発明の詳細な説明
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本出願は、2010年12月23日に出願された欧州特許出願第10196904.6号の利益を主張し、その開示内容の全体を参照により本明細書に組み込むものである。
本発明は、硬化性及び硬化済の形態の二成分エポキシ系接着剤組成物に関する。本発明の更なる目的は、このような接着剤組成物と共に接着される物品である。本発明はまた、本発明による接着剤組成物と共に2つの基材を接着するための方法に関する。最後に、本発明は、硬化性エポキシ樹脂又は二成分硬化性エポキシ接着剤のための硬化剤としてのエポキシ−アミン及び/又はエポキシ−チオール付加物の使用を目的とする。
硬化性エポキシ系接着剤組成物は、一成分又は二成分形態の構造用接着剤として広く使用される。このような構造用接着剤は、典型的には、ねじ、ボルト、くぎ、止め金、鋲、及び金属融合加工(例えば、溶接、ろう付け、及びはんだ付け)などの従来の接着技術と置き換える又は補完するために用いることができる、熱硬化性樹脂組成物として配合される。構造用接着剤は、例えば、自動車及び航空宇宙産業において、様々な用途で使用される。構造用接着剤として有用であるためには良好な機械的強度及び衝撃耐性が望まれる。
構造用接着剤接着の物理的特性は、構造用接着剤と、構造用接着剤が適用される基材の表面との相互作用に依存する。理想条件下では構造用接着剤はきれいな表面に適用されるが、しかしながら、一部の基材の表面は、様々な油及び潤滑剤などの炭化水素含有物質で汚染されている。油汚染は、自動車などの車両の部分である基材に関して珍しいものではない。油汚染の存在は、接着剤/基材界面に望ましくない接着不具合を導く恐れがある。
炭化水素含有物質を基材の表面から除去することは困難であり得る。乾拭き、及び/又は加圧空気の使用などの機械的処理は、炭化水素含有物質の薄層を表面上に残す傾向がある。液体洗浄組成物は有効であり得るが、これらの組成物は典型的には回収し、再利用又は廃棄する必要がある。加えて、典型的には洗浄工程後に乾燥工程が必要となる。
自動車産業用途において、エポキシ系接着剤はほぼ常に、これらを少なくとも60℃、場合により170℃程度の温度に曝露することにより熱硬化させる。これらの環境下において一成分又は二成分接着剤のいずれも使用できるが、一成分型が多くの場合好まれ、それはこれらが通常、油で汚染された基材表面に対してより高い許容度を有するからである。しかしながら、一成分エポキシ接着剤は、二成分エポキシ接着剤組成物と比較して、所与の温度においてより長い硬化時間を必要とする。これは、一部には、一成分接着剤組成物に通常含まれる多くの硬化剤が保存安定性のために室温において不活性化されている事実に起因する。硬化剤の修飾された反応性基は高温にて遊離し、その時点でエポキシ樹脂との反応に利用可能になる。
一成分エポキシ接着剤配合物の保存寿命が伸びる他の機構は、室温では硬化剤がエポキシ樹脂との混和性を欠くが、高温になると混和性を生じることを使用する。この機構についての例は、ジシアンジアミド硬化剤であり、これは室温ではエポキシ樹脂と混和性ではないが、150℃よりも高い温度では混和性である。
一成分エポキシ接着剤の硬化スピードにおいて生じる待ち時間のために、接着されなければならない部品は、部品のずれを防止するために、点溶接によりまず仮に固定する必要がある。この追加のプロセス工程及び一成分エポキシ系の概ねゆっくりとした硬化スピードは、製造サイクル時間を増やす。
一方で、二成分エポキシ系接着剤は硬化スピードの増大を示し、その結果、部品の仮固定が必須ではない。しかしながら、二成分エポキシ接着剤の適用範囲は、油で覆われた基材に対するこれらの許容度が低いために、自動車用途では限定されている。
したがって、基材表面上の油汚れに対する許容度がより高い硬化性二成分エポキシ接着剤組成物を提供することが本発明の目的である。同時に、この硬化性接着剤組成物はまた、従来の既知の二成分エポキシ接着剤と比較して、より良好な耐破壊特性を呈すべきである。
この目的は、第一部分及び第二部分を含む硬化性組成物であって、
第一部分において少なくとも1つのエポキシ樹脂を含み、第二部分において、少なくとも1つの一級アミン、二級アミン及び/又はチオールを少なくとも1個の末端エポキシ基を含む少なくとも1つのポリオール化合物と反応させることにより得られるエポキシ−アミン及び/又はエポキシ−チオール付加物の形態の少なくとも1つの硬化剤を含む、硬化性組成物によって、解決される。
剥離試験、重ねせん断強度試験及び耐破壊性試験の結果は、上記硬化剤が、このような硬化剤を配合された二成分エポキシ接着剤組成物の油汚れに対する許容度を劇的に増大させることを示している。これらの破壊挙動もまた、他の二成分エポキシ系よりも改善されている。これらの改善は、上記のような硬化剤によってもたらされる接着剤組成物におけるより良好な油溶解度特性により、引き起こされ得ることが考えられる。より良好な耐破壊性は、この硬化剤のポリオール主鎖に起因するものであり得る。換言すれば、本発明で使用される硬化剤は、単一化合物において強化能力と硬化能力を組み合わせる。
エポキシ基とのこの硬化剤の反応性のために、このエポキシ樹脂は、硬化性接着剤組成物の使用に先立って、第一部分中において、硬化剤から分離される。この第一部分は、エポキシ樹脂に加えて、エポキシ樹脂と反応しないか又はエポキシ樹脂の一部のみとしか反応しない他の構成成分を含むことができる。同様に、第二部分は、硬化剤と反応しないか又は硬化剤の一部のみとしか反応しない他の構成成分を含むことができる。場合により、本発明の反応性液体改質剤が、硬化剤との早発反応を回避するために、第一部分に添加されてもよい。強化剤、並びに、油変位剤などの他の追加の構成成分は、第一部分、第二部分、又は、第一部分と第二部分の両方に含むことができる。第一部分及び第二部分が一緒に混合されると、様々な構成成分が反応して、硬化済み接着剤組成物を形成する。
第一部分に含まれるエポキシ樹脂は、分子当たり少なくとも1個のエポキシ官能基(すなわち、オキシラン基)を含有する。本明細書で使用するとき、用語「オキシラン基」は、以下の式(I)による二価の基を指す:
アスタリスクは、このオキシラン基の、別の基との結合部位を示す。オキシラン基がエポキシ樹脂の末端位置にある場合、オキシラン基は典型的には水素原子に結合している。
この末端オキシラン基は、多くの場合、グリシジル基の部分である。
エポキシ樹脂は、多くの場合、分子当たり少なくとも1個のオキシラン基を有し、多くの場合、分子当たり少なくとも2個のオキシラン基を有する。例えば、エポキシ樹脂は、分子当たり1〜10個、2〜10個、1〜6個、2〜6個、1〜4個、又は2〜4個のオキシラン基を有することができる。オキシラン基は、通常、グリシジル基の一部である。
エポキシ樹脂は、硬化前に所望の粘度特性をもたらし、硬化後に所望の機械的特性をもたらすように選択される単一材料又は複数の材料の混合物であることができる。エポキシ樹脂が複数の材料の混合物である場合、混合物中のエポキシ樹脂のうちの少なくとも1つは、典型的には、分子当たり少なくとも2個のオキシラン基を有するように選択される。例えば、混合物中の第一エポキシ樹脂は2〜4個のオキシラン基を有することができ、混合物中の第二エポキシ樹脂は1〜4個のオキシラン基を有することができる。これらの例のうちのいくつかでは、第一エポキシ樹脂は2〜4個のグリシジル基を有する第一グリシジルエーテルであり、第二エポキシ樹脂は1〜4個のグリシジル基を有する第二グリシジルエーテルである。
オキシラン基ではないエポキシ樹脂分子の部分(すなわち、エポキシ樹脂分子からオキシラン基を除いたもの)は、芳香族、脂肪族又はこれらの組み合わせであることができ、直鎖、分枝鎖、環状又はこれらの組み合わせであることができる。エポキシ樹脂の芳香族及び脂肪族部分は、ヘテロ原子又は、オキシラン基と反応性ではない他の基を含むことができる。すなわち、エポキシ樹脂は、ハロ基、エーテル結合基中のようなオキシ基、チオエーテル結合基中のようなチオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基及びこれらに類するものを含むことができる。エポキシ樹脂はまた、ポリジオルガノシロキサン系材料などのシリコーン系材料であることができる。
エポキシ樹脂は任意の好適な分子量を有することができるが、重量平均分子量は、好ましくは少なくとも100グラム/モル、より好ましくは少なくとも150グラム/モル、少なくとも175グラム/モル、少なくとも200グラム/モル、少なくとも250グラム/モル又は少なくとも300グラム/モルである。重量平均分子量は、好ましくは最大50,000グラム/モルであることができ、又は高分子エポキシ樹脂については更に大きくてもよい。重量平均分子量は、より好ましくは最大40,000グラム/モル、最大20,000グラム/モル、最大10,000グラム/モル、最大5,000グラム/モル、最大3,000グラム/モル又は最大1,000グラム/モルである。例えば、重量平均分子量は、好ましくは100〜50,000グラム/モルの範囲であり、より好ましくは100〜20,000グラム/モルの範囲、10〜10,000グラム/モルの範囲、100〜5,000グラム/モルの範囲、200〜5,000グラム/モルの範囲、100〜2,000グラム/モルの範囲、200〜2,000グラム/モルの範囲、100〜1,000グラム/モルの範囲又は200〜1,000グラム/モルの範囲である。
好適なエポキシ樹脂は、好ましくは室温(例えば、約20℃〜約25℃)で液体である。しかしながら、好適な溶媒中に可溶であるエポキシ樹脂もまた使用することができる。より好ましい実施形態では、エポキシ樹脂はグリシジルエーテルである。代表的なグリシジルエーテルは、式(II)を有することができる。
式(II)中、R4基は、芳香族、脂肪族又はこれらの組み合わせであるp価の基である。R4基は、直鎖、分枝鎖、環状又はこれらの組み合わせであることができる。R4基は、場合により、ハロ基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基及びこれらに類するものを含むことができる。変数pは任意の好適な1以上の整数であることができるが、pは、多くの場合、2〜4の範囲の整数である。
いくつかの代表的な式(II)のエポキシ樹脂では、変数pは2に等しく(すなわち、エポキシ樹脂はジグリシジルエーテルである)、R4は、アルキレン(すなわち、アルカンの二価ラジカルであり、アルカン−ジイルと呼ぶことができる)、ヘテロアルキレン(すなわち、ヘテロアルキレンはヘテロアルカンの二価ラジカルであり、ヘテロアルカン−ジイルと呼ぶことができる)、アリーレン(すなわち、アレーン化合物の二価ラジカル)又はこれらの混合物を含む。好適なアルキレン基は、好ましくは1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なヘテロアルキレン基は、好ましくは2〜50個の炭素原子、より好ましくは2〜40個の炭素原子、2〜30個の炭素原子、2〜20個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、又は2〜6個の炭素原子を有する。ヘテロアルキレン中のヘテロ原子は、オキシ、チオ又は−NH−基から選択することができるが、多くの場合、オキシ基である。好適なアリーレン基は、好ましくは6〜18個の炭素原子、又は特に6〜12個の炭素原子を有する。例えば、アリーレンは、フェニレンであることができる。R4基は更に、場合により、ハロ基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基及びこれらに類するものを含むことができる。変数pは、通常、2〜4の範囲の整数である。
一部の式(II)のエポキシ樹脂はジグリシジルエーテルであり、式中、R4は、(a)アリーレン基、又は、(b)アルキレン、ヘテロアルキレン又はこれらの両方と組み合わせたアリーレン基、を含む。R4基は更に、ハロ基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基及びこれらに類するものなどの任意の基を含むことができる。これらのエポキシ樹脂は、例えば、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する芳香族化合物を過剰なエピクロロヒドリンと反応させることにより、調製することができる。有用な、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する芳香族化合物の例としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、p,p’−ジヒドロキシジベンジル、p,p’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシフェニルスルホン及びp,p’−ジヒドロキシベンゾ−フェノンが挙げられるが、これらに限定されない。更に他の例としては、ジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルメチルプロピルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルプロピレンフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルブチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルトリルエタン、ジヒドロキシジフェニルトリルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルジシクロヘキシルメタン及びジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンの、2,2’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’及び4,4’異性体が挙げられる。
一部の市販の式(II)のジグリシジルエーテルエポキシ樹脂は、ビスフェノールAから誘導される(すなわち、ビスフェノールAは、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンである)。例としては、Hexion Specialty Chemicals,Inc.(Houston,TX)から商品名EPON(例えば、EPON 828、EPON 872及びEPON 1001)で入手可能なもの、Dow Chemical Co.(Midland,MI)から商品名DER(例えば、DER 331、DER 332及びDER 336)で入手可能なもの、並びに、大日本インキ化学工業株式会社(日本、千葉)から商品名EPICLON(例えば、EPICLON 850)で入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されない。他の市販のジグリシジルエーテルエポキシ樹脂は、ビスフェノールFから誘導される(すなわち、ビスフェノールFは、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタンである)。例としては、Dow Chemical Co.から商品名DER(例えば、DER 334)で入手可能なもの、及び、大日本インキ化学工業株式会社から商品名EPICLON(例えば、EPICLON 830)で入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されない。
他の式(II)のエポキシ樹脂は、ポリ(アルキレンオキシド)ジオールのジグリシジルエーテルである。これらのエポキシ樹脂は、ポリ(アルキレングリコール)ジオールのジグリシジルエーテルと呼ぶことができる。変数pは2に等しく、R4は、酸素ヘテロ原子を有するヘテロアルキレンである。ポリ(アルキレングリコール)は、コポリマー又はホモポリマーであることができる。例としては、ポリ(エチレンオキシド)ジオールのジグリシジルエステル、ポリ(プロピレンオキシド)ジオールのジグリシジルエステル、及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールのジグリシジルエステルが挙げられるが、これらに限定されない。このタイプのエポキシ樹脂は、約400グラム/モル、約600グラム/モル又は約1000グラム/モルの重量平均分子量を有する、ポリ(エチレンオキシド)ジオールから又はポリ(プロピレンオキシド)ジオールから誘導されるものなどのPolysciences,Inc.(Warrington,PA)から市販されている。
エポキシ樹脂は2〜4個のグリシジル基を有するポリエーテルポリオールを含むことが好ましく、好ましくはエポキシ樹脂は2〜4個のグリシジル基を有するポリ−THFグリシジルエーテルを含む。
更に他の式(II)のエポキシ樹脂は、アルカンジオールのジグリシジルエーテルである(R4はアルキレンであり、変数pは2に等しい)。例としては、1,4−ジメタノールシクロヘキシルのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、及びHexion Specialty Chemicals,Inc.(Columbus,OH)から商品名EPONEX 1510で入手可能なものなどの水素添加ビスフェノールAから形成される脂環式ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられる。
更に他のエポキシ樹脂としては、少なくとも2個のグリシジル基を有するシリコーン樹脂、及び、少なくとも2個のグリシジル基を有する難燃性エポキシ樹脂(例えば、Dow Chemical Co.(Midland,MI)から商品名DER 580で市販されているものなどの少なくとも2個のグリシジル基を有する臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂)が挙げられる。
エポキシ樹脂は、複数の材料の混合物であり得る。例えば、エポキシ樹脂は、硬化に先立って、所望の粘度又は流動特性を提供する混合物であるように選択することができる。混合物は、より低い粘度を有する反応性希釈剤と呼ばれる少なくとも1つの第一エポキシ樹脂と、より高い粘度を有する少なくとも1つの第二エポキシ樹脂と、を含むことができる。反応性希釈剤は、エポキシ樹脂混合物の粘度を低下させる傾向を有し、多くの場合、飽和している分枝状主鎖か又は飽和若しくは不飽和である環状主鎖かのいずれかを有する。例としては、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルは、Hexion Specialty Chemicals(Columbus,OH)から商品名HELOXY MODIFIER 107で、並びに、Air Products and Chemical Inc.(Allentonwn,PA)から商品名EPODIL 757で市販されている。他の反応性希釈剤は、様々なモノグリシジルエーテルのように、1個の官能基のみ(すなわち、オキシラン基)を有する。一部の代表的なモノグリシジルエーテルとしては、1〜20個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を持つアルキルグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。一部の代表的なモノグリシジルエーテルは、Air Products and Chemical,Inc.(Allentown,PA)から商品名EPODILで市販されており、例えば、EPODIL 746(2−エチルヘキシルグリシジルエーテル)、EPODIL 747(脂肪族グリシジルエーテル)及びEPODIL 748(脂肪族グリシジルエーテル)である。
好ましい実施形態では、エポキシ樹脂は、1つ以上のグリシジルエーテルを含み、エポキシアルカン及びエポキシエステルを含まない。エポキシアルカン及びエポキシエステルは、しかしながら、油変位剤として、硬化性接着剤組成物中に含むことができる。
硬化性接着剤組成物は、好ましくは、第一部分と第二部分の合計重量に基づいて(すなわち、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて)少なくとも20重量%のエポキシ樹脂を含む。例えば、硬化性接着剤組成物は、より好ましくは少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%のエポキシ樹脂を含むことができる。硬化性接着剤組成物は、好ましくは最大90重量%のエポキシ樹脂を含む。例えば、硬化性組成物は、より好ましくは最大80重量%、最大75重量%、最大70重量%、最大65重量%、又は最大60重量%のエポキシ樹脂を含むことができる。一部の代表的な硬化性接着剤組成物は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%、20〜70重量%、30〜90重量%、30〜80重量%、30〜70重量%、30〜60重量%、40〜90重量%、40〜80重量%、40〜70重量%、50〜90重量%、50〜80重量%、又は50〜70重量%のエポキシ樹脂を含有する。
硬化剤は、少なくとも1つの一級アミン、二級アミン及び/又はチオールを少なくとも1つのエポキシ化ポリオール化合物と反応させることにより、得ることができる。反応生成物は、一般式(III)により特徴付けることができる:
R
1は、上記のn価ポリオール残基である。
nは整数であり、1〜6の範囲であり得、好ましくはnは少なくとも2である。Xは、
型の一級又は二級アミン基を表し、R
2=H、
であり、R
3=H、アルキル、アリールであり、R
4=アルキレン又はヘテロアルキレンであり、R
5、R
6=H、アルキル、アリールである。Xはまたチオール基を表してもよく、すなわち、X=−S−R
7であり、R
7=H、R
8−(S−H)
iであり、R
8=アルキレン又はヘテロアルキレンであり、iは好ましくは1〜6の範囲の整数である。nが少なくとも2である場合、異なる一級又は二級アミン又はチオール基が式(III)の各分子内に存在し得る。同様に、式(III)による異なるX基を有する物質が接着剤組成物中に存在することは、本発明の範囲内である。
式(III)による好ましい化合物は、以下の式(IIIa)の構造を有する。
R2は上記の通りであり、mは好ましくは5〜15の範囲である。
硬化剤は、非常に様々なポリオール化合物から合成され得る。ポリオール残基R1は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー及びコポリマー、スチレンとのブタジエンのコポリマー、アクリロニトリル、ポリウレタンポリオール、ポリ尿素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、再生可能な原料からのポリオール又はこれらの混合物からなる群から選択され得る。
R1はまた、アミン(例えば、モノアミン、二級ジアミン、一級及び二級アミン、一級ジアミン)との又はチオールとの、エポキシ官能化ポリオールの反応生成物であってもよい。
本発明の更なる実施形態によれば、硬化剤において使用される一級及び二級アミンは、脂肪族、脂環式若しくは芳香族アミン又はこれらの組み合わせ、ポリエーテルアミン、ポリアミドアミン、ポリアミド、マンニッヒ塩基あるいはこれらの混合物からなる群から選択される。
本発明による硬化剤を形成するためにエポキシ化ポリオール化合物の反応相手としてチオールが使用される場合、このチオールは、脂肪族、脂環式、芳香族チオール又はこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
硬化剤として使用されるエポキシアミン及び/又はエポキシ−チオール付加物は、好ましくは100〜100,000g/mol、より好ましくは200〜10,000g/molのMwを有する。本発明による硬化性接着剤組成物の油汚れ許容度を更に高めるために、ポリオール化合物は、好ましくは少なくとも5個の、より好ましくは5〜15個の、テトラメチレンオキシド単位の連続配列を有するポリ−THFであるか若しくは少なくとも含有する。ポリ−THFの量は広範囲にわたって変化し得るが、しかしながら、エポキシアミン及び/又はエポキシ−チオール付加物のポリ−THF質量含有率が少なくとも20重量%であることが好ましく、好ましくは少なくとも30重量%である。
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリオール化合物は25℃で液体であり、好ましくは1200g/mol以下、特に1000g/mol以下、より好ましくは500〜1000g/molのMwである。
硬化性接着剤組成物は強化剤を更に含んでもよく、好ましくは強化剤は硬化性接着剤組成物の第一部分内に存在する。強化剤は、硬化性エポキシ樹脂又は反応性液体改質剤以外のポリマーであり、硬化済み接着剤組成物の強靭性を高めることができる。強靱性は、硬化済み接着剤組成物のT剥離強度を測定することにより、特徴付けることができる。T剥離強度は、好ましくは30lbf/in幅(5.25kN/m)(すなわち、30フィートポンド毎インチ幅)(これは131ニュートン毎25mm(すなわち、131N/25mm)に等しい)を超える。T剥離強度は、より好ましくは40lbf/in幅(175N/25mm)超、50lbf/in幅(219N/25mm)超、又は60lbf/in幅(263N/25mm)超であることができる。強化剤は、エポキシ樹脂及び反応性液体改質剤と共に硬化性接着剤組成物の第一部分に、硬化剤と共に硬化性接着剤組成物の第二部分に、又は硬化性接着剤組成物の第一部分と第二部分の両方に、添加することができる。典型的な強化剤としては、コア−シェルポリマー、ブタジエン−ニトリルゴム、アクリルポリマー及びアクリルコポリマー、並びにこれらに類するものが挙げられる。
コア−シェルポリマーは、好ましい強化剤である。シェル高分子材料は、典型的には、コア高分子材料にグラフト化される。コアは、通常、0℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー材である。シェルは、通常、25℃超のガラス転移温度を有する高分子材料である。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(DSC)又は同様の方法を用いて測定することができる。
コア−シェル高分子強化剤のコアは、多くの場合、ブタジエンポリマー若しくはコポリマー、スチレンポリマー若しくはコポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、アクリレートポリマー若しくはコポリマー、又はこれらの組み合わせから調製される。これらのポリマー又はコポリマーは、架橋することもでき、あるいは架橋されていなくてもよい。一部の代表的なコアは、ポリメチルメタクリレートであり、これは非架橋又は架橋のいずれかである。他の代表的なコアは、ブタジエン−スチレンコポリマーであり、これは非架橋又は架橋のいずれかである。
コア−シェル高分子強化剤のシェルは、多くの場合、スチレンポリマー若しくはコポリマー、メタクリレートポリマー若しくはコポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、又はこれらの組み合わせである。シェルは、エポキシ基、酸性基又はアセトアセトキシ基で更に官能化することができる。シェルの官能化は、例えば、グリシジルメタクリレート又はアクリル酸で共重合化することにより、又はヒドロキシ基を三級ブチルアセトアセトキシなどのアルキルアセトアセトキシと反応させることにより、達成されてもよい。これらの官能基の付加の結果、シェルは架橋されて高分子マトリックスになることができる。
好適なコア−シェルポリマーは、好ましくは少なくとも20ナノメートルに相当する平均粒径を有し、より好ましくは少なくとも50ナノメートル、少なくとも100ナノメートル、少なくとも150ナノメートル又は少なくとも200ナノメートルの平均粒径を有する。平均粒径は、最大400ナノメートル、好ましくは最大500ナノメートル、最大750ナノメートル、又は最大1000ナノメートルであってもよい。平均粒径は、例えば、10〜1000ナノメートルの範囲、好ましくは50〜1000ナノメートルの範囲、100〜750ナノメートルの範囲、又は150〜500ナノメートルの範囲であってもよい。
代表的なコア−シェルポリマー及びこれらの調製は、米国特許第4,778,851号(Henton et al.)に記載されている。市販のコア−シェルポリマーは、例えば、Rohm & Haas Company(Philadelphia,PA)から商品名PARALOID(例えば、PARALOID EXL 2600及びPARALOID EXL 2691)で、並びにKaneka(Belgium)から商品名KANE ACE(例えば、KANE ACE MX120及びKANE ACE MX153)で入手することができる。
更に他の強化剤は、アミノ末端物質又はカルボキシ末端物質をエポキシ樹脂と反応させて、相が硬化済み接着組成物の他の構成成分から分離した付加物を調製することにより、調製することができる。このような強化剤を調製するのに使用できる好適なアミノ末端物質は、3M Corporation(Saint Paul,MN)から商品名DYNAMAR POLYETHERDIAMINE HC 1101で市販されているものが挙げられるが、これに限定されない。好適なカルボキシ末端物質としては、Emerald Chemical(Alfred,ME)から市販されているものなどのカルボキシ末端ブタジエンアクリロニトリルコポリマーが挙げられる。
硬化性接着剤組成物は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて少なくとも5重量%の強化剤を含んでもよい。例えば、硬化性接着剤組成物は、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%の強化剤を含むことができる。強化剤の量は、多くの場合、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて最大55重量%であることができる。例えば、硬化性接着剤組成物は、好ましくは最大50重量%、より好ましくは最大45重量%、最大40重量%、最大35重量%、最大30重量%、又は最大25重量%の強化剤を含むことができる。一部の実施形態では、硬化性接着剤組成物は、5〜55重量%、5〜50重量%、5〜40重量%、5〜30重量%、5〜20重量%、又は5〜15重量%の強化剤を含有する。
エポキシ樹脂及び硬化剤に加えて、硬化性接着剤組成物は、その第一及び/又は第二部分において、反応性液体改質剤、油変位剤、腐食防止剤、抗酸化剤、充填剤、可塑剤、追加的硬化剤及び促進剤からなる群から選択される少なくとも1つの物質を含み得る。
接着剤の第一部分に添加される場合、接着剤の2つの部分が混合される前に望まない硬化反応を避けるために、追加的硬化剤は、修飾されるか又はコアシェル粒子内に存在する必要がある。所望される場合には、追加的硬化剤は、接着剤組成物の第二部分に存在してもよい。
追加的硬化剤は、存在する場合、少なくとも2個の一級アミノ基、少なくとも2個の二級アミノ基又はこれらの組み合わせを有する。すなわち、硬化剤は、式−NR21Hの基を少なくとも2個有し、式中、R21は水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールから選択される。好適なアルキル基は1〜12個の炭素原子、又は好ましくは1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有し得る。アルキル基は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。好適なアリール基は、通常、フェニル基のように6〜12個の炭素原子を有する。好適なアルキルアリール基は、アリールで置換されたアルキルか又はアルキルで置換されたアリールかのいずれかであることができる。上記と同じアリール及びアルキル基をアルキルアリール基で用いることができる。
硬化性接着剤組成物の第一部分と第二部分を一緒に混合すると、硬化剤の一級及び/又は二級アミノ基はエポキシ樹脂のオキシラン基と反応する。この反応は、オキシラン基を開環させ、エポキシ樹脂に硬化剤を共有結合する。この反応の結果、式−C(OH)H−CH2−NR21−の二価の基を形成する。
硬化剤から少なくとも2個のアミノ基を除いたもの(すなわち、アミノ基ではない硬化剤の部分)は、任意の好適な芳香族基、脂肪族基、又はこれらの組み合わせであることができる。一部のアミン硬化剤は式(IV)を有するが、但し、少なくとも2個の一級アミノ基(すなわち、−NH2基)、少なくとも2個の二級アミノ基(すなわち、−NHR21基、式中、R21残基は独立して、水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールである)、又は、少なくとも1個の一級アミノ基と少なくとも1個の二級アミノ基、が存在するという追加的限定を有する。
R22は、それぞれ独立して、アルキレン、ヘテロアルキレン又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレン基は、好ましくは1〜18個の炭素原子、より好ましくは1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なヘテロアルキレン基は、2個のアルキレン基の間に少なくとも1個のオキシ、チオ又は−NH−基を有する。好適なヘテロアルキレン基は、好ましくは2〜50個の炭素原子、より好ましくは2〜40個の炭素原子、2〜30個の炭素原子、2〜20個の炭素原子又は2〜10個の炭素原子を有し、好ましくは最大20個のヘテロ原子、より好ましくは最大16個のヘテロ原子、最大12個のヘテロ原子又は最大10個のヘテロ原子を有する。ヘテロ原子は、多くの場合、オキシ基である。変数qは少なくとも1に等しい整数であり、好ましくは最大10又はそれ以上、より好ましくは最大5、最大4又は最大3であり得る。R21基はそれぞれ独立して水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールである。R21に好適なアルキル基は、好ましくは1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。アルキル基は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。R21に好適なアリール基は、好ましくはフェニル基のように、6〜12個の炭素原子を有する。R21に好適なアルキルアリール基は、アリールで置換されたアルキルか又はアルキルで置換されたアリールかのいずれかであることができる。上記と同じアリール及びアルキル基をアルキルアリール基で用いることができる。
一部のアミン硬化剤は好ましくは、アルキレン基から選択されるR22基を有する。例としては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミンとも呼ばれる)、アミノエチルピペラジン及びこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。他のアミン硬化剤は、酸素ヘテロ原子を有するヘテロアルキレンのように、ヘテロアルキレン基から選択されるR22基を有することができる。例えば、硬化剤は、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン(TTD)(TCI America(Portland,OR)から入手可能)、あるいは、ポリ(エチレンオキシド)ジアミン、ポリ(プロピレンオキシド)ジアミンなどのポリ(アルキレンオキシド)ジアミン(ポリエーテルジアミンとも呼ばれる)、又はこれらのコポリマーなどの化合物であることができる。市販のポリエーテルジアミンは、Huntsman Corporation(The Woodlands,TX)から商品名JEFFAMINEで市販されている。
更に他のアミン硬化剤は、ポリアミン(すなわち、ポリアミンは、一級アミノ基及び二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有するアミンを指す)を別の反応物質と反応させて、少なくとも2個のアミノ基を有するアミン含有付加物を形成することにより、形成することができる。例えば、ポリアミンは、エポキシ樹脂と反応して、少なくとも2個のアミノ基を有する付加物を形成することができる。高分子ジアミンがジカルボン酸と、ジアミンとジカルボン酸のモル比2以上:1で反応する場合、2個のアミノ基を有するポリアミドアミンを形成することができる。別の例では、高分子ジアミンが2個のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、ジアミンとエポキシ樹脂のモル比2以上:1で反応する場合、2個のアミノ基を有するアミン含有付加物を形成することができる。高分子ジアミンのモル過剰は好ましくは、硬化剤が、アミン含有付加物と未使用(未反応)の高分子ジアミンの両方を含むように、使用され得る。例えば、ジアミンと2個のグリシジル基を有するエポキシ樹脂とのモル比は、好ましくは2.5超:1、より好ましくは3超:1、3.5超:1、又は4超:1であることができる。エポキシ樹脂を使用して硬化性接着剤組成物の第二部分の中にアミン含有付加物を形成する場合でも、追加のエポキシ樹脂は硬化性接着剤組成物の第一部分に存在する。
硬化剤は好ましくは、複数の材料の混合物であり得る。例えば、硬化剤は、硬化済み接着剤組成物の可撓性を高めるために添加される高分子材料である第一硬化剤と、硬化済み接着剤組成物のガラス転移温度を変更するために添加される第二硬化剤と、を含むことができる。
硬化性接着剤組成物は、好ましくは硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて少なくとも3重量%の硬化剤を含有する。例えば、硬化性接着剤組成物は全体で、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%の硬化剤を含有する。接着剤組成物は、好ましくは最大30重量%、より好ましくは最大25重量%、最大20重量%、又は最大15重量%の硬化剤を含む。例えば、硬化性接着剤組成物は、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは3〜25重量%、3〜20重量%、3〜15重量%、3〜10重量%、5〜30重量%、5〜25重量%、5〜20重量%、又は5〜15重量%の硬化剤を含有することができる。
追加的硬化剤は、典型的にはイミダゾリン若しくはその塩、又は三級アミノ基で置換されたフェノールなどの、第二硬化剤が想到される他の硬化剤を含んでもよい。好適な三級アミノ基で置換されたフェノールは、式(IVa)を有することができる。
式(IVa)中、R7及びR8基はそれぞれ独立してアルキルである。変数vは、2又は3に等しい整数である。R9基は、水素又はアルキルである。R7、R8及びR9に好適なアルキル基は、好ましくは1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子又は1〜4個の炭素原子を有する。1つの代表的な式(IVa)の第二硬化剤は、Air Products Chemicals,Inc.(Allentown,PA)から商品名ANCAMINE K54で市販されているトリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
任意の第二硬化剤は、エポキシ樹脂及び反応性液体改質剤と共に硬化性接着剤組成物の第一部分の中に存在することができ、あるいは、硬化剤と共に硬化性接着剤組成物の第二部分の中に存在することができる。第二硬化剤の量は、好ましくは硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、最大6重量%、より好ましくは最大5重量%、又は最大4重量%である。第一部分の中に含まれる場合、第二硬化剤は、第一部分の総重量に基づいて、0〜15重量%の範囲、より好ましくは0.5〜10重量%の範囲、又は1〜5重量%の範囲の量で存在することができる。第二部分(硬化剤側)の中に含まれる場合、第二硬化剤は、好ましくは第二部分の総重量に基づいて0〜5重量%の範囲、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲、又は1〜5重量%の範囲の量で存在することができる。
反応性液体改質剤は、硬化済み状態の組成物の可撓性を向上させるために、耐衝撃性を更に向上させるために、並びに/又は、強化剤の影響を向上させるために、又はこれらの組み合わせのために、接着剤組成物に添加され得る。本発明の反応性液体改質剤は、式(V)のアセトアセトキシ官能化化合物であり得る。
式中、
lは1〜10、好ましくは1〜3の整数であり、
YはO,S又はNHを表し、好ましくはYはOであり、
R’は、ポリヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシアリール又はポリヒドロキシアルキルアリール、ポリオキシアルキル、ポリオキシアリール及びポリオキシアルキルアリール;ポリオキシポリヒドロキシアルキル、−アリール、−アルキルアリール、又はポリヒドロキシポリエステルアルキル、−アリール又は−アルキルアリールからなる残基の群から選択される残基を表し、R’は炭素原子を介してYに連結され、ここで、lが1以外である場合、R’は、lに相当する数の炭素原子を介して、Yに連結されている。好ましくは、R’はポリエーテルポリヒドロキシアルキル、−アリール又は−アルキルアリール残基、又はポリエステルポリヒドロキシアルキル、−アリール又は−アルキルアリール残基を表す。
残基R’は、例えば、2〜20個の又は2〜10個の炭素原子を含有してもよい。残基R’は更に、例えば、2〜20個の又は2〜10個の酸素原子を含有してもよい。残基R’は、直鎖又は分枝鎖であってもよい。
ポリエステルポリオール残基の例としては、多塩基性カルボン酸又は多塩基性カルボン酸無水物と、化学量論的過剰量の多価アルコールとの縮合反応から得ることができ、あるいは多塩基酸、単塩基酸及び多価アルコールの混合物からの縮合反応から得ることができるポリエステルポリオールが挙げられる。多塩基性カルボン酸、一塩基性カルボン酸又はそれらの無水物の例としては、2〜18個の炭素原子を有するようなもの、好ましくは2〜10個の炭素原子を有するようなものが挙げられる。
多塩基性カルボン酸又は多塩基性カルボン酸無水物の例としては、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ハイドロフタル酸(例えば、テトラヒドロ酸又はヘキサデハイドロフタル酸)及び対応する無水物並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
一塩基性カルボン酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
多価アルコールとしては、2〜18個、好ましくは2〜10個の炭素原子を有するようなものが挙げられる。
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタエリスリトール(pentaerythriol)、グリセロール及びこれらに類するものが挙げられ、これらのポリマーも包含する。
ポリエーテルポリオール残基の例としては、ポリアルキレンオキシドから誘導されるものが挙げられる。通常は、ポリアルキレンオキシドは、約2〜約8個の炭素原子、好ましくは約2〜約4個の炭素原子のアルキレン基を含有する。このアルキレン基は、直鎖又は分岐鎖であってよいが、好ましくは直鎖である。ポリエーテルポリオール残基の例としては、ポリエチレンオキシドポリオール残基、ポリプロピレンオキシドポリオール残基、ポリテトラメチレンオキシドポリオール残基及びこれらに類するものが挙げられる。
R’’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの、C1〜C12の直鎖若しくは分枝鎖又は環状のアルキルを表す。
アセトアセトキシ官能化オリゴマーは、ポリヒドロキシ化合物と、アルキルアセトアセテート、ジケテン又は例えば、欧州特許第0 847 420(B1)号に記載されているその他のアセトアセチル化化合物のアセトアセチル化により調製することができる。
その他のポリヒドロキシ化合物は、アクリレート及び/又はメタクリレートと、ヒドロキシル基を含有する1種以上の不飽和モノマーとのコポリマーであってもよい。ポリヒドロキシポリマーの更なる例には、ヒドロキシル基で末端処理した、ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、ヒドロキシ基で末端処理した、有機ポリシロキサン、ポリテトラヒドロフランポリオール、ポリカーボネートポリオール又はカプロラクトン系ポリオール、が挙げられる。
アセトアセトキシ−官能化ポリマーは、例えば、K−FLEX XM−B301として、Worlee−Chemie GmbH(Lauenburg,ドイツ)から市販されている。
式(V)の反応性液体改質剤は、典型的には、エポキシ樹脂とは反応性ではないが、硬化剤とは反応性である。反応性液体改質剤は通常、第二部分の硬化剤との尚早な反応を最小限にするために、硬化性接着剤組成物の第一部分に添加される。反応性液体改質剤は、典型的には、第二硬化剤と室温では反応性ではなく、硬化性接着剤組成物の第一部分の中で第二硬化剤と混合することができる。
反応性液体改質剤は、一級アミノ基、二級アミノ基、又は一級及び二級アミノ基の混合物を有する硬化剤と反応することができる。一級アミノ又は二級アミノ基は、反応性液体改質剤の末端カルボニル基と反応することができる。単純化を目的として、硬化剤の1個の一級アミノ基(H2N−R’’’−NH2)と反応性液体改質剤の1個の末端カルボニル基との反応は、以下の反応で示される。
硬化剤と反応性液体改質剤との間のこの反応は、典型的には、硬化剤とエポキシ樹脂との間の反応よりも速い速度で生じる。反応性液体改質剤との反応により消費されない任意の硬化剤は、その後、エポキシ樹脂と反応することができる。R’、R’’及びYは上記の式Vで定義された残基であり、R’は例えば、上記の式IVで定義された残基R22に対応し得る。
硬化性接着剤組成物は、好ましくは硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて少なくとも3重量%の反応性液体改質剤を含有する。反応性液体改質剤は、より好ましくは硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて少なくとも4重量%、少なくとも5重量%、少なくとも7重量%、又は少なくとも10重量%に等しい量で存在する。硬化性接着剤組成物は、好ましくは最大20重量%の反応性液体改質剤を含有する。この量は、最大18重量%、最大15重量%又は最大12重量%であり得る。例えば、反応性液体改質剤は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、3〜20重量%、より好ましくは4〜20重量%、4〜15重量%、4〜12重量%、4〜10重量%、又は5〜10重量%の範囲で存在し得る。
硬化反応が室温で生じる場合には、硬化性接着剤組成物中の硬化剤の量は、アミン水素当量とエポキシ当量の比が少なくとも0.5:1、より好ましくは少なくとも0.8:1、又は少なくとも1:1であるように、選択される。この比は、最大2:1又は最大1.5:1であることができる。例えば、この比は、0.5:1〜2:1の範囲、より好ましくは0.5:1〜1.5:1の範囲、0.8〜2:1の範囲、0.8:1〜1.5:1の範囲、0.8:1〜1.2:1の範囲、0.9:1〜1.1:1の範囲、又は約1:1であることができる。この比は、多くの場合、エポキシ樹脂と反応性液体改質剤の両方と反応するのに十分なアミン硬化剤が存在するように、選択される。
硬化温度が高温(例えば、100℃よりも高い、又は120℃よりも高い、又は150℃よりも高い温度)にて生じる場合でも、しかしながら、少量のアミン硬化剤が多くの場合使用される。硬化性接着剤組成物の硬化剤の量は、多くの場合、反応性液体改質剤と、並びに、エポキシ樹脂の一部と反応するのに十分なモル量で存在する。例えば、アミン水素当量とエポキシ当量の比は、好ましくは1未満:1であり、より好ましくは0.2:1〜0.8:1の範囲、0.2:1〜0.6:1の範囲、又は0.3:1〜0.5:1の範囲である。硬化剤と反応しない任意のエポキシ樹脂は、高温で単独重合を起こす傾向を有する。
硬化済み接着剤組成物は、反応性液体改質剤が硬化性接着剤組成物中に含まれる場合、衝撃を受けても破砕又は破断しにくくなる。すなわち、反応性液体改質剤は、典型的には、硬化済み接着剤組成物の衝撃剥離強度を改善する。衝撃剥離強度は、好ましくは13ニュートン毎ミリメートル(N/mm)超、より好ましくは15N/mm超、20N/mm超、25N/mm超、又は30N/mm超である。
エポキシ樹脂、硬化剤、反応性液体改質剤及び強化剤に加えて、硬化性接着剤組成物は、場合により、硬化性接着剤組成物に可溶である油変位剤を更に含むことができる。油変位剤は、エポキシ樹脂と反応性液体改質剤とを含有する硬化性接着剤組成物の第一部分に、硬化剤を含有する硬化性接着剤組成物の第二部分に、又は第一部分と第二部分の両方に、添加することができる。油変位剤は、硬化済み接着剤組成物と、炭化水素含有物質で汚染された基材の表面と、の間の接着を促進するために、添加することができる。
本明細書で使用するとき、用語「炭化水素含有物質」は、加工、操作、保管又はこれらの組み合わせの際に、基材の表面を汚染する場合のある様々な物質を指す。炭化水素含有材料の例としては、鉱油、油脂、乾燥潤滑剤、深絞り加工油、腐食保護剤、潤滑剤、ワックス、及びこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。基材の表面は、炭化水素含有物質に加えて他の汚染物質を含有する場合がある。このような理論に束縛されるものではないが、油変位剤は、基材表面から炭化水素含有物質を硬化性接着剤組成物のバルクの中に追いやるのを促進し得る。この基材表面からの追放は、結果として、接着結合強度を高めることになり得る。十分な接着結合強度は、多くの場合、熱硬化工程を必要とせずに得ることができる。
場合により存在する油変位剤は、好ましくは室温で液体である。これらの作用剤は、典型的には、適用時に、硬化性接着剤組成物との混和性並びに得られる硬化済み接着剤組成物との混和性の両方を維持しながら、基材の表面にて炭化水素含有物質を分離又は変位することができる。好適な油変位剤は、好ましくは炭化水素含有物質の表面張力よりも低い表面張力と、炭化水素含有物質の溶解度パラメータと同様の溶解度パラメータと、を有する。
油変位剤は、好ましくは最大35ダイン毎センチメートル(ダイン/cm)の表面張力を有する。例えば、表面張力は、より好ましくは最大32ダイン/cm、最大30ダイン/cm、又は最大25ダイン/cmであることができる。表面張力は、好ましくは少なくとも15ダイン/cm、より好ましくは少なくとも18ダイン/cm又は少なくとも20ダイン/cmである。例えば、表面張力は、好ましくは15〜35ダイン/cmの範囲、より好ましくは15〜32ダイン/cmの範囲、15〜30ダイン/cmの範囲、20〜35ダイン/cmの範囲、20〜30ダイン/cmの範囲、25〜35ダイン/cmの範囲、又は25〜30ダイン/cmの範囲であることができる。表面張力は、例えば、F.K.Hansen et al.による論文(J.Coll.and Inter.Sci.,141,1〜12(1991))に特定されているような、いわゆる垂滴試験(垂滴形状分析法とも呼ばれる)を用いて、測定することができる。
基材の表面上の炭化水素含有物質が既知である場合、油変位剤は、炭化水素含有物質の表面張力よりも低い表面張力を有するように選択することができる。より具体的には、油変位剤は、好ましくは炭化水素含有物質の表面張力よりも少なくとも2.5ダイン/cm低い表面張力を有するように選択される。例えば、油変位剤の表面張力は、より好ましくは炭化水素含有物質の表面張力よりも少なくとも4.0ダイン/cm、少なくとも8.0ダイン/cm、又は少なくとも12.0ダイン/cm低い。
多くの実施形態では、油変位剤の溶解度パラメータは、6〜12cal0.5/cm1.5(12〜24.5J0.5/cm1.5)の範囲である。例えば、溶解度パラメータは、好ましくは7〜12cal0.5/cm1.5(14〜24.5J0.5/cm1.5)の範囲、より好ましくは8〜12cal0.5/cm1.5(16〜24.5J0.5/cm1.5)の範囲、7〜10.5cal0.5/cm1.5(14〜21.5J0.5/cm1.5)の範囲、7〜9cal0.5/cm1.5(14〜18J0.5/cm1.5)の範囲、又は7.5〜9cal0.5/cm1.5(15.3〜18J0.5/cm1.5)の範囲である。溶解度パラメータは、D.W.van Krevelenにより書籍Properties of Polymers:Their Correlation with Chemical Structure:Their Numerical Estimation and Prediction form Additive Group Contributions,4th edition,pp.200〜225,1990(Elsevier in Amsterdam,The Netherlands)で記載されている方法を用いて、ChemSW,Inc.(Fairfield,CA)から商品名MOLECULAR MODELING PROで市販されているソフトウェアから計算することができる。
特定の用途に好適な油変位剤を同定するために経験的方法を用いることができる。例えば、およそ20〜100マイクロリットルの、評価されることになる油変位剤を、炭化水素含有物質の被膜で被覆された基材の表面上に静かに堆積させることができる。好適な油変位剤は、典型的には広がり、炭化水素含有物質の被膜を破裂させる。このような理論に束縛されるものではないが、好適な油変位剤は、炭化水素含有物質を少なくとも部分的に溶解する、及び/又は少なくとも部分的に炭化水素含有物質の中に拡散する、と考えられると想定されている。好適な油変位剤の液滴は、炭化水素含有物質を衝撃域から外へ押し出す傾向を有する。
経験的方法は可能性のある好適な油変位剤の比較的迅速な同定を促進できるが、このような試験を通過するすべての化合物が他の考慮点に基づいて油変位剤として上手く使用できるわけではない。例えば、一部の化合物は被膜破裂を引き起こし得るが、硬化性接着剤組成物中で過度に揮発性であり、あるいは、油変位剤として有効であるように硬化性接着剤組成物との十分な混和性を有さない。
多くの様々な部類の化合物が油変位剤に好適である。好適なタイプの化合物としては、グリシジルエステル、環状テルペン、環状テルペンオキシド、モノエステル、ジエステル、トリエステル、トリアルキルホスフェート、エポキシアルカン、アルキルメタクリレート、ビニルアルキルエステル、アルカン及びアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。油変位剤は、典型的には、グリシジルエーテルではない。
一部の油変位剤は、式(VI)のグリシジルエステルである。
式(VI)中、R10基は、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレンである。一部の代表的な式(VI)の化合物では、R10基はメチレンである。R11基は、それぞれ独立して、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖アルキルである。1つの代表的な式(VI)の化合物は、Hexion Specialty Chemicals(Columbus,OH)から商品名CARDURA N10で市販されている。この油変位剤は、10個の炭素原子を有する高度に分枝した三級カルボン酸(ネオデカン酸)のグリシジルエステルである。
一部の油変位剤は、エステルである。好適なモノエステルは、式(VIa)を有することができる。
式(VIa)中、R13基は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜18個の炭素原子、1〜12個の炭素原子又は1〜8個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖アルキルである。R12基は、アルキル、アルケン−イル(すなわち、アルケン−イルは、アルケンの一価ラジカルである)、アリール又はアリールアルキルである。R12に好適なアルキル及びアルケン−イル基は、6〜20個の炭素原子、好ましくは8〜20個の炭素原子、8〜18個の炭素原子、又は8〜12個の炭素原子を有する。アルキル及びアルケン−イルは、非置換であることができ、あるいは、ヒドロキシル基、アミノ基、アリール基又はアルキルアリール基で置換することができる。好適なアミノ基置換体は、式−N(R1)2を有し、式中、R1は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールである。R1、R12に好適なアリール基及び置換体は、好ましくは6〜12個の炭素原子を有する。アリール基は、多くの場合、フェニルである。R1に好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。R1、R12に好適なアリールアルキル基及び置換体は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分と、フェニルのような6〜12個の炭素原子を有するアリール部分と、を有する。代表的な式(VIa)の油変位剤としては、メチルオレエートなどのアルキルオレエート、並びに、イソデシルベンゾエートなどのアルキルベンゾエートが挙げられるが、これらに限定されない。
油変位剤としての使用に好適なジエステルは、式(VII)を有することができる。
式(VII)中、R14基は、それぞれ独立して、少なくとも3個の炭素原子、好ましくは3〜20個の炭素原子、3〜18個の炭素原子、3〜12個の炭素原子、又は3〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキルである。R15基は、アルカン−ジイル(すなわち、アルカン−ジイルは、アルカンの二価ラジカルであり、アルキレンとも呼ぶことができる)、ヘテロアルカン−ジイル(すなわち、ヘテロアルカン−ジイルは、ヘテロアルカンの二価ラジカルであり、ヘテロアルケンとも呼ぶことができる)、又はアルケン−ジイル(すなわち、アルケン−ジイルは、アルケンの二価ラジカルである)である。アルカン−ジイル、ヘテロアルカン−ジイル及びアルケン−ジイルは、少なくとも2個の炭素原子を有し、好ましくは2〜20個の炭素原子、2〜16個の炭素原子、2〜12個の炭素原子、又は2〜8個の炭素原子を有する。ヘテロアルキレン−ジイル中のヘテロ原子は、オキシ、チオ又は−NH−であり得る。アルカン−ジイル、ヘテロアルカン−ジイル及びアルケン−ジイルは、非置換であることができ、あるいは、ヒドロキシル基、アミノ基、アリール基又はアルキルアリール基で置換することができる。好適なアミノ基置換体は、式−N(R1)2を有し、式中、R1は、水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールである。R1に好適なアリール基及び置換体は、好ましくはフェニル基のように、6〜12個の炭素を有する。R1に好適なアルキルアリール基及び置換体は、好ましくは1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分と、フェニルのような6〜12個の炭素原子を有するアリール部分と、を有する。R1に好適なアルキル基は、好ましくは1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子又は1〜4個の炭素原子を有する。代表的な式(VII)のジエステルとしては、ジエチルヘキシルマレエートなどのジアルキルマレエート、ジイソブチルアジペートなどのジアルキルアジペート、ジイソブチルスクシナートなどのジアルキルスクシナート、ジイソブチルグルタレートなどのジアルキルグルタレート、ジブチルフマレートなどのジアルキルフマレート、及び、ジブチルグルタメートなどのジアルキルグルタメートが挙げられるが、これらに限定されない。
油変位剤としての使用に好適なトリエステルは、式(VIII)を有することができる。
式(VIII)中、R16基は、それぞれ独立して、少なくとも3個の炭素原子、好ましくは3〜20個の炭素原子、3〜18個の炭素原子、3〜12個の炭素原子、又は3〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキルである。R17基は、アルカン−トリイル(すなわち、アルカン−トリイルは、アルカンの三価ラジカルである)、ヘテロアルカン−トリイル(すなわち、ヘテロアルカン−トリイルは、ヘテロアルカンの三価ラジカルである)、又はアルケン−トリイル(すなわち、アルケン−トリイルは、アルケンの三価ラジカルである)である。アルカン−トリイル、ヘテロアルカン−トリイル及びアルケン−トリイルは、少なくとも2個の炭素原子を有し、好ましくは2〜20個の炭素原子、2〜16個の炭素原子、2〜12個の炭素原子、又は2〜8個の炭素原子を有する。ヘテロアルキレン−ジイル中のヘテロ原子は、オキシ、チオ又は−NH−であり得る。アルカン−トリイル、ヘテロアルカン−トリイル及びアルケン−トリイルは、非置換であることができ、あるいは、ヒドロキシル基、アミノ基、アリール基又はアルキルアリール基で置換することができる。好適なアミノ基置換体は、式−N(R1)2を有し、式中、R1は、水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールである。R1に好適なアリール基及び置換体は、好ましくはフェニル基のように、6〜12個の炭素を有する。R1に好適なアルキルアリール基及び置換体は、好ましくは1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分と、フェニルのような6〜12個の炭素原子を有するアリール部分と、を有する。R1に好適なアルキル基は、好ましくは1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。代表的な式(VIII)の化合物としては、トリブチルシトレートなどのトリアルキルシトレートが挙げられるが、これらに限定されない。
油変位剤は、式(IX)のエポキシアルカンから選択することができる。
式(IX)中、R18基は、アルキル又はペルフルオロアルキルである。アルキル又はペルフルオロアルキル基は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。アルキル又はペルフルオロアルキル基は、好ましくは3〜20個の炭素原子、4〜20個の炭素原子、4〜18個の炭素原子、4〜12個の炭素原子、又は4〜8個の炭素原子といった、少なくとも3個の炭素原子を有する。代表的な式(IX)の化合物としては、1H,1H,2H−ペルフルオロ(1,2−エポキシ)ヘキサン、3,3−ジメチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシデカン及び1,2−エポキシシクロペンタンが挙げられるが、これらに限定されない。
油変位剤としての使用に好適な環状テルペンとしては、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、1,8−シネオール及びこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。好適な環状テルペンオキシドとしては、リモネンオキシド及びα−ピネンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
油変位剤としての使用に好適なトリアキルホスフェートは、好ましくは2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を有する。一部の代表的なトリアルキルホスフェートとしては、トリプロピルホスフェート、トリエチルホスフェート及びトリブチルホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
油変位剤として使用できるアルキルメタクリレートは、好ましくは少なくとも4個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、又は少なくとも8個の炭素原子を有するアルキル基を含む。例えば、このアルキル基は、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有することができる。アルキルメタクリレート中のアルキルは、環状、直鎖、分枝鎖又はこれらの組み合わせであることができる。例としては、メタクリル酸イソデシル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
油変位剤としての使用に好適なビニルアルキルエステルは、好ましくは少なくとも2個の炭素原子、より好ましくは少なくとも4個の炭素原子、又は少なくとも6個の炭素原子を有するアルキル基を有する。例えば、アルキル基は、2〜20個の炭素原子、より好ましくは4〜20個の炭素原子、4〜18個の炭素原子、4〜12個の炭素原子又は4〜8個の炭素原子を有し得る。ビニルアルキルエステル中のアルキルは、環状、直鎖、分枝鎖又はこれらの組み合わせであることができる。例としては、10個の炭素原子を有する高度に分枝したカルボン酸のビニルエステルであるVEOVA 10が挙げられるが、これに限定されない。VEOVA 10は、Hexion Specialty Chemicals(Columbus,OH)の商品名である。
油変位剤として使用できるアルキルトリアルコキシシラン化合物は、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは2〜10個の炭素原子又は2〜6個の炭素原子を有するアルキル基を含む。アルキル基は、非置換であることができ、あるいは、一級アミノ基などのアミノ基で置換することができる。アルコキシ基は、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子又は1〜3個の炭素原子を有する。例としては、3−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられるが、これに限定されない。
油変位剤として使用できるアルカンは、好ましくは少なくとも6個の炭素原子を含有する。例えば、アルカンは、好ましくは少なくとも8個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子、又は少なくとも12個の炭素原子を有することができる。例としては、n−ヘプタン、n−デカン、n−ウンデカン及びn−ドデカンが挙げられるが、これらに限定されない。
油変位剤として使用できるアルコールは、好ましくは少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子、又は少なくとも12個の炭素原子を含有する。例としては、1−オクタノール、2−オクタノール及び1−デカノールが挙げられるが、これらに限定されない。
表1には、代表的な油変位剤についての表面張力値と溶解度パラメータ値を挙げている。
硬化性接着剤組成物は、好ましくは硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて少なくとも0.01重量%の油変位剤を含有する。この量は、より好ましくは少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.5重量%又は少なくとも1重量%である。硬化性接着剤組成物は、好ましくは最大25重量%、より好ましくは最大20重量%、最大15重量%又は最大10重量%の油変位剤を含むことができる。多くの実施形態では、油変位剤は、好ましくは0.1〜25重量%の範囲、より好ましくは0.5〜20重量%の範囲、1〜20重量%の範囲、1〜10重量%の範囲、又は2〜10重量%の範囲の量で存在する。
一部の好ましい硬化性接着剤組成物は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも20重量%のエポキシ樹脂と、少なくとも3重量%の硬化剤と、少なくとも5重量%の反応性液体改質剤と、少なくとも5重量%の強化剤と、少なくとも0.1重量%の油変位剤と、を含有する。一部の他の好ましい硬化性接着剤組成物は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、20〜90重量%のエポキシ樹脂と、3〜30重量%の硬化剤と、3〜20重量%の反応性液体改質剤と、5〜55重量%の強化剤と、0.1〜25重量%の油変位剤と、を含有する。他の好ましい硬化性接着剤組成物は、20〜70重量%のエポキシ樹脂と、3〜20重量%の硬化剤と、4〜15重量%の反応性液体改質剤と、5〜40重量%の強化剤と、0.5〜20重量%の油変位剤と、を含有する。更に他の好ましい硬化性接着剤組成物は、30〜60重量%のエポキシ樹脂と、5〜20重量%の硬化剤と、4〜10重量%の反応性液体改質剤と、5〜30重量%の強化剤と、1〜10重量%の油変位剤と、を含有する。これらの量は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づく。
充填剤などの他の追加の構成成分を硬化性接着剤組成物に添加することができる。充填剤は、硬化性接着剤組成物の第一部分に、硬化性接着剤組成物の第二部分に、又は硬化性接着剤組成物の第一部分と第二部分の両方に、添加することができる。充填剤は、多くの場合、接着を促進するため、腐食耐性を改善するため、接着剤のレオロジー特性を制御するため、硬化中の収縮を低減させるため、硬化を加速するため、汚染物質を吸収するため、耐熱性を改善するため、及び/又はこれらの任意の組み合わせのために、添加される。充填剤は、無機材料、有機材料、又は、無機材料及び有機材料を含有する複合材料であることができる。充填剤は、任意の好適な寸法及び形状を有することができる。一部の充填剤は、球、楕円、板形状を有する粒子の形状である。他の充填剤は、繊維形状である。
一部の充填剤は、繊維ガラス(例えば、グラスウール及びガラス長繊維)、鉱物綿(例えば、岩綿及びスラグウール)及び耐火性セラミック繊維などの無機繊維である。一部の代表的な無機繊維としては、SiO2、Al2O3の混合物又はこれらの組み合わせが挙げられる。無機繊維は、CaO、MgO、Na2O、K2O、Fe2O3、TiO2、他の酸化物又はこれらの混合物を更に含むことができる。好適な無機繊維は、Lapinus Fibres BV(Roermond,オランダ)から商品名COATFORCE(例えば、COATFORCE CF50及びCOATFORCE CF10)で市販されている。他の代表的な無機繊維は、ウォラストナイト(すなわち、ケイ酸カルシウム)から調製することができる。
他の繊維は、アラミド繊維、及びポリエチレン繊維などのポリオレフィン繊維、といった有機繊維である。これらの有機繊維は、未処理であることができ、あるいは、これらの疎水性又は親水性を変化させるために処理することができる。例えば、一部の有機繊維は、これらを疎水性にするために、又は、これらの疎水性を高めるために、特別処理される。繊維をフィブリル化することができる。好適なポリオレフィン繊維としては、EP Minerals(Reno,NV)から商品名SYLOTHIX(例えば、SYLOTHIX 52及びSYLOTHIX 53)で入手可能なもの、EP Mineralsから商品名ABROTHIX(例えば、ARBOTHIX PE100)で入手可能なもの、MiniFIBERS,Inc.(Johnson City,TN)から商品名SHORT STUFF(例えば、SHORT STUFF ESS2F及びSHORT STUFF ESS5F)で入手可能なもの、並びに、Inhance/Fluoro−Seal,Limited(Houston,TX)から商品名INHANCE(例えば、INHANCE PEF)で入手可能なものなどの高密度ポリエチレン繊維が挙げられる。代表的なアラミド繊維は、Inhance/Fluoro−Seal,Ltd.(Houston,TX)から商品名INHANCE(例えば、INHANCE KF)で市販されている。
他の好適な充填剤としては、シリカ−ゲル、ケイ酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、ヒュームドシリカ、ベントナイト、有機粘土などの粘土、アルミニウム三水和物、ガラス微小球、中空ガラス微小球、高分子微小球及び中空高分子微小球が挙げられる。充填剤はまた、酸化第二鉄、レンガ粉、カーボンブラック、酸化チタン、及びこれらに類するものなどの顔料を挙げることができる。これらの充填剤のいずれかは、硬化性又は硬化済み接着剤組成物との相溶性を高めるために表面改質することができる。
代表的な充填剤としては、W.R.Grace(Columbia,MD)から商品名SHIELDEX(例えば、SHIELDEX AC5)で市販されている合成非晶質シリカと水酸化カルシウムとの混合物、Cabot GmbH(Hanau,ドイツ)から商品名CAB−O−SIL(例えば、CAB−O−SIL TS 720)で入手可能である疎水性表面を調製するためにポリジメチルシロキサンで処理したヒュームドシリカ、Degussa(Dusseldorf,ドイツ)から商品名AEROSIL(例えば、AEROSIL VP−R−2935)で入手可能な疎水性ヒュームドシリカ、CVP S.A.(フランス)からのガラスビーズクラスIV(250〜300マイクロメートル)及びNabaltec GmbH(Schwandorf,ドイツ)から商品名APYRAL 24 ESFで入手可能なエポキシシラン官能化(2重量%)アルミニウム三水和物が挙げられる。
一部の実施形態では、親油性表面を有する充填剤が、硬化性接着剤組成物中に含まれる。このような理論に束縛されるものではないが、これらの充填剤は、基材の表面にある炭化水素含有物質の少なくとも一部を吸収し得、それゆえに接着接合を強化するものと考えられる。
硬化性接着剤組成物は、任意の好適な量の充填剤を含有してもよい。好ましい実施形態では、硬化性接着剤組成物は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて0.01〜50重量%の充填剤を含有することができる。この量は、より好ましくは0.5〜50重量%の範囲、1〜40重量%の範囲、1〜30重量%の範囲、1〜20重量%の範囲、1〜10重量%の範囲、5〜30重量%の範囲、又は5〜20重量%の範囲であることができる。
硬化性接着剤組成物は、任意の数の他の追加の構成成分を含むことができる。例えば、追加の接着促進剤を添加することができる。代表的な接着促進剤としては、様々なシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。接着促進剤に好適である一部のシラン化合物は、硬化性接着剤組成物中の1個以上の構成成分と反応できるアミノ基又はグリシジル基を有する。他の代表的な接着促進剤としては、米国特許第6,632,872号(Pellerite et al.)に記載されているものなどの様々なキレート剤及び株式会社Adeka(日本、東京)から商品名EP−49−10N及びEP−49−20で入手可能なものなどのキレート変性エポキシ樹脂が挙げられる。
溶媒が硬化性接着剤組成物に更に含まれてもよい。存在する場合には、溶媒は、好ましくは硬化性接着剤組成物と混和性であるように選択される。溶媒は、硬化性接着剤組成物の第一部分又は第二部分のいずれかの粘度を低下させるために添加することができ、あるいは、硬化性接着剤組成物中に含まれる様々な構成成分のうちの1つと共に添加することができる。溶媒の量は、好ましくは最小限にされ、具体的には硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて10重量%未満である。溶媒は、より好ましくは硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下である。好適な有機溶媒としては、硬化性接着剤組成物に可溶であり、硬化中又は硬化後に除去されて、硬化済み接着剤組成物を形成できるものが挙げられる。代表的な有機溶媒としては、トルエン、アセトン、様々なアルコール及びキシレンが挙げられるが、これらに限定されない。
硬化性接着剤組成物は、第一部分と第二部分の形状である。第一部分は好ましくは、エポキシ樹脂、反応性液体改質剤、並びに、エポキシ樹脂と反応性液体改質剤のいずれにも反応しない他の構成成分を含む。第二部分は好ましくは、硬化剤、並びに、典型的には硬化剤と反応しない任意の他の構成成分を含む。強化剤及び油変位剤は、それぞれ独立して、第一部分又は第二部分のいずれかに添加することができる。各部分の構成成分は好ましくは、各部分内の反応性を最小限にするように選択される。
硬化性組成物は、追加の構成成分を含有できるか又は硬化性接着剤組成物の構成成分を更に分離できる、第三成分などの1つ以上の追加的部分を含んでもよい。例えば、エポキシ樹脂は第一部分にあることができ、硬化剤は第二部分にあることができ、反応性液体改質剤は第三成分にあることができる。強化剤及び油変位剤は、それぞれ独立して、第一、第二又は第三成分のいずれかにあることができる。
硬化性接着剤組成物の様々な成分を一緒に混合して、硬化済み接着剤組成物を形成する。これらの成分は、典型的には、硬化性接着剤組成物の使用直前に一緒に混合される。混合物中に含まれる各成分の量は好ましくは、オキシラン基とアミン水素原子の所望のモル比、及び、反応性液体改質剤とアミン水素原子の所望のモル比をもたらすように、選択される。
硬化性接着剤組成物は、例えば、室温にて硬化することができ、室温に続いて高温にて硬化することができ、又は高温(例えば、100℃超、120℃超又は150℃超)にて硬化することができる。室温にて硬化性接着剤組成物の硬化を開始するがその後、温度を高温に上げて硬化を加速することも可能である。一部の実施形態では、接着剤は好ましくは室温にて少なくとも3時間にわたって、より好ましくは少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間又は少なくとも72時間にわたって硬化させる。他の実施形態では、接着剤は、室温にて任意の好適な長さの時間にわたって硬化させ、その後、例えば、180℃にて最長10分又はより好ましくは最長20分、最長30分、最長60分、最長120分にわたって、又は更には120分超にわたって、といったように、高温にて更に硬化させる。
接着剤組成物は、短時間熱硬化した後、所望の凝集強度に達し得る。凝集強度は、多くの場合、同一又は異なる条件下での更なる硬化中に増加することができ、この種の硬化は、本明細書では部分硬化と呼ばれる。原理上は、部分硬化は任意の種類の加熱を用いて実施することができる。一部の実施形態では、誘導硬化(例えば、局部誘導硬化又は環誘導硬化)が部分硬化のために使用され得る。誘導硬化は、硬化済み接着剤組成物に接近してその中に交流が流れる誘導コイルを配置することによって、電導材料中に熱を発生させるための電力を使用した非接触式加熱法である。コイルにおける交流は、電磁場を発生させ、電磁場は接着剤組成物及び/又はこの接着剤組成物が接着される基材に循環電流を発生させる。接着剤組成物及び/又はこの接着剤組成物が接着される基材におけるこの循環電流は、材料の固有抵抗に逆らって流れ、熱を発生させる。誘導硬化装置は、例えば、IFF−GmbH(Ismaning,ドイツ)からのEWSが市販品として入手可能である。この誘導硬化は好ましくは、例えば、80℃〜180℃の範囲の温度では、最長120秒、より好ましくは最長90秒、最長60秒、最長45秒又は最長30秒の曝露時間で生じ得る。更なる実施形態では、接着剤組成物は、誘導硬化に続いて、室温、高温又はこれらの両方で更に硬化させてもよい。
硬化済み接着剤組成物は、典型的には、1つ以上の基材と頑強な接着を形成する。接着は、典型的には、重ねせん断試験で試験した際にその接着が高せん断力値にて粘着して離れる場合、並びに/又は、T剥離試験で試験した際に高いT剥離強度値が得られる場合、頑強であると考えられる。接着は以下の3つの異なるモードで離れ得る、(1)凝集破壊モードで、接着剤が、両方の金属表面への接着剤の接着部分を残して裂ける、(2)接着破壊モードで、どちらかの金属表面から接着剤が引き離される、又は(3)接着及び凝集破壊の組み合わせ(すなわち、組み合わせ破壊モード)。
硬化済み接着剤組成物は、典型的には、きれいな金属表面に、並びに、様々な油及び潤滑剤などの炭化水素含有物質で汚染された金属表面に、接着することができる。硬化済み接着剤組成物は、好ましくは重ねせん断力強度により測定されると、少なくとも2500psi(17.2MPa)の凝集強度を有する。より好ましくは、重ねせん断力は少なくとも3000psi(20.7MPa)、少なくとも3200psi(22.1MPa)又は少なくとも3500psi(24.1MPa)である。
硬化済み接着剤組成物は、接着する2つの部分の間(すなわち、2つの基材の2つの表面の間)に硬化性接着剤組成物を適用し、接着剤を硬化させて接着された接着部を形成することにより、溶接体又は機械的締結具を補助する又は完全に省くために使用されてもよい。その上に本発明の接着剤を適用することができる好適な基材としては、金属(例えば、スチール、鉄、銅、アルミニウム又はこれらの合金)、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス、エポキシ繊維複合材料、木材、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、基材の少なくとも1つは金属である。他の実施形態では、基材の両方が金属である。
基材の表面は、硬化性接着剤組成物の適用に先立って、洗浄してもよい。しかしながら、接着剤組成物はまた、表面上に炭化水素含有物質を有する基材に適用される場合の用途にも有用である。特に、硬化性接着剤組成物は、例えば、ミリング油、切削流体及び絞り油などの、様々な油及び潤滑剤で汚染された鋼表面に適用され得る。
接着剤接着の領域では、硬化性接着剤組成物は、液体、ペースト、スプレー、又は加熱すると液化できる固体として適用され得る。硬化性接着剤組成物は、連続状フィルムとして、点、線、斜線又は有用な接着の形成をもたらす任意の他の幾何形状として、適用することができる。一部の実施形態では、硬化性接着剤組成物は液体又は、ペーストの形態である。
所望される場合、硬化済み接着剤組成物によりもたらされる接着は、溶接又は機械的固定により支持することができる。溶接は、点溶接、連続シーム溶接、又は接着剤組成物と組み合わせることが可能な任意のその他の溶接技術によって行い、機械的にしっかりした接着を形成することができる。
硬化済み接着剤組成物は、構造用接着剤として使用され得る。特に、それらは、船、航空機、又は、車及びモーターバイクなどのモータークラフト車の組立といった、機体組立における構造用接着剤として使用してよい。特に、接着剤組成物は、周辺部フランジ接着剤として、又は、本体フレーム構成体の中に、使用されてもよい。接着剤組成物はまた、建築用途で構造用接着剤として、又は、様々な家庭及び産業用途で構造用接着剤として、使用してもよい。
本発明は更に、本発明による硬化性接着剤組成物の反応生成物を含む硬化済み接着剤組成物を目的とする。この文脈では、反応生成物は、硬化性接着剤組成物の第一部分及び第二部分を混合し、この混合物を重合反応が開始する好適な温度にすることにより、得られる。
本発明はまた、対向する第一表面と第二表面とを含む接着した物品であって、本発明による硬化済み接着剤組成物が第一表面と第二表面の間に挟まれている物品も目的とする。接着した物品の第一及び第二表面は洗浄されてもよく、特にこれらが硬化性接着剤組成物で被覆される前に脱脂され得る。しかしながら、第一及び/又は第二表面はまた、油層で被覆されてもよく、換言すれば、洗浄工程は必須ではない。
接着された物品はまた、複合物品として構成されてもよい。この場合、炭素繊維マット、ガラス繊維マット又はポリマー繊維マットのような平坦な基材の複数の層の間に交互に配置された多数の接着剤組成物層を挟むことが可能である。
本発明の別の目的は、少なくとも2つの基材を一緒に接着するための方法であり、
−本発明による硬化性接着剤組成物の第一部分と第二部分を適切な比で混合する工程と、混合した接着剤組成物で少なくとも部分的に一方又は両方の基材を被覆する工程と、
−混合した接着剤組成物で被覆された区域に基材を接触させる工程と、
−混合した接着剤組成物を硬化させる工程と、を含む。
本組成物は、例えば、金属を金属に、金属を炭素繊維に、炭素繊維を炭素繊維に、金属をガラスに、又は炭素繊維をガラスに、接着させるために、使用され得る。
本方法の好ましい実施形態によれば、基材の一方又は両方は、油層で被覆され、この油層は、混合した接着剤組成物を適用する前に除去されない。
本発明はまた、少なくとも1つの一級アミン、二級アミン及び/又はチオールを少なくとも1個の末端エポキシ基を含む少なくとも1つのポリオール化合物と反応させることにより得られるエポキシ−アミン及び/又はエポキシ−チオール付加物を、硬化性エポキシ樹脂のための硬化剤として使用することを目的とし、ポリオール化合物は好ましくはエポキシ化ポリ−THFを含む。
最後に、本発明は、少なくとも1つの一級アミン、二級アミン及び/又はチオールを少なくとも1個の末端エポキシ基を含む少なくとも1つのポリオール化合物と反応させることにより得られるエポキシ−アミン及び/又はエポキシ−チオール付加物を、二成分硬化性エポキシ接着剤のための硬化剤として使用することを目的とし、ポリオール化合物は好ましくはエポキシ化ポリ−THFを含む。
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲に限定することを意味するものではない。
以下の表2は、使用される材料の概要を与える。
重ねせん断強度(OLS)
未処理のスチール片(Rocholl(ドイツ)からのDC04)から作製した100mm×25mm×2mmのスチール試験標本を使用して、重ねせん断標本を作製した。この重ねせん断標本をn−ヘプタンで洗浄し、試験片の一方の端部上にスパチュラを用いて接着剤を適用し、続いて別の試験片で被覆した。これらの2つの端部を一緒に押圧し、重なりを13mmで調整した。過剰な接着剤をスパチュラで除去した。重なった試験片を2つのバインダークリップを用いて一緒に固定した。次に、この接着剤を室温にて24時間にわたって、並びに、オーブンにおいて180℃にて30分にわたって硬化させた。
接着剤を硬化させた後、10mm/分のクロスヘッド速度で稼働するZwick Z050引張試験機を用いてDIN EN 1465に記載のように重ねせん断強度(OLS)を決定すべく、室温での不具合について接着を試験した。結果はMPa単位で与えられる。
接着強度(T字剥離強度)
油のついたリン酸化スチール基材及びきれいなリン酸化スチール基材上でそれぞれ接着強度を測定した。T字剥離強度は、DIN EN 1464に従い、クロスヘッド速度100mm/分で稼働するZwick Z050引張試験機を使用して決定した。結果はN/25mm単位で報告される。
きれいな基材上での測定については、150×25×0.78mmのリン酸化スチールパネル(Thyssen Krupp(ドイツ)からのDC04 ZEP 75/75)をn−ヘプタンで洗浄した。パネルを100×25mmの領域を残してクレープテープでマスキングした。接着剤をこの領域に適用し、次に第2のパネルにより被覆した。2枚のパネルを組み立て、一緒に加圧し、残りの接着剤をスパチュラで除去した。接着線の長さ方向にバインダークリップを用いてこの組立体を一緒に固定した。次に組立体を室温(RT)にて24時間にわたって、次にオーブンにおいて180℃にて30分にわたって硬化させた。
油のついたスチールパネル上での接着強度の測定については、特定の体積のプラチノールB 804/3 COW−1(Oest(ドイツ)から)を基材表面に適用して、適切な油MSDSから得た密度データを用いて、コーティングされるべき領域に対して3g/m2のコーティングを達成した。これらの実験のために使用された試験サンプルは、Thyssen Krupp(ドイツ)からのリン酸化スチールパネルDC04 ZEP75/75であり、これを150×25×0.78mmの寸法に切断した。ニトリル手袋の清浄な指先を使用して、油を表面上に注意深く均一に塗り広げた。いったん表面を被覆してから、金属パネルを室温にて使用前24時間にわたって保存した。
次に、きれいなパネルについてと同じ手順に従って、接着剤の接着を生じさせた。T字剥離強度は、DIN EN 1464に従い、クロスヘッド速度100mm/分で稼働するZwick Z050引張試験機を使用して決定した。結果はN/25mm単位で報告される。
耐衝撃性(動的くさび衝撃、DWI)
ISO方法11343に従って動的くさび衝撃性能を判定した。Instron(Norwood、米国)からのDynatup Impact Test Machine,Model 9200を用いて試験を行った。サンプルは、リン酸化スチール片(Thyssen Krupp(ドイツ)からの100×20×0.78mmのDC04 ZEP 75/75)であった。n−ヘプタンで洗浄した後、30×20mmの領域を残してこれらをPTFEテープ(3M 5490)でマークした。次にこのパネルを30mmのマークにて4.5°の角度で折り曲げた。1枚のパネルの30×20mmの領域上に接着剤を適用し、別の折り曲げたパネルにより被覆した。2枚の試験片を一緒に加圧し、2個のバインダークリップを接着線に沿って適用した。この接着剤を室温にて24時間にわたって及びオーブンにおいて180℃にて30分にわたって硬化させた。
この標本を、頂部にて9°の角度を有する試験くさび上に配置した。21kgのおもりは、おもりが標本に当たる前に3m/sの速度で、落下する。衝撃の間、おもりは接着線の中に追い込まれる。接着剤接着により消失するエネルギーは、力変位ダイアグラムから直接計算され、ジュール単位で与えられる。
接着剤の調製
B成分:Kane ace MX257及びアラミド繊維(トワロン3091)をプラスチック缶において計量し、スピードミキサーで3500rpmにて1分にわたって混合した。次に、その他の構成成分を添加し、スピードミキサーで3500rpmにて2分にわたって混合する。次に、B成分を真空下で脱気する。
A成分はすべてアミンエポキシ付加物に基づく。機械的撹拌機と温度計とを取り付けたガラス装置の中でアミン、Eponex 1510及びGrilonit F713を50℃にて1時間にわたって混合した。この混合物を次に80℃に加熱し、硝酸カルシウムを一度に添加し、80℃にて1時間にわたって撹拌した。この混合物を次に冷却し、Ancamine K54を添加し、一晩撹拌した。次に他の添加剤又は充填剤を添加し、スピードミキサーを用いて混合した(2分、3500rpm)。これらの成分を真空下で脱気した。
本出願において呈示されたすべての実験では、特に記載のない限り、少なくとも3回の試験の結果から平均及び標準偏差を計算した。
接着剤成分の混合:
接着剤のA及びB成分を1:4(容積比)でカートリッジに入れ、2バールにてアプリケーションガンで静的ミキサー(SulzerからのMixpac、24混合単位、直径10mm)を通して押し出した。
F713を有する接着剤組成物を表3及び5に要約したが、それぞれ、E4、E6及びE7は比較例である。Griloni F713は、780g/molのMWを有するEMS Primid(スイス)から入手可能な液体ポリTHFジグリシジルエーテルである。液体ポリTHFジグリシジルエーテルは室温にて液体であり、このことは液体ポリTHFジグリシジルエーテルを二成分ペースト接着剤にとって好適なものにしている。液体ポリTHFジグリシジルエーテルはB成分に添加できるため、又は、接着剤のA成分中のアミンを付加できるため、液体ポリTHFジグリシジルエーテルはきわめて可変性である。液体ポリTHFジグリシジルエーテルの当量は高いため、液体ポリTHFジグリシジルエーテルによりペースト接着剤の容積比を調製するのは容易である。
これらの配合物で得られた結果を表4に記載する。
1)3g/m
2のCOW−1(電子亜鉛めっきスチール)を用いた、油のついたDC 04 ZE 50/50でのT字剥離であり、すべての他の実施例はThyssen Kruppからのリン酸化スチールDC04 ZEP 75/75。
(
*)比較例
5%のF713を有する実施例E1は、優れた油取り込み特性(3g/m2のCOW−1を用いた、油の付いた亜鉛めっきスチール上に285N/25mm)及び非常に高い衝撃強度(23.6J)を示す。ノボラックエポキシ樹脂であるDEN 431を添加することによっても、F713を組み込んだ場合(E2、E3)の非常に高い接着強度及び優れた衝撃強度を得ることが可能である。
実施例E2は、5%のF713を含む場合の衝撃強度は、F713(E4)を含まない同じ構成(E4)と比較した場合の5倍である。
実施例E3は、配合物中に10%のコアシェル材料(MX257)を含むだけで非常に高い衝撃強度(17J)及び非常に高いせん断強度を示す。
以下の表5は、F713に脂環式アミンである1,3−BACを付加することによる別の例を与える。実施例6及び7は、比較例である。アミン基とシクロヘキサン環との間のメチレンスペーサーに起因して、1,3−BACは非常に速く硬化する脂環式アミンであり、このことにより、速く硬化することが重要である接着剤系にとって1,3−BACは好適であり、一方、脂環式アミンは通常は硬化スピードが非常に遅い。
実施例E5〜E7の接着性能を表6に要約する。
実施例6は、1,3−BACが、非常に貧弱な衝撃強度(1.2J)を提供する非常に脆い系を導くことを明瞭に示す。5%のF713を添加する(E5)と、系は衝撃耐性になる(13.5J)。5%のATBNが使用される比較例E7は、明らかにより貧弱な衝撃強度及びより劣った接着特性を示す。