本発明の粘接着シートの一実施形態を、図1を参照して説明する。
なお、本明細書において、「粘接着」は、粘着性および接着性の両方を有する性質である。より具体的には、「粘接着」は、上記した「粘着性」および「接着性」を有しており、経時的には、初期には、粘着性を発現でき、硬化(反応)後には、接着性を発現できることを言う。
「粘着」は、外部からの感圧(微小な圧力)によって、剤が有する化学構造に基づく凝集力に基づき、2つの面が一時的に接合され、必要により剥離できることを言う。
対して、「接着」は、主剤および硬化剤が化学反応(硬化)して、硬化物を生成し、剥離を予定しておらず、2つの面が強固に接合できることを言う。
この粘接着シート1は、主剤層2および硬化剤層3を備える。具体的には、この粘接着シート1は、ハネムーン型接着剤であって、主剤層2および硬化剤層3を別々に備えるキット(粘接着キット)である。詳しくは、粘接着シート1において、主剤層2および硬化剤層3は、それぞれ、初期における粘着性(初期粘着力)を有し、主剤層2および硬化剤層3の接触に基づく硬化後には、接着性を発現できる。
主剤層2は、厚み方向に直交する面方向に延びるシート形状を有しており、一方面および他方面を有する。主剤層2は、主剤成分からシート形状に形成されている。
また、主剤層2は、例えば、粘着性(初期粘着力、あるいは、感圧接着力とも言う)を有する。
主剤成分は、アクリル樹脂およびエポキシ樹脂を含有する。好ましくは、主剤成分は、アクリル樹脂およびエポキシ樹脂からなる。
アクリル樹脂は、主剤層2に粘着性および保形性を付与する。
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび極性基含有ビニルモノマーの共重合体が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの、アルキル部分が炭素数2以上、12以下の直鎖または分岐アルキルである(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロシクロブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの、炭素数3以上、12以下の環状アルキルである(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルを含むことができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、アルキル部分が炭素数2以上、12以下の直鎖または分岐アルキルである(メタ)アクリル酸アルキルエステル、より好ましくは、アルキル部分が炭素数4以上、10以下の分岐アルキルである(メタ)アクリル酸分岐アルキルエステルが挙げられる。
FOX換算式(後述)を算出するための(メタ)アクリル酸アルキルエステルのホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、0℃未満、好ましくは、-20℃以下、より好ましくは、-40℃以下、さらに好ましくは、-60℃以下であり、また、例えば、-120℃以上である。ガラス転移温度は、文献値を採用することができる。後述する極性基含有ビニルモノマーのホモポリマーも文献値を採用することができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または2種以上併用することができる。
極性基含有ビニルモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性モノマーであって、特に限定されず、好ましくは、酸性基以外の極性基を含有する。
極性基含有ビニルモノマーは、その極性基がエポキシ基と親和できる(より具体的には、親水性を有する)ので、エポキシ基を含有するエポキシ樹脂に対する相溶性に優れる。
また、極性基含有ビニルモノマーが酸性基を含有しないので、主剤層2において、硬化剤層3と接触する前に、酸性基がエポキシ樹脂のエポキシ基と反応することを避けることができ、ひいては、主剤層2におけるエポキシ樹脂との反応を抑制することができる。
極性基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどの、炭素数1以上、4以下のヒドロキシアルキルエステルを含有するヒドロキシル基含有ビニルモノマー、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、(メタ)アクリロイルモルフォリンなどの複素環含有ビニルモノマー、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどの、ヒドロキシル基およびアミド基を含有するヒドロキシル基-アミド基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
極性基含有ビニルモノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
好ましくは、複素環含有ビニルモノマー、ヒドロキシル基-アミド基含有ビニルモノマーが挙げられる。
また、極性基含有ビニルモノマーとしては、ホモポリマーのガラス転移温度が、例えば、-20℃以上、好ましくは、0℃以上、より好ましくは、20℃以上、さらに好ましくは、40℃以上、とりわけ好ましくは、50℃以上であり、また、例えば、150℃以下である。
極性基含有ビニルモノマーのホモポリマーのガラス転移温度が上記した下限以上であれば、共重合体のガラス転移温度を後述する所望範囲に設定し、ひいては、主剤層2の保形性を向上させることができる。極性基含有ビニルモノマーのホモポリマーのガラス転移温度が上記した上限以下であれば、主剤層2の粘着性を向上させることができる。
また、共重合体のガラス転移温度は、FOX換算式で、例えば、-50℃以上、好ましくは、-30℃以上であり、また、例えば、20℃以下、好ましくは、0℃以下である。
共重合体のガラス転移温度が上記した下限以上であれば、主剤層2の保形性を向上させることができる。共重合体のガラス転移温度が上記した上限以下であれば、主剤層2の粘着性を向上させることができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび極性基含有ビニルモノマーの総量における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば、40質量%以上、好ましくは、45質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
極性基含有ビニルモノマーの割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合の残部である。
アクリル樹脂を調製するには、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび極性基含有ビニルモノマーを、例えば、溶液重合法、懸濁重合、塊状重合法などによって、重合開始剤の存在下で、共重合させる。好ましくは、有機溶媒(後述)を用いる溶液重合法が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ系重合開始剤、例えば、パーオキサイド系重合開始剤が挙げられる。
なお、アクリル樹脂が溶液重合法で共重合される場合には、有機溶媒および共重合体を含有するアクリル樹脂液として調製される。
主剤成分におけるアクリル樹脂の割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、70質量%以下である。
アクリル樹脂の割合が上記した下限以上であれば、主剤層2が十分な粘着性および保形性を有する。
エポキシ樹脂は、硬化剤層3の硬化成分(後述)と硬化反応して、接着性を発現する成分である。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール系エポキシ樹脂、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、例えば、ジシクロ型エポキシ樹脂、例えば、脂環族系エポキシ樹脂、例えば、トリグリシジルイソシアヌレートエポキシ樹脂、例えば、ヒダントインエポキシ樹脂、例えば、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、例えば、グリシジルアミノ系エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
エポキシ樹脂の官能数としては、例えば、2官能、例えば、3官能、例えば、4官能以上が挙げられる。
エポキシ樹脂として、好ましくは、ビスフェノール系エポキシ樹脂、より好ましくは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂は、25℃(常温)で、液状、半固形状および固形状のいずれの形態であってもよい。好ましくは、液状のエポキシ樹脂および固形状のエポキシ樹脂の併用、好ましくは、半固形状のエポキシ樹脂の単独使用が挙げられる。上記した好ましい態様のエポキシ樹脂であれば、アクリル樹脂とともに、主剤層2に粘着性および保形性を確実に付与することができる。
主剤成分におけるエポキシ樹脂の割合は、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下、より好ましくは、90質量%以下であり、また、例えば、30質量%以上、好ましくは、50質量%以上である。
アクリル樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の質量部数は、例えば、100質量部以上、好ましくは、200質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下である。
エポキシ樹脂は、固形状のエポキシ樹脂を含有する場合には、固形状のエポキシ樹脂を、有機溶媒で溶解したエポキシ樹脂溶液として調製される。
主剤層2を調製するには、アクリル樹脂およびエポキシ樹脂を配合して、混合する。アクリル樹脂およびエポキシ樹脂を混合することにより、主剤成分を含有する主剤組成物を調製する。なお、アクリル樹脂がアクリル樹脂液として調製され、および/または、エポキシ樹脂が固形状のエポキシ樹脂を含有する場合であって、固形状のエポキシ樹脂がエポキシ樹脂溶液として調製される場合には、主剤成分および有機溶媒を含有する主剤ワニスとして調製する。なお、有機溶媒を別途加えて、主剤ワニスを調製することもできる。
なお、アクリル樹脂およびエポキシ樹脂は、例えば、主剤成分において、互いに実質的には反応していない。
主剤ワニスにおける固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、75質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
その後、主剤ワニスを、図1の仮想線で示すように、第1剥離シート11に塗布する。例えば、アプリケータなど、公知の塗布方法によって、主剤ワニスを第1剥離シート11の厚み方向一方面に塗布する。
第1剥離シート11は、厚み方向一方面および他方面を有するセパレータである。第1剥離シート11としては、例えば、ポリエステルシート(ポリエチレンテレフタレート(PET)シートなど)、ポリオレフィンシート(ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなど)、ポリ塩化ビニルシート、ポリイミドシート、ポリアミドシート(ナイロンシート)、レーヨンシートなどのプラスチック系基材シート(合成樹脂シート)、例えば、紙類などが挙げられる。好ましくは、プラスチック系基材シートが挙げられる。第1剥離シート11の厚みは、例えば、1μm以上、1000μm以下である。
塗布により、主剤成分からなる主剤層2を形成する。
その後、必要により、第2剥離シート12を、主剤層2の厚み方向一方面に配置する。具体的には、第2剥離シート12および第1剥離シート11で、主剤層2を、厚み方向に圧着する。第2剥離シート12は、第1剥離シート11と同様の構成を有する。
主剤層2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
主剤層2の25℃における180度粘着力(粘着強度)は、速度300mm/分で、例えば、0.5N/20mm以上、好ましくは、1N/20mm以上、より好ましくは、3N/20mm以上、さらに好ましくは、5N/20mm以上である。
主剤層2の粘着力の測定方法は、後の実施例で詳述する。硬化剤層3の粘着力の測定方法は、主剤層2のそれと同様である。
硬化剤層3は、シート形状を有しており、一方面および他方面を有する。硬化剤層3は、硬化剤成分から、シート形状に形成されている。
硬化剤成分は、エポキシ樹脂変性アミン化合物を含有する。好ましくは、硬化に寄与しないアクリル樹脂を含有せず、硬化に寄与するエポキシ樹脂変性アミン化合物を含有する。
エポキシ樹脂変性アミン化合物は、硬化剤層3に粘着性および保形性を付与する。
エポキシ樹脂変性アミン化合物は、ポリアミン化合物を2官能エポキシ樹脂で変性した化合物であって、具体的には、エポキシ基を2つ含有する2官能エポキシ樹脂と、1級アミノ基を2つ含有するポリアミン化合物との反応生成物である。
2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂、2官能ナフタレン型エポキシ樹脂、2官能ビフェニル型エポキシ樹脂、2官能ジシクロ型エポキシ樹脂、2官能脂環族系エポキシ樹脂、2官能ヒダントインエポキシ樹脂、2官能アルキルグリシジルエーテル系エポキシ樹脂などが挙げられる。
2官能エポキシ樹脂として、エポキシ樹脂変性アミン化合物にソフトセグメントを導入して、粘着性を有する硬化剤層3を形成する観点からは、2官能アルキルグリシジルエーテル系エポキシ樹脂が挙げられ、また、保形性を有する硬化剤層3を形成する観点からは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。
2官能アルキルグリシジルエーテル系エポキシ樹脂は、例えば、長鎖アルキル部分(例えば、炭素数4以上、16以下の直鎖状のアルキル基)と、長鎖アルキル部分の両末端に結合したグリシジルエーテル基とを有しており、アルキルジグリシジルエーテルと称呼されることもある。2官能アルキルグリシジルエーテル系エポキシ樹脂は、長鎖アルキルがエポキシ樹脂変性アミン化合物において良好なソフトセグメントを供与することができる。
1級アミノ基を2つ含有するポリアミン化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,3-ペンタメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,2-ブチレンジアミン、2,3-ブチレンジアミン、1,3-ブチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン(1級アミノ基を含有するが、2級アミノ基を含有しない脂肪族ジアミン)などが挙げられる。また、脂肪族ポリアミンとして、例えば、ジエチレントリアミンなどのトリアミン、例えば、トリエチレンテトラミン(TETA)などのテトラミン、例えば、テトラエチレンペンタミンなどのペンタミン、例えば、ペンタエチレンヘキサミンなどのヘキサミンなどの、1級アミノ基および2級アミノ基を含有する脂肪族ポリアミンが挙げられる。
脂肪族ポリアミンとして、好ましくは、1級アミノ基および2級アミノ基を含有する脂肪族ポリアミンが挙げられ、より好ましくは、テトラミン、さらに好ましくは、TETAが挙げられる。
脂環式ポリアミンとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1-アミノ-1-メチル-4-アミノメチルシクロヘキサン、1-アミノ-1-メチル-3-アミノメチルシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3-メチル-シクロヘキシルアミン)、メチル-2,3-シクロヘキサンジアミン、メチル-2,4-シクロヘキサンジアミン、メチル-2,6-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノアルキル)シクロアルカン(具体的には、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)、1,4-ビス(アミノアルキル)シクロアルカン(具体的には、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環式ジアミン(1級アミノ基を含有するが、2級アミノ基を含有しない脂環式ジアミン)などが挙げられる。
脂環式ポリアミンとして、好ましくは、1級アミノ基を含有するが、2級アミノ基を含有しない脂環式ジアミンが挙げられ、より好ましくは、ビス(アミノアルキル)シクロアルカン、さらに好ましくは、ビス(アミノメチル)シクロアルカン、とりわけ好ましくは、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、最も好ましくは、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)が挙げられる。
芳香族ポリアミンとしては、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4’-ジフェニルメタンジアミンなどの、1級アミノ基が芳香環を介して脂肪族基に結合する芳香族ジアミン(1級アミノ基を含有するが、2級アミノ基を含有しない芳香族ジアミン)などが挙げられる。
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-キシリレンジアミン、1,4-キシリレンジアミンなどの、1級アミノ基が脂肪族基を介して芳香環に結合する芳香脂肪族ジアミン(1級アミノ基を含有するが、2級アミノ基を含有しない芳香脂肪族ジアミン)などが挙げられる。
1級アミノ基を2つ含有するポリアミン化合物として、好ましくは、硬化剤層3の粘着性を向上させる観点から、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミンが挙げられ、硬化剤層3の保形性をさらに向上させる観点から、より好ましくは、脂環式ポリアミン(具体的には、1級アミノ基を含有するが、2級アミノ基を含有しない脂環式ジアミン)が挙げられる。
反応生成物は、上記した2官能エポキシ樹脂とポリアミン化合物との反応させて得られる生成物である。
具体的には、2官能エポキシ樹脂およびポリアミン化合物を配合して混合し、それらを反応させる。
エポキシ基に対する1級アミノ基のモル割合が、例えば、1超過、好ましくは、1.01以上、また、例えば、2以下、好ましくは、1.5以下となるように、2官能エポキシ樹脂およびポリアミン化合物を配合する。
エポキシ基に対する1級アミノ基のモル割合が上記した下限を上回れば、エポキシ樹脂変性アミン化合物は、両末端の官能基として1級アミノ基を有することができ、これにより、硬化剤層3が主剤層2と接触するときに、主剤層2のエポキシ樹脂と効率よく反応することができる。
また、反応溶媒を、2官能エポキシ樹脂およびポリアミン化合物とともに配合して、反応溶媒の存在下で、2官能エポキシ樹脂およびポリアミン化合物を反応させることもできる。
反応溶媒としては、有機溶媒などが挙げられる。有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコール-エステル系溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、例えば、ミネラルスピリットなどの石油系溶媒などが挙げられる。好ましくは、アルコール系溶媒が挙げられる。
反応溶媒の配合割合は、2官能エポキシ樹脂およびポリアミン化合物の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下である。
反応条件は、例えば、温度を、例えば、0℃以上、好ましくは、25℃(常温)以上、より好ましくは、40℃以上、さらに好ましくは、50℃以上、また、例えば、80℃以下に設定する。
反応時間は、例えば、5分以上、好ましくは、15分以上、例えば、60分以下、好ましくは、40分以下に設定する。
反応条件は、ポリアミン化合物における2級アミノ基が反応しない条件であれば、上記に特に限定されず、例えば、無溶媒で、反応を実施することもできる。
上記したように、エポキシ基に対する1級アミノ基のモル割合(エポキシ基に対する1級アミノ基のモル割合が、例えば、1超過)、反応溶媒の使用、および/または、反応条件の設定によって、2官能エポキシ樹脂およびポリアミン化合物は、例えば、直鎖状の分子構造を生成する。具体的には、2官能エポキシ樹脂のエポキシ基と、ポリアミン化合物の1級アミノ基(エポキシ基よりわずかに過剰の1級アミノ基)とが反応(エポキシ開環反応)して、直鎖状の分子構造を生成する。なお、エポキシ基に対する1級アミノ基のモル割合が、1超過であれば、上記反応によって生成された2級アミノ基が別のエポキシ基とさらに反応して、架橋(ネットワーク)構造を生成することは、抑制される。
その後、反応生成物として得られるエポキシ樹脂変性アミン化合物は、例えば、分子末端、好ましくは、分子両末端において、1級アミノ基を有する。この1級アミノ基は、主剤層2と硬化剤層3とを接触させて、主剤層2のエポキシ樹脂のエポキシ基と効率的に反応して、粘接着シート1が優れた接着力を発現することができる。
硬化剤成分におけるエポキシ樹脂変性アミン化合物の割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、75質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下である。
また、硬化剤成分は、エポキシ樹脂変性アミン化合物に加え、1級アミノ基を2つ含有する第2ポリアミン化合物、および/または、イミダゾール化合物をさらに含有することができる。この場合でも、硬化剤成分は、エポキシ樹脂変性アミン化合物と、第2ポリアミン化合物および/またはイミダゾール化合物とを含有するが、依然として、硬化に寄与しない成分(例えば、アクリル樹脂)を含有しない。
好ましくは、硬化剤成分は、エポキシ樹脂変性アミン化合物と、第2ポリアミン化合物および/またはイミダゾール化合物とからなり、より好ましくは、エポキシ樹脂変性アミン化合物と、第2ポリアミン化合物と、イミダゾール化合物とからなる。
第2ポリアミン化合物、および/または、イミダゾール化合物は、主剤層2のエポキシ樹脂を十分に硬化させるために、硬化剤成分に追加的に配合される。
第2ポリアミン化合物としては、上記したポリアミン化合物の例示から適宜選択される。
イミダゾール化合物としては、イミダゾール系硬化剤として公知のものが挙げられる。具体的には、イミダゾール化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール化合物、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾールなどのフェニルイミダゾール化合物、例えば、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールなどのアラルキルイミダゾール化合物、例えば、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾールなどのニトリル系イミダゾール化合物、それらの誘導体などが挙げられる。好ましくは、アルキルイミダゾール化合物が挙げられる。
第2ポリアミン化合物およびイミダゾール化合物は、それらから択一的に、または、両方が用いられ、好ましくは、第2ポリアミン化合物およびイミダゾール化合物の両方が用いられる。
第2ポリアミン化合物およびイミダゾール化合物の両方が用いられる場合において、エポキシ樹脂変性アミン化合物100質量部に対する、第2ポリアミン化合物およびイミダゾール化合物の合計質量部数は、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。また、エポキシ樹脂変性アミン化合物100質量部に対する第2ポリアミン化合物の質量部数は、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。また、エポキシ樹脂変性アミン化合物100質量部に対するイミダゾール化合物の質量部数は、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
第2ポリアミン化合物またはイミダゾール化合物が択一的に用いられる場合には、エポキシ樹脂変性アミン化合物100質量部に対する第2ポリアミン化合物またはイミダゾール化合物の質量部数は、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
これにより、エポキシ樹脂変性アミン化合物と、第2ポリアミン化合物および/またはイミダゾール化合物と、を含有する硬化剤成分を調製する。
なお、エポキシ樹脂変性アミン化合物と、第2ポリアミン化合物および/またはイミダゾール化合物とを配合しても、好ましくは、エポキシ樹脂変性アミン化合物の両末端がエポキシ基ではなく、1級アミノ基であることから、第2ポリアミン化合物のアミノ基、および/または、イミダゾール化合物のイミノ基は、エポキシ樹脂変性アミン化合物の1級アミノ基と反応しない。つまり、第2ポリアミン化合物および/またはイミダゾール化合物は、好ましくは、エポキシ樹脂変性アミン化合物と反応しない。
なお、反応溶媒を用いてエポキシ樹脂変性アミン化合物を調製した場合には、反応溶媒と、エポキシ樹脂変性アミン化合物と、第2ポリアミン化合物および/またはイミダゾール化合物と、を含有する硬化剤ワニスとして硬化剤成分を調製する。
その後、硬化剤成分(硬化剤ワニス)を、図1の仮想線で示すように、第3剥離シート13に塗布する。例えば、アプリケータなど、公知の塗布方法によって、硬化剤ワニスを第3剥離シート13の厚み方向一方面に塗布する。第3剥離シート13は、第1剥離シート11と同様の構成を有する。
塗布後、硬化剤ワニスを乾燥して、硬化剤成分からなる硬化剤層3を形成する。
この硬化剤層3では、硬化剤成分が第2ポリアミン化合物およびイミダゾール化合物を含有する場合には、第2ポリアミン化合物およびイミダゾール化合物が、エポキシ樹脂変性アミン化合物に対して均一に分散されている。換言すれば、エポキシ樹脂変性アミン化合物が、第2ポリアミン化合物およびイミダゾール化合物に対して均一に分散されている。
その後、必要により、第4剥離シート14を、硬化剤層3の厚み方向一方面に配置する。具体的には、第4剥離シート14および第3剥離シート13で、硬化剤層3を、厚み方向に圧着する。第4剥離シート14は、第1剥離シート11と同様の構成を有する。
硬化剤層3の厚みは、例えば、0.5μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。主剤層2の厚みに対する、硬化剤層3の厚みの割合は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上であり、また、例えば、2以下、好ましくは、1未満、より好ましくは、0.5以下である。
硬化剤層3の25℃における180度粘着力(粘着強度)は、速度300mm/分で、例えば、0.5N/20mm以上、好ましくは、1N/20mm以上、より好ましくは、3N/20mm以上である。
次に、この粘接着シート1により、第1被着体5および第2被着体6を互いに粘着させ、その後、接着する方法を説明する。
まず、図2に示すように、粘接着シート1と、第1被着体5と、第2被着体6とを準備する。
第1被着体5は、第1表面7を有する。
第2被着体6は、第1被着体5の第1表面7に対向できる第2表面8を有する。
次いで、例えば、図1に示す第1剥離シート11を主剤層2の他方面から剥離する。次いで、図2Aに示すように、主剤層2の他方面を、第1被着体5の第1表面7に接触させる。具体的には、主剤層2を第1表面7に貼り合わせる。これにより、主剤層2が第1表面7に粘着する。続いて、必要により、主剤層2を第1表面7に圧着する。
その後、第2剥離シート12を、主剤層2の一方面から剥離し、これを除去する。
別途、図1に示す第4剥離シート14を硬化剤層3の一方面から剥離する。次いで、図2Aに示すように、硬化剤層3の一方面を、第2被着体7の第2表面8に接触させる。具体的には、硬化剤層3を第2表面8に貼り合わせる。これにより、硬化剤層3が第2表面8に粘着する。続いて、硬化剤層3を第2表面8に圧着する。
その後、第3剥離シート13を硬化剤層3の他方面から剥離し、これを除去する。
その後、図2Bに示すように、主剤層2の一方面と、硬化剤層3の他方面とを接触させる。具体的には、主剤層2と硬化剤層3とを貼り合わせる。必要により、厚み方向に圧力をかけながら、主剤層2と硬化剤層3と貼り合わせる。つまり、主剤層2と硬化剤層3とを圧着する。
これにより、第1表面7および第2表面8が互いに粘着(仮固定)される。なお、粘着状態は、例えば、常温(25℃)であれば、少なくとも1時間は、維持される。
その後、位置決めが不良などの場合には、必要により、主剤層2を硬化剤層3から剥離および再粘着(リワーク)する。
その後、主剤層2と硬化剤層3とを反応させる。
反応条件としては、温度が25~40℃であれば、例えば、3日以上、好ましくは、7日以上、より好ましくは、10日以上、主剤層2と硬化剤層3とを接触状態を維持した状態で放置する。また、温度が80~160℃であれば、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上、より好ましくは、2時間以上、主剤層2と硬化剤層3とを接触状態を維持した状態で放置する。
これによって、主剤層2と硬化剤層3との界面を介して、主剤層2のエポキシ樹脂と、硬化剤層3のエポキシ樹脂変性アミン化合物(および必要により配合される第2ポリアミン化合物、および/または、イミダゾール化合物)とが、反応して、硬化物が生成される。詳しくは、主剤層2のエポキシ樹脂のエポキシ基が、硬化剤層3のエポキシ樹脂変性アミン化合物の1級アミノ基によって、開環反応し、2級アミノ基を生成する。さらに、生成された2級アミノ基によって、別のエポキシ樹脂のエポキシ基が開環反応して、3次元ネットワーク構造(架橋構造)が形成される。
これによって、硬化物からなる硬化体層4が、第1表面7および第2表面8の間に、それらに強固に接着した状態で、形成される。
なお、この硬化体層4は、粘着性(タック)を有さず、具体的には、指などで接触しても、べたつき感が感じられない。硬化体層4が粘着性(タック)を有さないことは、粘接着シート1が接着信頼性に優れることを示す。
硬化体層4の接着力(接着強度)は、例えば、1MPa以上、好ましくは、2MPa以上、より好ましくは、3MPa以上、さらに好ましくは、5MPa以上、とりわけ好ましくは、6MPa以上である。
硬化体層4の接着力は、後の実施例で詳述される。
そして、この粘接着シート1において、硬化剤層3は、エポキシ樹脂変性アミン化合物を含有しており、特許文献1に記載されるような、硬化に寄与しないアクリル樹脂を含有しない。そのため、この粘接着シート1では、硬化剤層3の全てが主剤層2との硬化に寄与することができる。その結果、この粘接着シート1は、接着力に優れる。
また、この粘接着シート1の主剤層2では、アクリル樹脂は、炭素数2以上、12以下のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および、極性基(酸性基を除く)を含有する極性基含有ビニルモノマーを含有するモノマー成分の共重合体であれば、主剤層2におけるエポキシ樹脂との反応を抑制して、エポキシ樹脂との親和性に優れながら、優れた保形性を有する。
さらに、この粘接着シート1では、エポキシ樹脂変性アミン化合物は、エポキシ基を2つ含有するエポキシ樹脂と、1級アミノ基を2つ含有するポリアミン化合物との反応生成物であり、エポキシ基に対する1級アミノ基のモル割合が、1超過であれば、エポキシ樹脂変性アミン化合物は、両末端の官能基として1級アミノ基を有することができ、これにより、硬化剤層3が主剤層2と接触するときに、主剤層2のエポキシ樹脂と効率よく反応することができる。
また、硬化剤層3が、1級アミノ基を2つ含有する第2ポリアミン化合物、および/または、イミダゾール化合物をさらに含有すれば、硬化剤層3が、主剤層2のエポキシ樹脂を十分に硬化させることができる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
また、「部」および「%」については、特段の記載がない限り、それぞれ、「質量部」および「質量%」を意味する。
調製例1
<アクリル樹脂(2-EHA/HEAA/NVP=50/10/40)の調製>
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗および攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸2-エチルヘキシル(2-EHA、ガラス転移温度:-70℃)50部、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、ガラス転移温度:98℃)10部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP、ガラス転移温度:54℃)40部、および酢酸エチル333.3部を入れ、室温において窒素ガスバブリング(100mL/分)しながら1時間攪拌した。その後、反応容器の内容物を加熱し、56℃に達した時点で、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を加えた。内容物の温度を56℃に保つよう制御し、窒素ガス流中で3時間重合し、次いで、72℃に3時間保持(熟成)した。これにより、アクリル系共重合体(モノマー成分:2-EHA/HEAA/NVP=50/10/40)の酢酸エチル溶液であるアクリル樹脂溶液を調製した。
アクリル系共重合体のガラス転移温度は、FOX換算式で、-20℃である。
調製例2
<アクリル樹脂(2-EHA/HEAA/N-VP=70/5/25)の調製>
モノマー成分を、2-EHA/HEAA/NVP=50/10/40から、2-EHA/HEAA/N-VP=70/5/25に変更した以外は、調製例1と同様に処理して、アクリル樹脂溶液を調製した。
アクリル系共重合体のガラス転移温度は、FOX換算式で、-43℃である。
調製例3
エポキシ樹脂溶液の調製
固形状のビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製、YDF-2001、エポキシ当量470)100部に対し、メチルエチルケトン100部を入れ、室温下で攪拌して、エポキシ樹脂溶液を調製した。
実施例1
<主剤層の作製>
調製例1のアクリル樹脂溶液をアクリル系共重合体(固形分)で25部、エポキシ樹脂溶液を固形分で37.5部、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル製jERー806、エポキシ当量167)37.5部、エタノールを配合して、攪拌し、主剤ワニス(固形分濃度が30重量%)を調製した。
主剤ワニスを第1剥離シート11(厚さ75μmのPETフィルム)の一方面に、乾燥後厚みが30μmとなるようにアプリケータで塗布し、60℃で3分間乾燥した後、第2剥離シート12(厚み38μmのPETフィルム)を貼り合せて、圧着した。これにより、第1剥離シート11および第2剥離シート12で挟まれた主剤層2を作製した。
<硬化剤層の作製>
ガラス容器に、2官能エポキシ樹脂としてアルキルジグリシジルエーテル(三菱ケミカル製jER-YED216M、エポキシ当量143)66部、ポリアミン化合物として1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製、1,3-BAC、以下「1,3-BAC」と表すことがある)34部、エタノール67部を加え、外気を60℃で25分、攪拌しながらそれらを反応させて、エポキシ樹脂変性アミン化合物のエタノール溶液を得た。なお、アルキルジグリシジルエーテルおよび1,3-BACを配合する際の、エポキシ基に対する1級アミノ基のモル割合は、1.05であった。
エポキシ樹脂変性アミン化合物のエタノール溶液を、第3剥離シート13(厚さ75μmのPETフィルム)の一方面に、乾燥後の厚みが10μmとなるようにアプリケータで塗布し、60℃で3分間乾燥した後、第4剥離シート14(38μmのPETフィルム)を貼り合せて、圧着した。これにより、第3剥離シート13および第4剥離シート14で挟まれた硬化剤層3を作製した。
実施例2~比較例2
表1の記載に従って、主剤層および硬化剤層の処方を変更した以外は、実施例と同様にして、主剤層2および硬化剤層3を作製した。
なお、表1中、各原料の詳細を下記する。
・液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER-806、2官能、エポキシ当量167)
・固形状のビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製、YDF-2001、2官能、エポキシ当量470)
・半固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、エピクロン860、2官能、エポキシ当量245)
・アルキルジグリシジルエーテル(三菱ケミカル社製、jER-YED216M、2官能アルキルグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、エポキシ当量143)
・液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER-828、エポキシ当量186)
・1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製、1,3-BAC、1級アミノ当量71、ポリアミン化合物)
・トリエチレンテトラミン(東京化成工業社製、1級アミノ当量73、TETA)
・2-エチルー4-メチルーイミダゾール(2E4MZ)
[粘接着シートの評価]
各実施例および各比較例の粘接着シート1について下記の粘着性(粘着力および仮固定性)と接着性(接着強度およびタック残り)とを評価した。その結果を表1に記載する。
<粘着力>
主剤層2の粘着力を、以下の方法で測定した。
図2Aに示すように、ステンレス板(JIS G4305に規定されるSUS304鋼板)からなる第1被着体5の第1表面7を、まず、360番の耐水研磨紙にて均一に研磨し、次いで、酢酸エチルを染み込ませた布で洗浄し、室温で乾燥させた。
次いで、図1に示す第2剥離シート12を主剤層2の一方面から剥離し、25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材(図示せず)を主剤層2の一方面に貼り付け、幅10mmにカットして、試験片を作製した。次いで、試験片から第1剥離シート11を剥離し、その後、試験片の他方面を、質量2kgのゴムローラーを用いて、第1被着体5の第1表面7に貼り合せた(ゴムローラー通過速度300mm/分、通過回数2回)。その後、それらを23±℃、の雰囲気下に30分間静置した。その後、第1被着体5から試験片の一端を約5mm剥がして180°角に折り返し、補助紙(幅30mm)を貼り付けた。引張試験機を用いて、補助紙の一端を上部の留金に挟み、第1被着体5を下部の留金に挟み、23±2℃の雰囲気下で、300mm/分の速度で180°方向に試験片を連続して引き剥がし、応力を測定し、これを粘着力(粘着強度)とした。
硬化剤層3の粘着力も、主剤層2の粘着力と同様に処理して、粘着力(粘着強度)を得た。
なお、比較例1の主剤層2の粘着力は、粘着性が低いため、粘着力を測定できなかった。比較例1の硬化剤層3の粘着力は、粘着性および保形性が低いため、粘着力を測定できなかった。
<仮固定性>
粘接着シート1の仮固定性を、以下の方法で測定した。
ステンレス製(SUS304)で、円柱形状(サイズ:直径12.7mm、高さ38.0mm)を有する第1被着体5および第2被着体6を準備した。第1被着体5の第1表面7、および、第2被着体6の第2表面8のそれぞれを、360番の耐水研磨紙にて均一に研磨し、次いで、酢酸エチルを染み込ませた布で洗浄し、室温で乾燥させた。
主剤層2および硬化剤層3のそれぞれを、幅20mm、長さ20mmにカットした。
図1に示す第1剥離シート11を主剤層2の他方面から剥離し、次いで、図2Aに示すように、主剤層2を第1表面7に貼り合わせた。
別途、図1に示す第4剥離シート14を硬化剤層3の一方面から剥離し、次いで、図2Aに示すように、硬化剤層3を第2表面8に貼り合わせた。
その後、第2剥離シート12を、主剤層2の一方面から剥離した。
また、第3剥離シート13を硬化剤層3の他方面から剥離した。
その後、図2Bに示すように、主剤層2の一方面と、硬化剤層3の他方面とを貼り合わせ、続いて、主剤層2および硬化剤層3を0.3MPaで圧着し、室温で10分静置した。その後、第1被着体5および第2被着体6に触れてみて、下記の基準で仮固定性を評価した。
〇:第1被着体5および第2被着体6同士がずれない。
×:第1被着体5および第2被着体6同士がずれた。
<接着強度>
粘接着シート1の接着強度(接着力)を、以下の方法で測定した。
上記した「<仮固定性>」の評価と同様にして、主剤層2および硬化剤層3を0.3MPaで圧着し、その後、90℃で、1時間加熱し、その後、さらに、150℃で3時間加熱した。
その後、第1被着体5および第2被着体6を、互いに遠ざかる方向(主剤層2および硬化剤層3の厚み方向)に引っ張り、その時の最大応力を測定した。最大応力を、主剤層2および硬化剤層3の接着面積(つまり、第1表面7の面積)(126.7mm2)で除して、引張強度とした。なお、剥離モード(剥離状態)は、実施例1~比較例2のいずれも、硬化体層4における「凝集破壊」であった。
<タック残り(接着信頼性)>
上記した「<接着強度>」で剥離後の評価と同様にして、硬化体層4を指で触れてみて、下記の基準に基づいて、タック残り(接着信頼性)を評価した。
〇:タックがなかった。
×:タックがあった。