JP5652806B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関し、特に車両搭載に適したリチウムイオン二次電池に関する。
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。これらのいわゆる電動車両においては、放電・充電ができる電源装置の活用が不可欠なためである。
モータ駆動用二次電池としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等が利用される。このうち、全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有し、かつ繰り返し充放電に対する耐久性の高さから、リチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
リチウムイオン二次電池の性能向上のため、電解質層に含まれる電解液に加える添加剤も様々に工夫されている。例えば、下記特許文献1には、フッ素系化合物の不活性液体などを難燃剤として電解液に加え、安全性を高めたリチウムイオン二次電池が開示されている。フッ素化合物不活性液体としてはパーフルオロカーボンが例示され、結着剤としてポリエチレン、ポリプロピレン、エーテル結合を有するフッ素樹脂、シリコーン樹脂等が記載されている。
特開平6−283205号
リチウムイオン二次電池において、その電極に使用されるバインダに注目すると、バインダの素材としては、従来、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の強磁性体のフッ素系ポリマーが使用されている。一方、電解質層に用いられる溶媒には、エチレンカーボネート等の炭化水素系溶媒が使用されている。しかし、炭化水素系溶媒は、PVDFになじみにくく、PVDF中に含浸しにくい為、上記リチウムイオン二次電池は出力密度が十分と言えない。
したがって、本発明では、バインダとしてフッ素系ポリマーを使用したリチウムイオン二次電池において、溶媒が含浸しにくいという前記の問題を解決し、出力密度が向上したリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の目的達成のために鋭意検討し、本発明を完成した。すなわち、本発明の第一の態様によれば、活物質層に含まれるバインダおよび電解液に特徴のあるリチウムイオン二次電池が提供される。本発明のリチウムイオン二次電池は、基本構成として、正極活物質を含む正極活物質層が集電体の表面に形成されてなる正極と、電解質層と、負極活物質を含む負極活物質層が集電体の表面に形成されてなる負極とを備える。そしてこれらがこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を有する。このうち、正極活物質層および負極活物質層の少なくとも一方に、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むバインダを含む。
一般式(1)中、X〜Xは水素またはフッ素であり、かつX〜Xのうち少なくとも1つはフッ素である。さらに、置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物を含む電解液を含むことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池では、電解液の炭化水素系溶媒に特定の添加剤を加えることにより、フッ素系ポリマーのバインダ中に従来よりも多くの電解液を含浸させることができる。これにより、電極付近により多くのリチウムイオンが存在することになり、拡散抵抗および電子抵抗が低下する為、リチウムイオン二次電池の出力密度を向上することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。まず、リチウムイオン二次電池の基本的な構成を図面を用いて説明する。
[電池の全体構造]

図1は、本発明のリチウムイオン二次電池の代表的な一実施形態である、扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池(以下、単に非双極型リチウムイオン二次電池、または非双極型二次電池ともいう)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
図1に示すように、本実施形態の非双極型リチウムイオン二次電池10では、電池外装材22を用いて、発電要素17を収納し密封した構成を有している。ここで発電要素17は、正極集電体11の両面に正極活物質層12が形成された正極板、電解質層13、および負極集電体14の両面(発電要素の最下層および最上層用は片面)に負極活物質層15が形成された負極板を積層した構成を有している。この際、一の正極板片面の正極活物質層12と前記一の正極板に隣接する一の負極板片面の負極活物質層15とが電解質層13を介して向き合うようにして、正極板、電解質層13、負極板の順に複数積層されている。
これにより、隣接する正極活物質層12、電解質層13、および負極活物質層15は、一つの単電池層16を構成する。従って、本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、単電池層16が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素(積層体)17の両最外層に位置する最外層正極集電体11aには、いずれも片面のみに正極活物質層12が形成されている。なお、図1と正極板と負極板の配置を変えることで、発電要素17の両最外層に最外層負極集電体(図示せず)が位置するようにし、該最外層負極集電体の場合にも片面のみに負極活物質層15が形成されているようにしてもよい。
また、前記の各電極板(正極板及び負極板)と導通される正極タブ18および負極タブ19が、正極端子リード20および負極端子リード21を介して各電極板の正極集電体11及び負極集電体14に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられている。これにより、正極集電体11及び負極集電体14に電気的に接続された正極タブ18および負極タブ19は、電池外装材22の外部に露出される構造を有している。
図2は、本発明のリチウムイオン電池の他の代表的な一実施形態である双極型の扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池(以下、単に双極型リチウムイオン二次電池、または双極型二次電池とも称する)の全体構造を模式的に表わした概略断面図である。
図2に示すように、本実施形態の双極型リチウムイオン二次電池30は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素37が、電池外装材42の内部に封止された構造を有する。図2に示すように、本実施形態の双極型二次電池30の発電要素37は、2枚以上で構成される双極型電極34で電解質層35を挟み、隣合う双極型電極34の正極活物質層32と負極活物質層33とが電解質層35を介して対向するようになっている。ここで、双極型電極34は、集電体31の片面に正極活物質層32を設け、もう一方の面に負極活物質層33を設けた構造を有している。即ち、双極型二次電池30では、集電体31の片方の面上に正極活物質層32を有し、他方の面上に負極活物質層33を有する双極型電極34を、電解質層35を介して複数枚積層した構造の発電要素37を具備してなるものである。
隣接する正極活物質層32、電解質層35および負極活物質層33は、一つの単電池層36を構成する。したがって、双極型二次電池30は、単電池層36が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層35からの電解液の漏れによる液絡を防止するために単電池層36の周辺部には絶縁層43が配置されている。該絶縁層43を設けることで隣接する集電体31間を絶縁し、隣接する電極(正極活物質層32及び負極活物質層33)間の接触による短絡を防止することもできる。
発電要素37の最外層に位置する正極側電極34a及び負極側電極34bは、双極型電極構造でなくてもよい。例えば、集電体31a、31bに必要な片面のみの正極活物質層32または負極活物質層33を配置した構造としてもよい。具体的には、図2に示すように、発電要素37の最外層に位置する正極側の最外層集電体31aには、片面のみに正極活物質層32が形成されているようにしてもよい。同様に、発電要素37の最外層に位置する負極側の最外層集電体31bには、片面のみに負極活物質層33が形成されているようにしてもよい。また、双極型リチウムイオン二次電池30では、上下両端の正極側最外層集電体31a及び負極側最外層集電体31bのさらに外側に集電板38aおよび39bがそれぞれ設けられている。集電板38aおよび39bは、それぞれ延長されて正極タブ38および負極タブ39となっている。集電板38aおよび39bは、必要に応じて正極端子リード及び負極端子リードを介して接合されていてもよい。また、正極側最外層集電体31aが延長されて正極タブ38とされ、電池外装材42であるラミネートシートから導出されていてもよい。同様に、負極側最外層集電体31bが延長されて負極タブ39とされ、同様に電池外装材42であるラミネートシートから導出される構造としてもよい。
また、双極型リチウムイオン二次電池30でも、発電要素(積層体)37部分を電池外装材42に減圧封入し、正極タブ38及び負極タブ39を電池外装材42の外部に取り出した構造とするのがよい。かかる構造とすることで、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止することができるためである。この双極型リチウムイオン二次電池30の基本構成は、複数積層した単電池層36が直列に接続された構成ともいえるものである。 次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池を構成する各部材について説明する。
[集電体]
集電体は、ニッケル、銅、ステンレス(SUS)などの導電性の材料を用いた箔、メッシュ、エキスパンドグリッド(エキスパンドメタル)、パンチドメタルなどから構成される。メッシュの目開き、線径、メッシュ数などは、特に制限されず、従来公知のものが使用できる。集電体の一般的な厚さは、5〜30μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
[活物質層]
集電体上には、活物質層が形成される。活物質層は、充放電反応の中心を担う活物質を含む層である。電極が正極として用いられる場合、活物質層は正極活物質を含む。一方、電極が負極として用いられる場合、活物質層は負極活物質を含む。なお、本実施形態の電池の電極は活物質層に上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むバインダを含むが、これについては後述する。
正極活物質としては、リチウム−遷移金属複合酸化物が好ましく、例えば、LiMnなどのLi−Mn系複合酸化物やLiNiOなどのLi−Ni系複合酸化物が挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
負極活物質としては、炭素材料が好ましい。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛系炭素材料(黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。より好ましくは、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛である。天然黒鉛は、例えば鱗片状黒鉛、塊状黒鉛などが使用できる。人造黒鉛としては塊状黒鉛、気相成長黒鉛、鱗片状黒鉛、繊維状黒鉛が使用できる。これらのなかで、特に好ましい材料は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛である。鱗片状黒鉛、塊状黒鉛を用いた場合、充填密度が高い等の理由で、特に有利である。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。
活物質の平均粒子径は特に制限されないが、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmであり、さらに好ましくは1〜20μmである。ただし、これらの範囲を外れる形態もまた、採用されうる。なお、本願において活物質の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定(レーザ回折散乱法)により測定された値を採用するものとする。
また、活物質層における活物質の含有量は、好ましくは活物質層の合計質量に対して70〜98質量%であり、より好ましくは80〜98質量%である。活物質の含有量が前記範囲であれば、エネルギー密度を高くすることができるため好適である。
本実施形態の電極において、活物質層の厚さ(塗布層の片面の厚さ)は、好ましくは、20〜500μmであり、より好ましくは20〜300μmであり、さらに好ましくは20〜150μmである。
(バインダ)
バインダは活物質層に含まれ、本実施形態では前記一般式(1)で表されるバインダを使用することが特徴である。前記一般式(1)で表されるもののうち、特に好ましいものは、汎用性や入手のし易さの点で、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
上述のように、本実施形態のリチウムイオン二次電池では、添加剤を電解液に加え、バインダ中により多くの電解液を含ませることができる。しかし、PVDF等のバインダは、通常絡み合って物理的に架橋しているだけである。そこで、添加剤の濃度条件等によってはバインダが過度に膨潤することが考えられ、この場合には、正極活物質が活物質層からはがれる可能性が出てくる。正極活物質がはがれると、はがれた分だけ電池に使われない活物質が生じることになるので、電池性能の低下を引き起こす原因になる。
この現象を防ぐためには、バインダが過度に膨潤することのないよう、物理架橋に加えて予めバインダをある程度化学架橋させておくことができる。通常PVDF等のバインダは安定で容易に反応しにくいが、製造段階で電子線またはγ線を照射し、言わば表面を荒らすことにより、架橋点を作ることができる。この架橋点からバインダ中に化学架橋が進む。図3に、この架橋の様子を模式的に示す。図3に示すように、PVDFの表面に電子線を照射することにより、水素が抜けてラジカルができ、これが架橋点となる。こうしてできた架橋点どうしが化学結合を形成し、網目状の構造を付加して、バインダの過度の膨潤を防ぐことができる。
バインダが化学架橋しているかどうか、またはどの程度化学架橋しているかは、バインダの結晶化度および架橋転換密度に反映される。結晶化度および架橋転換密度は、フーリエ変換型赤外吸収スペクトルおよびX線回折の測定結果から知ることができる。化学架橋が多すぎてもバインダのもろさにつながるので、所望の程度にバインダ中に電解液が含まれるよう、適宜調整することが望ましい。結晶化度または架橋転換密度は、それぞれ好ましくは10000〜24000、より好ましくは11000〜23000、もっとも好ましくは12000〜22000である。
後述する実施例で具体的にデータを示すように、電解液中の添加剤の存在により、バインダは従来よりも電解液を多く含み、劇的に膨潤することが分かった。本発明者らの実験によれば、バインダ膜を電解液で膨潤させたときの、膨潤する前と後での厚みの増分は、30〜120%になることが確認されている。
リチウムイオン二次電池の電極付近では、電極活物質同士を導電助剤が間に入って点でつなぎ、それら全体をバインダが絡み合って覆っていると考えることができる。このバインダ中に電解液が含浸して支持塩を輸送し、支持塩を電極活物質に接触させる。したがって、バインダ中に含浸する電解液の量が多いと、支持塩の拡散抵抗を下げることができ、電池性能の向上に直接貢献する。このことは、添加剤使用がもたらす思いもよらない効果である。
電解液中の添加剤による上記の効果がどのように生じるのかについては、以下のように推測される。しかしながら、この推論は、本発明を何ら限定するものではない。すなわち、前記式(1)で表される、バインダとして使用されるPVDF等のフッ素系ポリマーと、電解液の溶媒に主として使用される炭化水素系溶媒との極性の相違によると考えられる。フッ素系ポリマーはフッ素を含むために極性が強く、一方の炭化水系溶媒はほとんど極性がない。炭化水素系溶媒がバインダに含浸しにくいのはそのためである。電解液の添加剤として置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物を加えることにより、炭化水素系溶媒がより含浸しやすくなると考えられる。
置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物は、分子内に極性の強いフッ素を有しているため、バインダとはなじみがよい。一方で、炭化水素部分があるために従来使用されている炭化水素系溶媒ともよく混じりあい、さらには環状の構造が嵩高いために、バインダ中に言わば炭化水素系溶媒を支持塩と共に連れて入ることができる。すなわち、置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物を添加することにより、電解液を従来よりもバインダ中に多く含浸させることができるようになったと推測される。
図4に、本実施形態のリチウムイオン二次電池のバインダ内部の様子を模式的に示した。例として、バインダとしてPVDF、置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物としてパーフルオロデカリン、炭化水素系溶媒としてジメチルカーボネートを使用したものを示した。図4中(a)は、添加剤を加えていない場合であり、(b)は添加剤を加えた場合である。(b)では、絡み合ったPVDFが嵩高いパーフルオロデカリンによってバッファー(ポリマーの間の空間)が広がった様子が分かる。(b)ではこの広がったバッファーに、パーフルオロデカリンがジメチルカーボネートともPVDFともなじみがよいことにより、(a)よりも多くのジメチルカーボネートが入り得る。図4には支持塩を描写していないが、ジメチルカーボネートに溶解している支持塩は、ジメチルカーボネートと共にバインダ中により多く含まれることになり、電極近傍に届く。すなわち、電極付近での拡散抵抗が低下し、このことは電池性能の向上に直接貢献する。
活物質層にはその他の物質が含まれてもよく、例えば、導電助剤、支持塩(リチウム塩)等が含まれうる。これらの成分の配合比は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
導電助剤とは、導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、黒鉛などのカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF)などの種々の炭素繊維などが挙げられる。支持塩としては、前記の電解液に含まれるものが同様に使用できる。
[電解質層]
電解質層を構成する電解質としては、電解液を含む多孔性フィルムセパレータまたはゲル電解質が用いられうる。電解液は、後述する添加剤を含み、有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態である。有機溶媒は、上述のように支持塩を十分に溶解させ得るものであれば、いずれも使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の可塑剤(有機溶媒)を用いたものなどが使用できる。これら有機溶媒は、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
このうち、本実施形態においては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が好ましい。特に、添加剤の効果が特に良好に発揮されることから、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチレンカーボネートが好ましい。
支持塩としては、従来公知のものが使用できる。具体例としては、Li(CSON(LiBETI)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等が挙げられる。
また、セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、電解液が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HEP)、ポリ(メチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子には、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
[添加剤]
本実施形態のリチウムイオン二次電池では、電解液に添加剤として置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物を加える。本実施形態に用いることのできる置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物としては、特に制限はないが、以下の化合物を好ましく用いることができる。
(1)以下に示す1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(テトラリン(登録商標))骨格の少なくとも一つの置換基にフッ素を有するもの。テトラリン(登録商標)骨格の残りの部位には水素が結合していることが望ましい。
例えば、以下に示すような化合物が例示される。
(2)以下に示すデカヒドロナフタレン(デカリン)骨格の少なくとも一つの置換基にフッ素を有するもの。デカリン骨格の残りの部位には水素が結合していることが望ましい。
例えば、以下に示すような化合物が例示される。
(3)以下に示す1−シクロヘキセン骨格の少なくとも一つの置換基にフッ素を有するもの。シクロヘキセン骨格の残りの部位には水素が結合していることが望ましい。
例えば、以下に示すような化合物が例示される。
(4)以下に示すシクロヘキサン骨格の少なくとも一つの置換基にフッ素を有するもの。シクロヘキサン骨格の残りの部位には水素が結合していることが望ましい。
例えば、以下に示すような化合物が例示される。
前記の化合物のうち、特にデカヒドロナフタレンの水素をすべてフッ素で置換した、パーフルオロデカリンが好ましい。前記置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物は、フッ素で置換された位置が多いほど、バインダとはなじみやすくなる点で好ましく、パーフルオロデカリンは本実施形態の効果が顕著に発揮される。一方、フッ素の数が少ないものは取扱いのし易さという別の点から好ましい。そのため、本実施形態における添加剤は、使用環境等に応じて適当な化合物が適宜選択されて使用される。
前記添加剤の好ましい濃度は、電解液中に20〜80vol%である。リチウムイオン二次電池の支持塩には、LiPF等のリチウムイオンを含むものを使用するが、通常1mol/L以上の塩濃度が必要である。炭化水素系溶媒であれば、これらの支持塩は5〜10mol/Lと十分な溶解度がある。しかし、支持塩は置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物には一般に溶けにくい。そのため、置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物の濃度が80vol%以下であれば、実使用に十分な支持塩濃度が得られる。電解液中に溶解している塩濃度が十分であることにより、電子抵抗が低くなるためである。一方で、バインダ中に十分に電解液を含ませるという本発明の効果を発揮するには、20vol%以上の濃度が望ましい。置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物の濃度は、40〜60vol%がより好ましく、もっとも好ましくは45〜55%である。
[絶縁層]
絶縁層(シール部)は、双極型リチウムイオン二次電池において、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止するために単電池層の周辺部に配置されている。絶縁層としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
[タブ]
タブ(正極タブおよび負極タブ)の材質は、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、これらの合金などを用いることができる。これらは特に制限されず、タブとして従来用いられている公知の材質が用いられうる。

[電池外装材]
電池外装材としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができほか、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた発電要素を覆うことができる袋状のケースを用いることができる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。
[組電池] 本発明はまた、前記の電池を用いた組電池を提供する。
本実施形態の組電池は、本実施形態のリチウムイオン二次電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。なお、本実施形態の組電池では、本実施形態の非双極型リチウムイオン二次電池と双極型リチウムイオン二次電池を用いて、これらを直列に、並列に、または直列と並列とに、複数個組み合わせて、組電池を構成することもできる。
図5は、本実施形態に係る組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図5Aは組電池の平面図であり、図5Bは組電池の正面図であり、図5Cは組電池の側面図である。
図5に示すように、本実施形態に係る組電池300は、本実施形態のリチウムイオン二次電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成し、この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続した組電池300であってもよい。作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。
[車両]
本発明はまた、前記の電池、または組電池を搭載した車両を提供する。
本実施形態の車両は、本実施形態のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。本実施形態の高容量正極を用いると高エネルギー密度の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、本実施形態のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。本実施形態のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
図6は、本実施形態の組電池を搭載した車両の概念図である。図6に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。本実施形態の組電池を搭載した車両としては、図6に示すような電気自動車のほか、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車などに幅広く適用できるものである。
[製造方法]
本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法は特に制限されず、従来公知の知見を適宜参照することにより製造されうる。以下、本実施形態の電池の製造方法を簡単に説明する。
電池用電極は、例えば、活物質、結着剤および溶媒を含む活物質スラリーを調製し、当
該活物質スラリーを集電体上に塗布し、乾燥させた後プレスすることで作製されうる。
はじめに、所望の活物質、上述した所定のバインダ、および必要に応じて他の成分(例えば導電助剤、支持塩など)を、溶媒中で混合して、活物質スラリーを調製する。バインダは、活物質などの固形分と粉末状態で混合してから溶媒を加えて混合する方法で活物質スラリー中に混合してもよく、あらかじめ少量の溶媒に溶解させてから活物質および溶媒を含む混合物に添加する方法で活物質スラリー中に混合してもよい。なお、正極を作製するにはスラリー中に正極活物質を添加し、負極を作製するにはスラリー中に負極活物質を添加する。
溶媒の種類や混合手段は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。溶媒の一例を挙げると、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどが用いられうる。
続いて、活物質層を形成するための集電体を準備し、調製した活物質スラリーを、集電体の表面に塗布し、塗膜を形成する。
活物質スラリーを塗布するための塗布手段も特に限定されないが、例えば、自走型コー
タなどの一般的に用いられている手段が採用されうる。ただし、塗布手段として、インク
ジェット方式、ドクターブレード方式、またはこれらの組み合わせを用いると、薄い層が
形成されうる。
上述のように、バインダを化学架橋させる場合には、活物質スラリーを塗布した後に電子線またはγ線を照射する。好ましい電子線およびγ線の強度はそれぞれ30kGy〜150kGyおよび30kGy〜140kGy、照射時間はそれぞれ0.5秒〜1.5秒および30分〜120分である。
その後、集電体の表面に形成された塗膜を乾燥させる。これにより、塗膜中の溶媒が除去される。塗膜を乾燥させるための乾燥手段も特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、加熱処理が例示される。乾燥条件(乾燥時間、乾燥温度など)は、活物質スラリーの塗布量やスラリーの溶媒の揮発速度に応じて適宜設定されうる。
その後、前記で準備した塗膜をプレスする。プレス手段については、特に限定されず、従来公知の手段が適宜採用されうる。プレス手段の一例を挙げると、カレンダーロール、平板プレスなどが挙げられる。
上記で作製した正極及び負極と、セパレータ(電解質層)とを積層して、発電要素を作製する。電解質層の作製方法も特に制限されず、従来公知の手法により作製が可能である。電解質層がゲルを含む場合には、予めセパレータにこれらの電解質を塗布、更には乾燥・加熱するなどして電解質層を形成することもできる。
絶縁層については、例えば、電極形成部の周囲を、所定の幅でエポキシ樹脂(前駆体溶液)等に浸漬または樹脂を注入ないし含浸する。いずれの場合にも、事前に電極端子板や電極リードや電極タブ、あるいはこれらを接続する必要のある集電体部分等を離型性マスキング材等を用いてマスキング処理しておく。その後エポキシ樹脂を硬化させて、絶縁部を形成し、その後、マスキング材を剥がせばよい。
続いて、得られた発電要素の各集電体にそれぞれリードを接合し、これらの正極ないし負極リードを、まとめて正極ないし負極タブに接合する。次いで、正極及び負極タブが電池外部に露出するように、発電要素をラミネートシート中に入れ、真空に封止する。電解質層は、ラミネートシートの封止前に、注液機により電解液を注液して形成する。これにより空隙部に電解質が満たされる。電解液に添加剤を加えるには、添加剤、炭化水素系溶媒および支持塩を適宜混合して使用すればよい。このようにして、本実施形態のリチウムイオン電池が構成される。
本実施形態の二次電池の構造としては、特に限定されず、形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。また、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型電池および双極型電池のいずれにも適用し得るものである。
以下、本発明を、実施例を通して説明する。
[バインダ膨潤率測定試験]
本発明のリチウムイオン二次電池の電解液に用いる添加剤である、置換基の少なくとも一つにフッ素を有する環状炭化水素化合物の添加の効果を確認するために、図7に示す以下の実験を行った。まず、PVDFをN−メチル−2−ピロリドン中に、濃度10w%となるように溶解した。この溶液をガラス基板上にスピンコートを用いて薄く均一に塗布した。この塗布膜を乾燥させ、ガラス基板から剥離し、初期の厚みを測定した。サンプルは6枚作製し、膜厚はいずれもほぼ150μmであった。一方で、恒温槽中に、ジメチルカーボネート(DMC)のみおよびDMCとパーフルオロデカリンとを4:1の体積比で混合した電解液をそれぞれ容器に入れて用意した。恒温槽は、大気圧下25℃または40℃とした。25℃においては、恒温槽を真空にした状態も準備した。その後、得られたPVDF膜を恒温槽中の溶媒にそれぞれ浸漬した。15分後に、PVDF膜をそれぞれの溶媒から引上げ、厚みを測定した。
厚み測定の結果は、図8に示す。図8のグラフは、電解液に浸漬する前のPVDF膜の膜厚に対する浸漬後の膜厚の増加を、膨潤率としてパーセンテージで表したものである。左側の3本のグラフはDMC溶媒のみの場合であり、右側の3本のグラフはDMCとパーフルオロデカリンとの混合溶媒の場合である。左右の3本の棒グラフは、共に、左から大気圧下25℃、大気圧下40℃および真空中25℃の結果である。
図8のグラフから分かるように、DMCのみの場合に比較して、添加剤を加えた溶媒の場合は、すべての条件でPVDFがより大きく膨潤していることが分かる。特に、真空中での測定の膨潤程度の増加が顕著である。真空中での測定は、バインダ中の空隙に含まれる空気の影響がないため、最も忠実に添加剤の影響を反映していると考えられる。加えて、実際の電池に使用された場合の状態に最も近いものである。したがって、添加剤の存在によって、バインダ中により多量の炭化水素系溶媒、すなわちより多くの支持塩が入ってくることが確認された。
[添加剤濃度の拡散抵抗および電子抵抗への影響]
電解液中の添加剤濃度を変えて、以下のようにリチウムイオン二次電池の試験用セルを作製し、各電池の電子抵抗および拡散抵抗を測定して、添加剤濃度の影響を評価した。
正極活物質として、平均粒径10μmのスピネル系リチウムマンガン酸化物を用いた。バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電助剤としてアセチレンブラック、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。正極の組成は、正極活物質:バインダ:導電助剤=85質量%:10質量%:5質量%とした。
はじめに分散用ミキサーに高純度無水NMPを投入した。次にPVDFを投入し、NMP溶媒に十分に溶解させた。この後、正極活物質、導電助剤を少しずつ投入することで、PVDFの溶解した溶媒になじませた。正極活物質、導電助剤がすべて投入された段階で溶媒を適宜加えて粘度を調節した。
前記で得られたスラリーを、コーティング装置を用い、正極集電体であるアルミ箔(膜厚20μm)の片面に25mg/cm塗布した。続いて、一定厚さのドクターブレードを用いて正極活物質層の厚さを調整し、ホットスターラー上で乾燥、ロールプレスで密度調整し、正極とした。得られた正極活物質層の厚さは、50μmであった。
負極活物質として、平均粒径15μmのグラファイトを用いた。バインダとしてPVDF、溶媒としてNMPを用いた。負極の組成は、負極活物質:バインダ=95質量%:5質量%とした。
はじめに分散用ミキサーに高純度無水NMPを投入した。次にPVDFを投入し、NMP溶媒に十分に溶解させた。この後、負極活物質を少しずつ投入することで、PVDFの溶解した溶媒になじませた。負極活物質がすべて投入された段階で溶媒を適宜加えて粘度を調節した。
前記で得られたスラリーを、コーティング装置を用い、負極集電体である銅箔(膜厚15μm)の片面に15mg/cm塗布した。続いて、一定厚さのドクターブレードを用いて負極活物質層の厚さを調整し、ホットスターラー上で乾燥、ロールプレスで密度調整し、負極とした。得られた負極活物質層の厚さは、30μmであった。
さらに、セパレータとしてポリプロピレン製微多孔膜(厚さ25μm)を準備した。また、電解液として、ジメチルカーボネート(DMC)と添加剤であるパーフルオロデカリンとの混合液に支持塩であるLiPFを1mol/Lの濃度に溶解させたものを準備した。混合液は、パーフルオロデカリンの混合割合を、0〜90vol%まで10vol%刻みで変化させたもの、合計10種類を用意した。
前記のように得られた負極、セパレータ、および正極をこの順に積層し、セパレータに各電解液を注入した。次いで、負極および正極にそれぞれ電流取り出し用端子(正極にはアルミニウム端子、負極にはニッケル端子)を接続し、電流取り出し用端子が外部に露出するように発電要素をアルミニウム製のラミネートフィルム中に入れ、ラミネートフィルムの開口部を減圧下で封止して、試験用セルを10種類作製した。
前記のように得られた各試験用セルについて、電子抵抗および拡散抵抗を求めた。電子抵抗は、交流インピーダンス法で測定した。拡散抵抗は、電流を印加した際の電圧低下代より解析を行って求めた。
前記のように、電子抵抗は電解液に溶解しているイオン量を反映し、拡散抵抗は、バインダが電解液で膨潤することによるイオンの移動しやすさを反映する。試験セルに電流を流し始めてすぐは、電極活物質近傍に存在するイオンが主に電池反応に寄与するため、この時点での電池の内部抵抗値は主に活物質近傍のイオン量すなわち電子抵抗を見ていることになる。交流インピーダンス法によれば、周波数範囲を選択して、交流電圧を印加してから短い時間領域の抵抗値を測定でき、電子抵抗を測定することができる。一方、電流を印加してから後、定常的な状態になってから測定される内部抵抗値は、電極に向かうイオンの移動速度も反映されるため、拡散抵抗と電子抵抗の和を見ていることになる。そこで、簡単には、定常状態での電圧低下代から内部抵抗を求め、電子抵抗値を差し引くことにより、拡散抵抗が求まる。
測定には、インピーダンス測定装置(ソーラトロン社製1260型)を使用し、周波数範囲1〜1000kHzを掃引した。また、印加電流は1Cであり、15秒後の電圧低下を測定した。
得られた結果を図9に示す。図9のグラフは、左側の縦軸が電子抵抗、右側の縦軸が拡散抵抗の相対値をそれぞれ示している。パーフルオロデカリンの混合割合が大きくなるにつれ、バインダが電解液で膨潤することによる拡散抵抗の低下が生じていることが分かる。一方、パーフルオロデカリンの混合割合が増えるにつれ、支持塩濃度の低下に起因する電子抵抗の増加が見られる。したがって、電子抵抗と拡散抵抗とが共に減少する適当な添加剤の濃度範囲を選ぶことにより、より一層出力密度の向上効果が得られることが示された。
本発明の一実施形態である非双極型リチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した断面概略図である。 本発明の一実施形態である双極型リチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表わした概略断面図である。 バインダを化学架橋させる過程を模式的に示した図である。 リチウムイオン二次電池のバインダ内部の様子を模式的に示した図であり、(a)は従来の電池、(b)は本発明の電池の一実施形態を示している。 本発明の組電池の一実施形態の外観図であって、図5Aは平面図であり、図5Bは正面図であり、図5Cは側面図である。 本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。 実施例におけるバインダ膨潤率測定試験の手順を模式的に示した図である。 実施例におけるバインダ膨潤率測定試験の結果を示すグラフである。 実施例における電子抵抗および拡散抵抗の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
10a 非双極型リチウムイオン二次電池、
11 正極集電体、
11a 最外層正極集電体、
12、32 正極活物質層、
13、35 電解質層、
14 負極集電体、
14a 最外層負極集電体、
15、33 負極活物質層、
16、36 単電池層、
17、37 発電要素、
18、38 正極タブ、
19、39 負極タブ、
20 正極端子リード、
21 負極端子リード、
22、42 電池外装材、
30 双極型リチウムイオン二次電池、
31、31a、31b 集電体、
34 双極型電極
34a 正極側電極
34b 負極側電極
38a、39b 集電板
50 リチウムイオン電池、
250 小型の組電池、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車。

Claims (5)

  1. 正極活物質を含む正極活物質層が集電体の表面に形成されてなる正極と、電解質層と、負極活物質を含む負極活物質層が集電体の表面に形成されてなる負極と、がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を有するリチウムイオン二次電池であって、
    前記正極活物質層および負極活物質層の少なくとも一方が、ポリフッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンであるバインダを含み、
    前記電解質層がパーフルオロデカリン、および、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを含む電解液を含み、
    前記電解液中の前記パーフルオロデカリンの濃度が20〜80vol%であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 前記濃度が40〜60vol%である請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記濃度が45〜55vol%である請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記バインダが化学架橋している請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記バインダがポリフッ化ビニリデンであり、前記電解液がジメチルカーボネートである請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。

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