JP2014192111A - 色素増感太陽電池用電解液およびこれを利用した色素増感太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】添加剤として環状ホウ酸エステル化合物を含有することを特徴とする色素増感太陽電池用電解液とこれを用いて作製した色素増感太陽電池。環状ホウ酸エステル化合物を添加することで、高い短絡電流密度、高耐久性を得ることができ、その結果、高い変換効率を得ることができる。
【選択図】図1
Description
さらに、ヨウ化リチウムを添加すると、酸化物半導体としてもっとも広範に用いられている酸化チタンがリチウムイオンと反応し、半導体電極の電気抵抗が増大してしまうため、長期的な安定性が著しく低下してしまうという致命的な問題点もあった。
しかしながら、該文献に開示されているホウ酸エステルは電解液への溶解性に乏しく、長時間の耐久性を満足するには至らなかった。
また、溶解させる電解液溶媒により粘度の最適値が異なるため限定はされないが、電解液の伝導率が高くなるように環状ホウ酸エステル化合物の粘度は低いほうが望ましく、例えば、10mPa・s以下、より好ましくは5mPa・s以下であることが望ましい。上述のホウ酸エステルの中でも、一般式(1)中、R1〜R3が全て、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、フェニル基およびプロピオニトリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基であるものが特に望ましい。
また、単独では室温で固体であっても、他の有機溶媒や酸化還元対と混合することで凝固点降下を起こし、使用範囲温度で液状であれば、単独では固体であっても構わない。
コバルト−ポリピリジル錯体を酸化還元対に用いた場合の含有量は、太陽電池として用いる際の入射光量などによって発生する電流量が異なるため最適な含有量は必ずしも一定ではないが、イオン導電性及び光エネルギー変換効率の観点から、2価の錯体が0.05mol〜0.5mol/L、3価の錯体が0.01mol〜0.1mol/Lが好ましい。
このようなドナー性の添加剤は従来公知の材料を用いることが可能であるが、一般的な溶媒であるメトキシプロピオニトリルやγ−ブチロラクトン、また、鎖状スルホンなど各種溶媒のドナー数は14から18程度であることが多く、また、酸化還元対として最も多用されているI−イオンのドナー数も14であることから、これらの溶媒や電解質よりも優位に高いドナー数を有する必要がある。具体的には、25以上のドナー数を有する、ピリジン類、より好ましくは4−t−ブチルピリジンなどのアルキルピリジン類、ピラジン類や、ピリミジン類、ピペリジン類などの含窒素6員環化合物、また、イミダゾール類、ピラゾール類、トリアゾール類、ピロリジン類などの含窒素5員環化合物、さらに、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、ピロリドンやN−メチルピロリドンなどの環状アミド、ジメチルスルホキシドやジフェニルスルホキシドなどのスルホキシド類、尿素などが挙げられる。これらの中で好ましい添加剤としては、4位がアルキル置換されたピリジン、2位および又は4位がアルキル置換されたイミダゾール、3位および又は5位がアルキル置換されたピラゾール、トリアゾール、N−メチルピロリドン、ジアルキルスルホキシド、ジアルキルアセトアミドが挙げられる。前記アルキル置換基としては、該ドナー化合物を添加した際に電解液の粘度が高くなりすぎないような分子サイズと、置換基導入によるドナー性向上効果との兼ね合いから、ピリジン類とスルホキシド類の場合が炭素数1から4のアルキル基、イミダゾール類、ピラゾール類、アセトアミドの場合は炭素数1または2のアルキル基であることが望ましい。
電極基体1を構成する透明基体2は、可視光を透過するものが使用でき、透明なガラスが好適に利用できる。また、ガラス表面を加工して入射光を散乱させるようにしたもの、半透明なすりガラス状のものも使用できる。また、ガラスに限らず、光を透過するものであればプラスチック板やプラスチックフィルム等も使用できる。
透明導電膜3としては、可視光を透過して、かつ導電性を有するものが使用でき、このような材料としては、例えば金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばフッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と略記する。)や、酸化インジウム、ITO、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、「ATO」と略記する。)、酸化亜鉛等が好適に用いることができる。
多孔質金属酸化物半導体4としては、従来公知のものが使用できる。即ち、Ti、Nb、Zn、Sn、Zr、Y、La、Taなどの遷移金属の酸化物の他、SrTiO3、CaTiO3などのペロブスカイト系酸化物などが挙げられる。特に限定はされないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等が挙げられ、特に二酸化チタン、さらにはアナターゼ型二酸化チタンが好適である。
増感色素層5としては、太陽光により励起されて前記金属酸化物半導体層4に電子注入できるものであればよく、一般的に色素増感太陽電池に用いられている色素を用いることができるが、変換効率を向上させるためには、その吸収スペクトルが太陽光スペクトルと広波長域で重なっていて、耐光性が高いことが望ましい。
半導体電極6に対向して、カソード電極である対極8が電解質層7およびスペーサー11を介して配置される。
太陽電池の内部抵抗を小さくするため対極の基体9は電気伝導度が高いことが望ましい。また、上記のように本発明では電解質中に酸化還元対としてハロゲン分子およびハロゲン化物を用いているため、該導電性の電極基体9には電解液に対する耐蝕性が高いことが望ましい。
導電性の電極基体9の表面に担持された触媒活性層10は、電解質層7中に含まれる酸化還元対として含まれるハロゲン化物やポリピリジルコバルト錯体の酸化体を還元体に十分な速度で還元することができれば、具体的には三ヨウ化物アニオン(I3 −)をヨウ化物アニオン(I−)に、もしくは三臭化物アニオン(Br3 −)を臭化物アニオン(Br−)に、ポリピリジルコバルト錯体の場合は3価のコバルト金属イオンを2価に、それぞれ還元することができれば特に限定はされず、既知の物質が使用できるが、例えば、遷移金属、導電性高分子材料、又は炭素材料等を好適に用いることができる。
その形状は、用いる触媒の種類により異なるため特には限定されない。上述の触媒材料のうち少なくとも1種類以上からなる触媒材料を、電極基体9の表面に設けて形成することができる。あるいは電極基体9を構成する材料の中へ上記触媒材料を組み込むことも可能である。
スペーサー11は、半導体電極と対極が接触して短絡することのないように電極間距離を制御・固定するものであり、電解液、または熱・光などにより劣化しない材質であれば特には限定されず既知の材料を任意の形状で用いることができる。材質としては例えば、ガラスやセラミック材料、フッ素系樹脂や光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。また、周辺シール部12中に、微小なガラスやセラミック材料などを混合するなどの方法で周辺シール部がスペーサーを兼ねることもできる。
以下のようにして電解液の調製および色素増感太陽電池の作製を行った。
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨウ化物(表中、「MPImI」と略記する。)0.7mol/L、ヨウ素(表中、「I2」と略記する。)0.05mol/L、2,4,6−トリメチルボロキシン0.1mol/Lの割合で、エチルイソプロピルスルホンに溶解して電解液を調製した。
透明導電膜付きの透明基体としてFTOガラス(日本板ガラス製25mm×50mm)を用い、その表面に酸化チタンペースト(日揮触媒化成工業株式会社製チタニアペースト PST−18NR)を、スクリーン印刷による印刷工程と90℃30分の乾燥工程とを3回繰り返して重ね塗りした後、大気雰囲気下500℃で60分間焼成することで15μm前後の厚さの多孔質酸化チタン層を形成させた。さらに、前記多孔質酸化チタン層の上に、酸化チタンペースト(日揮触媒化成工業株式会社製チタニアペースト PST−400C)をスクリーン印刷で重ね塗りした後、同様に焼成を行なって、20μm前後の厚さとした多孔質金属酸化物半導体層を完成させ、多孔質酸化チタン半導体電極とした。
増感色素として、一般にN719dyeと呼ばれるビス(4−カルボキシ−4’−テトラブチルアンモニウムカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体(Solaronix社製)を使用した。80℃にした前記多孔質酸化チタン半導体電極を、色素濃度0.5mmol/Lのアセトニトリル・t−ブチルアルコール(1:1)混合溶液中でゆっくりと振盪させながら遮光下48時間浸漬させた。その後脱水アセトニトリルにて余分な色素を洗浄してから風乾することで、太陽電池の光電極(アノード電極)として完成させた。
対極として、アンカー層として、スパッタ法によりガラス基板上にTi(膜厚50nm)を成膜したのち、該Ti層上にスパッタ法によりPt(膜厚50nm)を成膜させた白金対極(ジオマテック製)を使用した。
前記のように作製した光電極と、電気ドリルで0.6mmφの電解液注入孔を2個設けた対極を対向するよう設置し、両電極間に、スペーサー兼ガスケットとして厚み50μmのFEP樹脂シートと、スペーサーの外周に熱可塑性シート(Dupont製 bynel、膜厚50μm)を重ならないように挟み、熱圧着する事により両電極を接着した。次に、前記のように作製した電解液を電解液注入孔から毛管現象にて両電極間に含浸させ、電解液注入孔上に可塑性シートを挟んで1mm厚のガラス板を置き、再度加熱圧着することで封止を実施し、太陽電池素子を作製した。
2,4,6−トリメチルボロキシンに代えて2,4,6−トリフェニルボロキシンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
2,4,6−トリメチルボロキシンに代えて2,4,6−トリプロピオニトリルボロキシンを用いて電解液を調製した以外は実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
ドナー化合物として0.5mol/Lの4−t−ブチルピリジンも含有すること以外は実施例1と同様に電解液を調製し、太陽電池セルを作製した。
表2に示した通り電解液組成を変えて実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。なお、表1中、EiPSはエチルイソプロピルスルホン、EMSはエチルメチルスルホン、GBLはγ−ブチロラクトンを示す。
<電解液の調製>
1.0mol/Lのスピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムテトラフルオロボレート(表中、「SBP−BF4」と略記する。)、トリス(2,2’−ビピリジン)コバルトビス(テトラフルオロボレート)錯体(表中、「Co(bpy)3(BF4)2」と略記する。)0.22mol/L、トリス(2,2’−ビピリジン)コバルトトリス(テトラフルオロボレート)錯体(表中、「Co(bpy)3(BF4)3」と略記する。)0.033mol/L、2,4,6−トリメチルボロキシン0.1mol/Lの割合で、エチルイソプロピルスルホンに溶解して電解液を調製した。
<セルの組立て>
増感色素の吸着工程において、増感色素として、三菱製紙製D149色素を使用し、80℃にした前記多孔質酸化チタン半導体電極を、色素濃度0.5mmol/Lのアセトニトリル・t−ブチルアルコール(1:1)混合溶液中でゆっくりと振盪させながら遮光下15時間浸漬させ、その後脱水アセトニトリルにて余分な色素を洗浄してから風乾することで太陽電池の光電極(アノード電極)として完成させた以外は実施例1と同様にセルの組立てを行なった。
比較として環状ホウ酸エステル化合物を使用せず、表3に示した組成の電解液を調製し、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。
<太陽電池セルの光電変換特性の測定>
実施例1〜8および比較例1〜4で作製した色素増感太陽電池に対し、25℃にて、5mm角の窓をつけた光照射面積規定用マスクを装着させた上で、分光計器製ソーラシュミレータを用い、光量100mW/cm2、AM1.5の条件で光源の照射強度を調整した擬似太陽光を照射しながら、エーディーシー製直流電圧電流発生装置を用いて開放電圧(以下、「Voc」と略記する。)、短絡電流密度(以下、「Jsc」と略記する。)、形状因子(以下、「FF」と略記する。)、及び光電変換効率を評価した。「Voc」、「Jsc」、「FF」及び光電変換効率(以下、「Eff」と略記する。)の各測定値については、より大きい値が太陽電池セルの性能として好ましいことを表す。結果を表1、2、3に示す。
実施例8は、酸化還元対としてポリピリジルコバルト錯体を用いた場合であるが、この系においても環状ホウ酸エステル化合物の添加により公知(特開2013−020789号)の同じ系の太陽電池と比較し特性が向上していることが示された。
<太陽電池セルの耐久性の評価>
試験1にて用いたセルのうち、高い耐久性を有する溶媒を用いて作製された実施例1〜8、および比較例1〜4に対して、暗中85℃1500時間の耐熱性試験を実施し、試験後室温に戻した状態での変換効率を測定した。その結果を表2に示す。
2 透明基体
3 透明導電膜
4 多孔質金属酸化物半導体層
5 増感色素層
6 半導体電極
7 電解質層
8 対極
9 電極基体
10 触媒活性層
11 スペーサー
12 周縁シール部
Claims (11)
- 一般式(1)中、R1〜R3が全て、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、フェニル基およびプロピオニトリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用電解液。
- 環状ホウ酸エステル化合物の濃度が、0.01〜5.0mol/Lであることを特徴とする請求項1又は2に記載の色素増感太陽電池用電解液。
- さらにドナー数が25以上であるドナー化合物を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池用電解液。
- ドナー化合物が、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ヒドラジン、ピロリドン、スルホキシド、アミド、尿素の各化合物及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の色素増感太陽電池用電解液。
- 酸化還元性の電解質が、ハロゲンアニオンを対イオンとするハロゲン化合物およびハロゲン分子とを含有する電解質であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池用電解液。
- 前記ハロゲン化合物がヨウ化物又は臭化物で、ハロゲン分子がヨウ素又は臭素である請求項7に記載の色素増感太陽電池用電解液。
- 酸化還元性の電解質が、コバルト−ポリピリジル錯体を含有する電解質であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池用電解液。
- 導電層上に多孔質の金属酸化物半導体層を形成し、該金属酸化物半導体層に光増感作用を有する色素を吸着させてなる光電極と、前記光電極に対向配置される対極、及び前記光電極と対極間に形成され、電解液を含む電解質層とを有する色素増感太陽電池であって、前記電解液が請求項1から9のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池用電解液であることを特徴とする色素増感太陽電池。
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