tを乗算すれば、角度2算出部117を通過した後の角度オフセットを算出できる。
オフセット算出後には、第1実施形態で説明した通り、オフセット1算出部111からの角速度オフセットは、減算部112で角速度計103の出力から減算される。またオフセット2算出部1501からの角度オフセットは、減算部114で角度2算出部117の出力値(前回サンプリング値)から減算される。各減算結果は減算量算出部115に入力され、角速度減算量が算出される。減算部116は、角速度計103の出力から角速度減算量を減算した後、角度2算出部117は目標角度を算出し、像振れ補正が行われる。
本実施形態によれば、オフセット1算出部111で角速度オフセットを高精度で求められる場合、角速度オフセットに時定数Tを乗算するだけで角度オフセットを算出できる。よって、処理回路や処理プログラムの大規模化を回避しつつ、精度のよい像振れ補正を行える。
[その他の実施形態]
第1乃至4実施形態では、振れ補正手段としての補正レンズを光軸に垂直な面内で移動させる、いわゆる光学防振を説明した。これに限らず、以下の構成を用いても構わない。
・撮像素子を光軸に垂直な面内で移動させることで像振れ補正を行う構成。
・撮像素子が出力する各撮影フレームの画像切り出し位置を変更することで振れの影響を軽減させる電子防振による構成。
・複数の制御を組み合わせて像振れ補正を行う構成。
101 カメラ
103 角速度計
104 レリーズスイッチ
105 CPU
108 振れ補正部
110 角度1算出部
111 オフセット1算出部
113 オフセット2算出部
115 減算量算出部
117 角度2算出部

Claims (17)

  1. 装置の振れを検出する振れ検出手段と、
    前記振れ検出手段の出力する振れ検出信号を取得して像振れ補正量を算出する演算手段と、
    前記演算手段により算出された前記像振れ補正量に従って像振れを補正する振れ補正手段と、を備え、
    前記演算手段は、
    前記振れ検出信号から、第1オフセットを算出する第1オフセット算出手段および第2オフセットを算出する第2オフセット算出手段と、
    前記振れ検出信号から前記第1オフセットを減算した信号、および前記像振れ補正量から前記第2オフセットを減算した信号を取得して減算量を算出する減算量算出手段を有しており、
    前記演算手段は、前記振れ検出信号から、前記減算量算出手段が算出した減算量を減算した信号を積分することで前記像振れ補正量を算出することを特徴とする像振れ補正装置。
  2. 前記減算量算出手段は、前記像振れ補正量から前記第2オフセット算出手段の出力を減算した信号を閾値と比較してゲイン係数を演算し、前記振れ検出信号から前記第1オフセットを減算した信号に前記ゲイン係数を乗算して前記減算量を算出することを特徴とする請求項1に記載の像振れ補正装置。
  3. 前記減算量算出手段は、前記像振れ補正量から前記第2オフセット算出手段の出力を減算した信号と前記閾値との差が大きいほど、前記ゲイン係数を大きく設定することを特徴とする請求項2に記載の像振れ補正装置。
  4. 前記第2オフセット算出手段は、前回のサンプリングにおける前記像振れ補正量を取得して前記第2オフセットを算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の像振れ補正装置。
  5. 前記第2オフセット算出手段は装置の揺れ判定を行い、判定値に応じて前記像振れ補正量への追従性を変更して前記第2オフセットを算出することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の像振れ補正装置。
  6. 前記第2オフセット算出手段は、前記振れ検出信号を取得して装置の揺れ判定を行う判定手段と、ローパスフィルタを備え、前記判定手段による揺れ判定の判定値により前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を変更することを特徴とする請求項5に記載の像振れ補正装置。
  7. 前記判定手段により装置の揺れが閾値より大きいと判定された場合、前記ローパスフィルタのカットオフ周波数が低く設定され、前記判定手段により装置の揺れが閾値より小さいと判定された場合、前記ローパスフィルタのカットオフ周波数が高く設定されることを特徴とする請求項6に記載の像振れ補正装置。
  8. 前記第2オフセット算出手段は、前記第1オフセット算出手段の出力を取得し、時定数を乗算することで前記第2オフセットを算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の像振れ補正装置。
  9. 前記演算手段は、
    前記振れ検出信号を取得して第1の像振れ補正量を演算する第1演算部と、
    前記振れ検出信号を取得して第2の像振れ補正量を演算する第2演算部と、
    前記第1の像振れ補正量と第2の像振れ補正量を切り替える切り替え部を備え、
    前記第1の像振れ補正量または第2の像振れ補正量に基づいて像振れ補正を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の像振れ補正装置。
  10. 前記第1演算部は、前記振れ検出信号からオフセットを除去した信号を積分することで前記第1の像振れ補正量を算出し、
    前記第2演算部は、前記振れ検出信号から前記第1オフセット算出手段の出力を減算した信号と、前回のサンプリングで取得した前記第2の像振れ補正量から前記第2オフセット算出手段の出力を減算した信号により前記減算量を演算し、前記振れ検出信号から前記減算量を減算した信号を積分することで前記第2の像振れ補正量を算出することを特徴とする請求項9に記載の像振れ補正装置。
  11. 前記第1演算部は、ハイパスフィルタを用いて前記振れ検出信号からオフセットを除去することを特徴とする請求項10に記載の像振れ補正装置。
  12. 前記第1演算部は、前回のサンプリングで取得した前記第2の像振れ補正量から前記第2オフセット算出手段の出力を減算して前記第1の像振れ補正量を算出し、
    前記第2演算部は、前記振れ検出信号から前記第1オフセット算出手段の出力を減算した信号と、前回のサンプリングで取得した前記第2の像振れ補正量から前記第2オフセット算出手段の出力を減算した信号により前記減算量を演算し、前記振れ検出信号から前記減算量を減算した信号を積分することで前記第2の像振れ補正量を算出することを特徴とする請求項9に記載の像振れ補正装置。
  13. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の像振れ補正装置を備えることを特徴とするレンズ鏡筒。
  14. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の像振れ補正装置を備えることを特徴とする光学機器。
  15. 請求項13に記載のレンズ鏡筒を備えることを特徴とする撮像装置。
  16. 請求項9ないし12のいずれか1項に記載の像振れ補正装置を備え、
    撮像期間中には前記切り替え部が前記第2の像振れ補正量を選択し、撮像前には前記切り替え部が前記第1の像振れ補正量を選択して、前記振れ補正手段により像振れ補正を行うことを特徴とする撮像装置。
  17. 装置の振れを検出する振れ検出手段と、
    前記振れ検出手段の出力する振れ検出信号を取得して像振れ補正量を算出する演算手段と、
    前記演算手段により算出された前記像振れ補正量に従って像振れを補正する振れ補正手段と、を備える像振れ補正装置にて実行される制御方法であって、
    前記演算手段により、
    前記振れ検出信号から、第1オフセットおよび第2オフセットを算出するステップと、
    前記振れ検出信号から前記第1オフセットを減算した信号、および前記像振れ補正量から前記第2オフセットを減算した信号を取得して減算量を算出するステップと、
    前記振れ検出信号から、前記減算量を減算した信号を積分することで前記像振れ補正量を算出するステップを有することを特徴とする像振れ補正装置の制御方法。
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