以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置について詳細に説明する。なお、本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置は、以下に示す構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
図1及び図2に示すように、本実施形態においてロータリースクリーン印刷装置は、圧胴100と、ロータリースクリーン装置200とを備えて構成されている。
圧胴100は、左右両フレーム101,101間に回動自在に支持されている。圧胴100には、図示はしないがその外周面に当該圧胴100の軸方向に沿った切欠き部が形成されている。切欠き部は当該圧胴100の周方向に沿って等間隔で複数(例えば、本実施形態では二箇所)形成されている。そしてこの切欠部内に被印刷物を保持する爪等の保持部を備えている。
一方、ロータリースクリーン装置200においては、ロータリースクリーン201が支承部材202及びブラケット203を介してサブフレーム204に支持されている。
<ロータリースクリーンの回転駆動に係る構造>
ロータリースクリーン201は、スクリーン版201Aと、スクリーン版201Aの両端に固定された筒状のエンドリング201Bとから構成される。スクリーン版201Aは絵柄に応じた小孔をエッチングした薄い版材を円筒状にしてなる円筒体である。
エンドリング201Bはスクリーン版201Aを補強するための部材である。エンドリング201Bには図示しない複数(本実施形態では二つ)の切欠き部(以下、エンドリング側切欠き部)及び図示しないピン溝が形成されている。エンドリング側切欠き部はエンドリング201Bの軸方向に対してスクリーン版201Aとは反対側の端部であってその外周面に、周方向に等間隔に設けられている。ピン溝は隣り合うエンドリング側切欠き部間に設けられ、外周面から軸心に向かってU字状に切り欠かれている。このエンドリング201Bは、支承部材202に支持されている。
支承部材202は筒状の部材であり、エンドリング201Bを着脱可能に支持している。すなわち、支承部材202には図示しない複数(本実施形態では二つ)の突出部(以下、支承部材側突出部)が形成されるとともに図示しないピンが設けられている。支承部材側突出部は支承部材202の軸方向に対してエンドリング201B側であってその内周面に、周方向に等間隔(前記エンドリング側切欠き部と同間隔)に設けられている。なお、支承部材側突出部は前記エンドリング側切欠き部に嵌合する形状となっている。また、ピンは一方の支承部材側突出部に固定されている。
なお、本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置において、スクリーン版201Aの一端に固定されたエンドリング201Bと当該エンドリング201Bを支持する支承部材202とにより第一の支持部材が構成される。また、スクリーン版201Aの他端に固定されたエンドリング201Bと当該エンドリング201Bを支持する支承部材202とにより第二の支持部材が構成される。
このように構成されることにより、ロータリースクリーン201は支承部材202に、次に説明するように支持される。まず、エンドリング側切欠き部と支承部材側突出部の周方向の位置を合わせた状態でエンドリング201Bを支承部材202の中空部に挿通する。続いて、エンドリング側切欠き部と支承部材側突出部とが緩衝しない位置で支承部材202に対してロータリースクリーン201を回転させる。最後に、前記ピン溝と前記ピンとの位置を合わせた状態で支承部材202に対してロータリースクリーン201を軸方向に移動させ、前記ピン溝に前記ピンを係合させる。これによりロータリースクリーン201を支承部材202に支持させることができる。
そして、支承部材202はブラケット203に回転可能に支持されている。ブラケット203は、ロータリースクリーン支持部203aと、回転軸支持部203bとを一体的に備えて構成されている(図2参照)。
ロータリースクリーン支持部203aは貫通孔を備え、この貫通孔に上述した支承部材202が回動自在に支持されている。一方、回転軸支持部203bは枠状に形成され、ロータリースクリーン支持部203aに隣接して(図2ではロータリースクリーン支持部203aの下方に)設けられている。この回転軸支持部203bには、ロータリースクリーン201の軸方向に直交する面に貫通孔が形成されている。そして軸方向両側のブラケット203の回転軸支持部203bの貫通孔に、ロータリースクリーン201の軸方向に平行に延びる回転軸205,206がそれぞれ回動自在に支持されている(図2参照)。
なお、図2に示すように、回転軸205と回転軸206とは、筒状の連結部材207を介して軸方向に移動可能に連結されている。すなわち、連結部材207はその一端に回転軸205の一端が挿通されて固定されている一方、他端の内周面にスプラインが形成されている。これに対し、回転軸206の回転軸205側の端部にもスプラインが形成されている。これら連結部材207に形成されたスプラインと回転軸206の一端に形成されたスプラインとが噛み合うことで、回転軸205と回転軸206とが軸方向に摺動可能かつ一体的に回転可能な構造となっている。
ここで、一方(図2では右側)の支承部材202の外周面には第一のギアとしてのギア202aが固着されている。さらに、回転軸205の他端にもギア205aが固着されている。そして、一方の支承部材202のギア202aと、回転軸205のギア205aとが中間ギア208を介して噛み合っているとともに、回転軸205のギア205aには駆動モータとしての駆動用モータ209のギア209aが噛み合っている(図1参照)。
また、他方(図2では左側)の支承部材202の外周面に第二のギアとしてのギア202aが固着されているのに対し、回転軸206の他端には駆動断接手段としてのクラッチ210を介してギア206aが着脱可能に連結されている。そして、支承部材202のギア202aと、回転軸206のギア206aとが中間ギア208を介して噛み合っている。
これにより、駆動用モータ209の駆動が、駆動用モータ209のギア209a、回転軸205のギア205a、中間ギア208、支承部材202のギア202a、支承部材202を介してロータリースクリーン201の一端に伝わるとともに、駆動用モータ209のギア209a、回転軸205のギア205a、回転軸205、連結部材207、回転軸206、クラッチ210、回転軸206のギア206a、中間ギア208、支承部材202のギア202a、支承部材202を介してロータリースクリーン201の他端に伝わるように構成されている。これにより、ロータリースクリーン201はその両端が回転駆動されるようになっている。
また、ブラケット203はサブフレーム204に、ロータリースクリーン201の軸方向に摺動可能に支持されている。具体的には、サブフレーム204にロータリースクリーン201の軸方向に沿って延びる図示しないレールが設置されており、ブラケット203は前記レールに沿って移動可能に構成されている。このブラケット203の移動は、ロータリースクリーン位置調整用モータ211を利用して行われる。
すなわち、ロータリースクリーン位置調整用モータ211の駆動ロッド211aの先端には当該ロータリースクリーン位置調整用モータ211の駆動によって回転するネジ211bが形成されている。これに対し、一方(図2では右側)のブラケット203にはネジ211bに螺合する雌ネジが形成されたブロック236が固定されている。このブロック236にネジ211bが螺着されることにより、ロータリースクリーン位置調整用モータ211の駆動に伴って一方のブラケット203がロータリースクリーン201の軸方向に移動する。このとき、他方のブラケット203はロータリースクリーン201を介して一方のブラケット203に連結されているため、当該他方のブラケット203も一方のブラケット203の移動に追従して軸方向に移動する。
さらに、他方のブラケット203にはテンションシリンダ212の先端が固定されている。テンションシリンダ212は、ロータリースクリーン201の軸方向のテンション調整を行うものであり、他方のブラケット203を一方のブラケット203とは反対側に押圧するように設定されている。これによりロータリースクリーン201はその軸方向に常に張力が加わった状態となっている。
以上により、ロータリースクリーン201の回転駆動及び天地見当合わせを行うことができる。
<ロータリースクリーン及びスキージの着脱に係る構造>
更に、ロータリースクリーン201内には、スキージ213が貫挿されている。スキージ213は、ブレード213Aと、スキージバー213Bとを備えている(図1参照)。ブレード213Aは特殊インキをスクリーン版201Aの小孔から圧胴100側に供給する部材、要するに、スキージ本体である。スキージバー213Bはブレード213Aを支持する支持体であるとともにスクリーン版201Aの内面に特殊インキを供給する部材である。ロータリースクリーン印刷装置では、ブレード213Aの先端がスクリーン版201Aの内周面に摺接することで、スキージバー213B内を通ってスクリーン版201A内に供給された特殊インキが前記小孔を介して被印刷物の印刷面に刷り移されるようになっている。
ここで、サブフレーム204には上述した構造に加えて、さらに、ロータリースクリーン201の軸方向両端にそれぞれ四つのフランジ204a,204b,204c,204dが設けられている。
第一のフランジ204aは、圧胴100を支持するフレーム101に設けられたフランジ101aにピン214を介して搖動可能に連結されている(図3参照)。ピン214はその軸方向がロータリースクリーン201の軸方向に平行するように配設されている。
第二のフランジ204bはスキージ着脱用シリンダ215の基端にピン216を介して搖動可能に連結されている(図2参照)。スキージ着脱用シリンダ215はスキージ213を後述する着脱位置及び退避位置に移動させるために設けられた二段シリンダであり、その先端が支持板217にピン218を介して搖動可能に連結されている。
ここで、支持板217にはその一角が円弧状に切り欠かれてなる円弧状切欠き部が形成されているとともに、ウォーム234が固定されている。前記円弧状切欠き部には、スキージ保持部材219が回動自在に支持されている。スキージ保持部材219にはスキージバー213Bが着脱自在に固定されている。
より詳しくは、図1に示すように、スキージ保持部材219は前記円弧状切欠き部に嵌合する断面視概ね半円状に形成されたスキージ保持部219Aと、スキージ保持部219Aの直線部に対向して配置される押さえ板219Bとを備えている。スキージ保持部219Aにはその直線部の中心にスキージバー213Bに嵌合する矩形溝が形成されている。スキージ保持部材219は、この矩形溝にスキージバー213Bを嵌め込み、切欠き部の開口部を押さえ板219Bによって閉塞することによりスキージを固定する。
よって、図4に実線で示すように印刷中は押さえ板219Bを当該押さえ板219Bの長手方向がスキージバー213Bの長手方向と直交するように配置することでスキージバー213Bを固定することができる。また、スキージバー213Bの交換等を行う場合は、図4中に二点鎖線で示すようにハンドル219Cを操作して押さえ板219Bを回動させ押さえ板219Bの長手方向がスキージバー213Bの長手方向と平行するように配置することでスキージバー213Bを取り外すことができる。
ここで、図4に示すように、押さえ板219Bはスキージ保持部219Aにネジ219Dを介して連結されており、ネジ219Dの先端に固定されたハンドル219C(図1参照)を回転させることによってスキージ保持部219Aと押さえ板219Bとの締結を緩めると、押さえ板219Bを回動させることができるようになっている。さらに、スキージ保持部219Aには位置決め用のピン219Eが設けられている一方、押さえ板219Bにはピン219Eに係合する切欠き219Baが形成されている。これにより、押さえ板219Bによってスキージバー213Bを押さえる際の押さえ板219Bの位置決めを簡単に行うことができるようになっている。
さらに、スキージ保持部材219のウォームホイールには前記ウォーム234が噛み合っている。スキージ保持部材219はウォーム234を回動させることで支持板217の前記円弧状切欠き部に沿って回動する。これにより、ブレード213Aのスクリーン版201Aに対する当たりの角度を調整することができる。
ここで、本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置においては、印刷時に、ロータリースクリーン201の中心P1と、スキージ213(スキージ保持部材217)の回動中心P2と、スクリーン版201Aの圧胴100との対接点(ブレード213Aの先端とスクリーン版201Aとの接点)P3とが一直線(図1で示すL1)上に位置するように、支持板217を配置している。
このように構成したことにより、インキの種類等に応じてブレード213Aのスクリーン版201Aに対する当たりの角度を調整する場合、ウォーム234によってスキージ保持部材219を回動させ、ブレード213Aの角度を調整するが、前述した三点P1,P2,P3を一直線上に位置するようにしたことにより、ブレード213Aの角度調整の際にブレード213Aが必要以上にスクリーン版201Aに押し付けられるおそれがなく、スクリーン版201Aを傷つけることがない。
なお、ピン216及びピン218はそれぞれその軸方向がロータリースクリーン201の軸方向に平行するように配設されている。
第三のフランジ204cは支持板217にピン220及び偏心スリーブ221を介して搖動可能に連結されている。偏心スリーブ221には長穴221aが形成されており、この長穴221aに、支持板217に固定されたピン221bが前記長穴221aに沿って摺動可能に嵌合されている。ここで、上述したようにスキージ保持部材219を回動させてスクリーン版201Aに対するブレード213Aの当たりの角度調整を行うと、ブレード213Aの先端が接点P3からずれてしまう。そこで、偏心スリーブ221は上述したブレード213Aの先端が図1に示す接点P3を通る圧胴100との接線L2上を移動するように偏心されている。これにより、スキージ保持部材219の回動に伴うブレード213Aの先端位置の接点P3からのずれを偏心スリーブ221により修正することができる。
なお、図1中に示す符号235は支持板217の着位置側への回動を規制するストッパである。ストッパ235にはその軸方向がピン220の接線方向に直交するネジ236が、軸方向に進退自在に貫通している。ストッパ235は、スキージ213をスキージ着位置に配置したときのブレード213Aの圧胴100に対する圧をネジ236の突出量で調整するものである。そして、支持板217のネジ236に当接する面217aは前記接線L2と面一となるように設計されている。これにより、偏心スリーブ221によってブレード213Aが接線L2上を移動したとしても、スキージ213をスキージ着位置に配置したときのブレード213Aのスクリーン版201Aに対する圧を一定に保つことができる。ここで、ネジ236の突出量は、作業者によってネジ236を直接回して調整してもよいし、当該ネジ236に図示しないモータのギアを噛み合わせて遠隔操作によってネジ236を回し、その突出量を調整するようにしてもよい。
なお、ピン220はそれぞれの軸方向がロータリースクリーン201の軸方向に平行するように配設されている。
第四のフランジ204dには第一リンク部材222がピン223を介して搖動可能に連結されている(図1及び図3参照)。第一リンク部材222は第二リンク部材224にピン225を介して搖動可能に連結されている。第二リンク部材224は回転軸226を挿通・固定している。
ここで、図3に示すように、前記第一リンク部材222及び第二リンク部材224はそれぞれフレーム101の内部に配設されている。回転軸226はフレーム101を貫通してその軸方向がロータリースクリーン201の軸方向と平行するように配設されており、少なくともその一端(図4では左側)がフレーム101の外部に突出している。
そして、フレーム101の外部において、回転軸226の前記一端が第三リンク部材227に挿通されて固定されている。第三リンク部材227にはスクリーン版着脱用シリンダ228の駆動ロッド228aの一端がピン229を介して搖動可能に連結されている。スクリーン版着脱用シリンダ228の駆動ロッド228aの他端はピン230を介してフレーム101に搖動可能に連結されている。なお、ピン223、ピン225、ピン229及びピン230はそれぞれの軸方向がロータリースクリーン201の軸方向に平行するように配設されている。
以上のように構成することにより、本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置では、ロータリースクリーン201及びスキージ213の位置を制御する。まず、スキージ着脱用シリンダ215によってロータリースクリーン201の内周に対するスキージ213の位置を制御することができる。具体的には、スキージ着脱用シリンダ215を伸長させるとピン218、ピン220に軸支されつつ支持板217が(図1では反時計回りに)搖動し、支持板217と一体的にスキージ213がスキージ着位置に移動する。また、スキージ着脱用シリンダ215を収縮させるとピン218、ピン220に軸支されつつ支持板217が(図1では時計回りに)搖動し、支持板217と一体的にスキージ213がスキージ脱位置に移動する。スキージ着脱用シリンダ215をさらに収縮させるとピン218、ピン220に軸支されつつ支持板217が(図1では時計回りに)搖動し、支持板217と一体的にスキージ213がスキージ交換位置に移動する。
なお、ここでいうスキージ着位置とは、ブレード213Aの先端がスクリーン版201Aの内周面に当接する位置、すなわち、印刷を行う位置である。また、スキージ脱位置とは、印刷中に前述した圧胴100の爪を避ける場合など、ブレード213Aの先端がスクリーン版201Aの内周面から離間する位置である。また、スキージ交換位置とは、スクリーン版201Aの交換時又は印刷終了時等にスキージ213をロータリースクリーン201の軸心側へ退避させる位置である。
また、スクリーン版着脱用シリンダ228によってロータリースクリーン201とスキージ213との位置を一体的に制御することができる。すなわち、スクリーン版着脱用シリンダ228を収縮させると、第三リンク部材227、第二リンク部材224、第一リンク部材222を介してサブフレーム204全体が(図1では反時計回りに)搖動し、これに伴いブラケット203を介してロータリースクリーン201がロータリースクリーン着位置に移動するとともに、支持板203を介してスキージ213がロータリースクリーン着位置に移動する。また、スクリーン版着脱用シリンダ228を伸長させると、第三リンク部材227、第二リンク部材224、第一リンク部材222を介してサブフレーム204全体が(図1では時計回りに)搖動し、これに伴いブラケット203を介してロータリースクリーン201がロータリースクリーン脱位置に移動するとともに、支持板203を介してスキージ213がロータリースクリーン脱位置に移動する。
なお、ここでいうロータリースクリーン着位置とはスクリーン版201Aが圧胴100に当接する位置、換言するとロータリースクリーン201により被印刷物に印刷を行う際の位置である。ロータリースクリーン脱位置とは、印刷終了後またはロータリースクリーンの交換時等、ロータリースクリーン201を圧胴100から離間させる位置である。
以上により、ロータリースクリーン201及びスキージ213を一体的に着脱位置に移動させることができる。
<スキージ交換に係る構造>
更に、図1及び図2に示すように、ロータリースクリーン201の上方にはスライドレール231が設けられている。スライドレール231はロータリースクリーン201の軸方向に沿って延設されており、フレーム101の、圧胴100を挟んでロータリースクリーン201とは反対側に支持されている。このスライドレール231は固定レール231A、中間レール231B、可動レール231Cから構成されている。
固定レール231Aはフレーム101に固定されている。中間レール231Bは固定レール231Aに、ロータリースクリーン201の軸方向に摺動可能に支持されている。可動レール231Cは中間レール231Bに、ロータリースクリーン201の軸方向に摺動可能に支持されている。換言すると、中間レール231Bが固定レール231Aと可動レール231Cの両方に摺動可能に連結されている。なお、このスライドレール231は例えば特許文献2に開示されているスライドレールと同様の構成を有して長手方向に伸縮する案内レールであって、ここでは詳しい説明は省略する。
更に、可動レール231Cの一端(図2では左側)にはスキージ支承アーム232の一端が蝶番233を介して回動自在に支持されている。
スキージ支承アーム232はロータリースクリーン201の軸方向と平行する軸周りに作業位置と退避位置との間で回動可能となっている。このスキージ支承アーム232の他端にはスキージ支持部232Aと、押さえ板232Bと、ハンドル232Cと、図示しないスキージ昇降手段と、取っ手232Dとが設けられている。なお、ここでいう作業位置とは、ロータリースクリーン201に対してスキージ213を出し入れするための位置(図6に二点鎖線で示す位置)、退避位置とは、印刷中に作業の邪魔にならない位置(図6に実戦で示す位置)のことである。
スキージ支持部232Aは、作業位置において断面視矩形状のスキージバー213Bの側面および下面に嵌合するようにL字状に形成されている。
押さえ板232Bは、スキージバー213Bの上面に対向する開口部を閉塞してスキージ支持部232Aに収納されたスキージバー213Bを固定するように構成されている。なお、押さえ板232Bはスキージ支持部232Aに図示しないネジを介して連結されており、前記ネジの先端に固定されたハンドル232Cを回転させることによってスキージ支持部232Aと押さえ板232Bとの締結を緩めると、押さえ板232Bを回動させることができるようになっている。これにより、スキージバー213Bを取り換える際などは押さえ板232Bを回動させてスキージバー213Bの上面に対向する開口部を開放してスキージ支持部232Aからスキージバー213Bを取り外す、または取り付けることができる。
スキージ昇降手段は、スキージ支持部232Aと押さえ板232Bとを一体的にスキージ支承アーム232の長手方向に移動させる手段である。スキージ昇降手段としては、スキージ支持部232Aを送りねじを介してスキージ支承アームに支持させ、この送りねじを手回しハンドル或いはモータで回転させるものでもよいし、スキージ支持部232Aとスキージ支承アーム232とを連結するエアシリンダであってもよい。なお、図2中の符号232Dは取っ手を示している。
このように構成されることにより、スキージ支承アーム232はフレーム101に近接した近傍位置とフレーム101から離間した離間位置との間を横レールに沿って移動可能となる。なお、スライドレール231は、スキージ支承アーム232を離間位置に移動した際に、当該スキージ支承アーム232とフレーム101との間の距離がスキージバー213Bよりも長くなるようにその長さを設定されている。また、スキージ支承アーム232はスキージ支持部232Aおよび押さえ板232Bがロータリースクリーン201の他端側に対向する作業位置とロータリースクリーン201の他端側から退避する退避位置との間で移動可能となる。ここで、スキージ支承アーム232の搖動中心はロータリースクリーン201の軸方向に平行になっているため、スキージ支承アーム232はフレーム101の側面に沿って搖動することができ、退避位置に位置づけられたとしてもフレーム101の側面から大きく突出することが無く作業者の邪魔にならない。
以上が、スキージ213の交換に係る構造である。
以下、図5を参照しつつ本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置における作業の流れを説明する。
図5に示すように、本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置の制御装置300には、版交換スイッチ301、装着完了スイッチ302、ロータリエンコーダ303、印刷スタートスイッチ304、カウンタ305、及び印刷停止スイッチ306からの操作信号が入力されるとともに、タイマー307からの検出信号が入力される。
また、制御装置300は、クラッチ210、テンションシリンダ212、駆動用モータ209、スキージ着脱用シリンダ213、スクリーン版着脱用シリンダ228、およびタイマー307を駆動制御するようになっている。
以下に、本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置のロータリースクリーン201の交換の流れを説明する。
まず、作業者により版交換スイッチ301が操作されると、制御装置300からクラッチ210に対して回転軸226との接続を断接(OFF)するよう指令が出力されるとともに、テンションシリンダ212に対してOFFの指令が出力される。
テンションシリンダ212がOFFになったら、作業者により操作側(図2では左側)の支承部材202と操作側のエンドリング201Bとの係合を解除し、操作側の支承部材202を外側へ移動する。続いて、原動側(図2では右側)の支承部材202と原動側のエンドリング201Bとの係合を解除して旧版を取り外し、新スクリーン版201Aの両端にエンドリング201Bを取り付ける。その後、新スクリーン版201Aの原動側のエンドリング201Bを原動側の支承部材202に取り付ける。続いて、操作側の支承部材202を内側へ移動させ、新スクリーン版201Aを回動させて新スクリーン版201Aの操作側のエンドリング201Bとの位相合わせを行い、支承部材202にエンドリング201Bを取り付ける。その後、装着完了スイッチ302をONにする。
装着完了スイッチ302が操作されると、制御装置300からテンションシリンダ212をONに、また駆動用モータ209をONに、さらにタイマー307による計時をスタートするように指令が出力される。これにより、ロータリースクリーン201にテンションがかかった状態になるとともに、ロータリースクリーン201及び回転軸205が回転駆動される。さらに、ロータリースクリーン201の回転に伴って回転軸206のギア206aが回転する一方、回転軸205の回転に伴って回転軸206が回転する。このとき、クラッチ210は回転軸226との接続を断接されていることから、回転軸206のギア206aの回転と回転軸206の回転とは各々独立した状態となっている。
続いて、タイマー307が予め設定した第一設定時間だけ計時を行ったら、制御装置300からクラッチ210に回転軸206との接続をONの指令が出力される。これにより、回転軸206のギア206aが回転軸206に接続され、ロータリースクリーン201の両端が駆動用モータ209により回転駆動された状態となる。
そして、タイマー307が第二設定時間だけ計時を行ったら制御装置300から駆動用モータ209に停止の指令が出力され、ロータリースクリーン201の交換を終了する。
以上に示した操作を行うことにより、エンドリング201Bをスクリーン版201Aに取り付ける際に相互の周方向の基準位置が多少ずれていたとしても、ロータリースクリーン201の両端を駆動用モータ209によって回転駆動する際に原動側と操作側とで見当がずれることが無く、印刷品質の低下を防止することができる。更に加えて、駆動用モータ209により一定時間ロータリースクリーン201を片側駆動した後にクラッチ210を接続することにより、バックラッシュが原因で左右の見当がずれることも防止することができる。
続いて、本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置のロータリースクリーン201及びスキージ213の位置制御について説明する。
まず、制御装置300に印刷スタートスイッチ304の操作信号が入力され、ロータリエンコーダ303から一枚目のシート(被印刷物)の印刷開始位相となったという検出信号が入力されたら、制御装置300からスキージ着脱用シリンダ213及びスクリーン版着脱用シリンダ228にONの指令が出力される。これにより、ロータリースクリーン201及びスキージ213がロータリースクリーン着位置に移動するとともに、スキージ213がロータリースクリーン201内でスキージ着位置に移動する。
続いて、制御装置300にロータリエンコーダ303から圧胴切欠き開始位相となったという検出信号が入力されたら、制御装置300からスキージ着脱用シリンダ213にOFFの指令が出力される。これにより、スキージ213が脱位置に移動する。
続いて、制御装置300にロータリエンコーダ303から圧胴切欠き終了位相となったという検出信号が入力されたら、制御装置300からスキージ着脱用シリンダ213にONの指令が出力される。これにより、再度スキージ213がスキージ着位置に配置される。印刷中は上述したスキージ213のスキージ着位置、スキージ脱位置への移動が繰り返される。
そして、制御装置300に印刷停止スイッチ306の操作信号が入力され、ロータリエンコーダ303から最終シート印刷完了位相となったという検出信号が入力されたら、制御装置300からスキージ着脱用シリンダ213及びスクリーン版着脱用シリンダ228にOFFの指令が出力される。一方、制御装置300に印刷停止スイッチ306の操作が入力されない場合は、カウンタ305からの信号を監視する。そして、予め設定した所定時間が経過し、ロータリエンコーダ303から最終シート印刷完了位相となったという検出信号が入力されたらスキージ着脱用シリンダ213及びスクリーン版着脱用シリンダ228にOFFの指令が出力される。これにより、ロータリースクリーン201及びスキージ213がロータリースクリーン脱位置に移動するとともに、スキージ213がロータリースクリーン201内でスキージ脱位置に移動する。
なお、ここでいうスキージ着脱用シリンダ213のONはスキージ着脱用シリンダ213がブレード213Aをスキージ着位置に移動させるための動作を行うことを示し、スキージ着脱用シリンダ213のOFFはスキージ着脱用シリンダ213がブレード213Aをスキージ脱位置に移動させるための動作を行うことを示す。また、スクリーン版着脱用シリンダ228のONはスクリーン版着脱用シリンダ228がロータリースクリーン201及びスキージ213をロータリースクリーン着位置に移動させるための動作を行うことを示し、スクリーン版着脱用シリンダ228のOFFはスクリーン版着脱用シリンダ228がロータリースクリーン201及びスキージ213をロータリースクリーン脱位置に移動させるための動作を行うことを示す。
以上に示した操作を行うことで、ロータリースクリーン201とスキージ213とを一体的に印刷位置と退避位置との間で移動させることができる。すなわち、本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置においては、スキージ213をスクリーン版201Aの内周に対して着脱自在に支持する支持板217が、スクリーン版201Aをブラケット203を介して支持するサブフレーム204に支持された状態となっている。そのため、スクリーン版着脱用シリンダ228によってロータリースクリーン201を印刷位置または退避位置に位置付ける際、同時に、スキージ213をロータリースクリーン201と一体的に移動させることが可能になるのである。
これにより、ロータリースクリーン201およびスキージ213の移動に係る時間を短縮することが可能となり、印刷が終了した直後に、スキージ213とロータリースクリーン201とを同時に退避位置に移動させることができるため、圧胴100にロータリースクリーン201のインキが付着する等のおそれがなくなる。これに対し、従来は、まずスキージ213をロータリースクリーン201の軸心側へ移動した後、ロータリースクリーン201を退避位置に移動させる必要があったため、印刷終了後に圧胴100にロータリースクリーン201が直接接触して、圧胴100にロータリースクリーン201のインキが付着するおそれがあった。
さらに、このような構成を採用し、支持板217をサブフレーム204に支持させたことにより、支持板217によるスキージ213の左右の支持位置を互いに近接させることが可能となり、スキージ213の長さを最小限にしてスキージ213の軽量化を図ることも可能となり、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
続いて、本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置のスキージ213の取付、取り外し作業の流れを説明する。
まず、スキージ213を取り付けるときには、スキージ支承アーム232をロータリースクリーン201の軸方向に対して離間位置に位置付けるとともに、ロータリースクリーン201の軸方向に平行する軸周りに対して作業位置に位置付け、スキージバー213Bの一端を開口部からスキージ支持部232aにはめ込む。
その後、押さえ板232bにより前記開口部を閉塞してスキージ支持部232aに収容されたスキージバー213Bを固定し、スキージ213を片持ち支持させる。そして、スキージ昇降手段によりスキージ支持部232aと固定部232bを介してスキージ213を上昇させ、スキージ支承アーム232をロータリースクリーン201の軸方向に対して近傍位置へと移動させる。スキージ支承アーム232の近傍位置への移動の際、スライドレール231は収縮しながらスキージ支承アーム232を案内する。
スキージ支承アーム232を近傍位置に位置づけたあと、スキージ昇降手段によりスキージ213を下降させ、スキージバー213Bが左右のスキージ保持部材219の矩形溝に嵌ったらスキージ昇降手段によるスキージ213の下降を一旦停止させ、押さえ板232Bを操作して開口部を解放させた後、スキージ昇降手段によるスキージ213の下降を再開させると、スキージ支持部232Aの下降により、当該スキージ支持部232Aからスキージバー213が外れる。その後、左右のスキージ保持部材219の押さえ板219Bを回動させて当該押さえ板219Bによって矩形溝の開口部を閉塞し、ハンドル219Cを回動させることにより左右のスキージ保持部材219の矩形溝内にスキージバー213Bが固定される。
その後、スキージ支承アーム232をロータリースクリーン201の軸方向に平行する軸周りに対して退避位置に位置づける。これにより、ロータリースクリーン201の端部開口からロータリースクリーン201のインキの状態を目視したり、ロータリースクリーン201内部へアクセスする際に、スキージ支承アーム232が邪魔にならないので、確認作業や調整作業、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
一方、スキージ213を取り外すときには、スキージ213の取付と逆の作業を行う。すなわち、スキージ保持部材219を交換位置に位置づけ、押さえ板219Bを回動させて左右のスキージ保持部材219の矩形溝の上方開口を解放させる。その後、スキージ支承アーム232を退避位置から作業位置に位置づける。その際、スキージ支持部232Aはスキージ保持部材219に支持されたスキージ213よりも下方に位置づけられている。そして、スキージ昇降手段によりスキージ213を上昇させ、スキージバー213Bがスキージ支持部232Aに嵌ったらスキージ昇降手段によるスキージ213の上昇を一旦停止させ、押さえ板232Bを操作して開口部を閉塞させた後、スキージ昇降手段によるスキージ213の上昇を再開させると、スキージバー213Bはスキージ保持部材219の矩形溝から外れる。
スキージバー213Bをスキージ保持部材219から離間した位置まで上昇させた後、スキージ昇降手段によるスキージ213の上昇を停止させ、スキージ支承アーム232を近傍位置から離間位置へ移動させる。スキージ支承アーム232の離間位置への移動の際、スライドレール231は伸長しながらスキージ支承アーム232を案内する。
このスキージ支承アーム232の近傍位置或いは離間位置への移動中に、スキージ213はロータリースクリーン201の内部を通ることになるが、ロータリースクリーン201のエンドリング210Bの開口が大径となっているため、スキージ213がエンドリング201Bに接触することが無く、また、スキージ昇降手段によりスキージ213を上昇させているため、交換位置に位置付けられているスキージ保持部材219(扇形に形成されたウォームホイール)に接触することもないので、スキージ213やエンドリング201B、スキージ保持部材219が損傷することが無い。
また、スキージ213は小型化され軽量なため、作業者は容易にスキージ213を持ち上げることができ、スキージバー213Bをスキージ支承アーム232のスキージ支持部232Aに対して装着及び取り外しを行うことができる。さらに、スキージ支承アーム232を片持ちするような伸縮自在なスライドレール231を設けたことにより、スキージ213のロータリースクリーン201内部に対する出し入れを容易に行うことができる。
スキージ支承アーム232を片持ち支持可能なスライドレール231を使用することにより、スキージ支承アーム232を近傍位置に位置付けたときにはスキージ支承アーム232もスライドレール231もフレーム101の外側にほとんど突出しないため、作業の邪魔になることが無い。
このようなスキージ支承アーム232とスライドレール231の構成により、スキージの交換作業を一人の作業者で行うことができる。
なお、上述した本実施形態に係るロータリースクリーン印刷装置において、スキージ213を着脱位置及び退避位置に移動させるために設けられたスキージ着脱用シリンダ215、及び、ロータリースクリーン201及びスキージ213を印刷位置と退避位置との間で移動させるために設けられたスクリーン版着脱用シリンダ228は、シリンダに代えてモータを用いてもよい。