JP2014238944A - リチウムイオン二次電池用の正極及びその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用の正極及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大電流特性(レート特性)に優れたリチウムイオン二次電池用の正極と、それを用いたリチウムイオン二次電池を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池用の正極は、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを有する正極合剤層を正極集電体に設けたリチウムイオン二次電池用の正極であって、その導電剤が少なくともカーボンナノチューブを含み、結着剤がアクリル系結着剤であることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用の正極及びその製造方法、並びにその正極を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、各種携帯情報機器や電気機器、電動工具等に用いる小型電源から、電気自動車や電力貯蔵等に用いる大型電源まで、その用途は広がりつつある。これらの用途を問わず、リチウムイオン二次電池には、大きな電流でも高い容量を発現する、あるいは電圧の低下が小さい等の大電流特性、いわゆるレート特性に優れることが求められている。
リチウムイオン二次電池の正極は、リチウムイオンと可逆的に反応する正極活物質を有する。この正極活物質には一般的に、コバルト酸リチウム等の、リチウムと遷移金属との化合物(酸化物)が用いられている。これらの正極活物質は通常粉状で、電子伝導性が低く抵抗が高い。このため、正極には、電気抵抗を低減するための黒鉛やカーボンブラック等の導電剤と、これらの活物質や導電剤の粒子を結着するためのポリビニリデンフロライド(PVDF)等の結着剤を有する。一般的なリチウムイオン二次電池の正極は、これら正極活物質、導電剤及び結着剤を含む正極合剤層を、アルミニウム箔等の正極集電体上に設けたものである。
最近、従来の正極活物質より高い容量を発現するLiMOとLiMO(Mは遷移金属)とが固溶した層状固溶体酸化物や、あるいはより高い安全性が期待できる通称オリビン酸化物(LiMPO)に代表されるポリアニオン化合物等の、電子伝導性がさらに小さい正極活物質が用いられ始めている。
したがって、レート特性を考慮して、正極の導電性を確保し高めることが重要である。しかし、そのために正極中の導電剤の比率を高めることは、正極活物質の比率が減り容量が低下するため好ましくない。
導電剤として、サブミクロン径の炭素繊維や、さらにナノオーダーの径を有するカーボンナノチューブ(CNT)等が注目されている。これらの繊維は黒鉛粉やカーボンブラックに比べアスペクト比が高いため、少量でも正極活物質間や集電体との間を電気的に架橋し、正極の電気抵抗を低減させることが期待されている。例えば、(特許文献1)、(特許文献2)及び(特許文献3)には、正極にCNTを含有するリチウムイオン二次電池が開示されている。
しかし、炭素繊維や、特にCNTは、繊維同士が絡み合う等により、凝集体を形成しやすい性質がある。CNTの機能を十分に発現させるためには、これらを正極合剤中で十分に分散させ、かつナノレベルの細い径を有するナノチューブと活物質とを結着させなければならない。これらの点で、CNTの機能を発現させ、正極のレート特性を高めることは未だ不十分であった。
特開平11−283629号公報 特開2003−77476号公報 特開2011−108552号公報
本発明の目的は、大電流特性(レート特性)に優れたリチウムイオン二次電池用の正極と、それを用いたリチウムイオン二次電池を得ることにある。
上記課題を解決するため、本発明のリチウムイオン二次電池用の正極は、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを有する正極合剤層を正極集電体に設けたリチウムイオン二次電池用の正極であって、その導電剤が少なくともカーボンナノチューブを含み、結着剤がアクリル系結着剤であることを特徴とする。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、上記の正極と、負極と、リチウム塩を非水溶媒に溶解した非水電解液とを有することを特徴とする。
本発明により、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池用の正極を得ることができる。また、その正極を用いることにより、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池の一実施形態の断面を模式的に示す図である。 実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池の10CA容量を示すグラフである。 実施例における正極の断面を模式的に示す図である。 比較例における正極の断面を模式的に示す図である。 実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池の10CA容量を示すグラフである。 実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池における10CA容量の塗工量依存性を示すグラフである。 実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池における10CA容量の塗工量依存性を示すグラフである。 実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池における10CA容量の塗工量依存性を示すグラフである。 実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池の10CA容量を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用の正極の特徴は、その導電剤として少なくともカーボンナノチューブ(CNT)を含み、かつアクリル系結着剤を有することである。この構成により、正極としての電子伝導性を高めることができ、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池用の正極を得ることができる。
カーボンナノチューブ(CNT)とは、グラファイトにおける炭素六角網面(グラフェン)を筒状に巻いた形状を有する炭素繊維の一種であり、径がナノオーダーであるためアスペクト比が極めて高く、電気伝導性が高い等の特徴を有する。
アクリル系結着剤とは、下記式(1)で表されるポリアクリル酸エステルもしくはポリメタクリル酸エステル(ポリアクリル酸エステルではRが水素であり、ポリメタクリル酸エステルではRがメチル基である)を基本骨格とするアクリル系樹脂を主成分とする結着剤を意味する。通常Rは、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基等の各種の炭化水素基である。あるいは、Rは−(CHCHO)H(nは1〜10程度)等であっても良い(すなわち、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)。
Figure 2014238944
結着剤は、複数種の上記基本骨格(アクリレート構造)から構成された樹脂であっても良い。また、下記式(2)に示すように、上記アクリレート構造を、結着剤の構造の一部に有する共重合体であっても良い。この場合、Xの構造は特に限定されず、スチレンやその誘導体等から選ばれる一種以上が挙げられる。また、式(2)に示すアクリル系結着剤の共重合比は、Xの種類によって異なるが、例えば、n:m=8:2〜1:2(質量比)とすることが好ましい。
Figure 2014238944
正極合剤層における結着剤の量は、CNTの分散性等を考慮して適宜設定することができる。好ましくは3重量%〜6重量%である。
本発明の正極における作用は次のように推定される。すなわち、本発明における正極合剤層中ではCNTの凝集が少なく、すなわち分散性が高く、さらにCNTと正極活物質との間の結着性が高いと推定される。このような作用により、CNTの機能を十分に発現させ、少量のCNTで正極の電子伝導性を高めることができると考えられる。
従来、リチウムイオン二次電池用の結着剤としては各種樹脂系が知られているが、下記式(3)の基本構造を有するPVDFが一般的に用いられている。
Figure 2014238944
PVDFは、その基本構造中に電気陰性度が高い極性原子のフッ素を多数含み、これがリチウムイオン伝導性に寄与していると推定される。この点、基本骨格にフッ素基を持たないアクリル系結着剤ではリチウムイオン伝導性がやや落ちる可能性がある。
一方、正極の作製においては、正極活物質及び導電剤を結着剤溶液中で撹拌分散する必要がある。少なくともCNTを適当な媒質中で分散する必要がある。この媒質は結着剤溶液であることが正極の作製の工数が少なくする観点から好ましい。すなわち、結着剤溶液中でCNTを分散し、この分散液に正極活物質等を添加し撹拌することが好ましい。CNTを分散させるには強力なせん断力が必要であり、従来の方法に従ってCNTと正極活物質を同時に分散させると、活物質がダメージを受ける恐れがある。そこで、結着剤の溶液に予めCNTを分散させ、その分散溶液に正極活物質を加えて正極合剤スラリーを調製することにより、各成分を均一に分散させることができる。
アクリル系結着剤溶液中でCNTを分散させた場合、同じ分散条件であれば、PVDF溶液に比べてCNTの凝集がより低減され、均一に分散することができる。
この作用は必ずしも明らかではないが、CNT表面はグラフェン層であって極性が小さく、このためPVDFに比べて、基本骨格中にフッ素基のないアクリル系樹脂の方がCNT表面との親和性が良いためと推定される。この性質により、同じせん断力であってもCNTの凝集が少なく分散性の高い正極合剤層を得ることができる。
さらに、アクリル系結着剤とCNT表面との親和性により、CNT表面への結着剤の濡れ性が良くなって良好な結着性が得られ、その結果ナノオーダーの径を有するCNTであっても活物質と強固に結着させることができる。
CNTの合成法は各種存在するが、例えば炭素電極のアーク放電により合成することが可能である。あるいは高温に保持した触媒に炭素源を供給し、合成することも可能である。具体的には、セラミックスや合金製の支持体表面に、Fe、Co、Ni、Mo等の金属ナノ粒子からなる触媒を坦持させる。触媒の原料としては、硝酸塩等の金属無機塩や有機塩の水溶液等がある。これらの溶液を支持体に接触させて乾燥させたり、あるいは高温の支持体に溶液を噴霧することで、触媒を坦持させることができる。この支持体を、例えば電気炉内で加熱しつつ、各種の炭化水素ガスを導入して触媒により反応させ、CNTを合成、成長させる。得られたCNTをさらに熱処理したり、あるいは酸処理することで、不純物を低減することも可能である。
本発明の正極に用いるCNTは特に限定されないが、上記の合成法ではその径が通常1nm以上のCNTが得られる。CNTの径が100nm以下であると、アスペクト比が高く少量で高い電子伝導性が得られる。また、CNTの長さは、長い方が多くの正極活物質を電気的に架橋することができるため好ましい。ただし、正極合剤スラリーを作製するまでのCNTの分散工程においてCNTが切断される場合がある。その観点から分散工程前のCNTの平均長さは20μm〜500μmであることが好ましい。そして、CNTを分散して正極合剤層を形成した状態でのCNTの平均長さは、20μm〜500μm、特に20μm〜200μmであることが好ましい。より好ましくは100μm〜200μmである。これは一般的に用いられる正極活物質の多くが、取扱や電池性能上その二次粒子径が1μmから20μm程度であり、この活物質の径よりも短いCNTでは導電性向上に対する効果が低下する可能性があるためである。本発明では、結着剤としてアクリル系結着剤を用いることにより、従来に比べて、より長尺状のCNTを均一に分散させることができ、正極の電子伝導性をさらに高めることができる。また、CNTの比表面積は50m/g〜500m/gであることが好ましく、250m/g〜500m/gであることがより好ましい。比表面積を高めることでCNTと活物質との接触点が増え、正極の電子伝導性がより高まることが期待できる。500m/gを超えると、CNT表面での副反応が増大する可能性がある。
また、リチウムイオン二次電池の導電剤として用いることから、その副反応を低減するためにCNTの純度は高いことが好ましく、特にCNT中の金属元素の成分は1重量%以下であることが好ましい。
アクリル系結着剤の製法は各種存在するが、一般に各種のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等のモノマーを重合反応させることで得ることができる。これらのモノマーと、重合開始剤とを、これらを溶解する溶媒等ともに、撹拌、加熱、冷却、ガス導入等の機能を付加したフラスコ等の反応容器内に導入し合成することができる。上記溶媒としては、種々の溶媒が適用可能であるが、正極合剤スラリーの分散溶媒であるNメチル2ピロリドン(NMP)を用いれば、得られた結着剤を分留する工程をある程度省くことができる。
本発明の正極に用いるアクリル系結着剤の分子量は特に限定されないが、その質量平均分子量が10ないし10であることが好ましい。10未満では結着剤として必要な強度が得られない恐れがあり、10を超えると粘性が高過ぎ、あるいは作製した正極の屈曲によりクラックが発生する等の問題が生ずる恐れがある。
正極合剤層におけるCNT量は、0.02重量%程度でも効果を得ることができる。0.1重量%以下でも効果を得ることができ、0.1重量%を超えて1重量%までは、CNT量に対し得られる効果が次第に低下する。したがって、好ましい範囲は0.02重量%〜1重量%である。1重量%を超えても良いが、凝集体が増加すること等によりそれ以上の効果が期待できない可能性がある。
導電剤としてCNTに加え他の導電剤を加えても良く、例えば、その径が数十nmから数百nmのカーボンブラック(CB)を加えることが好ましい。CBは個々の粒子がつながった房状のクラスターを形成するため、直線上に導電性を確保するCNTの機能を補完する効果が期待できる。
正極合剤層におけるCNTを含むこれらの導電剤の総量は、好ましくは0.02重量%〜6重量%、特に1重量%〜6重量%である。
導電剤の総量が6重量%を超えても良いが、導電剤が凝集しそれ以上の効果が期待できない可能性がある。
さらに、正極合剤層の塗工量や密度(空隙率)は適宜設定することができ、特に限定されるものではない。CNTはそのアスペクト比が高いことから、低密度(高い空隙率)であるほどその効果を発現し、空隙率が50%以上の正極合剤層であってもCNTの効果を得ることができる。無論、空隙率が25%程度の高密度な正極合剤層でもその効果を得ることができる。
また、CNTが高いアスペクト比を有するため、正極合剤層が厚い正極においてその効果をより発現し、例えば20mg/cm程度の高い塗工量であってもCNTによる効果を得ることができる。また、9mg/cm程度の薄い正極合剤層を有する正極であっても本発明の効果を得ることができる。
なお、上述の空隙率は、合剤層体積に占める空隙体積の比率であり、下記式で表されるように電極材料(正極活物質、導電剤及び結着剤)の占める体積比率の残部である。
Figure 2014238944
ここで、電極材料の占める体積比は下記式により求めることができる。
Figure 2014238944
正極における結着剤の種類や導電剤の種類は、リチウムイオン二次電池を不活性雰囲気内で解体して正極を取り出し、適切な前処理を施し機器分析等により知ることができる。
例えば、結着剤については、正極からアセトンやNMP等の溶媒を用いて結着剤を抽出し、NMRやFT−IR、あるいはゲル浸透クロマトグラフィー等により、その構造や官能基、分子量を知ることができる。
正極合剤層における導電剤の構成比率は、例えば、燃焼法による重量変化をもとに知ることができる。また、正極合剤層から結着剤を溶解除去した固形分を、例えば比重をもとに正極活物質と炭素質の導電剤とに分離することもできる。この導電剤については、SEMによる形状観察、TEM等による局所構造解析等により、その構成を知ることができる。
次に、本発明に係るリチウムイオン二次電池の実施形態について説明する。
リチウムイオン二次電池に用いる正極活物質は、特に限定されず、種々の物質が適用可能である。
具体的には、一般式LiMOで表記される層状型酸化物(Mは遷移金属)、一般式LiMnで表記されるスピネル型酸化物、LiMOとLiMOとが固溶した層状固溶体酸化物、オリビン酸化物(LiMPO)に代表される一般式Li(Aは、PO、SiO及びBOから選ばれる少なくとも1種である)で表されるポリアニオン化合物等を用いることができる。上記の化合物粒子の表面に導電性を付与するため炭素質の物質を付着させ、あるいは被覆したものを用いても良い。
これらの正極活物質と、CNTと、必要に応じて他の導電剤と、アクリル系結着剤のNMP等の溶液とを混合撹拌してCNTを分散させ、正極合剤スラリーを作製する。
正極合剤スラリー中でCNTを十分に分散させるためには、予め適当な媒質中でCNTを分散させることが好ましい。例えばアクリル系結着剤溶液や、その溶媒であるNMPにCNTを投入して分散させ、この分散液と他の電極材料とを混合撹拌することが好ましい。あるいは適当な媒質中にCNTを分散させた後、他の電極材料を加え混合して媒質を蒸発させ、その後アクリル系結着剤溶液に混合撹拌することもできる。
スラリーを作製する際の撹拌、分散過程では、各種のミキサー等を用いることができ、プラネタリーミキサー、ディスパーミキサー、自転・公転ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、及びこれらの複合機等を用いることができる。この際、撹拌過程よりCNTの分散過程においてより高いせん断力を加えることが好ましい。
この正極合剤スラリーをアルミニウム箔等の正極集電体に塗布し乾燥後、プレス等の成型や所望の大きさにする裁断を行い、正極を作製する。
リチウムイオン二次電池に用いる負極は、例えば以下の構成を有する。
負極活物質としては、特に限定されず、金属リチウム箔、各種の炭素材料、金属リチウム、チタン酸リチウムやスズ、シリコン等の酸化物、スズ、シリコン等のリチウムと合金化する金属、及びこれらの材料からなる複合材料を用いることができる。
粉状の負極活物質を用いる場合、負極は例えば次のように作製する。まず、所望の合剤組成となるように負極活物質、結着剤を溶解した溶液、及び必要に応じてカーボンブラック等の導電剤を秤量して混合し、負極合剤スラリーを作製する。このスラリーを銅箔等の負極集電体に塗布し乾燥させた後、プレス等の成型や所望の大きさにする裁断を行い、負極を作製する。
リチウム塩を非水溶媒に溶解した非水電解液についても特に限定されず、従来知られた非水電解液を用いることができる。
リチウム塩としては、LiClO、LiCFSO、LiPF、LiBF、LiAsF等のいずれかを単独でもしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
非水溶媒としては、各種環状カーボネートや鎖状カーボネート等を用いることができる。例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート及びジエチルカーボネート等、あるいはそのフッ素等を置換した誘導体が適用可能である。さらに、本発明の目的を妨げない範囲で、非水電解液に各種の添加剤を加えることができ、例えば、難燃性を付与するためにリン酸エステル等を添加することができる。
以上の正極、負極及び非水電解液と、セパレータとを用い、ボタン型、円筒型、角型、ラミネート型等の形状を有するリチウムイオン二次電池を作製する。
円筒型のリチウムイオン二次電池は、次のようにして作製することができる。すなわち、まず帯状に裁断した正極と負極の各々の未塗工部に電流を取り出すための端子を設ける。正極と負極との間にセパレータを挟み、これを円筒状に捲回して電極群を作製し、SUSやアルミニウム製の容器に収納する。この電極群を収納した容器に、乾燥空気中又は不活性ガス雰囲気中で非水電解液を注入し、容器を封止して円筒型リチウムイオン二次電池を作製することができる。
また、角形のリチウムイオン電池は例えば以下のようにして作製する。すなわち、上記の捲回工程において捲回軸を二軸とし、楕円形の電極群を作製する。円筒型リチウムイオン二次電池と同様に、角型容器にこれを収納し非水電解液を注入後、密封する。
また、捲回する代わりに、セパレータ、正極、セパレータ、負極、セパレータの順に積層した電極群を用いることもできる。
また、ラミネート型のリチウムイオン二次電池は例えば以下のようにして作製する。すなわち、上記の積層型の電極群を、ポリエチレンやポリプロピレン等の絶縁性シートで内張りした袋状のアルミラミネートシートに収納する。開口部から電極の端子が突き出た状態として非水電解液を注入後、開口部を封止する。
本発明のリチウムイオン二次電池の用途は特に限定されない。例えば、電気自動車やハイブリッド型電気自動車等の動力用電源や、運動エネルギーの少なくとも一部を回収するシステムを有するエレベータ等の産業用機器、各種業務用や家庭用の蓄電システム用の電源等、各種大型電源として用いることができる。
また、各種携帯型機器や情報機器、家庭用電気機器、電動工具等の各種小型電源としても用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(カーボンナノチューブ)
本実施例におけるカーボンナノチューブ(CNT)は、炭化水素ガスを鉄ナノ粒子触媒を用いて反応させ合成した、以下の2種を用いた。
CNT(I)として、平均径10nm、平均長さ500μm、比表面積350m/g、純度99%以上のカーボンナノチューブを供した。また、CNT(II)として、平均径13nm、平均長さ1μm、比表面積450m/g、純度99%以上のカーボンナノチューブを供した。
また、平均繊維径0.15μm、平均繊維長10μm、比表面積15m/gの気相成長炭素繊維(CF)を比較例として用いた。
(結着剤溶液)
本実施例におけるアクリル系結着剤には、モノマーとしてアクリル酸エステル(上述の式(1)においてRが炭化水素基であるもの)とポリエチレングリコールアクリレートを質量比3:2で用い、これらをNMP溶液中で共重合反応させ合成したものを用いた。その質量平均分子量は380000であった。結着剤溶液としては、NMPにこの結着剤を6重量%溶解したものを用いた。
比較例における結着剤溶液として、市販のPVDFのNMP溶液を用いた。
(正極の作製)
正極活物質として、粒子表面に炭素を付着させたオリビン系正極活物質である、LiFePO粉末を用いた。
まず、ホモジナイザーと超音波分散機を用いて、予め結着剤溶液中にCNTを分散した分散溶液を作製した。続いて、正極活物質と、カーボンブラック(CB)と、この分散溶液もしくは結着剤溶液とをディスパーミキサーにより混合した。この際、乾燥後の結着剤の重量比が6%となるように調整した。この正極合剤スラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)の片面に、所定の塗工量となるよう塗布乾燥後、16mm径に打ち抜き、プレス機により所定の密度(空隙率)となるよう圧縮成形し、正極を作製した。
(電池の作製)
作製した正極を用い、図1に模式的に示すボタン型リチウムイオン二次電池を作製した。図1に示すように、金属リチウム箔11、厚さ30μmの多孔質セパレータ12、及び正極13を、正極合剤層が金属リチウム箔に対向するように積層した。これを電池ケース14に納めて非水電解液を注液し、パッキン15を介して正極端子を兼ねる蓋16をかしめ、リチウムイオン二次電池を作製した。
非水電解液には、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びメチルエチルカーボネートの、体積比2:4:4の非水混合溶媒に、リチウム塩として六フッ化リン酸リチウムを1mol/dmの濃度で溶解したものを用いた。
(充放電試験)
作製したリチウムイオン二次電池の充放電試験を行った。
充電条件は、充電電流を時間率1/5CAで終止電圧3.8Vの6時間の定電流定電圧充電とした。充電後30分間開回路で放置した。放電条件は、放電電流を時間率1/5CAで終止電圧2Vの定電流放電とした。この充電と放電とを1サイクルとし、5サイクル充放電し、5サイクル目の放電容量を、1/5CAの放電容量とした。ついで、同条件による充電後、放電電流を時間率10CAで終止電圧2Vの定電流放電を行った。このときの放電容量を1/5CAの放電容量で除した値を10CA容量とした。
表1に、本実施例と比較例の電池名称、正極に用いている導電剤の種類とその正極合剤層における重量比、及び結着剤の種類を示す。表1の電池に用いた正極において、その正極合剤層の組成はいずれも、活物質:導電剤:結着剤が88:6:6の重量比であり、塗工量13mg/cm、空隙率51%である。電池A1、電池B1、電池C1は、いずれもCNTとアクリル系結着剤を用いた本発明のリチウムイオン二次電池である。比較例である電池M1は、導電剤としてCNTの代わりにCFを用いたリチウムイオン二次電池である。電池N1は、導電剤がすべてCBであるリチウムイオン二次電池である。電池P1は、結着剤がPVDFである以外は電池A1と同じリチウムイオン二次電池である。
Figure 2014238944
図2に、表1の各電池の10CA容量を示す。実施例の各電池は、比較例のいずれの電池よりも高い容量を示し、レート特性に優れる効果が確認された。図3に模式的に示すように、実施例では、正極集電体30上に正極合剤層31が形成され、その正極合剤層31において、長尺状のカーボンナノチューブ32が正極活物質33及びカーボンブラック34の混合物中に均一に分散されているため、正極活物質33が電気的に架橋され、正極の電子伝導性が高まると考えられる。これに対し比較例では、図4に示すように、正極集電体30上に形成された正極合剤層31Bにおいて、より短い炭素繊維35が正極活物質33及びカーボンブラック34の混合物中に分散されているが、炭素繊維35が絡み合って部分的に凝集しているため(図4中のA)、炭素繊維35と正極活物質33との密着が不十分となり、その結果10CA容量が低くなると考えられる。
さらに、実施例の中でも、電池A1は電池B1に比べて高い10CA容量を示した。本発明によれば、より長尺状のカーボンナノチューブ(電池A1)であっても、アクリル系結着剤と相まって均一に分散させることができるため、長尺状のカーボンナノチューブの機能が効果的に発揮され、正極の電子伝導性が向上したものと考えられる。
表2に、本実施例と比較例の電池名称、正極に用いている導電剤の種類とその正極合剤層における重量比、及び結着剤の種類を示す。表2の電池に用いた正極において、その正極合剤層の組成はいずれも、活物質:導電剤:結着剤が91:3:6の重量比であり、塗工量13mg/cm、空隙率53%である。電池A2、電池B2、電池C2は、いずれもCNTとアクリル系結着剤を用いた本発明のリチウムイオン二次電池である。比較例である電池M2は、導電剤としてCNTの代わりにCFを用いたリチウムイオン二次電池である。電池N2は、導電剤がすべてCBであるリチウムイオン二次電池である。電池P2は、結着剤がPVDFである以外は電池A2と同じリチウムイオン二次電池である。
Figure 2014238944
図5に、表2の各電池の10CA容量を示す。実施例の各電池は、比較例のいずれの電池よりも高い容量を示し、レート特性に優れる効果が確認された。また、カーボンナノチューブがより長い電池A2の方が、電池B2に比べて高い10CA容量を示した。
表3に、本実施例と比較例の電池名称、正極に用いている導電剤の種類とその正極合剤層における重量比を示す。表3の電池に用いた正極において、その正極合剤層の組成はいずれも、活物質:導電剤:アクリル系結着剤が88:6:6の重量比であり、空隙率は27%である。電池A3はCNTとアクリル系結着剤を用いた本発明のリチウムイオン二次電池である。電池M3は、導電剤としてCNTの代わりにCFを用いたリチウムイオン二次電池である。電池N3は、導電剤がすべてCBであるリチウムイオン二次電池である。
Figure 2014238944
図6に、表3の各電池の10CA容量の塗工量依存性を示す。ここで、塗工量19mg/cmの各電池はいずれも、10CAの放電電流では容量をほとんど発現しなかったことから、8CAの放電電流による容量を示した。実施例の電池A3は、比較例の電池M3と電池N3に比べ高い容量を示し、レート特性に優れる効果が確認された。
表4に、本実施例と比較例の電池名称、正極に用いている導電剤の種類とその正極合剤層における重量比を示す。表4の電池に用いた正極において、その正極合剤層の組成はいずれも、活物質:導電剤:アクリル系結着剤が91:3:6の重量比であり、空隙率は30%である。電池A4はCNTとアクリル系結着剤を用いた本発明のリチウムイオン二次電池である。電池M4は、導電剤としてCNTの代わりにCFを用いたリチウムイオン二次電池である。電池N4は、導電剤がすべてCBであるリチウムイオン二次電池である。
Figure 2014238944
図7に、表4の各電池の10CA容量の塗工量依存性を示す。実施例の電池A4は、比較例の電池M4と電池N4に比べ高い容量を示し、レート特性に優れる効果が確認された。
表5に、本実施例と比較例の電池名称、正極に用いている導電剤の種類とその正極合剤層における重量比を示す。表5の電池に用いた正極において、その正極合剤層の組成はいずれも、活物質:導電剤:アクリル系結着剤が93:1:6の重量比であり、空隙率は32%である。電池A5はCNTとアクリル系結着剤を用いた本発明のリチウムイオン二次電池である。電池M5は、導電剤としてCNTの代わりにCFを用いたリチウムイオン二次電池である。電池N5は、導電剤がすべてCBであるリチウムイオン二次電池である。
Figure 2014238944
図8に、表5の各電池の10CA容量の塗工量依存性を示す。実施例の電池A5は、比較例の電池M5と電池N5に比べ高い容量を示し、レート特性に優れる効果が確認された。
表6に、本実施例と比較例の電池名称、正極に用いている導電剤の種類とその正極合剤層における重量比を示す。表6の電池に用いた正極において、その正極合剤層の組成はいずれも、活物質:導電剤:アクリル系結着剤が93.98:0.02:6の重量比であり、塗工量は13mg/cm、空隙率は33%である。電池A6はCNTとアクリル系結着剤を用いた本発明のリチウムイオン二次電池である。電池N6は、導電剤がすべてCBであるリチウムイオン二位電池である。
Figure 2014238944
図9に、表6の各電池の10CA容量を示す。電池A6は電池N6に比べて高い容量を示し、レート特性に優れる効果が確認された。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
11 金属リチウム箔
12 多孔質セパレータ
13 正極
14 電池ケース
15 パッキン
16 蓋
30 正極集電体
31 正極合剤層
31B 正極合剤層
32 カーボンナノチューブ
33 正極活物質
34 カーボンブラック
35 炭素繊維

Claims (7)

  1. 正極活物質と、導電剤と、結着剤とを有する正極合剤層を正極集電体に設けたリチウムイオン二次電池用の正極であって、前記導電剤が少なくともカーボンナノチューブを含み、前記結着剤がアクリル系結着剤である前記正極。
  2. カーボンナノチューブの平均長さが20μm〜500μmであり、平均径が1nm〜100nmであり、比表面積が250m/g〜500m/gである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の正極。
  3. 正極合剤層におけるカーボンナノチューブの量が、0.02重量%〜1重量%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の正極。
  4. 正極合剤層における導電剤の量が、1重量%〜6重量%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の正極。
  5. 正極合剤層における結着剤の量が、3重量%〜6重量%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の正極。
  6. 結着剤の溶液に予めカーボンナノチューブを分散させた分散溶液に、正極活物質を加えて正極合剤スラリーを調製し、前記正極合剤スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥させる請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用の正極の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の正極と、負極と、リチウム塩を非水溶媒に溶解した非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池。
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