ところで、オフセット量に影響を及ぼす部材(例えば、電動機およびレゾルバ)に故障等が生じると、その部材が交換または修理される場合がある。この場合、上述した各種のばらつき等に起因し、その部材が交換等される「前」のオフセット量と、その部材が交換等された「後」のオフセット量とは、必ずしも一致しない。そのため、この場合、オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等された「後」のオフセット量が改めて(交換等の後に再び)取得されることが望ましい。
オフセット量を取得する具体的な方法としては、種々の方法が採用され得る。例えば、従来装置が適用される車両においては、電動機が交換または修理される場合、上記トランスミッションの全体が車両から取り外される。そして、電動機が交換または修理されてトランスミッションが再び車両に取り付けられる前に、所定の方法(具体的に述べると、電動機の回転軸を外力によって回転させたときに電動機に生じる励起電圧を測定し、その励起電圧に基づいてオフセット量を取得する方法)により、レゾルバのオフセット量が改めて取得される。そして、その取得されたオフセット量が、上記記憶装置に記憶される。その後、トランスミッションが車両に取り付けられる。
従来装置に採用されている上記方法は、オフセット量を取得するための特別な装置(例えば、電動機の回転軸を外力によって回転させる装置および電動機に生じる励起電圧を測定する装置など)を用いて実行されるので、電動機を適切に作動させる観点において十分な精度にて新たなオフセット量を取得することができるという長所がある。しかし、上記方法は、その特別な装置を用いた処理を特定の場所(例えば、修理工場内など)にて実行する必要があることから、その実施が煩雑であるという短所を有する。
そこで、オフセット量を取得する処理をより簡便に実施するべく、オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等された場合、その部材が車両に取り付けられた後に、車両の一般の操作者が通常行う操作(例えば、車両を起動するスイッチを押す操作、および、車両を減速または加速するためのアクセルの操作など)に伴ってオフセット量を取得する処理を実行することが考えられる。
ここで、一般に、オフセット量を取得する処理は、電動機の回転軸の回転位置に関する情報を取得するとともに、その取得された情報に基づいてオフセット量を特定するように、実行される。そして、電動機の回転軸が「回転されながら」取得された回転軸の回転位置に関する情報は、一般に、電動機の回転軸が「回転していない」状態にて取得された同情報よりも、精度が高い。換言すると、一般に、電動機の回転軸が回転されながら取得されたオフセット量は、電動機の回転軸が停止していない状態にて取得されたオフセット量よりも、精度において優れる。そのため、オフセット量を精度良く取得する観点から、電動機の回転軸が回転しているときにオフセット量を取得する処理が実行されることが望ましいと考えられる。
一方、電動機は、上述したように、回転軸を介して必要に応じたトルク(例えば、車両を走行させるための駆動力としてのトルク、および、車両を減速または停止させるとともに電力を回生するための抵抗力としてのトルク)を出力する。このように電動機の回転軸を介してトルクが出力されているとき、一般に、種々の外的な要因(例えば、駆動力として要求されるトルクの変動など)により、回転軸の回転速度が変動する可能性がある。そのため、上述したように電動機の回転軸が回転しているときにオフセット量を取得する処理を実行する場合、このような回転軸の回転速度の変動が、取得されるオフセット量の精度に影響を及ぼす場合がある。
よって、オフセット量を出来る限り精度良く取得する観点から、電動機の回転軸が回転しているときにオフセット量を取得する処理が実行される場合、同処理が実行されている期間中には電動機の回転軸にトルクを生じさせないことが望ましい。
しかしながら、電動機を駆動源として備える車両においては、車両を出来る限りエネルギ効率良く走行させる等の目的から、一般に、電動機の回転軸にトルクが生じていない状態にて同回転軸が回転する機会は少ない。そのため、上述した望ましい状況(回転軸にトルクを生じさせない状態にて回転軸が回転しているとの条件が満たされる状況)にてオフセット量を取得する処理を実行することは、一般に、困難である。よって、オフセット量に影響を及ぼす部材が交換等された場合、上述した望ましい状況が自然に成立することを待っていると、オフセット量が精度良く取得されていないにもかかわらず電動機が作動され続ける可能性が高い。そして、そのようにオフセット量が精度良く取得されていない状態にて電動機が作動されると、電動機が適切に制御されず、車両のドライバビリティが低下する虞がある。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、オフセット量を取得する必要があるときに出来る限り迅速にオフセット量を精度良く取得することができる、車両の制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明による車両の制御装置は、
内燃機関および電動機を備えた車両に適用され、レゾルバによって検出される前記電動機の回転位置の「オフセット量」を取得する処理を行う制御装置である。
本発明による制御装置において、
前記処理は、前記電動機の発生トルクが正負の間で反転する途中に設けられたゼロトルク期間中であり且つ前記電動機が回転しているときに行われ、
前記処理が行われるとき、前記内燃機関を作動又は停止させる制御、および、前記電動機によるトルク発生を要する制御が禁止される、ように構成される。
上記構成を有する本発明の制御装置は、オフセット量を取得する処理(オフセット量取得処理)によって取得されるオフセット量の精度を高める観点から、オフセット量取得処理を「電動機の発生トルクが正負の間で反転する途中に設けられたゼロトルク期間中」であり且つ「電動機が回転している」ときに実行するようになっている。
より具体的に述べると、例えば、電動機の発生トルクが「正から負に」変化する場合、正のトルクが時間経過に伴って徐々に小さくなって負のトルクに転じるならば、発生トルクがゼロである瞬間(発生トルクがゼロである時間長さがほぼゼロである一点)が存在し得る。しかし、一般に、この瞬間だけでは、オフセット量取得処理を適切に実行するには不十分である。発生トルクが「負から正に」変化する場合においても、同様である。
そこで、上記構成によれば、オフセット量を取得する必要があるとき、発生トルクが正負の間で反転する途中(正から負に変化する途中および負から正に変化する途中の少なくとも一方)において、強制的に、「ゼロトルク期間」が設けられる。これにより、必要に応じて、オフセット量取得処理を適切に実行し得るだけの「ゼロトルク期間」を設けることができる。そして、このゼロトルク期間を電動機の回転中に設ければ、出来る限り迅速にオフセット量を精度良く取得することができる。なお、ゼロトルク期間の長さは、オフセット量取得処理をするために必要な時間長さに設定されればよい。
さらに、発生トルクの反転時にゼロトルク期間を設けることにより、発生トルクが正または負である期間中に(トルク反転時ではないときに)ゼロトルク期間が設けられる場合に比べ、オフセット量取得処理によって車両の操作者が違和感を感じる可能性が小さい。
ここで、このゼロトルク期間について詳細に検討すると、本発明の制御装置が適用される車両は、内燃機関および電動機を備えており、車両の駆動トルク(車両の駆動軸において要求されるトルク)は、内燃機関から車両の駆動軸に伝達されるトルクと、電動機から同駆動軸に伝達されるトルクと、の組み合わせによって満たされることになる。さらに、内燃機関および/または電動機は、一般に、車両の駆動のためのトルクだけではなく、車両の駆動とは異なる目的のためのトルク(例えば、内燃機関や電動機と車両の駆動軸とを連結するギアの接触等に起因する振動を抑制する制振制御のためのトルク、および、電力を回生するための回生協調制御のためのトルク、などの補助的なトルク)を発する場合もある。
そのため、内燃機関の発生トルクおよび電動機の発生トルクは、一般に、車両の駆動のためのトルク、および、車両の駆動とは異なる目的のためのトルク(必要に応じて)を考慮しながら定められることになる。
別の言い方をすると、電動機の発生トルクは、車両の駆動トルクおよび内燃機関の出力トルクを考慮して定められるだけではなく、車両の駆動とは異なる目的のためのトルクを考慮して定められる場合もある。よって、ゼロトルク期間(電動機の発生トルクがゼロである期間)を設けるべく車両の駆動トルクをゼロに設定したとしても、内燃機関の出力トルクや車両の駆動とは異なる目的のためのトルクの有無によっては、電動機の発生トルクが最終的にはゼロにならない場合がある。
そこで、上記構成によれば、ゼロトルク期間(ひいては、この期間中に行われるオフセット量取得処理)を適切に実現させるべく、オフセット量取得処理が行われるとき、車両の駆動トルクをゼロに設定することに加え、内燃機関を作動又は停止させる制御(換言すると、内燃機関の出力トルクの発生)が禁止され、電動機によるトルク発生を要する制御(換言すると、車両の駆動とは異なる目的のためのトルクの発生)が禁止される。
これにより、オフセット量取得処理(ゼロトルク期間の設定)を阻害し得る上記各制御が行われることを積極的に防ぐことができるので、迅速にオフセット量を取得することができる。
以下、便宜上、車両の駆動トルクは「車両駆動トルク」とも称呼され、内燃機関の出力トルクは「機関出力トルク」とも称呼され、車両の駆動とは異なる目的のためのトルクは「作動補助トルク」とも称呼される。
さらに、以下、電動機の発生トルクが正から負に変化すること、および、電動機の発生トルクが負から正に変化することは、「発生トルクが反転する」または「発生トルクがゼロクロスする」とも称呼される。なお、発生トルクが反転することには、発生トルクが徐々に変化した結果として発生トルクが反転すること(例えば、正のトルクが時間経過に伴って徐々に小さくなって負のトルクに転じること)、および、発生トルクが瞬時に変化した結果として発生トルクが反転すること(例えば、正のトルクが瞬時に負のトルクに転じること)、を含む。
ところで、上記「レゾルバ」は、電動機の回転軸の回転位置(回転軸が回転するときの回転角度)を検出し得る検出器であればよく、その構造および車両に備えられる数などは、特に制限されない。ここで、この回転位置は、例えば、所定の基本位置(例えば、回転角度がゼロである位置)を基準とする回転軸の回転の度合い(絶対角度または相対角度)として、検出され得る。
上記「オフセット量」は、レゾルバによって検出される電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転軸の回転位置と、の差に相当する量(値)であればよく、オフセット量として採用される具体的なパラメータは特に制限されない。例えば、オフセット量として、検出される回転位置と実際の回転位置との回転の度合いの差(例えば、絶対角度の差)、および、その回転の度合いの差に相関するパラメータ(例えば、その差が大きいほど増大するパラメータ)などが採用され得る。
上記「オフセット量を取得する処理」は、レゾルバのオフセット量を取得し得る処理であればよく、その具体的な処理方法は特に制限されない。オフセット量を取得する処理として、例えば、電動機の磁極座標系(d−q座標系)におけるd軸電流およびq軸電流がゼロである場合におけるd軸電圧の値に基づいてオフセット量を取得する処理(例えば、特開2004−266935号公報などを参照。)などが採用され得る。
上記「電動機の発生トルクが正負の間で反転する」について、発生トルクが「正」であるとは、発生トルクが回転軸の回転を促進する方向(正の方向)に生じることを表す。正の方向として、例えば、車両が走行(前進または後進)しているときの回転軸の回転方向と同じ向きが挙げられる。別の言い方をすると、正の方向は、車両を走行させるための駆動力としてのトルクを発する向きである。この観点において、正の方向は、回転している回転軸の回転速度を高める又は維持する向き、または、回転していない回転軸を回転させ始める向き、であるとも表現され得る。
一方、発生トルクが「負」であるとは、発生トルクが回転軸の回転を抑制する方向(負の方向)に生じることを表す。負の方向として、例えば、車両が走行(前進または後進)しているときの回転軸の回転方向と逆の向きが挙げられる。別の言い方をすると、負の方向は、車両を減速または停止させるための制動力(内燃機関を備えた車両におけるエンジンブレーキに対応する力)としてのトルクを発する向き、または、電力を回生するための抵抗力としてのトルクを発する向き、である。この観点において、負の方向は、回転している回転軸の回転速度を下げる向き、または、回転していない回転軸を回転しないように維持する向き、であるとも表現され得る。
上記「ゼロトルク期間」は、オフセット量取得処理を実行するために必要な時間長さを確保し得るように設けられればよく、その期間の長さは特に制限されない。オフセット量取得処理を実行するために必要な時間長さは、例えば、あらかじめ実験などによって定められた時間長さであってもよく、オフセット量取得処理の実行に連動して設けられる時間長さ(例えば、オフセット量取得処理の開始時点または開始時点よりも所定時間長さだけ前の時点からゼロトルク期間を始め、同処理の終了時点または終了時点から所定時間長さだけ後の時点にてゼロトルク期間を終える、ようにゼロトルク期間が設けられた結果としての時間長さ)であってもよい。
ここで、オフセット量取得処理は「ゼロトルク期間中・・・に行われ」ばよく、必ずしもゼロトルク期間の全てにおいてオフセット量取得処理が実行され続ける必要はない。すなわち、オフセット量取得処理は、ゼロトルク期間中の一部の期間において実行されてもよく、ゼロトルク期間の全ての期間において実行されてもよい。
上記「内燃機関を作動又は停止させる制御・・・が禁止される」ための手法として、例えば、同制御を行うべき要求が生じていてもその要求を無視する手法が挙げられる。なお、この要求として、例えば、内燃機関の間欠運転を行う要求、排ガス浄化用の触媒を温めるための内燃機関の負荷運転(暖機運転)を行う要求、および、内燃機関のモータリングを行う要求などが挙げられる。
さらに、上記「電動機によるトルク発生を要する制御が禁止される」ための手法として、上記同様、例えば、同制御を行うべき要求が生じていてもその要求を無視する手法が挙げられる。なお、この要求として、例えば、電動機および内燃機関から車両の駆動軸へトルクを伝達するためのギアの接触等に起因する振動を抑制する制御(制振制御)を行う要求、および、電力を回生する制御(回生協調制御)を行う要求などが挙げられる。
なお、取得されたオフセット量を考慮して電動機の回転軸の回転位置の基準となる位置(例えば、回転角度がゼロであるとみなす位置)を設定することは、「原点補正」とも表現される。
上述した「内燃機関を作動又は停止させる制御」および「電動機によるトルク発生を要する制御」は、オフセット量取得処理を阻害し得る制御であればよく、具体的な制御の内容は特に制限されない。
例えば、それら制御の具体例として、
前記内燃機関を作動又は停止させる制御が、前記内燃機関の間欠運転、前記車両に備えられた触媒の暖機運転、および、前記内燃機関のモータリングを含み、
前記電動機によるトルク発生を要する制御が、前記電動機および前記内燃機関から前記車両の駆動軸へのトルク伝達に起因する振動を抑制するための制振制御、および、電力を回生するための回生協調制御を含む、
ように構成され得る。
以上に説明したように、本発明に係る車両の制御装置は、オフセット量を取得する必要があるときに出来る限り迅速にオフセット量を精度良く取得することができる、という効果を奏する。
以下、本発明による制御装置の実施形態が、図面を参照しながら説明される。
(実施形態)
<装置の概要>
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置(以下、「実施装置」とも称呼される。)をハイブリッド車両10に適用したシステムの概略構成を示している。以下、便宜上、ハイブリッド車両10は、単に「車両10」とも称呼される。
車両10は、図1に示されるように、発電電動機MG1、発電電動機MG2、内燃機関20(以下、単に「機関20」とも称呼される。)、動力分配機構30、発電電動機MG1の回転軸41、発電電動機MG2の回転軸42、駆動力伝達機構50、車両の駆動軸53、バッテリ61、第1インバータ62、第2インバータ63、パワーマネジメントECU70、バッテリECU71、モータECU72、エンジンECU73、ならびに、複数のセンサ類81〜85,91〜98(レゾルバ97,98が含まれる。)、を備えている。なお、ECUは、エレクトリック・コントロール・ユニットの略称であり、CPU、ROM、RAMおよびインターフェースなどを含むマイクロコンピュータを主要な構成部品として有する電子制御回路である。
発電電動機(モータジェネレータ)MG1は、発電機および電動機のいずれとしても機能することができる同期発電電動機である。発電電動機MG1は、便宜上、「第1発電電動機MG1」とも称呼される。第1発電電動機MG1は、本例においては主として発電機としての機能を発揮する。第1発電電動機MG1は、回転軸41を有している。
発電電動機(モータジェネレータ)MG2は、第1発電電動機MG1と同様、発電機および電動機のいずれとしても機能することができる同期発電電動機である。発電電動機MG2は、便宜上、「第2発電電動機MG2」とも称呼される。第2発電電動機MG2は、本例においては主として電動機としての機能を発揮する。第2発電電動機MG2は、回転軸42を有している。
第2発電電動機MG2は、回転軸42に接続された回転子(ロータ)と、固定子(ステータ)と、を備えている。そして、第2発電電動機MG2は、ロータがステータに対して回転する向きの磁界を順次生じさせることができるように、各々の磁界に対応する回路(巻線)に電流を順次流すことにより、回転軸42にトルクを出力する(ロータを回転させる向きの力を発する)ように構成されている。なお、第1発電電動機MG1も、回転軸41にトルクを出力する点を除いて第2発電電動機MG2と同様に構成されている。
機関20は、4サイクル・火花点火式・多気筒内燃機関である。機関20は、吸気管およびインテークマニホールドを含む吸気通路部21、スロットル弁22、スロットル弁アクチュエータ22a、複数の燃料噴射弁23、点火プラグを含む複数の点火装置24、機関20の出力軸であるクランクシャフト25、エキゾーストマニホールド26、排気管27、および、排気浄化用触媒28a,28bを有している。
スロットル弁22は、吸気通路部21に回転可能に支持されている。スロットル弁アクチュエータ22aは、エンジンECU73からの指示信号に応答してスロットル弁22を回転し、吸気通路部21の通路断面積を変更できるようになっている。
複数の燃料噴射弁23(図1においては1つの燃料噴射弁23のみが示されている。)のそれぞれは、その噴射孔が燃焼室に連通した吸気ポートに露呈するように配置されている。燃料噴射弁23のそれぞれは、エンジンECU73からの指示信号に応答して所定の量の燃料を吸気ポート内に噴射するようになっている。
点火装置24のそれぞれは、エンジンECU73からの指示信号に応答して点火用火花を各気筒の燃焼室内において特定の点火タイミング(点火時期)にて発生するようになっている。
クランクシャフト(機関20の出力軸)25は、動力分配機構30に接続されており、機関20によって生じるトルクを動力分配機構30に入力することができるようになっている。
エキゾーストマニホールド26の排気集合部、および、エキゾーストマニホールド26よりも下流側の排気管27には、排気浄化用触媒28a,28bが設けられている。排気浄化用触媒28a,28bは、機関20から排出される未燃物(HC,COなど)および窒素酸化物(NOx)を浄化するようになっている。
動力分配機構30は、周知の遊星歯車装置31を備えている。遊星歯車装置31はサンギア32と、複数のプラネタリギア33と、リングギア34と、を有している。
サンギア32は、第1発電電動機MG1の回転軸41に接続されている。したがって、第1発電電動機MG1は、サンギア32にトルクを出力することができる。逆に、第1発電電動機MG1は、サンギア32から第1発電電動機MG1(回転軸41)に入力されるトルクにて回転駆動されることによって発電することができる。
ここで、サンギア32は、後述されるプラネタリギア33(プラネタリキャリア35を介して機関20のクランクシャフト25に接続されている。)と噛合している。さらに、サンギア32は、後述されるリングギア34(後述されるように、複数のギアを介して車両10の駆動軸53に接続されている。)が回転していない状態においても回転することができる。すなわち、第1発電電動機MG1の回転軸41は、車両10の駆動軸53と相対回転が可能であるように連結されている。より具体的に述べると、第1発電電動機MG1の回転軸41は、機関20の出力軸(クランクシャフト25)と連結されるとともに、車両10が停止していても(車両10の駆動軸53が回転していなくても)回転可能となっている。
複数のプラネタリギア33のそれぞれは、サンギア32と噛合するとともにリングギア34と噛合している。プラネタリギア33の回転軸(自転軸)は、プラネタリキャリア35に設けられている。プラネタリキャリア35は、サンギア32と同軸に回転可能となるように保持されている。同様に、リングギア34は、サンギア32と同軸に回転可能となるように保持されている。したがって、プラネタリギア33は、サンギア32の外周を自転しながら公転することができる。プラネタリキャリア35は、機関20のクランクシャフト25に接続されている。よって、プラネタリギア33は、クランクシャフト25からプラネタリキャリア35に入力されるトルクによって回転駆動され得る。
さらに、上述したように、プラネタリギア33はサンギア32およびリングギア34と噛合している。したがって、プラネタリギア33からサンギア32にトルクが入力されたときには、そのトルクによってサンギア32が回転駆動される。プラネタリギア33からリングギア34にトルクが入力されたときには、そのトルクによってリングギア34が回転駆動される。逆に、サンギア32からプラネタリギア33にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア33が回転駆動される。リングギア34からプラネタリギア33にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア33が回転駆動される。
リングギア34は、リングギアキャリア36を介して第2発電電動機MG2の回転軸42に接続されている。したがって、第2発電電動機MG2は、リングギア34にトルクを出力することができる。逆に、第2発電電動機MG2は、リングギア34から第2発電電動機MG2(回転軸42)に入力されるトルクによって回転駆動されることによって発電することができる。
ここで、リングギア34は、後述される複数のギア(出力ギア37、ギア列51、および、ディファレンシャルギア52など)を介し、車両10の駆動軸53に、実質的に相対回転が不能であるように連結されている(ここで、実質的に相対回転不能であるとは、ギア間の遊び等を除いて相対回転が不能であることを表す。)。すなわち、第2発電電動機MG2の回転軸42は、車両10の駆動軸53と実質的に相対回転が不能であるように連結されている。より具体的に述べると、第2発電電動機MG2の回転軸42は車両10の駆動軸53と連結されるとともに、車両10が停止しているときに(車両10の駆動軸53が回転していないときに)回転不能となっている。
さらに、リングギア34は、リングギアキャリア36を介して出力ギア37に接続されている。したがって、出力ギア37は、リングギア34から出力ギア37に入力されるトルクによって回転駆動され得る。逆に、リングギア34は、出力ギア37からリングギア34に入力されるトルクによって回転駆動され得る。
駆動力伝達機構50は、ギア列51、ディファレンシャルギア52、および、駆動軸(ドライブシャフト)53を有している。
ギア列51は、出力ギア37とディファレンシャルギア52とを動力伝達可能に歯車機構により接続している。ディファレンシャルギア52は、駆動軸53に取り付けられている。駆動軸53の両端には駆動輪54が取り付けられている。したがって、出力ギア37からのトルクはギア列51、ディファレンシャルギア52、および、駆動軸53を介して駆動輪54に伝達される。この駆動輪54に伝達されたトルクにより、ハイブリッド車両10は走行することができる。
以上の説明から理解されるように、第1発電電動機MG1の回転軸41は、複数のギア(サンギア32、プラネタリギア33、リングギア34、出力ギア37、ギア列51、ディファレンシャルギア52)を介して車両10の駆動軸53にトルク伝達可能に接続されている。この回転軸41と、駆動軸53とは、上述したように、相対回転が可能に接続されている。
さらに、第2発電電動機MG2の回転軸42も、複数のギア(リングギア34、出力ギア37、ギア列51、ディファレンシャルギア52)を介して車両10の駆動軸53にトルク伝達可能に接続されている。この回転軸42と、駆動軸53とは、上述したように、相対回転が不能に接続されている。
バッテリ61は、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2を作動させるための電力をそれら電動機に供給し、または、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2にて発電された電力を充電する、充放電可能な二次電池である。
バッテリ61は、第1インバータ62を介して第1発電電動機MG1に電気的に接続されており、第2インバータ63を介して第2発電電動機MG2に電気的に接続されており、バッテリECU71に電気的に接続されている。
そして、第1発電電動機MG1は、第1インバータ62を介してバッテリ61から供給される電力によって回転駆動させられる。第2発電電動機MG2は、第2インバータ63を介してバッテリ61から供給される電力によって回転駆動させられる。逆に、第1発電電動機MG1が発電しているとき、第1発電電動機MG1が発生した電力は、第1インバータ62を介してバッテリ61に供給される。同様に、第2発電電動機MG2が発電しているとき、第2発電電動機MG2が発生した電力は第2インバータ63を介してバッテリ61に供給される。
第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2が駆動されるときに回転軸41,42に生じさせるトルクは、後述されるように、PMECU70が発するそれらトルクについての指令(トルク指令)に基づいて制御される。換言すると、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2は、トルク指令に応じたトルクを回転軸41,42に発生可能であるように構成されている。
なお、第1発電電動機MG1の発生する電力は第2発電電動機MG2に直接供給可能であり、且つ、第2発電電動機MG2の発生する電力は第1発電電動機MG1に直接供給可能である。
パワーマネジメントECU70(以下、「PMECU70」とも称呼される。)は、バッテリECU71、モータECU72およびエンジンECU73と通信により情報交換可能に接続されている。これにより、PMECU70には、バッテリECU71を介してバッテリ61に関する情報が入力または出力され、モータECU72を介してインバータ(62,63)およびレゾルバ(97,98)に関する情報が入力または出力され、エンジンECU73を介して各種センサ(91〜96)に関する情報が入力または出力される。
例えば、PMECU70は、バッテリECU71により算出されるバッテリ61の充電率を入力されるようになっている。充電率は、バッテリ61に流出入する電流の積算値などに基づいて周知の手法により算出される。
さらに、PMECU70は、モータECU72を介して、第1発電電動機MG1の回転速度(MG1回転速度)を表す信号、および、第2発電電動機MG2の回転速度(MG2回転速度)を表す信号、を入力されるようになっている。
なお、MG1回転速度は、モータECU72によって「第1発電電動機MG1に設けられ且つ第1発電電動機MG1の回転軸41の回転位置(回転角度)に対応する出力値を出力するレゾルバ97の出力値」に基づいて算出されている。同様に、MG2回転速度は、モータECU72によって「第2発電電動機MG2に設けられ且つ第2発電電動機MG2の回転軸42の回転位置(回転角度)に対応する出力値を出力するレゾルバ98の出力値」に基づいて算出されている。このように、モータECU72は、第1発電電動機MG1の回転軸41の回転位置(回転角度)を表す信号、および、第2発電電動機MG2の回転軸42の回転位置(回転角度)を表す信号を入力されるようになっている。
加えて、PMECU70は、エンジンECU73を介して、エンジン状態を表す種々の出力信号を入力されるようになっている。このエンジン状態を表す出力信号には、エアフローメータ91、スロットル弁開度センサ92、冷却水温センサ93、機関回転速度センサ94、ノッキングセンサ95および空燃比センサ96の発生する出力信号が含まれる。
さらに、PMECU70は、パワースイッチ81、シフトポジションセンサ82、アクセル操作量センサ83、ブレーキ操作量センサ84および車速センサ85とも接続され、これらセンサが発生する出力信号が入力されるようになっている。
そして、PMECU70は、入力された情報に基づき、オフセット量(第1発電電動機MG1についてのオフセット量および第2発電電動機MG2についてのオフセット量。これらオフセット量は、PMECU70に記憶されている。)を利用してモータECU72に発電電動機(MG1,MG2)を制御するための指令を与える。さらに、モータECU72は、PMECU70からの指令に基づいて、第1インバータ62および第2インバータ63に指示信号を送出するようになっている。そして、第1インバータ62および第2インバータ63は、その指示信号に応じ、第1発電電動機MG1を作動させ、第2発電電動機MG2を作動させるようになっている。
より具体的に述べると、例えば、PMECU70は、第1発電電動機MG1の回転軸41におけるトルクについての指令であるトルク指令、および、第2発電電動機MG2の回転軸42におけるトルクについての指令であるトルク指令、を発するとともに、それら指令をモータECU72に与える。そして、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2は、それらトルク指令に応じたトルクを回転軸41および回転軸42に発生させる。
上記トルク指令として、例えば、PMECU70は、以下のような指令を発する。
・車両が走行しているときの回転軸41,42の回転方向と同じ向き(すなわち、車両を走行させるための駆動力としてのトルクを発する向き)のトルクを電動機の回転軸41,42に生じさせる指令(以下、「正トルク指令」とも称呼される。)。
・車両が走行しているときの回転軸41,42の回転方向と逆の向き(すなわち、車両を減速または停止させるための制動力(機関20のエンジンブレーキに相当する力)としてのトルクを発する向き、または、電力を回生するための抵抗力としてのトルクを発する向き)のトルクを電動機の回転軸41,42に生じさせる指令(以下、「負トルク指令」とも称呼される。)。
・それらトルクの大きさについての指令。
・ゼロトルク指令(車両駆動トルクをゼロに設定すること、内燃機関を作動又は停止させる制御を禁止すること、電動機によるトルク発生を要する制御を禁止すること、を含む。)。
さらに、PMECU70は、入力された情報に基づき、バッテリECU71にバッテリ61を制御するための指示を与え、エンジンECU73に内燃機関20を制御するための指示を与える。さらに、PMECU70は、それら指示を与えるために必要なパラメータなど(例えば、レゾルバ97,98のオフセット量、および、内燃機関20の空燃比制御に関するパラメータなど)を記憶・保持している。
加えて、エンジンECU73は、PMECU70からの指示に基づき、スロットル弁アクチュエータ22a、燃料噴射弁23および点火装置24などに指示信号を送出することにより、機関20を制御するようになっている。
パワースイッチ81は、ハイブリッド車両10のシステム起動用スイッチである。PMECU70は、いずれも図示しない車両キーがキースロットに挿入され且つブレーキペダルが踏み込まれているときにパワースイッチ81が操作されると(例えば、押されると)、システムを起動する指示が与えられたと判断する。そして、PMECU70は、車両10が走行可能であるか否かを確認した後、車両10が走行可能であれば(いわゆる、Ready−On状態)、図示しない操作パネルなどにその旨を表示する。
シフトポジションセンサ82は、ハイブリッド車両10の運転席近傍に操作者により操作可能に設けられた図示しないシフトレバーによって選択されているシフトポジションを表す信号を発生するようになっている。シフトポジションには、P(パーキングポジション)、R(後進ポジション)、N(ニュートラルポジション)、D(走行ポジション)およびB(エンジンブレーキ積極作動ポジション)が含まれる。
アクセル操作量センサ83は、操作者により操作可能に設けられた図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル操作量AP)を表す出力信号を発生するようになっている。
ブレーキ操作量センサ84は、操作者により操作可能に設けられた図示しないブレーキペダルが操作されたときに、ブレーキペダルの操作量(ブレーキ操作量)を表す出力信号を発生するようになっている。
車速センサ85は、ハイブリッド車両10の車速を表す出力信号を発生するようになっている。
エアフローメータ91は、機関20に吸入される単位時間あたりの空気量を計測し、その空気量(吸入空気量)を表す信号を出力するようになっている。
スロットル弁開度センサ92は、スロットル弁22の開度(スロットル弁開度)を検出し、その検出したスロットル弁開度を表す信号を出力するようになっている。
冷却水温センサ93は、機関20の冷却水の温度を検出し、その検出した冷却水温を表す信号を出力するようになっている。
機関回転速度センサ94は、機関20のクランクシャフト25が所定角度だけ回転する毎にパルス信号を発生するようになっている。エンジンECU73は、このパルス信号に基づいてクランクシャフト25の単位時間当たりの回転数(機関回転速度)Neを取得するようになっている。
ノッキングセンサ95は、機関20の表面部分に設けられている。ノッキングセンサ95は、機関20の振動を検出するとともに、その振動に応じた信号を出力するようになっている。エンジンECU73は、この信号に基づいてノッキング強度を取得するようになっている。
空燃比センサ96は、エキゾーストマニホールド26の排気集合部であって、排気浄化用触媒28aよりも上流側の位置に設けられている。空燃比センサ96は、排ガスの空燃比を検出し、その検出した排ガスの空燃比(検出空燃比)に応じた出力値を出力するようになっている。
レゾルバ97は、第1発電電動機MG1の回転軸(回転軸)41の回転位置を検出するためのレゾルバである。レゾルバ97は、レゾルバ97のロータと第1発電電動機MG1の回転軸41とが相対回転不能であるように、回転軸41に設けられている。これにより、レゾルバ97のロータは、回転軸41の回転に伴って回転する。レゾルバ97は、回転軸41の回転位置に応じた信号を出力するようになっている。モータECU72は、この信号に基づき、回転軸41の回転位置を取得するようになっている。さらに、モータECU72は、この信号の単位時間当たりの変化に基づき、回転軸41の回転速度を取得するようになっている。
レゾルバ98は、第2発電電動機MG2の回転軸(回転軸)42の回転位置を検出するためのレゾルバである。レゾルバ98は、レゾルバ98のロータと第2発電電動機MG2の回転軸42とが相対回転不能であるように、第2発電電動機MG2の回転軸42に設けられている。これにより、レゾルバ98のロータは、回転軸42の回転に伴って回転する。レゾルバ98は、回転軸42の回転位置に応じた信号を出力するようになっている。モータECU72は、この信号に基づいて回転軸42の回転位置を取得するようになっている。さらに、モータECU72は、この信号の単位時間当たりの変化に基づき、回転軸42の回転速度を取得するようになっている。
以上が、実施装置をハイブリッド車両10に適用したシステムの概略構成である。
<制御の考え方>
次いで、実施装置における制御の考え方が、図2を参照しながら説明される。図2は、実施装置における制御の考え方を示す「概略フローチャート」である。
実施装置は、図2のステップ210にて、現時点にてオフセット量を取得する要求が生じているか否かを判定する。例えば、実施装置は、オフセット量に影響を及ぼす部材(例えば、レゾルバ97,98)が交換等された際に技術者が実施装置に対してオフセット量を取得する要求(指示信号)を与えた場合において、その要求が実施装置に与えられた後に初めて操作者がパワースイッチ81を押すことによって実施装置がその要求が生じたことを認識したとき、オフセット量を取得する要求が生じたと判定する。
ところで、車両10は、第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2、ならびに、レゾルバ97およびレゾルバ98を備えている。そのため、レゾルバ97およびレゾルバ98のそれぞれについて、オフセット量を取得する要求が独立して生じる場合がある。しかし、本説明においては、実施装置における制御の考え方がより容易に理解されるように、レゾルバ97およびレゾルバ98の少なくとも一方にオフセット量を取得する要求が生じている場合、実施装置はステップ210にて「オフセット量を取得する要求が生じている」と判定するものとする。
現時点にて実施装置がオフセット量を取得する要求が生じていると判定した場合、実施装置は、ステップ210にて「Yes」と判定してステップ220に進む。
実施装置は、ステップ220にて、電動機(例えば、MG2)の発生トルクが正負の間で反転(ゼロクロス)し且つ電動機が回転中であるか否かを判定する。より具体的には、「電動機の回転軸が回転している」ときに「トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化するか否か、または、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化するか否か」を判定する。
例えば、実施装置は、アクセルペダルが踏まれているときにアクセルペダルを離す操作(アクセルオフ)がなされたことをアクセル操作量APに基づいて認識した場合、トルク指令が正トルク指令から負トルク指令に変化すると判定する。また、実施装置は、アクセルペダルが踏まれていないときにアクセルペダルを踏み込む操作(アクセルオン)がなされたことをアクセル操作量APに基づいて認識した場合、トルク指令が負トルク指令から正トルク指令に変化すると判定する。なお、このようなアクセル操作によってトルク指令が正負の間で変化するとき、車両10の駆動軸53(および、駆動軸53に連結した電動機の回転軸(例えば、MG2の回転軸42))は回転している場合が多い。そして、実施装置は、発生トルクが反転し且つ電動機が回転中であると判定した場合、ステップ220にて「Yes」と判定し、ステップ230に進む。
実施装置は、ステップ230にて、発生トルクが反転する途中において、ゼロトルク期間を設ける。より具体的には、トルク反転の途中に、電動機の回転軸(41,42)にトルクを生じさせない指令を発する期間(ゼロトルク指令期間)を設ける。このゼロトルク指令期間は、オフセット量取得処理を実行するために必要な時間長さを有する。また、このゼロトルク指令には、以下の事項が含まれる。
・車両10の駆動軸53において要求されるトルク(車両駆動トルク)をゼロに設定すること。
・機関20を作動又は停止させる制御(機関出力トルクの発生)を禁止すること。具体的には、機関20の間欠運転、触媒28a,28bの暖機運転、および、機関20のモータリングを禁止すること。
・電動機(例えば、MG2)の発生トルクを要する制御(作動補助トルクの発生)を禁止すること。具体的には、制振制御および回生協調制御を禁止すること。
そして、実施装置は、ステップ240に進み、そのゼロトルク期間中にオフセット量取得処理を実行する。
オフセット量取得処理の具体例として、例えば、実施装置は、電動機の回転軸(41,42)が回転しているとき、電動機(MG1,MG2)の磁極座標系(d−q座標系)におけるd軸電流およびq軸電流がゼロであるように電動機を制御しながら(換言すると、上述したゼロトルク指令を発しながら)、d軸電圧を取得する。このとき、オフセット量の大きさに応じて、磁極座標系(d−q座標系)における横軸(d軸)と、取得されたd軸電圧の向きと、の間の角度の大きさが異なる。そこで、実施装置は、その角度に基づき、オフセット量を取得する(例えば、特開2004−266935号公報などを参照。)。なお、実際には、オフセット量そのものを取得することなく(オフセット量そのものに代えて、オフセット量に相関する値である上記角度を用いて)、上記角度の大きさがゼロであるように電動機への制御信号が調整される場合もある。
このように、実施装置は、電動機の出力トルクが反転(ゼロクロス)するときに強制的にゼロトルク期間を設けるとともに、そのゼロトルク期間中にオフセット量取得処理を実行する。
ところで、現時点においてオフセット量を取得する要求が生じていない場合、実施装置は、ステップ210にて「No」と判定する。この場合、オフセット量取得処理(ステップ240)は実行されない。同様に、オフセット量を取得する要求が生じているものの、出力トルクが反転することになると判定しない場合、装置は、ステップ220にて「No」と判定し、オフセット量取得処理を実行しない。なお、これらの場合、例えば、PMECU70に記憶されているオフセット量に基づいて電動機が作動される。
以上に説明したように、実施装置は、オフセット量を取得する要求が生じているとき、出力トルクが反転する途中において、強制的にオフセット量取得処理をするために必要な時間長さだけゼロトルク期間を設け、機関を作動又は停止させる制御(機関出力トルクの発生)、および、電動機によるトルク発生を要する制御(作動補助トルクの発生)を禁止しながらオフセット量取得処理を実行する。これにより、オフセット量を取得する要求が生じているとき、オフセット量取得処理を阻害する制御の実行が禁止されるので、オフセット量を出来る限り迅速に精度良く取得することができる。
以上が、実施装置についての説明である。
<実施形態の総括>
図1および図2を参照しながら説明したように、本発明の実施形態に係る制御装置は(実施装置)は、
内燃機関10および電動機(MG1,MG2)を備えた車両に適用され、レゾルバ(97,98)によって検出される前記電動機の回転位置のオフセット量を取得する処理を行う制御装置において、
前記処理が、前記電動機MG1,MG2の発生トルクが正負の間で反転する途中に設けられたゼロトルク期間中であり且つ前記電動機が回転しているときに行われ(図2のステップ220)、
前記処理が行われるとき、前記内燃機関を作動又は停止させる制御、および、前記電動機によるトルク発生を要する制御を禁止する(図2のステップ230)、
ように構成されている。
本発明の実施形態に係る制御装置は、
前記内燃機関20を作動又は停止させる制御が、前記内燃機関20の間欠運転、前記車両10に備えられた触媒(28a,28b)の暖機運転、および、前記内燃機関20のモータリングを含み、
前記電動機によるトルク発生を要する制御が、前記電動機MG1,MG2および前記内燃機関20から前記車両の駆動軸53へのトルク伝達に起因する振動を抑制するための制振制御、および、電力を回生するための回生協調制御を含む、
ように構成されている。
ところで、上述した実施装置に関する説明からも理解されるように、本発明による制御装置は、例えば、以下のようにも表現され得る。
車両の駆動軸にトルク伝達可能に連結された出力軸を有する内燃機関と、前記車両の駆動軸にトルク伝達可能に連結された回転軸を有する電動機と、前記電動機の回転軸の回転位置を検出するレゾルバと、を備え、前記電動機の回転軸におけるトルクについての指令であるトルク指令に応じたトルクを同回転軸に発生可能であるように前記電動機が構成された、車両に適用され、
前記レゾルバによって検出される前記回転軸の回転位置と実際の前記回転軸の回転位置との差に相当するオフセット量を取得する要求に応じて前記オフセット量を取得する処理であるオフセット量取得処理を実行する、
制御装置において、
前記オフセット量取得処理が前記電動機の回転軸が回転しており且つ前記電動機の回転軸にトルクを生じさせない指令であるゼロトルク指令を発しているときに実行する処理である場合において、前記オフセット量を取得する要求が生じているとき、
前記電動機の回転軸を同回転軸の回転を促進する正の方向に回転させる向きのトルクを同回転軸に生じさせるトルク指令である正トルク指令から前記電動機の回転軸を同回転軸の回転を抑制する負の方向に回転させる向きのトルクを同回転軸に生じさせるトルク指令である負トルク指令に前記トルク指令が変化する途中、および、前記トルク指令が前記負トルク指令から前記正トルク指令に変化する途中、の少なくとも一方において、前記正トルク指令を発する期間と前記負トルク指令を発する期間との間に前記オフセット量取得処理を実行するために必要な時間長さだけ前記ゼロトルク指令を発する期間であるゼロトルク指令期間を設け、
前記ゼロトルク指令として、前記車両の駆動軸において要求されるトルクをゼロに設定すること、前記内燃機関を作動又は停止させる制御を禁止すること、および、前記電動機によるトルク発生を要する制御を禁止すること、を含んだ指令を発し、
前記ゼロトルク指令期間中に前記オフセット量取得処理を実行する、
ように構成された、車両の制御装置。
(他の態様)
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
例えば、上述したように、本発明の制御装置は、オフセット量取得処理を実行するべく、電動機の発生トルクが反転(ゼロクロス)する途中に「強制的に」ゼロトルク期間を設ける。しかし、車両の運転状態によっては、オフセット量取得処理を実行することよりも他の処理(例えば、安全性の観点から緊急に行われる処理)を行うことが優先される場合がある。
そこで、本発明の制御装置は、オフセット量取得処理を停止する条件である処理停止条件がゼロトルク期間中に成立した場合、オフセット量取得処理を停止する、ように構成され得る。
上記構成により、オフセット量取得処理を実行することよりも優先されるべき状況が生じたとき、必要に応じてオフセット量取得処理を停止することができる。
ところで、上記「処理停止条件」は、種々の観点からオフセット量取得処理よりも優先されるべき状況が生じたと判断し得る条件であればよく、特に制限されない。処理停止条件として、例えば、ゼロトルク指令期間中に車両を急停止する要求が生じたこと、ゼロトルク指令期間中に電動機の回転軸に連結された駆動軸が空転(すなわち、車両がスリップ)したこと、および、ゼロトルク指令期間中に制御装置を含むシステム全体を停止する要求が生じたこと、のうちの少なくとも1つが成立すること、が採用され得る。
さらに、上述したゼロトルク期間は、通常、車両の操作者の意志によらずに設けられるため(すなわち、操作者の指示によることなく必要に応じて制御装置が同期間を設けるため)、オフセット量取得処理の実行が、車両の操作者に違和感を与える可能性がある。
そこで、本発明の制御装置は、発生トルクが正から負に反転する途中にオフセット量取得処理を行うことを、発生トルクが負から正に反転する途中にオフセット量取得処理を行うことよりも優先する、ように構成され得る。
発生トルクが正から負に反転(ゼロクロス)するとき、車両の操作者は、電動機に要求されるトルクの大きさを減少させる操作(例えば、アクセルペダルが踏まれているときにそのアクセルペダルを離す操作)を行なっている場合が多い。一方、発生トルクが負から正に反転(ゼロクロス)するとき、車両の操作者は、電動機に要求されるトルクの大きさを増大させる操作(例えば、アクセルペダルが踏まれていないときにそのアクセルペダルを踏み込む操作)を行なっている場合が多い。そのため、一般に、発生トルクが正から負に変化するときにオフセット量取得処理が実行される方が、発生トルクが負から正に変化する途中にオフセット量取得処理が実行されるよりも、比較的、操作者が違和感を感じ難いと考えられる。よって、上記構成により、車両の操作量に出来る限り違和感を感じさせることなく、オフセット量取得処理を実行することができる。
さらに、処理停止条件が成立するとオフセット量取得処理が停止されるので、車両の運転状態などによっては、発生トルクが正から負に変化するとき(上記優先されるべきタイミング)にオフセット量取得処理を実行することができない場合があり得る。
そこで、本発明の制御装置は、発生トルクが正から負に反転する途中のゼロトルク期間中にオフセット量取得処理が停止された場合、その後に最初に発生トルクが負から正に反転する途中にオフセット量取得処理を行う、ように構成され得る。
上記構成により、発生トルクが正から負に変化するときにオフセット量取得処理が実行されなかった場合であっても、その後に速やかに(すなわち、オフセット量取得処理が停止された後に「最初に」発生トルクが負から正に変化するときに)、オフセット量取得処理が改めて実行されることになる。これにより、適切なオフセット量が取得されていない状態にて車両が走行することが、出来る限り防がれる。
さらに、上記各実施形態においては、制御装置が制御する対象の電動機の代表として第2発電電動機MG2が採用されている。しかし、本発明の制御装置の実施形態は、上記各実施形態に示される考え方に従って第1発電電動機MG1を制御するようにも構成され得る。
さらに、上記各実施形態の制御装置が適用される車両10は、電動機を2つ備えている(第1発電電動機MG1および第2発電電動機MG2)。しかし、本発明の制御装置は、電動機を1つ又は3つ以上備えた車両にも適用され得る。
さらに、上記各実施形態の制御装置においては、オフセット量は、制御装置としてのPMECU70に記憶されるようになっている。しかし、他のECU(例えば、モータECU72など)を含む複数のECUの組み合わせを本発明の制御装置として考えるとともに、PMECU70以外のECU(例えば、モータECU72)にオフセット量が記憶されてもよい。
さらに、上記各実施形態の制御装置においては、オフセット量取得処理を実現する方法として、制御装置がゼロトルク指令を発しているときのd軸電圧に基づいてオフセット量を取得する方法が採用されている。しかし、オフセット量取得処理を実現する方法は、その方法が実行され得る条件およびオフセット量の取得精度などが考慮された適切な方法であればよく、この方法以外の方法が採用されてもよい。