JP2014237776A - 油中水型エマルション接着剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】油相と水相とからなり、前記油相が少なくとも有機溶剤及び乳化剤を含み、前記水相が少なくとも水及び高分子化合物を含み、かつ前記水相の粒径が体積基準の平均径で1〜100μmである、油中水型エマルション接着剤である。
【選択図】なし
Description
任意の大きさ・形の冊子または封書を、印刷後の後処理装置(フィニッシャー)、たとえば封書作製装置、冊子作製装置などの機械を用いて、インラインで処理するには、(1)短時間での接着性の発現(短いセットタイム)、(2)開放放置安定性、及び(3)保存安定性の確保、が課題となる。
さらに、接着剤を用紙に塗工し貼り合わせた後に用紙を搬送する必要があるため、塗工後は乾きやすく、短時間で接着する必要がある。
接着時間を短縮するために、ホットメルト型接着剤、活性光線硬化型接着剤等を用いることも知られており、接着剤塗工後に加熱、活性光線の照射等のエネルギーを与えることで接着時間を短縮している。特許文献4は、ホットメルト型接着剤を用いて製本を行う製本装置を開示する。
また、セットタイムの短時間化を図ろうと、接着剤中の有効成分の比率を高くしていくと、ますます皮膜形成しやすくなる。
さらに、ホットメルト、エネルギー硬化型接着剤では、接着されるためにエネルギーが必要となるため、消費電力が著しく上昇し、環境保護の観点から好ましくない。加熱や活性光線の照射等の機構を備えるために装置が大型化しやすいという問題もある。
(1)油相と水相とからなり、
前記油相が少なくとも有機溶剤及び乳化剤を含み、
前記水相が少なくとも水及び高分子化合物を含み、かつ
前記水相の粒径が体積基準の平均径で1〜100μmである、油中水型エマルション接着剤。
水相の粒径を1〜100μmとすることで、紙表面の微細な間隙よりも水相粒子の方が大きくなり、水相粒子は紙内部に浸透することなく紙表面に残りやすくなる。また、水相の粒径が1〜100μmであることで、接着に際し2枚の紙を貼り合わせたとき、水相粒子1つ1つが接着される紙と紙の間に挟まれる構成になる。この構成では紙―水相粒子―紙間に油相が介在しないため、接着が発現しやすく、セットタイムが短くなる。逆に、水相の粒径が1μm未満であると、紙―水相粒子―紙間に油相が介在しやすくなり、紙−油相−水相粒子−油相−水相粒子−油相−紙などのような配置になりやすいため、当該油相が水相による紙と紙との接着を阻害し、接着が発現しにくくセットタイムが長くなる。すなわち、水相の粒径は短いセットタイムを確保する上で重要なパラメータである。
なお、水相の粒径(1〜100μm)の意義などについては後述する。
以下に、本発明の油中水型エマルション接着剤について詳述する。
本発明の油中水型エマルション接着剤において、水相は少なくとも水及び高分子化合物を含む。
水相の水分量は水相全質量に対し40〜90質量%であることが好ましい。水分量の範囲を上記範囲とすることで接着性に優れ、セットタイムを短くすることができる。紙種によっては、水分量が90質量%を超える場合、水分除去に時間がかかりセットタイムが遅くなることがある。また、水分量が40質量%未満の場合、水による紙繊維の膨潤が期待できず紙繊維の表面積(接着面積)が増えないため接着しにくくなりセットタイムが遅くなることがある。水相の水分量は75〜85質量%であることがより好ましい。水相中の水分量は水相全質量に対し75〜85質量%であると、セットタイムに加えて放置後の流動性も確保できるようになり、開放放置安定性が特に良好になる。
本発明では、異なる種類の高分子化合物を併用してもよい。例えば、PVPやPVAを組み合わせて使用してもよい。
また、高分子化合物は、接着剤全量に対しては、接着剤皮膜の強度を確保する観点から、10質量%以上含まれていることが好ましく、20質量%以上含まれていることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに一層好ましい。接着剤全量に対し、10質量%未満であると、環境によってはセットタイムが遅くなることある。また、高分子化合物の含有量の上限値については、油相と水相が形成可能であればよいが、接着剤全量に対する高分子化合物の割合が高くなるほど高分子化合物を水に混合する際に手間がかかるために、接着剤全量に対し55質量%以下であることが好ましい。
なお、本発明において、体積基準の平均径とは、体積基準の粒度分布における平均径のことであり、例えばレーザー回折/散乱式粒子径分布測定法により測定することができる。
シェアを加える方法としては撹拌羽根や撹拌子を回転させることで生じる剪断作用を利用する方法、高圧流体を狭いギャップを通して流し,その際受ける強い剪断作用を利用する方法などがある。
本発明において、水相の粒径は、例えば、接着剤の成分や乳化条件を適宜設定することで制御することができる。そして、水相の粒径をそのように制御することで上記範囲内とすることができる。例えば、接着剤の油相粘度を高くすることで粒径を小さくすることができる。また、乳化を撹拌で行う場合、撹拌速度を速くしたり、撹拌時間を長くしたりすることで粒径を小さくすることができる。
本発明の油中水型エマルション接着剤において、油相は少なくとも有機溶剤及び乳化剤を含む。
有機溶剤としては、水相及び油相に相分離させる観点から、水への溶解度が、25℃において0.5質量%以下のものが好ましく、0.1質量%以下のものがより好ましい。有機溶剤の沸点は150〜350℃のものが好ましい。沸点は、溶剤の蒸発しやすさの目安となる値であり、沸点が低いほど蒸発しやすく、高いほど蒸発しにくい傾向がある。接着剤の油相は、水相粒子の外相となり、水相からの水分の蒸発を抑制する機能を奏することが必要である。したがって、油相の溶剤としては、沸点が150℃以上の溶剤を選択することで、油相の蒸発がしにくくなり、水相からの水分の蒸発を抑制することができる。
一方で、油相の溶剤は、紙に塗工した場合には、紙に浸透および蒸発することで素早く飛散するものが好ましい。接着剤が紙に塗工された際に、油相の溶剤の飛散が速ければ、エマルションの崩壊を促進できるため、接着剤のセットタイムを短くする効果が得られる。油相の溶剤として、沸点が350℃以下であるものを選択することで、開放放置した場合の溶剤の蒸発を抑えつつ、紙に塗工した際には飛散しやすい、セットタイムの短い接着剤を得ることができる。
市販されている高分子分散剤の具体例としては、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、22000、24000、28000」(いずれも商品名)、共栄社化学株式会社製「フローレンDOPA−15B」(商品名)、楠本化成株式会社製「DA−703−50、DA−7300、DA234」(いずれも商品名)、BykChemie社製「Disperbyk−101」(商品名)、川研ファインケミカル株式会社製「ヒノアクト」(商品名)、ISP社製「Antaron V−216、Ganex V−216、Antaron V−220、Ganex V−220」(いずれも商品名)、Induchem社製「Unimer U−151、Unimer U−15」(いずれも商品名)等が挙げられる。
ウレタンアクリルポリマーとはウレタン基を有するアクリルポリマーを意味する。
ウレタンアクリルポリマーの分子量は10000〜100000程度であることが好ましく、アクリルポリマー(主鎖である幹ポリマー)と、ウレタン基部(側鎖である枝ポリマー)との質量比率は、60:40〜99:1であることが好ましく、70:30〜99:1であることがより好ましい。
アクリル系ポリマーにおける共重合体部の質量は、共重合に使用したモノマーの合計質量であり、導入されたウレタン基部の質量とは、反応に使用したアミノアルコールと多価イソシアネート化合物の質量であり、多価アルコールを使用した場合はこれも加えた合計質量である。
より詳細には、たとえば、ポリアルキレンイミンのような多数の窒素原子を含有する主鎖を備え、かつ、この窒素原子を介してアミド結合した側鎖を複数備える化合物であって、この側鎖がポリエステル鎖であるようなポリマーが例示できる。こうしたポリマーは、たとえば、特開平5−177123号公報(米国特許第4,645,611号明細書)に開示されている。
主鎖である含窒素ポリマーの重量平均分子量は、60万以下であることが好ましく、複数の側鎖を備えることが好ましく、側鎖の重合度は3〜80程度であることが好ましいが、いずれもこれらに限定されることはない。主鎖は、ポリエチレンイミンのようなポリアルキレンイミンであることが好ましく、ポリアルキレンイミンは、直鎖であっても枝分れ鎖であってもよく、枝分れ鎖であることがより好ましい。側鎖は、(カルボニル−C3〜C6−アルキレンオキシ基)を単位とする重合体であることが好ましく、アミドまたは塩架橋基によって主査に結合していることが好ましい。 好ましく使用できる市販品としては、日本ルーブリゾール(株)製ソルスパース28000、ソルスパース11200、ソルスパース13940等が挙げられる。
ウレタンアクリルポリマー、ポリエステル側鎖を有する含窒素グラフトポリマーを使用することでセットタイムをより一層短くすることができる。
水相:油相は80:20よりも油相が多くなると保存安定性が悪くなったり、紙に油相が滲むことで油染みが目立ったりする。水相:油相が95:5よりも油相が少なくなると保存安定性が悪くなったり、塗工ムラが目立ったりする。
接着剤の用途についても、特に限定されない。後述するように印刷後の後処理用として使用することが好ましいが、印刷前に使用してもよいし、印刷物以外に用いてもよい。
冊子作製や封書作製をするために、後処理装置(フィニッシャー)に塗工機構を組み込み、インラインで必要箇所にパターニングして接着剤を塗工することもできる。
上記のように本発明に係る接着剤は、塗工後に迅速に、半乾き状態でも接着性ないし粘着性を発現するため、せん断接着力において優れている。したがって、フィニッシャーなどの装置と組み合わせて使用した場合でも、接着後の紙の搬送時に接着箇所がずれにくくなる。なお、フィニッシャーとは、パンチ加工、ホチキス留め、紙折り、製本などの印刷後の後処理をまとめて行う機械をいう。
各実施例・比較例(比較例4を除く)において、水相及び油相のそれぞれについて表1〜3に記載の成分及び含有率となるように各成分を混合し、水相については70℃に加温して撹拌し、油相についてはそのまま撹拌し、水相成分及び油相成分を調製した。
各成分の詳細を以下に示す。
(水相)
PVA1:(株)クラレ製、PVA405
PVA2:(株)クラレ製、PVA217
PVP:和光純薬工業(株)製、K90
澱粉:ワキシーコーン
水:イオン交換水
(油相)
乳化剤1:日光ケミカルズ(株)製、Hexaglyn PR−15
乳化剤2:ポリエステル側鎖を有する含窒素グラフトポリマー(日本ルーブリゾール(株)製、ソルスパース11200)
乳化剤3:日光ケミカルズ(株)製、Decaglyn 5−O
乳化剤4:ウレタンアクリルポリマー1(下記参照)
乳化剤5:ウレタンアクリルポリマー2(下記参照)
粘度調整剤:日本ゼオン(株)製、Quiontone CX495
ゲル化剤:楠本化成(株)製、ディスパロン308
溶剤1:花王(株)製、ラウリル酸ヘキシル
溶剤2:JX日鉱日石エネルギー(株)製、AF7
(1)まず、300mlの四つ口フラスコに、AF−7(ナフテン系溶剤;JX日鉱日石エネルギー(株)製)75gを仕込み、窒素ガスを通気し攪拌しながら、110℃まで昇温した。次いで、温度を110℃に保ちながら表1に示す組成の各単量体混合物にAF−7 16.7g、パーブチル O(t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート;日本油脂(株)製)2gの混合物を3時間かけて滴下した。その後、110℃に保ちながら1時間および2時間後に、パーブチル Oを各0.2g添加した。さらに110℃で1時間熟成を行い、AF−7 10.6gで希釈して、不揮発分50%の無色透明の幹ポリマーaの溶液を得た。
他の幹ポリマーbの溶液も同様にして、表1に示す組成で合成した。なお、表1の一番左列の括弧内の「C12」などの表記は、各単量体の炭素数が12であることを示す。PSMAにおいては、(C16/C18)は、パルミチル基及びステアリル基の炭素数がそれぞれ16、18であることを示す。
35.05(g)のジエタノールアミンを50〜60℃で攪拌しながら、2−エチルヘキシルアクリレート61.4gを滴下し、120℃に加温し、120℃を2時間維持することで調製した。調整したマイケル付加物のうち4.0gを使用した。
A:100ml容器に混合成分を25g投入し、2000rpmの回転速度で5分間撹拌した。
B:100ml容器に混合成分を25g投入し、2000rpmの回転速度で3分間撹拌した。
C:100ml容器に混合成分を25g投入し、500rpmの回転速度で3分間撹拌した。
D:100ml容器に混合成分を25g投入し、100rpmの回転速度で1分間撹拌した。
なお、A〜Cは卓上式サンドミル(関西ペイント株式会社製)を使用し、DはスリーワンモーターBL1200(新東科学株式会社製)を使用した。
(1)粘度
TAインツルメント社製レオメーターARG2を用いて、水相、油相、及び接着剤の23℃における粘度を測定し、これを粘度とした。
なお、水相および接着剤の粘度測定ではφ20mm 1°のコーンを使用し、シェアレート100S−1における粘度を求めた。油相の粘度測定ではφ40mm 2°のコーンを使用し、シェアストレス10Paにおける粘度を求めた。
接着剤0.2gをラウリル酸ヘキシルで希釈して2gとした。この希釈液50μLをサンプリングし、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA950に投入し、体積基準の粒度分布における平均径を得た。なお、測定は循環で行い循環経路の溶媒にはオレイン酸メチルを使用した。
ガラス瓶(容積:5ml)に接着剤を9割充填密封し、70℃環境に放置した。放置してから、3日後、1週間後及び2週間後に接着剤の分離の有無を目視で観察し、以下の基準で判定した。
◎・・・70℃2週間放置で分離なし
○・・・70℃1週間放置で分離なし
△・・・70℃3日放置で分離なし
×・・・70℃3日放置で分離あり
金属板表面に接着剤を塗工し、直径1cm、高さ1mmの円柱状の塗膜を形成し、23℃50%環境に24時間放置した。放置後の塗膜の状態を目視で観察し、以下の基準で判定した。
○・・・皮膜形成なし、流動性あり
△・・・皮膜形成なし、流動性なし
×・・・皮膜形成あり、流動性なし
紙基材として、日本製紙(株)製、NPI Next IJ90を15mm×100mmに断裁した。その紙片に対し、ワイヤーバー(P0.2H21S)を用いて長手方向半分(15mm×50mm)に接着剤を塗工した。塗工直後に塗工面を内側にして半分に折り、折った紙片の上を7mm幅のローラーを押圧しながら回転させることで加圧した。加圧力は128kgf(1255.2N)とした。加圧後、剥離の操作を行い、紙基材の破れを確認した。加圧から紙基材が破れるまでに要する時間をセットタイムとし、以下の基準で判定した。
◎・・・セットタイム2秒未満
○・・・セットタイム2秒以上10秒未満
△・・・セットタイム10秒以上15秒以下
×・・・セットタイム15秒超
比較例1〜5においてはいずれも、保存安定性、開放放置安定性、及びセットタイムの評価すべてにおいて同時に良好な結果を得ることができなかった。
Claims (3)
- 油相と水相とからなり、
前記油相が少なくとも有機溶剤及び乳化剤を含み、
前記水相が少なくとも水及び高分子化合物を含み、かつ
前記水相の粒径が体積基準の平均径で1〜100μmである、油中水型エマルション接着剤。 - 前記水相の体積基準の平均径が10〜30μmである、請求項1に記載の油中水型エマルション接着剤。
- 前記水相の水分量が75〜85質量%である、請求項1又は2に記載の油中水型エマルション接着剤。
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