JP2014199824A - 双極型二次電池およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】双極型二次電池において、ガス発生に起因する問題の発生を抑制しうる手段を提供する。【解決手段】双極型電極と電解質を含む電解質層17とが、正極活物質層13、前記電解質層、および負極活物質層15がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層19が形成されるように積層され、前記単電池層の外周部にシール部31が形成されてなる発電要素を有する双極型二次電池10において、電解質層を構成する電解質として、25℃にて1時間、10Torrの圧力条件下に静置した際の減量が、静置前の質量に対して1質量%以下である電解質を用いる。これは、電池の製造時に、シール部を形成する工程の前または当該工程と同時に、電解質を20Torr未満の圧力で減圧処理する。【選択図】図1

Description

本発明は、双極型二次電池およびその製造方法に関する。特に本発明は、双極型二次電池の耐久性・長期信頼性を向上させるための改良に関する。
近年、環境や燃費の観点から、ハイブリッド自動車や電気自動車、さらには燃料電池自動車が製造・販売され、新たな開発が続けられている。これらのいわゆる電動車両においては、放電・充電ができる電源装置の活用が不可欠である。この電源装置としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等が利用される。特に、リチウムイオン二次電池はそのエネルギー密度の高さや繰り返し充放電に対する耐久性の高さから、電動車両に好適と考えられ、各種の開発が鋭意進められている。ただし、上記したような各種自動車のモータ駆動用電源に適用するためには、大出力を確保するために、複数の二次電池を直列に接続して用いる必要がある。
しかしながら、接続部を介して電池を接続した場合、接続部の電気抵抗によって出力が低下してしまう。また、接続部を有する電池は空間的にも不利益を有する。即ち、接続部によって、電池の出力密度やエネルギー密度の低下がもたらされる。
この問題を解決するものとして、双極型リチウムイオン二次電池(双極型電池)が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。双極型電池は、片面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成された双極型電極が、電解質層を介して複数積層されてなる構成の発電要素を有する。そして、隣接する単電池層間での短絡を防止する目的で、正極活物質層、電解質層、および負極活物質層がこの順に積層されて構成される単セル(単電池層)の外周部にはシール部が設けられるのが一般的である。かような発電要素は通常、ラミネートフィルムからなる外装中に真空パックされる。
双極型電池は、複数の単電池層が発電要素の積層方向に電気的に直列に接続されているため、電池を高電圧化、低抵抗化することができる。さらに、かような直列接続は接続部を介することなくなされるため、電池をコンパクト化することができ、出力密度を向上させることが可能となる。
ところで、リチウムイオン二次電池においては、初回の充放電の際や繰り返し充放電を行なった際に、電池の構成成分(例えば、電解質を構成する有機溶媒)や不可避混入成分(例えば、水分)の分解に起因して、ガスが発生する。かようなガスが発電要素の内部に滞留すると、電極が剥離したり、電極と電解質との接触が悪くなったりして、電池性能が低下するという問題がある。
ここで、双極型でない並列接続タイプのリチウムイオン二次電池はシール部を有さない。このため、例えば液体電解質やゲル電解質を用いる場合には、電極と電解質層とを積層して積層体を作製し、これを乾燥させた後に、電解液やプレゲル溶液を注液して発電要素を作製することが可能である。これにより、発電要素の作製時における水分の混入がある程度防止されうる。その結果、水分の混入に起因するガス発生を抑制することができる。
また、並列接続タイプの電池はシール部を有さないため、初回の充放電時にガスが発生しても、その後に一度真空パックを開封し、ガス抜きを行なった後に再度真空パックすることが可能である。これにより、初回の充放電時に発生したガスに起因する問題を回避することが可能である。また、繰り返し充放電を行なった際に発生したガスについても、その少なくとも一部は、外装の内部ではあっても発電要素の外部には抜けることが可能である。このように、並列接続タイプの電池では、ガス発生に起因する問題をある程度低減させることが可能である。
一方、双極型電池では事情が異なる。すなわち、双極型電池は、単電池層の外周部をシール部によってシールせざるを得ないという特有の構造上の特徴を有する。かようなシール部の形成は双極型電極と電解質層との積層体の形成と同時に行なわれることが一般的である。このため、並列接続タイプの電池のように、先に積層体を作製してこれを乾燥させ、その後に液体成分を注液することが事実上不可能である。よって、積層体作製前に液体成分を電極や電解質層に予め含ませておき、その後に積層工程を行なって積層体を形成せざるを得ない。その結果、積層工程において雰囲気中の水分が発電要素内に混入してしまう。なお、かような水分を除去する目的で、積層工程で得られた積層体を乾燥させることも考えられそうであるが、そうすると電解液やプレゲル溶液中の有機溶媒が揮発してしまうため、好ましくない。
また、シール部が存在するという構造上の制約から、初回充放電後にガス抜きを行なっても、発生したガスはシール部の外部へと抜けることができず、発生した単電池層に留まってしまう。このことは、初回の充放電時のみならず、その後に繰り返し充放電を行なった場合も同様であり、電極の剥離や電極と電解質との接触不良に起因する電池性能の低下といった問題が並列接続タイプの電池と比べて顕著に発生しうる。さらに、使用時に電池が高温に曝されると電解質を構成する有機溶媒が揮発しても、揮発した有機溶媒は単電池層の外部へ抜けることができない。その結果、単電池層の内圧が上昇し、上述したのと同様の電池性能の低下の問題が生じてしまう。
特開平11−204136号公報
そこで本発明は、双極型二次電池において、上述したような種々の原因によるガス発生に起因する少なくとも1つの問題の発生を抑制しうる手段を提供することを目的とする。
上記の課題を解決すべく、本発明の双極型二次電池においては、電解質層を構成する電解質として、25℃にて1時間、10Torrの圧力条件下に静置した際の減量が、静置前の質量に対して1質量%以下である電解質が用いられる。かような電解質を含む双極型二次電池は、電池の製造時に、シール部を形成する工程の前または当該工程と同時に、電解質を20Torr未満の圧力で減圧処理することにより製造されうる。あるいは、電解質が水より低沸点の溶媒または脱水剤を含む場合には、シール部を形成する工程の前または当該工程と同時に、電解質を20Torr未満の圧力で減圧処理すると、かような電解質を含む双極型二次電池が製造されうる。
本発明の双極型二次電池やその製造方法によれば、ガス発生をもたらす一因となる水分の混入が防止される。その結果、ガス発生に起因する少なくとも1つの問題の発生が抑制された双極型二次電池が提供されうる。
本発明の双極型二次電池の代表的な一実施形態である双極型リチウムイオン二次電池の概要を模式的に表した断面概略図である。 本発明に係る双極型二次電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型二次電池の外観を模式的に表した斜視図である。 本発明に係る組電池の代表的な実施形態を模式的に表した外観図であって、図3Aは組電池の平面図であり、図3Bは組電池の正面図であり、図3Cは組電池の側面図である。 本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。 エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、および水の蒸気圧曲線を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の形態のみに制限されることはない。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、双極型二次電池の代表的な一実施形態である双極型リチウムイオン二次電池の概要を模式的に表した断面概略図である。なお、本明細書においては、双極型のリチウムイオン二次電池を例に挙げて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はかような形態のみに制限されない。
図1に示す本実施形態の双極型二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。
図1に示すように、本実施形態の双極型二次電池10の発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、前記集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極を有する。各双極型電極は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。この際、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極および電解質層17が交互に積層されている。即ち、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。従って、双極型二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止するために単電池層19の周辺部にはシール部31が配置されている。該シール部31を設けることで隣接する集電体11間を絶縁し、隣接する電極間の接触による短絡を防止することもできる。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。
さらに、図1に示す双極型二次電池10では、正極側最外層集電体11aが延長されて正極集電板25とされ、電池外装材であるラミネートシート29から導出している。一方、負極側最外層集電体11bが延長されて負極集電板27とされ、同様に電池外装材であるラミネートシート29から導出している。
[集電体]
集電体11は導電性材料から構成され、その両面に活物質層が形成されて電池の電極となり、最終的には電池を構成する。本実施形態において、集電体は、それぞれの層の表面に極性(正極・負極)の異なる活物質層が形成された電池(双極型電池)に用いられる。なお、図1に示すように、複数の単電池層が積層されてなる発電要素を有する電池において最外層に位置する電極は電池反応に関与しないため、最外層に位置する集電体においては、発電要素の内側のみに活物質層が存在すればよい。
また、集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。
集電体11を構成する材料に特に制限はない。例えば、金属や導電性高分子が採用されうる。具体的には、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などの金属材料が挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス鋼、銅が好ましい。
集電体11の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。
[正極活物質層および負極活物質層]
活物質層13、15は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
正極活物質層13は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
負極活物質層15は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム−金属合金材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
各活物質層13、15に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは1〜5μmである。ただし、この範囲を外れる形態が採用されても、勿論よい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、活物質粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
正極活物質層13および負極活物質層15に含まれうる添加剤としては、例えば、バインダ、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、合成ゴム系バインダ、エポキシ樹脂等が挙げられる。
導電助剤とは、正極活物質層13または負極活物質層15の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層(13、15)が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(FSON)、Li(CFSON)、Li(CSON)、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO3、LiClO、LiPF(CF3、LiPF(C、LiPF(C、LiPF(C等が挙げられる。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
正極活物質層13および負極活物質層15中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、双極型二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)やイオン伝導性を考慮して調整されうる。
各活物質層13、15の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層(13、15)の厚さは、2〜100μm程度である。
[電解質層]
電解質層17は、正極活物質層13と負極活物質層15との間の空間的な隔壁(スペーサ)として機能する。また、これと併せて、充放電時における正負極間でのリチウムイオンの移動媒体である電解質を保持する機能をも有する。電解質層17を構成する電解質としては、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。電解質層17の構成材料の詳細については後述する。
本実施形態の双極型二次電池10においては、電解質層17に含まれる電解質の減圧乾燥減量が所定値以下である点に特徴を有する。具体的には、本実施形態の双極型二次電池10の電解質層17に含まれる電解質を25℃にて1時間、10Torrの圧力条件下に静置した際の減量(本明細書中、「減圧乾燥減量」とも称する)は、静置前の当該電解質の質量に対して1質量%以下である。当該減量は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。なお、減圧乾燥減量の値は、電解質を上述した条件下に静置し、その前後の質量を測定することで算出可能である。
電解質の25℃における減圧乾燥減量がかような範囲内の値であれば、初回充放電時や繰り返し充放電の際のガス発生やこれに起因する電池性能の低下といった問題の発生が効果的に抑制されうる。
好ましい形態においては、より過酷な条件下における減圧乾燥減量も規定される。すなわち、好ましい形態においては、本実施形態の双極型二次電池10の電解質層17に含まれる電解質を60℃にて1時間、10Torrの圧力条件下に静置した際の減圧乾燥減量が、静置前の当該電解質の質量に対して1質量%以下である。当該減量は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。
また、より好ましい形態においては、本実施形態の双極型二次電池10の電解質層17に含まれる電解質を150℃にて1時間、10Torrの圧力条件下に静置した際の減圧乾燥減量が、静置前の当該電解質の質量に対して1質量%以下である。当該減量は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。
なお、上述した形態の減圧乾燥減量を示すような電解質を得る手法については、後述する。
電解質を構成する具体的な材料について特に制限はなく、上述した形態の減圧乾燥減量を示すような材料が適宜選択されうる。以下、電解質層を構成する材料の一例を説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには制限されない。
液体電解質は、可塑剤に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤としては、例えば、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類のほか、イオン液体が例示される。電解質が可塑剤を含む場合には、比較的高沸点のEC、PC,ラクトン類、またはイオン液体が可塑剤として用いられることが好ましい。なかでも、イオン液体が用いられることがより好ましい。これは、高沸点溶媒やイオン液体は蒸気圧が比較的小さい(イオン液体は非常に小さい)ためである。その結果、電池製造時に水分を除去する目的で減圧・高温条件とした場合であっても、高沸点溶媒やイオン液体は揮発せずに電解質中に残存しうる。また、イオン液体は通常の有機溶媒とは異なり蒸気圧が非常に小さいために、電池使用時に高温に曝されることとなった場合であってもほとんど揮発しない。よって、電池の膨れや電極の剥離、電極と電解質との接触不良といった問題の発生を抑えるという観点からも好ましい。
ここで、イオン液体は常温溶融塩とも称され、常温で液体状態を示す塩である。イオン液体自体はよく知られた材料であり、非常に多数の文献も頒布されている。本実施形態において好ましく用いられるイオン液体の例を挙げると、イオン液体を構成するカチオンとしては、例えば、アンモニウム(イミダゾリウム、ピリジニウム、脂肪族系第四級アンモニウム[ピペリジニウム、ピロリジニウム、第四級アルキルアンモニウム、アルコキシ基を有する第四級アルキルアンモニウム])、ホスホニウムカチオンおよびスルホニウムカチオンなどが挙げられる。イミダゾリウムカチオンの具体例としては、1、3−ジメチルイミダゾリウム、1、3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2、3−ジメチルイミダゾリウムが挙げられる。ピリジニウムカチオンの具体例としては、N−エチル−N−メチルピリジニウム、N−メチル−N−プロピルピリジニウム、N−ブチル−N−メチルピリジニウム、N−ヘキシル−N−メチルピリジニウムが挙げられる。ピロリジニウムカチオンの具体例としては、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウムが挙げられる。ピペリジニウムの具体例としては、N−エチル−N−メチルピペリジニウム、N-メチル−N−プロピルピペリジニウム、N-ブチル−N−メチルピペリジニウム、N-ヘキシル−N−メチルピペリジニウムが挙げられる。ピロリジニウムカチオンの具体例としては、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウムが挙げられる。第四級アルキルアンモニウムの具体例としては、N,N,N−トリメチル−N−エチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−ブチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウム、N,N,N−トリエチル−N−メチルアンモニウムが挙げられる。アルコキシ基を有する第四級アルキルアンモニウムの具体例としては、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニムなどが例示される。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリエチルメチルホスホニウム、トリエチルヘキシルホスホニウムなどが挙げられる。スルホニウムカチオンの具体例としては、トリエチルメチルスルホニウム、トリエチルヘキシルスルホニウムなどが挙げられる。
また、イオン液体を構成するアニオンとしては、例えば、BF 、AlF−、PF 、AsF 、SbF 、ClO 、AlCl 、CFSO 、CSO SO SO CHSO SO CHOSO OSO (FOS)(FSI)、(CFSO(TFSI)、CFCO (CSO(BETI)、(CSO、(CFSO、(CSO、(CN)、(CF3PF 、(CPF 、(CPF および(CPF などが例示される。なお、これらのカチオンおよびアニオンはそれぞれ、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が用いられてもよい。なかでも、粘度が小さく耐酸化性・耐還元性に優れるという観点から、イオン液体は、N−エチル−N−メチルピペリジニウム、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム、N−ブチル−N−メチルピペリジニウム、N−ヘキシル−N−メチルピペリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウム、N,N,N−トリメチル−N−エチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−ブチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウム、N,N,N−トリエチル−N−メチルアンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニムからなる群から選択される1種または2種以上であり、前記イオン液体を構成するアニオンが、FSI、TFSI、BETIからなる群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。なお、上述した可塑剤は、エチレンカーボネート(EC)、ジエチレンカーボネオート(DEC)、ビニレンカーボネート(VC)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)、エチレンサルファイト(ES)、クロロエチレンカーボネート(Cl−EC)などの従来公知の添加剤を含んでもよい。
液体電解質において上述した可塑剤(有機溶媒やイオン液体)に溶解される支持塩(リチウム塩)としては、LiPFやLiBETI等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。可塑剤への支持塩の添加量にも特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない固体電解質に分類される。
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF−HFP)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらのポリマーには、リチウム塩が良好に溶解しうる。なかでも、PEO、PPOもしくはこれらの共重合体、またはPVdF−HFPがマトリックスポリマーとして用いられることが好ましい。
なお、ゲル電解質における電解液(マトリックスポリマー以外の成分)の含有割合は、特に制限されない。イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%程度であればよいが、好ましくは80質量%以上である。
固体電解質は、真性ポリマー電解質とも称され、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤を含まない。マトリックスポリマーとして、セラミックスなどのイオン伝導性固体電解質が用いられてもよい。固体電解質は液体成分を含まないことから、電解質層が固体電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
ゲル電解質や固体電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、マトリックスポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
以上、電解質層17を構成する電解質の具体的な形態を、液体電解質、ゲル電解質、固体電解質に分類して詳細に説明したが、電解質はポリマー電解質であることが好ましい。換言すれば、電解質は、好ましくはポリマーを含む。これは、ポリマー自体も蒸気圧が非常に小さく、電池製造時に水分除去の目的で減圧・高温条件とした場合であってもその悪影響を受けにくいためである。
本発明の他の好ましい形態において、電解質層17を構成する電解質は、水より低沸点の溶媒(以下、単に「低沸点溶媒」」とも称する)を含む。かような形態によれば、電池製造時に水分除去の目的で減圧処理した際に、当該低沸点溶媒の存在によって、電解質から水分が揮発・除去されやすくなる。
低沸点溶媒の具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロペンタン、などの炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒などが低沸点溶媒として用いられうる。これらの低沸点溶媒は電解質に含まれても電極やセパレータ等の他の構成成分に対して不活性であるため、好ましい。水の揮発・除去を促進しうるのであれば、その他の低沸点溶媒が用いられてもよいことは勿論である。なかでも、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、n−ヘキサンが好ましく用いられ、より好ましくはメタノール、エタノール、アセトンが用いられる。なお、これらの低沸点溶媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
電解質が低沸点溶媒を含む場合の当該低沸点溶媒の含有量は特に制限されない。好ましい範囲としては、電解質が電解液(可塑剤+支持塩)を含む場合、低沸点溶媒の添加量は、当該電解液100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは5〜20質量部である。また、電解質が電解液を含まない(すなわち、固体電解質である)場合、低沸点溶媒の添加量は、当該(固体)電解質100質量部に対して、好ましくは5〜80質量部であり、より好ましくは5〜20質量部である。低沸点溶媒の含有量がかような範囲内の値であれば、電解質の本来の機能であるリチウムイオン伝導性の低下が最小限に抑制されうる。その一方で、低沸点溶媒としての機能である水分除去の目的を達成することが可能となる。
本発明のさらに他の好ましい形態において、電解質層17を構成する電解質は、脱水剤を含む。かような形態によれば、電解質中に水分が存在しても、当該水分は脱水剤との反応によって、水よりも蒸気圧の大きい低沸点化合物へと変化する。当該低沸点化合物は、電池製造時の減圧(高温)処理によって揮発・除去されうる。その結果、電解質中への水分の残存量を低減させることが可能となる。
本実施形態において用いられうる脱水剤としては、上述した作用効果を発揮しうるものであれば特に制限されないが、一例としては、下記化学式1で表されるアルコキシド化合物が挙げられる。
化学式1において、Mは、Si、Ge、Sn、Pb、Al、Ga、In、またはTlであり、好ましくはSiまたはGeであり、特に好ましくはSiである。また、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基である。かようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なかでも、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基であり、特に好ましくはメチル基またはエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。なお、化学式1において、Rは互いに同一であってもよいし、異なってもよい。化学式1において、xは3または4である。
脱水剤として用いられうるアルコキシド化合物の具体例として、MがSiの例としては、テトラメチルオルトシリケート(TMOS;Si(OCH)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS;Si(OCHCH)、テトラ−n−プロピルオルトシリケート(Si(OCHCHCH)、テトラ−iso−プロピルオルトシリケート(Si(OCH(CH2)、テトラ−n−ブチルオルトシリケート(Si(OCHCHCHCH)、テトラ−sec−ブチルオルトシリケート(Si(OCHCH(CH2)、テトラ−tert−ブチルオルトシリケート(Si(OCHC(CH3)、エチルトリメチルシリケート、ジエチルジメチルシリケート、メチルトリエチルシリケート等が挙げられる。また、MがGeの例としては、テトラメトキシゲルマニウム(Ge(OCH)、テトラエトキシゲルマニウム(Ge(OCHCH)、テトラ−n−プロポキシゲルマニウム、テトラ−iso−プロポキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、テトラ−sec−ブトキシゲルマニウム、テトラ−tert−ブトキシゲルマニウム、エトキシトリメトキシゲルマニウム、ジエトキシジメトキシゲルマニウム、メトキシトリエトキシゲルマニウム等が挙げられる。なかでも、入手の容易性の観点からは、TEOSやテトラエトキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウムが好ましく用いられ、特に好ましくはTEOSが用いられる。
ここで、参考のために、脱水剤としてTEOSを用いた場合のTEOSと水との反応を示す化学反応式を下記の反応式1に示す。
電解質が脱水剤を含む場合の当該脱水剤の含有量は特に制限されない。好ましい範囲としては、電解質が電解液(可塑剤+支持塩)を含む場合、脱水剤の添加量は、当該電解液100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部であり、より好ましくは1〜5質量部である。また、電解質が電解液を含まない(すなわち、固体電解質である)場合、脱水剤の添加量は、当該(固体)電解質100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部であり、より好ましくは1〜5質量部である。脱水剤の含有量がかような範囲内の値であれば、電解質の本来の機能であるリチウムイオン伝導性の低下が最小限に抑制されうる。その一方で、脱水剤としての機能である水分除去の目的を達成することが可能となる。
本実施形態の双極型二次電池10においては、電解質が上述した構成を有することにより、電解質中の水分量が少ない値に制御されている。具体的には、本実施形態の双極型二次電池10の電解質層17に含まれる電解質における水分の含有量は、当該電解質の全量に対して、好ましくは50質量ppm以下であり、より好ましくは20質量ppm以下であり、特に好ましくは10質量ppm以下である。このように電解質中の水分の含有量が従来と比較して極めて少ない値に制御されていることにより、上述したような水分の混入に起因する種々の問題の発生が、本発明によれば効果的に抑制されうるのである。なお、電解質中の水分の含有量は、カールフィッシャー法により測定される値を採用するものとする。
[シール部]
シール部31は、電解質層17の漏れを防止するために単電池層19の周辺部に配置されている。このほかにも、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止することもできる。該シール部31の構成材料としては、例えば、PE、PPなどのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、ポリイミドなどが挙げられる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、製膜性、経済性などの観点からは、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
[正極および負極集電板]
双極型二次電池10においては、電池外部に電流を取り出す目的で、最外層集電体(11a、11b)に電気的に接続された集電板(正極集電板25および負極集電板27)が外装材であるラミネートシート29の外部に取り出されている。具体的には、正極用最外層集電体11aに電気的に接続された正極集電板25と、負極用最外層集電体11bに電気的に接続された負極集電板27とが、外装材29の外部に取り出される。
集電板(正極集電板25および負極集電板27)を構成する材料は、特に制限されず、双極型二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。また、最外層集電体(11a、11b)を延長することにより集電板(25、27)としてもよいし、別途準備した集電板を最外層集電体に接続してもよい。
[正極および負極端子板]
正極および負極端子板は、必要に応じて使用する。例えば、最外部の集電体11a、11bから正極集電板25及び負極集電板27を直接取り出す場合には、正極および負極端子板は用いなくてもよい。
正極および負極端子板の材料は、従来公知のリチウムイオン電池で用いられる材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、これらの合金を利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。さらに、端子部での内部抵抗を抑える観点から、正極および負極端子板の厚さは、通常、0.1〜2mm程度が望ましい。
[正極および負極リード]
正極および負極リードに関しても、必要に応じて使用する。例えば、最外部の集電体11a、11bから出力電極端子(正極集電板25及び負極集電板27)を直接取り出す場合(図7参照のこと)には、正極および負極リードは用いなくてもよい。
正極および負極リードの材料は、公知のリチウムイオン電池で用いられるリードを用いることができる。なお、電池外装材から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
[電池外装材]
電池外装材としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができる。そのほか、図1に示すようなラミネートシート29を用いて発電要素21をパックして、外装材としてもよい。ラミネートシート29は、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンがこの順に積層されてなる3層構造のラミネートフィルム等から構成されうる。
[双極型二次電池の外観構成]
図2は、本発明に係る双極型二次電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型二次電池の外観を表した斜視図である。
図2に示すように、積層型の扁平な双極型二次電池10では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極集電板25、負極集電板27が引き出されている。発電要素21は、双極型二次電池10の電池外装材29によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素は正極集電板25および負極集電板27を引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素は、先に説明した図1に示す双極型二次電池の発電要素21に相当するものであり、集電体11、正極活物質層13、電解質層17および負極活物質層15からなる単電池層19が複数積層されたものである。
なお、本発明の双極型二次電池10は、図1、2に示すような積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型の双極型二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートシートを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限はない。
また、図2に示す集電板25、27の取り出しに関しても、特に制限されず、正極集電板25と負極集電板27とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極集電板25と負極集電板27をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図2に示すものに制限されない。また、巻回型の双極型二次電池では、集電板に代えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
本実施形態の双極型二次電池10は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
[組電池]
本実施形態の組電池は、上記実施形態の双極型二次電池10を複数個接続して構成したものである。詳しくは、少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成される。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。なお、本実施形態の組電池では、上記実施形態の双極型二次電池のほか、他の二次電池(例えば、双極型でない通常のリチウムイオン二次電池など)を用いて、これらを直列に、並列に、または直列と並列とに、複数個組み合わせて、組電池を構成することもできる。
本実施形態の組電池における双極型二次電池の数および接続の仕方は、電池に求める出力および容量に応じて決定されるとよい。本発明の組電池を構成した場合、双極型二次電池単独(素電池)と比較して、電池としての安定性が増す。また、本実施形態の組電池を構成することにより、本発明の組電池のなかの1つの単電池層(単セル)の劣化による組電池全体への影響を低減することもできる。
図3は、本実施形態に係る組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図3Aは組電池の平面図であり、図3Bは組電池の正面図であり、図3Cは組電池の側面図である。
図3に示す形態では、上記実施形態の双極型二次電池10を複数、直列および/または並列に接続して装脱着可能な小型の組電池35が形成されている。そして、この装脱着可能な小型の組電池35がさらに複数、直列および/または並列に接続され、組電池37とされている。これにより、組電池37は、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池37とされる。作成した装脱着可能な小型の組電池35は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続され、この組電池35は接続治具39を用いて複数段積層される。何個の双極型二次電池を接続して組電池35を作成するか、また、何段の組電池35を積層して組電池37を作成するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。本実施形態によれば、耐久性に優れる組電池が提供されうる。
[車両]
本発明の双極型二次電池10または組電池37は、車両の駆動用電源として用いられうる。本発明の双極型二次電池10または組電池37は、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いられうる。これにより、高寿命で信頼性の高い自動車が提供されうる。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両であれば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
図4は、本発明の組電池37を搭載した車両の概念図である。
図4に示すように、組電池37を電気自動車40のような車両に搭載するには、電気自動車40の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池37を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームに搭載してもよい。以上のような組電池37を用いた電気自動車40は優れた耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
[双極型二次電池の製造方法]
以下、本発明の双極型二次電池の製造方法の好ましい形態の一例を説明するが、本発明の双極型二次電池の技術的範囲が下記の製造方法によって製造されたもののみに限定されるわけではない。また、後述する本発明の製造方法の技術的範囲が、上述した本発明の双極型二次電池が製造される形態のみに限定されることもない。
(i)正極活物質スラリーの塗布
まず、適当な集電体を準備する。一方、正極活物質スラリーを調製し、集電体の一方の面に塗布する。
正極活物質スラリーは、正極活物質層の構成材料を含むスラリーである。当該スラリーには、正極活物質のほか、導電助剤、バインダ、重合開始剤、ゲル電解質の原料(マトリックスポリマー、可塑剤(有機溶媒やイオン液体)、支持塩(リチウム塩))などが任意で含まれる。これらの各成分の具体的な形態については、上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。そして、このスラリーは、スラリーの粘度を調整する目的で、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのスラリー粘度調整溶媒を含むのが一般的である。なお、重合開始剤は、重合させる化合物に応じて選択する必要がある。例えば、光重合開始剤としてはベンジルジメチルケタール(BDK)が挙げられ、熱重合開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。これらの重合開始剤の添加量は、マトリックスポリマーに含まれる架橋性官能基の数に応じて決定される。重合開始剤の添加量は、通常はマトリックスポリマーの全量に対して0.01〜1質量%程度である。
スラリーを集電体の表面に塗布する方法としては、例えば、バーコーティング、スプレーコーティングのほか、スクリーン印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。さらに、場合によっては真空プロセスを用いて形成することができる。具体的には、蒸着、イオンプレーティングおよび溶射などに代表されるPVD(Physical Vapor Deposition;物理気相成長法ないし物理的蒸着法)法、CVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長法ないし化学的蒸着法)が用いられてもよい。
(ii)正極活物質層の形成
正極活物質スラリーが塗布された集電体を乾燥して、含まれるスラリー粘度調整溶媒を除去し、正極活物質層を形成する。それと同時に、重合開始剤がスラリー中に含まれる場合には、架橋反応を進行させて、ポリマー電解質の機械的強度を高めてもよい。乾燥には真空乾燥機などが用いられうる。乾燥の条件は塗布された正極活物質スラリーの組成に応じて決定されうるが、通常は40〜150℃で5分間〜20時間である。
作製した正極に対しては、表面の平滑性および厚さの均一性を向上させるためにプレス操作を行なってもよい。プレス操作は冷間でプレスロールする方法または熱間でプレスロールする方法のいずれの方法でもよい。熱間でプレスロールする場合には、支持塩やマトリックスポリマーが分解する温度以下の温度条件下で行なうことが好ましい。プレス圧力は線圧で200〜1000kg/cm程度とすればよい。
(iii)負極活物質スラリーの塗布
一方、負極活物質スラリーを調製し、正極活物質層が形成された面と反対側の集電体の表面に塗布する。
負極活物質スラリーは、負極活物質層の構成材料を含むスラリーである。当該スラリーには、負極活物質のほか、正極活物質スラリーについて上述した各種の成分が同様に配合されうる。塗布の手法についても上述した通りである。
(iv)負極活物質層の形成
負極活物質スラリーが塗布された集電体を乾燥して、含まれるスラリー粘度調整溶媒を除去し、負極活物質層を形成する。それと同時に、重合開始剤がスラリー中に含まれる場合には、架橋反応を進行させて、ポリマー電解質の機械的強度を高めてもよい。乾燥やその後のプレス操作については上述した通りである。これにより、双極型電極が完成する。なお、上記「(ii)正極活物質層の形成」の項で説明したプレス操作は、例えば、集電体の片面に正極活物質層を形成した後に、電池に用いる複数の正極活物質層につき、全体をまとめて行ってもよい。負極活物質層についても同様である。さらには集電体の片面に正極活物質層を形成し、他方の面に負極活物質層を形成した後に、正極活物質層および負極活物質層に対してまとめてプレス操作を行ってもよい。これにより、プレス操作に要する工数を大幅に低減することができる。一方、正極活物質層および負極活物質層を構成する各層ごとに所定の膜厚を確保するという観点からは、正極活物質層および負極活物質層を構成する各層ごとにプレス操作を行なうことが好ましい。このようにプレス操作の対象や時期については、必要に応じて適宜選択すればよい。
(v)双極型電極および電解質層の作製(電解質の作製)
次いで、上述の通りに作製した双極型電極の両面の正極活物質層、負極活物質層、またはセパレータの所定の位置(中央部;電極面積またはそれより広い面積部分)に、液体電解質、ゲル原料溶液(プレゲル溶液)、または固体電解質の前駆体溶液を含浸させる。これらの溶液は、電極やセパレータ中に浸透する。また、当該含浸操作には、アプリケーターやコーターなどを用いれば微量の供給も可能である。
電解質がゲル電解質である場合に用いられるプレゲル溶液は、ゲル電解質の原料高分子(マトリックスポリマー)、支持塩、重合開始剤等を溶媒に溶解させて調製した溶液を意味する。マトリックスポリマー、支持塩などは、双極型二次電池の欄において説明した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
電解質が固体電解質である場合、双極型電極に含浸させる固体電解質の前駆体溶液は、固体電解質の原料高分子(マトリックスポリマー)、支持塩、重合開始剤等を混合して調製した溶液を意味する。マトリックスポリマー、支持塩などは、双極型二次電池の欄において説明した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
その後、プレゲル溶液または固体電解質前駆体溶液を含浸させた電極およびセパレータに含まれるマトリックスポリマーを、熱、紫外線、放射線、電子線等により重合(架橋)する。これにより、電極のイオン伝導性を高めることができるとともに所望の電解質層を形成することができる。
以上のように作製した双極型電極を高真空下で十分加熱乾燥してから、双極型電極と電解質層をそれぞれ適当なサイズに切り出す。電解質層(セパレータ)のサイズは、双極型電極の集電体のサイズよりも若干大きくすることが好ましい。
(vi)シール部前駆体の形成
上記(v)で得られた双極型電極の正極周辺部の電極未塗布部分(4辺全て)に、ディスペンサ等を用いてシール部前駆体(例えば、1液性未硬化エポキシ樹脂)を塗布する。
次に、上記(v)で得られた電解質層(セパレータ)を正極側に集電体を覆うように設置する。なお、電解質層にセパレータを用いる場合、上述した液体電解質やプレゲル溶液、固体電解質前駆体溶液の含浸処理は、セパレータの設置後に行なってもよい。
次いで、セパレータの外周部(電解質を含まない部分)の上から、ディスペンサ等を用いて、シール部前駆体(例えば、1液性未硬化エポキシ樹脂)を塗布し、セパレータの外周部に含浸させる。セパレータ内部(含浸)とその上部(負極周辺部の電極未塗布部分に相当する位置)にシール部前駆体が位置するように、必要に応じて数回に分けて塗布してもよい。
なお、上記(i)〜(vi)の工程は、電池内部に水分等が混入するのを防止する観点から、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気下で行なうことが好ましい。
(vii)発電要素の作製
上記で得られた双極型電極および電解質層を、正極活物質層と負極活物質層とが、電解質層を挟んで対向するように、それぞれ交互に順次積層する。その後、必要であればホットプレス機によりホットプレスする。これにより、未硬化であったシール部前駆体を硬化して、シール部を形成する。
本発明の一形態によれば、双極型電極と電解質層とを積層する際の減圧処理条件に特徴を有する双極型二次電池の製造方法が提供される。すなわち、本発明により提供される製造方法は、双極型電極を準備する工程と、電解質を準備する工程と、前記双極型電極と電解質層またはその前駆体とを積層して単電池層を含む積層体を得る工程と、単電池層の外周部にシール部を形成する工程とを含む。そして、シール部を形成する工程の前または当該工程と同時に、電解質を10Torr未満の圧力で減圧処理する工程をさらに含む点に特徴を有する。
電解質の減圧処理工程は、10Torr未満の圧力で行なわれればよい。なお、1Torrは約133.32Paであり、よって10Torrは約1333.2Paに相当する。減圧処理工程は好ましくは5Torr未満の圧力で行なわれる。かような形態とすることにより、電解質中の水分を効果的に除去することが可能となる。その結果、水分の混入に伴うガス発生に起因する種々の問題の発生が抑制されうる。
減圧処理工程において減圧を達成する手段としては、双極型電極と電解質層との積層工程からホットプレス工程までの一連の工程を減圧条件下で行なうことができるような装置を用いることが好ましい。かような減圧手段としては、例えば、高性能真空ポンプを用いた真空チャンバ内部に積層機構を備えた真空積層装置が挙げられる。
減圧処理工程における温度条件について特に制限はないが、電解質中の揮発・除去させたい成分(例えば、水分)や、揮発・除去させたくない成分(例えば、電解質の可塑剤)のそれぞれの蒸気圧曲線を参考にして、温度条件を決定すればよい(後述する図5も参照)。一般に、同一の減圧条件下であっても、系の温度を上昇させると蒸発することとなる。よって、減圧処理時の温度条件は電解質に含まれる成分に応じて変動しうるため一義的には決定することが困難である。ただし、水分を揮発させて除去するための一般的な温度条件を挙げれば、通常は25〜150℃程度であり、好ましくは60〜130℃である。
また、減圧処理工程における減圧処理の時間についても特に制限はない。一例としては、処理時間は30〜120分間程度であり、好ましくは30〜60分間である。かような形態によれば、経済的に、かつ効率的に電解質からの水分の除去が可能となる。
電解質の減圧処理工程を行なう際には、電解質に対して単独で減圧処理を行なってもよい。ただし、好ましくは、液体電解質やゲル電解質の場合には電極活物質層やセパレータへの含浸後、固体電解質の場合には架橋工程の後に、減圧処理工程を行なうとよい。より好ましくは、双極型電極と電解質層とを積層した後に、減圧処理工程を行なうとよい。かような形態を採用することにより、電解質への雰囲気中の水分の混入が最小限に抑制されうるためである。なお、本発明の製造工程において、「電解質層の前駆体」とは、電解質を含まないセパレータや、架橋処理される前の固体電解質前駆体、架橋処理される前のゲル電解質など、最終的には電解質層を形成するが双極型電極と積層される時点では自身の最終形態とは異なる構成を有するものを意味する。
減圧処理工程は、シール部を形成する工程の前または当該工程と同時に行なわれる。シール部形成後では、減圧処理を行なっても、もはや揮発した水分がシール部の外へと抜けられないためである。シール部形成工程前に減圧処理工程を行なう形態としては、例えば、上述したように電極と電解質層とを積層した後に減圧処理を施し、次いで積層体をホットプレスして発電要素を完成させる形態が挙げられる。この際、ホットプレスもある程度減圧処理された雰囲気下で行なわれることが好ましい。ホットプレス時の圧力条件が10Torr未満であれば、シール部形成工程と「同時に」減圧処理工程が行なわれることになる。ただし、ホットプレス時の圧力条件は上述した減圧処理工程よりも緩くてもよい。例えば、ホットプレス時の圧力条件は10〜50Torr程度としてもよい。
ホットプレス時のその他の条件について特に制限はないが、プレス圧力(面圧)は、0.1〜2.0kg/cm程度であり、好ましくは0.5〜1.0kg/cmである。また、プレス温度は、25〜150℃程度であり、好ましくは45〜100℃であり、さらに好ましくは60〜80℃である。プレス時間は、0.1〜2時間程度であり、好ましくは0.5〜1時間である。なお、ホットプレス時のこれらの条件は、シール部前駆体として用いられる材料の種類に応じて決定されうる。
当該ホットプレス工程によってシール部前駆体は硬化し、所定の厚さのシール部が形成される。その結果、単電池層が所望のセル数積層された発電要素が完成する。なお、単電池層の積層数は、双極型二次電池に求められる電池特性を考慮して決定される。
本発明の双極型二次電池の構成の欄において説明したように、電解質が低沸点溶媒や脱水剤を含むと、減圧処理時の電解質からの水分の揮発・除去が促進されうる。そのため、電解質が低沸点溶媒や脱水剤を含む場合には、上述した形態の製造方法と比較してより緩い減圧条件での減圧処理によっても、電解質から水分を効果的に除去することが可能となる。すなわち、本発明のさらに他の形態により提供される製造方法は、双極型電極を準備する工程と、水との低沸点溶媒または脱水剤を含む電解質を準備する工程と、前記双極型電極と電解質層またはその前駆体とを積層して単電池層を含む積層体を得る工程と、単電池層の外周部にシール部を形成する工程とを含む。そして、シール部を形成する工程の前または当該工程と同時に、電解質を20Torr未満の圧力で減圧処理する工程をさらに含む点に特徴を有する。
本形態の製造方法では、電解質の減圧処理工程は、上述した形態よりも緩い20Torr未満の圧力で行なわれればよい。この減圧処理工程は、好ましくは10Torr未満、より好ましくは5Torr未満の圧力で行なわれる。かような形態とすることにより、比較的緩い減圧条件によっても、電解質中の水分を効果的に除去することが可能となる。その結果、水分の混入に伴うガス発生に起因する種々の問題の発生が抑制されうる。
減圧処理工程における温度条件についても、上述した形態よりも緩い条件が採用されうる。具体的には、通常は25〜130℃程度であり、好ましくは60〜120℃である。その他の具体的な形態については、上述した形態が同様に採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
(viii)電極集電板の取り付け
得られた発電要素の両最外層に位置する集電体に、正極集電板および負極集電板を配設(電気的に接続)する。集電板の配設は、例えば、カーボン系導電性接着剤等を用いた接着により行なわれる。
必要に応じて、正極集電板および負極集電板に、さらに正極リード及び負極リードをそれぞれ接合(電気的に接続)してもよい。正極リードおよび負極リードの接合方法について特に制限はないが、接合温度の低い超音波溶接等が好適に利用されうる。また、集電板と同じように、カーボン系導電性接着剤等を用いた接着によりリードの接合を行なってもよい。
(ix)双極型二次電池の作製
次いで、この電極集電板が取り付けられた発電要素を、外部からの衝撃や環境による劣化を防止するために、ラミネートシート等からなる電池外装材や電池ケースの内部に真空パックする。そして、外装材の外周部を熱融着によってシールする。これにより、双極型二次電池が完成する。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例に示す形態のみに制限されるわけではない。
<実施例1>
・電解液系双極型電極の作製
(双極型電極の作製)
正極活物質であるLiMn(平均粒子径10μm)(85質量%)、導電助剤であるアセチレンブラック(5質量%)、およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(10質量%)を混合し、次いでスラリー粘度調整用溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極活物質スラリーを調製した。
一方、負極活物質であるハードカーボン(平均粒子径10μm)(90質量%)、およびバインダであるPVdF(10質量%)を混合し、次いでスラリー粘度調整用溶媒であるNMPを適量添加して、負活物質スラリーを調製した。
集電体であるステンレス箔(厚さ20μm)の一方の表面に上記で調製した正極活物質スラリーを縦135mm×横105mmのサイズに塗布し、乾燥させて厚さ30μmの正極活物質層を形成した。次いで、集電体の他方の表面に上記で調製した負極活物質スラリーを、縦140mm×横110mmのサイズに塗布し、乾燥させて厚さ20μmの負極活物質層を形成した。なお、負極活物質層の形成は、正極活物質層と負極活物質層との中心が重なるように行なった。
次いで、上述の正極活物質層および負極活物質層を塗布した集電体を、縦160mm×横130mmのサイズに切り出し、正極活物質層および負極活物質層の外周部に20mm幅の集電体の露出部分(未塗布部分)を設けて、双極型電極を完成させた。
(電解液の作製)
LiPFを1.0Mの濃度で含有するプロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)との当体積混合液(90質量%)を調製し、電解液とした。
(シール部前駆体の形成)
上記で得られた双極型電極の正極側の電極未塗布部分(4辺全て)に、ディスペンサを用いて、シール部前駆体(1液性未硬化エポキシ樹脂)を塗布した。
次いで、電解質層の前駆体としてのポリエチレン製セパレータ(厚さ12μm、縦145mm×横115mm)を、上記シール部前駆体を備えた双極型電極の正極側に集電体すべてを覆うように設置した。
その後、上記セパレータの上から、電極未塗布部分(4辺全て)(上記シール部前駆体を塗布した部分と同じ部分)に、ディスペンサを用いて、シール部前駆体(1液性未硬化エポキシ樹脂)をさらに塗布した。
(電極保持機構へのセット)
上記で得られた双極型電極−セパレータ積層体を、負極面を上にした状態で、各電極が接触せずかつ電極の面方向に対して垂直方向にずれがなく電極およびシール部位(シール部前駆体塗布部)の外側をチャックすることのできるクリップ機構を備えた双極型電極保持機構に6枚セットした。ここで、最下部に位置する双極型電極には、シール部前駆体が塗布されておらず、セパレータも設置されていないものを用いた。
(電解液の導入)
電極保持機構にセットされた6枚の双極型電極の負極面上に、上記で調製した電解液をマイクロピペットにより1mLずつ垂らし、各双極型電極の負極活物質層中に染み込ませた。
(電極の積層)
電極保持機構を下降させながら、電極受け台上に前記6枚の双極型電極をずれのないように積層した。これにより、単電池層が5層積層されてなる発電要素を作製した。
(真空への導入)
上記で得られた発電要素を、ホットプレス部位を有する真空チャンバ内に電極受け台ごと導入した。その後、真空チャンバ内を加熱・減圧し、60℃にて30分間、10Torrの圧力で減圧処理した。
(発電要素のプレス)
上記で減圧処理した発電要素を、30Torrの圧力条件下で、真空チャンバ内のホットプレス部位に電極受け台ごと移動させた。その後、前記ホットプレス部位により当該発電要素を80℃にて1時間、1kg/cmの面圧でホットプレスした。これにより、シール部前駆体(1液性未硬化エポキシ樹脂)が所定の厚さまでプレスされるとともに硬化し、単電池層の外周部にシール部が形成された。また、このホットプレスにより、単電池層の全体(すなわち、負極活物質層、セパレータおよび正極活物質層)に電解液が浸透した。
(外装中への封入)
上記真空チャンバ内をリークして大気圧に戻した後、真空チャンバから発電要素を取り出し、当該発電要素の両端に、電流取出し用の集電板およびリードを接続した。次いで、リードが外部に導出するように、発電要素全体を外装(アルミラミネートフィルム)中に入れ、外装内部を真空としてパックすることにより、液体電解質型の双極型ラミネート電池を完成させた。なお、完成した電池における電解質を、10Torrの圧力条件下で25℃にて1時間静置した際の減量は0.5質量%であった。
<実施例2>
上述した実施例1において、電解液を、イオン液体であるN−メチル−N−プロピルピペリジニウム・TFSIにLiTFSIを0.5Mの濃度で含有させたものに変更した。また、真空チャンバ内での減圧処理条件を120℃、5Torrに変更した。それ以外は上述した実施例1と同様の手法により、液体電解質型の双極型ラミネート電池を完成させた。なお、完成した電池における電解質を、10Torrの圧力条件下で25℃にて1時間静置した際の減量は0.1質量%であった。
<試験例>
上記実施例1および2で得られた双極型ラミネート電池を用い、充放電サイクル試験を行なった。
具体的には、まず、25℃にて定電流定電圧方式(CCCV、電流:0.5C、電圧:4.2V)で3時間充電を行なった。その後、定電流(CC、電流:0.5C)で2.5Vまで放電し、放電後30分間休止させた。この充放電過程を1サイクルとし、100サイクル繰り返して、充放電サイクル試験とした。
(膨張率の測定)
初回充放電(1サイクル)終了時、および100サイクル終了時にラミネート電池の厚さを測定した。そして、測定された厚さの、電池作製後(充放電試験前)の厚さに対する増加百分率(膨張率)を算出した。膨張率(%)の算出結果を下記の表1に示す。
表1に示す結果から、本発明によれば、充放電サイクル試験後の電池の厚さの膨張率が極めて低い値に抑えられることがわかる。これは、本発明により提供される双極型電池においては、初回充放電時や充放電を繰り返した際のガスの発生が抑制されるためであると考えられる。なお、電解液の可塑剤として有機溶媒を用いた場合に比べて、イオン液体を用いると、膨張率がより一層小さい値に抑えられることがわかる。すなわち、イオン液体を用いて電解質を構成すると、充放電に伴うガス発生がより有意に抑えられ、より信頼性に優れる双極型電池が提供されうるのである。
(容量維持率の測定)
また、初回充放電(1サイクル目)の放電容量、および100サイクル目の放電容量をそれぞれ測定した。そして、1サイクル目から100サイクル目まで、放電容量が維持された割合を百分率(容量維持率)として算出した。容量維持率(%)の算出結果を下記の表2に示す。
表2に示す結果から、本発明によれば、充放電サイクル後の容量維持率が高い値に維持されることがわかる。これは、本発明により提供される双極型電池においては、初回充放電時や充放電を繰り返した際のガスの発生が抑制され、ガス発生に起因する電極の剥離や電極と電解質との接触不良といった問題の発生が防止されるためであると考えられる。なお、電解液の可塑剤として有機溶媒を用いた場合に比べて、イオン液体を用いると、容量維持率がより一層高い値に維持されることがわかる。すなわち、イオン液体を用いて電解質を構成すると、ガス発生に起因する問題の発生がより有意に抑えられ、より信頼性に優れる双極型電池が提供されうるのである。
<参考例>
以下、参考のために、上述した実施例1および2の変形例として、電解質の組成や減圧処理の条件等を変更した場合にどのような性能(膨張率、容量維持率)が得られるかを理論的に予測した結果を、実施例・比較例のいずれに該当するかと併せて記載する。
<参考例1>
上述した実施例1において、上記電解液100質量部に対して低沸点溶媒であるアセトン(10質量部)およびメタノール(10質量部)を添加した混合液を電解液として用いる。それ以外は上述した実施例1と同様の手法により、液体電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例2>
上述した実施例2において、上記電解液100質量部に対して低沸点溶媒であるアセトン(10質量部)およびメタノール(10質量部)を添加した混合液を電解液として用いる。それ以外は上述した実施例2と同様の手法により、液体電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例3>
・ゲル電解質系双極型電極の作製
上述した実施例1において、電解液をプレゲル溶液に変更する。当該プレゲル溶液は、PCとECとの当体積混合液にLiPFを1.0Mの濃度に溶解させた電解液(90質量%)と、ホストポリマー(HFP成分を10質量%含むポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP))(10質量%)とを混合し、さらに粘度調整溶媒としてジメチルカーボネート(DMC)を適量添加したものである。このプレゲル溶液は負極面に塗布され、DMCは乾燥される。そして、残存した電解液およびホストポリマーは、真空中でのホットプレス時に可塑化し、単電池層の全体に浸透する。それ以外は上述した実施例1と同様の手法により、ゲル電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例4>
上述した参考例3において、上記プレゲル溶液100質量部に対して低沸点溶媒であるアセトン(10質量部)およびメタノール(10質量部)を添加し、さらに粘度調整溶媒としてジメチルカーボネート(DMC)を適量添加したものをプレゲル溶液として用いる。それ以外は上述した参考例3と同様の手法により、ゲル電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例5>
上述した参考例3において、プレゲル溶液を構成する電解液を、イオン液体であるN−メチル−N−プロピルピペリジニウム・TFSIにLiTFSIを0.5Mの濃度で含有させたものに変更する。また、真空チャンバ内での減圧処理条件を120℃、5Torrに変更する。それ以外は上述した参考例3と同様の手法により、ゲル電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例6>
上述した参考例4において、プレゲル溶液を構成する電解液を、イオン液体であるN−メチル−N−プロピルピペリジニウム・TFSIにLiTFSIを0.5Mの濃度で含有させたものに変更する。また、真空チャンバ内での減圧処理条件を120℃、5Torrに変更する。それ以外は上述した参考例4と同様の手法により、ゲル電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例7>
上述した参考例6において、プレゲル溶液を構成するホストポリマーを、リチウムイオン伝導性ポリマーであるポリエチレンオキシド(PEO)に変更する。それ以外は上述した参考例6と同様の手法により、ゲル電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例8>
・固体電解質系双極型電極の作製
(双極型電極の作製)
正極活物質であるLiMn(平均粒子径10μm)(22質量%)、導電助剤であるアセチレンブラック(6質量%)、ホストポリマーであるPEO(18質量%)、支持塩であるLi(CSON(9質量%)、スラリー粘度調整溶媒であるNMP(45質量%)、および熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(微量)を混合して、正極活物質スラリーを調製する。
一方、負極活物質であるLiTi12(14質量%)、導電助剤であるアセチレンブラック(4質量%)、ホストポリマーであるPEO(20質量%)、支持塩であるLi(CSON(11質量%)、スラリー粘度調整溶媒であるNMP(51質量%)、および熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(微量)を混合して、負極活物質スラリーを調製する。
集電体であるステンレス箔(厚さ20μm)の一方の表面に上記で調製した正極活物質スラリーを縦135mm×横105mmのサイズに塗布し、乾燥させて厚さ30μmの正極活物質層を形成する。次いで、集電体の他方の表面に上記で調製した負極活物質スラリーを、縦140mm×横110mmのサイズに塗布し、乾燥させて厚さ20μmの負極活物質層を形成する。なお、負極活物質層の形成は、正極活物質層と負極活物質層との中心が重なるように行なう。そして、得られた積層体を110℃にて4時間熱処理することにより、PEOを熱重合させる。
次いで、上述の正極活物質層および負極活物質層を塗布した集電体を、縦160mm×横130mmのサイズに切り出し、正極活物質層および負極活物質層の外周部に10mm幅の集電体の露出部分(未塗布部分)を設けて、双極型電極を完成させる。
(固体電解質層の形成)
ホストポリマーであるPEO(64.5質量%)、および支持塩であるLi(CSON(35.5質量%)を混合し、低沸点溶媒であるアセトン20質量%およびメタノール20質量%を添加する。さらに、スラリー粘度調整溶媒としてアセトニトリルを適量添加して、固体電解質スラリーを調製する。
上記で調製した固体電解質スラリーを、上記で作製した双極型電極の正極活物質上に塗布し、乾燥させて厚さ40μmの電解質層を形成する。また、当該双極型電極の正極側の電極未塗布部分(4辺全て)に、ポリイミド製カプトンテープ(厚さ50μm)を貼付して、シール部を形成する。
(電極保持機構へのセット)
上記で得られた双極型電極−電解質層積層体を、負極面を上にした状態で、各電極が接触せずかつ電極の面方向に対して垂直方向にずれがなく電極およびシール部の外側をチャックすることのできるクリップ機構を備えた双極型電極保持機構に6枚セットする。ここで、最下部に位置する双極型電極には、シール部を貼付せず、電解質層も形成しない。
(電極の積層)
電極保持機構を下降させながら、電極受け台上に前記6枚の双極型電極をずれのないように積層する。これにより、単電池層が5層積層されてなる発電要素を作製する。
(真空への導入)
上記で得られた発電要素を、ホットプレス部位を有する真空チャンバ内に電極受け台ごと導入する。その後、真空チャンバ内を加熱・減圧し、120℃にて30分間、5Torrの圧力で減圧処理する。
(発電要素のプレス)
上記で減圧処理した発電要素を、30Torrの圧力条件下で、真空チャンバ内のホットプレス部位に電極受け台ごと移動させる。その後、前記ホットプレス部位により当該発電要素を80℃にて1時間、1kg/cmの面圧でホットプレスする。これにより、隣接する双極型電極における負極活物質層と電解質層とを密着させる。
(外装中への封入)
上記真空チャンバ内をリークして大気圧に戻した後、真空チャンバから発電要素を取り出し、当該発電要素の両端に、電流取出し用の集電板およびリードを接続する。次いで、リードが外部に導出するように、発電要素全体を外装(アルミラミネートフィルム)中に入れ、外装内部を真空としてパックすることにより、固体電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例9>
上述した実施例1において、電解液を、電解液(添加前)の全量に対して脱水剤であるテトラエチルオルトシリケート(TEOS;Si(OCHCH)を1質量%添加したものに変更する。それ以外は上述した実施例1と同様の手法により、液体電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例10>
上述した実施例2において、電解液を、電解液(添加前)の全量に対してTEOSを1質量%添加したものに変更する。また、真空チャンバ内での減圧処理条件を100℃、3Torrに変更する。それ以外は上述した実施例2と同様の手法により、液体電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例11>
上述した参考例3において、プレゲル溶液に、TEOSをさらに添加したものを用いる。この際、TEOSの添加量は、プレゲル溶液中の電解液成分(DMCを除く)の全量に対して1質量%とする。それ以外は上述した参考例3と同様の手法により、ゲル電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例12>
上述した参考例11において、プレゲル溶液を構成する電解液を、イオン液体であるN−メチル−N−プロピルピペリジニウム・TFSIにLiTFSIを0.5Mの濃度で含有させたものに変更する。また、真空チャンバ内での減圧処理条件を100℃、3Torrに変更する。それ以外は上述した参考例11と同様の手法により、ゲル電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<参考例13>
上述した参考例12において、プレゲル溶液を構成するホストポリマーを、PEOに変更する。それ以外は上述した参考例12と同様の手法により、ゲル電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<比較参考例1>
上述した実施例1において、真空チャンバ内での減圧処理条件を25℃、20Torrに変更する。それ以外は上述した実施例1と同様の手法により、液体電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<比較参考例2>
上述した参考例3において、真空チャンバ内での減圧処理条件を25℃、20Torrに変更する。それ以外は上述した参考例3と同様の手法により、ゲル電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<比較参考例3>
上述した参考例5において、真空チャンバ内での減圧処理条件を25℃、20Torrに変更する。それ以外は上述した参考例5と同様の手法により、ゲル電解質型の双極型ラミネート電池を完成させる。
<充放電サイクル試験の影響の予測>
上述した参考例1〜13(本願の実施例に対応)および比較参考例1〜3(本願の比較例に対応)で得られる双極型ラミネート電池について、上述した充放電サイクル試験を行なった場合の上記膨張率および上記容量維持率の値を予測した。この予測結果を下記の表3に示す。
なお、上記参考例および比較参考例の電池における膨張率や容量維持率の予測は、上述した実施例1および2の結果、および、図5に示す各種溶媒の蒸気圧曲線を表す対数グラフに基づき、電池製造時にどの程度の水分が残留するかという観点から行なった。
ここで、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、および水の蒸気圧曲線を図5に示す。
図5を参照すると、溶媒の蒸気圧曲線は、当該溶媒のある温度(横軸)における蒸気圧(縦軸)の関係を表すものである。よって、ある溶媒の蒸気圧曲線の左上側に位置する条件下において当該溶媒は液体であり、当該曲線の右下側に位置する条件下において当該溶媒は気体である。よって、蒸気圧曲線が左に位置するほど、ある温度における蒸気圧は大きくなり、より緩い減圧条件下でも揮発・除去されうる。例えば、約10Torrの減圧条件を例に挙げて説明すると、図5に示す点A(約20℃)の条件下で水の除去が可能である。また、図5に示す点B(約60℃)の条件下では、水に加えて低沸点溶媒(DEC、DMC)の除去も可能となる。一方、高沸点溶媒(EC、PC、GBL)を除去するには、系を図5に示す点C(約150℃)程度の高温条件とする必要がある。また、図5に示すようにイオン液体の蒸気圧曲線はかなり高温側に位置することが推定されている。よって、電池製造時にイオン液体はほとんど揮発・除去されないと考えられる。
上記表3に示す予測結果は、上述した実施例1および2における試験結果、および出願人の有する過去の実験データをもとに、電解質等の組成や減圧処理の条件を各参考例に記載したように変更したとすればどの程度のガスが発生するのかを推測し、このようにして推測されるガス発生量から、各参考例における膨張率や容量維持率の値を予測したのである。
各参考例についての表3に示す予測結果から、本発明により提供される双極型電池によれば、充放電サイクル試験後の膨張率や容量維持率に優れることが予想される。また、電解液の可塑剤として有機溶媒を用いた場合に比べて、イオン液体を用いると、膨張率や容量維持率がより一層改善されることも予想される。なお、かような予測は、あくまでも上述した実施例1および2の結果が得られたことをもって初めて予測可能となったものである。したがって、実施例1および2の結果や過去の実験データに基づき上記の予測が可能であったとしても、本願出願時の技術水準からは予測できないことである。
10 双極型二次電池、
11 集電体、
11a 正極側の最外層集電体、
11b 負極側の最外層集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 発電要素、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29 ラミネートシート、
31 シール部、
35 装脱着可能な小型の組電池、
37 組電池、
39 接続治具、
40 電気自動車。

Claims (17)

  1. 集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成された双極型電極と電解質を含む電解質層とが、前記正極活物質層、前記電解質層、および前記負極活物質層がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層が形成されるように積層され、前記単電池層の外周部にシール部が形成されてなる発電要素を有する双極型二次電池であって、
    前記電解質を60℃にて1時間、10Torrの圧力条件下に静置した際の減量が、静置前の当該電解質の質量に対して1質量%以下である、双極型二次電池。
  2. 集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成された双極型電極と電解質を含む電解質層とが、前記正極活物質層、前記電解質層、および前記負極活物質層がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層が形成されるように積層され、前記単電池層の外周部にシール部が形成されてなる発電要素を有する双極型二次電池であって、
    前記電解質を150℃にて1時間、10Torrの圧力条件下に静置した際の減量が、静置前の当該電解質の質量に対して1質量%以下である、双極型二次電池。
  3. 前記電解質中に水より低沸点の溶媒を含む、請求項1または2に記載の電池。
  4. 前記溶媒が、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、および炭化水素系溶媒からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項3に記載の電池。
  5. 前記溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロペンタン、トテラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、および1,2−ジメトキシエタンからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項4に記載の電池。
  6. 前記電解質が脱水剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池。
  7. 前記脱水剤が下記化学式1:
    式中、MはSi、Ge、Sn、Pb、Al、Ga、In、またはTlであり、Rは互いに独立して炭素原子数1〜4のアルキル基であり、xは3または4である、
    で表されるアルコキシド化合物である、請求項6に記載の電池。
  8. 前記MがSiまたはGeである、請求項7に記載の電池。
  9. 前記Rがメチル基またはエチル基である、請求項7または8に記載の電池。
  10. 前記電解質における水分の含有量が、当該電解質の全量に対して50質量ppm以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電池。
  11. 前記電解質がイオン液体を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電池。
  12. 前記イオン液体を構成するカチオンがアンモニウム、ホスホニウムカチオンおよびスルホニウムカチオンからなる群から選択される1種または2種以上であり、前記イオン液体を構成するアニオンがBF 、AlF−、PF 、AsF 、SbF 、ClO 、AlCl 、CFSO 、CSO SO SO CHSO SO CHOSO OSO (FOS)(FSI)、(CFSO(TFSI)、CFCO 、(CSO(BETI)、(CSO、(CFSO、(CSO、(CN)、(CFPF 、(CPF 、(CPF 、および(CPF からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項11に記載の電池。
  13. 前記イオン液体を構成するカチオンが、N−エチル−N−メチルピペリジニウム、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム、N−ブチル−N−メチルピペリジニウム、N−ヘキシル−N−メチルピペリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウム、N,N,N−トリメチル−N−エチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−ブチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウム、N,N,N−トリエチル−N−メチルアンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニムからなる群から選択される1種または2種以上であり、前記イオン液体を構成するアニオンが、FSI、TFSI、BETIからなる群から選択される1種または2種以上である請求項12に記載の電池。
  14. 前記電解質がポリマーを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の電池。
  15. 双極型リチウムイオン二次電池である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の電池。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の双極型二次電池の製造方法であって、
    双極型電極を準備する工程と、
    電解質を準備する工程と、
    前記双極型電極と電解質層またはその前駆体とを積層して、前記単電池層を含む積層体を得る工程と、
    前記単電池層の外周部にシール部を形成する工程と、を含み、
    前記シール部を形成する工程の前または当該工程と同時に、前記電解質を10Torr未満の圧力で減圧処理する工程をさらに含む、双極型二次電池の製造方法。
  17. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の双極型二次電池の製造方法であって、
    双極型電極を準備する工程と、
    電解質を準備する工程と、
    前記双極型電極と電解質層またはその前駆体とを積層して、前記単電池層を含む積層体を得る工程と、
    前記単電池層の外周部にシール部を形成する工程と、を含み、
    前記電解質が水より低沸点の溶媒または脱水剤を含み、前記シール部を形成する工程の前または当該工程と同時に、前記電解質を20Torr未満の圧力で減圧処理する工程をさらに含む、双極型二次電池の製造方法。
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