JP2014233969A - 繊維質成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
揮発性成分が含まれない材料を用いて2つの層を接着できる技術としては、下記特許文献1及び下記特許文献2が知られている。
一方、特許文献2には、基材層と表皮層とを接着するに際して、基材層に含まれた熱可塑性樹脂を用いて両者を接着したボード成形体が開示されている。この方法は、基材層内に含まれた熱可塑性樹脂を用いて表皮層を接着しており、繊維質の層同士を接着できる点で優れている。しかしながら、更に強固な接着性が求められている。
前記基材層は、植物性繊維と、前記植物性繊維を結着している第1のバインダと、を含み、
前記表皮層は、樹脂繊維と、前記樹脂繊維を結着している第2のバインダと、を含み、
前記第2のバインダは、変性熱可塑性樹脂を含むことを要旨とする。
前記第2のバインダは、非変性オレフィン樹脂を含み、
前記変性熱可塑性樹脂が変性オレフィン樹脂であることを要旨とする。
このように構成することで、植物性材料を含んだ繊維質の基材層と、樹脂繊維を含んだ繊維質の表皮層とを、揮発性成分を含んだ接着剤を用いることなく接着できる。即ち、表皮層の樹脂繊維を結着する第2のバインダを利用して、基材層と表皮層とを接着できる。
このように構成することで、表皮層を構成する非変性オレフィン樹脂は、基材層を構成する非変性オレフィン樹脂に対して親和性を発揮できる。更に、表皮層を構成する変性オレフィン樹脂は、基材層を構成する植物性繊維に対して親和性を発揮できる。そして、表皮層を構成する材料が、基材層を構成する材料に対して親和性を有することで、両者をより強固に接着できる。
本発明の繊維質成形体(1)は、基材層(3)とその一面に接着された表皮層(5)と、を備える(図1参照)。
このうち、基材層(3)は、通常、表皮層(5)に対して相対的に厚く形成され、表皮層(5)を支持する層である。また、基材層(3)は、植物性繊維(7)と、この植物性繊維(7)を結着している第1のバインダ(9)と、を含んでいる。
第1のバインダ(9)としては、通常、熱可塑性樹脂が選択される。このような熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、ポリオレフィン樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等のポリエチレン樹脂が挙げられる。これらのポリエチレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がエチレンに由来する単位の樹脂である。更に、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のポリプロピレン樹脂が挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がプロピレンに由来する単位の樹脂である。
この表皮層(5)は、樹脂繊維(11)と、この樹脂繊維(11)を結着している第2のバインダ(13)と、を含む。
このうち、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、各種ナイロン樹脂等が挙げられる。更に、アクリル繊維用樹脂としては、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルと他の単量体との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等が挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等が挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は、全構成単位数のうちの50%以上がオレフィンに由来する単位の樹脂である。
この第2のバインダ(13)は、変性熱可塑性樹脂を含む。変性熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂を変性した樹脂であり、通常、変性によって未変性熱可塑性樹脂に極性基が導入されている。
例えば、後述するように、第1のバインダ(9)としてポリプロピレン樹脂を選択し、第2のバインダ(13)の変性熱可塑性樹脂として酸変性ポリプロピレン樹脂を選択したとする。この場合、酸変性ポリプロピレン樹脂の変性基は、基材層(3)の植物性繊維(7)に高い親和性を発揮できる。加えて、酸変性ポリプロピレン樹脂の主鎖は、基材層(3)の第1のバインダ(9)に対して高い親和性を発揮できる。このように、表皮層(5)中の第2のバインダ(13)に含まれた変性熱可塑性樹脂が、基材層(3)の各構成材料に対して高い親和性を発揮できることで、基材層(3)と表皮層(5)とを更に強固に接着できる。
また、基材層(3)は、植物性繊維(7)及び第1のバインダ(9)以外にも、他の材料を含むことができる。他の材料としては、変性熱可塑性樹脂が挙げられる。変性熱可塑性樹脂としては、第2のバインダ(13)に含まれる変性熱可塑性樹脂を用いることができる。より具体的には、第1のバインダ(9)として、ポリオレフィン樹脂を用いる場合、基材層(3)には、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が含まれてもよい。
即ち、基材層(3)となる基材層用部材(23)と、表皮層(5)となる表皮層用部材(25)と、を用意する。
このうち、基材層用部材(23)には、植物性繊維(7)が第1のバインダ(9)によって結着されて板状とされたボードを用いることができる。このようなボードは、植物性繊維(7)と、溶融されて第1のバインダとなるバインダ繊維(9A)と、が含まれたウェブやマット(図3の符号57)を加熱・圧縮して、バインダ繊維(9A)を溶融した後、固化させることで得ることができる(図2及び図3参照)。また、上記ウェブは必要に応じて複層枚を積層して用いることができる。更に、複数枚のウェブを積層して用いる場合には、複数枚のウェブを重ねた状態でニードルパンチにより一体化したマット(交絡物)として用いることができる。
[1]繊維質成形体1の製造
〈1〉実施例1
(1)基材層用部材23の調製
植物性繊維7としてケナフ繊維(平均繊維長70mm)を用いた。
バインダ繊維9A(第1のバインダとなる)としてポリプロピレン樹脂繊維(6dtex、平均繊維長51mm)を用いた。
これらの植物性繊維7とバインダ繊維9Aとを、質量比40:60となるように混繊して混合繊維50とした。その後、図2に示すように、混合繊維50をマット製造装置51に供給した。マット製造装置51では、2機のエアレイ装置53A及び53Bを用いて、混合繊維50を第1ウェブ55A及び第2ウェブ55Bに成形した後、これらのウェブを積層・交絡してマット57を製造した。具体的には、第1繊維供給部59A及び第2繊維供給部59Bから、第1エアレイ装置53A及び第2エアレイ装置53Bに、混合繊維50を各々連続的に供給した。その後、所定の速度で回動するコンベア上に繊維を堆積させて第1ウェブ55Aと第2ウェブ55Bとを形成した。次いで、これらのウェブを積層して積層ウェブ61を形成した後、交絡手段(ニードルパンチ装置)63を用いて、積層ウェブ61を交絡した。こうして、目付1.2kg/m2の連続マットを得た。その後、連続マットをカッター65により裁断してマット57を得た。
樹脂繊維11としてポリエチレンテレフタレート樹脂繊維(3dtex、平均繊維長51mm)を用いた。
バインダ繊維13A(第2のバインダとなる)として、ポリプロピレン樹脂と酸変性ポリプロピレン樹脂(三菱化学株式会社)とが、質量比95:5で混合された変性熱可塑性樹脂を含んだ混合樹脂繊維(3dtex、平均繊維長51mm)を用いた。
これらの樹脂繊維11とバインダ繊維13Aとを、質量比80:20となるように混繊して混合繊維70とした。その後、図4に示すように、混合繊維70を、表皮層用部材を製造する装置71の繊維供給部73に投入した。混合繊維70は繊維供給部73からカード機75へ連続的に供給されてウェブ77にされた。その後、このウェブ77は交絡手段(ニードルパンチ装置)79で交絡され、次いで、カッター81により裁断されて、目付110g/m2の表皮層用部材25が得られた。
図5に示すように、上記(2)で得られた表皮層用部材25をプレス金型83の上型にセットした。そして、上記(1)で得られた基材層用部材23を、加熱装置67を用いて内部温度が210℃となるように加熱した。その後、加熱した基材層用部材23を、表皮層用部材25がセットされたプレス金型83の下型にセットして、両者をプレス機内において冷却圧締して、平板形状の繊維質成形体1(板厚4mm)を得た。
(1)基材層用部材23の調製
植物性繊維7であるケナフ繊維と、バインダ繊維9A(第1のバインダとなる)であるポリプロピレン樹脂繊維との配合量を下記の通りに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2−6及び比較例1−3で用いる基材層用部材23を得た。
実施例2は、植物性繊維7とバインダ繊維9Aとの質量比が50:50
実施例3は、植物性繊維7とバインダ繊維9Aとの質量比が60:40
実施例4は、植物性繊維7とバインダ繊維9Aとの質量比が40:60
実施例5は、植物性繊維7とバインダ繊維9Aとの質量比が50:50
実施例6は、植物性繊維7とバインダ繊維9Aとの質量比が60:40
比較例1は、植物性繊維7とバインダ繊維9Aとの質量比が40:60
比較例2は、植物性繊維7とバインダ繊維9Aとの質量比が50:50
比較例3は、植物性繊維7とバインダ繊維9Aとの質量比が60:40
樹脂繊維11であるポリエチレンテレフタレート樹脂繊維と、バインダ繊維13A(第2のバインダとなる)である変性熱可塑性樹脂を含んだ混合樹脂繊維との配合量を下記の通りに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2−6及び比較例1−3で用いる表皮層用部材25を得た。
尚、比較例1−3では、バインダ繊維13Aを用いず、カード装置に樹脂繊維11のみを供給して得られたウェブを積層した積層体をニードルパンチによって交絡して表皮層用部材25とした。
実施例2は、樹脂繊維11とバインダ繊維13Aとの質量比が80:20
実施例3は、樹脂繊維11とバインダ繊維13Aとの質量比が80:20
実施例4は、樹脂繊維11とバインダ繊維13Aとの質量比が80:20
実施例5は、樹脂繊維11とバインダ繊維13Aとの質量比が90:10
実施例6は、樹脂繊維11とバインダ繊維13Aとの質量比が90:10
比較例1は、樹脂繊維11とバインダ繊維13Aとの質量比が90:10
比較例2は、樹脂繊維11とバインダ繊維13Aとの質量比が100:0
比較例3は、樹脂繊維11とバインダ繊維13Aとの質量比が100:0
上記(1)で得られた実施例2−6及び比較例1−3の基材層用部材23と、上記(2)で得られた実施例2−6及び比較例1−3の表皮層用部材25と、実施例1と同様に圧着して、実施例2−6及び比較例1−3の繊維質成形体1を得た。
(1)常態時の接着力測定
製造後、室温(23±2℃)且つ相対湿度50%RHの環境下しか経ていない実施例1−6及び比較例1−3の繊維質成形体から各々150mm×25mmの試験片を切り出した。得られた各試験片をインストロン型の引張試験機(株式会社島津製作所製、型式「AG−X10KN」)に取り付けた。そして、引張速さ200mm/分で表皮層5を剥がす際の剥離強さ(単位N/25mm)を接着力として測定した。その結果を表1に示した。
製造後、室温(23±2℃)及び相対湿度50%RHの環境下しか経ていない実施例1−6及び比較例1−3の繊維質成形体から各々150mm×25mmの試験片を切り出した。得られた各試験片を80±2℃の恒温槽中に400時間放置して、熱老化させた後、室温(23±2℃)且つ相対湿度50%RHの環境下で24時間放置した。この熱老化させた各試験片の一端の表皮層5を基材層3から剥がし、表皮層5を引張試験機のつかみに取り付けた。そして、引張速さ200mm/分で表皮層5を剥がす際の剥離強さ(単位N/25mm)を接着力として測定した。その結果を表1に示した。
製造後、室温(23±2℃)及び相対湿度50%RHの環境下しか経ていない実施例1−6及び比較例1−3の繊維質成形体から各々150mm×25mmの試験片を切り出した。得られた各試験片を50℃且つ相対湿度95±5%RHの恒温槽中に400時間放置して、湿老化させた後、室温(23±2℃)且つ相対湿度50%RHの環境下で24時間放置した。この熱老化させた各試験片の一端の表皮層5を基材層3から剥がし、表皮層5を引張試験機のつかみに取り付けた。そして、引張速さ200mm/分で表皮層5を剥がす際の剥離強さ(単位N/25mm)を接着力として測定した。その結果を表1に示した。
表1の結果より、比較例1−3の常態時の接着力が8.20〜19.8N/25mmであるのに対して、実施例4−6の常態時の接着力は25.4〜35.2N/25mmであり、その接着力は1.8〜3.1倍に飛躍的に向上されていることが分かる。即ち、表皮層に変性熱可塑性樹脂を含んだ第2のバインダを配合することにより、両者の接着力を飛躍的に向上させられることが分かる。この傾向は、熱老化後及び湿老化後にも維持されており、熱及び湿度に対する耐久性が高いことが分かる。
Claims (3)
- 基材層とその一面に接着された表皮層と、を備えた繊維質成形体であって、
前記基材層は、植物性繊維と、前記植物性繊維を結着している第1のバインダと、を含み、
前記表皮層は、樹脂繊維と、前記樹脂繊維を結着している第2のバインダと、を含み、
前記第2のバインダは、変性熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする繊維質成形体。 - 前記第1のバインダは、非変性オレフィン樹脂であり、
前記第2のバインダは、非変性オレフィン樹脂を含み、
前記変性熱可塑性樹脂が変性オレフィン樹脂である請求項1に記載の繊維質成形体。 - 前記表皮層に含まれる前記樹脂繊維が、ポリエステル繊維である請求項1又は2に記載の繊維質成形体。
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