JP2014189678A - 変性シス−1,4−ポリブタジエン、その製造方法およびゴム組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 遷移金属重合触媒の存在下、1,3−ブタジエンを重合してシス−1,4−ポリブタジエンを製造した直後に添加剤として有機ハロゲン化合物を添加することにより得られる(a)Z平均分子量と重量平均分子量の比(Mz/Mw)を重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)で割った値が0.93以上、かつ(b)ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が100以下の変性シス−1,4−ポリブタジエン。
【選択図】 なし
Description
しかし、昨今の環境・省エネルギーの観点から、加工性と低ロス性および耐摩耗性とのバランスを保持しつつ、更に全体の性能を上げる要望がなされている。
本願発明で言う変性シス−1,4−ポリブタジエンとは、遷移金属重合触媒の存在下、1,3−ブタジエンを重合してシス−1,4−ポリブタジエンを製造直後に有機ハロゲン化合物を添加して変性することにより得られるポリブタジエンのことである。
本発明の変性シス−1,4−ポリブタジエンのZ平均分子量と重量平均分子量の比(Mz/Mw)を重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)で割った値は0.93以上、好ましくは0.95以上であることが必要である。
Z平均分子量と重量平均分子量の比(Mz/Mw)を重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)で割った値が上記より小さいと加工性改良の効果が低下するので好ましくない。
(ムーニー粘度)
本発明の変性シス−1,4−ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、40〜100、好ましくは45〜95、より好ましくは、50〜85である。ムーニー粘度が上記範囲より大きいと加工性が著しく悪化し、上記範囲より小さいと低ロス性や耐摩耗性が低下するので好ましくない。
すなわち、Mz/MwをMw/Mnで割った値が大きくなるほど、超高分子量領域へ分子量分布が広がることとなり、その結果、中分子量成分の組成比を高くしながら超高分子量成分を適度に含有する分子量分布を得ることができる。
有機ハロゲン化合物を添加前のシス−1,4−ポリブタジエンは、有機ハロゲン化合物を添加投入する前の状態を指す、いわゆる原料ポリブタジエンのことである。
当該原料ポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は70以下が好ましく、更には60以下が好ましく、また更には60〜15がより好ましい。
ムーニー粘度が上記範囲以上になると加工性が悪化し、また上記範囲以下になると低ロス性や耐摩耗性が悪化するという点で好ましくない。
また、ポリブタジエン分子の分岐度を示す指標であるT−cp/MLは1.0以上が好ましく、更に1.3以上が好ましい。
上記範囲以下であると分岐度が大きくなりすぎるため、低ロス性の観点から好ましくない。
また、Mw/Mnは2.5以上が好ましい。分子量分布が上記範囲より狭くなると所望の加工性が得られなくなるという点で好ましくない。
ミクロ構造としては、シス−1,4含量が97%以上であることが好ましい。
上記範囲以下であると、耐摩耗性が悪化するため好ましくない。
前記原料ポリブタジエンゴムの重合触媒としては、コバルト系触媒を用いるのが好ましい。
特に、以下に示す該重合段階で使用する「アルミニウム化合物と水の比」および「ハロゲン含有有機アルミニウム化合物と有機アルミニウム化合物の比」は、大きな要因となる。
重合段階でこれら2つの要因を同時に満たすことが必須であり、一方の条件を満たしただけでは、最終生成する変性シス−1,4ポリブタジエンの低ロス性や耐摩耗性などの効果を創出することは困難である。
該コバルト系触媒組成物に用いられるハロゲン含有有機アルミニウム化合物と有機アルミニウム化合物を足した添加量は、添加する水に対して0.95〜1.30倍、中でも0.98〜1.25倍、特に1.0〜1.15倍であることが好ましい。この範囲より大きいと希望の物性が得られず、この範囲より小さいと加工性が悪くなる。
当該ハロゲン含有有機アルミニウム化合物と有機アルミニウム化合物を足した添加量と添加する水の割合は、とりわけポリブタジエンのリニアリティーを規定する上で重要である。
該コバルト系触媒組成物に用いられるハロゲン含有有機アルミニウム化合物は、有機アルミニウムに対して1〜6倍、特に2〜4倍が好ましい。この範囲より大きいとゲルが問題となり、小さいと重合活性が低下する。
重合溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のC4留分などのオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒や、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。また、1,3−ブタジエンそのものを重合溶媒としてもよい。
本願発明における有機ハロゲン化合物を添加前のムーニー粘度(ML1+4,100℃)が70以下のシス−1,4−ポリブタジエン(原料ポリブタジエン)を得るには、分子量調節剤の適用が必要となってくる。
分子量調節剤としては、重合時に公知の、例えば、シクロオクタジエン、アレンなどの非共役ジエン類、またはエチレン、プロピレン、ブテン−1などのα−オレフィン類を使用することができる。
特に好ましくはシクロオクタジエンであり、1,3−ブタジエン1モル当たり2〜30ミリモルが好ましく、特に好ましくは2〜18ミリモルである。この範囲以外の量を用いると、ムーニー粘度のずれの問題が生ずるため好ましくない。
有機ハロゲン化合物で変性していないシス−1,4ポリブタジエンは、Mz/MwとMw/Mnの比などで規定される所望の分子量分布を含有するポリマー構造を有していないため、加工性、低ロス性、耐摩耗性のバランスを改良する効果が得られない。
上記範囲よりも多いと生成するポリブタジエンのゲル化が起こり易くなり、少なすぎると本検討の効果が得られない。
当該方法で得られた変性シス−1,4ポリブタジエンは、ゴム材料の加工性を大きく改良しつつ引張強度、低ロス性および耐摩耗性の性能を向上させるゴム組成物の原料となる。
本発明により得られるポリブタジエンは、単独で、または他の合成ゴム若しくは天然ゴムとブレンドして配合し、必要ならばプロセス油で油展し、次いでカーボンブラックやシリカ等の充填剤、加硫剤、加硫促進剤その他の通常の配合剤を加えて加硫し、タイヤ・防振ゴム・ベルト・ホース・免震ゴムなどの工業用品や紳士靴、婦人靴、スポーツシューズなどの履物といった各種のゴム用途に使用される。その場合、ゴム成分中に少なくとも本発明のポリブタジエンを10重量%含有するように配合することが好ましい。
このように、本発明により得られたポリブタジエンを加硫し、さらにさまざまな添加物を配合して得られた配合物をゴム組成物と定義している。
前記ゴム組成物に含まれる他の合成ゴムとしては、加硫可能なゴムが好ましく、具体的には天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ハイシスポリブタジエンゴム、ローシスポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を挙げることができる。これらの中でも天然ゴム、イソプレンゴム、SBRが好ましい。
さらにSBRの中でも溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴム(S−SBR)が特に好ましい。これらのゴムは単独でも、二種以上組合せて用いても良い。
かかるS−SBRは公知であり、例えば日本ゼオン Nipol NS110R、旭化成 アサプレン 1204などの市販品を用いることができる。
他の添加剤成分であるシランカップリング剤としては、一般式R7nSiX4-nで表される有機珪素化合物で、R7はビニル基、アシル基、アリル基、アリルオキシ基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基、アルキル基、フェニル基、水素、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基などから選ばれる反応基を有する炭素数1〜20の有機基であり、Xは、クロル基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アミノ基などから選ばれる加水分解基であり、nは1〜3の整数を示す。
上記の範囲よりも少ないと、スコーチの原因となるために好ましくない。また、上記の範囲よりも多いと引張り特性、延びの悪化の原因となるため好ましくない。
JIS-K6300に従い、株式会社島津製作所製のムーニー粘度計(SMV-200)を使用して、100℃で1分予熱したのち、4分間測定してゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)として表示した。
JIS-K6300に従い、株式会社島津製作所製のムーニー粘度計(SMV-200)を使用して、100℃で1分予熱したのち、4分間測定して配合物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を得て、比較例5を100として指数表示した。指数が大きいほど加工性に優れる。
GABO社製EPLEXOR 100Nを用いて、温度50℃、周波数10Hz、動的歪み0.3%の条件でtanδを測定し、比較例5を100として指数表示した。指数が大きいほど低ロス性が良好である。
BS903に従い、ダンロップ・トリプソメーターを使用して室温で反発弾性を測定し、比較例5を100として指数表示した。指数が大きいほど低ロス性が良好である。
ランボーン摩耗指数は、JIS K6264に規定されている測定法に従って、スリップ率60%で測定し、比較例5を100として指数表示した。指数が大きいほど良好である。
容量5リットルのジャケット付き反応器に、1,3−ブタジエンを48.0重量%含有するシクロヘキサン−C4留分に混合した溶液(シクロヘキサン17.6重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を34.4重量%含有)を投入し、表1に示した条件で変性シス−1,4ポリブタジエンの連続重合を行った。所定時間の重合の後、重合停止剤を加えて反応を停止させ、常法に従って脱溶剤及び乾燥を行い、変性シス−1,4ポリブタジエンを得た。得られたポリブタジエンの物性を表2に示す。
さらに、前述のポリブタジエンに配合比(重量部)が以下のようになるようにしてゴム組成物を製造し、その物性を測定した。その結果を表3に示す。
なお、表3において、物性値はすべて比較例3を基準値100とした相対値で表示した。
市販溶液重合スチレンブタジエンゴム(s−SBR)を70重量部、
本願発明で得た変性シス−1,4ポリブタジエンを30重量部、
シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名ニップシールAQ)を75重量部、
シランカップリング剤(デグサ・ヒュルヌ製、商品名 Si69)6重量部、
オイル(サンセンオイル4240)を21.5重量部、
酸化亜鉛(堺化学工業 Sazex 1号)を3重量部、
ステアリン酸(花王ステアリン酸)を1重量部、
酸化防止剤(住友化学 アンチゲン6C)を1重量部、
加硫促進剤1(大内新興化学工業社製のノクセラーCZ)を1.7重量部、
加硫促進剤2(大内新興化学工業社製のノクセラーCZ)を2重量部、
硫黄(細井化学工業(株)製)を1.4重量部
を配合した。
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを45.7重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液1リットル(シクロヘキサン21.8重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を29.7重量%含有)とを仕込み、表1に示す条件でポリブタジエンを得た。その後、老化防止剤を添加して100℃で1時間真空乾燥した。得られたポリブタジエンの物性を表2に示す。また、ゴム組成物の物性を表3に示す。ゴム組成物の配合比は実施例1〜3と同様である。
ポリブタジエンに市販の宇部興産社製BR150Lを使用した。その物性を表2に示す。また、ゴム組成物の物性を表3に示す。ゴム組成物の配合比は実施例1〜3と同様である。
Claims (5)
- 遷移金属重合触媒の存在下、1,3−ブタジエンを重合してシス−1,4−ポリブタジエンを製造した直後に添加剤として有機ハロゲン化合物を添加することにより得られる(a)Z平均分子量と重量平均分子量の比(Mz/Mw)を重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)で割った値が0.93以上、かつ(b)ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が100以下の変性シス−1,4−ポリブタジエン。
- 該遷移金属重合触媒が(a)コバルトオクトエート、(b)R2 3−nAlXn(式中、R2は炭素数1〜10の炭化水素基、Xはハロゲンを示し、nは1〜2の数である。)で表されるハロゲン含有アルミニウム化合物、(c)R3 3Al(式中R3は炭素数1〜10の炭化水素基)および(d)水からなる触媒であることを特徴とする請求項1に記載の変性シス−1,4−ポリブタジエン。
- 該有機ハロゲン化合物が、t-ブチルクロライドであることを特徴とする請求項1乃至2に記載の変性シス−1,4−ポリブタジエン。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の変性シス−1,4−ポリブタジエンを用いることを特徴とするゴム組成物。
- 1,3−ブタジエンを重合してシス−1,4−ポリブタジエンを製造した直後に添加剤として有機ハロゲン化合物を添加することにより得られる(a)Z平均分子量と重量平均分子量の比(Mz/Mw)を重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)で割った値が0.93以上、かつ(b)ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が100以下の変性シス−1,4−ポリブタジエンの製造方法。
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