以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態における液封入式防振装置1の軸方向断面図である。図1に示すように液封入式防振装置1は、自動車のエンジン等のパワーユニット(図示せず)に取り付けられる第1取付部材2と、ブラケット(図示せず)を介してパワーユニットの下方の車体フレームに取り付けられる筒状の第2取付部材3と、第1取付部材2及び第2取付部材3とを連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体4とを備えている。
なお、図1には、自動車に装着する前の液封入式防振装置1の単体の状態が図示される。本実施の形態では、パワーユニットの分担支持荷重が、軸中心を通る軸線O方向(図1上下方向)に入力される。従って、装着状態では、防振基体4の弾性変形によって第1取付部材2と第2取付部材3とが軸方向で互いに近接する方向に変位する。以下の説明では、特に断りのない限り、上下方向は図1における軸線Oの上下方向をいう。
図1に示すように、第1取付部材2は主に金属材料等の剛性材料により形成され、上面にボルト孔2aが設けられる。ボルト孔2aに、パワーユニットのブラケットに取り付けられたボルト(図示せず)が締結固定されることで、第1取付部材2が振動発生源に取り付けられる。第2取付部材3は、主に金属材料等の剛性材料により筒状に形成され、ブラケット等を介して車体フレーム側(図示せず)に取り付けられる。
防振基体4は円錐台状に形成され、上端部が第1取付部材2の外周面に、下端部が第2取付部材3の上側内周面にそれぞれ加硫接着される。防振基体4の下面側には上窄まりの中空部が形成され、防振基体4の下端部には、第2取付部材3の内周面を覆うゴム膜5が段部4aに連設される。第2取付部材3は、上端部に筒状のブラケット部材6が外嵌され、ブラケット部材6の上端部にストッパゴム7が被着される。
第2取付部材3の下端部には、ゴム膜で部分球状に形成されるダイヤフラム10が取り付けられる。ダイヤフラム10と防振基体4の下面との間に液体封入室(第1液室L1及び第2液室L2)が形成される。液体封入室は仕切体20によって防振基体側4の第1液室L1とダイヤフラム10側の第2液室L2とに仕切られ、水やエチレングリコール等の非圧縮性液体(以下「液体」と称す)が封入される。
仕切体20は、上端部が段部4aに当接しゴム膜5の内側に保持される筒部材21と、筒部材21の中央部分に形成された開口部を閉塞し筒部材21に周縁が加硫接着される弾性仕切膜22とを備えている。筒部材21の外周面とゴム膜5の内周面との間に、第1液室L1と第2液室L2とを連通するオリフィス23が形成される。液封入式防振装置1は、走行路面の凹凸に起因して大振幅の振動が生じると、液体がオリフィス23を通って第1液室L1と第2液室L2との間を流動し、その液体流動効果によって振動を減衰させる。一方、微振幅の振動は弾性仕切膜22の往復運動により減衰させる。
液封入式防振装置1への振動入力により往復運動するダイヤフラム10は、部分球状に形成される本体部11と、本体部11の径方向外側に位置する円環状のネック部12と、ネック部12の径方向外側に位置する周縁部13と、周縁部13の外周面から径方向外側に向かって突設される液封部14とを備え、それらがゴム状弾性体(本実施の形態ではブチルゴム)から一体に構成される。ダイヤフラム10をブチルゴム製とすることにより、液体封入室に封入される液体の透過阻止性および耐久性を確保できる。
ダイヤフラム10の周縁部13は、本体部11及びネック部12の軸方向(図1上下方向)寸法より軸方向寸法が大きく設定される。また、周縁部13は、径方向寸法が軸方向寸法より小さく設定される。筒部材21の下端部と固定部材30との間に周縁部13を挟持することにより、ダイヤフラム10は第2取付部材3の内側に取り付けられる。液封部14は、周縁部13の軸方向の2箇所から全周に亘って径方向外側に突設され、各液封部14は断面三角状に形成される。
次に、ダイヤフラム10の固定構造について説明する。筒部材21は、下端部に押圧部24を有している。押圧部24は、筒部材21の軸中心を通る軸線Oと直交する平坦面を有する円環状の部位である。押圧部24の径方向外側には軸方向下側(防振基体4から離間する方向)に向かう筒状の外周壁部25が突設され、押圧部24の径方向内側には、外周壁部25と所定の間隔をあけて対向すると共に軸方向下側に向かって延びる筒状の内周壁部26が設けられている。
固定部材30は、円環状に形成される部材であり、固定部材30の軸中心を通る軸線Oと直交する平坦面を有する円環状の押圧部31と、押圧部31の径方向外側に位置し軸方向上側(防振基体4に近づく方向)に向かって立設される筒状の外周壁部32とを備えている。また、固定部材30は、外周壁部32の上端面の径方向外側に立設される筒状の外装部33と、押圧部31の径方向内側に立設されると共に外周壁部32と所定の間隔をあけて対向すると共に軸方向上側に向かって延びる筒状の内周壁部34とを備えている。
固定部材30の内周壁部34の高さは外周壁部32の高さより低く設定され、筒部材21の内周壁部26の高さは外周壁部25の高さより低く設定される。また、固定部材30の外装部33の内径は、筒部材21の外周壁部25の外径と略同一の大きさに設定され、固定部材30の外装部33の高さは、筒部材21の外周壁部25の高さと略同一に設定される。これにより、筒部材21の外周壁部25を固定部材30の外装部33に圧入すると共に、固定部材30の外周壁部32と筒部材21の外周壁部25とを突き合わせることができる。以上のようにして筒部材21の下端部に固定部材30を固定できる。なお、筒部材21及び固定部材30が合成樹脂製の場合には、筒部材21に固定部材30を圧入により固定することに代えて、溶着により固定することは可能である。
筒部材21及び固定部材30の外周壁部25,32同士を突き合わせたときに、内周壁部26,34との間に軸方向隙間が形成され、押圧部24,31との間には、内周壁部26,34間の軸方向隙間より大きい軸方向隙間が形成される。押圧部24,31間はダイヤフラム10の周縁部13が収容される空間であり、内周壁部26,34間はダイヤフラム10のネック部12が収容される空間である。
図2を参照して、ダイヤフラム10の固定構造についてさらに説明する。図2は図1のIIで示す部分を拡大して示す液封入式防振装置1の拡大断面図である。ダイヤフラム10のネック部12、周縁部13及び液封部14は、筒部材21及び固定部材30により軸方向および径方向に押し潰され圧縮変形される。これによりネック部12、周縁部13及び液封部14を液密にすることができる。
ここで、外周壁部25及び内周壁部26は、第2取付部材3の軸中心を通る軸線O(図1参照)に直交し液封部14が面内に位置する仮想平面P1上に少なくとも一部が位置し、周縁部13の径方向の伸張を規制する。同様に、外周壁部32及び内周壁部34は、第2取付部材3の軸中心を通る軸線O(図1参照)に直交し液封部14が面内に位置する仮想平面P2上に少なくとも一部が位置し、周縁部13の径方向の伸張を規制する。その結果、液封部14の背面側(径方向内側、図2左側)の周縁部13の変形が規制されるので、各液封部14が相手面(外周壁部25,32)を押し付ける力を確保できる。
また、液封部14は、筒部材21(図1参照)と固定部材30との合わせ面、具体的には外周壁部25の軸方向端部と外周壁部32の軸方向端部との突き合わせ面(当接面)を避けて、外周壁部25,32を押し付ける。これにより、液封部14の先端(径方向外側端)が外周壁部25,32の当接面に噛み込まれることを防止できる。また、各液封部14が押し付ける相手面(外周壁部25,32)を確保できるので、液封部14によるシール性を向上できる。
次に図1及び図3を参照して、液封入式防振装置1の製造方法について説明する。図3は仕切体20の分解図である。図3に示すように、筒部材21に弾性仕切膜22を加硫接着した後、筒部材21の下端部に形成された外周壁部25及び内周壁部26間にダイヤフラム10の周縁部13を挿入しつつ、筒部材21の下端部に固定部材30を圧入固定(又は溶着)する。これにより、加硫接着することなく筒部材21と固定部材30との間にダイヤフラム10の周縁部13を挟持して、仕切体20とダイヤフラム10とを一体化させることができる。
なお、図3に示すようにダイヤフラム10は、ネック部12に軸方向(図3上下方向)下側に向かう凸部15が突設されている。凸部15はネック部12の全周に亘って形成されている。凸部15は、固定部材30の内周壁部34の軸方向端部に押圧される部位であり、凸部15の分だけネック部12の軸方向寸法が大きくなるので、シール性を向上させることができる。
図1に示すように、第1取付部材2及び第2取付部材3に防振基体4を加硫接着した後、例えば液体中で、ダイヤフラム10が固定された仕切体20を、第2取付部材3の下端部の開口から段部4aに突き当たるまで挿入する。第2取付部材3の下端側の外周に荷重を加えて第2取付部材3を縮径させ、筒部材21の外周をゴム膜5の内周面に押し付ける。これにより、防振基体4とダイヤフラム10との間に液体を封入できる。次いで、ブラケット部材6に第2取付部材3の上端部を圧入し、ブラケット部材6にストッパゴム7を装着する。
以上のように製造される液封入式防振装置1によれば、押圧部24,31及び外周壁部25,32とダイヤフラム10の周縁部13の全周とが液密にされるので、ダイヤフラム10の加硫接着を省略して低コスト化を図りつつシール性を確保できる。
次に図4を参照して、筒部材21と固定部材30との間にダイヤフラム10を挟持するときの周縁部13及び液封部14の弾性変形挙動について説明する。図4は筒部材21、固定部材30及びダイヤフラム10の部分断面図である。なお、図4において、筒部材21及び固定部材30に挟持前のダイヤフラム10を二点鎖線で図示し、筒部材21及び固定部材30に挟持後のダイヤフラム10を実線で図示する。
図4に示すように、挟持前のダイヤフラム10の周縁部13(二点鎖線)の軸方向(図4上下方向)寸法は、挟持後の押圧部24,31の軸方向間隔より大きく設定される。これにより、挟持後の周縁部13は押圧部24,31によって軸方向に圧縮変形される。周縁部13の径方向内側への弾性変形(縮径)は内周壁部26,34によって規制されるので、周縁部13は径方向外側(図4右側)に伸張する。周縁部13及び液封部14の径方向寸法は、外周壁部25と内周壁部26との間の径方向寸法および外周壁部32と内周壁部34との間の径方向寸法より僅かに小さめに設定されているので、周縁部13が径方向に伸張することで、液封部14はそれぞれ外周壁部25,32に押し付けられる。また、周縁部13は径方向寸法が軸方向寸法より小さく設定されているので、押圧部24,31による小さい軸方向荷重で押縮させることができる。
その結果、押圧部24,31と周縁部13の軸方向端面との間、液封部14と外周壁部25,32の径方向内側面との間を液密にすることができる。さらに、液封部14は、周縁部13の軸方向の一部が全周に亘って径方向に凸起するので、液封部14が外周壁部25,32に密着することにより、液封部14によって押付け力が加わる面積を小さくできる。その結果、小さな押付け力でもシール性を確保できる。よって、液体封入室に封入された液体の圧力変動や振動に対して安定した密封作用を確保できる。
ここで、挟持前の周縁部13の軸方向寸法および挟持後の押圧部24,31の軸方向間隔から算出されるつぶし率は、8%以上30%未満に設定される。つぶし率を8%以上30%未満に設定することにより、周縁部13の耐久性とシール性とを両立できる。なお、つぶし率が8%より小さくなると、周縁部13や液封部14の相手面に対する押し付け力が小さくなり、シール性が低下する傾向がみられる。つぶし率が30%以上になると、変形による割れが周縁部13に生じ易くなり耐久性が低下する傾向がみられる。
また、挟持前の周縁部13及び液封部14の軸方向断面の大きさ、及び、挟持後の押圧部24,31、外周壁部25,32及び内周壁部26,34で囲繞される空間(溝)の軸方向断面の大きさから算出される充填率は、90%未満に設定される。充填率を90%未満に設定することにより、溝すきま(外周壁部25,32の合わせ面)に周縁部13及び液封部14が噛み込まれることを防止できると共に、はみ出しの進行を防止できる。なお、充填率が90%以上では、膨潤等により周縁部13及び液封部14のはみ出しが生じ易くなり、付加荷重が低下し易くなるので、シール性が低下し易くなる。
挟持前のネック部12の軸方向寸法(厚さ)は、挟持後の内周壁部26,34間の軸方向間隔より大きく設定される。これにより、挟持後のネック部12は、対向する内周壁部26,34の軸方向端部に挟まれ軸方向に圧縮変形される。ネック部12の径方向外側への弾性変形(伸張)は周縁部13の弾性変形によって規制されるので、ネック部12は内周壁部26,34によって軸方向に押圧され挟持される。
ここで、ネック部12が軸方向に押圧されていない場合には、本体部11(図1参照)が軸方向に往復運動すると、ネック部12を介して周縁部13に径方向内側への引張力が作用したりネック部12が軸方向に移動(揺動)したりする。そうすると周縁部13のシール性も低下するおそれがある。
これに対し本実施の形態によれば、ネック部12を軸方向に押圧することにより、周縁部13に作用する引張力や軸方向へのネック部12の移動を抑制できる。その結果、ネック部12、周縁部13及び液封部14のシール性が低下するのを抑制できる。
また、ネック部12は全周に亘って軸方向に凸部15が突出されているので、凸部15によって接触面積に対して押付け力が加わる面積を小さくできる。その結果、小さな押付け力でもシール性を確保できる。
凸部15は、ネック部12の軸方向上側面(防振基体4に近い面)には設けられておらず、軸方向下側面(防振基体4と離隔される面)に設けられている。ネック部12の軸方向上側面は、第2液室L2に封入された液体が接触する本体部11の内面と連なるが、ネック部12の軸方向下側面(凸部15が設けられた面)は、液体が存在しない本体部11の外面と連なる。内周壁部34に押圧された凸部15の根本に周方向のシワが形成されることがあるが、その面(ダイヤフラム10の外面)には液体は存在しないので、シワに起因するシール性の低下を防止できる。
また、液封部14は周縁部13の径方向外側(図4右側)に位置する。液封部14が周縁部13の径方向内側に位置する場合には、本体部11の軸方向の往復運動に伴い周縁部13に径方向内側への引張力(振動)が作用すると、液封部14の相手面(外周壁部25,32)への押し付け力が変動し易くなる。そうすると液封部14のシール性が低下するおそれがある。これに対し、液封部14を周縁部13の径方向外側に位置させることで、周縁部13に緩衝させることができるので、液封部14の外周壁部25,32への押し付け力の変動を抑制できる。よって、液封部14による密封作用の低下を抑制できる。
次に図5を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、ダイヤフラム10の周縁部13に突設された2つの液封部14が同一の径方向寸法に形成される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、ダイヤフラム110の周縁部13に突設された2つの液封部14,114のうち、一方の液封部114が他方の液封部14より径方向寸法を小さく設定される場合について説明する。なお、第2実施の形態において、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5(a)は第2実施の形態における液封入式防振装置101のダイヤフラム110の片側断面図であり、図5(b)は液封入式防振装置101の部分拡大断面図である。
図5(a)に示すようにダイヤフラム110は、円環状に形成された周縁部13の外周面に液封部14,114が全周に亘って設けられる。液封部14,114は径方向寸法が異なる大きさに設定される。本実施の形態では、仕切体120に押圧される液封部114の径方向寸法が、固定部材30に押圧される液封部14の径方向寸法より小さく設定される。
図5(b)に示すように、押圧部24,31によって周縁部13が軸方向に押縮されると、液封部14,114は径方向外側に伸張される。その結果、液封部114は外周壁部125に押し付けられ、液封部14は外周壁部32に押し付けられる。
外周壁部125及び内周壁部26は、軸線Oに直交し液封部114が面内に位置する仮想平面P3上に少なくとも一部が位置し、周縁部13の径方向の伸張を規制する。同様に、外周壁部32及び内周壁部34は、軸線Oに直交し液封部14が面内に位置する仮想平面P2上に少なくとも一部が位置し、周縁部13の径方向の伸張を規制する。その結果、液封部14,114の背面側(径方向内側、図5(b)左側)の周縁部13の変形が規制されるので、液封部14,114が相手面(外周壁部125,32)を押し付ける力を確保できる。
また、仕切体120に押圧される液封部114の径方向寸法が、固定部材30に押圧される液封部14の径方向寸法より小さく設定されるので、周縁部13及び液封部114を内周壁部26と外周壁部125との間に挿入し易くできる。さらに、液封部114が押し付けられる外周壁部125は、内周面が、外周壁部32の内周面に対して段差状に径方向内側に位置するので、外周壁部32,125の軸方向端部間に液封部114を噛み込まれ難くできる。
次に図6を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、ダイヤフラム10,110の周縁部13の外周面の2箇所に液封部14,114が突設される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、ダイヤフラム210の周縁部213の外形が円錐台状に形成されることで、周縁部213の軸方向一端部が液封部214として構成される場合について説明する。なお、第3実施の形態において、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図6(a)は第3実施の形態における液封入式防振装置201のダイヤフラム210の片側断面図であり、図6(b)は液封入式防振装置201の部分拡大断面図である。
図6(a)に示すようにダイヤフラム210は、外形が円錐台状に形成された周縁部213を備えている。周縁部213は、外周面が、軸方向一端側(防振基体4(図1参照)から離隔される側、図6(a)下側)から軸方向他端側(防振基体4側、図6(a)上側)に向かうにつれ外径が漸次小さくなるように設定される。その結果、周縁部213の軸方向一端側(防振基体4から離隔される側)の外周面が液封部214として機能する。周縁部213は、外周面が、軸方向一端側から他端側に向かうにつれ漸次縮径されるので、周縁部213の外周面にアンダーカットとなる部分が形成されるのを防止できる。そのため、ダイヤフラム210を加硫形成する金型構造を簡素化できる。
図6(b)に示すように、押圧部24,31によって周縁部213が軸方向に押縮されると、液封部214は径方向外側に伸張される。その結果、液封部214は外周壁部32に押し付けられる。外周壁部32及び内周壁部34は、軸線Oに直交し液封部214が面内に位置する仮想平面P4上に少なくとも一部が位置し、周縁部213の径方向の伸張を規制する。その結果、液封部214の背面側(径方向内側、図6(b)左側)の周縁部213の変形が規制されるので、液封部214が相手面(外周壁部32)を押し付ける力を確保できる。
また、仕切体20に押圧される周縁部213の径方向寸法が、固定部材30に押圧される周縁部213の径方向寸法より小さく設定されるので、周縁部213を内周壁部26と外周壁部25との間に挿入し易くできる。さらに、液封部214は周縁部213の軸方向一端側に形成されるので、ダイヤフラム310が軸方向に挿入されるときに外周壁部25,32の軸方向端部(突き合わせ面)に液封部214が到達しない。よって、外周壁部25,32の軸方向端部間に液封部214が噛み込まれるのを防止できる。そのため液封入式防振装置201の製造工程において、外周壁部25,32の軸方向端部間に液封部214が噛み込まれて液漏れが生じることを防止できる。
次に図7を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態から第3実施の形態では、ダイヤフラム10,110,210の周縁部13,213の径方向外側に位置する外周壁部25,32,125が、仕切体20,120及び固定部材30の両部材によって構成される(周縁部13,213の径方向外側に外周壁部25,32,125の合わせ面が存在する)場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、外周壁部332が固定部材330によって形成される(外周壁部の合わせ面が存在しない)場合について説明する。なお、第4実施の形態において、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図7(a)は第4実施の形態における液封入式防振装置301のダイヤフラム310の片側断面図であり、図7(b)は液封入式防振装置301の部分拡大断面図である。
図7(a)に示すようにダイヤフラム310は、円筒状に形成された周縁部313と、周縁部313の外周面から径方向外側に突設される断面三角状の液封部314と、周縁部313の軸方向一端部(図7(a)下側)の径方向内側に連設されるネック部312と、ネック部312の径方向内側に連設されると共に軸方向他端側(図7(a)上側)に屈曲されつつ本体部11に連なる規制部312aとを備えている。
図7(b)に示すように、仕切体320(筒部材)は、下端部に、仕切体320の軸中心を通る軸線Oと直交する平坦面を有する円環状の押圧部324が設けられる。押圧部324の径方向外側には軸方向下側(防振基体4(図1参照)から離間する方向)に向かう筒状の外周壁部325が突設され、押圧部324の径方向内側には、外周壁部325と所定の間隔をあけて対向すると共に軸方向下側に向かって延びる筒状の内周壁部326が設けられる。
固定部材330は、軸線Oと直交する平坦面を有する円環状の押圧部331と、押圧部331の径方向外側に位置し軸方向上側(防振基体4に近づく方向)に向かって立設される筒状の外周壁部332とを備えている。また、固定部材330は、押圧部331の径方向内側に立設されると共に外周壁部332と所定の間隔をあけて対向すると共に軸方向上側に向かって延びる筒状の内周壁部334とを備えている。
仕切体320の内周壁部326の高さは、固定部材330の外周壁部332の高さより低く設定される。また、固定部材330の外周壁部332の外径は、仕切体320の外周壁部325の内径と略同一の大きさに設定され、固定部材330の内周壁部334の外径は、仕切体320の内周壁部326の内径より小さく設定される。これにより、仕切体320の外周壁部325に固定部材330の外周壁部332を嵌入させると共に、固定部材330の外周壁部332の軸方向端面を押圧部324に当接させることができる。以上のようにして固定部材330を仕切体320の下端部に圧入固定できる。
固定部材330の外周壁部332の軸方向端面を押圧部324に当接させたときに、内周壁部326と押圧部331との間に軸方向隙間が形成され、押圧部324,331の間には、内周壁部326と押圧部331との間の軸方向隙間より大きい軸方向隙間が形成される。押圧部324,331間はダイヤフラム310の周縁部313が収容される空間であり、内周壁部326と押圧部331との間はダイヤフラム310のネック部312が収容される空間である。また、内周壁部334,326間の径方向隙間には、ダイヤフラム10の規制部312aが収容される。
図7(b)に示すように、押圧部324,331によって周縁部313が軸方向に押縮されると、周縁部313の径方向内側への伸張が内周壁部326に規制されるので、液封部314は径方向外側に伸張される。その結果、液封部314は外周壁部332に押し付けられる。外周壁部332及び内周壁部326は、軸線Oに直交し液封部314が面内に位置する仮想平面P5上に少なくとも一部が位置し、周縁部313の径方向の伸張を規制する。その結果、液封部314の背面側(径方向内側、図7(b)左側)の周縁部313の変形が規制されるので、液封部314が外周壁部332を押し付ける力を確保できる。
また、固定部材330の外周壁部332の軸方向端面を仕切体320の押圧部324に当接させることで、周縁部313の径方向外側に、外周壁部の軸方向端面同士の合わせ面を存在させないようにできる。押圧部324と外周壁部332との合わせ面と、液封部314の径方向先端との軸方向間隔を確保できるので、押圧部324と外周壁部332との合わせ面(溝すきま)に液封部314が噛み込まれて、はみ出しが進行することを防止できる。
また、ダイヤフラム310に規制部312aが設けられているので、液封入式防振装置301を製造する場合には、固定部材330の外周壁部332と内周壁部334との間にダイヤフラム310の周縁部313、ネック部312及び規制部312aを嵌めて、固定部材330にダイヤフラム310を保持できる。ダイヤフラム310が保持された固定部材330を仕切体320に圧入することで、仕切体320へのダイヤフラム310の固定とシールとを同時に行うことができる。
仕切体320に固定されたダイヤフラム310は規制部312aが設けられており、規制部312aの径方向内側に内周壁部334が密接されるので、本体部11の軸方向の往復運動によってネック部312や周縁部313に径方向内側への引張力が作用することを防止できる。
次に図8を参照して、第5実施の形態について説明する。第1実施の形態から第4実施の形態では、ダイヤフラム10,110,210,310の周縁部13,213,313に液封部14,114,214,314が形成される場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、固定部材430に液封部432aが形成される場合について説明する。なお、第5実施の形態において、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図8(a)は第5実施の形態における液封入式防振装置401のダイヤフラム410の片側断面図であり、図8(b)は液封入式防振装置401の部分拡大断面図である。
図8(a)に示すようにダイヤフラム410は、周縁部413が円筒状に形成される。そのため、周縁部413の内周面および外周面にアンダーカットとなる部分が形成されるのを防止できる。そのため、ダイヤフラム410を加硫形成する金型構造を簡素化できる。
図8(b)に示すように、仕切体420(筒部材)は、下端部に、仕切体420の軸中心を通る軸線Oと直交する平坦面を有する円環状の押圧部424が設けられる。押圧部424の径方向外側には軸方向下側(防振基体4(図1参照)から離間する方向)に向かう筒状の外周壁部425が突設され、押圧部424の径方向内側には、外周壁部425と所定の間隔をあけて対向すると共に軸方向下側に向かって延びる筒状の内周壁部426が設けられる。
固定部材430は、軸線Oと直交する平坦面を有する円環状の押圧部431と、押圧部431の径方向外側に位置し軸方向上側(防振基体4に近づく方向)に向かって立設される筒状の外周壁部432と、外周壁部432の径方向外側に位置し軸方向上側に向かって立設される外装部433とを備えている。また、外周壁部432は、押圧部431と所定の間隔をあけて径方向内側に延びる液封部432aが設けられる。液封部432aは、外周壁部432の内周面の全周に亘って円環状に形成される。
固定部材430の外装部433の内径は、仕切体420の外周壁部425の外径と略同一の大きさに設定される。これにより、固定部材430の外装部433に仕切体420の外周壁部425が圧入可能にされる。固定部材430に仕切体420が圧入され、外周壁部425,432の軸方向端部が突き当てられると、内周壁部426と押圧部431との間に軸方向隙間が形成され、押圧部424,431の間には、内周壁部426と押圧部431との間の軸方向隙間より大きい軸方向隙間が形成される。押圧部424,431間はダイヤフラム410の周縁部413が収容される空間であり、内周壁部426と押圧部431との間はダイヤフラム410のネック部12が収容される空間である。
図8(b)に示すように、押圧部424,431によって周縁部413が軸方向に押縮されると、周縁部413の径方向内側への伸張が内周壁部426に規制されるので、周縁部413は径方向外側に伸張される。伸張された周縁部413は、その径方向外側に位置する液封部432aに押し付けられる。外周壁部432及び内周壁部426は、軸線Oに直交し液封部432aが面内に位置する仮想平面P6上に少なくとも一部が位置し、周縁部413の径方向の伸張を規制する。その結果、周縁部413の内周面の変形が規制されるので、液封部432aによって周縁部413が押し付けられる力を確保できる。これにより、周縁部413の軸方向両端部および外周面に押し付け力を作用させることができるので、シール性を確保できる。
また、ダイヤフラム410の周縁部413に断面三角状等の液封部を設ける代わりに、固定部材430に液封部432aが設けられているので、液封入式防振装置401の製造工程においてダイヤフラム410を仕切体420と固定部材430との間に挟持させるときに、周縁部413が溝すきまに噛み込まれる不具合が生じることを抑制できる。
次に図9及び図10を参照して、第6実施の形態について説明する。第1実施の形態から第5実施の形態では、ダイヤフラム10,110,210,310,410の固定構造について説明した。これに対し第6実施の形態では、液体封入室内に配置される弾性仕切膜530の固定構造について説明する。なお、第6実施の形態において、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図9は第6実施の形態における液封入式防振装置501の軸方向断面図であり、図10は図9のXで示す部分を拡大して示す液封入式防振装置501の拡大断面図である。
図9に示すように、第2取付部材3の下端側には、筒部材521を有する仕切体520が内装される。筒部材521は、防振基体4とダイヤフラム10との間に形成される液体封入室を第1液室L3と第3液室L5とに仕切る弾性仕切膜530を支持し、弾性仕切膜530とダイヤフラム10との間を第2液室L4と第3液室L5とに仕切る仕切壁528が配置される。
弾性仕切膜530は薄肉円板状のゴム膜からなり、過度の弾性変形を制限する上下一対の円板状のストッパ板部522,525間に配設される。ストッパ板部522,525には、液圧変動を伝達するための厚さ方向に貫通する開口が形成される。ストッパ板部522,525の外周に、第1液室L3と第2液室L4とを連通させる第1オリフィス529が形成される。仕切壁528の外周には、第2液室L4と第3液室L5とを連通させる第2オリフィス528aが形成される。この液封入式防振装置501は、シェイク振動とアイドル振動との異なる2つの振動数域の振動に対して防振効果を得る所謂ダブルオリフィスタイプの液封入式防振装置として構成される。
次に図10を参照して、弾性仕切膜530の固定構造について説明する。図10に示すように、弾性仕切膜530は、軸方向に往復運動する円形薄膜状の本体部531と、本体部531の径方向外側に位置する円環状のネック部532と、ネック部532の径方向外側に位置する周縁部533とを備え、それらがゴム状弾性体から一体に構成される。ネック部532の軸方向寸法(厚さ)は、本体部531の軸方向寸法より大きく設定され、周縁部533の軸方向寸法は、ネック部532の軸方向寸法より大きく設定される。周縁部533の外周面の2箇所には断面三角状の液封部534が全周に亘って設けられる。
ストッパ板部522,525は、互いに軸方向反対側に向かって延びる内周壁部523,526が周縁に設けられる。内周壁部523,526の端部から径方向外側に向かって延び互いに対向する円環状の平坦面を有する押圧部524,527が設けられる。押圧部527から軸方向に向かって延びる円筒状の外周壁部528が形成され、外周壁部528の軸方向端部が押圧部524に当接することで、ストッパ板部522,525及び押圧部524,527が所定の間隔に保たれる。
押圧部524,527によって周縁部533が軸方向に押縮されると、周縁部533の径方向内側への伸張が内周壁部523,526に規制されるので、周縁部533は径方向外側に伸張される。周縁部533が伸張されることで、液封部534が外周壁部528に押し付けられる。外周壁部528を押圧する液封部534の面積は、周縁部533の外周面の面積に対して小さいので、周縁部533の径方向の変位量が小さくても液封部534による外周壁部528の押し付け力を大きくすることができる。また、内周壁部523,526の軸方向端部によってネック部532を上下から挟み込むことで、ネック部532の押し付け力も確保できる。これらの結果、ネック部532及び周縁部533の軸方向両端部、液封部534の径方向端部に押し付け力を確保することができ、シール性を向上できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
また、上記の各実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。例えば、第1実施の形態から第5実施の形態で説明したダイヤフラム10,110,210,310,410のシール構造を、第6実施の形態で説明した弾性仕切膜530のシール構造に置き換えることは当然可能である。
上記各実施の形態では、仕切体20,120,320,420,520の軸方向端部にダイヤフラム10,110,210,310,410を固定する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、仕切体20,120,320,420,520と別部材で構成される支持部材を第2取付部材3の内側に設け、その支持部材にダイヤフラム10,110,210,310,410を固定することは当然可能である。
上記各実施の形態では、周縁部13,213,313,413,533の径方向外側に液封部14,114,214,314,432a,534が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。周壁部の径方向外側への変位を規制する外周壁部と、その外周壁部と対向する内周壁部とを設け、周縁部13,213,313,413,533の径方向内側に設けた液封部によってシール性を確保することは当然可能である。
このように液封部を周縁部13,213,313,413,533の径方向内側に設けることにより、液封部による密封作用の低下を抑制できる。即ち、液封部が周縁部13,213,313,413,533の径方向外側に位置する場合には、ダイヤフラム10,110,210,310,410の軸方向の往復運動に伴い周縁部13,213,313,413,533に径方向内側への引張力(振動)が作用すると、液封部の相手面への押し付け力が変動し易くなる。そうすると液封部のシール性が低下するおそれがある。これに対し、液封部を周縁部13,213,313,413,533の径方向内側に位置させることで、液封部に作用する径方向内側への引張力を液封部の押し付け力に加えることができる。従って、液封部による密封作用の低下を抑制できる。従って、液封部による密封作用の低下を抑制できる。
また、上記各実施の形態では、液封部を通る仮想平面P1〜P5が、第2取付部材3の軸中心を通る軸線Oと直交する位置にある場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。液封部が形成された面と反対側の周縁部の一面の径方向の伸張を規制できれば良いので、仮想平面P1〜P5は、第2取付部材3の軸中心を通る軸線Oと交差する位置にあれば良い。第2取付部材3の軸中心を通る軸線Oと交差する位置に仮想平面P1〜P5が存在するように設定することで、液封入式防振装置の設計の自由度を向上できる。
上記第5実施の形態では、固定部材430に液封部432aが設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、仕切体420側(又は仕切体420と別部材で構成される上記の支持部材)に液封部を設けることは当然可能である。
上記第1実施の形態から第5実施の形態では、第1液室L1と第2液室L2とを弾性仕切膜22(ゴム状弾性体)で仕切る場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、弾性仕切膜22に代えて、金属製や合成樹脂製等の剛性材料から構成される仕切板を用いることは当然可能である。
上記第6実施の形態では、防振基体4とダイヤフラム10(ゴム状弾性体)との間に液体封入室が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ダイヤフラム10に代えて、金属製や合成樹脂製等の剛性材料から構成される液室形成部材を用いることは当然可能である。
上記実施の形態では説明を省略したが、第2取付部材3が取着されるブラケット(図示せず)とダイヤフラム10,110,210,310,410との間に空気室を設けることは当然可能である。その空気室は大気と連通させる場合と気密室とする場合とがある。空気室を気密室とする場合には、空気室の圧力を外部から調整する制御型の液封入式防振装置とすることは当然可能である。