JP2015030906A - 成膜装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】DMS用ターゲット及び成膜用電源を備えた成膜装置であって、前記成膜用電源を用いて前記ターゲットのプレスパッタを行うことが可能なものを提供する。
【解決手段】成膜装置は、成膜チャンバ10と、それぞれがターゲット24を有し、ターゲット表面24aがいずれも成膜チャンバ10内の基材の側を向く姿勢で互いに隣り合うように配置される第1及び第2カソード20A,20Bと、両ターゲット24の表面24aの近傍に磁場を形成する磁場形成部30と、両カソード20A,20B間に介在する成膜用電源40と、シャッタ50と、を備える。シャッタ50は、両カソードのターゲット表面24aと基材との間に介在して当該ターゲット表面24aを一括して基材から遮断する閉位置と、ターゲット表面24aと基材との間を開放して基材への成膜を許容する開位置との間で開閉動作する。
【選択図】図2

Description

本発明は、デュアルマグネトロンスパッタリングにより成膜を行うことが可能な装置に関するものである。
従来、基材の表面に成膜を施すための手段として、マグネトロンスパッタリングが知られている。このマグネトロンスパッタリングでは、プレート状の成膜材料からなるターゲットと、その背面側に配置される磁場形成部と、前記ターゲットにスパッタ用の電圧を印加するための電源と、が用いられる。当該電源は、前記電圧の印加によりグロー放電を発生させ、これにより不活性ガスをイオン化する。一方、前記磁場形成部は、前記ターゲットの正面側に磁場を形成し、当該磁場に沿って前記イオンが指向的に照射されることを可能にする。当該磁場は、ターゲットから叩き出された二次電子を捕捉し、効率よくガスのイオン化を促進することにより、低い不活性ガス圧力においてもグロー放電を維持することを可能にし、これにより成膜速度を高める。このマグネトロンスパッタリングは、その磁場設計により当該二次電子やプラズマが基材の表面にダメージを与えることを抑制することに活用され、あるいは、反対にプラズマ効果によって皮膜特性の制御を行うことに活用されている。
さらに近年は、前記ターゲットの表面の汚染にかかる問題を解消すべく、一対のターゲットをそれぞれグロー放電の陰極及び陽極として用いるデュアルマグネトロンスパッタリング(DMS)の開発が進められている。このDMSでは、前記一対のターゲット同士の間に例えば交流電源を配置して各ターゲットに交互に電圧を印加することにより、ターゲットの表面に生成される絶縁物の除去すなわちセルフクリーニングを行い、これにより膜質を安定させることができる。
例えば、特許文献1には、図5に模式的に示される装置が開示されている。この装置は、基材96を収容する成膜チャンバ90と、当該成膜チャンバ90内で互いに対角となる位置に配置される第1カソード91及び第2カソード92と、これらのカソード91,92同士の間に介在する成膜用交流電源94と、各カソード91,92の背後に配置される図略の磁場形成用磁石と、を備える。図に示される成膜チャンバ90は上から見て略八角形状の断面を有し、その中央に前記基材96が配置される。前記各カソード91,92は、成膜材料からなるターゲットと、これを保持するカソード本体と、を有し、各ターゲットが前記基材96側を向く姿勢で、前記成膜チャンバ90の側壁の近傍であって互いに対角となる位置に配置される。従って、前記基材96は前記カソード91,92同士の間に配置される。
特表2010−507728号公報
前記特許文献1に記載される装置では、既存の設備を利用して成膜開始前のいわゆるプレスパッタを行うことができない、という課題がある。
このプレスパッタは、ターゲット表面の不純物の除去(セルフクリーニング)、適当な温度までのターゲット温度の漸次的な上昇、放電状態の安定化、などを目的とするものであって、成膜前の基材と各ターゲットとの間がシャッタにより遮断された状態で各ターゲットを放電させることにより実現される。前記シャッタは、前記プレスパッタが完了した時点で開かれ、その時点から前記基材の成膜が開始される。換言すれば、プレスパッタ中は前記シャッタが閉じられることにより、当該プレスパッタによる意図しない成膜が基材に対して行われることが防がれる。
従って、このプレスパッタは、前記基材と前記各ターゲットとの間で開閉可能なシャッタを要するものであるが、例えば図5に二点鎖線で示すようなシャッタ98を各カソード91,92と基材96との間に介在させると、各カソード91,92のターゲット同士の間も遮断されてしまうため、成膜用の交流電源94を用いて当該カソード91,92間での放電を行うことができない。つまり、既存の成膜用交流電源94を用いては各ターゲットのプレスパッタを行うことはできない、という不都合がある。従って、この従来装置では、前記プレスパッタを行うために成膜用の交流電源94とは別のプレスパッタ専用の電源を各カソード91,92について個別に用意しなければならない。このことは著しい設備コストの増大を伴う。
本発明の目的は、デュアルマグネトロンスパッタリングのための少なくとも一対のターゲット及び成膜用電源を備えた成膜装置であって、前記成膜用電源を用いて前記ターゲットのプレスパッタを行うことが可能なものを提供することにある。
本発明が提供する成膜装置は、特定位置に基材を収容する成膜チャンバと、それぞれがターゲットを有し、これらのターゲットの表面がいずれも前記特定位置に配された基材の側を向く姿勢で互いに隣り合うように配置される第1カソード及び第2カソードと、前記第1及び第2カソードのターゲットの表面の近傍にそれぞれマグネトロンスパッタリング用の磁場を形成する磁場形成部と、前記第1及び第2カソードの間に介在する成膜用電源と、前記第1及び第2カソードのターゲットの表面と前記基材との間に介在して当該第1カソード及び第2カソードのターゲットの表面を一括して前記基材から遮断する閉位置と前記第1及び第2カソードのターゲットの表面と前記基材との間を開放して当該ターゲットによる前記基材の表面への成膜を許容する開位置との間で開閉動作が可能なシャッタと、を備える。
この成膜装置によれば、前記第1及び第2カソードのターゲットが互いに隣接しており、これらのターゲットの表面と前記基材との間を一括して遮断するようにシャッタが配置されている、換言すれば、閉位置にあるシャッタを挟んで前記基材とは反対の側つまり互いに同じ側に第1及び第2カソードのターゲットが配置されているから、当該シャッタが閉位置にある状態で成膜用電源を用いて前記第1及び第2カソード間での放電を行うことができる。すなわち、前記シャッタを閉じた状態でプレスパッタを行うことができる。そして、このプレスパッタが完了した後に前記シャッタを開位置に移動させることで、前記第1及び第2カソードのターゲットを用いて前記基材に対してデュアルマグネトロンスパッタリングによる成膜を行うことができる。
前記第1及び第2カソードは、それぞれのターゲットの表面が同じ方向を向くように配置されることが、好ましい。この配置は、前記シャッタがコンパクトな配置で基材と干渉せずに開閉動作をすることを可能にする。
具体的に、前記シャッタは、例えば、前記第1及び第2カソードのターゲットの並び方向と同じ方向に並ぶ一対の開閉部材を含み、これらの開閉部材が前記並び方向と直交する回動中心軸回りに回動可能となるように前記成膜チャンバに支持されて当該回動により前記開位置と前記閉位置との間で移動するものが、好適である。これらの開閉部材は、基材と干渉しない小さな軌跡でそれぞれ回動しながら前記閉位置と前記開位置との間を移動する(すなわち開閉動作を行う)ことができる。
この場合、前記各回動中心軸は、例えば、前記第1及び第2カソードを挟んで前記開閉部材と反対の側の位置に設定されるのが、好ましい。このような回動中心軸の設定は、各開閉部材の回動半径を大きくし、これにより、当該開閉部材の回動軌跡が基材側に大きく膨らんで当該基材と干渉するのを避けることを可能にする。
本発明では、前記成膜チャンバにおいて前記基材を挟んで互いに対角となる箇所にそれぞれ前記第1及び第2カソード並びに前記シャッタが設けられることが、好ましい。この配置は、前記各箇所にそれぞれ配置されたターゲット対の同時駆動によって、前記基材の成膜を効率よく迅速に行うことを可能にする。また、各シャッタを閉じることによって各ターゲット対のプレスパッタ(セルフクリーニング)も当該ターゲット対に接続された成膜用電源によって支障なく行うことが可能である。
本発明に係る成膜装置は、前記第1及び第2カソードに加え、前記成膜チャンバ内に配置されて前記第1及び第2カソードによるスパッタリングとは異なる成膜を実行する成膜部をさらに備えることが可能である。この場合、当該成膜部が他の成膜(例えばアークイオンプレーティングやCVD)を実行している間は前記シャッタを閉位置にしておくことによって、前記成膜粒子が前記第1及び第2カソードのターゲットの表面に汚染物質として付着するのを防ぐことができる。また、仮に当該付着が生じても、前記シャッタを閉じた状態での第1及び第2カソード間の放電によるセルフクリーニングによって前記ターゲット表面上での汚染物質の堆積を防ぐことができる。
この場合の前記第1及び第2カソード並びに前記成膜部の配置については、例えば、前記成膜チャンバにおいて前記基材を挟んで互いに対角となる箇所にそれぞれ、前記第1及び第2カソード並びにシャッタが設けられ、これらの箇所とは異なる箇所であって前記第1及び第2カソードとともに前記基材を囲む箇所に前記成膜部が配置されることが、好ましい。当該配置は、前記成膜部による成膜と、前記各箇所における第1及び第2カソードの同時駆動による効率的なデュアルマグネトロンスパッタリングと、の双方を同一の成膜チャンバ内で効率よくしかもコンパクトな構造で行うことを可能にする。
以上のように、本発明によれば、デュアルマグネトロンスパッタリングのためのターゲット及び成膜用電源を備えた成膜装置であって、前記成膜用電源を用いて前記ターゲットのプレスパッタを行うことが可能なものを提供することができる。
本発明の第1の実施の形態にかかる成膜装置の断面平面図である。 前記成膜装置の要部を示す平面図である。 前記成膜装置の要部を示す断面側面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る成膜装置の断面平面図である。 従来の成膜装置を示す断面平面図である。
本発明の好ましい実施の形態を、図1〜図4を参照しながら説明する。
図1〜図3は、本発明の第1の実施の形態にかかる成膜装置を示す。この成膜装置は、成膜チャンバ10と、DMS用の第1及び第2カソード20A,20Bと、各カソード20A,20Bについて設けられる磁場形成部30と、成膜用(DMS用)電源40と、シャッタ機構50と、を備える。
前記成膜チャンバ10は、成膜対象となる基材を収容するとともに、スパッタリング用の不活性ガス(さらに、化合物薄膜を形成する場合は反応ガス)が封入される空間を囲む。本発明ではこの成膜チャンバ10の具体的な形状は限定されないが、図1に示されるものは平面視において略八角形状の断面を有し、その中央に基材収容領域60が設定されている。
この実施の形態において設定される基材収容領域60は、前記成膜チャンバ10の中心軸に沿って延びる円柱状の領域であり、当該領域のすぐ下側に図示されない円板状の基材支持テーブルが設置されている。当該基材収容領域60には、これと略同等の形状を有する単一の大きな円柱状の基材が収容されてもよいし、小径の円柱状の複数の基材が水平方向に並ぶように前記基材支持テーブル上に載置されてもよい。また、当該基材支持テーブルは固定式のものでも回転式のものでもよい。
前記第1及び第2カソード20A,20Bは、カソード本体22と、このカソード本体22に着脱可能に保持されるターゲット24と、を有する。
各カソード本体22は、導電性を有する材料によりブロック状に形成され、この実施の形態では上下方向に延びる角柱状をなす。各カソード本体22は前記ターゲット24を着脱可能に保持するターゲット保持部26を有し、このターゲット保持部26はカソード本体22の特定の側面上に設けられている。
各ターゲット24は、成膜材料、例えばアルミニウム、からなり、前記ターゲット保持部26が設けられた前記カソード本体22の側面に沿って延びる薄板状をなす。このターゲット24は、前記ターゲット保持部26に保持された状態で前記カソード本体22とともに通電されることが可能である。
この成膜装置の特徴として、前記第1カソード20A及び前記第2カソード20Bは、これらのターゲット24の表面24aがいずれも前記基材収容領域60に収容された(すなわち特定位置に配された)基材の側を向く姿勢で互いに隣り合うように配置されている。この実施の形態では、前記ターゲット表面24aが同じ方向を向くように、具体的には各ターゲット表面24aの法線方向が前記基材収容領域60の中心軸と両カソード20A,20Bの中間位置とを結ぶチャンバ半径方向と実質的に平行となるように、第1及び第2カソード20A,20Bが配置されている。各ターゲット表面24aの法線方向は互いに大きく傾いていてもよいが、これらの法線方向が実質的に平行となるように各ターゲット24が配置されることは、両カソード20A,20Bの配設に必要なスペースの削減及び後述のシャッタ機構50の小型化を助ける。
前記磁場形成部30は、前記第1及び第2カソード20A,20Bのそれぞれについて設けられ、当該カソードのターゲット24の表面24aの近傍にそれぞれマグネトロンスパッタリング用の磁場を形成する。具体的に、この実施の形態に係る磁場形成部30は、3個の永久磁石、すなわち、第1永久磁石31、第2永久磁石32及び第3永久磁石33を有し、これらは前記ターゲット24の背後に位置するように前記カソード本体22の内部に組み込まれている。
前記マグネトロンスパッタリング用の磁場は、前記ターゲット24の表面24aから叩き出される二次電子をローレンツ力で捕捉するように形成される。図2はその磁力線を示す。前記各永久磁石31〜33は当該磁場を形成するように配列されている。具体的に、前記第1永久磁石31は、前記カソード20A,20Bのカソード幅方向(この実施の形態ではカソード20A,20Bが並ぶ方向と平行な方向)について中央の位置に配置され、そのN極がターゲット24側を向くようにカソード本体22に組み込まれている。前記第2及び第3永久磁石32,33は、前記カソード幅方向について前記第1永久磁石31の両外側の位置にそれぞれ配置され、それぞれのS極がターゲット24側を向くようにカソード本体22に組み込まれている。
前記成膜用電源40は、前記第1カソード20Aと前記第2カソード20Bとの間に介在し、これらのカソード20A,20Bに対して特定の周期で交互に電圧を印加し、これによりターゲット24の材料さらにはこれに付着する汚染物質を叩き出すためのガスイオン原子(成膜チャンバ10内に封入される不活性ガスのイオン原子)を生成する。この成膜用電源40には、図に示される交流電源の他、例えば出力電圧を正・負交互に反転させるバイポーラパルス電源を使用することが可能である。
前記シャッタ機構50は、開閉方向に移動可能な一対の開閉部材である可動シャッタ板51,52と、補助シャッタ板53と、前記可動シャッタ板51,52をそれぞれ開閉方向に移動可能に支持する一対の開閉支持機構54と、を有し、前記各シャッタ板51〜53が本発明に係るシャッタを構成する。
前記可動シャッタ板51,52は、前記両カソード20A,20Bのターゲット24の並び方向と平行な方向に並び、図1〜図3に実線で示す閉位置と図1及び図2に二点鎖線で示す開位置との間を移動できるように、それぞれ前記開閉支持機構54を介して前記成膜チャンバ10に支持される。可動シャッタ板51,52は、前記閉位置では、前記第1及び第2カソード20A,20Bのターゲット24の表面24aと前記基材収容領域60に設置される基材の表面との間に介在して両者間を一括して遮断する一方、前記開位置では、前記第1及び第2カソード20A,20Bのターゲット24の表面24aと前記基材の表面との間を開放して当該ターゲット24による前記基材の表面への成膜を許容する。
前記可動シャッタ板51は、それぞれが平板状をなす本体壁部51a及び側壁部51bを一体に有する。本体壁部51aは、前記閉位置において、前記第1カソード20Aのターゲット24の表面24aと基材の表面との間を遮るように、当該ターゲット表面24aから当該基材側に距離をおいて当該ターゲット表面24aと平行となる姿勢をとる。前記側壁部51bは、前記閉位置における前記本体壁部51aの背後の空間(ターゲット表面24aの正面側の空間)を側方から覆うように当該本体壁部51aの外側縁部から後方(第1カソード20Aに近づく方向)に延びる。
前記可動シャッタ板52は、その全体が略平板状をなし、前記閉位置において、前記第2カソード20Bのターゲット24の表面24aと基材の表面との間を遮るように、当該ターゲット表面24aから当該基材側に距離をおいて当該ターゲット表面24aと平行となる姿勢をとる。この可動シャッタ板52の内側縁部52aは、他の部分よりも一段内側に後退した形状を有し、前記閉位置において前記可動シャッタ板51の内側縁部と前後方向(成膜チャンバ10の半径方向と平行な方向)に重なることが可能となっている。これら内側縁部同士の重なりは、各ターゲット24の表面24aと基材の表面との間の遮断をより確実にする。すなわち、当該内側縁部同士の隙間を通じてターゲット24から基材の表面へ粒子が漏れ出るのをより有効に抑止することができる。
前記補助シャッタ板53は、前記閉位置における前記可動シャッタ板52の背後の空間(ターゲット表面24aの正面側の空間)を側方から覆うように配置されている。具体的に、補助シャッタ板53は、前記閉位置にある可動シャッタ板52の外側縁部から後方(第2カソード20Bに近づく方向)に延びるような姿勢及び位置にて前記成膜チャンバ10に固定されている。この補助シャッタ板53は前記可動シャッタ板52と一体に形成されることも可能である。
本発明ではシャッタの具体的な形状を問わない。例えば前記可動シャッタ板51の側壁板部51b及び補助シャッタ板53は、仕様に応じてその寸法を短縮しあるいは省略することが可能である。また、シャッタを構成する部材は必ずしも平板状でなくてもよく、湾曲した曲板状であってもよい。
前記各開閉支持機構54は、前記成膜チャンバ10内に設置され、前記各可動シャッタ板51,52が前記閉位置と前記開位置との間で移動可能となるようにこれらの可動シャッタ板51,52をそれぞれ支持する。この実施の形態では、前記各可動シャッタ板51,52の開位置は当該各可動シャッタ板51,52の並び方向について各閉位置の両外側の位置に設定されており、開閉支持機構54は、前記第1及び第2カソード20A,20Bの後方に設定された上下方向の(すなわち両ターゲット24の並び方向と直交する方向の)回動中心軸回りに回動可能となるように前記各可動シャッタ板51,52を支持することによって、両可動シャッタ板51,52を開閉可能としている。
具体的に、前記開閉支持機構54は、上下一対の回動支軸55と、上下一対の回動アーム56と、を有する。各回動支軸55は、前記各可動シャッタ板51,52の回動中心軸と一致するように上下方向に延びる姿勢で配置され、自軸回りに回動可能となるように前記成膜チャンバ10の天壁及び底壁にそれぞれ保持されている。前記各回動アーム56は、対応するカソード(可動シャッタ板51を支持する開閉支持機構54については第1カソード20A、可動シャッタ板52を支持する開閉支持機構54については第2カソード20B)の上方及び下方で当該カソードを跨ぐように配置され、前記回動支軸55の内側端部と前記可動シャッタ板51,52の上下端部とをそれぞれ連結する。すなわち、上側の回動アーム56の両端部は、上側の回動支軸55の下端部と可動シャッタ板51または52の上端部とに連結され、下側の回動アーム56の両端部は、下側の回動支軸55の上端部と可動シャッタ板51または52の下端部とに連結されている。
ここで、前記各可動シャッタ板51,52の回動中心軸が第1及び第2カソード20A,20Bの後ろ側(すなわち当該カソード20A,20Bを挟んで可動シャッタ板51,52と反対の側)に設定されているのは、当該可動シャッタ板51,52の回動半径を大きくしてその回動軌跡が基材収容領域60側に膨らむのを抑制するためである。このような回動中心軸の設定は、可動シャッタ板51,52が基材収容領域60に進入するのを避けながら当該可動シャッタ板51,52と当該基材収容領域60とを近づけて装置全体を小型化することを可能にする。
前記各開閉支持機構54の一方の回動支軸55には駆動源である図示されないアクチュエータが連結され、このアクチュエータにより各可動シャッタ板51,52が開閉支持機構54を介して開閉方向に駆動される。この駆動源は本発明において必須のものではない。また、両開閉支持機構54が互いに開閉方向に連動するようにこれらの開閉支持機構54を適当なリンク機構を介して連結することにより、単一の駆動源で両可動シャッタ板51,52を開閉させることも可能である。
本発明では、開閉のためのシャッタの具体的な動きも特に限定されない。例えば、各可動シャッタ板51,52は、各ターゲット24の表面24aと基材表面との間に介在する閉位置とそこから上側、下側あるいは両外側に外れた開位置との間で平行移動するものでもよい。あるいは、単一の可動シャッタ板で両ターゲット24の表面24aと基材の表面との間を遮断することも可能である。
この装置は、その他、図示はしないが、ワークに不活性ガスイオンを引き寄せて衝突させることで膜質の制御を行うためのバイアス電源や、成膜チャンバ10内を排気するための排気設備、成膜チャンバ10内にガスを導入するためのガス導入部、などを備える。
以上説明した成膜装置によれば、例えば次の工程を経ることによって基材の表面に質の高い薄膜を形成することが可能である。
1)準備工程
成膜チャンバ10内の基材収容領域60に基材がセットされ、第1及び第2カソード20A,20Bのカソード本体22に必要なターゲット24が装着される。その後、成膜チャンバ10内が密閉され、真空引きされた後、スパッタリング用の不活性ガス(例えばアルゴンガス)、さらに必要な場合は反応ガスが封入される。例えば、前記基材の表面にアルミナが成膜される場合、前記ターゲット24としてアルミニウムターゲットがカソード本体22に装着されるとともに、前記反応ガスとして酸素ガスが封入される。
2)プレスパッタ
前記基材への成膜の前にいわゆるプレスパッタが行われる。当該基材への成膜(DMS)は、成膜用電源40から前記第1及び第2カソード20A,20Bに電圧を交互に印加して放電させることによって行われるが、放電開始直後はターゲット24の温度が低く、また放電電圧がやや高めで反応のモード(例えばメタルモード、リアクティブモード、その間の遷移モード)が所望のモードから外れる可能性が高いため、放電と同時に成膜を開始したのでは所望の膜質及び成膜レートを得ることが難しい。そこで、放電状態が安定するまでプレスパッタが行われる。
このプレスパッタでは、開閉部材である可動シャッタ板51,52を閉位置に保ったまま、すなわち、これらの可動シャッタ板51,52によって各カソード20A,20Bのターゲット24の表面24aと基材表面との間を遮断した状態で、当該ターゲット24からの放電が行われる。一般に、この放電が安定するまでには当該放電の開始から数十秒ないし数分かかるが、前記可動シャッタ板51,52がターゲット表面24aと基材表面との間を遮断しているため、当該放電にかかわらず基材の表面に望ましくない皮膜を堆積させることなく、放電の安定化を待つことができる。また、各ターゲット24の表面に汚染物質が付着している場合にはこれをスパッタリングで叩き出すことが可能であり(いわゆるセルフクリーニング)、この点も次の工程で形成される膜質の向上に有効となる。
しかも、図1及び図2に示すように第1及び第2カソード20A,20Bのターゲット24が互いに隣接するように配置されているため、前記プレスパッタを成膜用電源40を利用して行うことが可能である。例えば図5に示す装置のように基材96を挟んで互いに対向するようにカソード91,92が配置される場合、同図に二点鎖線で示すようなシャッタ98を各カソード91,92と基材96との間に介在させると、当該シャッタ98によってカソード91,92間も遮断されてしまうため、両カソード91,92の間に介在する成膜用電源94を用いてはプレスパッタを行うことができない。これに対して図1及び図2の配置では、閉位置にある可動シャッタ板51,52を基準として同じ側(基材収容領域60と反対の側)に両カソード20A,20Bが配置されているから、成膜用電源40を利用して各カソード20A,20Bのプレスパッタのための放電(可動シャッタ板51,52を閉じた状態での放電)を行うことが可能である。
3)基材への成膜
前記プレスパッタが終了した時点で可動シャッタ板51,52を閉位置から開位置に移動させることにより、DMSによる基材表面への成膜を開始することができる。具体的には、前記放電によって生成されたガスイオン原子が各ターゲット24の表面から成膜材料を叩き出して基材の表面へ付着・堆積させることにより、当該基材表面上での成膜が進められる。前記プレスパッタの終了を判断する基準は適宜設定されることが可能であり、例えば、ターゲット24の温度の上昇、放電状態の安定、セルフクリーニングによる不純物の除去の完了、などが挙げられる。
前記成膜を開始する時点では既に放電状態が安定しており、またセルフクリーニングによってターゲット表面24aが清浄化されているため、高い品質の薄膜を形成することが可能である。このようにして成膜が終了した後は、前記基材が冷却され、成膜チャンバ10から取り出される。
この第1の実施の形態に係る成膜装置では、一つの成膜チャンバ10内に一対のカソード20A,20Bのみが配置されているが、本発明では、成膜チャンバ10内の複数の箇所にそれぞれ第1及び第2カソード20A,20Bからなるカソード対が配置され、これらのカソード対にそれぞれ成膜用電源が接続されてもよい。さらに、同じ成膜チャンバ10内に前記第1及び第2カソード20A,20Bによるスパッタリングとは異なる成膜を実行する成膜部をさらに備えることも可能である。
図4に示されるのは、本発明の第2の実施の形態に係る成膜装置であって、前記のような複数個所への第1及び第2カソード20A,20Bの配置と、これら第1及び第2カソード20A,20B以外の他の成膜部70の具備と、をコンパクトな構造で実現するものである。
この装置では、前記成膜チャンバ10において、前記基材収容領域60を挟んで互いに対角となる箇所にそれぞれ、前記第1及び第2カソード20A,20B並びにシャッタ機構50が配置されている。この配置は、前記各箇所にそれぞれ配置されたターゲット対の同時駆動によって、基材収容領域60に収容された基材の成膜を効率よく迅速に行うことを可能にする。また、それぞれのシャッタ機構50においてシャッタを閉じることによって各カソード対でのプレスパッタ(セルフクリーニング)も当該カソード対に接続された成膜用電源40によって支障なく行うことが可能である。
一方、前記他の成膜部70は、前記第1及び第2カソード20A,20Bが配設される箇所と異なる箇所であって、これら第1及び第2カソード20A,20Bとともに前記基材収容領域60を囲む箇所に設けられている。具体的には、前記カソード20A,20Bの配設箇所からそれぞれ成膜チャンバ10の周方向に90°離れた箇所にそれぞれ前記成膜部70が配置されている。この配置は、前記成膜部70による成膜と、互いに対角となる位置に配された第1及び第2カソード20A,20Bの同時駆動による効率的なデュアルマグネトロンスパッタリングと、の双方を同一の成膜チャンバ10内で効率よくしかもコンパクトな構造で行うことを可能にする。
例えば、前記成膜部70がスパッタリング以外の成膜(例えばアークイオンプレーティング)を行うものであってその膜が主層として用いられ、前記第1及び第2カソード20A,20Bにより形成される膜が前記主層の上に重ねられる上層であって付加機能を与える機能層を構成するものである場合、当該成膜部70による成膜は前記第1及び第2カソード20A,20BによるDMSの前に行われることになり、その成膜中に成膜粒子が発生することになる。しかし、この成膜部70による成膜の実行中は各シャッタ機構50の可動シャッタ板51,52を閉位置にしておくことによって、前記第1及び第2カソード20A,20Bの放電が停止しているにもかかわらず、前記成膜粒子がターゲット24の表面24aに汚染物質として付着、堆積するのを防ぐことができる。従って、当該成膜部70による成膜後は、前記第1の実施の形態と同じ要領で第1及び第2カソード20A,20Bへの電圧の印加によってプレスパッタ及び本成膜を行うことにより、前記成膜部70が形成した下地膜の上に高品質の薄膜を形成することが可能である。
10 成膜チャンバ
20A 第1カソード
20B 第2カソード
22 カソード本体
24 ターゲット
24a ターゲット表面
30 磁場形成部
40 成膜用電源
50 シャッタ機構
51,52 可動シャッタ板(開閉部材)
53 補助シャッタ板
54 開閉支持機構
60 基材収容領域
70 成膜部

Claims (7)

  1. 成膜装置であって、
    特定位置に基材を収容する成膜チャンバと、
    それぞれがターゲットを有し、これらのターゲットの表面がいずれも前記特定位置に配された基材の側を向く姿勢で互いに隣り合うように配置される第1カソード及び第2カソードと、
    前記第1及び第2カソードのターゲットの表面の近傍にそれぞれマグネトロンスパッタリング用の磁場を形成する磁場形成部と、
    前記第1及び第2カソードの間に介在する成膜用電源と、
    前記第1及び第2カソードのターゲットの表面と前記基材との間に介在して当該第1カソード及び第2カソードのターゲットの表面を一括して前記基材から遮断する閉位置と前記第1及び第2カソードのターゲットの表面と前記基材との間を開放して当該ターゲットによる前記基材の表面への成膜を許容する開位置との間で開閉動作が可能なシャッタと、を備える、成膜装置。
  2. 請求項1記載の成膜装置であって、前記第1及び第2カソードは、それぞれのターゲットの表面が同じ方向を向くように配置される、成膜装置。
  3. 請求項1または2記載の成膜装置であって、前記シャッタは、前記第1及び第2カソードのターゲットの並び方向と同じ方向に並ぶ一対の開閉部材を含み、これらの開閉部材が前記並び方向と直交する回動中心軸回りに回動可能となるように前記成膜チャンバに支持されて当該回動により前記開位置と前記閉位置との間で移動する、成膜装置。
  4. 請求項3記載の成膜装置であって、前記各回動中心軸は、前記第1及び第2カソードを挟んで前記開閉部材と反対の側の位置に設定されている、成膜装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の成膜装置であって、前記成膜チャンバにおいて前記基材を挟んで互いに対角となる箇所にそれぞれ前記第1及び第2カソード並びに前記シャッタが設けられる、成膜装置。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の成膜装置であって、前記第1及び第2カソードに加え、前記成膜チャンバ内に配置されて前記第1及び第2カソードによるスパッタリングとは異なる成膜を実行する成膜部をさらに備える、成膜装置。
  7. 請求項6記載の成膜装置であって、前記成膜チャンバにおいて前記基材を挟んで互いに対角となる箇所にそれぞれ、前記第1及び第2カソード並びにシャッタが設けられ、これらの箇所とは異なる箇所であって前記第1及び第2カソードとともに前記基材を囲む箇所に前記成膜部が配置される、成膜装置。


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