JP2014227046A - 車両挙動制御装置及び車両挙動制御方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に記載されている技術では、車両に作用する横力に基づいて、サスペンションに発生するフリクションを検出する。そして、車体の挙動を抑制するための抑制目標値から、検出したフリクションを減算して、車体の挙動を抑制するためにサスペンションで発生させるフリクションの目標値を算出する。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、サスペンションに目標値のフリクションを発生させる制御の応答性を向上させることが可能な、車両挙動制御装置及び車両挙動制御方法を提供することを目的とする。
ここで、制駆動力配分比は、車体の挙動を抑制するためのフリクションを車体と各車輪とを連結するサスペンションに発生させるために必要な、車輪の制動力と車輪の駆動力との配分比である。また、フリクション発生源としては、車両が備える摩擦ブレーキ、車輪の駆動源を形成する駆動用モータ及びエンジンのうち少なくとも一つを選択する。
これにより、車体の挙動を抑制するためのフリクションの発生源が、摩擦ブレーキ及びエンジンよりも応答性の高い駆動用モータを含む場合に、サスペンションに目標値のフリクションを発生させる制御の応答性を向上させることが可能となる。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の車両挙動制御装置1を備える車両Vの概略構成を示すブロック図である。
図1中に示すように、車両挙動制御装置1を備える車両Vは、Gセンサ2と、ヨーレートセンサ4と、操舵角センサ6と、ドライバブレーキ液圧センサ8と、アクセル開度センサ10を備える。これに加え、車両Vは、シフトポジションセンサ12と、ストロークセンサ14と、走行支援モードスイッチ16と、走行モード選択スイッチ17と、車輪速センサ18と、制駆動力コントローラ20と、ブレーキペダル22と、マスタシリンダ24を備える。さらに、車両Vは、ブレーキアクチュエータ26と、動力コントロールユニット28と、動力ユニット30と、ホイールシリンダ32と、車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)と、サスペンションSPを備える。
バネ上上下加速度センサの機能を有するブロックは、車両Vに対し、車体のバネ上部分における上下方向への加速度を検出する。そして、検出した加速度を含む情報信号(以降の説明では、「バネ上上下加速度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
横加速度センサの機能を有するブロックは、車両Vに対し、車体の横方向(車幅方向)への加速度(以降の説明では、「実測横加速度」と記載する場合がある)を検出する。そして、検出した実測横加速度を含む情報信号(以降の説明では、「実測横加速度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
ヨーレートセンサ4は、車両Vのヨーレート(車体が旋回する方向への回転角の変化速度)を検出し、検出したヨーレートを含む情報信号(以降の説明では、「ヨーレート信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
また、操舵角センサ6は、中立位置を基準とした操舵操作子の現在の回転角度(操舵操作量)である、現在操舵角を検出する。そして、操舵角センサ6は、検出した現在操舵角を含む情報信号(以降の説明では、「現在操舵角信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
アクセル開度センサ10は、図示しないアクセルペダルの開度を検出し、検出した開度を含む情報信号(以降の説明では、「アクセル開度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
ストロークセンサ14は、サスペンションSPの実測ストローク量(実測変位量)を検出し、検出した実測ストローク量を含む情報信号(以降の説明では、「実測ストローク量信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。なお、ストロークセンサ14は、各車輪Wに対して設置したサスペンションSPの実測ストローク量を、それぞれ個別に検出して、実測ストローク量信号を生成する。
ここで、複数の走行モードには、例えば、通常のモードである「通常:STANDARD」モードと、走行性能よりもエネルギー効率を重視したモードである「燃費重視:ECO」モードがある。これに加え、複数の走行モードには、例えば、エネルギー効率よりも走行性能を重視したモードである「性能重視:SPORT」モードと、積雪路等の低μ路面の走行に適したモードである「雪道:SNOW」モードがある。
車輪速センサ18は、車輪Wの回転速度を検出し、検出した回転速度を含む情報信号(以降の説明では、「車輪速信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
制駆動力コントローラ20は、車両V全体を制御するものであり、マイクロコンピュータで構成する。なお、マイクロコンピュータは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えた構成である。
また、制駆動力コントローラ20は、フリクション検出ブロック34と、乗り心地制御ブロック36と、操縦安定性制御ブロック38を備える。なお、フリクション検出ブロック34、乗り心地制御ブロック36、操縦安定性制御ブロック38の構成については、後述する。
マスタシリンダ24は、運転者のペダル踏力に応じて、二系統の液圧を生成する(タンデム式)。なお、本実施形態では、一例として、マスタシリンダ24が、プライマリ側を左前輪・右後輪のホイールシリンダ32に伝達し、セカンダリ側を右前輪・左後輪のホイールシリンダ32に伝達する方式(ダイアゴナルスプリット方式)を用いる場合を説明する。
また、ブレーキアクチュエータ26は、ABS制御が作動しているか否かを示すフラグ情報信号(以降の説明では、「ABS作動フラグ信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。なお、ABSとは、「Antilocked Braking System」の略称である。
なお、車両Vが備えるシステムとは、例えば、先行車追従走行制御を行なうシステムであり、車両Vと先行車との車間距離を、車両Vの車速に応じた距離に制御するためのシステムである。
動力コントロールユニット28は、制駆動力コントローラ20から入力を受けた駆動指令信号に応じて、動力ユニット30が発生させる駆動力を制御する。
また、動力コントロールユニット28は、上述したTCS制御が作動しているか否かを示すフラグ情報信号(以降の説明では、「TCS作動フラグ信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
なお、前輪に対するトルクの制御値とは、例えば、右前輪WFRと左前輪WFLに対し、動力ユニット30(駆動用モータ及びエンジンのうち少なくとも一方)が発生させているトルクを配分する比率である。また、前輪に対するトルクの制御値とは、例えば、上述したVDC制御により車輪Wに加わるトルクである。
動力ユニット30は、車両Vの駆動力を発生させる構成であり、駆動用モータ30Aと、エンジン30Bを備える。すなわち、本実施形態の車両挙動制御装置1を備える車両Vは、車輪Wの駆動源を駆動用モータ30A及びエンジン30Bにより形成する、ハイブリッド(HEV:Hybrid Electric Vehicle)車両である。
駆動用モータ30Aは、例えば、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルを巻き付けた同期型モータを用いて形成する。また、駆動用モータ30Aは、動力コントロールユニット28から入力を受けた制御指令に基づき、インバータ(図示せず)で作り出した三相交流を印加することで制御可能である。さらに、駆動用モータ30Aは、バッテリ(図示せず)からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することも可能である(この状態を「力行」と呼ぶ)。
ホイールシリンダ32は、ディスクブレーキを構成するブレーキパッド(図示せず)を、各車輪Wと一体に回転するディスクロータ(図示せず)に押し付けるための押圧力を発生する。
サスペンションSP(サスペンション装置)は、各車輪Wと車両Vの車体との間に設置した懸架装置である。
なお、図1中では、右前輪WFRに対して設置したサスペンションSPを、サスペンションSPFRと示し、左前輪WFLに対して設置したサスペンションSPを、サスペンションSPFLと示す。同様に、図1中では、右後輪WRRに対して設置したサスペンションSPを、サスペンションSPRRと示し、左後輪WRLに対して設置したサスペンションSPを、サスペンションSPRLと示す。また、以降の説明においても、各サスペンションSPを、上記のように示す場合がある。
次に、図1を参照しつつ、図2を用いて、ブレーキアクチュエータ26の構成を説明する。
図2は、ブレーキアクチュエータ26の構成を示すブロック図である。
ブレーキアクチュエータ26は、上述したABS制御、TCS制御、VDC制御等に用いる制動流体圧制御回路を用いて形成する。
また、ブレーキアクチュエータ26は、運転者のブレーキ操作に係らず、各ホイールシリンダ32FR、32FL、32RR、32RLの液圧を、増圧・保持・減圧可能に形成する。
プライマリ側は、第一ゲートバルブ122Aと、インレットバルブ124FLと、インレットバルブ124RRと、アキュムレータ126Aを備えている。これに加え、プライマリ側は、アウトレットバルブ128FLと、アウトレットバルブ128RRと、第二ゲートバルブ130Aと、ポンプ132と、ダンパー室134Aを備えている。
インレットバルブ124FLは、第一ゲートバルブ122Aとホイールシリンダ32FLとの間の流路を閉鎖可能な、ノーマルオープン型のバルブである。
インレットバルブ124RRは、第一ゲートバルブ122Aとホイールシリンダ32RRとの間の流路を閉鎖可能な、ノーマルオープン型のバルブである。
アウトレットバルブ128FLは、ホイールシリンダ32FLとアキュムレータ126との間の流路を開放可能な、ノーマルクローズ型のバルブである。
アウトレットバルブ128RRは、ホイールシリンダ32RRとアキュムレータ126との間の流路を開放可能な、ノーマルクローズ型のバルブである。
ポンプ132は、負荷圧力に係りなく略一定の吐出量を確保可能な、歯車ポンプ、ピストンポンプ等、容積形のポンプを用いて形成する。
ダンパー室134Aは、ポンプ132の吐出側に配設されており、ポンプ132から吐出されたブレーキ液の脈動を抑制して、ペダル振動を低減させる。
また、各第一ゲートバルブ122及び各インレットバルブ124は、非励磁のノーマル位置で流路を開放し、各アウトレットバルブ128及び各第二ゲートバルブ130は、非励磁のノーマル位置で流路を閉鎖するように形成する。
そして、アキュムレータ126に流入した液圧は、ポンプ132によって吸入され、マスタシリンダ24に戻される。
したがって、制駆動力コントローラ20は、各第一ゲートバルブ122、各インレットバルブ124、各アウトレットバルブ128、各第二ゲートバルブ130、ポンプ132を駆動制御して、各ホイールシリンダ32の液圧を、増圧・保持・減圧する。
次に、図1及び図2を参照しつつ、図3から図12を用いて、フリクション検出ブロック34の構成を説明する。
図3は、フリクション検出ブロック34の概略構成を示すブロック図である。
図3中に示すように、フリクション検出ブロック34は、制動力算出部40と、駆動力算出部42と、サスペンション状態算出部44と、サスペンション横力算出部46を備える。これに加え、フリクション検出ブロック34は、制動力フリクション算出部48と、駆動力フリクション算出部50と、サスペンション状態フリクション算出部52と、横力フリクション算出部54と、総フリクション算出部56を備える。
図4中に示すように、制動力算出部40は、ブレーキ液圧合算部58と、ブレーキ液圧値選択部60と、車輪制動力算出部62を備える。
ここで、ブレーキ液圧合算部58、ブレーキ液圧値選択部60及び車輪制動力算出部62で行なう処理は、各車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)に対して個別に行なう。
そして、ブレーキ液圧合算部58は、入力を受けたドライバブレーキ液圧信号が含む液圧と、付加機能ブレーキ液圧信号及びVDC液圧信号が含む指令値に応じた液圧を合算する。そして、合算した液圧を含む情報信号(以降の説明では、「液圧合算値信号」と記載する場合がある)を、ブレーキ液圧値選択部60へ出力する。
以上により、制動力算出部40は、各車輪Wに対し、その制動力を個別に算出する。
図5中に示すように、駆動力算出部42は、推定トルク算出部64と、トルク値選択部66と、車輪駆動力算出部68を備える。
ここで、推定トルク算出部64、トルク値選択部66及び車輪駆動力算出部68で行なう処理は、各車輪Wに対して個別に行なう。
推定トルク算出部64は、アクセル開度センサ10から、アクセル開度信号(図中では、「アクセル開度」と示す)の入力を受ける。また、推定トルク算出部64は、動力コントロールユニット28から、現在トルク信号(図中では、「現在エンジントルク」と示す)と、トルクコントロール信号(図中では、「トルクコントロール機能」と示す)の入力を受ける。
以上により、駆動力算出部42は、各車輪Wに対し、その駆動力を個別に算出する。
また、駆動力算出部42は、車両Vの走行制御に基づく車輪Wの駆動力を算出する。なお、車両Vの走行制御とは、上述した制動力算出部40の説明と同様である。
図6中に示すように、サスペンション状態算出部44は、バネ上側積分処理部70と、バネ下側積分処理部72と、上下加速度加減算処理部74を備える。これに加え、サスペンション状態算出部44は、ストローク速度積分処理部76と、ストローク速度微分処理部78と、車輪ストローク選択部80と、車輪ストローク速度選択部82を備える。
ここで、車輪ストローク選択部80は、例えば、ストロークセンサ14に故障等の異常が発生している場合に、推定ストローク量をサスペンションSPのストローク量として選択する処理を行う。
以上により、サスペンション状態算出部44は、各サスペンションSP(サスペンションSPFR、サスペンションSPFL、サスペンションSPRR、サスペンションSPRL)に対し、そのストローク位置を個別に算出する。
また、サスペンション状態算出部44は、各サスペンションSPに対し、そのストローク速度を個別に算出する。
図7中に示すように、サスペンション横力算出部46は、車両状態算出部84と、横加速度選択部86と、第一車輪サスペンション横力算出部88と、第二車輪サスペンション横力算出部90と、横力決定部92を備える。
ここで、車両状態算出部84、横加速度選択部86、第一車輪サスペンション横力算出部88、第二車輪サスペンション横力算出部90、横力決定部92で行なう処理は、各サスペンションSPに対して個別に行なう。
そして、車両状態算出部84は、車輪速信号が含む車輪Wの回転速度に基づく車速と、現在操舵角信号が含む現在操舵角を用いて、推定横加速度を算出する。そして、算出した推定横加速度を含む情報信号(以降の説明では、「推定横加速度信号」と記載する場合がある)を、横加速度選択部86へ出力する。
また、車両状態算出部84は、車輪速信号が含む車輪Wの回転速度に基づく車速と、現在操舵角信号が含む現在操舵角を用いて、例えば、車輪Wに対し、予め設定した荷重当たりのスリップ角を、車両状態として算出する。そして、算出した車両状態を含む情報信号(以降の説明では、「算出車両状態信号」と記載する場合がある)を、第二車輪サスペンション横力算出部90へ出力する。
ここで、横加速度選択部86は、例えば、Gセンサ2(横加速度センサの機能を有するブロック)に故障等の異常が発生している場合に、推定横加速度を車体の横方向の加速度として選択する処理を行う。
なお、第二車輪サスペンション横力算出部90に記憶している車輪Wの諸元は、車両Vの走行距離等に応じて更新・変更してもよい。
ここで、横力決定部92が行なう処理では、例えば、第一個別車輪横力信号が含む横力と第二個別車輪横力信号が含む横力のうち一方を、各サスペンションSP別の横力として算出してもよい。また、二つの横力の平均値を、各サスペンションSP別の横力として算出してもよい。
制動力フリクション算出部48は、制動力算出部40から入力を受けた個別車輪制動力信号が含む制動力を、予め記憶している制動力フリクション算出マップに適合させる。これにより、制動力によって、各サスペンションSPに発生するフリクションを算出する。そして、算出した各サスペンションSP別のフリクションを含む情報信号(以降の説明では、「制動力フリクション信号」と記載する場合がある)を、総フリクション算出部56へ出力する。なお、以降の説明では、制動力によりサスペンションSPに発生するフリクションを、「制動力フリクション」と記載する場合がある。
以上により、駆動力フリクション算出部50は、駆動力算出部42が算出した駆動力に基づいて発生する駆動力フリクションを、各サスペンションSP(サスペンションSPFR、サスペンションSPFL)に対して個別に算出する。なお、駆動力フリクションは、駆動力算出部42が算出した駆動力に基づいてサスペンションSPに発生するフリクションの推定値である。
ここで、ストローク位置フリクション算出マップは、図10中に示すように、横軸にサスペンションSPのストローク位置(図中では、「ストローク位置[mm]」と示す)を示すマップである。さらに、ストローク位置フリクション算出マップは、縦軸に、ストローク位置に応じてサスペンションSPに発生するフリクション(図中では、「フリクション‐ストローク位置[N]」と示す)を示すマップである。なお、図10は、ストローク位置フリクション算出マップを示す図である。また、図10中では、ストローク位置に応じて前輪WFと車体とを連結するサスペンションSP(サスペンションSPFR、サスペンションSPFL)に発生するフリクションを実線(図中では、「フリクション‐前軸ストローク位置[mm]」と示す)で示す。また、ストローク位置に応じて後輪WRと車体とを連結するサスペンションSP(サスペンションSPRR、サスペンションSPRL)に発生するフリクションを破線(図中では、「フリクション‐後軸ストローク位置[mm]」と示す)で示す。さらに、図10中に示すストローク位置フリクション算出マップでは、マップの右半分を上方への変位を示す領域として用い、マップの左半分を下方への変位を示す領域として用いる。
また、サスペンション状態フリクション算出部52は、サスペンション状態算出部44が算出したストローク速度に基づいて発生するストローク速度フリクションを、各サスペンションSPに対して個別に算出する。なお、ストローク速度フリクションは、サスペンション状態算出部44が算出したストローク速度に基づいてサスペンションSPに発生するフリクションの推定値である。
なお、上述した制動力フリクション算出マップ、駆動力フリクション算出マップ、ストローク位置フリクション算出マップ、ストローク速度フリクション算出マップ、横力フリクション算出マップは、台上走行や路上走行等で計測したデータを用いて形成する。ここで、台上走行とは、例えば、シャシーダイナモメーター(chassis dynamometer)上の走行である。
次に、図1から図12を参照しつつ、図13を用いて、乗り心地制御ブロック36の構成を説明する。
図13は、乗り心地制御ブロック36の概略構成を示すブロック図である。
図13中に示すように、乗り心地制御ブロック36は、乗り心地制御側車両挙動算出部94と、挙動抑制フリクション算出部112と、乗り心地制御側目標フリクション算出部96を備える。これに加え、乗り心地制御ブロック36は、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98と、制動力指令値算出部100Aと、モータ側駆動力指令値算出部101Aと、エンジン側駆動力指令値算出部102Aを備える。
乗り心地制御側目標フリクション算出部96は、挙動抑制フリクション算出部112から挙動抑制フリクション信号の入力を受け、総フリクション算出部56から各輪総フリクション信号の入力を受ける。また、乗り心地制御側目標フリクション算出部96は、上述した車輪速信号の入力を受ける。
ここで、乗り心地制御用各輪目標フリクションとは、車両Vの上下挙動を抑制するために、各サスペンションSPに発生させるフリクションの目標値である。
乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、乗り心地制御側目標フリクション算出部96から乗り心地制御用フリクション差分値信号の入力を受け、総フリクション算出部56から各輪総フリクション信号の入力を受ける。また、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、乗り心地制御側車両挙動算出部94から推定ヨーレート信号の入力を受ける。
ここで、過不足分の算出は、総フリクション算出部56が算出した総フリクションと、乗り心地制御側目標フリクション算出部96が算出した乗り心地制御用各輪目標フリクションに基づいて行なう。具体的には、例えば、総フリクションが乗り心地制御用各輪目標フリクション未満である場合に、乗り心地制御用各輪目標フリクションから総フリクションを減算して、乗り心地制御用各輪目標フリクションに対する総フリクションの不足分を算出する。
ここで、制駆動力分配指令値とは、制動力によるフリクション及び駆動力によるフリクションのうち少なくとも一方を、各サスペンションSPに発生させる指令値である。
さらに、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、制駆動力分配指令値と過不足分のフリクションに基づき、フリクションを発生させるサスペンションSPにおける、制動力によるフリクションと駆動力によるフリクションの配分比を算出する。これにより、乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する。
したがって、乗り心地制御用各輪目標フリクションは目標値であり、乗り心地制御用各輪目標フリクションに対する各車輪Wのフリクションは実際値である。また、上述した過不足分の補正は、車輪Wの制動力及び車輪Wの駆動力のうち少なくとも一方によりサスペンションSPに発生させるフリクションで行う。
さらに、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、算出した乗り心地制御側制駆動力配分比を含む情報信号(以降の説明では、「乗り心地制御側制駆動力配分比信号」と記載する場合がある)を、制動力指令値算出部100Aへ出力する。これに加え、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、乗り心地制御側制駆動力配分比信号を、モータ側駆動力指令値算出部101A及びエンジン側駆動力指令値算出部102Aへ出力する。
ここで、乗り心地制御側制動力指令値は、乗り心地制御側制駆動力配分比信号が含む乗り心地制御側制駆動力配分比に基づくフリクションをサスペンションSPに発生させるための、車輪Wに対する制動力の最終指令値である。
なお、乗り心地制御側制動力指令値を指令液圧に換算する処理の説明については、後述する。
次に、取得した配分比に基づいて乗り心地制御側モータ駆動力指令値を算出し、この算出した乗り心地制御側モータ駆動力指令値を、駆動用モータ30Aで発生させる駆動トルクの補正値(モータ駆動トルク補正値)に換算する。さらに、換算したモータ駆動トルク補正値を含む情報信号である駆動指令信号を、動力コントロールユニット28へ出力する。
次に、取得した配分比に基づいて乗り心地制御側エンジン駆動力指令値を算出し、この算出した乗り心地制御側エンジン駆動力指令値を、エンジン30Bで発生させる駆動トルクの補正値(エンジン駆動トルク補正値)に換算する。さらに、この換算したエンジン駆動トルク補正値を含む情報信号である駆動指令信号を、動力コントロールユニット28へ出力する。
ここで、乗り心地制御側駆動力指令値は、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98が算出した車輪Wの駆動力の配分比に基づくフリクションをサスペンションSPに発生させるための、車輪Wに対する駆動力の最終指令値(車輪Wの駆動力の指令値)である。また、乗り心地制御側駆動力指令値は、後述するように、車両Vの上下挙動を抑制するためのフリクションを各サスペンションSPに発生させるための、車輪Wに対する駆動力の最終指令値となる。
次に、図1から図13を参照しつつ、図14を用いて、操縦安定性制御ブロック38の構成を説明する。
図14は、操縦安定性制御ブロック38の概略構成を示すブロック図である。
図14中に示すように、操縦安定性制御ブロック38は、推定前後力算出部104と、操縦安定性制御側車両挙動算出部106と、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108を備える。これに加え、操縦安定性制御ブロック38は、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110と、制動力指令値算出部100Bと、モータ側駆動力指令値算出部101Bと、エンジン側駆動力指令値算出部102Bを備える。
また、推定前後力算出部104は、算出した推定前後力を含む情報信号(以降の説明では、「推定前後力信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側車両挙動算出部106へ出力する。
また、操縦安定性制御側車両挙動算出部106は、車速と現在操舵角を用いて、車両Vのロールレートの推定値である推定ロールレートを算出する。そして、算出した推定ロールレートを含む情報信号(以降の説明では、「推定ロールレート信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108へ出力する。なお、推定ロールレートを算出する処理は、車両諸元を参照して行なってもよい。
そして、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108は、推定ロールレートと、推定ピッチレートと、各輪総フリクションと、車速を用いて、操縦安定性制御用各輪目標フリクションを算出する。
さらに、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108は、操縦安定性制御用各輪目標フリクションと各輪総フリクションとの差分値である操縦安定性制御用フリクション差分値を算出する。そして、算出した操縦安定性制御用フリクション差分値を含む情報信号(以降の説明では、「操縦安定性制御用フリクション差分値信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110へ出力する。
そして、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110は、各輪総フリクション及び操縦安定性制御用各輪目標フリクションを用いて、操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する。
制動力指令値算出部100Bは、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110から入力を受けた操縦安定性制御側制駆動力配分比信号が含む操縦安定性制御側制駆動力配分比のうち、車輪Wの制動力の配分比に基づいて、操縦安定性制御側制動力指令値を算出する。
操縦安定性制御側制動力指令値を算出した制動力指令値算出部100Bは、算出した操縦安定性制御側制動力指令値を指令液圧(ブレーキ液圧)に換算する。そして、換算した指令液圧を含む情報信号である制動指令信号を、ブレーキアクチュエータ26へ出力する。なお、操縦安定性制御ブロック38が備える制動力指令値算出部100Bは、乗り心地制御ブロック36が備える制動力指令値算出部100Aと共用してもよく、また、別個の構成としてもよい。
モータ側駆動力指令値算出部101Bは、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110から入力を受けた操縦安定性制御側制駆動力配分比信号が含む操縦安定性制御側制駆動力配分比を参照する。そして、操縦安定性制御側制駆動力配分比のうち、車輪Wの駆動力が含む、駆動用モータ30Aで発生させる駆動力の配分比を取得する。
エンジン側駆動力指令値算出部102Bは、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110から入力を受けた操縦安定性制御側制駆動力配分比信号が含む操縦安定性制御側制駆動力配分比を参照する。そして、操縦安定性制御側制駆動力配分比のうち、車輪Wの駆動力が含む、エンジン30Bで発生させる駆動力の配分比を取得する。
なお、操縦安定性制御側モータ駆動力指令値をモータ駆動トルク補正値に換算する処理と、操縦安定性制御側エンジン駆動力指令値をエンジン駆動トルク補正値に換算する処理の説明は、後述する。
以下、図1から図14を参照しつつ、図15から図17を用いて、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98が乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する処理について説明する。なお、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110が操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する処理も同様であるため、以下の説明では、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98が乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する処理のみを記載する。
ここで、運転者の操作により選択した走行モードは、走行モード選択スイッチ17が出力した走行モード選択信号を参照して検出する。また、図15中に示す目標フリクションの大きさである「小」、「中」、「大」の値は、それぞれ、例えば、車両Vの諸元や現在の車速等に応じて設定する。
そして、制御テーブルに走行モードと目標フリクションを入力した結果に基づき、駆動力フリクション及び制動力フリクションのうち発生対象のフリクションを設定する。これに加え、駆動力フリクションの発生源を設定する。
目標フリクションが「小」である場合は、発生対象のフリクションとして、駆動力フリクションのみを設定し、駆動力フリクションの発生源として、駆動用モータ30Aを設定する。これにより、エンジン30Bよりも応答性が高く、また、分解能の高い駆動用モータ30Aを用いて、車体の挙動を抑制するためのフリクションを発生させる制御を行なう。
目標フリクションが「中」である場合は、発生対象のフリクションとして、制動力フリクションのみを設定する。これにより、電力を消費する駆動用モータ30Aや燃料を消費するエンジン30Bを使用せずに、車体の挙動を抑制するためのフリクションを発生させる制御を行なう。
目標フリクションが「小」である場合は、発生対象のフリクションとして、駆動力フリクションのみを設定し、駆動力フリクションの発生源として、駆動用モータ30Aを設定する。これにより、「通常」モードにおける処理と同様、エンジン30Bよりも応答性が高く、また、分解能の高い駆動用モータ30Aを用いて、車体の挙動を抑制するためのフリクションを発生させる制御を行なう。
この場合、モータフリクションによる制御を主制御とし、制動力フリクションによる制御を補助制御とする。さらに、エンジンフリクションによる制御を、制動力フリクションによる制御の補助制御とする。これにより、モータフリクションによる制御による不足分を制動力フリクションによる制御により補正し、さらに、モータフリクション及び制動力フリクションによる制御による不足分を、エンジンフリクションによる制御により補正する。したがって、摩擦によるエネルギー消費の大きい摩擦ブレーキの使用量や、燃料を消費するエンジン30Bの使用量よりも、駆動用モータ30Aの使用量を増加させる。
目標フリクションが「小」である場合は、発生対象のフリクションとして、駆動力フリクションのみを設定し、駆動力フリクションの発生源として、駆動用モータ30Aを設定する。これにより、「通常」モードにおける処理と同様、エンジン30Bよりも応答性が高く、また、分解能の高い駆動用モータ30Aを用いて、車体の挙動を抑制するためのフリクションを発生させる制御を行なう。
この場合、制動力フリクションによる制御を主制御とし、エンジンフリクションによる制御を補助制御とする。さらに、エンジンフリクションによる制御を、モータフリクションによる制御の補助制御とする。これにより、制動力フリクションによる簡素な制御の不足分をエンジンフリクションによる制御により補正し、さらに、より精密な制御が可能なモータフリクションにより補正して、運転者の要求に応じた精密な制御を行なう。
なお、例えば、バッテリの充電状態であるバッテリSOCの低下時等には、駆動力フリクションの発生源として駆動用モータ30Aを設定しない処理を行う。
ここで、制動力側挙動制御用フリクション算出マップは、図16中に示すように、横軸に車輪Wの制動力(図中では、「制動力」と示す)を示し、縦軸に過不足分のフリクション(図中では、「フリクション」と示す)を示すマップである。また、制動力側挙動制御用フリクション算出マップ中に示す制動力とフリクションとの関係は、車輪Wの制動力と車両Vの挙動との関連に応じて、その関係度合いが変化する。具体的には、車輪Wの制動力が増加しても、車両Vの挙動が急制動とならない限界値に近づくほど、車輪Wの制動力は、その増加度合いが減少する。なお、図16は、制動力側挙動制御用フリクション算出マップを示す図である。
乗り心地制御用駆動力フリクションは、過不足分のフリクションを、例えば、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98が予め記憶している駆動力側挙動制御用フリクション算出マップに適合させて算出する。
具体例としては、以下の式(1)から(3)が成立している状態では、過不足分のフリクションと、車輪Wの制動力と、車輪Wの駆動力との関係を、以下の式(4)で示す関係とする。
過不足分のフリクション< Kb×Fb_max+Ka×Fa_max … (1)
車輪Wの制動力<Fb_max … (2)
車輪Wの駆動力<Fa_max … (3)
車輪Wの制動力=車輪Wの駆動力= 過不足分のフリクション/Kb+Ka
… (4)
車輪Wの駆動力>Fa_max … (5)
車輪Wの駆動力=Fa_max … (6)
車輪Wの制動力=過不足分のフリクション−Fa_max/Kb … (7)
以上により、本実施形態の乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、フリクション発生源を選択する処理と、乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する処理を行なう。
なお、上記の処理は、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110も同様である。
以下、図1から図17を参照しつつ、図18を用いて、制動力指令値を指令液圧に換算する処理について説明する。
制動力指令値を指令液圧に換算する際には、制動力指令値を、例えば、乗り心地制御ブロック36が備える制動力指令値算出部100Aが予め記憶している指令液圧換算マップに適合させる。
また、指令液圧は、以下の式(8)で算出してもよい。
指令液圧=(制動力指令値[N]×タイヤ動半径[m])
/(4×パッドμ×パッド面積×有効径) … (8)
以下、図1から図18を参照しつつ、図19を用いて、駆動力指令値を駆動トルク補正値に換算する処理について説明する。
駆動力指令値を駆動トルク補正値に換算する際には、駆動力指令値を、例えば、乗り心地制御ブロック36が備えるエンジン側駆動力指令値算出部102Aが予め記憶している駆動トルク補正値換算マップに適合させる。なお、乗り心地制御ブロック36が備えるモータ側駆動力指令値算出部101Aも、エンジン側駆動力指令値算出部102Aと同様の駆動トルク補正値換算マップを予め記憶しているが、その説明は省略する。
また、駆動トルク補正値は、以下の式(9)で算出してもよい。
駆動トルク補正値=(駆動力指令値[N]×タイヤ動半径[m]) … (9)
次に、図1から図19を参照しつつ、図20から図23を用いて、本実施形態の車両挙動制御装置1を用いて行なう動作の一例を説明する。
図20は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートである。なお、車両挙動制御装置1は、予め設定したサンプリング時間(例えば、50[msec])毎に、以下に説明する処理を行う。
図20中に示すように、車両挙動制御装置1が処理を開始(START)すると、まず、ステップS100において、フリクション検出ブロック34で総フリクションを算出する処理(図中に示す「推定フリクション算出」)を行う。ステップS100において総フリクションを算出する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS102へ移行する。
ステップS102では、乗り心地制御側目標フリクション算出部96で乗り心地制御用各輪目標フリクションを算出し、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108で操縦安定性制御用各輪目標フリクションを算出する。これにより、ステップS102では、目標フリクションを算出する処理(図中に示す「目標フリクション算出」)を行なう。ステップS102において、目標フリクションを算出する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS104へ移行する。
なお、ステップS104で行なう具体的な処理についての説明は、後述する。
ステップS110では、制動力指令値算出部100A及び制動力指令値算出部100Bにより、制動力指令値を算出する処理(図中に示す「制動力指令値算出」)を行なう。さらに、ステップS110では、制動力指令値をブレーキアクチュエータ26へ出力する処理を行う。ステップS110において、制動力指令値の算出及び出力を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理を終了(END)する。
図21は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートであり、制駆動力配分比を算出する処理を示すフローチャートである。
図21中に示すように、制駆動力配分比を算出する処理を開始(START)すると、まず、ステップS200の処理を行う。
ステップS200では、全ての車輪Wに対し、目標フリクション(乗り心地制御用各輪目標フリクション、操縦安定性制御用各輪目標フリクション)が「0」であるか否かを判定する処理(図中に示す「四輪目標フリクション=0?」)を行う。
一方、ステップS200において、全ての車輪Wのうち少なくとも一つの車輪Wの目標フリクションが「0」ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、制駆動力配分比を算出する処理は、ステップS204へ移行する。
ここで、図1から図21を参照しつつ、図22を用いて、ステップS202で行なう具体的な処理について説明する。
図22中に示すように、抑制制御モードを設定する処理を開始(START)すると、まず、ステップS300の処理を行う。
ステップS300では、走行モード選択スイッチ17が出力した走行モード選択信号に基づき、運転者が選択した走行モードを取得する処理(図中に示す「ドライバ選択モード取得」)を行う。ステップS300において、運転者が選択した走行モード(「通常モード」、「燃費重視モード」、「性能重視モード」のいずれか)を取得する処理を行うと、抑制制御モードを設定する処理は、ステップS302へ移行する。
ステップS304において、運転者が選択した走行モードが「燃費重視モード」である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、抑制制御モードを設定する処理は、ステップS306へ移行する。
ステップS306では、ステップS302で取得した車両Vの状態に基づき、駆動用モータ30Aが駆動力を発生可能か否かを判定する処理(図中に示す「モータ駆動力発生可能?」)を行う。
一方、ステップS306において、駆動用モータ30Aが駆動力を発生可能ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、抑制制御モードを設定する処理は、ステップS312へ移行する。
ステップS308において、運転者が選択した走行モードが「性能重視モード」である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、抑制制御モードを設定する処理は、ステップS314へ移行する。
ステップS310では、抑制制御モードを、モータフリクションによる制御による不足分を制動力フリクションによる制御により補正するモードに設定する処理(図中に示す「Mot主体モード」)を行う。ステップS310において、抑制制御モードを、モータフリクションによる制御による不足分を制動力フリクションによる制御により補正するモードに設定する処理を行うと、抑制制御モードを設定する処理を終了(END)する。
ステップS314では、ステップS302で取得した車両Vの状態に基づき、駆動用モータ30Aが駆動力を発生可能か否かを判定する処理(図中に示す「モータ駆動力発生可能?」)を行う。
一方、ステップS314において、駆動用モータ30Aが駆動力を発生可能ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、抑制制御モードを設定する処理は、ステップS320へ移行する。
ステップS204では、抑制制御モードが、四種類のモード(「Mot主体モード」、「Brkモード」、「Brk主体モード」、「ALLモード」)のうち、いずれのモードに設定されているかを判定する処理(図中に示す「抑制制御モード?」)を行う。
ここで、ステップS200からステップS202の処理を経由して、ステップS204の処理を行う場合、ステップS202で設定した抑制制御モードを参照して、ステップS204の処理を行う。
一方、ステップS200からステップS202の処理を経由せずに、ステップS204の処理を行う場合、前回の処理で設定した抑制制御モードを参照して、ステップS204の処理を行う。
また、ステップS204において、抑制制御モードが「Brkモード」に設定されている(図中に示す「Brkモード」)と判定した場合、制駆動力配分比を算出する処理は、ステップS208へ移行する。
また、ステップS204において、抑制制御モードが「Mot主体モード」に設定されている(図中に示す「Mot主体モード」)と判定した場合、制駆動力配分比を算出する処理は、ステップS212へ移行する。
ステップS208では、制動力フリクションのみを用いて制駆動力配分比を演算する処理(図中に示す「Brkモード」)を行う。ステップS208において、制動力フリクションのみを用いて制駆動力配分比を演算する処理を行うと、制駆動力配分比を算出する処理を終了(END)する。
ステップS212では、モータフリクションによる制御による不足分を制動力フリクションによる制御により補正して、制駆動力配分比を演算する処理(図中に示す「Mot主体モード」)を行う。ステップS212において、モータフリクションによる制御による不足分を制動力フリクションによる制御により補正して、制駆動力配分比を演算する処理を行うと、制駆動力配分比を算出する処理を終了(END)する。
また、図23中に示すタイムチャートには、抑制制御モードを、「Mot主体モード」、「ALLモード」、「Brkモード」、「Brk主体モード」の順番で変更する状態を示す。
抑制制御モードを「ALLモード」に設定している状態(図中に示す「t2」から「t3」の間)では、エンジンフリクションと、モータフリクション及び制動力フリクションにより、目標フリクションを発生させる。
抑制制御モードを「Brkモード」に設定している状態(図中に示す「t4」から「t5」の間)では、制動力フリクションのみにより、目標フリクションを発生させる。これにより、駆動用モータ30Aによる電力の消費と、エンジン30Bによる燃料の消費を抑制するとともに、目標フリクションを発生させる。
ここで、図23(b)中に示すように、エンジンフリクションを制動力フリクションよりも大きくすることにより、走行中の車両Vに運転者が意図しない減速が発生することを防止して、車両Vの乗員が違和感を受ける可能性を減少させることが可能となる。
なお、上述した走行モード選択スイッチ17、制駆動力コントローラ20、ステップS300は、走行モード検出部に対応する。
また、上述したブレーキアクチュエータ26、マスタシリンダ24、各ホイールシリンダ32は、制動力付与部に対応する。
なお、運転者による制動力要求の制御に応じた制動力とは、運転者によるブレーキペダル22の操作に応じて制御する制動力である。また、車両Vのシステム制御に応じた制動力とは、例えば、上述した先行車追従走行制御や車線維持走行制御等に応じて制御する制動力である。
ここで、本実施形態の駆動力付与部は、上述したように、運転者による駆動力要求の制御に応じた駆動力及び車両Vのシステム制御に応じた駆動力に、駆動力指令値に基づく駆動力を合算して、車輪Wに制動力を付与する。
また、上述したサスペンション状態算出部44は、ストローク位置算出部と、ストローク速度算出部に対応する。
また、上述したサスペンション状態フリクション算出部52は、ストローク位置フリクション算出部と、ストローク速度フリクション算出部に対応する。
本実施形態の車両挙動制御装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98及び操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110が、車体の挙動を抑制するためのフリクション及び運転者が選択した走行モードに応じて、フリクション発生源を選択し、さらに、制駆動力配分比を算出する。
このため、運転者が選択した走行モードと、車体の挙動を抑制するためのフリクションに応じて、摩擦ブレーキ、駆動用モータ30A及びエンジン30Bの中から、車体の挙動を抑制するためのフリクションの発生源を選択することが可能となる。
また、運転者が選択した走行モードと、車体の挙動を抑制するためのフリクションに応じて、サスペンションSPに目標値のフリクションを発生させるための、摩擦ブレーキ及びエンジン30Bの使用を抑制することが可能となる。これにより、車輪Wに付与する制動力により摩擦熱として消費されるエネルギーや、エンジン30Bが消費する燃料を減少させることが可能となる。
その結果、摩擦によるエネルギー消費の大きい摩擦ブレーキの使用量や、燃料を消費するエンジン30Bの使用量よりも、駆動用モータ30Aの使用量を増加させることが可能となり、制動力及び駆動力に応じたエネルギー消費の効率を向上させることが可能となる。
その結果、制動力フリクション及びエンジンフリクションのうち、選択したフリクション発生源に応じたフリクションによる簡素な制御の不足分を、より精密な制御が可能なモータフリクションにより補正することが可能となる。これにより、運転者の要求に応じた精密な制御を行なうことが可能となる。
このため、横力が作用しにくい直進走行時等においても、車輪Wの制動力及び駆動力により、サスペンションSPが入力を受ける前後力に基づいて、サスペンションSPに発生するフリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、車両Vの走行状態に応じて適切に算出した、サスペンションSPに発生するフリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となり、車両Vの走行状態に応じた挙動制御をより適切に行うことが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの走行時に変化するサスペンションSPのストローク位置に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPのストローク位置に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの走行時に変化するサスペンションSPのストローク速度に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPのストローク速度に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの旋回走行時においてサスペンションSPに作用する横力に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPに作用する横力に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
その結果、車体のロール挙動を抑制するための制御を反映しない車輪Wの制動力及び駆動力を算出することが可能となり、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、車体の挙動を抑制するための制御を反映しない制動力に加え、車体の挙動を抑制するための制御を反映した制動力を、車輪Wに付与することが可能となる。
その結果、車体の挙動を抑制するための制御を反映しない駆動力に加え、車体の挙動を抑制するための制御を反映した駆動力を、車輪Wに付与することが可能となる。
このため、運転者が選択した走行モードと、車体の挙動を抑制するためのフリクションに応じて、摩擦ブレーキ、駆動用モータ30A及びエンジン30Bの中から、車体の挙動を抑制するためのフリクションの発生源を選択することが可能となる。
また、運転者が選択した走行モードと、車体の挙動を抑制するためのフリクションに応じて、サスペンションSPに目標値のフリクションを発生させるための、摩擦ブレーキ及びエンジン30Bの使用を抑制することが可能となる。これにより、車輪Wに付与する制動力により摩擦熱として消費されるエネルギーや、エンジン30Bが消費する燃料を減少させることが可能となる。
(1)本実施形態では、制動力フリクション、駆動力フリクション、ストローク位置フリクション、ストローク速度フリクション、横力フリクションを合算して、総フリクションを算出したが、これに限定するものではない。すなわち、少なくとも、制動力フリクション及び駆動力フリクションに基づいて、総フリクションを算出すればよい。
17 走行モード選択スイッチ
20 制駆動力コントローラ
24 マスタシリンダ
26 ブレーキアクチュエータ
28 動力コントロールユニット
30 動力ユニット
30A 駆動用モータ
30B エンジン
32 ホイールシリンダ
34 フリクション検出ブロック
36 乗り心地制御ブロック
38 操縦安定性制御ブロック
40 制動力算出部
42 駆動力算出部
44 サスペンション状態算出部
46 サスペンション横力算出部
48 制動力フリクション算出部
50 駆動力フリクション算出部
52 サスペンション状態フリクション算出部
54 横力フリクション算出部
56 総フリクション算出部
94 乗り心地制御側車両挙動算出部
96 乗り心地制御側目標フリクション算出部
98 乗り心地制御側制駆動力配分比算出部
100A 乗り心地制御ブロック36が備える制動力指令値算出部
100B 操縦安定性制御ブロック38が備える制動力指令値算出部
101A 乗り心地制御ブロック36が備えるモータ側駆動力指令値算出部
101B 操縦安定性制御ブロック38が備えるモータ側駆動力指令値算出部
102A 乗り心地制御ブロック36が備えるエンジン側駆動力指令値算出部
102B 操縦安定性制御ブロック38が備えるエンジン側駆動力指令値算出部
106 操縦安定性制御側車両挙動算出部
108 操縦安定性制御側目標フリクション算出部
110 操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部
112 挙動抑制フリクション算出部
V 車両
W 車輪
SP サスペンション
Claims (11)
- 車体と、複数の車輪と、前記車体と各車輪とを連結するサスペンションと、前記車輪の駆動源を形成する駆動用モータ及びエンジンと、を備える車両に対し、前記車体の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記挙動を抑制するためのフリクションを前記サスペンションに発生させるために必要な、前記車輪の制動力と車輪の駆動力との制駆動力配分比を算出する制駆動力配分比算出部と、
前記制駆動力配分比算出部が算出した前記車輪の制動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として制動力指令値を算出する制動力指令値算出部と、
前記制駆動力配分比算出部が算出した前記車輪の駆動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として駆動力指令値を算出する駆動力指令値算出部と、
前記制動力指令値算出部が算出した制動力指令値に基づいて、前記車輪に制動力を付与する制動力付与部と、
前記駆動力指令値算出部が算出した駆動力指令値に基づいて、前記車輪に駆動力を付与する駆動力付与部と、
前記車両の運転者が予め設定した複数の走行モードから選択した走行モードを検出する走行モード検出部と、を備え、
前記制駆動力配分比算出部は、前記挙動を抑制するためのフリクション及び前記走行モード検出部が検出した走行モードに応じて、前記車両が備える摩擦ブレーキ、前記駆動用モータ及び前記エンジンのうち少なくとも一つを、前記挙動を抑制するためのフリクションを前記サスペンションに発生させるフリクション発生源として選択し、さらに、前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする車両挙動制御装置。 - 前記複数の走行モードは、前記車両の走行性能よりも前記制動力及び前記駆動力に応じたエネルギー消費の効率を重視した燃費重視モードを含み、
前記制駆動力配分比算出部は、前記走行モード検出部が検出した走行モードが前記燃費重視モードであると、前記フリクション発生源として少なくとも前記駆動用モータを選択し、さらに、前記フリクション発生源として前記摩擦ブレーキ及び前記エンジンのうち少なくとも一方も選択した場合は、前記駆動用モータによる前記駆動力の配分比を他の配分比よりも大きくして前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする請求項1に記載した車両挙動制御装置。 - 前記複数の走行モードは、前記制動力及び前記駆動力に応じたエネルギー消費の効率よりも前記車両の走行性能を重視した性能重視モードを含み、
前記制駆動力配分比算出部は、前記走行モード検出部が検出した走行モードが前記性能重視モードであると、前記フリクション発生源として少なくとも前記駆動用モータを選択し、さらに、前記フリクション発生源として前記摩擦ブレーキ及び前記エンジンのうち少なくとも一方も選択した場合は、前記駆動用モータ以外の前記フリクション発生源により発生させるフリクションを駆動用モータにより発生させるフリクションで補正するように前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した車両挙動制御装置。 - 前記車輪の制動力を算出する制動力算出部と、
前記制動力算出部が算出した制動力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである制動力フリクションを算出する制動力フリクション算出部と、
前記車輪の駆動力を算出する駆動力算出部と、
前記駆動力算出部が算出した駆動力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである駆動力フリクションを算出する駆動力フリクション算出部と、
前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクションと、前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションと、を合算して、前記サスペンションに発生するフリクションである総フリクションを、各サスペンションに対して個別に算出する総フリクション算出部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションのストローク位置を算出するストローク位置算出部と、
前記ストローク位置算出部が算出したストローク位置に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションであるストローク位置フリクションを算出するストローク位置フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記ストローク位置フリクション算出部が算出したストローク位置フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項4に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションのストローク速度を算出するストローク速度算出部と、
前記ストローク速度算出部が算出したストローク速度に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションであるストローク速度フリクションを算出するストローク速度フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記ストローク速度フリクション算出部が算出したストローク速度フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項4または5に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションの横力を算出するサスペンション横力算出部と、
前記サスペンション横力算出部が算出した横力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである横力フリクションを算出するサスペンション横力フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記サスペンション横力フリクション算出部が算出した横力フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項4から請求項6のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記制動力算出部は、前記車両の走行制御に基づく前記車輪の制動力を算出し、
前記駆動力算出部は、前記車両の走行制御に基づく前記車輪の駆動力を算出することを特徴とする請求項4から請求項7のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記制動力付与部は、前記車両の運転者による制動力要求の制御に応じた制動力及び車両のシステム制御に応じた制動力に、前記制動力指令値算出部が算出した制動力指令値に基づく制動力を合算して、前記車輪に制動力を付与することを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。
- 前記駆動力付与部は、前記車両の運転者による駆動力要求の制御に応じた駆動力及び車両のシステム制御に応じた駆動力に、前記駆動力指令値算出部が算出した駆動力指令値に基づく駆動力を合算して、前記車輪に駆動力を付与することを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。
- 車体と、複数の車輪と、前記車体と各車輪とを連結するサスペンションと、前記車輪の駆動源を形成する駆動用モータ及びエンジンと、を備える車両に対し、前記車体の挙動を制御する車両挙動制御方法であって、
前記車両の運転者が予め設定した複数の走行モードから選択した走行モードを検出し、
前記挙動を抑制するためのフリクション及び前記検出した走行モードに応じて、前記車両が備える摩擦ブレーキ、前記駆動用モータ及び前記エンジンのうち少なくとも一つを、前記挙動を抑制するためのフリクションを前記サスペンションに発生させるフリクション発生源として選択し、さらに、前記挙動を抑制するためのフリクションを前記サスペンションに発生させるために必要な、前記車輪の制動力と車輪の駆動力との制駆動力配分比を算出し、
前記算出した前記車輪の制動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として制動力指令値を算出し、当該算出した制動力指令値に基づいて前記車輪に制動力を付与し、
前記算出した前記車輪の駆動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として駆動力指令値を算出し、当該算出した駆動力指令値に基づいて前記車輪に駆動力を付与することを特徴とする車両挙動制御方法。
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