JP6205875B2 - 車両挙動制御装置及び車両挙動制御方法 - Google Patents
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特許文献1に記載されている技術では、車両に作用する横力に基づいて、サスペンションに発生するフリクションを検出する。そして、車体の上屋挙動を抑制するための抑制目標値から、検出したフリクションを減算して、車体の上屋挙動を抑制するためにサスペンションで発生させるフリクションの目標値を算出する。さらに、サスペンションに目標値のフリクションを発生させるために、アクチュエータの駆動を制御する。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、低μ路面の走行時において、車体の上屋挙動を抑制するとともに、操縦安定性の低下を抑制することが可能な、車両挙動制御装置及び車両挙動制御方法を提供することを目的とする。
これにより、低μ路面の旋回走行時における、操舵角に対するヨーレート及び横加速度の発生状態を安定させることが可能となるため、低μ路面の走行時において、車体の上屋挙動を抑制するとともに操縦安定性の低下を抑制することが可能となる。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の車両挙動制御装置1を備える車両Vの概略構成を示すブロック図である。
バネ上上下加速度センサの機能を有するブロックは、車両Vに対し、車体のバネ上部分における上下方向への加速度を検出する。そして、検出した加速度を含む情報信号(以降の説明では、「バネ上上下加速度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
横加速度センサの機能を有するブロックは、車両Vに対し、車体の横方向(車幅方向)への加速度(以降の説明では、「実測横加速度」と記載する場合がある)を検出する。そして、検出した実測横加速度を含む情報信号(以降の説明では、「実測横加速度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
ヨーレートセンサ4は、車両Vのヨーレート(車体が旋回する方向への回転角の変化速度)を検出し、検出したヨーレートを含む情報信号(以降の説明では、「ヨーレート信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
操舵角センサ6は、例えば、図示しない操舵操作子(例えば、ステアリングホール)を回転可能に支持するステアリングコラム(図示せず)に設ける。
ドライバブレーキ液圧センサ8は、マスタシリンダ24で発生する液圧(ブレーキ液圧)のうち、運転者によるブレーキペダル22の踏込み操作により発生する液圧(ドライバブレーキ液圧)を検出する。そして、検出したドライバブレーキ液圧を含む情報信号(以降の説明では、「ドライバブレーキ液圧信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
シフトポジションセンサ12は、シフトノブやシフトレバー等、車両Vのギヤ位置(例えば、「P」、「D」、「R」等)を変更する部材の位置を検出する。そして、検出した位置を含む情報信号(以降の説明では、「ギヤ位置信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
なお、図1中では、右前輪WFRの回転速度を検出する車輪速センサ18を、車輪速センサ18FRと示し、左前輪WFLの回転速度を検出する車輪速センサ18を、車輪速センサ18FLと示す。同様に、図1中では、右後輪WRRの回転速度を検出する車輪速センサ18を、車輪速センサ18RRと示し、左後輪WRLの回転速度を検出する車輪速センサ18を、車輪速センサ18RLと示す。また、以降の説明においても、各車輪Wや各車輪速センサ18を、上記のように示す場合がある。
また、制駆動力コントローラ20は、入力される各種の情報信号に基づいて後述する各種の処理を行い、ブレーキアクチュエータ26及び動力ユニット30を制御するための指示信号(制動力指令値、駆動力指令値)を出力する。すなわち、制駆動力コントローラ20は、車両Vの運転者による加減速要求に応じて、駆動用モータ及び摩擦ブレーキを制御する。
ブレーキペダル22は、車両Vの運転者が制動操作を行う際に踏込むペダルであり、運転者によるペダル踏力を、マスタシリンダ24に伝達する。
ブレーキアクチュエータ26は、マスタシリンダ24と各ホイールシリンダ32との間に介装した液圧制御装置である。また、ブレーキアクチュエータ26は、制駆動力コントローラ20から入力を受けた制動指令信号に応じて、各ホイールシリンダ32の油圧を変化させ、各車輪Wに制動力を付与する。なお、ブレーキアクチュエータ26の具体的な構成については、後述する。
また、ブレーキアクチュエータ26は、車両Vが備えるシステムにより車輪Wに加わるブレーキ液圧の指令値を含む情報信号(以降の説明では、「付加機能ブレーキ液圧信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
また、ブレーキアクチュエータ26は、上述したVDC制御により車輪Wに加わるブレーキ液圧の指令値を含む情報信号(図中では、「VDC液圧信号」と示す)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
動力コントロールユニット28は、制駆動力コントローラ20から入力を受けた駆動指令信号に応じて、動力ユニット30が発生させる駆動力を制御する。
また、動力コントロールユニット28は、上述したTCS制御が作動しているか否かを示すフラグ情報信号(以降の説明では、「TCS作動フラグ信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
なお、前輪に対するトルクの制御値とは、例えば、右前輪WFRと左前輪WFLに対し、動力ユニット30が発生させているトルクを配分する比率である。また、前輪に対するトルクの制御値とは、例えば、上述したVDC制御により右前輪WFRと左前輪WFLに加わるトルクである。すなわち、本実施形態の車両Vは、右前輪WFR及び左前輪WFLが駆動輪であり、右後輪WRR及び左後輪WRLが従動輪である二輪駆動(2WD:Two Wheel Drive)車である。
動力ユニット30は、車両Vの駆動力を発生させる構成であり、駆動用モータを備える。すなわち、本実施形態の車両挙動制御装置1を備える車両Vは、車輪Wの駆動源を駆動用モータにより形成する、電気自動車(EV:Electric Vehicle)である。
駆動用モータは、例えば、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルを巻き付けた同期型モータを用いて形成する。また、駆動用モータは、動力コントロールユニット28から入力を受けた制御指令に基づき、インバータ(図示せず)で作り出した三相交流を印加することで制御可能である。さらに、駆動用モータは、バッテリ(図示せず)からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することも可能である(この状態を「力行」と呼ぶ)。
なお、図1中では、右前輪WFRに対して配置したホイールシリンダ32を、ホイールシリンダ32FRと示し、左前輪WFLに対して配置したホイールシリンダ32を、ホイールシリンダ32FLと示す。同様に、図1中では、右後輪WRRに対して配置したホイールシリンダ32を、ホイールシリンダ32RRと示し、左後輪WRLに対して配置したホイールシリンダ32を、ホイールシリンダ32RLと示す。また、以降の説明においても、各ホイールシリンダ32を、上記のように示す場合がある。
また、サスペンションSPは、具体的に、車体と各車輪W側の部材とを連結するリンク部材と、各車輪Wと車体との相対運動を緩衝させるバネと、各車輪Wと車体との相対運動を減衰させるショックアブソーバを有する。
次に、図1を参照しつつ、図2を用いて、ブレーキアクチュエータ26の構成を説明する。
図2は、ブレーキアクチュエータ26の構成を示すブロック図である。
ブレーキアクチュエータ26は、上述したABS制御、TCS制御、VDC制御等に用いる制動流体圧制御回路を用いて形成する。
また、ブレーキアクチュエータ26は、運転者のブレーキ操作に係らず、各ホイールシリンダ32FR、32FL、32RR、32RLの液圧を、増圧・保持・減圧可能に形成する。
プライマリ側は、第一ゲートバルブ122Aと、インレットバルブ124FLと、インレットバルブ124RRと、アキュムレータ126Aを備えている。これに加え、プライマリ側は、アウトレットバルブ128FLと、アウトレットバルブ128RRと、第二ゲートバルブ1と、ポンプ132と、ダンパー室134Aを備えている。
インレットバルブ124FLは、第一ゲートバルブ122Aとホイールシリンダ32FLとの間の流路を閉鎖可能な、ノーマルオープン型のバルブである。
インレットバルブ124RRは、第一ゲートバルブ122Aとホイールシリンダ32RRとの間の流路を閉鎖可能な、ノーマルオープン型のバルブである。
アキュムレータ126Aは、シリンダのピストンに圧縮バネを対向させたバネ形のアキュムレータであり、ホイールシリンダ32FL及びホイールシリンダ32RRとインレットバルブ124FL及びインレットバルブ124RRとの間を連通している。
アウトレットバルブ128RRは、ホイールシリンダ32RRとアキュムレータ126との間の流路を開放可能な、ノーマルクローズ型のバルブである。
第二ゲートバルブ1は、マスタシリンダ24と第一ゲートバルブ122Aとの間と、アキュムレータ126とアウトレットバルブ128FL及びアウトレットバルブ128RRとの間と、を連通した流路を開放可能な、ノーマルクローズ型のバルブである。
ポンプ132は、負荷圧力に係りなく略一定の吐出量を確保可能な、歯車ポンプ、ピストンポンプ等、容積形のポンプを用いて形成する。
ダンパー室134Aは、ポンプ132の吐出側に配設されており、ポンプ132から吐出されたブレーキ液の脈動を抑制して、ペダル振動を低減させる。
各第一ゲートバルブ122、各インレットバルブ124、各アウトレットバルブ128、各第二ゲートバルブ130は、それぞれ、2ポート2ポジション切換・シングルソレノイド・スプリングオフセット式の電磁操作弁である。
以上の構成により、プライマリ側を例に説明すると、マスタシリンダ24からの液圧が、ダイレクトにホイールシリンダ32FL及び32RRに伝達されて、通常ブレーキとなる。これは、第一ゲートバルブ122A、インレットバルブ124FL及び124RR)、アウトレットバルブ128FL及び128RR、第二ゲートバルブ1が全て非励磁のノーマル位置である状態で発生する。
さらに、ホイールシリンダ32FL及び32RRの液圧をアキュムレータ126に流入させて減圧させることが可能となる。これは、第一ゲートバルブ122A及び第二ゲートバルブ1が非励磁のノーマル位置にあるときに、インレットバルブ124FL及び124RRを励磁して閉鎖すると共に、アウトレットバルブ128FL及び128RRを励磁して開放すると可能となる。
なお、セカンダリ側に関しても、通常ブレーキ・増圧・保持・減圧の動作は、上述したプライマリ側の動作と同様であるため、その説明は省略する。
したがって、制駆動力コントローラ20は、各第一ゲートバルブ122、各インレットバルブ124、各アウトレットバルブ128、各第二ゲートバルブ130、ポンプ132を駆動制御して、各ホイールシリンダ32の液圧を、増圧・保持・減圧する。
次に、図1及び図2を参照しつつ、図3から図12を用いて、フリクション検出ブロック34の構成を説明する。
図3は、フリクション検出ブロック34の概略構成を示すブロック図である。
図3中に示すように、フリクション検出ブロック34は、制動力算出部40と、駆動力算出部42と、サスペンション状態算出部44と、サスペンション横力算出部46を備える。これに加え、フリクション検出ブロック34は、制動力フリクション算出部48と、駆動力フリクション算出部50と、サスペンション状態フリクション算出部52と、横力フリクション算出部54と、総フリクション算出部56を備える。
図4中に示すように、制動力算出部40は、ブレーキ液圧合算部58と、ブレーキ液圧値選択部60と、車輪制動力算出部62を備える。
ここで、ブレーキ液圧合算部58、ブレーキ液圧値選択部60及び車輪制動力算出部62で行なう処理は、各車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)に対して個別に行なう。
そして、ブレーキ液圧合算部58は、入力を受けたドライバブレーキ液圧信号が含む液圧と、付加機能ブレーキ液圧信号及びVDC液圧信号が含む指令値に応じた液圧を合算する。そして、合算した液圧を含む情報信号(以降の説明では、「液圧合算値信号」と記載する場合がある)を、ブレーキ液圧値選択部60へ出力する。
ブレーキ液圧値選択部60は、例えば、マルチプレクサ(multiplexer)回路を用いて形成する。また、ブレーキ液圧値選択部60は、ブレーキアクチュエータ26から、ABS作動フラグ信号(図中では、「ABS作動フラグ」と示す)の入力を受ける。また、ブレーキ液圧値選択部60は、ブレーキ液圧合算部58から、液圧合算値信号の入力を受ける。また、ブレーキ液圧値選択部60は、予め記憶しているブレーキ液圧が「0」である場合の液圧値を示す情報信号(図中では、「液圧ゼロ」と示す)の入力を受ける。
車輪制動力算出部62は、ブレーキ液圧値選択部60から入力を受けた現在液圧信号が含むブレーキ液圧を、予め記憶している制動力算出マップに適合させて、車輪Wの制動力を算出する。そして、算出した各車輪W別の制動力と、制動力を算出した車輪Wの個別ID(右前輪、左前輪、右後輪、左後輪)を含む情報信号(以降の説明では、「個別車輪制動力信号」と記載する場合がある)を、制動力フリクション算出部48へ出力する。さらに、個別車輪制動力信号を、操縦安定性制御ブロック38へ出力する。
以上により、制動力算出部40は、各車輪Wに対し、その制動力を個別に算出する。
また、制動力算出部40は、車両Vの走行制御に基づく車輪Wの制動力を算出する。ここで、車両Vの走行制御とは、車両Vの運転者による制動力要求の制御と、運転者による駆動力要求の制御と、車両Vのシステム制御を含む。また、車両Vのシステム制御とは、例えば、上述した先行車追従走行制御や、車線維持走行制御(レーンキープ制御)等である。
図5中に示すように、駆動力算出部42は、推定トルク算出部64と、トルク値選択部66と、車輪駆動力算出部68を備える。
ここで、推定トルク算出部64、トルク値選択部66及び車輪駆動力算出部68で行なう処理は、各車輪Wに対して個別に行なう。
推定トルク算出部64は、アクセル開度センサ10から、アクセル開度信号(図中では、「アクセル開度」と示す)の入力を受ける。また、推定トルク算出部64は、動力コントロールユニット28から、現在トルク信号(図中では、「現在トルク」と示す)と、トルクコントロール信号(図中では、「トルクコントロール機能」と示す)の入力を受ける。
トルク値選択部66は、例えば、ブレーキ液圧値選択部60と同様、マルチプレクサ回路を用いて形成する。また、トルク値選択部66は、動力コントロールユニット28から、TCS作動フラグ信号(図中では、「TCS作動フラグ」と示す)の入力を受ける。また、トルク値選択部66は、推定トルク算出部64から、推定トルク信号の入力を受ける。また、トルク値選択部66は、予め記憶しているトルクが「0」である状態を示す情報信号(図中では、「トルクゼロ」と示す)の入力を受ける。
車輪駆動力算出部68は、トルク値選択部66から入力を受けた現在トルク信号が含むトルクを、予め記憶している駆動力算出マップに適合させて、右前輪WFR及び左前輪WFLの駆動力を算出する。そして、算出した車輪W別の駆動力と、駆動力を算出した車輪Wの個別IDを含む情報信号(以降の説明では、「個別車輪駆動力信号」と記載する場合がある)を、駆動力フリクション算出部50及び操縦安定性制御ブロック38へ出力する。
以上により、駆動力算出部42は、各車輪Wに対し、その駆動力を個別に算出する。
また、駆動力算出部42は、車両Vの走行制御に基づく車輪Wの駆動力を算出する。なお、車両Vの走行制御とは、上述した制動力算出部40の説明と同様である。
図6中に示すように、サスペンション状態算出部44は、バネ上側積分処理部70と、バネ下側積分処理部72と、上下加速度加減算処理部74を備える。これに加え、サスペンション状態算出部44は、ストローク速度積分処理部76と、ストローク速度微分処理部78と、車輪ストローク選択部80と、車輪ストローク速度選択部82を備える。
ここで、バネ上側積分処理部70、バネ下側積分処理部72、上下加速度加減算処理部74、ストローク速度積分処理部76で行なう処理は、各サスペンションSPに対して個別に行なう。これに加え、ストローク速度微分処理部78、車輪ストローク選択部80、車輪ストローク速度選択部82で行なう処理は、各サスペンションSPに対して個別に行なう。
ストローク速度微分処理部78は、ストロークセンサ14から入力を受けた実測ストローク量信号が含むサスペンションSPの実測ストローク量を単位時間で微分し、サスペンションSPの実測ストローク速度を算出する。そして、算出したサスペンションSPの実測ストローク速度を含む情報信号(以降の説明では、「実測ストローク速度信号」と記載する場合がある)を、車輪ストローク速度選択部82へ出力する。
ここで、車輪ストローク選択部80は、例えば、ストロークセンサ14に故障等の異常が発生している場合に、推定ストローク量をサスペンションSPのストローク量として選択する処理を行う。
以上により、サスペンション状態算出部44は、各サスペンションSP(サスペンションSPFR、サスペンションSPFL、サスペンションSPRR、サスペンションSPRL)に対し、そのストローク位置を個別に算出する。
また、サスペンション状態算出部44は、各サスペンションSPに対し、そのストローク速度を個別に算出する。
図7中に示すように、サスペンション横力算出部46は、車両状態算出部84と、横加速度選択部86と、第一車輪サスペンション横力算出部88と、第二車輪サスペンション横力算出部90と、横力決定部92を備える。
ここで、車両状態算出部84、横加速度選択部86、第一車輪サスペンション横力算出部88、第二車輪サスペンション横力算出部90、横力決定部92で行なう処理は、各サスペンションSPに対して個別に行なう。
そして、車両状態算出部84は、車輪速信号が含む車輪Wの回転速度に基づく車速と、現在操舵角信号が含む現在操舵角を用いて、推定横加速度を算出する。そして、算出した推定横加速度を含む情報信号(以降の説明では、「推定横加速度信号」と記載する場合がある)を、横加速度選択部86へ出力する。
また、車両状態算出部84は、車輪速信号が含む車輪Wの回転速度に基づく車速と、現在操舵角信号が含む現在操舵角を用いて、例えば、車輪Wに対し、予め設定した荷重当たりのスリップ角を、車両状態として算出する。そして、算出した車両状態を含む情報信号(以降の説明では、「算出車両状態信号」と記載する場合がある)を、第二車輪サスペンション横力算出部90へ出力する。
第一車輪サスペンション横力算出部88は、横加速度選択部86から入力を受けた選択横方向加速度信号が含む横方向の加速度を、予め記憶している横力算出マップに適合させて、サスペンションSPの横力を算出する。そして、算出した各サスペンションSP別の横力を含む情報信号(以降の説明では、「第一個別車輪横力信号」と記載する場合がある)を、横力決定部92へ出力する。なお、第一個別車輪横力信号は、横力を算出したサスペンションSPを設置した車輪Wの個別IDを含む。
なお、第二車輪サスペンション横力算出部90に記憶している車輪Wの諸元は、車両Vの走行距離等に応じて更新・変更してもよい。
ここで、横力決定部92が行なう処理では、例えば、第一個別車輪横力信号が含む横力と第二個別車輪横力信号が含む横力のうち一方を、各サスペンションSP別の横力として算出してもよい。また、二つの横力の平均値を、各サスペンションSP別の横力として算出してもよい。
以上により、サスペンション横力算出部46は、各サスペンションSPに対し、その横力を個別に算出する。
駆動力フリクション算出部50は、駆動力算出部42から入力を受けた個別車輪駆動力信号が含む駆動力を、予め記憶している駆動力フリクション算出マップに適合させる。これにより、駆動力によって、各サスペンションSPに発生するフリクションを算出する。そして、算出した各サスペンションSP別のフリクションを含む情報信号(以降の説明では、「駆動力フリクション信号」と記載する場合がある)を、総フリクション算出部56へ出力する。なお、以降の説明では、駆動力によりサスペンションSPに発生するフリクションを、「駆動力フリクション」と記載する場合がある。
以上により、駆動力フリクション算出部50は、駆動力算出部42が算出した駆動力に基づいて発生する駆動力フリクションを、各サスペンションSP(サスペンションSPFR、サスペンションSPFL)に対して個別に算出する。なお、駆動力フリクションは、駆動力算出部42が算出した駆動力に基づいてサスペンションSPに発生するフリクションの推定値である。
また、サスペンション状態フリクション算出部52は、サスペンション状態算出部44が算出したストローク速度に基づいて発生するストローク速度フリクションを、各サスペンションSPに対して個別に算出する。なお、ストローク速度フリクションは、サスペンション状態算出部44が算出したストローク速度に基づいてサスペンションSPに発生するフリクションの推定値である。
なお、上述した制動力フリクション算出マップ、駆動力フリクション算出マップ、ストローク位置フリクション算出マップ、ストローク速度フリクション算出マップ、横力フリクション算出マップは、台上走行や路上走行等で計測したデータを用いて形成する。ここで、台上走行とは、例えば、シャシーダイナモメーター(chassis dynamometer)上の走行である。
これにより、一つのサスペンションSPの総フリクション(以降の説明では、「各輪総フリクション」と記載する場合がある)を算出する。さらに、算出した各輪総フリクションを含む情報信号(以降の説明では、「各輪総フリクション信号」と記載する場合がある)を、乗り心地制御ブロック36及び操縦安定性制御ブロック38へ出力する。
次に、図1から図12を参照しつつ、図13を用いて、乗り心地制御ブロック36の構成を説明する。
図13は、乗り心地制御ブロック36の概略構成を示すブロック図である。
図13中に示すように、乗り心地制御ブロック36は、乗り心地制御側車両挙動算出部94と、挙動抑制フリクション算出部112と、乗り心地制御側目標フリクション算出部96を備える。これに加え、乗り心地制御ブロック36は、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98と、制動力指令値算出部100Aと、駆動力指令値算出部102Aを備える。
挙動抑制フリクション算出部112は、乗り心地制御側車両挙動算出部94から推定上下挙動信号の入力を受け、推定上下挙動信号が含む推定上下挙動を、予め記憶している目標フリクション算出マップに適合させて、挙動抑制フリクションを算出する。そして、算出した挙動抑制フリクションを含む情報信号(以降の説明では、「挙動抑制フリクション信号」と記載する場合がある)を、乗り心地制御側目標フリクション算出部96へ出力する。
また、挙動抑制フリクションとは、車両Vの上下挙動を抑制するために必要な、各サスペンションSPに発生させるフリクションである。
そして、乗り心地制御側目標フリクション算出部96は、挙動抑制フリクションと、各輪総フリクションと、車速を用いて、乗り心地制御用各輪目標フリクションを算出する。具体的には、挙動抑制フリクションから各輪総フリクションを減算したフリクションを、乗り心地制御用各輪目標フリクションとして算出する。
ここで、乗り心地制御用各輪目標フリクションとは、車両Vの上下挙動を抑制するために、各サスペンションSPに発生させるフリクションの目標値である。
乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、乗り心地制御側目標フリクション算出部96から乗り心地制御用フリクション差分値信号の入力を受け、総フリクション算出部56から各輪総フリクション信号の入力を受ける。また、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、乗り心地制御側車両挙動算出部94から推定ヨーレート信号の入力を受ける。
ここで、過不足分の算出は、総フリクション算出部56が算出した総フリクションと、乗り心地制御側目標フリクション算出部96が算出した乗り心地制御用各輪目標フリクションに基づいて行なう。具体的には、例えば、総フリクションが乗り心地制御用各輪目標フリクション未満である場合に、乗り心地制御用各輪目標フリクションから総フリクションを減算して、乗り心地制御用各輪目標フリクションに対する総フリクションの不足分を算出する。
ここで、制駆動力分配指令値とは、制動力によるフリクション及び駆動力によるフリクションのうち少なくとも一方を、各サスペンションSPに発生させる指令値である。
また、駆動力によるフリクションには、駆動用モータが発生させる駆動力によるフリクションがある。なお、以降の説明では、駆動用モータが発生させる駆動力によるフリクションを、「モータフリクション」と記載する場合がある。
ここで、乗り心地制御側制駆動力配分比とは、乗り心地制御用各輪目標フリクションに対する総フリクションの過不足分に相当するフリクションをサスペンションSPに発生させるために必要な、車輪Wの制動力と車輪Wの駆動力との配分比である。
さらに、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、算出した乗り心地制御側制駆動力配分比を含む情報信号(以降の説明では、「乗り心地制御側制駆動力配分比信号」と記載する場合がある)を、制動力指令値算出部100Aへ出力する。これに加え、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、乗り心地制御側制駆動力配分比信号を、駆動力指令値算出部102Aへ出力する。
ここで、乗り心地制御側制動力指令値は、乗り心地制御側制駆動力配分比信号が含む乗り心地制御側制駆動力配分比に基づくフリクションを、車輪Wの制動力によりサスペンションSPに発生させるための最終指令値である。
乗り心地制御側制動力指令値を算出した制動力指令値算出部100Aは、算出した乗り心地制御側制動力指令値を指令液圧(ブレーキ液圧)に換算する。そして、換算した指令液圧を含む情報信号である制動指令信号を、ブレーキアクチュエータ26へ出力する。
次に、図1から図13を参照しつつ、図14を用いて、操縦安定性制御ブロック38の構成を説明する。
図14は、操縦安定性制御ブロック38の概略構成を示すブロック図である。
図14中に示すように、操縦安定性制御ブロック38は、推定前後力算出部104と、操縦安定性制御側車両挙動算出部106と、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108を備える。これに加え、操縦安定性制御ブロック38は、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110と、制動力指令値算出部100Bと、駆動力指令値算出部102Bを備える。
また、推定前後力算出部104は、算出した推定前後力を含む情報信号(以降の説明では、「推定前後力信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側車両挙動算出部106へ出力する。
また、操縦安定性制御側車両挙動算出部106は、車速と現在操舵角を用いて、車両Vのロールレートの推定値である推定ロールレートを算出する。そして、算出した推定ロールレートを含む情報信号(以降の説明では、「推定ロールレート信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108へ出力する。なお、推定ロールレートを算出する処理は、車両諸元を参照して行なってもよい。
また、操縦安定性制御側車両挙動算出部106は、車速と現在操舵角を用いて、乗り心地制御側車両挙動算出部94と同様、上述した推定ヨーレートを算出する。そして、推定ヨーレート信号を、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110へ出力する。
そして、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108は、推定ロールレートと、推定ピッチレートと、各輪総フリクションと、車速を用いて、操縦安定性制御用各輪目標フリクションを算出する。
さらに、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108は、操縦安定性制御用各輪目標フリクションと各輪総フリクションとの差分値である操縦安定性制御用フリクション差分値を算出する。そして、算出した操縦安定性制御用フリクション差分値を含む情報信号(以降の説明では、「操縦安定性制御用フリクション差分値信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110へ出力する。
これに加え、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110は、走行モード判定ブロック142から低μ判定結果信号の入力を受け、制御移行判定ブロック144から制御移行判定結果信号の入力を受ける。なお、低μ判定結果信号及び制御移行判定結果信号の説明は、後述する。
ここで、操縦安定性制御側制駆動力配分比とは、車両Vに発生する上屋挙動のうち、車両Vの操縦に関する挙動(ピッチ挙動、ロール挙動)を抑制するための、車輪Wの制動力と車輪Wの駆動力との配分比である。すなわち、操縦安定性制御側制駆動力配分比は、操縦安定性制御用各輪目標フリクション(目標値)に対する各車輪Wのフリクション(実際値)の過不足分を補正するために、車輪Wの制動力及び駆動力を制御するための配分である。
なお、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110が操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する処理の説明は、後述する。
ここで、操縦安定性制御側制動力指令値は、操縦安定性制御側制駆動力配分比信号が含む操縦安定性制御側制駆動力配分比に基づくフリクションを、車輪Wの制動力によりサスペンションSPに発生させるための最終指令値である。
なお、操縦安定性制御側制動力指令値を指令液圧に換算する処理の説明については、後述する。
次に、取得した配分比に基づいて操縦安定性制御側モータ駆動力指令値を算出し、この算出した操縦安定性制御側モータ駆動力指令値を、モータ駆動トルク補正値に換算する。さらに、換算したモータ駆動トルク補正値を含む情報信号である駆動指令信号を、動力コントロールユニット28へ出力する。なお、操縦安定性制御ブロック38が備える駆動力指令値算出部102Bは、乗り心地制御ブロック36が備える駆動力指令値算出部102Aと共用してもよく、また、別個の構成としてもよい。
次に、図1から図14を参照しつつ、図15を用いて、走行モード判定ブロック142の構成を説明する。
図15は、走行モード判定ブロック142の概略構成を示すブロック図である。
図15中に示すように、走行モード判定ブロック142は、非低μ状態車両挙動算出部146と、現在車両挙動算出部148と、走行モード選択状態判定部150を備える。これに加え、走行モード判定ブロック142は、外部情報処理部152と、車両挙動比較演算部154と、車両挙動低μ判定部156と、低μ判定選択部158を備える。
そして、非低μ状態車両挙動算出部146は、上記の入力を受けたパラメータと、記憶している車両Vの諸元に応じて、非低μ時推定ヨーレート、非低μ時推定横G、非低μ時車輪スリップ率、非低μ時タイヤ滑り角、非低μ時操舵力を算出する。さらに、算出したパラメータを含む情報信号を、車両挙動比較演算部154へ出力する。
また、非低μ時車輪スリップ率は、乾燥路面上を走行する際の、車速と車輪速との間に発生する偏差の推定値である。また、非低μ時タイヤ滑り角は、乾燥路面上を走行する際の、平面視における、車両Vの進行方向と操舵輪(右前輪WFR、左前輪WFL)の回転方向とのなす角度の推定値である。また、非低μ時操舵力は、乾燥路面上を走行する際に発生する操舵トルクの推定値である。
そして、現在車両挙動算出部148は、上記の入力を受けたパラメータに応じて、実ヨーレート、実横G、実車輪スリップ率、実タイヤ滑り角、実操舵力を算出する。さらに、算出したパラメータを含む情報信号を、車両挙動比較演算部154へ出力する。
ここで、実ヨーレートは、現在の走行時において車両Vに発生するヨーレートの演算値である。また、実横Gは、現在の走行時において車両Vに発生する車体の横方向への加速度の演算値である。
走行モード選択状態判定部150は、走行モード選択スイッチ140が出力した選択済み走行モード信号の入力を受ける。そして、選択済み走行モード信号が、スノーモード制御が「ON」である状態を含む情報信号である場合、運転者により低μ路面走行モードが選択されている状態であると判定する。さらに、運転者により低μ路面走行モードが選択されている状態であるとの判定結果を含む情報信号(以降の説明では、「ドライバ低μ選択判定信号」と記載する場合がある)を、低μ判定選択部158へ出力する。
外部情報処理部152は、例えば、車両Vが搭載しているナビゲーションシステム(Automotive Navigation System)から、地図情報を含む情報信号(図中では、「NAVI」と記載する)の入力を受ける。これにより、外部情報処理部152は、車両Vが走行する予定の経路を含む地図データ(道路情報等)を取得する。
また、外部情報処理部152は、例えば、車両Vの走行経路を先行して走行している他車両から、他車両が走行した道路の状況を含む情報信号(図中では、「車車間通信」と記載する)の入力を受ける。ここで、他車両が走行した道路の状況とは、例えば、積雪等により路面の摩擦係数が予め設定した摩擦係数未満に低下している状況である。
なお、車両Vの現在位置は、例えば、車両Vが搭載しているナビゲーションシステムを介して、GPS(Global Positioning System)から取得した情報を用いて検出する。
そして、車両挙動比較演算部154は、非低μ時推定ヨーレートと実ヨーレート、非低μ時推定横Gと実横G、非低μ時車輪スリップ率と実車輪スリップ率、非低μ時タイヤ滑り角と実タイヤ滑り角、非低μ時操舵力と実操舵力を比較する。さらに、比較したパラメータ同士の差分に基づき、比較したパラメータ同士の差分の絶対値を演算する。これに加え、演算した絶対値を含む情報信号(以降の説明では、「差分絶対値信号」と記載する場合がある)を、車両挙動低μ判定部156へ出力する。
車両挙動低μ判定部156は、車両挙動比較演算部154から入力を受けた差分絶対値信号が含む差分値の絶対値と、予め記憶している低μ判定値とを比較する。
ここで、低μ判定値は、例えば、積雪路と同様の摩擦係数に設定した実験用の路面(低μ走行テスト路面)等を用いた実験により、車両Vが低μ路面を走行している状態の挙動を検出し、この検出した挙動に基づいて設定する。また、低μ判定値は、車両Vの現在の車速及び操舵角に応じて変化させてもよい。これは、例えば、車両Vの現在の車速及び操舵角の変化に対応するマップを生成し、この生成したマップを車両挙動低μ判定部156へ記憶させることにより実施する。
また、車両挙動低μ判定部156は、五種類の絶対値のうち少なくとも一つが、対応する低μ判定値を超えている場合、車両Vの挙動が低μ路面を走行している挙動であると判定する。そして、車両Vの挙動が低μ路面を走行している挙動であるとの判定結果を含む情報信号(以降の説明では、「挙動低μ判定信号」と記載する場合がある)を、低μ判定選択部158へ出力する。
以上により、走行モード判定ブロック142では、走行中の車両Vに対する走行状態と、予め設定した摩擦係数以上の走行路面を走行する車両Vに対して推定した走行状態を比較して、差分値の絶対値を算出する。そして、算出した絶対値が、予め設定した低μ判定値を超えると、車輪Wの制動力を低μ路面走行モードで制御すると判定する。
また、走行モード判定ブロック142では、外部情報処理部152により取得した情報が車両Vの走行経路に予め設定した摩擦係数未満の走行路面が存在する情報を含む場合、車輪Wの制動力を低μ路面走行モードで制御すると判定する。
次に、図1から図15を参照しつつ、図16を用いて、制御移行判定ブロック144の構成を説明する。
図16は、制御移行判定ブロック144の概略構成を示すブロック図である。
図16中に示すように、制御移行判定ブロック144は、制御移行判定用車両挙動算出部160と、第一舵角判定部162と、第二舵角判定部164と、旋回時間算出部166と、舵角遅延処理部168と、旋回時間判定部170を備える。これに加え、制御移行判定ブロック144は、ロール角判定部172と、旋回初期フラグ変換部174と、ロール角増大判定部176と、ロール角増大フラグ変換部178と、ロールダンピング判定部180を備える。
そして、制御移行判定用車両挙動算出部160は、上記の入力を受けた車速及び舵角と、記憶している車両Vの諸元に応じて、舵角絶対値と、推定ロール角絶対値を算出する。さらに、算出した舵角絶対値を含む情報信号を、第一舵角判定部162及び第二舵角判定部164へ出力する。これに加え、算出した推定ロール角絶対値を含む情報信号を、ロール角判定部172へ出力する。
また、推定ロール角絶対値は、車両Vのロール角を推定し、その推定したロール角の絶対値に基づいて算出する。
また、推定ロール角絶対値は、例えば、車両Vが路面と平行である中立位置を基準とし、車両Vをロール軸の車両前後方向後方から見て左側が上がるロール角を正のロール角とする。これに加え、中立位置を基準とし、車両Vをロール軸の車両前後方向後方から見て右側が上がるロール角を負のロール角として算出する。
ここで、旋回舵角判定値は、操舵操作子の遊び(ガタ)分を超える操舵角であり、例えば、車両Vの諸元に基づいて設定する。
そして、第一舵角判定部162は、舵角絶対値が旋回舵角判定値を超えていると判定すると、その判定結果を含む情報信号(以降の説明では、「第一舵角判定信号」と記載する場合がある)を、旋回時間算出部166へ出力する。
そして、第二舵角判定部164は、舵角絶対値が旋回舵角判定値以下であると判定すると、その判定結果を含む情報信号(以降の説明では、「第二舵角判定信号」と記載する場合がある)を、舵角遅延処理部168へ出力する。
また、旋回時間算出部166は、舵角遅延処理部168から、後述する算出処理リセット信号の入力を受けると、算出した旋回時間を初期化(リセット)する処理を行う。
ここで、算出処理リセット信号とは、旋回時間算出部166で行う、旋回時間を算出する処理を初期化(リセット)する指令を含む情報信号である。また、遅延時間は、旋回時間算出部166が、第一舵角判定部162からの第一舵角判定信号の入力が停止してから、旋回時間を算出する処理と、旋回時間信号を旋回時間判定部170へ出力する処理を完了するまでに要する時間である。また、遅延時間は、例えば、車両Vの諸元に基づいて設定する。
ここで、旋回初期状態判定時間は、車両Vの走行状態が、直進状態から旋回状態へ移行し、さらに、推定したロール角の絶対値が後述する最大ロール判定値に達するまでに経過すると推定される時間であり、例えば、車両Vの諸元に基づいて設定する。
そして、旋回時間判定部170は、旋回時間が旋回初期状態判定時間以下であると判定すると、車両Vの走行状態が旋回初期状態に移行していると判定する。そして、車両Vの走行状態が旋回初期状態に移行しているとの判定結果を含む情報信号として、制御移行判定結果信号を生成する。さらに、生成した制御移行判定結果信号を、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110と、旋回初期フラグ変換部174及びロールダンピング判定部180へ出力する。
ここで、最大ロール判定値は、旋回状態で推定したロール角の絶対値が、予め設定したロール角閾値を超えて増加していると推定される値である。また、最大ロール判定値及びロール角閾値は、例えば、車両Vの諸元に基づいて設定する。
そして、ロール角判定部172は、推定ロール角絶対値が最大ロール判定値を超えていると判定すると、その判定結果を含む情報信号(以降の説明では、「最大ロール判定信号」と記載する場合がある)を、ロール角増大判定部176へ出力する。
ロール角増大判定部176は、旋回初期フラグ変換部174から旋回初期状態停止判定信号の入力を受けているか否かの判定と、ロール角判定部172から最大ロール判定信号の入力を受けているか否かの判定を行う。
ロールダンピング判定部180は、旋回初期フラグ変換部174から旋回初期状態停止判定信号の入力を受けているか否かの判定と、ロール角増大フラグ変換部178からロール角増大状態停止判定信号の入力を受けているか否かの判定を行う。
以下、図1から図16を参照しつつ、図17及び図18を用いて、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98が乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する処理を算出する処理について説明する。
まず、制動力によるフリクション及び駆動力によるフリクションのうち少なくとも一方を発生させるサスペンションSPに対し、過不足分のフリクションのうち、制動力によるフリクションと駆動力によるフリクションの配分比を算出する。なお、以降の説明では、上記の制動力によるフリクションを、「乗り心地制御用制動力フリクション」と記載する場合がある。同様に、以降の説明では、上記の駆動力によるフリクションを、「乗り心地制御用駆動力フリクション」と記載する場合がある。
ここで、制動力側挙動制御用フリクション算出マップは、図17中に示すように、横軸に車輪Wの制動力(図中では、「制動力」と示す)を示し、縦軸に過不足分のフリクション(図中では、「フリクション」と示す)を示すマップである。また、制動力側挙動制御用フリクション算出マップ中に示す制動力とフリクションとの関係は、車輪Wの制動力と車両Vの挙動との関連に応じて、その関係度合いが変化する。具体的には、車輪Wの制動力が増加しても、車両Vの挙動が急制動とならない限界値に近づくほど、車輪Wの制動力は、その増加度合いが減少する。なお、図17は、制動力側挙動制御用フリクション算出マップを示す図である。
乗り心地制御用駆動力フリクションは、過不足分のフリクションを、例えば、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98が予め記憶している駆動力側挙動制御用フリクション算出マップに適合させて算出する。
また、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98が乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する際には、例えば、車輪Wの制動力が、車輪Wの駆動力以上となるように、乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する処理を行う。
過不足分のフリクション<Kb×Fb_max+Ka×Fa_max … (1)
車輪Wの制動力<Fb_max … (2)
車輪Wの駆動力<Fa_max … (3)
車輪Wの制動力=車輪Wの駆動力=過不足分のフリクション/Kb+Ka … (4)
車輪Wの駆動力>Fa_max … (5)
車輪Wの駆動力=Fa_max … (6)
車輪Wの制動力=過不足分のフリクション−Fa_max/Kb … (7)
以上により、本実施形態の乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98は、車体の挙動を抑制するためのフリクションをサスペンションSPに発生させるフリクション発生源を選択する処理と、乗り心地制御側制駆動力配分比を算出する処理を行なう。
以下、図1から図18を参照して、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110が操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する処理について説明する。
操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する処理では、まず、走行モード判定ブロック142から低μ判定結果信号の入力を受けているか否かと、制御移行判定ブロック144から制御移行判定結果信号の入力を受けているか否かを判定する。
なお、以降の説明では、上記の制動力によるフリクションを、「操縦安定性制御用制動力フリクション」と記載する場合がある。同様に、以降の説明では、上記の駆動力によるフリクションを、「操縦安定性制御用駆動力フリクション」と記載する場合がある。
また、低μ判定結果信号の入力を受けておらず、且つ制御移行判定結果信号の入力を受けている場合、制御移行判定結果信号が含む判定結果に応じて、操縦安定性制御用制動力フリクションと操縦安定性制御用駆動力フリクションとの配分比を算出する。
また、低μ判定結果信号の入力を受けているとともに、制御移行判定結果信号の入力を受けている場合、制御移行判定結果信号が含む判定結果に応じて、操縦安定性制御用制動力フリクションと操縦安定性制御用駆動力フリクションとの配分比を算出する。
まず、低μ判定結果信号の入力を受けている場合に、操縦安定性制御用制動力フリクションと操縦安定性制御用駆動力フリクションとの配分比を算出する例について説明する。
制御移行判定結果信号が含む判定結果が、車両Vの走行状態が旋回初期状態からロール角増大状態に移行しているとの判定結果である場合、二つの車輪Wに対して設置したサスペンションSPに対し、制動力によるフリクションを発生させる。ここで、二つの車輪Wとは、二つの前輪のうち旋回方向で内輪となる前輪と、二つの後輪のうち旋回方向で外輪となる後輪である。また、旋回方向で外輪となる後輪に対して設置したサスペンションSPに発生させるフリクションは、旋回方向で内輪となる前輪に対して設置したサスペンションSPに発生させるフリクションよりも大きな値とする。
また、制御移行判定結果信号が含む判定結果が、上述した、旋回初期状態、ロール角増大状態及びロールダンピング状態のいずれでもないとの判定結果である場合、低μ判定結果信号の入力を受けていない場合と同様の制御を行う。
制御移行判定結果信号が含む判定結果が、車両Vの走行状態が旋回初期状態に移行しているとの判定結果である場合、旋回方向で内輪となる前輪及び後輪に対して設置したサスペンションSPに対し、制動力によるフリクションを発生させる。
また、制御移行判定結果信号が含む判定結果が、車両Vの走行状態が旋回初期状態からロール角増大状態に移行しているとの判定結果である場合、全てのサスペンションSPに対し、制動力によるフリクションを発生させる。ここで、旋回方向で内輪となる前輪及び後輪に対して設置したサスペンションSPに発生させるフリクションは、旋回方向で外輪となる前輪及び後輪に対して設置したサスペンションSPに発生させるフリクションよりも大きな値とする。
なお、操縦安定性制御用制動力フリクションは、例えば、上述した制動力側挙動制御用フリクション算出マップと同様のマップを用いて算出してもよい。同様に、操縦安定性制御用駆動力フリクションは、例えば、上述した駆動力側挙動制御用フリクション算出マップと同様のマップを用いて算出してもよい。
以下、図1から図18を参照しつつ、図19を用いて、制動力指令値を指令液圧に換算する処理について説明する。
制動力指令値を指令液圧に換算する際には、制動力指令値を、例えば、乗り心地制御ブロック36が備える制動力指令値算出部100Aが予め記憶している指令液圧換算マップに適合させる。
また、指令液圧は、以下の式(8)で算出してもよい。
指令液圧=(制動力指令値[N]×タイヤ動半径[m])
/(4×パッドμ×パッド面積×有効径) … (8)
以下、図1から図19を参照しつつ、図20を用いて、駆動力指令値をモータ駆動トルク補正値に換算する処理について説明する。
駆動力指令値をモータ駆動トルク補正値に換算する際には、駆動力指令値を、例えば、乗り心地制御ブロック36が備える駆動力指令値算出部102Aが予め記憶している駆動トルク補正値換算マップに適合させる。
ここで、駆動トルク補正値換算マップは、図20中に示すように、横軸に駆動力指令値を示し、縦軸に駆動トルク補正値を示すマップである。なお、図20は、駆動トルク補正値換算マップを示す図である。
また、駆動トルク補正値は、以下の式(9)で算出してもよい。
駆動トルク補正値=(駆動力指令値[N]×タイヤ動半径[m]) … (9)
次に、図1から図20を参照しつつ、図21から図27を用いて、本実施形態の車両挙動制御装置1を用いて行なう動作の一例を説明する。
図21は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートである。なお、車両挙動制御装置1は、予め設定したサンプリング時間(例えば、50[msec])毎に、以下に説明する処理を行う。
図21中に示すように、車両挙動制御装置1が処理を開始(START)すると、まず、ステップS100において、車両Vの現在の状態を取得する処理(図中に示す「車両状態取得」)を行う。ステップS100において車両Vの現在の状態を取得する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS102へ移行する。
ステップS102では、ステップS100で取得した各種の状態に基づき、車両Vの挙動を算出する処理(図中に示す「車両挙動算出」)を行なう。ステップS102において、車両Vの挙動を算出する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS104へ移行する。
ステップS104では、フリクション検出ブロック34で総フリクションを算出する処理(図中に示す「推定フリクション算出」)を行う。ステップS104において総フリクションを算出する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS106へ移行する。
ステップS106において、車体の挙動を抑制するためのフリクションをサスペンションSPに発生させる制御が必要である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS108へ移行する。
一方、ステップS106において、車体の挙動を抑制するためのフリクションをサスペンションSPに発生させる制御が不要である(図中に示す「No」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS100へ移行する。
ステップS110では、車両Vの走行路面が低μ路面ではないとの条件が成立しているか否かを判定する処理(図中に示す「低μフラグOFF?」)を行なう。
なお、ステップS110で行なう具体的な処理についての説明は、後述する。
一方、ステップS110において、車両Vの走行路面が低μ路面ではないとの条件が成立していない(図中に示す「No」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS114へ移行する。
ステップS112では、ステップS100で取得した各種の状態に基づき、駆動力指令値の出力を許可するか否かを判定する処理(図中に示す「駆動指令許可?」)を行う。
なお、ステップS112で行なう具体的な処理については、後述する。
一方、ステップS112において、駆動力指令値の出力を許可しない(図中に示す「No」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS118へ移行する。
ステップS114では、低μ路面の走行において各車輪Wのスリップを抑制するための制御(スノーモード制御、低μ路面走行モード)における、制動力指令値を算出する処理(図中に示す「低μ時 制動力指令値算出」)を行なう。
なお、ステップS114で行なう具体的な処理についての説明は、後述する。
なお、ステップS116で行なう具体的な処理については、後述する。
ステップS116において、制動力指令値の出力を許可する(図中に示す「Yes」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS120へ移行する。
一方、ステップS116において、制動力指令値の出力を許可しない(図中に示す「No」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS124へ移行する。
なお、ステップS118で行なう具体的な処理については、後述する。
ステップS118において、制動力指令値の出力を許可する(図中に示す「Yes」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS126へ移行する。
一方、ステップS118において、制動力指令値の出力を許可しない(図中に示す「No」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理を終了(END)する。
ステップS126では、制動力指令値を算出する処理(図中に示す「制動力指令値算出」)を行なう。さらに、ステップS126では、制動力指令値をブレーキアクチュエータ26へ出力する処理を行う。ステップS126において、制動力指令値をブレーキアクチュエータ26へ出力する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理を終了(END)する。
図22は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートであり、車両Vの走行路面が低μ路面ではないとの条件が成立しているか否かを判定する処理を示すフローチャートである。なお、以降の説明では、車両Vの走行路面が低μ路面ではないとの条件が成立しているか否かを判定する処理を「低μ路面判定処理」と記載する場合がある。
図22中に示すように、低μ路面判定処理を開始(START)すると、まず、ステップS200の処理を行う。
ステップS200では、走行モード判定ブロック142から低μ判定結果信号の入力を受けているか否かを判定する処理(図中に示す「低μ判定成立?」)を行う。
一方、ステップS200において、走行モード判定ブロック142から低μ判定結果信号の入力を受けていない(図中に示す「No」)と判定した場合、低μ路面判定処理は、ステップS200へ移行する。
ステップS202では、走行モード判定ブロック142から低μ判定結果信号の入力を受けている状態において、車両Vが走行中であるか否かを判定する処理(図中に示す「低μ走行中?」)を行う。
一方、ステップS202において、走行モード判定ブロック142から低μ判定結果信号の入力を受けている状態において、車両Vが走行中ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、低μ路面判定処理は、ステップS200へ移行する。
ステップS204では、車両Vの走行路面が低μ路面であるとの条件を成立させる処理(図中に示す「低μフラグON」)を行なう。ステップS204において、車両Vの走行路面が低μ路面であるとの条件を成立させる処理を行うと、低μ路面判定処理を終了(END)する。
図23は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のうち、駆動力指令値の出力を許可するか否かを判定する処理、すなわち、上述したステップS112で行なう処理を示すフローチャートである。
図23中に示すように、ステップS112で行なう処理を開始(START)すると、まず、ステップS300において、上述したVDC制御またはTCS制御が作動しているか否かを判定する処理(図中に示す「VDC or TCS = ON?」)を行う。
一方、ステップS300において、VDC制御及びTCS制御が作動していない(図中に示す「No」)と判定した場合、ステップS112で行なう処理は、ステップS300からステップS304へ移行する。
ステップS302では、駆動力指令値の出力を許可しない処理(図中に示す「駆動力指令不許可」)を行う。ステップS302において、駆動力指令値の出力を許可しない処理を行うと、ステップS112で行なう処理は、ステップS302からステップS300の処理へ復帰(RETURN)する。
以上により、ステップS112で行なう処理では、上述したVDC制御またはTCS制御が作動している場合、すなわち、車両Vの走行に関する不安定な挙動を抑制する制御が作動している場合には、駆動力指令値の出力を許可しない処理を行う。
図24は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のうち、低μ路面の走行において各車輪Wのスリップを抑制するための制御における、制動力指令値を算出する処理、すなわち、上述したステップS114で行なう処理を示すフローチャートである。
図24中に示すように、ステップS114で行なう処理を開始(START)すると、まず、ステップS400において、制御移行判定ブロック144から入力を受けている制御移行判定結果信号が含む判定結果を参照する。そして、制御移行判定結果信号が含む判定結果が、車両Vの走行状態が旋回初期状態に移行しているとの判定結果であるか否かを判定する処理(図中に示す「操舵初期?」)を行う。
一方、ステップS400において、制御移行判定結果信号が、旋回初期状態に移行しているとの判定結果を含んでいない(図中に示す「No」)と判定した場合、ステップS114で行なう処理は、ステップS400からステップS404へ移行する。
ステップS402では、旋回初期状態における、サスペンションSPに対してフリクションを発生させるための制動力指令値を算出する処理(図中に示す「旋回初期制御用 制動力指令値算出」)を行なう。ステップS402において、旋回初期状態における制動力指令値を算出する処理を行うと、ステップS114で行なう処理を終了(END)する。
ステップS404において、制御移行判定結果信号が、ロール角増大状態に移行しているとの判定結果を含む(図中に示す「Yes」)と判定した場合、ステップS114で行なう処理は、ステップS404からステップS406へ移行する。
一方、ステップS404において、制御移行判定結果信号が、ロール角増大状態に移行しているとの判定結果を含んでいない(図中に示す「No」)と判定した場合、ステップS114で行なう処理は、ステップS404からステップS408へ移行する。
ステップS408では、制御移行判定ブロック144から入力を受けている制御移行判定結果信号が含む判定結果を参照する。そして、制御移行判定結果信号が含む判定結果が、車両Vの走行状態がロール角増大状態からロールダンピング状態に移行しているとの判定結果であるか否かを判定する処理(図中に示す「ロールダンピング?」)を行う。
ステップS408において、制御移行判定結果信号が、ロールダンピング状態に移行しているとの判定結果を含む(図中に示す「Yes」)と判定した場合、ステップS114で行なう処理は、ステップS408からステップS410へ移行する。
ステップS410では、ロールダンピング状態における、サスペンションSPに対してフリクションを発生させるための制動力指令値を算出する処理(図中に示す「ロールダンピング制御用 制動力指令値算出」)を行なう。ステップS410において、ロールダンピング状態における制動力指令値を算出する処理を行うと、ステップS114で行なう処理を終了(END)する。
ステップS412では、低μ判定結果信号の入力を受けていない場合における、サスペンションSPに対してフリクションを発生させるための制動力指令値を算出する処理(図中に示す「通常制御用 制動力指令値算出」)を行なう。ステップS412において、低μ判定結果信号の入力を受けていない場合における制動力指令値を算出する処理を行うと、ステップS114で行なう処理を終了(END)する。
図25は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のうち、制動力指令値の出力を許可するか否かを判定する処理、すなわち、上述したステップS116及びS118で行なう処理を示すフローチャートである。
図25中に示すように、ステップS116及びS118で行なう処理を開始(START)すると、まず、ステップS500の処理を行う。
ステップS500では、上述したVDC制御またはABS制御が作動しているか否かを判定する処理(図中に示す「VDC or ABS = ON?」)を行う。
一方、ステップS500において、VDC制御及びABS制御が作動していない(図中に示す「No」)と判定した場合、ステップS116及びS118で行なう処理は、ステップS500からステップS504へ移行する。
ステップS502では、制動力指令値の出力を許可しない処理(図中に示す「制動力指令不許可」)を行う。ステップS502において、制動力指令値の出力を許可しない処理を行うと、ステップS116及びS118で行なう処理は、ステップS502からステップS500の処理へ復帰(RETURN)する。
以上により、ステップS116及びS118で行なう処理では、上述したVDC制御またはABS制御が作動している場合、すなわち、車両Vの走行に関する不安定な挙動を抑制する制御が作動している場合には、制動力指令値の出力を許可しない処理を行う。
また、図26(a)は、現在操舵角の変化を示す図であり、図26(b)は、ロール角の推定値(推定ロール角)の変化を示す図である。また、図26(c)は、目標フリクションの変化を示す図であり、図26(d)は、左前輪WFLに対する制動力指令値の変化を示す図である。
また、図26(e)は、右前輪WFRに対する制動力指令値の変化を示す図であり、図26(f)は、左後輪WRLに対する制動力指令値の変化を示す図であり、図26(g)は、右後輪WRRに対する制動力指令値の変化を示す図である。
図26中に示すように、車両挙動制御装置1が行なう処理では、車両Vの走行中に、現在操舵角が旋回舵角判定値(左回り)を超えた時点(図中に示す「t1」の時点)において、左前輪WFLに対する制動力指令値を、目標フリクションに応じて算出する。すなわち、時点t1では、車両Vを左方向へ旋回走行させるために運転者が操舵操作子を操舵操作し、舵角絶対値が旋回舵角判定値(左回り)を超えており、車両Vの走行状態が、直進状態から旋回初期状態に移行していると判定する。このため、時点t1において、旋回時間の算出を開始する。
時点t2以降において、推定ロール角の絶対値の変化状態が増加から減少となった時点(図中に示す「t3」の時点)で、車両Vの走行状態が、ロール角増大状態からロールダンピング状態に移行していると判定する。そして、時点t2以降と同様、右後輪WRRに対する制動力指令値を、目標フリクションに応じて算出する。
時点t8以降において、推定ロール角の絶対値の変化状態が増加から減少となった時点(図中に示す「t9」の時点)で、車両Vの走行状態が、ロール角増大状態からロールダンピング状態に移行していると判定する。そして、左後輪WRLのみに対する制動力指令値を、目標フリクションに応じて算出する。
時点t12以降、現在操舵角の絶対値が減少して、舵角絶対値が旋回舵角判定値(左回り)以下から「0」となった時点(図中に示す「t13」の時点)まで、目標フリクションに応じた右後輪WRRに対する制動力指令値の算出を継続する。
図27は、低μ判定結果信号の入力を受けている場合に、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110が算出した操縦安定性制御側制駆動力配分比を用いて制御する車両Vの挙動を示す図である。なお、図27中には、図26中のタイムチャートにおける時点t4から時点t7の状態、すなわち、車両Vの走行状態が直進状態から右旋回状態へ移行し、再び直進状態へ移行する状態を示す。また、図27中では、上面視の車両Vを符号「Vu」で示し、車両前後方向後方から見た車両Vを符号「Vr」で示す。また、図27中では、車両Vに発生しているヨーモーメントを符号「Ym」を付した矢印で示す。
図27(a)中に示すように、車両Vの走行状態が旋回初期状態に移行している状態では、サスペンションSPFR、すなわち、旋回方向で内輪となる右前輪WFRに対して設置したサスペンションSPに対し、制動力によるフリクションを発生させる。
これにより、車両Vの走行状態が旋回初期状態に移行している状態では、車体の沈み込みを実現するとともに、車体の挙動を抑制するためのフリクションを発生させる制御の初期応答性を向上させる。なお、図27(a)中では、制動力によりサスペンションSPFRに発生させるフリクションを符号「Fr1」で示す。
また、図27(c)中に示すように、車両Vの走行状態がロール角増大状態からロールダンピング状態に移行している状態では、サスペンションSPRRのみに対し、制動力によるフリクションを発生させる。すなわち、車両Vの走行状態がロール角増大状態からロールダンピング状態に移行している状態では、旋回方向で内輪となる右後輪WRRに対して設置したサスペンションSPに対し、制動力によるフリクションを発生させる。
以上により、本実施形態では、車両Vに発生するヨーモーメントに対する抗力を車両Vの進行方向で後側となる車輪Wで発生させるとともに、車両Vに発生するヨーモーメントを車両Vの進行方向で前側となる車輪Wで許容するように、制駆動力配分比を算出する。また、上述した制駆動力配分比の算出は、低μ路面走行モードで車輪Wの制動力を制御すると判定すると、操舵角の変化及び推定したロール角の変化のうち少なくとも一方に応じて行う。
また、上述した操舵角センサ6及び制御移行判定用車両挙動算出部160は、角度情報取得部に対応する。
また、上述した制御移行判定ブロック144は、制御移行判定部に対応する。
また、上述したブレーキアクチュエータ26、マスタシリンダ24、各ホイールシリンダ32は、制動力付与部に対応する。
ここで、本実施形態の制動力付与部は、上述したように、運転者による制動力要求の制御に応じた制動力及び車両Vのシステム制御に応じた制動力に、制動力指令値に基づく制動力を合算して、車輪Wに制動力を付与する。
また、上述した動力コントロールユニット28、動力ユニット30は、駆動力付与部に対応する。
ここで、本実施形態の駆動力付与部は、上述したように、運転者による駆動力要求の制御に応じた駆動力及び車両Vのシステム制御に応じた駆動力に、駆動力指令値に基づく駆動力を合算して、車輪Wに制動力を付与する。
また、上述したサスペンション状態算出部44は、ストローク位置算出部と、ストローク速度算出部に対応する。
また、上述したサスペンション状態フリクション算出部52は、ストローク位置フリクション算出部と、ストローク速度フリクション算出部に対応する。
なお、本実施形態の車両挙動制御方法における制駆動力配分比の算出は、車輪Wの制動力を低μ路面走行モードで制御すると判定すると、操舵角の変化及び推定したロール角の変化のうち少なくとも一方の変化に応じて行う。
本実施形態の車両挙動制御装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110が、車両Vに発生するヨーモーメントに対する抗力を車両Vの進行方向で後側となる車輪Wで発生させるように、操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する。これに加え、車両Vに発生するヨーモーメントを車両Vの進行方向で前側となる車輪Wで許容するように、操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する。ここで、操縦安定性制御側制駆動力配分比の算出は、走行モード判定ブロック142において、車輪Wの制動力を低μ路面走行モードで制御すると判定すると行う。また、操縦安定性制御側制駆動力配分比の算出は、操舵角センサ6が検出した操舵角の変化、及び制御移行判定用車両挙動算出部160が推定したロール角の変化のうち少なくとも一方の変化に応じて行う。
このため、積雪路面や凍結路面等の低μ路面における旋回走行時において、操舵角に対するヨーレート及び横加速度の発生状態を安定させることが可能となる。
その結果、低μ路面の走行時において、車体の上屋挙動を抑制するとともに、操縦安定性の低下を抑制することが可能となる。
すなわち、旋回初期状態では、進行方向で前側となる車輪Wのうち旋回方向で内輪となる車輪Wに対して設置したサスペンションSPのみに、制動力によるフリクションを発生させるように、操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する。
その結果、低μ路面の走行時であり、車両Vの走行状態が旋回初期状態に移行している状態において、車体の上屋挙動を抑制するとともに、操縦安定性の低下を抑制することが可能となる。
条件A.進行方向で前側となる車輪Wのうち旋回方向で内輪となる車輪Wに対して設置したサスペンションSPに、制動力によるフリクションを発生させる条件。
条件B.進行方向で後側となる車輪Wのうち旋回方向で外輪となる車輪Wに対して設置したサスペンションSPに、制動力によるフリクションを発生させる条件。
条件C.旋回方向で外輪となる車輪Wに対して設置したサスペンションSPに発生させるフリクションを、旋回方向で内輪となる車輪Wに対して設置したサスペンションSPに発生させるフリクションよりも大きくする条件。
その結果、低μ路面の走行時であり、車両Vの走行状態が旋回初期状態からロール角増大状態に移行している状態において、車体の上屋挙動を抑制するとともに、操縦安定性の低下を抑制することが可能となる。
条件D.旋回時間が旋回初期状態判定時間未満である。
条件E.旋回時間が旋回初期状態判定時間以下である状態で推定したロール角の絶対値が最大ロール判定値を超えた状態から最大ロール判定値以下に減少する。
これに加え、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110が、制御移行判定ブロック144が車両Vの走行状態がロールダンピング状態であると判定すると、以下に示す操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する。
このため、車両Vの走行状態がロール角増大状態からロールダンピング状態に移行している状態では、路面の凹凸等により車両Vに発生する断続的なロール挙動の変動を抑制する制御を行うこととなる。
その結果、低μ路面の走行時であり、車両Vの走行状態がロール角増大状態からロールダンピング状態に移行している状態において、車体の上屋挙動を抑制するとともに、操縦安定性の低下を抑制することが可能となる。
このため、横力が作用しにくい直進走行時等においても、車輪Wの制動力及び駆動力により、サスペンションSPが入力を受ける前後力に基づいて、サスペンションSPに発生するフリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、車両Vの走行状態に応じて適切に算出した、サスペンションSPに発生するフリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となり、車両Vの走行状態に応じた挙動制御をより適切に行うことが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの走行時に変化するサスペンションSPのストローク位置に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPのストローク位置に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの走行時に変化するサスペンションSPのストローク速度に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPのストローク速度に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの旋回走行時においてサスペンションSPに作用する横力に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPに作用する横力に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
その結果、車体の挙動を抑制するための制御を反映しない制動力に加え、車体の挙動を抑制するための制御を反映した制動力を、車輪Wに付与することが可能となる。
その結果、車体の挙動を抑制するための制御を反映しない駆動力に加え、車体の挙動を抑制するための制御を反映した駆動力を、車輪Wに付与することが可能となる。
(11)制動力算出部40が、車両Vの走行制御に基づく車輪Wの制動力を算出し、駆動力算出部42が、車両Vの走行制御に基づく車輪Wの駆動力を算出する。
その結果、車体のロール挙動を抑制するための制御を反映しない車輪Wの制動力及び駆動力を算出することが可能となり、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
このため、積雪路面や凍結路面等の低μ路面における旋回走行時において、操舵角に対するヨーレート及び横加速度の発生状態を安定させることが可能となる。
その結果、低μ路面の走行時において、車体の上屋挙動を抑制するとともに、操縦安定性の低下を抑制することが可能となる。
(1)本実施形態では、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部110により、走行モード判定ブロック142による判定結果と、操舵角や推定したロール角の変化に応じて、操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出したが、これに限定するものではない。すなわち、乗り心地制御側制駆動力配分比算出部98により、走行モード判定ブロック142による判定結果と、操舵角や推定したロール角の変化に応じて、乗り心地制御側制駆動力配分比を算出してもよい。
(3)本実施形態では、車両Vを電気自動車とし、動力ユニット30が備える駆動用モータが発生させる駆動力を、ドライブシャフト等を介して各車輪Wに付与する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、車両Vを電気自動車とし、例えば、駆動輪を構成する車輪Wにインホイールモータ(IWM:In‐Wheel Motor)を備える構成としてもよい。
(5)本実施形態では、制動力フリクション、駆動力フリクション、ストローク位置フリクション、ストローク速度フリクション、横力フリクションを合算して、総フリクションを算出したが、これに限定するものではない。すなわち、少なくとも、制動力フリクション及び駆動力フリクションに基づいて、総フリクションを算出すればよい。
20 制駆動力コントローラ
24 マスタシリンダ
26 ブレーキアクチュエータ
28 動力コントロールユニット
30 動力ユニット
32 ホイールシリンダ
34 フリクション検出ブロック
36 乗り心地制御ブロック
38 操縦安定性制御ブロック
40 制動力算出部
42 駆動力算出部
44 サスペンション状態算出部
46 サスペンション横力算出部
48 制動力フリクション算出部
50 駆動力フリクション算出部
52 サスペンション状態フリクション算出部
54 横力フリクション算出部
56 総フリクション算出部
94 乗り心地制御側車両挙動算出部
96 乗り心地制御側目標フリクション算出部
98 乗り心地制御側制駆動力配分比算出部
100A 乗り心地制御ブロック36が備える制動力指令値算出部
100B 操縦安定性制御ブロック38が備える制動力指令値算出部
102A 乗り心地制御ブロック36が備える駆動力指令値算出部
102B 操縦安定性制御ブロック38が備える駆動力指令値算出部
106 操縦安定性制御側車両挙動算出部
108 操縦安定性制御側目標フリクション算出部
110 操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部
112 挙動抑制フリクション算出部
140 走行モード選択スイッチ
142 走行モード判定ブロック
144 制御移行判定ブロック
146 非低μ状態車両挙動算出部
148 現在車両挙動算出部
150 走行モード選択状態判定部
152 外部情報処理部
154 車両挙動比較演算部
156 車両挙動低μ判定部
158 低μ判定選択部
160 制御移行判定用車両挙動算出部
162 第一舵角判定部
164 第二舵角判定部
166 旋回時間算出部
168 舵角遅延処理部
170 旋回時間判定部
172 ロール角判定部
174 旋回初期フラグ変換部
176 ロール角増大判定部
178 ロール角増大フラグ変換部
180 ロールダンピング判定部
V 車両
W 車輪
SP サスペンション
Claims (12)
- 車体と、複数の車輪と、前記車体と各車輪とを連結するサスペンションと、を備える車両に対し、前記車体の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記挙動を抑制するためのフリクションを前記サスペンションに発生させるために必要な、前記車輪の制動力と車輪の駆動力との制駆動力配分比を算出する制駆動力配分比算出部と、
前記制駆動力配分比算出部が算出した前記車輪の制動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として制動力指令値を算出する制動力指令値算出部と、
前記制動力指令値算出部が算出した制動力指令値に基づいて、前記車輪に制動力を付与する制動力付与部と、
予め設定した摩擦係数未満の走行路面を走行するための走行モードである低μ路面走行モードで前記車輪の制動力を制御するか否かを判定する低μ路面走行判定部と、
操舵操作子の操舵角の検出及び前記車体のロール角の推定を行う角度情報取得部と、を備え、
前記制駆動力配分比算出部は、前記車輪の制動力を前記低μ路面走行モードで制御すると判定すると、前記角度情報取得部が検出した操舵角の変化及び推定したロール角の変化に応じて、前記車両に発生するヨーモーメントに対する抗力を前記車両の進行方向で後側となる車輪に制動力のみで発生させるとともに、前記進行方向で前側となる車輪に前記後側となる車輪に発生させた制動力よりも少ない制動力のみを発生させることで前記ヨーモーメントを前記前側となる車輪で許容するように、前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする車両挙動制御装置。 - 前記車両の走行状態を判定する制御移行判定部を備え、
前記制御移行判定部は、直進状態の前記車両が旋回状態へ移行した時点からの経過時間である旋回時間が予め設定した旋回初期状態判定時間未満であると、前記車両の走行状態が旋回初期状態であると判定し、
前記制駆動力配分比算出部は、前記制御移行判定部が前記車両の走行状態が前記旋回初期状態であると判定すると、前記進行方向で前側となる車輪のうち旋回方向で内輪となる車輪に対して設置した前記サスペンションのみに制動力によるフリクションを発生させるように、前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする請求項1に記載した車両挙動制御装置。 - 前記車両の走行状態を判定する制御移行判定部を備え、
前記制御移行判定部は、直進状態の前記車両が旋回状態へ移行した時点からの経過時間である旋回時間が予め設定した旋回初期状態判定時間以上であり、且つ前記推定したロール角の絶対値が予め設定した最大ロール判定値を超えていると、前記車両の走行状態がロール角増大状態であると判定し、
前記制駆動力配分比算出部は、前記制御移行判定部が前記車両の走行状態が前記ロール角増大状態であると判定すると、前記進行方向で前側となる車輪のうち旋回方向で内輪となる車輪に対して設置した前記サスペンション、及び前記進行方向で後側となる車輪のうち旋回方向で外輪となる車輪に対して設置した前記サスペンションに制動力によるフリクションを発生させ、さらに、前記旋回方向で外輪となる車輪に対して設置した前記サスペンションに発生させるフリクションを旋回方向で内輪となる車輪に対して設置した前記サスペンションに発生させるフリクションよりも大きくするように、前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した車両挙動制御装置。 - 前記車両の走行状態を判定する制御移行判定部を備え、
前記制御移行判定部は、直進状態の前記車両が旋回状態へ移行した時点からの経過時間である旋回時間が予め設定した旋回初期状態判定時間を超えている状態で前記推定したロール角の絶対値が予め設定した最大ロール判定値を超えてから減少すると、前記車両の走行状態が旋回状態から直進状態へ復帰したロールダンピング状態であると判定し、
前記制駆動力配分比算出部は、前記制御移行判定部が前記車両の走行状態が前記ロールダンピング状態であると判定すると、前記進行方向で後側となる車輪のうち旋回方向で内輪となる車輪に対して設置した前記サスペンションのみに制動力によるフリクションを発生させるように、前記制駆動力配分比を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記車輪の制動力を算出する制動力算出部と、
前記制動力算出部が算出した制動力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである制動力フリクションを算出する制動力フリクション算出部と、
前記車輪の駆動力を算出する駆動力算出部と、
前記駆動力算出部が算出した駆動力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである駆動力フリクションを算出する駆動力フリクション算出部と、
前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクションと、前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションと、を合算して、前記サスペンションに発生するフリクションである総フリクションを、各サスペンションに対して個別に算出する総フリクション算出部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記制動力算出部は、前記車両の走行制御に基づく前記車輪の制動力を算出し、
前記駆動力算出部は、前記車両の走行制御に基づく前記車輪の駆動力を算出し、
前記走行制御は、前記車両の運転者による制動力要求の制御と、前記車両の運転者による駆動力要求の制御と、前記車両のシステム制御と、を含む制御であることを特徴とする請求項5に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションのストローク位置を算出するストローク位置算出部と、
前記ストローク位置算出部が算出したストローク位置に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションであるストローク位置フリクションを算出するストローク位置フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記ストローク位置フリクション算出部が算出したストローク位置フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項5または6に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションのストローク速度を算出するストローク速度算出部と、
前記ストローク速度算出部が算出したストローク速度に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションであるストローク速度フリクションを算出するストローク速度フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記ストローク速度フリクション算出部が算出したストローク速度フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項5から請求項7のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションの横力を算出するサスペンション横力算出部と、
前記サスペンション横力算出部が算出した横力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである横力フリクションを算出するサスペンション横力フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記サスペンション横力フリクション算出部が算出した横力フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項5から請求項8のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記制動力付与部は、前記車両の運転者による制動力要求の制御に応じた制動力及び前記車両のシステム制御に応じた制動力に、前記制動力指令値算出部が算出した制動力指令値に基づく制動力を合算して、前記車輪に制動力を付与することを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。
- 前記制駆動力配分比算出部が算出した前記車輪の駆動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として駆動力指令値を算出する駆動力指令値算出部と、
前記駆動力指令値算出部が算出した駆動力指令値に基づいて、前記車輪に駆動力を付与する駆動力付与部と、を備え、
前記駆動力付与部は、前記車両の運転者による駆動力要求の制御に応じた駆動力及び車両のシステム制御に応じた駆動力に、前記駆動力指令値算出部が算出した駆動力指令値に基づく駆動力を合算して、前記車輪に駆動力を付与することを特徴とする請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 車体と、複数の車輪と、前記車体と各車輪とを連結するサスペンションと、を備える車両に対し、前記車体の挙動を制御する車両挙動制御方法であって、
予め設定した摩擦係数未満の走行路面を走行するための走行モードである低μ路面走行モードで前記車輪の制動力を制御するか否かを判定し、
操舵操作子の操舵角の検出及び前記車体のロール角の推定を行い、
前記車輪の制動力を前記低μ路面走行モードで制御すると判定すると、前記検出した操舵角の変化及び前記推定したロール角の変化に応じて、前記車両に発生するヨーモーメントに対する抗力を前記車両の進行方向で後側となる車輪に制動力のみで発生させるとともに、前記進行方向で前側となる車輪に前記後側となる車輪に発生させた制動力よりも少ない制動力のみを発生させることで前記ヨーモーメントを前記前側となる車輪で許容するように、前記挙動を抑制するためのフリクションを前記サスペンションに発生させるために必要な、前記車輪の制動力と車輪の駆動力との制駆動力配分比を算出し、
前記算出した前記車輪の制動力の配分比に基づくフリクションを前記サスペンションに発生させるための車輪に対する最終指令値として制動力指令値を算出し、当該算出した制動力指令値に基づいて前記車輪に制動力を付与することを特徴とする車両挙動制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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