JP2014232797A - 半導体前駆構造物およびそれを用いて得られるcigs半導体構造物ならびにそれを用いるcigs太陽電池とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】グレーデッドバンドギャップ構造および(220/204)に優先配向を有するCIGS半導体膜を備えたCIGS半導体構造物を短時間の加熱で形成し得ることが可能な半導体前駆構造物と、それにより得られたCIGS半導体構造物、およびこれを用いたCIGS太陽電池、ならびにその製法を提供する。【解決手段】支持体1と、裏面電極2と、半導体前駆体膜3とを有する半導体前駆構造物αにおいて、上記半導体前駆体膜3を、GaとSeとを含む層AとInとSeとを含む層Bとを少なくとも一組有する層と、銅とセレンとを含む層Cとを積層することにより形成し、上記半導体前駆体膜3が、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24?〜29?の範囲に存在する第一のピークP1と、42?〜47?の範囲に存在する第二のピークP2とを有し、これらのピーク強度比(P2/P1)が0.5以上5以下であるようにした。【選択図】図1
Description
本発明は、CIGS太陽電池に用いるCIGS半導体構造物を得るに際し、その前駆体である半導体前駆体構造物の半導体前駆体膜のセレン化インジウム、セレン化ガリウムおよびセレン化銅を特定の配向を有するように規定することにより、短時間の加熱で、結晶配向性およびバンド構造に優れるCIGS半導体膜を備えたCIGS半導体構造物とすることができるようにしたものであり、半導体前駆構造物およびそれを用いて得られるCIGS半導体構造物ならびにそれを用いるCIGS太陽電池とその製造方法に関する。
アモルファスシリコン太陽電池や化合物薄膜太陽電池に代表される薄膜型太陽電池は、従来の結晶型シリコン太陽電池と比較すると、材料コストや製造コストの大幅な削減が可能である。このため、近年、これらの研究開発が急速に進められている。なかでも、I族、III族、VI族の元素を構成物質とした化合物薄膜太陽電池であって、光吸収層が銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)合金からなるCIGS半導体膜であるCIGS太陽電池は、シリコンを全く使用せず、しかも優れた太陽光変換効率(以下「変換効率」とする)を有するため、薄膜太陽電池の中でも特に注目されている。
このようなCIGS太陽電池におけるCIGS半導体膜は、セレン化法、非真空プロセス(ナノ粒子)法、真空蒸着法等により作製することができる。真空蒸着法は、Cu、In、Ga、Seを各々別の蒸着源にて加熱し、蒸着により成膜する製法であり、各元素の吐出量を制御しながら成膜できるため、深さ方向に組成制御が可能であるという利点を有している。
すなわち、真空蒸着法によって、InとGaの組成比を制御しながらCIGS半導体膜を成膜することにより、CIGS半導体膜を任意のバンドギャッププロファイルを有するように形成することができる。例えば、pn接合面であるバッファ層側の端面から裏面電極側の端面に向かって、深さ方向にGa/(In+Ga)比が減少するようにCIGS半導体膜を成膜すると、グレーデッドバンドギャップが形成され、短絡電流と開放電圧が向上し、電子の取出し効率が上昇することが知られている。さらに、所定の深さ位置からバッファ層側に向かってGa濃度を高めるようにしてダブルグレーデッドバンドギャップを形成すると、pn接合面でのバンドギャップが拡大し、より高い変換効率を達成できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、CIGS半導体膜は、Cu(In1-x ,Gax )Se2の混晶からなるものであって、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが42°〜47°の範囲にピークが認められ、(220/204)に優先配向を有することが示されると、高い変換効率を達成できることが知られている。これは、CIGS半導体膜にバッファ層を形成する際に、膜内にCdやZnといったII族材料の拡散が促進され、良質なpn接合が形成されることによるものと推察されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、グレーデッドバンドギャップ構造またはダブルグレーデッドバンドギャップ構造を有した上で、(220/204)に優先配向を有するCIGS半導体膜を得るには、従来、どのような方法であっても、550℃以上の高温で少なくとも30分間以上加熱する必要があり、生産性がよくないという問題がある。これは、CIGS半導体膜の成膜において、(InGa)2Se3層からCuSe層へのGaの拡散の速度が濃度差に依存するものであるため、充分なGaの拡散には、少なくとも30分間以上必要であることに基づくものである。
すなわち、従来、所望のGa/(In+Ga)比を得るためには、下地層である(InGa)2Se3層からCuSe層へGaを拡散させる必要があるが、上述のとおり、その拡散速度は層間の濃度差に依存するものである。したがって、下地層のGa濃度が高ければ高いほど拡散速度を高めることができ、CIGS半導体膜形成にかかる所要時間を短くすることができる。ここで、非特許文献2によれば、(In(1-x),Gax)2Seという化合物組成で存在できるGaの固溶限界はX=0.7である。つまり、下地層である(InGa)2Se3層は、これを超えるGa濃度となることができない。これを鑑みれば、非特許文献1に記載のIn、Ga、Seを同時に成膜する共蒸着法によって得られるCIGS半導体膜は、CuSe形成前の(InGa)2Se3層が、最大で28原子%(100×0.7×2/5=28)のGa濃度にしかなり得ないため、下地層のGa低濃度に起因して、Ga拡散速度が頭打ちとなっている。
また、前述の特許文献1には、CIGS半導体膜の形成を、セレン化ガリウム膜(Y)とセレン化インジウム膜(X)とをこの順で積層することを繰り返して行うCIGS太陽電池の製造方法が開示されており、これによれば、下地層となる層(X)がセレン化インジウム膜であるため、Ga濃度は40原子%(100×2/5=40)となり、より高いGa拡散速度が期待できる。
しかしながら、特許文献1には、上記製造方法によって得られるCIGS半導体膜の結晶は、基板と並行な方向に成長することが開示されている。基板と並行な方向に成長した結晶は、結晶方位を示すミラー指数(00z)(zは整数を表す)に優先配向を有するものとなることが知られている。このため、特許文献1には、グレーデッド構造を有するCIGS半導体膜を効率よく得る方法についての開示はあるものの、(220/204)に優先配向を有するCIGS半導体膜を得る方法について、特別な開示はされていない。
Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41(2002) pp.507-513
Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35(1996) pp.4395-4400
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、グレーデッドバンドギャップ構造および(220/204)に優先配向を有するCIGS半導体膜を備えたCIGS半導体構造物を短時間の加熱で形成し得ることが可能な半導体前駆構造物と、それにより得られたCIGS半導体構造物、およびこれを用いたCIGS太陽電池、ならびにその製造方法の提供をその目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の半導体前駆構造物は、支持体と、支持体の表面に形成された裏面電極と、裏面電極上に形成された半導体前駆体膜とを有する半導体前駆構造物であって、上記半導体前駆体膜が、ガリウムとセレンとを含む層Aとインジウムとセレンとを含む層Bとを少なくとも一組有する層と、銅とセレンとを含む層Cとが積層されることにより形成されており、上記半導体前駆体膜が、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2とを有し、これらのピーク強度比(P2/P1)が0.5以上5以下であることを第1の要旨とする。
そして、第1の要旨の半導体前駆構造物を加熱処理し、上記半導体前駆体膜をCIGS半導体膜とすることにより得られるCIGS半導体構造物であって、上記CIGS半導体膜におけるCu、InおよびGaのモル比が、0.70≦Cu/(In+Ga)≦1.30を満たすよう設定されているCIGS半導体構造物を第2の要旨とする。
さらに、第2の要旨のCIGS半導体構造物のCIGS半導体膜上に、バッファ層と、透明電極とがこの順で設けられているCIGS太陽電池を第3の要旨とし、この第3の要旨のCIGS太陽電池を得る方法であって、表面に裏面電極が形成された支持体を準備し、この裏面電極上にガリウムとセレンとを含む層Aとインジウムとセレンとを含む層Bとを少なくとも一組有する層と、銅とセレンとを含む層Cとを積層し、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2とのピーク強度比(P2/P1)が0.5以上5以下である半導体前駆体膜を形成することにより、半導体前駆構造物を作製する工程と、半導体前駆構造物を加熱処理し、半導体前駆体膜をCIGS半導体膜にすることによりCIGS半導体構造物を作製する工程と、CIGS半導体構造物のCIGS半導体膜上にバッファ層を設ける工程と、このバッファ層上に透明電極層を設ける工程とを備えるCIGS太陽電池の製造方法を第4の要旨とする。
すなわち、本発明者らは、グレーデッドバンドギャップ構造および(220/204)に優先配向を有するCIGS半導体膜を短時間で効率よく得るために、その半導体前駆体膜およびこれを有する半導体前駆構造物に着目し研究を重ねた。その結果、半導体前駆体膜を、GaとSeとを含む層AとInとSeとを含む層Bとを少なくとも一組有する層と、CuとSeとを含む層Cとを積層して形成するとともに、その半導体前駆体膜を、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2とを有し、これらのピーク強度比(P2/P1)が0.5以上5以下であるようにすると、この半導体前駆体膜を短時間加熱するだけで、グレーデッドバンドギャップ構造および(220/204)に優先配向を有するCIGS半導体膜を得ることができることを見出し、本発明に想到した。そして、本発明のCIGS半導体膜構造物を用いたCIGS太陽電池は、(220/204)に優先配向を有するCIGS半導体膜に起因する良好なpn接合を有するため、変換効率に優れる。
なお、本発明において、「基板に層(A)と層(B)を積層する」とは、基板に直接これらを積層する場合だけでなく、基板に他の層を介してこれらを積層する場合を含むことを意味する。
このように、本発明の半導体前駆構造物は、支持体と、裏面電極と、半導体前駆体膜とを有するものであり、上記半導体前駆体膜が、GaとSeとを含む層AとInとSeとを含む層Bとを少なくとも一組有する層と、CuとSeとを含む層Cとが積層されることにより形成され、セレン化ガリウムとセレン化インジウムとセレン化銅の混合物からなっている。そして、上記半導体前駆体膜が、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する(300)配向に由来する第二のピークP2とを少なくとも有している。この(300)配向を有する半導体前駆体膜を備えた半導体前駆構造物を加熱することにより、この半導体前駆体膜を、(220/204)に優先配向を有する、Cu(In1-x,Gax)Se2の混晶からなるCIGS半導体膜とすることができる。さらに、上記半導体前駆体膜における第一のピークP1と第二のピークP2のピーク強度比(P2/P1)が0.5以上5以下であるようにしているため、半導体前駆構造物を加熱することにより得られるCIGS半導体膜の(112)配向と(220/204)配向とを良好な比率とすることが可能となり、このCIGS半導体膜を備えたCIGS半導体構造物を用いたCIGS太陽電池において、より一層良好なpn接合を形成することができるようになっている。
また、本発明の半導体前駆構造物を加熱処理し、上記半導体前駆体膜をCIGS半導体膜とすることにより得られるCIGS半導体構造物であって、上記CIGS半導体膜におけるCu、InおよびGaのモル比が、0.70≦Cu/(In+Ga)≦1.30を満たすよう設定されているCIGS半導体構造物は、そのCIGS半導体膜において、わずかにCu不足の状態となっている。このため、このCIGS半導体構造物を用いたCIGS太陽電池は、より高い変換効率を達成することができる。
そして、本発明のCIGS半導体構造物のCIGS半導体膜上に、バッファ層と、透明電極とがこの順で設けられているCIGS太陽電池は、CIGS半導体膜の(112)配向と(220/204)配向とが良好な比率となっており、より一層良好なpn接合を形成することができるとともに、CIGS半導体膜において、わずかにCu不足の状態となっている。このため、上記CIGS太陽電池は、高い変換効率を達成することができる。
さらに、本発明のCIGS太陽電池を得る方法であって、表面に裏面電極が形成された支持体を準備し、この裏面電極上にGaとSeとを含む層AとInとSeとを含む層Bとを少なくとも一組有する層と、CuとSeとを含む層Cとを積層し、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2とのピーク強度比(P2/P1)が0.5以上5以下である半導体前駆体膜を形成することにより、半導体前駆構造物を作製する工程と、半導体前駆構造物を加熱処理し、半導体前駆体膜をCIGS半導体膜にすることによりCIGS半導体構造物を作製する工程と、CIGS半導体構造物のCIGS半導体膜上にバッファ層を設ける工程と、このバッファ層上に透明電極層を設ける工程とを備えるCIGS太陽電池の製造方法は、グレーデッドバンドギャップ構造またはダブルグレーデッドバンドギャップ構造を有した上で、(220/204)に優先配向を有するCIGS半導体膜を備えた、変換効率の高いCIGS太陽電池を、短時間で効率よく製造することができる。
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
〔半導体前駆構造物〕
図1は、本発明の一実施の形態により得られる半導体前駆構造物αの説明図である。この半導体前駆構造物αは、幅30mm、長さ30mm、厚み0.55mmのソーダライムガラス(SLG)からなる支持体1と、支持体1の表面に500nmの厚みに形成されたモリブデンからなる裏面電極2と、半導体前駆体膜3とを有しており、上記半導体前駆体膜3が、厚み500nmのGaとSeとを含む層Aと、厚み700nmのInとSeとを含む層Bと、厚み1400nmのCuとSeとを含む層Cとが裏面電極側からこの順に積層されることにより形成されている。以下に、上記各構成を詳しく説明するとともに、上記半導体前駆構造物αを得る方法を詳細に説明する。なお、図1において、各部分は模式的に示したものであり、実際の厚み,大きさ等とは異なっている(以下の図においても同じ)。
図1は、本発明の一実施の形態により得られる半導体前駆構造物αの説明図である。この半導体前駆構造物αは、幅30mm、長さ30mm、厚み0.55mmのソーダライムガラス(SLG)からなる支持体1と、支持体1の表面に500nmの厚みに形成されたモリブデンからなる裏面電極2と、半導体前駆体膜3とを有しており、上記半導体前駆体膜3が、厚み500nmのGaとSeとを含む層Aと、厚み700nmのInとSeとを含む層Bと、厚み1400nmのCuとSeとを含む層Cとが裏面電極側からこの順に積層されることにより形成されている。以下に、上記各構成を詳しく説明するとともに、上記半導体前駆構造物αを得る方法を詳細に説明する。なお、図1において、各部分は模式的に示したものであり、実際の厚み,大きさ等とは異なっている(以下の図においても同じ)。
上記支持体1は透光で絶縁性を有するSLGからなっているが、この他にも、導電性または絶縁性のいずれの性質を有するものであっても用いることができ、透光であっても不透光であってもよい。すなわち、不透光で導電性を有するSUS、チタン等、透光で絶縁性を有するホウケイ酸ガラス、ポリイミド等、不透光で絶縁性を有するアルミナ等のセラミック等を用いることができる。ただし、後の加熱工程での加熱に耐えられるように、520℃以上の温度に耐性のある材料を用いることが好ましい。このような材料のなかでも、フェライト系SUS430は、支持体としての支持機能と、高温耐性とを兼ね備え、厚みを薄くすることで柔軟性を有する支持体とすることができるため、好ましく用いることができる。また、支持体1として、透明導電膜付ガラスや、絶縁性を有するアルミナを薄膜形成したSUS等のように、上記材料から形成された支持体の上に導電性または絶縁性を有する薄膜が形成されたものも好適に用いることができる。このような支持体1の厚みは、この上に積層される層を支持でき、それ自体が支持体としての形態を保持できるものであればよく、用いる材料にもよるが、通常、30μm以上5mm以下のものが好適に用いられる。
上記裏面電極2は、モリブデンからなっているが、この他にも、タングステン、クロム、チタン等を材料として用いることができる。また、これらは単層だけでなく、複層に形成して用いてもよい。なかでも、半導体前駆体膜3との密着性が良好である点から、モリブデンを好適に用いることができる。さらに、この実施の形態では、裏面電極2の厚みが500nmに形成されているが、これに限られるものではない。しかし、導電性および耐久性のバランスに優れる点から、裏面電極2の厚みは100nm〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
半導体前駆体膜3は、層A、層Bおよび層Cが積層し、その総膜厚2600nmに形成されてなるものである。そして、この半導体前駆体膜3を2θ−θ法によって測定すると、そのX線回折図において、回折角2θが27°に(006)配向由来の第一のピーク(P1)と、同じく44°に(300)配向由来の第二のピーク(P2)が示され、これらのピーク強度比(P2/P1)は、0.8となっている。
この構成を有する半導体前駆構造物αによれば、後の加熱工程に充分耐性を有する支持体1の上に、導電性および耐久性に優れる裏面電極2が形成されており、その裏面電極2の上に、半導体前駆体膜3が形成されているため、半導体前駆構造物αは、後の加熱工程以降においても取扱いが容易となり、CIGS半導体構造物を効率よく作製することができる。しかも、半導体前駆構造物αは、上記半導体前駆体膜3が、厚み500nmのGaとSeとを含む層Aと、厚み700nmのInとSeとを含む層Bと、厚み1400nmのCuとSeとを含む層Cとの積層によって形成されており、その2θ−θ法によって測定されたX線回折図において、回折角2θが27°に存在する第一のピークP1と、同じく44°に存在する第二のピークP2とのピーク強度比(P2/P1)が0.8であるようになっている。このため、従来と比べ短時間の加熱によって、グレーデッド構造および(220/204)に優先配向を有するCIGS半導体膜を備えたCIGS半導体構造物を得ることが可能となる。
このような半導体前駆構造物αは、例えば、つぎのようにして作製することができる。まず、裏面電極2が設けられた支持体1の保持温度を350℃にし、Ga、Seを蒸着することにより、GaとSeとを含む層Aを裏面電極2上に積層する。つぎに、In、Seを蒸着し、この層A上にInとSeとを含む層Bを積層する。さらに、Cu、Seを蒸着し、この層B上にCuとSeとを含む層Cを積層し、これら層A、層B、層Cからなる半導体前駆体膜3が形成された半導体前駆構造物αを作製することができる。このとき、各層の厚みは、Ga、In、Cuの各蒸着源の温度を制御することで、コントロールすることができる。また、各層の厚みは、事前の検討により算出することができる。
なお、上記実施の形態において、半導体前駆構造物αの半導体前駆体膜3は、GaとSeとを含む層Aの厚みが500nm、InとSeとを含む層Bの厚みが700nm、CuとSeとを含む層Cの厚みが1400nmとなっているが、各層の厚みはこれに限られない。ただし、加熱により、CIGS半導体膜に形成され、CIGS太陽電池用いられる場合において、入射光を充分吸収し、発生するキャリアを充分に取り出すことができ、変換効率を達成することができる点から、各層の合計(半導体前駆体膜3)厚みは、1800〜5000nmの範囲にあることが好ましい。
また、上記実施の形態において、半導体前駆体膜3は、GaとSeとを含む層AとInとSeとを含む層Bを一組だけ有するようにしているが、二組以上を有するようにしてもよい。二組以上を有するようにすると、深さ方向のGa/(In+Ga)比をコントロールすることが容易となるため、これが加熱され、CIGS半導体膜となる際に、任意のダブルグレーデッド構造を容易に形成することができる。なお、必ずしも層Aと層Bとが同数ずつの組になっていなくてもよい。
そして、上記実施の形態では、半導体前駆体膜3を2θ−θ法によって測定したX線回折図において、第一のピークP1と第二のピークP2とのピーク強度比(P2/P1)が0.8であるようになっているが、これに限らず0.5以上5以下の任意の値に設定することができる。すなわち、第一のピークP1と第二のピークP2とのピーク強度比(P2/P1)が小さすぎると、CIGS半導体膜とした際の(220/204)配向が弱くなり、II族元素の拡散が進まず良好なpn接合が得られないおそれがあるためであり、逆に、大きすぎるとII族元素が過剰に膜内に取り込まれてしまい、ピーク強度比が小さすぎる場合と同様に、良好なpn接合が得られなくなるおそれがあるためである。
〔CIGS半導体構造物〕
つぎに、上記半導体前駆構造物αを加熱処理し、その半導体前駆体膜3をCIGS半導体膜4とすることにより得られるCIGS半導体構造物βについて説明する。図2は、本発明の一実施の形態により得られるCIGS半導体構造物βを示したものであり、1は支持体、2は裏面電極、4はCIGS半導体膜を示している。なお、CIGS半導体構造物βの構成において、半導体前駆構造物αと同じものには同一符号をつけ、その説明を省略する。
つぎに、上記半導体前駆構造物αを加熱処理し、その半導体前駆体膜3をCIGS半導体膜4とすることにより得られるCIGS半導体構造物βについて説明する。図2は、本発明の一実施の形態により得られるCIGS半導体構造物βを示したものであり、1は支持体、2は裏面電極、4はCIGS半導体膜を示している。なお、CIGS半導体構造物βの構成において、半導体前駆構造物αと同じものには同一符号をつけ、その説明を省略する。
上記CIGS半導体膜4は、Cu、In、GaおよびSeを含有し、(220/204)に優先配向の、カルコパライト構造を有する厚み2200nmの化合物半導体膜である。そして、その膜内のCu、In、Gaの平均組成比が23.8:15.6:10.6であり、Cu/(In+Ga)≒0.91(モル比)となっている。
この構成によれば、CIGS半導体膜4が、(220/204)に優先配向しているため、II族元素の拡散が進み、良好なpn接合が得られるとともに、CIGS半導体膜4がわずかにCu不足の状態となっているため、このCIGS半導体構造物βを用いた太陽電池は、より高い変換効率を達成することができる。
このようなCIGS半導体構造物βは、例えば、つぎのようにして作製することができる。まず、前記の方法により半導体前駆構造物αを作製する。つぎに、この半導体前駆構造物αを真空下で支持体1の保持温度が600℃となるよう加熱して、その状態を5分間保持する。これにより、半導体前駆体膜3をCIGS半導体膜4とすることができ、CIGS半導体構造物βを得ることができる。
なお、上記実施の形態では、CIGS半導体膜4のCu/(In+Ga)濃度(モル比)が、約0.91となっているが、これに限られるものではない。しかし、Cu/(In+Ga)濃度は、0.7以上1.30以下であることが好ましい。すなわち、Cu/(In+Ga)濃度が低すぎると、CIGS半導体膜4内のCu空孔に由来したCu空孔準位が、pnジャンクション内の再結合パスとなって特性を悪化させるため、p層としての機能を果たせなくなる傾向がみられるためであり、逆に、高すぎると、Cu空孔が少なすぎることにより、後述するバッファ層5形成中に、Cd等のII族元素がドープされにくくなり、良好なpn接合が形成されない傾向がみられるためである。なお、Cu/(In+Ga)濃度が0.95から1.30の範囲においては、CIGS半導体膜4の膜内や膜表面に、光変換に寄与しないセレン化銅が析出することがあるため、これを除去する目的で、シアン化カリウムやアンモニア水溶液等の銅を穏やかに溶解しうる液体に浸漬させることが好ましい。
また、上記実施の形態では、半導体前駆構造物αを真空下で支持体1の保持温度が600℃となるよう加熱して、その状態を5分間保持することによりCIGS半導体構造物βの作製を行っているが、加熱時の支持体1の保持温度および加熱時間はこれに限られない。しかし、CuSe層を溶融させる点から、加熱時の支持体1の保持温度を520℃〜700℃の範囲とすることが好ましい。また、5分間を超えて加熱しても、得られるCIGS半導体膜4の(220/204)配向に大きな変化がみられないため、高効率化を図る観点からは、加熱時間は、5分間程度とすることが好ましい。
〔CIGS太陽電池〕
さらに、上記CIGS半導体構造物βのCIGS半導体膜4上に、バッファ層5〔CdSからなる層5aと、ZnOからなる層5b(厚み50nm)〕と、ITOからなる透明電極6(厚み200nm)とがこの順で設けられたCIGS太陽電池γについて説明する。図3は、本発明の一実施の形態であるCIGS太陽電池γを示したものである。なお、CIGS太陽電池γの構成において、CIGS半導体構造物βと同じものには同一符号をつけ、その説明を省略する。
さらに、上記CIGS半導体構造物βのCIGS半導体膜4上に、バッファ層5〔CdSからなる層5aと、ZnOからなる層5b(厚み50nm)〕と、ITOからなる透明電極6(厚み200nm)とがこの順で設けられたCIGS太陽電池γについて説明する。図3は、本発明の一実施の形態であるCIGS太陽電池γを示したものである。なお、CIGS太陽電池γの構成において、CIGS半導体構造物βと同じものには同一符号をつけ、その説明を省略する。
上記バッファ層5は、厚み50nmのCdSからなる層5aと、厚み50nmのZnOからなる層5bの2層からなっており、上記CIGS半導体膜4とpn接合できるよう、高抵抗のn型半導体が好ましく用いられる。このような高抵抗のn型半導体としては、上記CdS、ZnOの他、ZnMgO、Zn(O,S)、ZnO等を用いることができる。また、バッファ層5の厚みは、30〜200nmであることが好ましく、本実施の形態のように、バッファ層5が複層からなる場合であっても、それぞれの厚みが30〜200nmであることが好ましい。なお、バッファ層5として複数の層を重ねたものを用いると、CIGS半導体膜4とpn接合をより良好にすることができるため好ましい。しかし、pn接合が充分に良好である場合には、必ずしも複層設けなくてもよい。
上記透明電極6は、厚み200nmのITOからなっている。透明電極6は、光入射側に位置するため、入射光を妨げないようにできるだけ光の透過率が高い材料を用いることが好ましい。このような材料としては、ITOのほか、ZnO、In2O3、SnO2等があげられる。また、導電性を高める目的で、あるいはバンドアライメントを調整する目的で、これらの材料に少量のドーピング材料を含ませたものも好適に用いられる。このようなものとしては、例えば、Al:ZnO(AZO)、B:ZnO(BZO)、Ga:ZnO(GZO)、Sn:In2O3(ITO)、F:SnO2(FTO)、Zn:In2O3、Ti:In2Oe、Zr:In2O3、W:In2O3等があげられる。また、透明電極6は、CIGS半導体膜3で発生するキャリアを取り出すための導電性経路の役割も担っているため、電気伝導性が高いことが好ましい。これらの観点から、とりわけITOが、室温形成において容易に結晶化し、電気伝導性を高くすることができる性質と、良好な光透過性とを兼ね備えているため、好適に用いられる。そして、上記透明電極6の厚みは、光透過性および電気伝導性の観点から、100〜2000nmであることが好ましい。
このようなCIGS太陽電池γは、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、前記で作製したCIGS半導体構造物βを準備し、そのCIGS半導体膜4上に、化学浴堆積法(CBD法)により、厚み50nmのCdSからなる層5aを形成し、ついで、この層5a上に、スパッタリング法により、厚み50nmのZnOからなる層5bを形成することにより、層5aと層5bとからなるバッファ層5(厚み100nm)を形成する。そして、このバッファ層5上に、スパッタリング法により、厚み200nmのITOからなる透明電極6を形成することによって、CIGS太陽電池γを得ることができる。
この製造方法によれば、CIGS半導体構造物βのCIGS半導体膜4がグレーデッドバンドギャップ構造またはダブルグレーデッドバンドギャップ構造を有した上で、(220/204)に優先配向を有するようになっているため、変換効率の高いCIGS太陽電池を、短時間で効率よく製造することができる。
なお、上記バッファ層5は、上記実施の形態で示したCBD法およびスパッタリング法以外の方法によっても形成することができ、また、真空中、大気中および水溶液中のいずれの系においても形成することができる。上記バッファ層5を形成する方法として、例えば、真空中では、スパッタリング法の他、分子線エピタキシー法、電子線蒸着法、抵抗加熱蒸着法、プラズマCVD法、有機金属蒸着法等があげられる。また、大気中では、大気圧プラズマ法等が、さらに、水溶液中では、CBD法、電解めっき法等があげられる。
また、上記透明電極6は、上記実施の形態で示したスパッタリング法以外の方法によっても形成することができ、例えば、MOCVD法、印刷法等によっても形成が可能である。しかし、成膜効率に優れる点で、スパッタリング法を用いることが好ましい。
さらに、上記実施の形態では、CIGS太陽電池γは、CIGS半導体構造物β(支持体1、裏面電極2、CIGS半導体膜4)と、バッファ層5と、透明電極6とからなっているが、必要に応じて、上記透明電極6の上に、金属電極を形成してもよい。
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施例1〕
上記実施の形態と同様にして、まず、下記に示すように半導体前駆構造物αを作製した後、この半導体前駆構造物αを加熱処理し、下記に示すようにCIGS半導体構造物βを作製した。そして、得られたCIGS半導体構造物βのCIGS半導体膜4上に、下記に示すようにバッファ層5と、透明電極6とをこの順で積層することにより、実施例1のCIGS太陽電池γを得た。
上記実施の形態と同様にして、まず、下記に示すように半導体前駆構造物αを作製した後、この半導体前駆構造物αを加熱処理し、下記に示すようにCIGS半導体構造物βを作製した。そして、得られたCIGS半導体構造物βのCIGS半導体膜4上に、下記に示すようにバッファ層5と、透明電極6とをこの順で積層することにより、実施例1のCIGS太陽電池γを得た。
(半導体前駆構造物α)
支持体1として、SLG(大きさ30×30mm、厚み0.55mm)を用意し、この上に、Moを積層し、厚み500nmの裏面電極2を形成した。そして、支持体1の保持温度を350℃にした状態で、裏面電極2上に、GaとSeとを蒸着し、厚み600nmのGaとSeとを含む層Aを積層し、ついで、この層A上に、InとSeとを蒸着し、厚み800nmのInとSeとを含む層Bを積層し、層Aと層Bとを一組積層した。さらに、この層B上に、CuとSeとを蒸着し、厚み1400nmのCuとSeとを含む層Cを積層することにより、裏面電極2上に、層A、層B、層Cとからなる半導体前駆体膜3が形成された半導体前駆構造物αを得た(図1参照)。この半導体前駆体膜3は、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2のピーク強度比(P2/P1)は、0.78であった。得られたX線回折図を図4に示す。なお、X線回折は、ブルカー社製のXRD D8 DISCOVER with GADTSの装置を用い、入射角5°固定、ディテクタースキャン3°/minの条件で行った。
支持体1として、SLG(大きさ30×30mm、厚み0.55mm)を用意し、この上に、Moを積層し、厚み500nmの裏面電極2を形成した。そして、支持体1の保持温度を350℃にした状態で、裏面電極2上に、GaとSeとを蒸着し、厚み600nmのGaとSeとを含む層Aを積層し、ついで、この層A上に、InとSeとを蒸着し、厚み800nmのInとSeとを含む層Bを積層し、層Aと層Bとを一組積層した。さらに、この層B上に、CuとSeとを蒸着し、厚み1400nmのCuとSeとを含む層Cを積層することにより、裏面電極2上に、層A、層B、層Cとからなる半導体前駆体膜3が形成された半導体前駆構造物αを得た(図1参照)。この半導体前駆体膜3は、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2のピーク強度比(P2/P1)は、0.78であった。得られたX線回折図を図4に示す。なお、X線回折は、ブルカー社製のXRD D8 DISCOVER with GADTSの装置を用い、入射角5°固定、ディテクタースキャン3°/minの条件で行った。
(CIGS半導体構造物β)
上記半導体前駆構造物αを、微量のSe蒸気を供給しつつ加熱し、支持体1の保持温度が600℃の状態を5分間保持し、半導体前駆体膜3の結晶を成長させて、CIGS半導体膜4とした。これにより、支持体1と、裏面電極2と、CIGS半導体膜4とからなるCIGS半導体構造物βを得た(図2参照)。このCIGS半導体膜4は、(112)配向に基づくピークと、(220/204)配向に基づくピークとのピーク強度比〔(220/204)/112〕が、097であった。得られたX線回折図を図5に示す。なお、X線回折は、ブルカー社製のXRD D8 DISCOVER with GADTSの装置を用い、入射角5°固定、ディテクタースキャン3°/minの条件で行った。
上記半導体前駆構造物αを、微量のSe蒸気を供給しつつ加熱し、支持体1の保持温度が600℃の状態を5分間保持し、半導体前駆体膜3の結晶を成長させて、CIGS半導体膜4とした。これにより、支持体1と、裏面電極2と、CIGS半導体膜4とからなるCIGS半導体構造物βを得た(図2参照)。このCIGS半導体膜4は、(112)配向に基づくピークと、(220/204)配向に基づくピークとのピーク強度比〔(220/204)/112〕が、097であった。得られたX線回折図を図5に示す。なお、X線回折は、ブルカー社製のXRD D8 DISCOVER with GADTSの装置を用い、入射角5°固定、ディテクタースキャン3°/minの条件で行った。
(CIGS太陽電池γ)
上記得られたCIGs半導体構造物βのCIGS半導体膜4上に、CBD法によって、厚み50nmのCdSからなる層5aを形成し、この層5a上に、スパッタリング法により、厚み70nmのZnOからなる層5bを形成することにより、層5aと層5bとからなるバッファ層5(厚み120nm)を形成した。ついで、このバッファ層5上に、スパッタリング法により、厚み200nmのITOからなる透明電極6を形成して、目的のCIGS太陽電池γを得た(図3参照)。
上記得られたCIGs半導体構造物βのCIGS半導体膜4上に、CBD法によって、厚み50nmのCdSからなる層5aを形成し、この層5a上に、スパッタリング法により、厚み70nmのZnOからなる層5bを形成することにより、層5aと層5bとからなるバッファ層5(厚み120nm)を形成した。ついで、このバッファ層5上に、スパッタリング法により、厚み200nmのITOからなる透明電極6を形成して、目的のCIGS太陽電池γを得た(図3参照)。
〔実施例2,3,6,7、比較例1〜5〕
半導体前駆構造物αの作製において、支持体1の保持温度、層A、層B、層Cの膜厚等の条件を変えることにより、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2のピーク強度比(P2/P1)が、後記の表1に示す値となるように半導体前駆体膜3の形成を行った他は、実施例1と同様にして、目的のCIGS太陽電池を製造した。
半導体前駆構造物αの作製において、支持体1の保持温度、層A、層B、層Cの膜厚等の条件を変えることにより、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2のピーク強度比(P2/P1)が、後記の表1に示す値となるように半導体前駆体膜3の形成を行った他は、実施例1と同様にして、目的のCIGS太陽電池を製造した。
〔実施例4,5〕
半導体前駆構造物αの作製において、支持体1の保持温度、層A、層B、層Cの膜厚等の条件を変えることにより、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2のピーク強度比(P2/P1)が、後記の表1に示す値となるように半導体前駆体膜3の形成を行い、かつ、得られたCIGS半導体膜4を3wt%のシアン化カリウム水溶液に10分間浸漬を行った他は、実施例1と同様にして目的のCIGS太陽電池を得た。
半導体前駆構造物αの作製において、支持体1の保持温度、層A、層B、層Cの膜厚等の条件を変えることにより、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2のピーク強度比(P2/P1)が、後記の表1に示す値となるように半導体前駆体膜3の形成を行い、かつ、得られたCIGS半導体膜4を3wt%のシアン化カリウム水溶液に10分間浸漬を行った他は、実施例1と同様にして目的のCIGS太陽電池を得た。
〔実施例8〕
半導体前駆構造物αの作製において、裏面電極2上に、GaとSeとを蒸着し、厚み370nmのGaとSeとを含む層Aを積層し、ついで、この層A上に、InとSeとを蒸着し、厚み600nmのInとSeとを含む層Bを積層し、層Aと層Bとを一組積層した。さらに、この層B上に、CuとSeとを蒸着し、厚み1400nmのCuとSeとを含む層Cを積層した。その後、層C上に厚み130nmのGaとSeとを含む層A’と厚み160nmのInとSeとを含む層B’を積層する事で半導体前駆構造物αを得た。さらに、得られたCIGS半導体膜4を、3wt%のシアン化カリウム水溶液に10分間浸漬を行った他は、実施例1と同様にして目的のCIGS太陽電池を得た。
半導体前駆構造物αの作製において、裏面電極2上に、GaとSeとを蒸着し、厚み370nmのGaとSeとを含む層Aを積層し、ついで、この層A上に、InとSeとを蒸着し、厚み600nmのInとSeとを含む層Bを積層し、層Aと層Bとを一組積層した。さらに、この層B上に、CuとSeとを蒸着し、厚み1400nmのCuとSeとを含む層Cを積層した。その後、層C上に厚み130nmのGaとSeとを含む層A’と厚み160nmのInとSeとを含む層B’を積層する事で半導体前駆構造物αを得た。さらに、得られたCIGS半導体膜4を、3wt%のシアン化カリウム水溶液に10分間浸漬を行った他は、実施例1と同様にして目的のCIGS太陽電池を得た。
上記実施例品および比較例品の変換効率を下記の手順に従って測定した。また、それらの実施例品および比較例品に用いたCIGS半導体膜4の(112)配向に基づくピークと(220/204)配向に基づくピークとのピーク強度比(220/204)/112を実施例1と同様にして測定し、算出するとともに、CIGS半導体膜4のCu/(In+Ga)の組成比を後記の手順に従って測定し、算出した。測定および算出した結果を下記の〔表1〕に併せて示す。
〔変換効率の測定〕
擬似太陽光(AM1.5)を各実施例品および比較例品の表面面積以上の領域に照射し、その変換効率をソーラーシミュレーター(セルテスターYSS150、山下電装社)によって測定した。
擬似太陽光(AM1.5)を各実施例品および比較例品の表面面積以上の領域に照射し、その変換効率をソーラーシミュレーター(セルテスターYSS150、山下電装社)によって測定した。
〔Cu/(In+Ga)の組成比の算出〕
各実施例品および比較例品に用いたCIGS半導体膜4のCu、In、Gaの含有量を、エネルギー分散型蛍光X線装置(EX−250、堀場製作所社製)を用いて測定し、これらの原子数濃度を元にCu/(In+Ga)の組成比を算出した。
各実施例品および比較例品に用いたCIGS半導体膜4のCu、In、Gaの含有量を、エネルギー分散型蛍光X線装置(EX−250、堀場製作所社製)を用いて測定し、これらの原子数濃度を元にCu/(In+Ga)の組成比を算出した。
上記の結果より、実施例品は高い変換効率(%)を示し、とりわけ、半導体前駆体膜における第一のピークP1と、第二のピークP2とのピーク強度比(P2/P1)の値が高いほど、CIGS太陽電池における変換効率(%)に優れる傾向がみられることがわかった。また、半導体前駆体膜の形成において、一組の層AおよびB、層Cの積層に加え、層Cの上にさらに層Aおよび層Bを積層した実施例8は、半導体前駆体膜における第一のピークP1と、第二のピークP2とのピーク強度比(P2/P1)の値が同程度のものに比べて、より高い変換効率(%)を示していた。これは、半導体前駆体膜を、深さ方向にGa/(In+Ga)比がV字状になるよう制御し形成しているため、この半導体前駆体膜を加熱して得られるCIGS半導体膜が、ダブルグレーデッド構造を形成するようになっていることに基づくと考えられる。
一方、半導体前駆体膜における第一のピークP1と、第二のピークP2とのピーク強度比(P2/P1)の値が所定の範囲内にない比較例品は、CIGS半導体膜におけるCu/(In+Ga)のモル比が実施例品と同程度のものであっても、CIGS太陽電池における変換効率(%)に劣ることがわかった。
本発明のCIGS半導体構造物は、電池特性に優れたCIGS太陽電池を低コストで製造するのに適している。
1 支持体
2 裏面電極
3 半導体前駆体膜
A ガリウムとセレンとを含む層
B インジウムとセレンとを含む層
C 銅とセレンとを含む層
α 半導体前駆構造物
2 裏面電極
3 半導体前駆体膜
A ガリウムとセレンとを含む層
B インジウムとセレンとを含む層
C 銅とセレンとを含む層
α 半導体前駆構造物
Claims (4)
- 支持体と、支持体の表面に形成された裏面電極と、裏面電極上に形成された半導体前駆体膜とを有する半導体前駆構造物であって、上記半導体前駆体膜が、ガリウムとセレンとを含む層Aとインジウムとセレンとを含む層Bとを少なくとも一組有する層と、銅とセレンとを含む層Cとが積層されることにより形成されており、上記半導体前駆体膜が、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2とを有し、これらのピーク強度比(P2/P1)が0.5以上5以下であることを特徴とする半導体前駆構造物。
- 請求項1記載の半導体前駆構造物を加熱処理し、上記半導体前駆体膜をCIGS半導体膜とすることにより得られるCIGS半導体構造物であって、上記CIGS半導体膜における銅、インジウムおよびガリウムのモル比が、0.70≦銅/(インジウム+ガリウム)≦1.30を満たすよう設定されていることを特徴とするCIGS半導体構造物。
- 請求項2記載のCIGS半導体構造物のCIGS半導体膜上に、バッファ層と、透明電極とがこの順で設けられていることを特徴とするCIGS太陽電池。
- 請求項3記載のCIGS太陽電池を得る方法であって、表面に裏面電極が形成された支持体を準備し、この裏面電極上にガリウムとセレンとを含む層Aとインジウムとセレンとを含む層Bとを少なくとも一組有する層と、銅とセレンとを含む層Cとを積層し、2θ−θ法によるX線回折図において、回折角2θが24°〜29°の範囲に存在する第一のピークP1と、同じく42°〜47°の範囲に存在する第二のピークP2とのピーク強度比(P2/P1)が0.5以上5以下である半導体前駆体膜を形成することにより、半導体前駆構造物を作製する工程と、半導体前駆構造物を加熱処理し、半導体前駆体膜をCIGS半導体膜にすることによりCIGS半導体構造物を作製する工程と、CIGS半導体構造物のCIGS半導体膜上にバッファ層を設ける工程と、このバッファ層上に透明電極層を設ける工程とを備えることを特徴とするCIGS太陽電池の製造方法。
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KR20180105087A (ko) * | 2017-03-14 | 2018-09-27 | 한국화학연구원 | 다공성 금속할로겐화물 막, 이의 제조방법 및 이를 이용한 페로브스카이트 구조의 유기금속할로겐화물의 제조방법 |
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