JP6098363B2 - 車両挙動制御装置及び車両挙動制御方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載されている技術では、車両に作用する横力に基づいて、サスペンションに発生するフリクションを検出する。そして、車体の挙動を抑制するための抑制目標値から、検出したフリクションを減算して、車体の挙動を抑制するためにサスペンションで発生させるフリクションの目標値を算出する。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、摩擦ブレーキの応答性が低い制動力の領域において、サスペンションに目標値のフリクションを発生させる制御の応答性を向上可能な、車両挙動制御装置及び車両挙動制御方法を提供することを目的とする。
ここで、制動力換算値は、車体の挙動を抑制するためのフリクションを車輪の制動力に換算した値である。また、制駆動力配分比は、車体の挙動を抑制するためのフリクションを車体と各車輪とを連結するサスペンションに発生させるために必要な、車輪の制動力と車輪の駆動力との配分比である。
これにより、高い応答性を有する駆動用モータにより車体の挙動を抑制するためのフリクションを発生させて、摩擦ブレーキの応答性が低い制動力の領域における、サスペンションに目標値のフリクションを発生させる制御の応答性を向上させることが可能となる。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の車両挙動制御装置1を備える車両Vの概略構成を示すブロック図である。
図1中に示すように、車両挙動制御装置1を備える車両Vは、Gセンサ2と、ヨーレートセンサ4と、操舵角センサ6と、ドライバブレーキ液圧センサ8と、アクセル開度センサ10を備える。これに加え、車両Vは、シフトポジションセンサ12と、ストロークセンサ14と、走行支援モードスイッチ16と、車輪速センサ18と、制駆動力コントローラ20と、ブレーキペダル22と、マスタシリンダ24を備える。さらに、車両Vは、ブレーキアクチュエータ26と、動力コントロールユニット28と、動力ユニット30と、ホイールシリンダ32と、車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)と、サスペンションSPを備える。
バネ上上下加速度センサの機能を有するブロックは、車両Vに対し、車体のバネ上部分における上下方向への加速度を検出する。そして、検出した加速度を含む情報信号(以降の説明では、「バネ上上下加速度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
横加速度センサの機能を有するブロックは、車両Vに対し、車体の横方向(車幅方向)への加速度(以降の説明では、「実測横加速度」と記載する場合がある)を検出する。そして、検出した実測横加速度を含む情報信号(以降の説明では、「実測横加速度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
ヨーレートセンサ4は、車両Vのヨーレート(車体が旋回する方向への回転角の変化速度)を検出し、検出したヨーレートを含む情報信号(以降の説明では、「ヨーレート信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
また、操舵角センサ6は、中立位置を基準とした操舵操作子の現在の回転角度(操舵操作量)である、現在操舵角を検出する。そして、操舵角センサ6は、検出した現在操舵角を含む情報信号(以降の説明では、「現在操舵角信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
アクセル開度センサ10は、図示しないアクセルペダルの開度を検出し、検出した開度を含む情報信号(以降の説明では、「アクセル開度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
ストロークセンサ14は、サスペンションSPの実測ストローク量(実測変位量)を検出し、検出した実測ストローク量を含む情報信号(以降の説明では、「実測ストローク量信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。なお、ストロークセンサ14は、各車輪Wに対して設置したサスペンションSPの実測ストローク量を、それぞれ個別に検出して、実測ストローク量信号を生成する。
車輪速センサ18は、車輪Wの回転速度を検出し、検出した回転速度を含む情報信号(以降の説明では、「車輪速信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
制駆動力コントローラ20は、車両V全体を制御するものであり、マイクロコンピュータで構成する。なお、マイクロコンピュータは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えた構成である。
また、制駆動力コントローラ20は、フリクション検出ブロック34と、乗り心地制御ブロック36と、操縦安定性制御ブロック38を備える。なお、フリクション検出ブロック34、乗り心地制御ブロック36、操縦安定性制御ブロック38の構成については、後述する。
マスタシリンダ24は、運転者のペダル踏力に応じて、二系統の液圧を生成する(タンデム式)。なお、本実施形態では、一例として、マスタシリンダ24が、プライマリ側を左前輪・右後輪のホイールシリンダ32に伝達し、セカンダリ側を右前輪・左後輪のホイールシリンダ32に伝達する方式(ダイアゴナルスプリット方式)を用いる場合を説明する。
また、ブレーキアクチュエータ26は、ABS制御が作動しているか否かを示すフラグ情報信号(以降の説明では、「ABS作動フラグ信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。なお、ABSとは、「Antilocked Braking System」の略称である。
なお、車両Vが備えるシステムとは、例えば、先行車追従走行制御を行なうシステムであり、車両Vと先行車との車間距離を、車両Vの車速に応じた距離に制御するためのシステムである。
動力コントロールユニット28は、制駆動力コントローラ20から入力を受けた駆動指令信号に応じて、動力ユニット30が発生させる駆動力を制御する。
また、動力コントロールユニット28は、上述したTCS制御が作動しているか否かを示すフラグ情報信号(以降の説明では、「TCS作動フラグ信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
なお、前輪に対するトルクの制御値とは、例えば、右前輪WFRと左前輪WFLに対し、動力ユニット30が発生させているトルクを配分する比率である。また、前輪に対するトルクの制御値とは、例えば、上述したVDC制御により右前輪WFRと左前輪WFLに加わるトルクである。すなわち、本実施形態の車両Vは、右前輪WFR及び左前輪WFLが駆動輪であり、右後輪WRR及び左後輪WRLが従動輪である二輪駆動(2WD:Two Wheel Drive)車である。
動力ユニット30は、車両Vの駆動力を発生させる構成であり、駆動用モータを備える。すなわち、本実施形態の車両挙動制御装置1を備える車両Vは、車輪Wの駆動源を駆動用モータにより形成する、電気自動車(EV:Electric Vehicle)である。
駆動用モータは、例えば、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルを巻き付けた同期型モータを用いて形成する。また、駆動用モータは、動力コントロールユニット28から入力を受けた制御指令に基づき、インバータ(図示せず)で作り出した三相交流を印加することで制御可能である。さらに、駆動用モータは、バッテリ(図示せず)からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することも可能である(この状態を「力行」と呼ぶ)。
ホイールシリンダ32は、ディスクブレーキを構成するブレーキパッド(図示せず)を、各車輪Wと一体に回転するディスクロータ(図示せず)に押し付けるための押圧力を発生する。
サスペンションSP(サスペンション装置)は、各車輪Wと車両Vの車体との間に設置した懸架装置である。
また、サスペンションSPは、具体的に、車体と各車輪W側の部材とを連結するリンク部材と、各車輪Wと車体との相対運動を緩衝させるバネと、各車輪Wと車体との相対運動を減衰させるショックアブソーバを有する。
次に、図1を参照しつつ、図2を用いて、ブレーキアクチュエータ26の構成を説明する。
図2は、ブレーキアクチュエータ26の構成を示すブロック図である。
ブレーキアクチュエータ26は、上述したABS制御、TCS制御、VDC制御等に用いる制動流体圧制御回路を用いて形成する。
また、ブレーキアクチュエータ26は、運転者のブレーキ操作に係らず、各ホイールシリンダ32FR、32FL、32RR、32RLの液圧を、増圧・保持・減圧可能に形成する。
プライマリ側は、第一ゲートバルブ122Aと、インレットバルブ124FLと、インレットバルブ124RRと、アキュムレータ126Aを備えている。これに加え、プライマリ側は、アウトレットバルブ128FLと、アウトレットバルブ128RRと、第二ゲートバルブ1と、ポンプ132と、ダンパー室134Aを備えている。
インレットバルブ124FLは、第一ゲートバルブ122Aとホイールシリンダ32FLとの間の流路を閉鎖可能な、ノーマルオープン型のバルブである。
インレットバルブ124RRは、第一ゲートバルブ122Aとホイールシリンダ32RRとの間の流路を閉鎖可能な、ノーマルオープン型のバルブである。
アウトレットバルブ128FLは、ホイールシリンダ32FLとアキュムレータ126との間の流路を開放可能な、ノーマルクローズ型のバルブである。
アウトレットバルブ128RRは、ホイールシリンダ32RRとアキュムレータ126との間の流路を開放可能な、ノーマルクローズ型のバルブである。
ポンプ132は、負荷圧力に係りなく略一定の吐出量を確保可能な、歯車ポンプ、ピストンポンプ等、容積形のポンプを用いて形成する。
ダンパー室134Aは、ポンプ132の吐出側に配設されており、ポンプ132から吐出されたブレーキ液の脈動を抑制して、ペダル振動を低減させる。
また、各第一ゲートバルブ122及び各インレットバルブ124は、非励磁のノーマル位置で流路を開放し、各アウトレットバルブ128及び各第二ゲートバルブ130は、非励磁のノーマル位置で流路を閉鎖するように形成する。
そして、アキュムレータ126に流入した液圧は、ポンプ132によって吸入され、マスタシリンダ24に戻される。
したがって、制駆動力コントローラ20は、各第一ゲートバルブ122、各インレットバルブ124、各アウトレットバルブ128、各第二ゲートバルブ130、ポンプ132を駆動制御して、各ホイールシリンダ32の液圧を、増圧・保持・減圧する。
次に、図1及び図2を参照しつつ、図3から図12を用いて、フリクション検出ブロック34の構成を説明する。
図3は、フリクション検出ブロック34の概略構成を示すブロック図である。
図3中に示すように、フリクション検出ブロック34は、制動力算出部40と、駆動力算出部42と、サスペンション状態算出部44と、サスペンション横力算出部46を備える。これに加え、フリクション検出ブロック34は、制動力フリクション算出部48と、駆動力フリクション算出部50と、サスペンション状態フリクション算出部52と、横力フリクション算出部54と、総フリクション算出部56を備える。
図4中に示すように、制動力算出部40は、ブレーキ液圧合算部58と、ブレーキ液圧値選択部60と、車輪制動力算出部62を備える。
ここで、ブレーキ液圧合算部58、ブレーキ液圧値選択部60及び車輪制動力算出部62で行なう処理は、各車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)に対して個別に行なう。
そして、ブレーキ液圧合算部58は、入力を受けたドライバブレーキ液圧信号が含む液圧と、付加機能ブレーキ液圧信号及びVDC液圧信号が含む指令値に応じた液圧を合算する。そして、合算した液圧を含む情報信号(以降の説明では、「液圧合算値信号」と記載する場合がある)を、ブレーキ液圧値選択部60へ出力する。
ブレーキ液圧値選択部60は、例えば、マルチプレクサ(multiplexer)回路を用いて形成する。また、ブレーキ液圧値選択部60は、ブレーキアクチュエータ26から、ABS作動フラグ信号(図中では、「ABS作動フラグ」と示す)の入力を受ける。また、ブレーキ液圧値選択部60は、ブレーキ液圧合算部58から、液圧合算値信号の入力を受ける。また、ブレーキ液圧値選択部60は、予め記憶しているブレーキ液圧が「0」である場合の液圧値を示す情報信号(図中では、「液圧ゼロ」と示す)の入力を受ける。
また、制動力算出部40は、車両Vの走行制御に基づく車輪Wの制動力を算出する。ここで、車両Vの走行制御とは、車両Vの運転者による制動力要求の制御と、運転者による駆動力要求の制御と、車両Vのシステム制御を含む。また、車両Vのシステム制御とは、例えば、上述した先行車追従走行制御や、車線維持走行制御(レーンキープ制御)等である。
図5中に示すように、駆動力算出部42は、推定トルク算出部64と、トルク値選択部66と、車輪駆動力算出部68を備える。
ここで、推定トルク算出部64、トルク値選択部66及び車輪駆動力算出部68で行なう処理は、各車輪Wに対して個別に行なう。
推定トルク算出部64は、アクセル開度センサ10から、アクセル開度信号(図中では、「アクセル開度」と示す)の入力を受ける。また、推定トルク算出部64は、動力コントロールユニット28から、現在トルク信号(図中では、「現在トルク」と示す)と、トルクコントロール信号(図中では、「トルクコントロール機能」と示す)の入力を受ける。
トルク値選択部66は、例えば、ブレーキ液圧値選択部60と同様、マルチプレクサ回路を用いて形成する。また、トルク値選択部66は、動力コントロールユニット28から、TCS作動フラグ信号(図中では、「TCS作動フラグ」と示す)の入力を受ける。また、トルク値選択部66は、推定トルク算出部64から、推定トルク信号の入力を受ける。また、トルク値選択部66は、予め記憶しているトルクが「0」である状態を示す情報信号(図中では、「トルクゼロ」と示す)の入力を受ける。
以上により、駆動力算出部42は、各車輪Wに対し、その駆動力を個別に算出する。
また、駆動力算出部42は、車両Vの走行制御に基づく車輪Wの駆動力を算出する。なお、車両Vの走行制御とは、上述した制動力算出部40の説明と同様である。
図6中に示すように、サスペンション状態算出部44は、バネ上側積分処理部70と、バネ下側積分処理部72と、上下加速度加減算処理部74を備える。これに加え、サスペンション状態算出部44は、ストローク速度積分処理部76と、ストローク速度微分処理部78と、車輪ストローク選択部80と、車輪ストローク速度選択部82を備える。
ここで、バネ上側積分処理部70、バネ下側積分処理部72、上下加速度加減算処理部74、ストローク速度積分処理部76で行なう処理は、各サスペンションSPに対して個別に行なう。これに加え、ストローク速度微分処理部78、車輪ストローク選択部80、車輪ストローク速度選択部82で行なう処理は、各サスペンションSPに対して個別に行なう。
ストローク速度微分処理部78は、ストロークセンサ14から入力を受けた実測ストローク量信号が含むサスペンションSPの実測ストローク量を単位時間で微分し、サスペンションSPの実測ストローク速度を算出する。そして、算出したサスペンションSPの実測ストローク速度を含む情報信号(以降の説明では、「実測ストローク速度信号」と記載する場合がある)を、車輪ストローク速度選択部82へ出力する。
ここで、車輪ストローク選択部80は、例えば、ストロークセンサ14に故障等の異常が発生している場合に、推定ストローク量をサスペンションSPのストローク量として選択する処理を行う。
以上により、サスペンション状態算出部44は、各サスペンションSP(サスペンションSPFR、サスペンションSPFL、サスペンションSPRR、サスペンションSPRL)に対し、そのストローク位置を個別に算出する。
また、サスペンション状態算出部44は、各サスペンションSPに対し、そのストローク速度を個別に算出する。
図7中に示すように、サスペンション横力算出部46は、車両状態算出部84と、横加速度選択部86と、第一車輪サスペンション横力算出部88と、第二車輪サスペンション横力算出部90と、横力決定部92を備える。
ここで、車両状態算出部84、横加速度選択部86、第一車輪サスペンション横力算出部88、第二車輪サスペンション横力算出部90、横力決定部92で行なう処理は、各サスペンションSPに対して個別に行なう。
そして、車両状態算出部84は、車輪速信号が含む車輪Wの回転速度に基づく車速と、現在操舵角信号が含む現在操舵角を用いて、推定横加速度を算出する。そして、算出した推定横加速度を含む情報信号(以降の説明では、「推定横加速度信号」と記載する場合がある)を、横加速度選択部86へ出力する。
また、車両状態算出部84は、車輪速信号が含む車輪Wの回転速度に基づく車速と、現在操舵角信号が含む現在操舵角を用いて、例えば、車輪Wに対し、予め設定した荷重当たりのスリップ角を、車両状態として算出する。そして、算出した車両状態を含む情報信号(以降の説明では、「算出車両状態信号」と記載する場合がある)を、第二車輪サスペンション横力算出部90へ出力する。
ここで、横加速度選択部86は、例えば、Gセンサ2(横加速度センサの機能を有するブロック)に故障等の異常が発生している場合に、推定横加速度を車体の横方向の加速度として選択する処理を行う。
なお、第二車輪サスペンション横力算出部90に記憶している車輪Wの諸元は、車両Vの走行距離等に応じて更新・変更してもよい。
ここで、横力決定部92が行なう処理では、例えば、第一個別車輪横力信号が含む横力と第二個別車輪横力信号が含む横力のうち一方を、各サスペンションSP別の横力として算出してもよい。また、二つの横力の平均値を、各サスペンションSP別の横力として算出してもよい。
制動力フリクション算出部48は、制動力算出部40から入力を受けた個別車輪制動力信号が含む制動力を、予め記憶している制動力フリクション算出マップに適合させる。これにより、制動力によって、各サスペンションSPに発生するフリクションを算出する。そして、算出した各サスペンションSP別のフリクションを含む情報信号(以降の説明では、「制動力フリクション信号」と記載する場合がある)を、総フリクション算出部56へ出力する。なお、以降の説明では、制動力によりサスペンションSPに発生するフリクションを、「制動力フリクション」と記載する場合がある。
なお、上述した制動力フリクション算出マップ、駆動力フリクション算出マップ、ストローク位置フリクション算出マップ、ストローク速度フリクション算出マップ、横力フリクション算出マップは、台上走行や路上走行等で計測したデータを用いて形成する。ここで、台上走行とは、例えば、シャシーダイナモメーター(chassis dynamometer)上の走行である。
これにより、一つのサスペンションSPの総フリクション(以降の説明では、「各輪総フリクション」と記載する場合がある)を算出する。さらに、算出した各輪総フリクションを含む情報信号(以降の説明では、「各輪総フリクション信号」と記載する場合がある)を、乗り心地制御ブロック36及び操縦安定性制御ブロック38へ出力する。
次に、図1から図12を参照しつつ、図13を用いて、乗り心地制御ブロック36の構成を説明する。
図13は、乗り心地制御ブロック36の概略構成を示すブロック図である。
図13中に示すように、乗り心地制御ブロック36は、乗り心地制御側車両挙動算出部94と、挙動抑制フリクション算出部112と、乗り心地制御側目標フリクション算出部96を備える。これに加え、乗り心地制御ブロック36は、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98と、制動力指令値算出部100Aと、駆動力指令値算出部102Aを備える。
乗り心地制御側目標フリクション算出部96は、挙動抑制フリクション算出部112から挙動抑制フリクション信号の入力を受け、総フリクション算出部56から各輪総フリクション信号の入力を受ける。また、乗り心地制御側目標フリクション算出部96は、上述した車輪速信号の入力を受ける。
ここで、乗り心地制御用各輪目標フリクションとは、車両Vの上下挙動を抑制するために、各サスペンションSPに発生させるフリクションの目標値である。
乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、乗り心地制御側目標フリクション算出部96から乗り心地制御用フリクション差分値信号の入力を受け、総フリクション算出部56から各輪総フリクション信号の入力を受ける。また、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、乗り心地制御側車両挙動算出部94から推定ヨーレート信号の入力を受ける。
ここで、過不足分の算出は、総フリクション算出部56が算出した総フリクションと、乗り心地制御側目標フリクション算出部96が算出した乗り心地制御用各輪目標フリクションに基づいて行なう。具体的には、例えば、総フリクションが乗り心地制御用各輪目標フリクション未満である場合に、乗り心地制御用各輪目標フリクションから総フリクションを減算して、乗り心地制御用各輪目標フリクションに対する総フリクションの不足分を算出する。
ここで、制駆動力分配指令値とは、制動力によるフリクション及び駆動力によるフリクションのうち少なくとも一方を、各サスペンションSPに発生させる指令値である。
また、駆動力によるフリクションには、駆動用モータが発生させる駆動力によるフリクションがある。なお、以降の説明では、駆動用モータが発生させる駆動力によるフリクションを、「モータフリクション」と記載する場合がある。
ここで、乗り心地制御側制駆動力配分比とは、乗り心地制御用各輪目標フリクションに対する総フリクションの過不足分に相当するフリクションをサスペンションSPに発生させるために必要な、車輪Wの制動力と車輪Wの駆動力との配分比である。
したがって、乗り心地制御用各輪目標フリクションは目標値であり、乗り心地制御用各輪目標フリクションに対する各車輪Wのフリクションは実際値である。また、上述した過不足分の補正は、車輪Wの制動力及び車輪Wの駆動力のうち少なくとも一方によりサスペンションSPに発生させるフリクションで行う。
さらに、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、算出した乗り心地制御側制駆動力配分比を含む情報信号(以降の説明では、「乗り心地制御側制駆動力配分比信号」と記載する場合がある)を、制動力指令値算出部100Aへ出力する。これに加え、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、乗り心地制御側制駆動力配分比信号を、駆動力指令値算出部102Aへ出力する。
ここで、乗り心地制御側制動力指令値は、乗り心地制御側制駆動力配分比信号が含む乗り心地制御側制駆動力配分比に基づくフリクションをサスペンションSPに発生させるための、車輪Wに対する制動力の最終指令値である。
なお、乗り心地制御側制動力指令値を指令液圧に換算する処理の説明については、後述する。
駆動力指令値算出部102Aは、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98から入力を受けた乗り心地制御側制駆動力配分比信号が含む乗り心地制御側制駆動力配分比を参照する。そして、乗り心地制御側制駆動力配分比のうち、車輪Wの駆動力が含む、駆動用モータで発生させる駆動力の配分比を取得する。
なお、乗り心地制御側モータ駆動力指令値をモータ駆動トルク補正値に換算する処理の説明は、後述する。
次に、図1から図13を参照しつつ、図14を用いて、操縦安定性制御ブロック38の構成を説明する。
図14は、操縦安定性制御ブロック38の概略構成を示すブロック図である。
図14中に示すように、操縦安定性制御ブロック38は、推定前後力算出部104と、操縦安定性制御側車両挙動算出部106と、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108を備える。これに加え、操縦安定性制御ブロック38は、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110と、制動力指令値算出部100Bと、駆動力指令値算出部102Bを備える。
また、推定前後力算出部104は、算出した推定前後力を含む情報信号(以降の説明では、「推定前後力信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側車両挙動算出部106へ出力する。
操縦安定性制御側車両挙動算出部106は、上述した車輪速信号(図中では、「車速」と示す)、現在操舵角信号(図中では、「舵角」と示す)、推定前後力信号の入力を受ける。また、操縦安定性制御側車両挙動算出部106には、予め、車両諸元を記憶させてある。
そして、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108は、推定ロールレートと、推定ピッチレートと、各輪総フリクションと、車速を用いて、操縦安定性制御用各輪目標フリクションを算出する。
さらに、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108は、操縦安定性制御用各輪目標フリクションと各輪総フリクションとの差分値である操縦安定性制御用フリクション差分値を算出する。そして、算出した操縦安定性制御用フリクション差分値を含む情報信号(以降の説明では、「操縦安定性制御用フリクション差分値信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110へ出力する。
そして、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110は、各輪総フリクション及び操縦安定性制御用各輪目標フリクションを用いて、操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する。
制動力指令値算出部100Bは、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110から入力を受けた操縦安定性制御側制駆動力配分比信号が含む操縦安定性制御側制駆動力配分比のうち、車輪Wの制動力の配分比に基づいて、操縦安定性制御側制動力指令値を算出する。
操縦安定性制御側制動力指令値を算出した制動力指令値算出部100Bは、算出した操縦安定性制御側制動力指令値を指令液圧(ブレーキ液圧)に換算する。そして、換算した指令液圧を含む情報信号である制動指令信号を、ブレーキアクチュエータ26へ出力する。なお、操縦安定性制御ブロック38が備える制動力指令値算出部100Bは、乗り心地制御ブロック36が備える制動力指令値算出部100Aと共用してもよく、また、別個の構成としてもよい。
駆動力指令値算出部102Bは、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110から入力を受けた操縦安定性制御側制駆動力配分比信号が含む操縦安定性制御側制駆動力配分比を参照する。そして、操縦安定性制御側制駆動力配分比のうち、車輪Wの駆動力が含む、駆動用モータで発生させる駆動力の配分比を取得する。
なお、操縦安定性制御側モータ駆動力指令値をモータ駆動トルク補正値に換算する処理の説明は、後述する。
以下、図1から図14を参照しつつ、図15から図18を用いて、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98が乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する処理について説明する。なお、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110が操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する処理も同様であるため、以下の説明では、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98が乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する処理のみを記載する。
ここで、制動力側挙動制御用フリクション算出マップは、図15中に示すように、横軸に車輪Wの制動力(図中では、「制動力」と示す)を示し、縦軸に過不足分のフリクション(図中では、「フリクション」と示す)を示すマップである。また、制動力側挙動制御用フリクション算出マップ中に示す制動力とフリクションとの関係は、車輪Wの制動力と車両Vの挙動との関連に応じて、その関係度合いが変化する。具体的には、車輪Wの制動力が増加しても、車両Vの挙動が急制動とならない限界値に近づくほど、車輪Wの制動力は、その増加度合いが減少する。なお、図15は、制動力側挙動制御用フリクション算出マップを示す図である。
乗り心地制御用駆動力フリクションは、過不足分のフリクションを、例えば、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98が予め記憶している駆動力側挙動制御用フリクション算出マップに適合させて算出する。
具体例としては、以下の式(1)から(3)が成立している状態では、過不足分のフリクションと、車輪Wの制動力と、車輪Wの駆動力との関係を、以下の式(4)で示す関係とする。
過不足分のフリクション< Kb×Fb_max+Ka×Fa_max … (1)
車輪Wの制動力<Fb_max … (2)
車輪Wの駆動力<Fa_max … (3)
車輪Wの制動力=車輪Wの駆動力= 過不足分のフリクション/Kb+Ka
… (4)
車輪Wの駆動力>Fa_max … (5)
車輪Wの駆動力=Fa_max … (6)
車輪Wの制動力=過不足分のフリクション−Fa_max/Kb … (7)
ここで、フリクション発生源としては、摩擦ブレーキ(ブレーキアクチュエータ26)及び駆動用モータのうち少なくとも駆動用モータを選択する。また、フリクション発生源を選択する処理と、乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する処理は、車体の挙動を抑制するためのフリクションである目標フリクションに応じて行なう。
一方、制動力換算値が制動力最小閾値以上であると、フリクション発生源として摩擦ブレーキ及び駆動用モータを選択し、乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する。
なお、上記の処理は、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110も同様である。
以下、図1から図16を参照しつつ、図17を用いて、制動力指令値を指令液圧に換算する処理について説明する。
制動力指令値を指令液圧に換算する際には、制動力指令値を、例えば、乗り心地制御ブロック36が備える制動力指令値算出部100Aが予め記憶している指令液圧換算マップに適合させる。
ここで、指令液圧換算マップは、図17中に示すように、横軸に制動力指令値を示し、縦軸に指令液圧を示すマップである。なお、図17は、指令液圧換算マップを示す図である。
また、指令液圧は、以下の式(8)で算出してもよい。
指令液圧=(制動力指令値[N]×タイヤ動半径[m])
/(4×パッドμ×パッド面積×有効径) … (8)
以下、図1から図17を参照しつつ、図18を用いて、駆動力指令値をモータ駆動トルク補正値に換算する処理について説明する。
駆動力指令値をモータ駆動トルク補正値に換算する際には、駆動力指令値を、例えば、乗り心地制御ブロック36が備える駆動力指令値算出部102Aが予め記憶している駆動トルク補正値換算マップに適合させる。
ここで、駆動トルク補正値換算マップは、図18中に示すように、横軸に駆動力指令値を示し、縦軸に駆動トルク補正値を示すマップである。なお、図18は、駆動トルク補正値換算マップを示す図である。
また、駆動トルク補正値は、以下の式(9)で算出してもよい。
駆動トルク補正値=(駆動力指令値[N]×タイヤ動半径[m]) … (9)
次に、図1から図18を参照しつつ、図19から図24を用いて、本実施形態の車両挙動制御装置1を用いて行なう動作の一例を説明する。
図19は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートである。なお、車両挙動制御装置1は、予め設定したサンプリング時間(例えば、50[msec])毎に、以下に説明する処理を行う。
図19中に示すように、車両挙動制御装置1が処理を開始(START)すると、まず、ステップS100において、フリクション検出ブロック34で総フリクションを算出する処理(図中に示す「推定フリクション算出」)を行う。ステップS100において総フリクションを算出する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS102へ移行する。
ステップS102では、乗り心地制御側目標フリクション算出部96で乗り心地制御用各輪目標フリクションを算出し、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108で操縦安定性制御用各輪目標フリクションを算出する。これにより、ステップS102では、目標フリクションを算出する処理(図中に示す「目標フリクション算出」)を行なう。ステップS102において、目標フリクションを算出する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS104へ移行する。
なお、ステップS104で行なう具体的な処理についての説明は、後述する。
ステップS108では、制動力指令値算出部100A及び制動力指令値算出部100Bにより、制動力指令値を算出する処理(図中に示す「制動力指令値算出」)を行なう。さらに、ステップS108では、制動力指令値をブレーキアクチュエータ26へ出力する処理を行う。ステップS108において、制動力指令値の算出及び出力を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理を終了(END)する。
図20は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートであり、制駆動力配分比を算出する処理を示すフローチャートである。
図20中に示すように、制駆動力配分比を算出する処理を開始(START)すると、まず、ステップS200の処理を行う。
ステップS200では、全ての車輪Wに対し、目標フリクション(乗り心地制御用各輪目標フリクション、操縦安定性制御用各輪目標フリクション)が「0」であるか否かを判定する処理(図中に示す「四輪目標フリクション=0?」)を行う。
一方、ステップS200において、全ての車輪Wのうち少なくとも一つの車輪Wの目標フリクションが「0」ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、制駆動力配分比を算出する処理は、ステップS202へ移行する。
ここで、制動力最小閾値は、目標フリクションをサスペンションSPに発生させるフリクション発生源として駆動用モータのみを選択するための基準値である。また、制動力最小閾値は、例えば、ブレーキアクチュエータ26(液圧制御装置)の応答性能等に応じて予め設定し、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98及び操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110に記憶させておく。
ステップS204では、目標フリクションを車輪Wの制動力に換算する処理(図中に示す「目標フリクション‐制動力換算処理」)を行う。ステップS204において、目標フリクションを車輪Wの制動力に換算する処理を行うと、制駆動力配分比を算出する処理は、ステップS206へ移行する。
ステップS206において、制動力換算値が制動力最小閾値未満である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、制駆動力配分比を算出する処理は、ステップS208へ移行する。
ステップS208では、目標フリクションをモータフリクションのみにより発生させるように、駆動力指令値を算出する処理(図中に示す「駆動力指令値=目標フリクション」)を行う。ステップS208において、駆動力指令値を算出する処理を行うと、制駆動力配分比を算出する処理は、ステップS210へ移行する。
すなわち、制駆動力配分比を算出する処理を開始し、ステップS210を経由して制駆動力配分比を算出する処理を終了すると、制動力フリクションを用いずに、モータフリクションのみで目標フリクションを発生させる処理を行うこととなる。
ステップS212において、制駆動力配分比が駆動力に分配されている(図中に示す「Yes」)と判定した場合、制駆動力配分比を算出する処理は、ステップS214へ移行する。
ステップS214では、今回の処理で算出した現在値の目標フリクションが、前回行なった処理において算出した前回値の目標フリクションを超えているか否かを判定する処理(図中に示す「目標フリクション現在値>目標フリクション前回値?」)を行う。
一方、ステップS214において、目標フリクション現在値が目標フリクション前回値以下である(図中に示す「No」)と判定した場合、制駆動力配分比を算出する処理は、ステップS218へ移行する。
すなわち、制駆動力配分比を算出する処理を開始し、ステップS220を経由して制駆動力配分比を算出する処理を終了すると、モータフリクションを用いずに、制動力フリクションのみで目標フリクションを発生させる処理を行うこととなる。
図21は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートであり、フリクション増加側処理を示すフローチャートである。
図21中に示すように、フリクション増加側処理を開始(START)すると、まず、ステップS300の処理を行う。
目標フリクション不足分=目標フリクション現在値−駆動分前回値 … (10)
すなわち、ステップS300では、今回の処理で算出した現在値の目標フリクションから、前回の処理で算出した駆動力指令値に応じたモータフリクションを減算して、目標フリクションの不足分を算出する処理を行う。
本実施形態では、一例として、上述した制動力最小閾値以上の目標フリクションを、制動力フリクションを主体に発生させる。これに加え、目標フリクションに対する制動力フリクションの不足分をモータフリクションにより補足するように、駆動輪で発生させる制動力フリクションの目標値を算出する場合を説明する。
ステップS304では、ステップS300で算出した目標フリクションの不足分に応じて、従動輪(右後輪WRR及び左後輪WRL)で発生させる制動力フリクションの目標値を算出する処理(図中に示す「従動輪側制動力目標フリクション算出」)を行う。ステップS304において、従動輪で発生させる制動力フリクションの目標値を算出する処理を行うと、フリクション増加側処理は、ステップS306へ移行する。
すなわち、本実施形態では、挙動を抑制するためのフリクションが前回の処理から増加すると、モータフリクションの大きさを保持するとともに、制動力フリクションを増加させるように、制駆動力配分比を算出する処理を行う。
図22は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートであり、フリクション減少側処理を示すフローチャートである。
図22中に示すように、フリクション減少側処理を開始(START)すると、まず、ステップS400の処理を行う。
ステップS400では、以下の式(11)を用いて、目標フリクションの不足分を算出する処理(図中に示す「目標フリクション不足分=目標フリクション現在値−制動分前回値」)を行う。ステップS400において、目標フリクションの不足分を算出する処理を行うと、フリクション減少側処理は、ステップS402へ移行する。
目標フリクション不足分=目標フリクション現在値−制動分前回値 … (11)
ステップS402では、ステップS400で算出した目標フリクションの不足分が「0」を超えているか否かを判定する処理(図中に示す「目標フリクション不足分>0?」)を行う。
一方、ステップS402において、目標フリクションの不足分が「0」を超えていない(図中に示す「No」)と判定した場合、フリクション減少側処理は、ステップS410へ移行する。
ステップS406では、ステップS404で算出したモータフリクションの目標値に応じて、従動輪(右後輪WRR及び左後輪WRL)で発生させる制動力フリクションの目標値を算出する処理(図中に示す「従動輪側制動力目標フリクション算出」)を行う。ステップS406において、従動輪で発生させる制動力フリクションの目標値を算出する処理を行うと、フリクション減少側処理は、ステップS408へ移行する。
ステップS412では、ステップS400で算出した目標フリクションの不足分を、従動輪で発生させる制動力フリクションの目標値として演算する処理(図中に示す「制動力目標フリクション演算=目標フリクション不足分」)を行う。ステップS412において、従動輪で発生させる制動力フリクションの目標値を演算する処理を行うと、フリクション減少側処理は、ステップS414へ移行する。
すなわち、本実施形態では、挙動を抑制するためのフリクションが前回の処理から減少すると、前回の処理からのフリクションの減少分に応じてモータフリクション及び制動力フリクションが変化するように、制駆動力配分比を算出する処理を行う。
ここで、制動力換算値が制動力最小閾値未満の状態において、従動輪に対して設置したサスペンションSPで発生させる制動力フリクションは、駆動輪に対して設置したサスペンションSPで発生させる駆動力フリクションに応じた値とする。このため、制動力換算値が制動力最小閾値未満の状態において、車両Vの減速度の増加を抑制することが可能となる。
なお、上記の処理は一例であり、制動力換算値が制動力最小閾値未満の状態において、従動輪に対して設置したサスペンションSPに制動力フリクションを発生させない処理を行ってもよい。
図24中に示すように、車両挙動制御装置1が行なう処理では、車両Vの走行中に、車輪Wの目標フリクションが「0」を超えた時点(図中に示す「t1」の時点)から、駆動指令信号を動力コントロールユニット28へ出力する。これにより、駆動輪に設置したサスペンションSPFR及びサスペンションSPFLに、目標フリクションに応じたモータフリクションのみを発生させる。
さらに、車輪Wの目標フリクションが減少して「0」となった時点(図中に示す「t4」の時点)から、駆動指令信号の動力コントロールユニット28への出力を停止する。
なお、上述したブレーキアクチュエータ26、マスタシリンダ24、各ホイールシリンダ32は、制動力付与部に対応する。
なお、運転者による制動力要求の制御に応じた制動力とは、運転者によるブレーキペダル22の操作に応じて制御する制動力である。また、車両Vのシステム制御に応じた制動力とは、例えば、上述した先行車追従走行制御や車線維持走行制御等に応じて制御する制動力である。
ここで、本実施形態の駆動力付与部は、上述したように、運転者による駆動力要求の制御に応じた駆動力及び車両Vのシステム制御に応じた駆動力に、駆動力指令値に基づく駆動力を合算して、車輪Wに制動力を付与する。
なお、運転者による駆動力要求の制御に応じた駆動力とは、運転者によるアクセルペダルの操作に応じて制御する駆動力である。また、車両Vのシステム制御に応じた駆動力とは、例えば、上述した先行車追従走行制御や車線維持走行制御等に応じて制御する駆動力である。
また、上述したサスペンション状態フリクション算出部52は、ストローク位置フリクション算出部と、ストローク速度フリクション算出部に対応する。
また、上述したように、本実施形態の車両挙動制御装置1の動作で実施する車両挙動制御方法では、制動力換算値が制動力最小閾値未満であると、フリクション発生源として駆動用モータのみを選択し、制駆動力配分比を算出する。一方、制動力換算値が制動力最小閾値以上であると、フリクション発生源として摩擦ブレーキ及び駆動用モータを選択し、制駆動力配分比を算出する。
本実施形態の車両挙動制御装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98及び操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110が、制動力換算値が制動力最小閾値未満であると、フリクション発生源として駆動用モータのみを選択し、制駆動力配分比を算出する。一方、制動力換算値が制動力最小閾値以上であると、フリクション発生源として車両Vが備える摩擦ブレーキ及び駆動用モータを選択し、制駆動力配分比を算出する。
このため、車体の挙動を抑制するためのフリクションと制動力最小閾値に応じ、車体の挙動を抑制するためのフリクションの発生源として、少なくとも、摩擦ブレーキよりも応答性の高い駆動用モータを選択することが可能となる。
これにより、目標値のフリクションをサスペンションSPに発生させるために必要な制動力が小さい場合であっても、車体の挙動を抑制するためのフリクションを発生させる制御の応答性を向上させることが可能となる。
このため、車体の挙動を抑制するためのフリクションが前回の処理から増加した場合、前回の処理からのフリクションの増加分に応じた制動力のみを算出することにより、前回の処理から増加したフリクションを発生させることが可能となる。
その結果、車体の挙動を抑制するためのフリクションが前回の処理から増加した場合に、制駆動力配分比の演算負荷の増加を抑制して、目標値のフリクションをサスペンションSPに発生させる制御を行なうことが可能となる。
その結果、車体の挙動を抑制するためのフリクションが前回の処理から減少した場合に、制駆動力配分比の演算負荷の増加を抑制して、目標値のフリクションをサスペンションSPに発生させる制御を行なうことが可能となる。
その結果、制動力フリクションによる簡素な制御を、より精密な制御が可能なモータフリクションにより補足して、運転者の要求に応じた精密な制御を行なうことが可能となる。
このため、横力が作用しにくい直進走行時等においても、車輪Wの制動力及び駆動力により、サスペンションSPが入力を受ける前後力に基づいて、サスペンションSPに発生するフリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、車両Vの走行状態に応じて適切に算出した、サスペンションSPに発生するフリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となり、車両Vの走行状態に応じた挙動制御をより適切に行うことが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの走行時に変化するサスペンションSPのストローク位置に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPのストローク位置に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの走行時に変化するサスペンションSPのストローク速度に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPのストローク速度に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの旋回走行時においてサスペンションSPに作用する横力に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPに作用する横力に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
その結果、車体のロール挙動を抑制するための制御を反映しない車輪Wの制動力及び駆動力を算出することが可能となり、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、車体の挙動を抑制するための制御を反映しない制動力に加え、車体の挙動を抑制するための制御を反映した制動力を、車輪Wに付与することが可能となる。
その結果、車体の挙動を抑制するための制御を反映しない駆動力に加え、車体の挙動を抑制するための制御を反映した駆動力を、車輪Wに付与することが可能となる。
このため、車体の挙動を抑制するためのフリクションと制動力最小閾値に応じ、車体の挙動を抑制するためのフリクションの発生源として、少なくとも、摩擦ブレーキよりも応答性の高い駆動用モータを選択することが可能となる。
これにより、目標値のフリクションをサスペンションSPに発生させるために必要な制動力が小さい場合であっても、車体の挙動を抑制するためのフリクションを発生させる制御の応答性を向上させることが可能となる。
(1)本実施形態では、車両Vの構成を、前輪のみが駆動輪である二輪駆動車としたが、車両Vの構成は、これに限定するものではない。すなわち、車両Vの構成を、全ての車輪(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)が駆動輪である全輪駆動車としてもよい。
ここで、車両Vの構成を全輪駆動車とした場合の、制駆動力配分比を算出する処理の具体例を、図25中に示すタイムチャートを用いて説明する。なお、図25は、車両Vの走行中において、本実施形態の変形例の車両挙動制御装置1を用いて行なう、制駆動力配分比を算出する処理を示すタイムチャートである。また、図25(a)は、目標フリクションの変化を示す図である。また、図25(b)は、全ての車輪Wにおける、制動力換算値及び駆動力指令値の変化を示す図である。
図25中に示すように、制動力換算値が制動力最小閾値未満の状態(図中に示す「ta」の時点以前の状態、「tb」の時点以降の状態)では、駆動輪に、目標フリクションを発生させるモータフリクションのみを発生させる。なお、図25(b)中には、制動力換算値のうち、モータフリクションに配分した分を示す領域を、符号「EDR」を付して示す。
20 制駆動力コントローラ
24 マスタシリンダ
26 ブレーキアクチュエータ
28 動力コントロールユニット
30 動力ユニット
32 ホイールシリンダ
34 フリクション検出ブロック
36 乗り心地制御ブロック
38 操縦安定性制御ブロック
40 制動力算出部
42 駆動力算出部
44 サスペンション状態算出部
46 サスペンション横力算出部
48 制動力フリクション算出部
50 駆動力フリクション算出部
52 サスペンション状態フリクション算出部
54 横力フリクション算出部
56 総フリクション算出部
94 乗り心地制御側車両挙動算出部
96 乗り心地制御側目標フリクション算出部
98 乗り心地制御側制駆動力配分比算出部
100A 乗り心地制御ブロック36が備える制動力指令値算出部
100B 操縦安定性制御ブロック38が備える制動力指令値算出部
102A 乗り心地制御ブロック36が備える駆動力指令値算出部
102B 操縦安定性制御ブロック38が備える駆動力指令値算出部
106 操縦安定性制御側車両挙動算出部
108 操縦安定性制御側目標フリクション算出部
110 操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部
112 挙動抑制フリクション算出部
V 車両
W 車輪
SP サスペンション
Claims (12)
- 車体と、複数の車輪と、前記車体と各車輪とを連結するサスペンションと、前記車輪の駆動源を形成する駆動用モータと、を備える車両に対し、前記車体の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記挙動を抑制するためのフリクションを前記サスペンションに発生させるために必要な、前記車輪の制動力と車輪の駆動力との制駆動力配分比を算出する制駆動力配分比算出部と、
前記制駆動力配分比算出部が算出した前記車輪の制動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として制動力指令値を算出する制動力指令値算出部と、
前記制駆動力配分比算出部が算出した前記車輪の駆動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として駆動力指令値を算出する駆動力指令値算出部と、
前記制動力指令値算出部が算出した制動力指令値に基づいて、前記車輪に制動力を付与する制動力付与部と、
前記駆動力指令値算出部が算出した駆動力指令値に基づいて、前記車輪に駆動力を付与する駆動力付与部と、を備え、
前記制駆動力配分比算出部は、前記挙動を抑制するためのフリクションを前記制動力に換算した制動力換算値が予め設定した制動力最小閾値未満であると、前記挙動を抑制するためのフリクションを前記サスペンションに発生させるフリクション発生源として前記駆動用モータのみを選択して前記制駆動力配分比を算出し、前記制動力換算値が前記制動力最小閾値以上であると、前記フリクション発生源として前記車両が備える摩擦ブレーキ及び前記駆動用モータを選択して前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする車両挙動制御装置。 - 前記制駆動力配分比算出部は、前記挙動を抑制するためのフリクションが増加すると、前記駆動用モータが発生させるフリクションの大きさを保持するとともに、前記摩擦ブレーキが発生させるフリクションを増加させるように前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする請求項1に記載した車両挙動制御装置。
- 前記制駆動力配分比算出部は、前記挙動を抑制するためのフリクションが減少すると、前記挙動を抑制するためのフリクションの減少分に応じて前記駆動用モータが発生させるフリクション及び前記摩擦ブレーキが発生させるフリクションが変化するように前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した車両挙動制御装置。
- 前記制駆動力配分比算出部は、前記制動力換算値が前記制動力最小閾値以上であると、前記挙動を抑制するためのフリクションに対する前記摩擦ブレーキが発生させるフリクションの不足分に応じたフリクションを前記駆動用モータで発生させるように、前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。
- 前記車輪の制動力を算出する制動力算出部と、
前記制動力算出部が算出した制動力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである制動力フリクションを算出する制動力フリクション算出部と、
前記車輪の駆動力を算出する駆動力算出部と、
前記駆動力算出部が算出した駆動力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである駆動力フリクションを算出する駆動力フリクション算出部と、
前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクションと、前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションと、を合算して、前記サスペンションに発生するフリクションである総フリクションを、各サスペンションに対して個別に算出する総フリクション算出部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションのストローク位置を算出するストローク位置算出部と、
前記ストローク位置算出部が算出したストローク位置に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションであるストローク位置フリクションを算出するストローク位置フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記ストローク位置フリクション算出部が算出したストローク位置フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項5に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションのストローク速度を算出するストローク速度算出部と、
前記ストローク速度算出部が算出したストローク速度に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションであるストローク速度フリクションを算出するストローク速度フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記ストローク速度フリクション算出部が算出したストローク速度フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項5または6に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションの横力を算出するサスペンション横力算出部と、
前記サスペンション横力算出部が算出した横力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである横力フリクションを算出するサスペンション横力フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記サスペンション横力フリクション算出部が算出した横力フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項5から請求項7のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記制動力算出部は、前記車両の走行制御に基づく前記車輪の制動力を算出し、
前記駆動力算出部は、前記車両の走行制御に基づく前記車輪の駆動力を算出することを特徴とする請求項5から請求項8のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記制動力付与部は、前記車両の運転者による制動力要求の制御に応じた制動力及び車両のシステム制御に応じた制動力に、前記制動力指令値算出部が算出した制動力指令値に基づく制動力を合算して、前記車輪に制動力を付与することを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。
- 前記駆動力付与部は、前記車両の運転者による駆動力要求の制御に応じた駆動力及び車両のシステム制御に応じた駆動力に、前記駆動力指令値算出部が算出した駆動力指令値に基づく駆動力を合算して、前記車輪に駆動力を付与することを特徴とする請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。
- 車体と、複数の車輪と、前記車体と各車輪とを連結するサスペンションと、前記車輪の駆動源を形成する駆動用モータと、を備える車両に対し、前記車体の挙動を制御する車両挙動制御方法であって、
前記挙動を抑制するためのフリクションを前記車輪の制動力に換算した制動力換算値が予め設定した制動力最小閾値未満であると、前記挙動を抑制するためのフリクションを前記サスペンションに発生させるフリクション発生源として前記駆動用モータのみを選択し、さらに、前記挙動を抑制するためのフリクションを前記サスペンションに発生させるために必要な、前記車輪の制動力と車輪の駆動力との制駆動力配分比を算出し、
前記制動力換算値が前記制動力最小閾値以上であると、前記フリクション発生源として前記車両が備える摩擦ブレーキ及び前記駆動用モータを選択し、さらに、前記制駆動力配分比を算出し、
前記算出した前記車輪の制動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として制動力指令値を算出し、当該算出した制動力指令値に基づいて前記車輪に制動力を付与し、
前記算出した前記車輪の駆動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として駆動力指令値を算出し、当該算出した駆動力指令値に基づいて前記車輪に駆動力を付与することを特徴とする車両挙動制御方法。
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