以下、本発明の一実施形態に係る塗布装置10(吐出装置)、及び吐出幅可変装置100について、図面を参照しつつ詳細に説明する。塗布装置10は、図1に示すように吐出幅可変装置100を産業用ロボット20に取り付けた形態のもの、あるいは図20に示すようにコンベア200上に設置した形態のもの等とすることができるが、以下説明する実施形態においては先ず図1に示すように産業用ロボット20に吐出幅可変装置100を設置した例について説明する。
図1に示すように、塗布装置10は、産業用ロボット20(移動装置)と、一軸偏心ねじポンプ50(以下、単に「ポンプ50」とも称す)と、吐出幅可変装置100と、制御装置170とを備えている。産業用ロボット20は、ロボットアーム等によって構成されている。産業用ロボット20のアーム22の先端にはポンプ50が取り付けられており、産業用ロボット20を作動させることにより流動物を吐出して塗布する対象物(塗布対象物W)に対してポンプ50を移動させることができる。
ポンプ50は、外部から流動物を圧送するために設けられた装置(流動物供給装置)である。ポンプ50は、いわゆる回転容積型のポンプであり、図2に示すように、ケーシング52の内部にステータ66、ロータ72、及び動力伝達機構78等を収容した構成とされている。ケーシング52は、金属製で筒状の部材であり、長手方向一端側に吐出口54が設けられている。吐出口54が設けられた側の端部には、後に詳述する吐出幅可変装置100が取り付けられている。また、ケーシング52の外周部分には、吸込口64が設けられている。吸込口64は、ケーシング52の長手方向中間部分に位置する中間部60においてケーシング52の内部空間に連通している。
ステータ66は、ゴム等の弾性体、又は樹脂等によって形成された略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ66は、ケーシング52において吐出口54に隣接する位置にあるステータ取付部56内に収容されている。ステータ66の外径は、ステータ取付部56の内径と略同一である。そのため、ステータ66は、その外周壁がステータ取付部56の内周壁に略密着するような状態で取り付けられている。また、ステータ66は、一端側がケーシング52の端部において後に詳述する吐出幅可変装置100によって挟み込まれている。
ステータ66の内周壁70は、n条で単段あるいは多段の雌ネジ形状とされている。本実施形態においては、ステータ66は、2条で多段の雌ねじ形状とされている。更に具体的には、ステータ66の内部には、ステータ66の長手方向に沿って伸び、前述したピッチでねじれた貫通孔68が設けられている。貫通孔68は、ステータ66の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)が略長円形となるように形成されている。
ロータ72は、金属製の軸体であり、n−1条で単段あるいは多段の雌ネジ形状とされている。本実施形態においては、ロータ72は、1条で偏心した雄ねじ形状とされている。ロータ72は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状が略真円形となるように形成されている。ロータ72は、上述したステータ66に形成された貫通孔68に挿通され、貫通孔68の内部において自由に偏心回転可能とされている。
ロータ72をステータ66に対して挿通すると、ロータ72の外周壁74とステータ66の内周壁70とが両者の接線で密接した状態になり、ステータ66の内周壁70とロータ72の外周壁との間に流体搬送路76が形成される。流体搬送路76は、ステータ66やロータ72の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
流体搬送路76は、ロータ72をステータ66の貫通孔68内において回転させると、ステータ66内を回転しながらステータ66の長手方向に進む。そのため、ロータ72を回転させると、ステータ66の一端側から流体搬送路76内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路76内に閉じこめた状態でステータ66の他端側に向けて移送し、ステータ66の他端側において吐出させることが可能である。本実施形態のポンプ50は、ロータ72を正方向に回転させることにより、吸込口64から吸い込んだ流体を圧送し、吐出口54から後に詳述する吐出幅可変装置100に向けて吐出することが可能とされている。
動力伝達機構78は、ケーシング52の外部に設けられたポンプ駆動機96から上述したロータ72に対して動力を伝達するためのものである。動力伝達機構78は、動力伝達部80と偏心回転部82とを有する。動力伝達部80は、ケーシング52の長手方向の一端側に設けられている。
また、偏心回転部82は、動力伝達部80とステータ取付部56との間に形成された中間部60に設けられている。偏心回転部82は、動力伝達部80とロータ72とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部82は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成された連結軸88と、従来公知のユニバーサルジョイントなどによって構成された連結体94,98とを有する。そのため、偏心回転部82は、ポンプ駆動機96を作動させることにより発生した回転動力をロータ72に伝達し、ロータ72を偏心回転させることが可能である。
吐出幅可変装置100は、ポンプ50によって圧送させてきた流動物を所定の吐出幅で吐出できるものである。図2に示すように、吐出幅可変装置100は、上述したポンプ50の吐出口54側の端部に接続されている。図3及び図4に示すように、吐出幅可変装置100は、ケーシング110、内筒130、ノズル150、及び駆動機構部160(駆動装置)を備えている。
ケーシング110は、中空であって筒状の外筒部112(外筒/第一構造体)と、駆動機構設置部114とを有する。外筒部112は、内筒130(第二構造体)を内蔵する筒状の部分であり、外筒周部開口116(第一開口)及び導入口118を備えている。駆動機構設置部114は、後に詳述するように駆動機構部160をなす部品が収容される部分である。
外筒部112に設けられた外筒周部開口116は、外筒部112の周壁120の一部をなす吐出口形成部122に設けられている。外筒周部開口116は、スリット状の開口によって構成されており、外筒部112の内外を連通している。外筒周部開口116は、外筒部112の軸線方向、言い換えれば外筒部112の周方向に対して交差する方向(交差方向)に向けて直線的に延びるように形成されている。外筒周部開口116には、後に詳述するノズル150が取り付けられている。導入口118は、上述したポンプ50の吐出口54を接続するためのものであり、外筒部112の周壁120に設けられた導入口形成部124に形成されている。導入口118は、後に詳述する内筒130に設けられた内筒周部開口138に臨む(adapt)ように設けられている。
内筒130は、外筒部112の内側に形成された外筒内部空間126に収容されており、外径が外筒内部空間126の内径と略同一の大きさを有する中空の筒体である。内筒130は、一端側(基端130a側)及び他端側(接続端130b側)において軸受132,134によって回動可能なように軸支されている。すなわち、内筒130は、回動により外筒部112に対して相対移動可能とされている。内筒130は、接続端130bがケーシング110の一端側に形成された駆動機構設置部114側に突出しており、駆動機構部160に接続されている。
内筒130の周壁136には、内筒周部開口138(第二開口)が内外を連通するように形成されている。内筒周部開口138は、外筒部112に設けられた導入口118に臨む(面する)位置に設けられている。図5に示すように、内筒周部開口138は、開口幅d(内筒130の母線方向への長さ)が内筒130の周方向に連続的に変化するように形成されている。具体的には、内筒周部開口138は、内筒130を展開した状態において略二等辺三角形の開口形状を有する。また、内筒周部開口138に対して内筒130の周方向に外れた位置には、非開口部140が設けられている。また、図5に示すように、内筒周部開口138の開口幅dは、いずれの部位においても外筒部112に設けられた外筒周部開口116の開口幅sよりも小さい。また、内筒130の内側(内部空間)には、ポンプ50によって圧送されてきた流動物を導入するための流動物貯留部142が設けられている。すなわち、内筒130は、外筒部112に対して流動物貯留部142側に位置している。
図3及び図4に示すように、内筒周部開口138に対して基端130a側の位置、及び接続端130b側の位置には、内筒130の全周に亘ってOリング144,146が設けられている。Oリング144,146は、内筒130の周壁136と外筒部112の内周壁128との間を液密状態とするためのものである。そのため、内筒130の流動物貯留部142内に導入された流動物は、少なくともOリング144,146が設けられた位置よりも内筒130の基端130a側及び接続端130b側の領域に漏出しない。
図4に示すように、ノズル150は、上述したケーシング110をなす外筒部112の外筒周部開口116において、外筒部112の径方向外側に向けて突出するように取り付けられている。ノズル150は、外筒周部開口116に対応する形状の開口領域を有する部材である。図4に示すように、ノズル150の内側には、ノズル150の長手方向に複数の仕切152が設けられている。これにより、ノズル150の開口領域が、ノズル150の長手方向に区画領域154が並ぶように区切られている。本実施形態では、各区画領域154の開口形状は略四角形とされているが、略丸形、略三角形、あるいは略多角形とすることが可能である。仕切152は、ノズル150開口端側から外筒周部開口116側まで直線的に延びるように形成されている。
図3及び図4に示すように、駆動機構部160は、モータによって構成された駆動機162と、駆動機162の回転軸に接続された第一傘歯歯車164と、内筒130の接続端130b側に接続された第二傘歯歯車166とを有する。駆動機162は、ケーシング110の駆動機構設置部114内に向けて回転軸が突出するように設置されている。また、第一傘歯歯車164及び第二傘歯歯車166は、駆動機構設置部114内に収容されており、両者が噛合している。従って、駆動機162を作動させることにより、外筒部112内において内筒130を回動させることができる。また、駆動機162の回転量及び回転方向を制御することにより、内筒130の回転量の調整、及び回転方向の変更を行うことができる。
吐出幅可変装置100は、図5中においてハッチングを付して示すように、外筒部112に設けられた外筒周部開口116と、内筒130に設けられた内筒周部開口138とが重なる部分に、両者が連通した連通領域148が形成される。また、駆動機162の回転量及び回転方向を調整し、外筒周部開口116と内筒周部開口138との相対位置を変化させることにより、連通領域148の幅D(以下、「吐出幅D」とも称す)を変化させることができる。本実施形態では、図3及び図5中の矢印A方向に内筒130を回転させると連通領域148の吐出幅Dが漸次拡大し、これとは反対の矢印B方向に回転させると吐出幅Dが漸次縮小する。また、非開口部140が外筒周部開口116と重なる位置まで内筒130を回動させると、外筒周部開口116が非開口部140によって閉鎖された状態、すなわち吐出幅Dがゼロになり流動物を吐出できない状態になる。
制御装置170は、塗布対象物Wに対するポンプ50の相対位置を制御する位置制御、塗布対象物Wに対するポンプ50の移動速度を制御する速度制御、塗布幅可変装置100に対する流動物の供給量を制御する供給量制御、吐出幅可変装置100から吐出される流動物の吐出幅Dを制御する吐出幅制御等を単独、あるいは複合的に実施することができる。具体的には、図6に示すように、制御装置170は、吐出幅制御手段171、位置制御手段172、速度制御手段173、供給量制御手段174、及び同期手段175を備えている。制御装置170は、位置制御手段172によって産業用ロボット20の位置、アーム22の角度、伸縮量等を調整することにより、アーム22の先端に取り付けられたポンプ50の位置を制御(位置制御)することができる。また、制御装置170は、速度制御手段173によって産業用ロボット20及びアーム22の移動速度を調整することにより、塗布対象物Wに対するポンプ50の移動速度の制御(速度制御)を行うことができる。
また、制御装置170は、供給量制御手段174によってポンプ駆動機96の回転速度を制御することにより、吐出幅可変装置100に対する流動物の供給量の制御(供給量制御)を実施することができる。更に、制御装置170は、吐出幅制御手段171によって吐出幅可変装置100の駆動機162の回転量及び回転方向を調整し、外筒部112に設けられた外筒周部開口116と、内筒130に設けられた内筒周部開口138との相対位置を変化させることにより、吐出幅Dを増減させることができる。従って、制御装置170は、駆動機162の動作制御を行うことにより、流動物の吐出幅Dの制御(吐出幅制御)を行うことができる。
また、制御装置170は、同期手段175によって上述した位置制御、速度制御、供給量制御、及び吐出幅制御をそれぞれ同期させることが可能である。これにより、塗布対象物Wに対して所望の位置に所望の塗布幅で流動物を塗布すること、所望の速度で流動物を塗布すること、塗布作業の途中で吐出幅を漸次変化させること、及び所望の形状で流動物を塗布すること等が可能となる。以下、塗布装置10によって塗布対象物Wに対して流動物を塗布する際に制御装置170によって実施される動作制御について、図8(a)に示す塗布パターンにより塗布する場合を例に挙げ、図7のフローチャートを参照しつつ詳細に説明する。
図8(a)に示す塗布パターンにより塗布する場合は、始点Sから終点Eに至るまでの間に設けられた中間位置P1,P2において吐出幅Dの調整(変更)を行いつつ、流動物を塗布する。具体的には、始点Sから中間位置P1までの区間においては、吐出幅DをD1に調整し、供給量制御を行いつつ、位置制御によってポンプ50及び吐出幅可変装置100を移動させることにより流動物を塗布する。その後、中間位置P1まで塗布が完了した時点で吐出幅DをD2に変更し、供給量制御及び位置制御の下、中間位置P2まで塗布を進める。中間位置P2まで塗布が進むと、再び吐出幅DをD1に変更し、供給量制御及び位置制御の下で終点Eまで塗布を進める。
上述した一連の動作を図7のフローチャートに従って説明すると、塗布対象物Wに対して流動物を塗布する場合は、先ずステップ1において、制御装置170は塗布を開始する場所(始点S)を示す位置情報に基づいて産業用ロボット20及びアーム22を移動させ、ポンプ50の先端に取り付けられた吐出幅可変装置100を始点Sの位置まで移動させる。その後、制御フローがステップ2に進むと、制御装置170は、駆動機162の回転量及び回転方向を調整し、吐出幅Dが所望の塗布幅に合致した状態になるように内筒130を回動させる。図8(a)の塗布パターンにより塗布する場合においては、吐出幅可変装置100が始点Sに存在している場合は、吐出幅DがD1に調整される。また、流動物の塗布が進行し、中間位置P1あるいは中間位置P2に到達した場合は、吐出幅DがD2あるいはD1に調整される。
ここで、ステップ2において吐出幅Dの調整がなされると、流動物の吐出量が変化するため、吐出幅可変装置100に対する流動物の供給量についても調整する必要がある。具体的には、吐出幅Dを拡張した場合は、流動物の吐出量が増加するため、吐出幅可変装置100に対する流動物の供給量が増加するようにポンプ50におけるロータ72の回転速度を上昇させる必要がある。これとは逆に、吐出幅Dを縮小した場合は、流動物の吐出量が減少するため、ロータ72の回転速度を低下させ、流動物の吐出量を減少させる必要がある。そこで、ステップ2において吐出幅Dの調整が行われると、その後ステップ3において供給量制御の下、吐出幅可変装置100に対する流動物の供給量が調整される。
制御フローがステップ4に進行すると、産業用ロボット20及びアーム22を移動させることにより、塗布パターンに従ってポンプ50の先端に取り付けられた吐出幅可変装置100が移動させられる。これにより、ステップ2において設定された吐出幅Dにより流動物が吐出され、塗布対象物Wに対して塗布される。
ステップ4において吐出幅可変装置100の移動が開始された後、吐出幅可変装置100が吐出幅Dを変更すべき位置、具体的には中間位置P1あるいは中間位置P2に到達したことが確認されると、制御フローがステップ2に戻される。制御フローがステップ2に戻ると、上述したステップ2〜ステップ4のフローに従って吐出幅Dを変更した上で塗布動作がなされる。
一方、ステップ4において吐出幅可変装置100の位置が吐出幅変更位置(中間位置P1,P2)でないと判断された場合は、制御フローがステップ6に進められる。ステップ6においては、吐出幅可変装置100が終点Eに到達しているか否かが確認される。終点Eに到達していないことが確認された場合は塗布動作の途中であるため、制御フローがステップ4に戻され、引き続き塗布動作が継続される。一方、ステップ6において終点Eに到達していることが確認された場合は、制御フローがステップ7に進められ、塗布動作が停止状態とされる。具体的には、吐出幅可変装置100等の移動、及びポンプ50による流動物の供給が停止されると共に、吐出幅Dがゼロに切り替えられる。これにより、塗布対象物Wに対する流動物の塗布が完了し、一連の制御フローが完了する。
上述したように、本実施形態の塗布装置10が備える吐出幅可変装置100は、外筒部112と内筒130とを相対移動させることにより、外筒周部開口116及び内筒周部開口138の重なりにより形成される連通領域148の幅(交差方向への長さ)や連通領域148が形成される位置を調整することができる。また、ノズル150が外筒周部開口116に設けられているため、吐出対象であるワークに対して極めて近接した位置において流動物を吐出させることができる。そのため、広い塗布幅で流動物を塗布した場合であっても、塗布された流動物とワークとの間に空気を巻き込む等することなく、精度良く流動物を塗布することができる。また、従来技術においては、流動物とワークとの間に空気が巻き込むのを解消すべく、空気等を吹きつけ可能な装置を設け、塗布されている流動物に吹き付ける等の方策がなされている。しかしながら、上述したような構成とすることにより、前述したような空気の吹きつけ装置のようなものが不要となり、その分装置構成や動作制御を簡素化することができる。
また上述したように、ノズル150は、複数設けられた仕切152により、開口領域が複数の区画領域154に区切られている。これにより、外筒周部開口116を通じてノズル150に流入した流動物が、ノズル150内で幅方向に広がることなくノズル150の先端まで到達し、吐出される。従って、吐出幅可変装置100によれば、ワークに対して流動物を想定した通りの整った形状に塗布することが可能である。
上述した吐出幅可変装置100は、第一構成体たる外筒部112の内側に、第二構成体たる内筒130を配置し、内筒130を回動させることにより両者を相対移動させ、吐出幅Dを調整可能とされている。従って、吐出幅可変装置100によれば、外筒部112に対する内筒130の回動量や回動方向についての制御を行うことにより、流動物が吐出される連通領域148の幅や位置を調整できる。
また、第一構成体及び第二構成体を外筒部112及び内筒130によって構成させる構成とした場合、吐出幅D等の変更のために内筒130を回動させたとしても流動物貯留部142の内部容積が殆ど変化しない。そのため、吐出幅可変装置100から流動物を吐出する際の吐出圧の変動を最小限に抑制し、塗布性能を一層向上させることが可能である。
なお、本実施形態においては、第一構成体及び第二構成体を外筒部112及び内筒130の組み合わせによって構成した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、外筒部112及び内筒130の代わりに、例えば平板を第一構成体及び第二構成体として設けると共に、これらの平板に外筒周部開口116や内筒周部開口138に代わる開口を設けた構成とすることが可能である。このような構成とした場合についても、第一構成体及び第二構成体に相当する平板同士を相対移動させることにより吐出幅Dを調整することが可能となる。
上述したノズル150に形成される区画領域154の大きさは、様々な要因を考慮して適宜の大きさに調整することが可能であり、例えば吐出対象である流動物の粘度等を考慮して区画領域154の大きさを調整することが可能である。さらに詳細には、ノズル150は、流動物の粘度が低粘度であるほど区画領域154の開口面積が小さくなるように仕切152を設けることが望ましい。このようにすることで、取り扱う流動物が低粘度である場合における液だれの抑制が可能となる。また、取り扱う流動物が高粘度である場合に、各区画領域154内に流動物が詰まってしまうことを抑制しうる。
また、ノズル150は、図23に示すように、幅両端側と中央側とで区画領域154の開口面積が相違するものとすることも可能である。これにより、流動物の特性や供給される流動物の圧力変動等の外乱を考慮しつつ、各区画領域154の開口面積の最適化を図り、吐出幅Dの制御特性をより一層向上させうる。
上述したように、ノズル150においては、仕切152が先端側(開口端側)から基端側(外筒周部開口116側)に到達する位置まで形成されている。そのため、連通領域148を通じて導出された流動物が吐出させるべきでない位置にある区画領域154に流入してしまうことを抑制しつつ、吐出させるべき位置に存在している区画領域154に確実に導入させ、吐出させることができる。これにより、ノズル150から吐出される流動物の吐出幅Dや吐出位置を想定通りのものとすることができる。
また、上述したノズル150においては、仕切152がノズル150の先端側から基端側に向けて直線的に延びている。そのため、ノズル150内において流動物が詰まることを防止しつつ、流動物をノズル150内において整流させて吐出させることが可能となる。なお、本実施形態では、仕切152が直線的に延びる形状である例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、屈曲した形状等であっても良い。
吐出幅可変装置100は、内筒130を回動させることにより吐出幅Dを変化させるものであり、吐出幅Dの変更に伴う内部容積の変化が殆ど発生しない。これにより、吐出幅Dの変更に伴い吐出圧の変動が生じることを最小限に抑制できる。また、本実施形態の塗布装置10においては、流動物供給装置としてポンプ50が採用されているため、略一定の供給量及び供給圧で流動物を吐出幅可変装置100に供給することができる。従って、塗布装置10は、塗布幅(吐出幅D)を連続的あるいは断続的に変化させる等しても、塗布対象物Wに塗布された流動物の厚み(膜厚)、及び流動物の付着性等の塗布特性の変動が殆ど生じず、一定の品質で流動物を塗布することができる。
吐出幅可変装置100は、内筒周部開口138よりも基端130a側及び接続端130b側の位置に設けられたOリング144,146により、内筒130の周壁136と外筒部112の内周壁128との間が液密とされている。また、吐出幅可変装置100においては、ポンプ50によって供給される流動物を導入するための導入口118が、外筒部112の周壁136において内筒周部開口138に臨む位置に設けられている。更に、内筒周部開口138の開口幅dは、いずれの部位においても外筒部112に設けられた外筒周部開口116の開口幅sよりも小さい。そのため、内筒130と外筒部112との間に吐出液が噛み込むことを防止できる。従って、吐出幅可変装置100によれば、外筒周部開口116の予期せぬ部位から吐出液が漏洩することを防止でき、安定した品質で流動物を塗布することができる。
なお、本実施形態においては、内筒130にOリング144,146を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、外筒部112側にOリング等のシール部材を設けた構成としてもよい。また、吐出幅可変装置100は、内筒130と外筒部112との間を液密とするためにOリング144,146を設けたものであるが、Oリング144,146に代えて、あるいはOリング144,146に加えて、バリシール、リップシール等の他のシール部材を設けても良い。また、本実施形態においては、内筒周部開口138の開口幅dを外筒部112に設けられた外筒周部開口116の開口幅sよりも小さく形成した例を示したが、開口幅d,sを同一としてもよい。
本実施形態の塗布装置10は、位置制御、速度制御、供給量制御、及び吐出幅制御を同期させた状態で実施可能であり、塗布用として吐出される流動物の吐出幅Dの大きさ、吐出幅Dの変化速度、ポンプ50から吐出幅可変装置100への流動物の供給量(供給速度)を、吐出幅可変装置100と塗布対象物Wとの位置関係、吐出幅可変装置100の移動速度に応じて適切な状態となるように調整することが可能である。これにより、例えば図8(a)に示すように塗布対象物Wの部位に応じて異なる幅で流動物を塗布することが可能となる。
なお、本実施形態では、図8(a)に示す塗布パターンで流動物を塗布する場合の動作を例示したが、塗布装置10は、吐出幅可変装置100の位置、移動速度等に応じて吐出幅D等の調整を行うことにより、図8(a)の塗布パターンの他、図8(b)〜(d)に示す塗布パターン、図9(a)〜(l)に示す塗布パターン(模様)等、多様な塗布パターンにより流動物を塗布対象物Wに塗布することが可能である。
本実施形態の吐出幅可変装置100において外筒部112に形成されている外筒周部開口116は、外筒部112の幅方向に直線的に延びるスリットによって形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、外筒周部開口116に代えて、外筒部112の幅方向に断続的に設けられたスリット、傾斜するように形成されたスリット、湾曲部分を有するスリット、開口形状が円形、楕円形、矩形あるいは多角形の開口等を設けた構成としてもよい。かかる構成とすることにより、更に多様な形態で流動物を吐出することが可能となり、様々な塗布パターンによって流動物を塗布可能となる。なお、外筒周部開口116をこのような形状とする場合、ノズル150の形状についても外筒周部開口116と同様の形状にすることが望ましい。また、外筒周部開口116を前述したような形状とする代わりに、ノズル150を傾斜形状、湾曲形状等の形状とすることも可能である。
また、吐出幅可変装置100において、内筒130に形成されている内筒周部開口138の開口形状についても、外筒周部開口116と同様に上述したものに限定されず、塗布パターン等に応じて様々な形状に変更することが可能である。すなわち、内筒周部開口138は、軸線方向の開口幅D及び軸線方向における開口位置が内筒130の周方向に変化するように形成されたものであれば良く、開口形状や大きさについてはいかなる物であっても良い。
具体的には、内筒周部開口138の形状を、内筒130の周壁136を展開した状態において所望する塗布パターンの形状となるように形成した場合、吐出幅可変装置100の移動及び内筒130の回動を同期させることにより、例えば図10(a)〜(g)のような塗布パターン(模様)により流動物を塗布対象物に塗布することができる。更に詳細には、図11に示すような形状の内筒周部開口138を周壁136に設けた場合は、塗布速度に同期させて内筒130を回転させることにより連通領域148の幅及び位置が順次変化し、図10(g)のような塗布パターンで流動物を塗布することができる。また、内筒周部開口138を文字の形状に形成し、吐出幅可変装置100の移動及び内筒130の回動を同期させると、例えば図12に示すように文字をワークに対して描くことが可能となる。
筒周部開口138を図13(a)あるいは図13(e)に示すような形状とした場合、吐出幅可変装置100の移動及び内筒130の回動を同期させることで、例えば図13(b)〜(d)に示すようなパターンや、図13(f)〜(h)に示すようなパターンでワークに対して流動物を塗布することができる。また、内筒周部開口138を図14に示すような形状とし、塗布装置10の二次元方向への位置制御を行いつつ吐出幅制御を行うことにより、図15や図16に示すような多種多様な二次元的なパターンで流動物を塗布できる。同様に、内筒周部開口138を図14に示すような形状とした場合に、塗布装置10を三次元的に位置制御することにより、それぞれ図17〜図19に示すような三次元的に積層したパターンで流動物を塗布できる。
上述した塗布装置10は、産業用ロボット20に対して取り付けることで、ワークに対して三次元的に吐出幅可変装置100を移動させることが可能なものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、塗布装置10は、例えば図20に示すように、塗布対象であるワークを搬送するコンベア200を移動装置として設け、コンベア200から離れた位置に吐出幅可変装置100を設置した構成としても良い。かかる構成とした場合についても、コンベア200の動作を調整することによる位置制御と吐出幅可変装置100による吐出幅制御とを制御装置170によって同期させることで、所望の塗布パターンで流動物をワークに対して塗布することが可能である。
また、塗布装置10に設けられる吐出幅可変装置100は単一である必要はなく、図20に示すように複数設けられても良い。図20に示す例においては、コンベア200の搬送方向に複数(図20の例では3基)の吐出幅可変装置100が並設されている。これにより、ワークの搬送方向上流側に配置された吐出幅可変装置100によって流動物が塗布された上に、下流側に配置された吐出幅可変装置100により別の流動物を同一又は相違する塗布パターンで順次重ね塗りすることが可能となる(図20(b)〜(d)参照)。また、上流側の吐出幅可変装置100によって塗布された塗布パターンと、下流側の吐出幅可変装置100によって重ね塗りされる塗布パターンとを相違させることも可能である。このようにすることにより、例えば図20(d)に示すように、多様な模様(図示例ではサル)を形成することが可能となる。
また図21に示すように、塗布装置10は、ワーク自体あるいはワークを搭載した台に対して略水平方向(図中X,Y方向)、及び高さ方向(図中Z方向)に移動可能な移動装置210に吐出幅可変装置100を搭載したものであっても良い。かかる構成とすることにより、ワークに対してX,Y方向に塗布装置10を所定の軌跡(図21(a)の二点鎖線参照)で移動させて流動物を塗布しつつ、塗布装置10をZ方向に移動させることでワークとの距離を所定距離に維持することや、塗布される流動物の厚みの調整等を行うことが可能となる。
また、図21に示す例のように、流動物の塗布対象であるワークとの相対位置やワークの形状等をスキャンするスキャナ212のようなものを、吐出幅可変装置100と共に移動装置210に搭載したものとしても良い。かかる構成とすることにより、スキャナ212により塗布対象であるワークとの相対位置やワークの形状を検知しつつ、適正な幅及び厚みで流動物をワークに対して塗布することが可能となる。
具体的には、図21に示す例においては、図中網掛けで示したような形状に湾曲したワークに対して流動物を塗布する。この例においては、先ず吐出幅可変装置100及びスキャナ212をX方向に同時移動させつつ、スキャナ212によってワークとの相対位置やワークの形状を計測する。すなわち、X方向への移動に伴うワークの幅の変化、及びワークの中央部の軌跡を計測する。これにより、吐出幅Dの調整に加え、吐出位置(軌跡)をY方向にどのように変化させつつ、吐出幅可変装置100をX方向に移動させれば良いかを把握することができる。このようにしてスキャナ212によるワークとの相対位置やワークの形状を計測した後、吐出幅可変装置100及びスキャナ212をワーク上において再度X方向に移動させる。この際、吐出幅可変装置100及びスキャナ212のX方向への設置間隔を加味しつつ、予め計測されているワークとの相対位置、吐出幅D、及び軌跡のデータに基づき、吐出幅可変装置100における吐出幅Dの調整、及び吐出幅可変装置100のY方向への位置調整を行う。これにより、流動物を所望の幅で、規定の軌跡を描きつつワークに対して塗布することができる。
また、図22に示す例は、図21に示したものと同様に移動装置210及びスキャナ212を備えた塗布装置10により、台上に配置された厚みの異なる複数のワークに対して流動物を塗布する例である。この例においても、先ず吐出幅可変装置100及びスキャナ212をX方向に同時移動させ、スキャナ212によって台上に配置された各ワークの形状及び相対位置を計測する。これにより、どのような吐出幅D及び吐出位置で流動物を吐出させれば良いかを把握する。その後、吐出幅可変装置100及びスキャナ212をワーク上において再度X方向に移動させる。この際、先に導出された計測結果に基づき、吐出幅可変装置100における吐出幅Dの調整、及び吐出幅可変装置100のY方向、及びZ方向への位置調整を行い、所定の軌跡(図22(a)の二点鎖線参照)で移動させつつ流動物を塗布する。これにより、流動物を所望の幅及び厚みで、規定の軌跡を描きつつワークに対して塗布することができる。
上述した実施形態及び変形例において例示した吐出幅可変装置100は、塗布対象であるワークに対して極めて近接した位置までノズル150を到達させて流動物を吐出可能とされている。そのため、上述したようにワークの移動方向に吐出幅可変装置100を並設して流動物を複数層に亘って重ね塗りする場合には、上流側に配置された吐出幅可変装置100のノズル150の高さに対し、下流側に隣接する位置に配置された吐出幅可変装置100のノズル150の高さを先に塗布されている流動物の厚み相当分だけ上方に離れた位置に設けることが望ましい。
上述した塗布装置10及び吐出幅可変装置100は、流動物の吐出幅Dを順次変化させることで様々な塗布パターンで流動物を塗布することができる。そのため、例えば食品の製造装置、触知プリンタ(点字や点図などの三次元的な標識を描画可能なプリンタ)、三次元造型装置、道路標示形成装置(道路プリンタ)等に適用可能である。具体的には、食品の製造装置としては、図20に示した塗布装置10において、流動物としてクッキー等の生地を用いることにより、クッキー等の食品を所望の形状に形成することができる。また、紙面やプレート等の表面に点状に接着剤等の硬化性の流動物を塗布し硬化させることにより、点字や点図をなす凹凸を形成するための装置として塗布装置10や吐出幅可変装置100を使用することができる。同様に、塗布装置10や吐出幅可変装置100を用い、紙面やプレート等の表面に線状あるいは面状の所望形状に硬化性の流動物を塗布して硬化させれば、触知図などの三次元的な標識を形成することができる。
また、3DCADデータや3DCGデータに基づいて硬化性の流動物を順次積層するように塗布し、硬化させることにより、三次元(立体)の造形物を作成する三次元造形装置として塗布装置10や吐出幅可変装置100を用いることができる。また、車両等の道路上を移動可能な移動装置に塗布装置10や吐出幅可変装置100を搭載し、道路に標示される道路標示を形成するための塗布材を移動装置を作動させつつ道路上に塗布することにより、塗布装置10や吐出幅可変装置100を道路標示形成装置(道路プリンタ)として用いることができる。
塗布装置10(吐出装置)は、塗布材を面上に塗布する用途のみではなく、液中に塗布材を吐出させる用途にも用いることができる。具体的には、図26に示すように、塗布装置10のノズル150を所定の液体L1が入った容器Vの開口側から底側に向かう方向(Z軸方向)に差し込む。ノズル150の長さは、図26(a),(b)に示すように容器Vの開口側から底近傍にまで到達する長さであることが望ましい。
塗布装置10は、図26(a),(b)に示すように液体L1中に差し込まれたノズル150を容器Vに対してZ軸方向に相対移動させると共に、この移動過程においてノズル150から液体L1とは異なる液体L2を吐出させる。これにより、図26(c),(d)に示すように、液体L1中に液体L2を吐出させることが可能となる。また、ノズル150をZ方向に移動させる動作と、吐出幅可変装置100による液体L2の吐出幅(図中X方向の長さ)の調整を同期させることにより、液体L1中に所望のパターン(形状)に液体L2を吐出させることができる。
さらに、塗布装置10のZ軸方向への移動量に対する液体L2の吐出量を調整することにより、液体L2により液体L1中に形成される液体L2のパターンの厚み(図中Y方向の長さ)を逐次変化させることができる。具体的には、図26(d)に示すように、液体L2のパターンの厚みを各部において変化させることができる。これにより、液体L1中に液体L2を立体的に吐出させることが可能となる。
なお、上述したノズル150の容器Vに対するZ軸方向への相対移動は、ノズル150側あるいは容器V側のいずれか一方、又は双方をZ軸方向に移動させることにより実現できる。また、ノズル150の容器Vに対するZ軸方向への相対移動に際し、ノズル150あるいは容器Vのいずれか一方又は双方をZ軸周りに相対回転させることにより、液体L1内に液体L2をらせん状に捻れた形状となるように吐出させることが可能となる。液体L1,L2は、適宜のものを選択することが可能である。具体的には、例えば液体L1として透明のゼリーを採用し、液体L2として着色された別のゼリーを採用することで、模様が内側に描かれたゼリーを提供することができる。また、液体L1としてジェル状化粧品を採用し、液体L2として別の化粧品あるいは他の素材を用いることにより、内部に模様が描かれた意匠性に優れた化粧品を提供することができる。
上述した吐出幅可変装置100は、外筒部112及び内筒130をそれぞれ一つずつ有するものであるが、内外の筒体のうちいずれか一方又は双方が複数設けられたものであっても良い。具体的には、塗布装置10及び吐出幅可変装置100の変形例として、図27に示す塗布装置500及び吐出幅可変装置510のようなものを提供することができる。塗布装置500は、吐出幅可変装置510に対してポンプ50を2基(以下、必要に応じて「第一ポンプ50a」、及び「第二ポンプ50b」とも称す)を接続した構造とされている。吐出幅可変装置510は、上述した吐出幅可変装置100に相当する構造を2つ、並列に備えたような構成とされている。具体的には、吐出幅可変装置510は、第一幅可変機構520A及び第二幅可変機構520Bと、連通路530とを備えており、連通路530の末端部分にノズル150が取り付けられている。
第一幅可変機構520A、及び第二幅可変機構520Bは、吐出幅可変装置100と同様の動作原理で作動する機構である。第一幅可変機構520A、及び第二幅可変機構520Bの構成については共通するため、以下において両者を幅可変機構520と総称して説明する。また、第一幅可変機構520Aに相当する構成については、符号の末尾にAを付して図示し、第二幅可変機構520Bに相当する構成については、符号の末尾にBを付して図示する。
幅可変機構520は、中空であって筒状の外筒522(外筒/第一構造体)と、内筒524と、駆動機構部525とを有する。幅可変機構520は、上述した吐出幅可変装置100と同様に、外筒522と内筒524との相対位置を周方向に調整することにより、両者に形成されている孔の重なりからなる連通領域の幅や位置を調整できる構成とされている。
外筒522は、上述した吐出幅可変装置100における外筒部112(外筒/第一構造体)に相当するものである。外筒522は、略円筒形のシリンダであり、外周に外筒周部開口526を有する。外筒周部開口526は、スリット状の開口であり、外筒522の内外を連通している。外筒周部開口526は、外筒522の軸線方向、言い換えれば外筒522の周方向に対して交差する方向(交差方向)に向けて直線的に延びるように形成されている。外筒周部開口526は、連通路530に連通している。外筒522には、ポンプ50に連通するように形成された導入口(図示せず)が設けられている。この導入口は、上述した吐出幅可変装置100において外筒部112に設けられている導入口118に相当するものである。
内筒524は、上述した吐出幅可変装置100における内筒130に相当する部材であり、外筒522内に収容されている。内筒524は、内側(内部空間)に流動物を導入可能な空間を有する中空であって筒状の部材である。内筒524は、軸心位置を中心として自由に回動可能なように支持されている。内筒524は、駆動機構部525に接続されている。
駆動機構部525は、上述した駆動機構部160に相当するものであり、内筒524を回動させることができる。駆動機構部525は、モータによって構成された駆動機525aと、駆動機525aの回転軸に接続された第一傘歯歯車525bと、内筒524に対して接続された第二傘歯歯車525cとを有する。駆動機525aの回転量及び回転方向を制御することにより、内筒524の回転量の調整、及び回転方向の変更を行うことができる。
内筒524の外周には、内筒周部開口527(第二開口)が内外を連通するように形成されている。内筒周部開口527は、上述した吐出幅可変装置100における内筒周部開口138と同様に、開口幅dや開口位置が内筒524の周方向に連続的に変化するように形成されている。すなわち、内筒周部開口527は、図5に示した内筒周部開口138のように展開状態において略二等辺三角形の開口形状を有するものや、図11あるいは図14に示したもの等、適宜の開口形状のものとすることができる。
幅可変機構520は、外筒522に対して内筒524を回動させ、両者の位置関係を周方向に調整することにより、内筒周部開口527がスリット状の外筒周部開口526と重なることで形成される連通領域の幅や位置を調整することができる。
第一幅可変機構520A、及び第二幅可変機構520Bは、それぞれケース529内に収容されている。第一幅可変機構520A、及び第二幅可変機構520Bは、ケース529内においてそれぞれの外筒周部開口526A,526Bが対向するように配置されている。外筒周部開口526A,526Bは、それぞれ連通路530に対して接続されている。
連通路530は、三方向に連通した通路であり、例えば断面形状が略T字型あるいは略Y字型(図示例では略T字型)の通路とすることができる。連通路530は、各部において外筒周部開口526A,526Bの開口領域と同様の断面形状となるように形成されている。連通路530を構成する3方向に延びる通路530a,530b,530cのうち、2通路(図示状態においては、左右方向に延びる通路530a,530b)には、それぞれ外筒周部開口526A,526Bが接続されている。また、残りの一つ(図示状態においては上下方向に延びる通路530c)は、ケース529の底面から下方に向けて突出している。通路530cには、ノズル150が装着されている。
上述したように第一幅可変機構520Aには、第一ポンプ50aが接続されている。そのため、第一幅可変機構520Aにおいて外筒周部開口526と内筒周部開口527との重なりにより形成される連通領域の幅や位置を調整すると共に、第一ポンプ50aを正方向に駆動させて流動物を第一幅可変機構520Aに供給することで、任意の塗布幅及び塗布位置において流動物を吐出させることができる。
また、第二幅可変機構520Bに接続されている第二ポンプ50bは、第一ポンプ50aと同様に、正方向に駆動させることにより塗布液を供給する能力があるが、本変形例では主として逆方向に駆動させることにより塗布液を逆流させるための能力を発揮させるものとして使用される。そのため、第二幅可変機構520Bにおいて外筒周部開口526と内筒周部開口527との重なりにより形成される連通領域の調整を行い、この状態において第二ポンプ50bを逆方向に駆動させることにより、連通路530やノズル150に付着している流動物を引き込むことが可能となる。また、第二幅可変機構520Bにおける外筒周部開口526及び内筒周部開口527の連通領域の調整により、第一幅可変機構520A側において流動物の吐出を行わない領域でのみ流動物の吸込を行うことができる。これにより、第一幅可変機構520Aにおける流動物の吐出を邪魔することなく、第二幅可変機構520B側において流動物を吸い込むことが可能となる。
上述したように、塗布装置500では、第一幅可変機構520A及び第一ポンプ50aを作動させることにより所定のパターンで流動物を吐出させつつ、第二幅可変機構520B及び第二ポンプ50bを作動させることにより流動物を引き込み、液だれ等を防止することができる。これにより、塗布品質をより一層向上させることが可能となる。
なお、第二幅可変機構520B及び第二ポンプ50bにより流動物を引き込む場合には、液だれ等の防止に必要な程度にとどめるよう、引き込みのための動作の最適化を図ることが望ましい。このような観点で引き込み動作の最適化を図ることにより、次に流動物を吐出させる際に、吐出開始までのタイムラグを最小限に抑制できる。
上述した塗布装置500が備える吐出幅可変装置510のように内外の筒体のうちいずれか一方又は双方が複数設けられたものとする他の変形例として、図28に示す吐出幅可変装置600のようなものを提供することができる。以下、吐出幅可変装置600について説明する。なお、吐出幅可変装置600において吐出幅可変装置100と共通する部分については同一の符号を付し、詳細の説明については省略する。
図28に示す吐出幅可変装置600は、単一の外筒部112の内部に、内筒130に代えて複数の内筒610,612(図示例では2つ)を設けている点において、吐出幅可変装置100と相違している。内筒610,612は、外筒部112の内部に、外筒部112の長手方向に並べて配置した構成とされている。内筒610,612の周壁614,616には、それぞれ内筒周部開口620,622が設けられている。内筒周部開口620,622は、それぞれ適宜の開口形状のものとすることができる。内筒周部開口620,622は、開口幅dや開口位置が内筒610,612の周方向に進むにつれて変化するように形成されている。
内筒610,612は、それぞれ駆動機構部630,632に接続されている。駆動機構部630,632は、それぞれ上述した駆動機構部160や駆動機構部525と同様のものである。駆動機構部630,632に設けられた駆動機634,636(モータ)の回転量及び回転方向を制御することにより、内筒610,612の回転量の調整、及び回転方向を独立的に調整することができる。そのため、吐出幅可変装置600においては、より一層多種多様な吐出パターンで流動物を吐出させることができる。
なお、上述した吐出幅可変装置600においては、内筒を複数(図示例では内筒610,612の二つ)設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、内筒610,612に加えてさらに別の内筒を設けても良い。また、吐出幅可変装置600においては、外筒部112の内側に配される筒体(内筒610,612)を複数にした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく外筒部112を複数の筒体によって構成したものとしても良い。さらに、吐出幅可変装置600における内筒610,612のように内側の筒体を複数にしつつ、外筒部112を複数の筒体によって構成したものとしても良い。
上述した吐出幅可変装置510,吐出幅可変装置600のように内外の筒体のうちいずれか一方又は双方が複数設けられたものとする他の変形例として、次のようなものが考えられる。具体的には、上述した吐出幅可変装置100は、外筒部112の内部に単一(単層)の内筒130を設けた構成であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、内筒130に代えて内筒130と同様の筒体を径方向に複数設けた多層構造の内筒部を設けた構成としても良い。さらに詳細には、上述した吐出幅可変装置100の変形例として、図29に示す吐出幅可変装置700のようなものを提供することができる。以下、吐出幅可変装置700について説明する。なお、吐出幅可変装置700において吐出幅可変装置100と共通する部分については同一の符号を付し、詳細の説明については省略する。
図29に示す吐出幅可変装置700は、単一の外筒部112の内部に、内筒130に代え、図29(a)中においてハッチングを付して示した内筒部710を設けている点において吐出幅可変装置100と相違している。内筒部710は、複数の外径の相違する外層側内筒712及び内層側内筒714(図示例では2つ)を有する。内筒部710は、外層側内筒712及び内層側内筒714を径方向に多層に重ね合わせた入れ子状の構成とされている。
具体的には、外層側内筒712は、内筒130と同様に外径が外筒部112の内径と同等あるいは僅かに小さい程度の筒体であり、外筒部112の内部において軸心位置を中心として回動可能とされている。また、内層側内筒714は、外層側内筒712の内径と同等あるいは僅かに小さい程度の筒体であり、外層側内筒712の内部において外層側内筒712と略同一の軸心位置を中心として回動可能とされている。
外層側内筒712には、外層側内筒周部開口(図示せず)が設けられている。また、内層側内筒714にも、内層側内筒周部開口720が設けられている。外層側内筒周部開口及び内層側内筒周部開口720は、それぞれ適宜の開口形状のものとすることができる。外層側内筒周部開口及び内層側内筒周部開口720は、それぞれ開口幅dや開口位置が外層側内筒712及び内層側内筒714の周方向に進むにつれて変化するように形成されている。
外層側内筒712及び内層側内筒714は、それぞれ別の駆動機構部730,732に接続されており、独立的に回動可能とされている。駆動機構部730,732は、それぞれ上述した駆動機構部160や駆動機構部525と同様のものである。このような構成とした場合、外層側内筒712及び内層側内筒714のうちいずれか一方を吐出パターンの調整のために寄与するものとして使用し、他方を吐出パターンの調整に寄与しないものとする使用方法が可能となる。すなわち、外層側内筒712及び内層側内筒714のうち吐出パターンの調整に寄与しないものを、開口(内筒周部開口720,722のいずれか一方)が外筒周部開口116の全領域において開となるような回転位置に調整する。これにより、外層側内筒712及び内層側内筒714のうち吐出パターンの調整に寄与しないものの影響が塗布パターンに一切及ばないようにする。その一方で、外層側内筒712及び内層側内筒714のうち吐出パターンの調整のために寄与するものについては、回動制御により、所望の吐出パターンを達成可能な位置に開口(内筒周部開口720,722のいずれか一方)が到達するように回動位置の調整を行う。このように、外層側内筒712及び内層側内筒714を適宜使い分け可能とすることにより、上述した吐出幅可変装置100のように内筒130を一つしか備えていない場合に比べ、多数の塗布パターン(本変形例では内筒130を二本設けたのと同等のパターン数)を達成するように流動物を吐出させることができる。
なお、上述したように吐出幅可変装置700においては、複数設けられた内筒(外層側内筒712及び内層側内筒714)のうちの一つを吐出パターン形成用として選択的に使用するようにしても良いが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数設けられた内筒を複数、吐出パターン形成用として複合的に使用するようにしても良い。具体的には、駆動機構部730,732に設けられた駆動機734,736(モータ)の回転量及び回転方向を制御することにより、外層側内筒712及び内層側内筒714の相対位置を調整し、内筒周部開口720,722の重複具合を調整することで内筒部710全体としての開口領域を調整することができる。従って、吐出幅可変装置700においては、複数設けられた内筒(外層側内筒712及び内層側内筒714)を複数、吐出パターン形成用として複合的に使用することによっても、より一層多種多様な吐出パターンで流動物を吐出させることができる。
なお、上述した吐出幅可変装置700においては、内筒130に代えて多層構造の内筒部710を設け、外筒部112を単層構造とした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、単層構造の内筒130を採用しつつ、外筒部112を多層構造とした構成としても良い。また、多層構造の内筒部710を設けつつ、外筒部112についても多層構造とした構成としても良い。
上述した塗布装置10は、吐出幅可変装置100に設けられたノズル150においてのみ流動物を吐出可能としたものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、図30に示す塗布装置800のように、吐出幅可変装置900にノズル150の他に別のノズル910を設けると共に、適宜必要に応じてノズル150に代えてノズル910を使用可能とするための切替機構920を設けた構成としても良い。以下、塗布装置800及び吐出幅可変装置900の構成について説明する。なお、塗布装置800及び吐出幅可変装置900において塗布装置10及び吐出幅可変装置100と共通する部分については同一の符号を付し、詳細の説明については省略する。
吐出幅可変装置900は、吐出幅可変装置100と同様に外筒部112の外周面に設けられたスリット状の外筒周部開口116を有する。また、吐出幅可変装置900においては、駆動機構部160とは反対側であって、外筒周部開口116に対して外筒部112の軸線方向に離れた位置に、供給口914(第三開口)が設けられている。供給口914に対応する位置に、ノズル取付部912が設けられている。
ノズル取付部912には、ノズル910が取り付けられている。図30(a)において矢印で示すように、ノズル取付部912は、外筒部112に対して回動自在に保持されており、供給口914から供給される流動体をノズル910から吐出させるために適切な位置まで回動させることができる。そのため、ノズル取付部912を適宜回動させることにより、ノズル150あるいはノズル910のいずれかを流動物の吐出に用いるものとして選択することができる。具体的には、吐出幅可変装置900においては、図30(b)において実線で示すようにノズル910を下方に向けて延びる姿勢とすることにより、ノズル910を吐出用として選択した状態とすることができる。また、図30(b)において二点鎖線で示すようにノズル910が略水平方向に延びる姿勢とすることにより、ノズル150が吐出用として選択された状態とすることができる。
切替機構920は、ノズル取付部912を回動させることでノズル150あるいはノズル910のいずれかに切り替えるための動作機構である。切替機構920は、ノズル取付部912を回動させることが可能なものであればいかなるものであっても良いが、例えば特許第5283012号に係る交換機能付ノズルのように、ノズル取付部912に係合部を設けると共に、別途設けた載台に被係合部を設け、係合部を被係合部に係合させた状態としてロボットアーム等によって外筒部112を移動させることでノズル取付部912及びこれに取り付けられたノズル910を外筒部112に対して回動させ、姿勢を変化させることができる。また、ノズル取付部912を回動させるためのモータ等の動力源を別途設け、この動力源を作動させることでノズル取付部912を回動させることとしても良い。
内筒930は、駆動機構部160に接続されており、駆動機162を作動させることにより外筒部112の内部において軸心周りに回動させることができる。図30(a)に示すように、内筒930は、駆動機構部160との接続側から外筒周部開口116が形成されている領域を越え、ノズル取付部912が形成されている領域にまで到達するように配置されている。内筒930において外筒周部開口116に対応する領域S1(図31(a)参照)には、上述した内筒周部開口138と同様の内筒周部開口932が形成されている。また、内筒930においてノズル取付部912に対応する領域S2(図31(a)参照)には、連通孔934(第四開口)が形成されている。
ここで、図31(a)の展開図に示すように、連通孔934は、内筒周部開口932が形成されている領域T1に対して内筒930の周方向に外れた領域T2に設けられている。そのため、内筒930の回動位置を調整することにより、ノズル150,910のいずれから内筒930内の流動物を吐出させるかを選択することができる。すなわち、内筒周部開口932が外筒周部開口116と連通する位置となるように内筒930を回動させた場合には、外筒部112に設けられた供給口914が内筒930の周面によって閉塞された状態になる。また、連通孔934は、ノズル取付部912と非連通の状態になる。そのため、この状態においては、内筒930内に導入された流動物を外筒周部開口116に取り付けられたノズル150から吐出可能であるが、ノズル910からは吐出することができない。また、連通孔934が供給口914と連通するように内筒930を回動させた場合には、内筒周部開口932が外筒周部開口116と非連通の状態になる。そのため、この状態においては、内筒930内に導入された流動物をノズル910から吐出可能であるが、ノズル150からは吐出することができない。
上述したように、吐出幅可変装置900においては、平型のノズル150に加えてニードル型のノズル910を備えており、適宜必要に応じてノズル150,910を使い分けることができる。そのため、例えばノズル150によって流動物を平面的に塗布して所定の図柄を描くと共に、ノズル910を用いて流動物を線状に塗布して図柄を描くことが可能となる。具体的には、例えば図31(b)に示すように、内筒930に展開状態において花柄の開口形状を有する内筒周部開口932を形成しておくことで、ノズル150を用いて塗布対象物に対して内筒周部開口932の開口形状に相当する図柄を描くと共に、茎や葉の部分をノズル910によって描く等することができる。従って、吐出幅可変装置900のように、複数種のノズル150,910を切り替えて使用可能とすることにより、より一層バリエーションに富んだ塗布パターンで流動物を塗布することが可能となる。
なお、上述した吐出幅可変装置900においては、ノズル150の他にノズル910を一つだけ設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに多種あるいは多数のノズルを設け、適宜切り替えて使用可能としても良い。かかる構成とすることにより、より一層バリエーションに富んだ塗布パターンで流動物を塗布することが可能となる。
ここで、上述した吐出幅可変装置100等においては、内筒130に形成した内筒周部開口138の開口形状を塗布パターンに応じて形成することにより、所望の塗布パターンで流動物を塗布することができる。ここで、例えば円形の塗布パターンのように、所定の境界Lを介して線対称(鏡面対称)の塗布パターンで流動物を塗布したい場合には、塗布パターンと略合致する大きさ及び形状の内筒周部開口138を形成しておくことも可能であるが、境界Lを介して一方側の領域に相当する開口を内筒周部開口138として形成しておくことによっても線対称(鏡面対称)の塗布パターンで流動物を塗布することができる(図32参照)。
具体的には、図32(b)に示すように境界Lを介して線対称(鏡面対称)の塗布パターンで流動物を塗布する場合には、図32(a)に示すように境界Lを介して一方側の領域に相当する大きさ及び形状の開口を境界Lが内筒130の軸線方向に向くように形成する。このようにすることで、内筒130を軸心位置を中心として所定方向に回動させつつ流動物の塗布を進め、境界Lに相当する位置まで到達した時点で内筒130の回動方向を逆転させつつ流動物の塗布を進めることで所望の塗布パターンで流動物を塗布することができる。このような構成とすれば、内筒130において一つの塗布パターンでの塗布を達成するために必要な内筒周部開口138の形成領域を最小限に抑制することができる。これにより、一つの内筒130に複数種の内筒周部開口138を形成し、内筒130を交換することなく多数の塗布パターンで流動物を塗布することが可能となる。また、一つの塗布パターンでの塗布を達成するために必要な内筒周部開口138の形成領域が小さくて済むため、内筒130として周面の面積が大きなもの、すなわち大径の内筒130を用いる必要がなくなる。そのため、内筒130の小径化を図り、吐出幅可変装置100等を小型化することが可能となる。
本発明は上述した各実施形態及び変形例として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示および精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。