JP2014503026A - オレフィンブロック共重合体 - Google Patents

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Abstract

本記載は、優れた弾性、耐熱性および加工性を示すオレフィンブロック共重合体に関するものである。前記オレフィンブロック共重合体は、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と、α−オレフィン系繰り返し単位とを互いに異なるモル分率で含む複数のブロックまたはセグメントを含むオレフィンブロック共重合体であって、炭素数1000個あたり20〜100個の分枝鎖(short chain branching;SCB)を含む高分子鎖を含み、各高分子鎖の炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数Yを各高分子鎖の分子量Xに対して1次微分した値が0となる地点が、分子量Xの最小値と最大値との間に存在するものである。

Description

本記載は、オレフィンブロック共重合体に関するものである。
ブロック共重合体は、複数の繰り返し単位のブロックまたはセグメントを有する共重合体を指すものであって、通常のランダム共重合体やブレンドに比べて優れた特性を有する場合が多い。例えば、ブロック共重合体は、ソフトセグメントと称される軟質の弾性ブロックと、ハードセグメントと称される硬質の結晶性ブロックを共に含むことができ、これにより、優れた弾性や耐熱性などの物性を共に示すことができる。より具体的には、このようなブロック共重合体は、ソフトセグメントのガラス転移温度以上では前記ブロック共重合体が弾性を示すことができ、溶融温度より高い温度に達して熱可塑性挙動を示すため、比較的優れた耐熱性を示すことができる。
上述したブロック共重合体の具体的な一例として、スチレンとブタジエンの3ブロック共重合体(SBS)やその水素化された形態(SEBS)などは、耐熱性や弾性などに優れ、多様な分野に有用性を有することが知られている。
一方、最近、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンとの共重合体の一種であるオレフィン系エラストマーの使用が検討されている。より具体的には、このようなオレフィン系エラストマーを多様な分野、例えば、ゴム系材料を代替するための多様な用途に適用しようとする試みが検討されている。また、オレフィン系エラストマーの耐熱性などをより向上させるために、以前に使用されていたランダム共重合体、例えば、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体形態のオレフィン系エラストマーでない、ブロック共重合体形態のエラストマーを適用しようとする試みがなされている。
しかし、このような試みにもかかわらず、耐熱性が向上したオレフィン系エラストマーを商用化しようとする研究は限界に達している。また、以前に知られたブロック共重合体形態のオレフィン系エラストマーも、融融加工時に加工性が低下するなど、限界に達している。したがって、より向上した耐熱性および加工性などを有するオレフィン系エラストマーが継続して要求されているのが現状である。
本記載は、優れた弾性、耐熱性および加工性を示すオレフィンブロック共重合体を提供するものである。
本記載の一実施形態によれば、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と、α−オレフィン系繰り返し単位とを互いに異なるモル分率で含む複数のブロックまたはセグメントを含むオレフィンブロック共重合体であって、炭素数1000個あたり20〜100個の分枝鎖(short chain branching;SCB)を含む高分子鎖を含み、各高分子鎖の炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数Yを各高分子鎖の分子量Xに対して1次微分した値が0となる地点が、分子量Xの最小値と最大値との間、例えば、前記分子量Xの下位約10%以上90%以下、あるいは約20%以上70%以下、あるいは約25%以上60%以下に存在するオレフィンブロック共重合体が提供される。この時、前記1次微分値が0となる地点は、前記ブロック共重合体の最大ピーク分子量(Mp)未満の領域内に存在し得る。
また、一実施形態のブロック共重合体は、前記1次微分値が0となる地点より分子量Xが小さい領域では、前記1次微分値が正数になる特性を示すことができ、前記1次微分値が0となる地点より分子量Xが大きい領域では、前記1次微分値が負数になる特性を示すことができる。
そして、前記オレフィンブロック共重合体は、約95〜120℃の結晶化温度(Tc)を有することができ、110〜135℃の融点(Tm)を有することができる。
また、このようなオレフィンブロック共重合体は、複数のブロックまたはセグメントとして、第1モル分率のα−オレフィン系繰り返し単位を含むハードセグメントと、第1モル分率より高い第2モル分率のα−オレフィン系繰り返し単位を含むソフトセグメントとを含むことができる。この時、全体のブロック共重合体に含まれているα−オレフィン系繰り返し単位のモル分率は、第1モル分率と、第2モル分率との間の値を有することができる。
さらに、前記オレフィンブロック共重合体は、ハードセグメントの20〜95モル%と、ソフトセグメントの5〜80モル%とを含むことができ、ハードセグメントは、結晶化度、密度および融点の特性値のうちの1つ以上がソフトセグメントより高くなり得る。
上述したオレフィンブロック共重合体は全体的に、約80〜98モル%のエチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と、残量のα−オレフィン系繰り返し単位とを含むことができ、密度が約0.85g/cm〜0.92g/cmとなり得る。さらに、このようなオレフィンブロック共重合体は、重量平均分子量が約5,000〜3,000,000であり、分子量分布が約2.5以上6以下となり得る。
また、前記オレフィンブロック共重合体において、前記α−オレフィン系繰り返し単位は、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、および1−アイトセンからなる群より選択された1種以上のα−オレフィンに由来の繰り返し単位となり得る。
本記載によれば、優れた耐熱性および弾性と共に、より向上した加工性などを示すオレフィンブロック共重合体が提供できる。特に、このようなオレフィンブロック共重合体は、単純化された触媒系を使用する簡単な工程段階を通じて製造できる。
したがって、このようなオレフィンブロック共重合体は、耐熱性および諸物性に優れたオレフィン系エラストマーの商用化に大きく寄与することができ、このようなオレフィン系エラストマーを、ゴム系材料を代替する多様な分野に適切に使用することができる。
実施例6のオレフィンブロック共重合体の分子量分布曲線および炭素数1000個あたりの分枝鎖(short chain branching;SCB)の個数分布を共に示す図である。 実施例13のオレフィンブロック共重合体の分子量分布曲線および炭素数1000個あたりの分枝鎖(short chain branching;SCB)の個数分布を共に示す図である。 比較例2のブロック共重合体の分子量分布曲線および炭素数1000個あたりの分枝鎖(short chain branching;SCB)の個数分布を共に示す図である。
以下、本記載の実施形態にかかるオレフィンブロック共重合体およびその製造方法についてより詳細に説明する。ただし、これは一例として提示されるものであって、これによって権利範囲が限定されるものではなく、上記の実施形態に対する多様な変形が可能であることは当業者にとって自明である。
本明細書全体において、特別な言及がない限り、いくつかの用語は次のように定義できる。
本明細書全体において、「(オレフィン)ブロック共重合体」は、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンとが共重合された高分子であって、物理的または化学的特性、例えば、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンにそれぞれ由来の繰り返し単位の含有量(モル分率)、結晶化度、密度、または融点などの特性のうちの1つ以上の特性値が互いに異なり、高分子内で互いに区分可能な複数の繰り返し単位のブロックまたはセグメントを含む共重合体を指すことができる。
このような複数のブロックまたはセグメントは、例えば、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と、α−オレフィン系繰り返し単位とを含むものの、これら各繰り返し単位を互いに異なる含有量(モル分率)で含むことができる。一例として、前記複数のブロックまたはセグメントは、第1モル分率のα−オレフィン系繰り返し単位を含む硬質結晶性ブロックのハードセグメントと、前記第1モル分率より高い第2モル分率のα−オレフィン系繰り返し単位を含む軟質弾性ブロックのソフトセグメントとを含むことができる。この時、第1モル分率は、ブロック共重合体全体に対して算出されたα−オレフィン系繰り返し単位のモル分率に比べて低いモル分率となり得、第2モル分率は、ブロック共重合体全体に対して算出されたα−オレフィン系繰り返し単位のモル分率に比べて高いモル分率となり得る。
また、前記複数のブロックまたはセグメントは、結晶化度、密度または融点などの他の特性のうちの1つ以上によっても互いに区分可能である。例えば、上述した硬質結晶性ブロックのハードセグメントは、軟質弾性ブロックのソフトセグメントと比較して、結晶化度、密度および融点の特性のうちの1つまたは2つ以上の特性値がより高い値を示すことができる。
さらに、前記「(オレフィン)ブロック共重合体」に含まれている「高分子鎖」とは、前記ブロック共重合体を重合および製造した時、形成される多数の高分子鎖を称することができる。例えば、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンとを重合して前記ブロック共重合体を製造すると、それぞれがエチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と、α−オレフィン系繰り返し単位とを含み、かつ多様な分子量を有する高分子鎖が形成され、このような高分子鎖がブロック共重合体をなすことができる。このような高分子鎖の分子量などは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いた分子量分布曲線を通じて確認できる。また、前記高分子鎖内のα−オレフィン系繰り返し単位またはこれに由来の分枝鎖の分布は、FT−IRでブロック共重合体を分析することによって確認することができる。そして、前記高分子鎖またはブロック共重合体内のα−オレフィン系繰り返し単位の含有量は、1H−NMRを用いた分析を通じて確認することができる。このような高分子鎖を、前記「(オレフィン)ブロック共重合体」に含まれている「高分子鎖(ら)」として定義することができる。
また、前記「(オレフィン)ブロック共重合体」の「最大ピーク分子量(Mp)」とは、かかるブロック共重合体に含まれている「高分子鎖(ら)」を分子量の大きさ順に並べた時、前記ブロック共重合体に最も大きい含有量で含まれる高分子鎖の分子量を指すことができる。このような「最大ピーク分子量(Mp)」は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いてブロック共重合体の分子量分布曲線を導出することによって確認できる。例えば、このような分子量分布曲線は、x軸を各高分子鎖の分子量またはそのlog値とし、y軸を高分子鎖の含有量とする関数として定義できるが、このような分布曲線のy値が最大となる地点での分子量x値(つまり、前記分布曲線の頂点での分子量x値)を「最大ピーク分子量(Mp)」と称することができる。
さらに、前記「高分子鎖(ら)」の分子量が「下位A%以下(あるいは以上、未満または超過)」となるとは、前記ブロック共重合体に含まれている「高分子鎖(ら)」を分子量の大きさ順に並べた時、最も小さい分子量を有する高分子鎖から始まって分子量の大きさ順がA%となる高分子鎖(例えば、A%=40%と仮定すると、高分子鎖10個がある場合、4番目に小さい分子量を有する高分子鎖)の分子量を基準として、このような分子量以下(あるいは以上、未満または超過)となることを指すことができる。そして、前記「高分子鎖(ら)」の分子量が「上位A%以下(あるいは以上、未満または超過)」となるとは、最も大きい分子量を有する高分子鎖から始まって分子量の大きさ順が40%となる高分子鎖の分子量を基準として、このような分子量以下(あるいは以上、未満または超過)となることを指すことができる。
そして、前記「(オレフィン)ブロック共重合体」において、「分枝鎖(short chain branching;SCB)」とは、上述したそれぞれの高分子鎖(ら)において、最も長い主鎖に枝のような形態で分枝結合された鎖(chain)を指すことができる。このような分枝鎖の個数は、前記ブロック共重合体をFT−IR分析することによって算出可能であり、前記ブロック共重合体や高分子鎖(ら)に含まれているα−オレフィン系繰り返し単位のモル分率に比例することができる。
一方、本記載の一実施形態によれば、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と、α−オレフィン系繰り返し単位とを互いに異なるモル分率で含む複数のブロックまたはセグメントを含むオレフィンブロック共重合体であって、炭素数1000個あたり20〜100個の分枝鎖(short chain branching;SCB)を含む高分子鎖を含み、各高分子鎖の炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数Yを各高分子鎖の分子量Xに対して1次微分した値が0となる地点が、分子量Xの最小値と最大値との間に存在するオレフィンブロック共重合体が提供される。このようなオレフィンブロック共重合体において、前記1次微分値が0となる地点は、例えば、前記分子量Xの下位約10%以上90%以下、あるいは約20%以上70%以下、あるいは約25%以上60%以下に存在し得、一具体例において、前記ブロック共重合体の最大ピーク分子量(Mp)未満の領域内に存在し得る。
このような一実施形態のオレフィンブロック共重合体は、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンとが共重合され、これらに由来の繰り返し単位を含むものであって、α−オレフィンに由来のα−オレフィン系繰り返し単位によって優れた弾性を示すことができる。
また、このようなオレフィンブロック共重合体は、後述する触媒システムを用いて製造されることにより、これに含まれている高分子鎖の分子量に応じて所定の分枝鎖分布特性を示すことが確認された。より具体的には、前記ブロック共重合体に含まれているそれぞれの高分子鎖は、炭素数1000個あたり約20〜100個、あるいは約25〜95個、あるいは約25〜90個、あるいは約25〜85個の分枝鎖を含むことができる。さらに、以下により詳細に説明するが、前記ブロック共重合体は、これに含まれている高分子鎖の分子量が増加するに伴って各高分子鎖に含まれている分枝鎖の個数が増加し、一定の地点、例えば、前記1次微分値が0となる地点を通り、これより高分子鎖の分子量が大きくなると、前記高分子鎖の分子量の増加に伴って分枝鎖の個数が減少する分枝鎖の分布傾向を示すことができる。このような分枝鎖の分布特性は、前記ブロック共重合体に含まれている高分子鎖がα−オレフィン系繰り返し単位をより高い含有量で含むブロックまたはセグメントを含むことを反映することができる。
このようなブロック共重合体の特性は、後述する特定の触媒システムを用いて製造されることにより、前記ブロック共重合体が、物理的または化学的特性が互いに異なる複数のブロックまたはセグメントを含むことでブロック化された形態を有するためと考えられる。つまり、後述する特定の触媒システムを用いて製造された一実施形態のブロック共重合体は、より高い含有量のエチレンまたはプロピレンを含む単量体同士で重合および結合されて1つのブロックまたはセグメントをなすことができ、逆に、α−オレフィンがより高い含有量で含まれている単量体同士で重合および結合されて他のブロックまたはセグメントをなすことができる。これにより、一実施形態のブロック共重合体は、より高い結晶化度を示すことができ、上述した分枝鎖の分布特性を示すことができる。
より具体的には、このようなブロック共重合体は、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と、α−オレフィン系繰り返し単位とのモル分率が互いに異なる複数のブロックまたはセグメント、例えば、第1モル分率のα−オレフィン系繰り返し単位を含む硬質結晶性ブロックのハードセグメントと、前記第1モル分率より高い第2モル分率のα−オレフィン系繰り返し単位を含む軟質弾性ブロックのソフトセグメントとを含むことができる。この時、全体のブロック共重合体に含まれているα−オレフィン系繰り返し単位のモル分率が、第1モル分率と、第2モル分率との間の値を有することができる。言い換えれば、第1モル分率は、ブロック共重合体全体に対して算出されたα−オレフィン系繰り返し単位のモル分率に比べて低いモル分率となり得、第2モル分率は、ブロック共重合体全体に対して算出されたα−オレフィン系繰り返し単位のモル分率に比べて高いモル分率となり得る。
このように、一実施形態のオレフィンブロック共重合体が、上述した分枝鎖分布特性から確認されるブロック化された形態を有し、例えば、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位のモル分率がより高い硬質結晶性ブロックのハードセグメントを含むことにより、かかるブロック共重合体は、約110〜135℃、約115〜130℃、あるいは約115〜125℃に達する高い融点を示すことができる。これは、以前に知られたオレフィン系エラストマーに比べて、高い融点に相当するものである。したがって、一実施形態のブロック共重合体は、以前に知られたエチレン−α−オレフィンランダム共重合体などのオレフィン系エラストマーに比べて向上した耐熱性を示すことができ、より高い温度でもエラストマーとしての優れた弾性などを示すことができる。
また、一実施形態のブロック共重合体は、これに含まれている各高分子鎖の炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数Yを各高分子鎖の分子量Xに対して1次微分した値が0となる地点が、分子量Xの最小値と最大値との間に存在する特性を示すことができる。このようなオレフィンブロック共重合体において、前記1次微分値が0となる地点は、例えば、前記分子量Xの下位約10%以上90%以下、あるいは約20%以上70%以下、あるいは約25%以上60%以下に存在し得、一具体例において、前記ブロック共重合体の最大ピーク分子量(Mp)未満の領域内に存在し得る。
このような分布特性は、ブロック共重合体をゲルクロマトグラフィー(GPC)で分析し、これに含まれている高分子鎖の分子量分布曲線を導出する一方、FT−IR分析を通して前記高分子鎖の分子量に応じた炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数を分析し、これらの関係を分布曲線で導出することによって確認できる。このような分布曲線の一例は、図1および図2に赤色曲線で表されている。
このような分布曲線の一例からも確認されるように、一実施形態のブロック共重合体は、前記1次微分値が0となる地点が、前記ブロック共重合体に含まれている高分子鎖の分子量の最小値と最大値との間の一定領域内に存在している(例えば、図1および図2の赤色曲線の頂点の存在)。また、前記1次微分値が0となる地点より高分子鎖の分子量が小さい領域では、前記高分子鎖の分子量が増加するに伴って各高分子鎖に含まれている分枝鎖の個数が増加し、前記1次微分値が正数となり得る。逆に、前記1次微分値が0となる地点より高分子鎖の分子量が大きい領域では、前記高分子鎖の分子量が増加するに伴って各高分子鎖に含まれている分枝鎖の個数が減少し、前記1次微分値が負数となり得る。言い換えれば、一実施形態のブロック共重合体は、多様な分子量を有する高分子鎖を含むが、比較的小さい分子量を有する高分子鎖の場合、分子量の増加に伴ってより多い個数の分枝鎖およびより高い含有量のα−オレフィン系繰り返し単位を含む特性を示すことができ、相対的に大きい分子量を有する高分子鎖の場合、分子量の増加にもかかわらず、より減少した個数の分枝鎖およびより低い含有量のα−オレフィン系繰り返し単位を含むことができる。そして、これら各特性を示す領域の間に、前記1次微分値が0となる地点が存在し得る。
このような分布特性は、一実施形態のブロック共重合体が有する特有の結晶特性およびブロック化された特性を反映することができ、これにより、前記ブロック共重合体は、約95〜120℃、あるいは約100〜115℃、あるいは約102〜110℃の高い結晶化温度(Tc)を有することができる。このような特有の結晶特性および比較的高い結晶化温度などを有することにより、前記ブロック共重合体は、溶融加工時、溶融後により速い結晶化が行われ、速い速度の成形が可能となる。したがって、前記一実施形態のブロック共重合体は、優れた加工性および製品成形性を示すことができる。特に、上述した分枝鎖の分布特性などは、本記載から新たに明らかにされたブロック共重合体の新規な特性に相当する。このような新規な結晶特性を示す一実施形態のブロック共重合体は、溶融後の結晶化および加工がより速くなり、優れた製品成形性を示すことが、後述する実施例などを通じて確認された。
一方、一実施形態のブロック共重合体に含まれている複数のブロックまたはセグメント、例えば、ハードセグメントおよびソフトセグメントは、結晶化度、密度または融点などの他の特性のうちの1つ以上の特性値によっても互いに区分可能である。例えば、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位をより高いモル分率で含む硬質結晶性ブロックのハードセグメントは、相対的にα−オレフィン系繰り返し単位を、高いモル分率で含む軟質弾性ブロックのソフトセグメントと比較して、結晶化度、密度および融点の特性のうちの1つ以上の特性値がより高い値を示すことができる。これは、前記ハードセグメントのより高い結晶性などに起因することができる。このような各ブロックまたはセグメントの特性値は、それぞれのブロックまたはセグメントに対応する(共)重合体を得て、これに対する特性値を測定するなどの方法で結晶および/または区分可能である。
このように、一実施形態のブロック共重合体が互いに異なる特性を有する複数のブロックまたはセグメントを含むことにより、このようなブロック共重合体は、優れた弾性と共に、優れた耐熱性を示すことができる。例えば、ブロック共重合体は、軟質弾性ブロックのソフトセグメントを含むことで、優れた弾性を示すと同時に、より高い融点などを有する結晶性ブロックのハードセグメントを含むため、このような高い融点に至るまで優れた弾性などの物性を維持することができる。したがって、前記ブロック共重合体は、優れた耐熱性を示すことができる。
また、一実施形態のオレフィンブロック共重合体は、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位を、約80〜98モル%、あるいは約80〜93モル%、あるいは約85〜95モル%の含有量(モル分率)で含むことができる。さらに、前記ブロック共重合体は、このようなモル分率のエチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と共に、残りのモル分率、例えば、2〜20モル%、あるいは約7〜20モル%、あるいは約5〜15モル%のα−オレフィン系繰り返し単位を含むことができる。この時、ブロック共重合体に含まれているエチレンまたはプロピレン系繰り返し単位の含有量は、重合時に使用された単量体中のエチレンまたはプロピレンの含有量を考慮して決定するか、ブロック共重合体を1H−NMRまたは13C−NMRで分析することによって算出することができる。
一実施形態のブロック共重合体がこのようなモル分率のα−オレフィン系繰り返し単位を含むことにより、エラストマーとしての優れた弾性を有することができ、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位のモル分率も最適化され、高い融点および優れた耐熱性を示すことができる。
さらに、一実施形態のブロック共重合体は、約20〜95モル%、あるいは約25〜90モル%、あるいは約20〜85モル%のハードセグメントを含むことができ、残りのモル分率、例えば、5〜80モル%、あるいは約10〜75モル%、あるいは約15〜80モル%のソフトセグメントを含むことができる。
この時、ハードセグメントのモル分率は、商用化されたTime Domain NMR(TD NMR)装置を用いて算出できる。より具体的には、このようなTD NMR装置を用いてブロック共重合体の試料に対するFree Induction Decay(FID)を測定することができるが、このようなFIDは、時間とIntensityの関数で示される。そして、下記式1において、A、B、T2fastおよびT2slowの4つの定数値を変化させ、前記FID関数のグラフに最も近い関数式を導出することができ、これにより、前記試料のA、B、T2fastおよびT2slow値を決定することができる。参考として、ハードセグメントの場合、これより算出されるT2(spin−spin relaxation time)relaxationが速くなり、ソフトセグメントの場合、これより算出されるT2(spin−spin relaxation time)relaxationが遅くなる。したがって、前記決定されたA、B、T2fastおよびT2slow値のうち、小さいT2値をハードセグメントのT2値、つまり、T2fast値として決定することができ、より大きいT2値をソフトセグメントのT2値、つまり、T2slow値として決定することができる。これにより、AおよびBの定数と共に、ハードセグメントの含有量(モル%)を算出することができる。
[式1]
Intensity=AxEXP(−Time/T2fast)+BxEXP(−Time/T2slow
フィッティングによってA、B、T2fast、T2slow値決定
Hard segment(mol%)=A/(A+B)x100
式中、IntensityとTimeは、FID分析結果から算出される値であり、T2fastは、ハードセグメントに対するT2(spin−spin relaxation time)relaxation値であり、T2slowは、ソフトセグメントに対するT2(spin−spin relaxation time)relaxation値である。また、AおよびBは、フィッティングによって決定される定数であって、それぞれハードセグメントおよびソフトセグメントの相対的割合として、各セグメントの含有量に比例する値を有する。
すでに詳述したように、ハードセグメントは、ブロック共重合体に含まれている複数のブロックまたはセグメントのうち、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位をより高いモル分率で含む硬質結晶性セグメントを意味することができ、ソフトセグメントは、α−オレフィン系繰り返し単位をより高いモル分率で含む軟質弾性セグメントを意味することができる。一実施形態のブロック共重合体がこのようなハードセグメントおよびソフトセグメントを一定のモル分率で含むことにより、ソフトセグメントによる優れた弾性と共に、ハードセグメントによる高い融点およびより向上した耐熱性を示すことができる。
そして、一実施形態のブロック共重合体は、密度が約0.85g/cm〜0.92g/cm、あるいは約0.86g/cm〜0.90g/cm、あるいは約0.86g/cm〜0.91g/cmとなり得、重量平均分子量が約5,000〜3,000,000、あるいは約10,000〜1,000,000、あるいは約50,000〜200,000となり得る。また、前記ブロック共重合体は、分子量分布(MWD;Mw/Mn)が約2.5〜6、あるいは約2.6〜5あるいは約2.5〜3.5となり得る。一実施形態のブロック共重合体がこのような密度および分子量などの特性を有することにより、オレフィン系エラストマーとしての適切な特性、優れた機械的物性および加工性などを示すことができる。特に、一実施形態のブロック共重合体は、2.5以上の比較的高い分子量分布を有することにより、優れた加工性などを示すことができる。
また、前記ブロック共重合体は、エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と共に、α−オレフィン系繰り返し単位を含むが、このようなα−オレフィン系繰り返し単位は、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンまたは1−アイトセンなどの、α−オレフィンに由来の繰り返し単位となり得、これらの中から選択された2種以上に由来の繰り返し単位となっていてもよい。
上述した一実施形態のオレフィンブロック共重合体は、α−オレフィン系繰り返し単位を含むことにより優れた弾性を示し、かつブロック化された特性および結晶化度などに起因する優れた耐熱性を示すことができる。また、一実施形態のブロック共重合体は、上述した分枝鎖分布特性などから確認される結晶特性およびより高い結晶化温度を示すことができる。このような結晶特性などに起因して、一実施形態のブロック共重合体は、溶融加工時、より速い結晶化を生じさせ得るため、溶融加工速度がより速く、加工性や製品成形性がより優れることができる。したがって、一実施形態のブロック共重合体は、オレフィン系エラストマーの適用分野に関する限界を克服し、耐熱性が要求されるより多様な分野に適用可能である。
このような一実施形態のブロック共重合体は、以前からエラストマーが適用されていた実質的にすべての用途に適用可能である。さらに、一実施形態のブロック共重合体は、以前のオレフィン系エラストマーが低い耐熱性によって実質的に適用されずにゴム系材料などが適用されていたより広い用途に適用されてもよい。例えば、一実施形態のブロック共重合体は、バンパーまたはトリム部品のような自動車用部品または内装材;パッケージング材料、各種電気的絶縁材料;靴底、歯ブラシの取っ手、床材または装置の取っ手などの各種生活用品;減圧性接着剤または高温溶融接着剤などの各種接着剤;ホース;または配管などの、非常に多様な製品を形成するための用途に使用可能であり、その他の様々な分野および用途に適用可能であることはもちろんである。
また、一実施形態のブロック重合体は、単独で使用されてもよいが、他の重合体、樹脂または各種添加剤とブレンディングされて使用されてもよく、フィルム、成形品または繊維などの任意の形態で使用可能である。
一方、上述したオレフィンブロック共重合体は、特定の触媒組成物の存在下に、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンとを共重合することによって製造できる。このようなオレフィンブロック共重合体の製造方法は、第4族遷移金属およびルイス塩基性官能基を有するメタロセン触媒と、ルイス酸性元素および有機官能基を有する助触媒とを含む触媒組成物の存在下に、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンとを約70〜150℃で共重合することを含むことができる。特に、この製造方法において、メタロセン触媒と、助触媒は、前記共重合温度下で、前記メタロセン触媒のルイス塩基性官能基および前記助触媒のルイス酸性元素がルイス酸−塩基結合している第1状態を取ることができ、このような第1状態では、メタロセン触媒の中心金属である第4族遷移金属と、前記ルイス酸−塩基結合している助触媒(例えば、その有機官能基)とが追加的に相互作用することができる。また、前記メタロセン触媒と、助触媒は、前記第1状態およびこれと異なる第2状態を交番的に取ることができるが、第2状態では、前記第4族遷移金属と助触媒とが相互作用しないことがある。
このような特性を有するメタロセン触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下に、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンの単量体とを共重合する場合、以下の技術的原理で一実施形態のブロック共重合体が製造されると予測できる。
前記メタロセン触媒は、第4族遷移金属を中心金属元素として含み、かつ非共有電子対を有するルイス塩基性官能基、例えば、酸素、窒素または硫黄を含む官能基を含み、これと共に使用される助触媒は、非共有電子対と結合可能なルイス酸性元素、例えば、アルミニウムまたはボロンなどの元素と共に、有機官能基を含むものである。このようなメタロセン触媒および助触媒を重合系で共に使用する場合、これら触媒および助触媒は、重合温度下で、メタロセン触媒のルイス塩基性官能基と助触媒のルイス酸性元素とがルイス酸−塩基結合しながら、メタロセン触媒の中心金属が前記ルイス酸−塩基結合している助触媒と相互作用している第1状態を取ることができる。また、これら触媒および助触媒は、選択可能な他の状態として、例えば、メタロセン触媒のルイス塩基性官能基と助触媒のルイス酸性元素とがルイス酸−塩基結合しているものの、メタロセン触媒の中心金属と、前記ルイス酸−塩基結合している助触媒との間の相互作用が生じない第2状態を取ることができる。特に、前記触媒および助触媒は、重合温度下でこれら第1および第2状態を行き来しながら交番的に取ることができる。これら触媒および助触媒が前記第1および第2状態を行き来しながら交番的にこれらの状態を取ることができるのは、第1および第2状態の間のエネルギー差が、例えば、約10kcal/mol以下、あるいは約5kcal/mol以下と小さく、重合温度下でこのようなエネルギーしきいを行き来しやすいからであると予測される。
この時のエネルギー差は、Gaussian programなどを用いて計算化学的に当業者にとって自明に測定できる。また、第1状態でルイス酸−塩基結合された状態とは、前記ルイス塩基性官能基と、ルイス酸性元素とが共有結合または配位結合などで連結されている場合だけでなく、ファンデルワールス力またはこれに準ずるシグマトロピック結合などによって相互作用している場合まで包括して指すことができる。また、中心金属(第4族遷移金属)と前記ルイス酸−塩基結合している助触媒(例えば、その有機官能基)とが相互作用しているとは、これらがファンデルワールス力またはこれに準ずるシグマトロピック結合などによって相互作用していることを指すことができる。そして、第2状態において、メタロセン触媒と助触媒との間に相互作用が生じないとは、前記中心金属(第4族遷移金属)と、前記ルイス酸−塩基結合している助触媒(例えば、その有機官能基)とが相互作用しない場合を指すことができる。
しかし、前記メタロセン触媒および助触媒が第1状態を取る場合、ルイス酸−塩基結合と、メタロセン触媒の中心金属および前記ルイス酸−塩基結合している助触媒との間の相互作用の影響でメタロセン触媒の中心金属元素周囲の空間が狭くなり得る。このため、第1状態では、相対的に大きい単量体のα−オレフィンよりは、エチレンまたはプロピレンが触媒に容易に接近して重合できる。これに対し、メタロセン触媒および助触媒が第2状態を取る場合、メタロセン触媒の中心金属元素周囲の空間が相対的に広くなるため、相対的に大きい単量体のα−オレフィンがより容易に接近可能で、その結果、高い含有量のα−オレフィンが重合できる。
このように、前記特定のメタロセン触媒および助触媒を使用し、より高い含有量のエチレンまたはプロピレンが重合される第1状態と、より高い含有量のα−オレフィンが重合される第2状態とを行き来しながら交番的に取るようにすることができる。その結果、前記製造方法によって得られるオレフィンブロック共重合体は、エチレンまたはプロピレン系繰り返し単位をより高いモル分率で含むハードセグメントと、α−オレフィン系繰り返し単位をより高いモル分率で含むソフトセグメントとを含んで製造できる。特に、このようなオレフィンブロック共重合体は、2種の遷移金属触媒などを含む複雑な触媒系を適用する必要なく、より単純化された触媒系を適用して容易に製造可能であり、すでに詳述したような優れた結晶化度および新規な分枝鎖分布特性などを示すことができる。
一方、このようなオレフィンブロック共重合体の製造方法において、重合温度は、約70〜150℃、あるいは約80〜120℃、あるいは約90〜110℃、あるいは約90〜100℃となり得る。このような重合温度下で、前記第1および第2状態の間のエネルギーしきいを行き来しやすいながらも、各単量体の重合反応が効率的に生じることができる。したがって、このような重合温度下で、優れた結晶化度などを有するオレフィンブロック共重合体が高い収率でより容易に得られる。
また、上述した製造方法では、第4族遷移金属を中心金属元素として含み、かつルイス塩基性官能基、例えば、非共有電子対を有する酸素、窒素または硫黄を含む官能基を有するメタロセン触媒を使用することができる。このようなメタロセン触媒の種類は特に限定されないが、上述した第1および第2状態を適切に交番的に取ることができる特性と、各状態におけるエチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンに対する重合活性などを考慮して、このようなメタロセン触媒としては、下記化学式1で表示されるメタロセン化合物を使用することができる:
Figure 2014503026
式中、R1〜R17は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、C−C20のアルキル基、C−C20のアルケニル基、C−C20のアリール基、C−C20のアルキルアリール基、またはC−C20のアリールアルキル基であり、Lは、C−C10の直鎖または分枝鎖アルキレン基であり、Dは、−O−、−S−または−N(R)−であり、ここで、Rは、水素、ハロゲン、C−C20のアルキル基、C−C20のアルケニル基、またはC−C20のアリール基であり、Aは、水素、ハロゲン、C−C20のアルキル基、C−C20のアルケニル基、C−C20のアリール基、C−C20のアルキルアリール基、C−C20のアリールアルキル基、C−C20のアルコキシアルキル基、C−C20のヘテロシクロアルキル基、またはC−C20のヘテロアリール基であり、前記Dが−N(R)−の時、Rは、Aと結合して窒素を含むヘテロ環、例えば、ピペリジニルまたはピロリジニルのような5〜8各環のヘテロ環をなすことができ、Mは、第4族遷移金属であり、X1およびX2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、ハロゲン、C−C20のアルキル基、C−C20のアルケニル基、C−C20のアリール基、ニトロ基、アミド基、C−C20のアルキルシリル基、C−C20のアルコキシ基、またはC−C20のスルホネート基である。
このようなメタロセン触媒は、非共有電子対を有する酸素、硫黄または窒素のDに、Aが結合された「A−D−」の官能基を含み、かつ第4族遷移金属Mを中心金属元素として含むものである。したがって、前記「A−D−」の官能基に含まれている非共有電子対がルイス塩基として作用して助触媒のルイス酸性元素と酸−塩基結合することができ、第4族遷移金属Mが助触媒と相互作用することができる。その結果、メタロセン触媒と助触媒とが上述した第1および第2状態を交番的に取りながら、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンとの共重合を進行させることができる。
以下、このような化学式1のメタロセン化合物において、各置換基をより具体的に説明する。
前記C−C20のアルキル基としては、直鎖または分枝鎖のアルキル基を含み、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、またはオクチル基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
前記C−C20のアルケニル基としては、直鎖または分枝鎖のアルケニル基を含み、具体的には、アリル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、またはペンテニル基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
前記C−C20のアリール基としては、単環または縮合環のアリール基を含み、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、またはフルオレニル基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
前記C−C20のヘテロアリール基としては、単環または縮合環のヘテロアリール基を含み、カルバゾリル基、ピリジル基、キノリン基、イソキノリン基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾール基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアジン基、テトラヒドロピラニル基、またはテトラヒドロフラニル基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
前記C−C20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェニルオキシ基、またはシクロヘキシルオキシ基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
前記第4族遷移金属としては、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
また、前記化学式1のメタロセン化合物の適切な活性および特性などの面で、前記化学式1のR1〜R17は、それぞれ独立に、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、またはフェニル基となり得、これ以外にも多様な置換基となり得る。
そして、前記メタロセン化合物において、前記化学式1のLは、C−Cの直鎖または分枝鎖アルキレン基となり得る。また、前記アルキレン基は、C−C20のアルキル基、C−C20のアルケニル基、またはC−C20のアリール基にで置換もしくは非置換され得る。
また、前記メタロセン化合物において、前記化学式1のAは、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、またはテトラヒドロフラニル基などとなり得、その他多様な置換基になっていてもよい。
そして、前記化学式1で表示されるメタロセン化合物の具体例としては、下記化学式2で表示される化合物が挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
Figure 2014503026
一方、上述した製造方法では、上述したメタロセン触媒と共に、ルイス酸性元素、例えば、アルミニウムまたはボロンなどの元素と、有機官能基を有する助触媒を使用することができる。このような助触媒の種類は特に限定されないが、このような助触媒の代表例としては、下記化学式3で表示される助触媒化合物が挙げられる:
[化学式3]
−[Al(R18−O)]
式中、R18は、互いに同一または異なっていてよく、それぞれ独立に、炭素数1〜20の炭化水素;またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の炭化水素であり;nは、2以上の整数、例えば、2〜6の整数である。
このような助触媒は、ルイス酸性元素としてアルミニウムを含み、R18の有機官能基を含むものであって、上述した化学式1などのメタロセン触媒と共に適切にルイス酸−塩基結合する一方、メタロセン触媒の第4族遷移金属と相互作用することができる。また、化学式1などのメタロセン触媒を使用した時、上述した第1状態および第2状態の間のエネルギー差が大きくなく、上述した共重合温度下で、メタロセン触媒と助触媒とが第1および第2状態を交番的に取りながら、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンとの共重合を進行させることができる。さらに、このような助触媒は、例えば、上述した化学式1などのメタロセン触媒と共に使用され、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンに対して適切な重合活性を示すことができるため、これを適切なメタロセン触媒と共に使用し、高い結晶化度などを示す一実施形態のオレフィンブロック共重合体がより容易に得られる。
このような化学式3の助触媒化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、またはブチルアルミノキサンなどがあり、なかでも、メチルアルミノキサンなどを代表的に使用することができる。
上述したメタロセン触媒および助触媒を含む触媒組成物は、メタロセン触媒に助触媒を接触させるなどの通常の方法で得ることができる。また、追加的な助触媒を使用する場合、メタロセン触媒にすべての助触媒を同時に接触させるか、順次に接触させることもできる。この時、ルイス酸性元素を有する化学式3などの助触媒を他の助触媒より先にメタロセン触媒と接触させた方が、メタロセン触媒と助触媒との相互作用の面でより有利となり得る。
また、前記メタロセン触媒と、助触媒とのモル比率は、約1/5,000〜1/2、あるいは約1/1,000〜1/10、あるいは約1/500〜1/20となり得る。このようなモル比率で使用し、メタロセン触媒と助触媒との相互作用を適切に生じさせ得ながらも、過剰の助触媒によってメタロセン触媒の活性が低下したり、工程単価が上昇するのを抑制することができる。
前記触媒組成物の製造時には、溶媒として、ペンタン、ヘキサン、またはヘプタンなどのような脂肪族炭化水素系溶媒、あるいはベンゼン、またはトルエンなどのような芳香族炭化水素系溶媒が使用できる。また、メタロセン触媒や助触媒は、シリカやアルミナなどの担体に担持された形態でも使用できる。
一方、上述したオレフィンブロック共重合体の製造方法では、上述したメタロセン触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下で、エチレンまたはプロピレンと、α−オレフィンの単量体とを共重合させる段階を含む方法でオレフィンブロック共重合体を製造することができる。この時、α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンおよび1−アイトセンからなる群より選択された1種以上を使用することができる。
また、前記オレフィンブロック共重合体の製造方法は、上述した事項を除いては、通常のオレフィン系共重合体の製造条件に従って進行できる。このような共重合条件の具体的な例示は後述する実施例に記載されている。
以下、理解のためにいくつかの実施例を提示する。しかし、下記の実施例は例示のために提示されるものであって、権利範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
<製造例1>
1)リガンド化合物の製造
Figure 2014503026
THF溶媒下で、tert−Bu−O−(CHCl化合物とMg(0)との間の反応から、グリニャール(Grignard)試薬のtert−Bu−O−(CHMgCl溶液1.0moleを得た。前記製造されたグリニャール化合物を、−30℃の状態のMeSiCl化合物(176.1mL、1.5mol)とTHF(2.0L)が入っているフラスコに加え、常温で8時間以上撹拌した後、ろ過した溶液を真空乾燥し、tert−Bu−O−(CHSiMeClの化合物を得た(収率92%)。
−20℃で、反応器にフルオレン(3.33g、20mmol)とヘキサン(100mL)とMTBE(methyl tert−butyl ether、1.2mL、10mmol)を入れ、8mlのn−BuLi(2.5M in Hexane)を徐々に加え、常温で6時間撹拌した。撹拌が終わった後、反応器の温度を−30℃に冷却させ、−30℃で、ヘキサン(100mL)に溶けているtert−Bu−O−(CHSiMeCl(2.7g、10mmol)溶液に、前記製造されたフルオレニルリチウム溶液を1時間にわたって徐々に加えた。常温で8時間以上撹拌した後、水を添加して抽出し、乾燥(evaporation)し、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310化合物を得た(5.3g、収率100%)。リガンドの構造は、1H−NMRを通じて確認した。
1H NMR(500MHz, CDCl3) : -0.35 (MeSi, 3H, s), 0.26 (Si-CH2, 2H, m), 0.58 (CH2, 2H, m), 0.95 (CH2, 4H, m), 1.17(tert-BuO, 9H, s), 1.29(CH2, 2H, m), 3.21(tert-BuO-CH2, 2H, t), 4.10(Flu-9H, 2H, s), 7.25(Flu-H, 4H, m), 7.35(Flu-H, 4H, m), 7.40(Flu-H, 4H, m), 7.85(Flu-H, 4H, d)
2)メタロセン化合物の製造
Figure 2014503026
−20℃で、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310(3.18g、6mmol)/MTBE(20mL)溶液に、4.8mlのn−BuLi(2.5M in Hexane)を徐々に加え、常温に上げながら8時間以上反応させた後、−20℃で、前記製造されたジリチウム塩(dilithium salts)スラリー溶液を、ZrCl(THF)(2.26g、6mmol)/ヘキサン(20mL)のスラリー溶液に徐々に加え、常温で8時間さらに反応させた。沈殿物をろ過し、数回ヘキサンで洗浄し、赤色固体形態の(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C13ZrCl化合物を得た(4.3g、収率94.5%)。
1H NMR(500MHz, C6D6) : 1.15(tert-BuO, 9H, s), 1.26 (MeSi, 3H, s), 1.58 (Si-CH2, 2H, m), 1.66 (CH2, 4H, m), 1.91(CH2, 4H, m), 3.32(tert-BuO-CH2, 2H, t), 6.86 (Flu-H, 2H, t), 6.90 (Flu-H, 2H, t), 7.15 (Flu-H, 4H, m), 7.60 (Flu-H, 4H, dd), 7.64(Flu-H, 2H, d), 7.77(Flu-H, 2H, d)
<製造例2>
1)リガンド化合物の製造
リガンド製造時、tert−Bu−O−(CHCl化合物の代わりに、tert−Bu−O−(CHCl化合物を用いたことを除いては、前記製造例1と同様にリガンド化合物を製造し、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310化合物を前記製造例1と類似の収率で取得した。リガンドの構造は、1H−NMRを通じて確認した。
1H NMR(500MHz, C6D6) : -0.40 (MeSi, 3H, s), 0.30 (CH2, 2H, m), 0.71 (CH2, 2H, m), 1.05 (tert-BuO, 9H, s), 1.20(CH2, 2H, m), 2.94 (tert-BuO-CH2, 2H, t), 4.10(Flu-9H, 2H, s), 7.16(Flu-H, 4H, m), 7.35 (Flu-H, 4H, m), 7.35 (Flu-H, 2H, d), 7.43 (Flu-H, 2H, d), 7.77 (Flu-H, 4H, d)
2)メタロセン化合物の製造
(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310の代わりに、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310化合物を用いたことを除いては、前記製造例1と同様に製造し、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C13ZrCl化合物を類似の収率で得た。
Figure 2014503026
1H NMR(500MHz, C6D6) : 1.14 (tert-BuO, 9H, s), 1.26 (MeSi, 3H, s), 1.90 (CH2, 2H, m), 1.99 (CH2, 2H, m), 2.05 (CH2, 2H, m), 3.39 (tert-BuO-CH2, 2H, t), 6.84 (Flu-H, 2H, m), 6.90 (Flu-H, 2H, m), 7.15 (Flu-H, 4H, m), 7.60 (Flu-H, 6H, d), 7.80 (Flu-H, 2H, d)
<製造例3>
1)リガンド化合物の製造
リガンド製造時、tert−Bu−O−(CHCl化合物の代わりに、tert−Bu−O−(CHCl化合物を用いたことを除いては、前記製造例1と同様にリガンド化合物を製造し、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310化合物を前記製造例1と類似の収率で取得した。リガンドの構造は、1H−NMRを通じて確認した。
1H NMR(500MHz, C6D6) : -0.40 (MeSi, 3H, s), 0.29 (CH2, 2H, m), 0.58 (CH2, 2H, m), 0.83 (CH2, 2H, m), 0.95 (CH2, 2H, m), 1.05 (CH2, 2H, m), 1.14 (tert-BuO, 9H, s), 1.30 (CH2, 2H, m), 1.64 (CH2, 2H, m), 3.27 (tert-BuO-CH2, 2H, t), 4.13(Flu-9H, 2H, s), 7.17 (Flu-H, 4H, m), 7.26 (Flu-H, 4H, m), 7.37 (Flu-H, 2H, d), 7.43 (Flu-H, 2H, d), 7.78 (Flu-H, 4H, d)
2)メタロセン化合物の製造
(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310の代わりに、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310化合物を用いたことを除いては、前記製造例1と同様に製造し、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C13ZrCl化合物を類似の収率で得た。
Figure 2014503026
1H NMR(500MHz, C6D6) : 1.17 (tert-BuO, 9H, s), 1.29 (MeSi, 3H, s), 1.41 (CH2, 4H, m), 1.49 (CH2, 2H, m), 1.64 (CH2, 2H, m), 1.89 (CH2, 4H, m), 1.94 (CH2, 2H, m), 3.30 (tert-BuO-CH2, 2H, t), 6.81 (Flu-H, 2H, m), 6.90 (Flu-H, 2H, m), 7.14 (Flu-H, 4H, m), 7.60 (Flu-H, 4H, d), 7.65 (Flu-H, 2H, d), 7.78 (Flu-H, 2H, d)
<実施例1ないし13>
500mlのガラス反応器にトルエン(toluene)を投入し、1−ヘキセン(実施例2では1−オクテン)を投入し、MAO(メチルアルミノキサン)の10wt%トルエン溶液を投入した。次に、前記製造例1で製造した化合物((tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C13ZrCl)の1mMトルエン溶液を投入した後、反応器にエチレンを投入して重合を開始した。一定時間撹拌し、ventし、反応物をエタノール/塩酸溶液に注入した。撹拌し、フィルタしてから、エタノールで洗浄した後、溶媒を蒸発させ、オレフィンブロック共重合体を得た。
前記実施例において、1−ヘキセン(または1−オクテン)およびエチレンを含む単量体全体含有量中の、1−ヘキセン(または1−オクテン)の含有量を、表1に記載されたように多様に変化させながら、オレフィンブロック共重合体を製造した。
<比較例1>
LG化学のオレフィン系エラストマー(エチレン−1−オクテンランダム共重合体)である製品名LUCENETMLC170を、比較例1とした。
<比較例2>
ダウケミカルのオレフィン系ブロック共重合体(エチレン−1−オクテンブロック共重合体;Melt Index(190℃、2.16kg):5g/10min;Density:0.866g/cm)である製品名INFUSETM9507を、比較例2とした。
実施例1ないし13、比較例1および2で得られたオレフィン−1−ヘキセン共重合体のいくつかの物性を、次の試験例のような方法で測定した。
<試験例>
1)高分子鎖の分子量分布および分枝鎖の個数の分析
各共重合体をゲル透過クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)で分析し、前記共重合体をなす高分子鎖の分子量分布曲線を導出した。また、各共重合体をFT−IRで分析し、前記高分子鎖の分子量(X軸)に応じた炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数値(右側のY軸)の分布曲線を導出した。実施例6および13と比較例2に対して導出された結果は、それぞれ図1ないし図3に示しており、残りの共重合体に対しても同様の結果を導出した。
このような導出結果から、各共重合体に対して、1)高分子鎖に含まれている炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数(平均値)、2)最大ピーク分子量(Mp)、および3)各高分子鎖の炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数Yを各高分子鎖の分子量Xに対して1次微分した値が0となる地点の存在の有無と、その地点での分子量値をそれぞれ算出し、下記表1に示した。この時、前記1)炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数は、各実施例の共重合体に含まれている高分子鎖の分枝鎖の個数を全体的に測定してその平均値を算出した後、分枝鎖の個数の範囲と共に、下記表1に示した。
2)密度(density)
前記1)のWAXD分析のために得られた長方形バー(rectangular bar)(64mm*12.7mm*3.2mm)形態のサンプルを用い、メトラー(Mettler)天秤で密度を測定した。このように測定された密度を、下記表2にまとめた。
3)融点(Tm)および結晶化温度(Tc)
温度30℃で平衡(equilibration)を維持した状態で、20℃/minで200℃まで昇温した後、その温度で5分間維持させ、共重合体サンプルの熱履歴(thermal history)を除去した。再び10℃まで10℃/minに温度を減少させていき、結晶化温度に対応する発熱ピークを確認した。10℃で1分間維持した後、10℃/minで温度を200℃まで増加させた後、1分間その温度で維持し、再び30℃まで下げて実験を終了した。
DSC(Differential Scanning Calorimeter、TAinstruments社製造、DSC2920model)測定結果に基づき、温度に応じたヒートフロー曲線の10℃/min減少区間の頂上を結晶化温度(Tc)とし、10℃/min増加区間でのピークのうち、面積の大きいピークを第1ピーク、面積の小さいピークを第2ピークとした。この時、温度の上昇および下降速度は10℃/minであり、融点(Tm)は2番目の温度が上昇する区間で測定した結果を用いた。このように測定された融点および結晶化度を、下記表2にまとめた。
4)ハードセグメントの含有量の分析
実施例および比較例のハードセグメントの含有量(モル分率)は、商用化されたTime Domain NMR(TD NMR;Bruker Optics社製、商品名Minspec)を用いて算出した。まず、このようなTD NMR装置を用い、実施例および比較例の試料に対するFree Induction Decay(FID)を測定した。このように測定されたFIDは、時間とIntensityの関数で示される。そして、下記式1において、A、B、T2fastおよびT2slowの4つの定数値を変化させ、FID関数のグラフに最も近い関数式を導出し、これにより、各試料のA、B、T2fastおよびT2slow値を決定した。
ハードセグメントの場合、これより算出されるT2(spin−spin relaxation time)relaxationが速くなり、ソフトセグメントの場合、これより算出されるT2(spin−spin relaxation time)relaxationが遅くなることが知られている。したがって、前記決定されたA、B、T2fastおよびT2slowのうち、小さいT2値をハードセグメントのT2値、つまり、T2fast値として決定し、より大きいT2値をソフトセグメントのT2値、つまり、T2slow値として決定した。これにより、AおよびBの定数と共に、ハードセグメントの含有量(モル%)を算出した。実施例および比較例に対して、このように算出されたハードセグメントの含有量を、表1にまとめた:
[式1]
Intensity=AxEXP(−Time/T2fast)+BxEXP(−Time/T2slow
フィッティングによってA、B、T2fast、T2slow値決定
Hard segment(mol%)=A/(A+B)x100
式中、IntensityとTimeは、FID分析結果から算出される値であり、T2fastは、ハードセグメントに対するT2(spin−spin relaxation time)relaxation値であり、T2slowは、ソフトセグメントに対するT2(spin−spin relaxation time)relaxation値である。また、AおよびBは、フィッティングによって決定される定数であって、それぞれハードセグメントおよびソフトセグメントの相対的割合として、各セグメントの含有量に比例する値を有する。
5)分子量および分子量分布(Polydispersity index:PDI)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した後、重量平均分子量を数平均分子量で割って分子量分布を算出した。このような重量平均分子量および分子量分布の算出値を、下記表2にまとめた。
上述した方法で算出された各物性値を、下記表1および2にまとめて示した。
Figure 2014503026
*Ocは、α−オレフィンであって、1−ヘキセンの代わりに、1−オクテンを使用したことを表す;
Figure 2014503026
*実施例1、4ないし6、8ないし11に対しては、ハードセグメントの含有量に対する測定結果なし;
*比較例1の場合、複数のブロックまたはセグメントが定義できないランダム共重合体であって、ハードセグメントの含有量の測定結果が導出できなかった。
前記表1、図1および図2を参照すれば、実施例のブロック共重合体は、これに含まれている高分子鎖が全体の分子量領域で炭素数1000個あたり約20〜100個の分枝鎖を含むことが確認された。また、前記高分子鎖の分子量が増加するに伴って炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数値が増加し(言い換えれば、1次微分値が正数になってから)、このような1次微分値=0の地点を通り、炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数値が減少する(言い換えれば、1次微分値が負数となる)分布傾向を示すことが確認された。さらに、前記1次微分値=0の地点は、高分子鎖の分子量のうち、下位10%以上90%以下に相当する領域、より具体的には、最大ピーク分子量(Mp)より小さい領域に存在することが確認された。
これに対し、表1、表2および図3を参照すれば、比較例の共重合体は、このような実施例の分布特性を満たさないか、実施例とは異なる形態の共重合体であることが確認された。より具体的には、比較例1は、ランダム共重合体の形態を有するものであって、ハードセグメントおよびソフトセグメントのような複数のブロックまたはセグメント自体が定義できず、実施例のブロック共重合体とは全く異なる形態を有することが確認された。また、比較例2のオレフィンブロック共重合体は、炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数が20個未満の領域が存在するだけでなく、分枝鎖の個数の分布傾向も図1および図2とは異なり、実施例の分布特性を満たせないことが確認された(特に、1次微分値=0となる地点が最大ピーク分子量よりはるかに大きい領域に存在し、実施例とは分枝鎖分布特性が異なることが確認された。)。
さらに、前記表2を参照すれば、表1の分布特性を示す実施例のブロック共重合体は、比較例1よりはるかに高く、比較例2に相応する高い融点および優れた耐熱性を示すことが確認された。なお、実施例のブロック共重合体は、比較例1および2に比べて高い結晶化温度などを示すことが確認された。これより、実施例のブロック共重合体は、溶融加工時、速い結晶化速度を示し、比較例1および2に比べて優れた加工性および製品成形性を示すことが確認された。
また、実施例のブロック共重合体は、ハードセグメントおよびソフトセグメントが定義され、各セグメントを一定の含有量で含み、所定含有量のα−オレフィンがブロック共重合されて一定水準の密度を有するものであって、エラストマーとしての優れた弾性を示すことが確認された。

Claims (14)

  1. オレフィンブロック共重合体であって、
    エチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と、α−オレフィン系繰り返し単位とを互いに異なるモル分率で含む複数のブロックまたはセグメントとを含んでなり、
    炭素数1000個あたり20〜100個の分枝鎖(short chain branching;SCB)を含む高分子鎖を含み、各高分子鎖の炭素数1000個あたりの分枝鎖の個数Yを各高分子鎖の分子量Xに対して1次微分した値が0となる地点が、分子量Xの最小値と最大値との間に存在することを特徴とする、オレフィンブロック共重合体。
  2. 前記1次微分値が0となる地点が、前記ブロック共重合体の最大ピーク分子量(Mp)未満の領域内に存在することを特徴とする、請求項1記載のオレフィンブロック共重合体。
  3. 前記1次微分値が0となる地点より分子量Xが小さい領域では、前記1次微分値が正数となることを特徴とする、請求項1又は2に記載のオレフィンブロック共重合体。
  4. 前記1次微分値が0となる地点より分子量Xが大きい領域では、前記1次微分値が負数となることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のオレフィンブロック共重合体。
  5. 95〜120℃の結晶化温度(Tc)を有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のオレフィンブロック共重合体。
  6. 110〜135℃の融点(Tm)を有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のオレフィンブロック共重合体。
  7. 第1モル分率のα−オレフィン系繰り返し単位を含むハードセグメントと、第1モル分率より高い第2モル分率のα−オレフィン系繰り返し単位を含むソフトセグメントとを含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のオレフィンブロック共重合体。
  8. 全体のブロック共重合体に含まれているα−オレフィン系繰り返し単位のモル分率が、第1モル分率と、第2モル分率との間の値を有することを特徴とする、請求項7記載のオレフィンブロック共重合体。
  9. ハードセグメントの20〜95モル%と、ソフトセグメントの5〜80モル%とを含むことを特徴とする、請求項7又は8に記載のオレフィンブロック共重合体。
  10. ハードセグメントが、結晶化度、密度および融点の特性値のうちの1つ以上がソフトセグメントより高いことを特徴とする、請求項7〜9の何れか一項に記載のオレフィンブロック共重合体。
  11. 80〜98モル%のエチレン系またはプロピレン系繰り返し単位と、残量のα−オレフィン系繰り返し単位とを含むことを特徴とする、請求項1〜10の何れか一項に記載のオレフィンブロック共重合体。
  12. 密度が0.85g/cm〜0.92g/cmであることを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載のオレフィンブロック共重合体。
  13. 重量平均分子量が5,000〜3,000,000であり、分子量分布が2.5以上6以下であることを特徴とする、請求項1〜12の何れか一項に記載のオレフィンブロック共重合体。
  14. α−オレフィン系繰り返し単位が、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、および1−アイトセンからなる群より選択された1種以上のα−オレフィンに由来の繰り返し単位であることを特徴とする、請求項1〜13の何れか一項に記載のオレフィンブロック共重合体。
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