JP2014185367A - ねじり加工性に優れるステンレス鋼線とその製造方法、並びに、ステンレス鋼線材とその製造方法 - Google Patents

ねじり加工性に優れるステンレス鋼線とその製造方法、並びに、ステンレス鋼線材とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性に優れる高強度精密ばね製品の素材として、ねじり加工性に優れる廉価低Ni・高Mn系ステンレス鋼線を提供し、精密ばね加工時の耐割れ性を大幅に改善する。
【解決手段】重量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.10〜1.5%、Mn:5%超〜15%、Ni:1%以上5%未満、Cr:10.5〜20%、N:0.05〜0.35%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、(a)式のMd30値が−40〜10、(b)式のTW値が0〜60、引張強さが1600〜2100MPa、加工誘起マルテンサイト量が30vol.%未満、鋼線表層から10μm深さのMn濃度と鋼線断面中心部のMn濃度との差が2質量%以内、表層から0.05mm深さのビッカース硬さが鋼線直径の1/4部のビッカース硬さよりも25〜125Hv低いねじり加工性に優れる高Mn系高強度精密ばね用廉価ステンレス鋼線。
【選択図】なし

Description

本発明は、高Mn、低Ni系の廉価な素材に係わり、成分バランス,表面Mn濃度と伸線条件を制御することで優れたねじり加工性を付与したステンレス鋼線,線材とそれらの製造方法に関するものである。
従来、耐食性に優れる高強度精密コイルばねは、SUS304,SUS316を代表とするオーステナイト系ステンレス鋼線材,鋼線を素材として加工・成型されてきた。これら鋼線から、ねじり加工と曲げ加工を加えながら精密にばねに加工される。しかしながら、該ステンレス鋼は希少金属の高価なNiを多く含有しており、低Ni化による低コスト化の要求が強い。低Ni化の方策として、高Mn系ステンレス鋼が多く提案されてきた(例えば、特許文献1,2)。
しかしながら、Niを低減した高Mn系ステンレス鋼は、靱性が低いことに加え、熱間でスケールが生成し易く、表面に脱Mn層が形成されて表層のみオーステナイト安定度が低くなり、表層のみ加工誘起マルテンサイト変態が促進され、表層硬化して靱性が更に劣化する。このため、Niを低減した高Mn系ステンレス鋼は、鋼線からねじり加工により、割れ無く安定的に複雑なばねに成形が困難と言った課題があった。
一方、加工誘起マルテンサイトを利用したばね用の高強度の高Mn・低Ni系ステンレス鋼線が提案されている(特許文献3)が、前記の理由からねじり加工時の耐割れ性が不充分であり、精密ばね用としては、更なる改善が求められていた。
また、素材である線材の表面性状の均一化として、例えば、オーステナイト系ステンレス線材の直接熱処理法が提案されている(特許文献4)。しかし、特許文献4に記載の線材は、SUS304系の線材であって、高Mn系ステンレス鋼線材のばね加工性の改善についての知見はない。
従って、これまでの低Ni系・高Mn系の安価素材のステンレス鋼線材,鋼線は精密ばね用として幅広く使用されておらず、従来の素材では、複雑な精密ばね加工(ねじり加工)時の耐割れ性が不充分であった。
特開2011−47008号公報 特開昭53−106620号公報 特開2005−298932号公報 特開昭56−38429号公報
本発明の目的は、ねじり加工性に優れる廉価低Ni・高Mn系ステンレス鋼線を提供し、従来の低Ni・高Mn系材料のねじり加工時の耐割れ性を大幅に改善することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、低Ni・高Mn系廉価ステンレス鋼において、オーステナイト相の安定度と積層欠陥エネルギーにより成分をバランスさせ、且つ、鋼線表面と中心部とのMn濃度差と、伸線条件(連続伸線時のダイス温度,加工率)を規定して、表層の金属組織について、靱性を劣化させる加工誘起マルテンサイトを抑制し、靱性に優れる加工誘起変態双晶による高強度化を適度に利用することで、加工前の鋼線の断面中心部硬さに対する表層硬さを若干低くなるよう制御でき、ねじり加工時の耐割れ性が向上し精密ばねに安定的に加工できることを見出した。また、ステンレス鋼線材の段階から上記鋼線表層と鋼線断面中心部のMn濃度差を制御しておくことにより、本発明のステンレス鋼線を効率良く製造出来ることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.10〜1.5%、Mn:5%超〜15%、Ni:1%以上、5%未満、Cr:10.5〜20%、N:0.05〜0.35%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(a)式で表されるMd30値が−40〜10であり、下記(b)式で表されるTW値が0〜60であり、引張強さが1600〜2100MPa、加工誘起マルテンサイト量が30vol.%未満、鋼線表層から10μm深さのMn濃度と、鋼線断面中心部のMn濃度との差が2質量%以内であり、表層から0.05mm深さのビッカース硬さが鋼線直径の1/4部のビッカース硬さよりも25〜125Hv低いことを特徴とするねじり加工性に優れるステンレス鋼線。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn
−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ・・・(a)
TW=26+2Ni+410C+19Cu+9Mo−Cr−80N−13Si−Mn
・・・・・・(b)
但し、(a)式および(b)式中の元素記号は、当該元素の鋼中における含有質量%を意味する。また、(a)式および(b)式において当該元素を含有しない場合は0を代入する。
(2)更に質量%で、Cu:3.0%以下、Co:2.5%以下、Al:2.0%以下、B:0.012%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする前記(1)に記載のねじり加工性に優れるステンレス鋼線。
(3)更に質量%で、Mo:3.0%以下、W:2.5%以下、Sn:2.5%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)のねじり加工性に優れるステンレス鋼線。
(4)更に質量%で、Ti:1.0%以下、V:2.5%以下、Nb:2.5%以下、Ta:2.5%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか1項に記載のねじり加工性に優れるステンレス鋼線。
(5)更に質量%で、Ca:0.012%以下、Mg:0.012%以下、Zr:0.012%以下、REM:0.05%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のねじり加工性に優れるステンレス鋼線。
(6)前記(1)〜(5)の何れか1項に記載の成分組成を有し、下記(a)式で表されるMd30値が−40〜10であり、下記(b)式で表されるTW値が0〜60であり、且つ、鋼表層から10μm深さのMn濃度と、鋼線材断面中心部のMn濃度との差が2質量%以内であることを特徴とするステンレス鋼線材。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn
−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ・・・(a)
TW=26+2Ni+410C+19Cu+9Mo−Cr−80N−13Si−Mn
・・・・・・(b)
但し、(a)式および(b)式中の元素記号は、当該元素の鋼中における含有質量%を意味する。また、(a)式および(b)式において当該元素を含有しない場合は0を代入する。
(7)(1)〜(5)の何れか1項に記載の成分組成を有するビレットを1000〜1280℃で150分以内加熱し、加熱後の該ビレットを圧延終了温度950℃以上で線材圧延した後、水冷する、または、950〜1150℃で600s以下の単時間熱処理を施して水冷することを特徴とするステンレス鋼線材の製造方法。
(8)前記(6)に記載のステンレス鋼線材を、連続伸線機を用いて連続伸線する工程を有するステンレス鋼線の製造方法であって、前記連続伸線する工程は、当該連続伸線機に設置されている複数の伸線ダイスのうち、少なくとも第2番目〜第5番目の伸線ダイスの入り温度を10〜70℃に制御するとともに、総伸線率を50〜90%にすることを特徴とするねじり加工性に優れるステンレス鋼線の製造方法。
本発明によるステンレス鋼線は、高強度で耐食性に優れ、しかも、ねじり加工性に優れるため、精密な複雑ばね形状への加工時の耐割れ性を安定的に付与できる。そのため、耐食性に優れる高強度ばね製品を安価・大量に提供する効果を発揮する。
また、本発明のステンレス鋼線材の製造方法によれば、脱Mn層の生成に起因して伸線加工後の鋼線で硬質化する表層部をシェービング加工によって除去することなく本発明のステンレス鋼材および鋼線を得ることが可能となる。そのため、生産性が向上し、本発明のステンレス鋼線の経済的効果を更に高めることが出来る。
以下に、先ず、本発明の請求項1記載の限定理由について説明する。
Cは、伸線加工後に高強度を得るために、0.03%以上(以下は全て質量%)添加する。しかしながら、0.15%を超えてCを添加すると、粒界に粗大Cr炭化物が析出し、延靱性が低下して鋼線のねじり加工性を劣化させることから、上限を0.15%とする。C含有量の好ましい範囲は、0.06〜0.12%である。
Siは、脱酸を行い、脱酸生成物を少なくしてねじり加工性を確保するために0.10%以上添加する。しかしながら、1.5%を超えてSiを添加すると、その効果は飽和するばかりか製造性が悪くなり、また、鋼線のねじり加工性を劣化させるため、上限を1.5%にする。Si含有量の好ましい範囲は、0.30〜1.0%である。
Mnは、Niの代替元素として有効であり、鋼線のねじり加工性を劣化させる加工誘起マルテンサイトの生成を抑制し、高強度化に有効な加工誘起双晶を得るのに有効なため5%超にする。しかしながら、15%を超えてMnを添加すると、素材の靱性が低下して鋼線のねじり加工性を劣化させるため、上限を15%に限定する。Mn含有量の好ましい範囲は、8%超、13%以下である。
Niは、延靱性を確保して鋼線のねじり加工性を確保するため、1%以上添加する。しかしながら、Niを5.0%以上添加すると、本発明の低Ni化の特徴が損なわれる。そのため、Ni含有量の上限を5%未満にする。Ni含有量の好ましい範囲は、1.5〜4.5%である。
Crは、耐食性を確保するため、10.5%以上添加する。しかしながら、20%を超えてCrを添加すると、延靱性が劣化して鋼線のねじり加工性が劣化するため、上限を20%にする。Cr含有量の好ましい範囲は、14.5〜18.5%である。
Nは、伸線加工後に高強度を得るために、0.05%以上添加する。しかしながら、0.35%を超えてNを添加すると、粒界に粗大Cr窒化物が析出し、鋼線のねじり加工性を劣化させるばかりか、製鋼プロセスで窒素のブローホールが生成して製造性を大幅に劣化させる。そのため、N含有量の上限を0.35%とする。N含有量の好ましい範囲は、0.06〜0.19%である。
Md30,TW値は、伸線後の加工誘起マルテンサイト量,加工誘起変態双晶量と成分の関係をそれぞれ調査して得られた指標であり、高強度と鋼線のねじり加工性を安定的に確保するために制御する必要がある。
Md30値は、下記(a)式より求められる値であり、この値が−40未満の場合、オーステナイト相の安定度が増し、伸線加工では高強度化し難くなる。一方、Md30値が10を超えると、オーステナイト相が不安定となり、伸線加工で加工誘起マルテンサイト相が30体積%以上に生成し、鋼線のねじり加工性が劣化する。Md30値を−40〜10に限定することで、高強度でねじり加工性に優れたステンレス鋼線となる。Md30の好ましい範囲は、−30〜5である。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ・・・(a)
TW=26+2Ni+410C+19Cu+9Mo−Cr−80N−13Si−Mn
・・・・・・(b)
但し、(a)式および(b)式中の元素記号は、当該元素の鋼中における含有質量%を意味する。また、(a)式および(b)式において当該元素を含有しない場合は0を代入する。
上記(b)式で求められるTW値が0未満の場合、オーステナイト相の積層欠陥エネルギーが低くなり、広い伸線条件で加工誘起変態双晶が誘発し過ぎるため断面内硬さに対する表層の硬さが高くなり、鋼線のねじり加工性を安定的に確保できない。一方、TW値が60を超えると、オーステナイト相の積層欠陥エネルギーが大きくなり、伸線後の鋼線表層で加工誘起変態双晶が得難く、鋼線の強度が確保できない。TW値を0〜60に限定することで、高強度でねじり加工性に優れたステンレス鋼線となる。TW値の好ましい範囲は、10〜50である。
鋼線の引張強さについて、1600MPa未満では、高強度ばね製品として価値がない。一方、引張強さが2100MPaを超えると、鋼線のねじり加工性が安定せずに劣る。引張強さを1600〜2100MPaにすることで、高強度でねじり加工性に優れたステンレス鋼線となる。引張強さの好ましい範囲は、1700以上、2000MPa未満である。
鋼線の加工誘起マルテンサイトは、鋼線のねじり加工性を劣化させる。加工誘起マルテンサイト量を30vol.%未満に限定することで、ねじり加工性に優れたステンレス鋼線となる。加工誘起マルテンサイト量の好ましい範囲は、25vol.%以下である。
鋼線表層のMn濃度について、高Mn系ステンレス鋼は熱処理で脱Mn化が生じやすい。この脱Mn化は、表層から10μmまでの深さの部位で生じやすく、本明細書中ではこの脱Mn化された部位のことを脱Mn層と呼ぶ。表層に脱Mn層が生じると、表層部のみ加工誘起双晶変態が抑制されて、逆に加工誘起マルテンサイトが生成し易くなり、後述するように伸線加工条件を制御して若干低い表層硬さを得ることが困難となり、鋼線のねじり加工性が劣化する。
本発明のステンレス鋼線は、鋼線表層(表層から10μm深さの部位)のMn濃度と鋼線断面中心部のMn濃度との差が2%以内に限定されたものであり、鋼線製造時における加工誘起マルテンサイトの生成が抑制されたものであるので、優れたねじり加工性が得られる。なお、表層から10μm部を選択したのは、上述の通り、脱Mn化が表層から10μm以内の深さにおいて生じやすいためである。好ましくは、上記のMn濃度差は0.1〜1.0%である。表層の脱Mn層の形成は、線材の製造条件を制御する方法により制御できる。
本発明のステンレス鋼線は、高強度線材におけるねじり加工性を確保するために、加工誘起マルテンサイトの生成を抑制し、加工誘起変態双晶を導入して最表層硬さを断面内硬さよりも若干低くしたものである。本発明のステンレス鋼線は、鋼線表層(表層から0.05mm深さの部位)のビッカース硬さが、鋼線直径の1/4部のビッカース硬さよりも25〜125Hv軟化(低下)されたものである。上記のビッカース硬さの差が25Hv以上であるので、優れたねじり加工性が得られる。上記のビッカース硬さの差が125Hvを超えると鋼線断面内硬度のばらつきが大きく、逆に、鋼線のねじり加工性が劣化する。好ましい該ビッカース硬度差の範囲は、30〜100Hvである。なお、ビッカース硬度差は、先のMd30やTW値に起因した加工誘起変態や表層の脱Mn層濃度,伸線条件により制御する。
本発明のステンレス鋼線は、上述してきた元素以外は、Fe及び不可避的不純物からなる。
代表的な不可避的不純物としては、O,S,Pなどが挙げられ、通常、鉄鋼の製造プロセスで不可避的不純物として0.0001〜0.1%の範囲で混入する。
本発明のステンレス鋼線の任意添加元素について、請求項2〜請求項5で規定しており、以下で説明する。
本発明の請求項2記載の限定理由について説明する。
本発明のステンレス鋼線においては、更に質量%で、Cu:3.0%以下、Co:2.5%以下、Al:2.0%以下、B:0.012%以下の内、1種類以上を含有することができる。
Cuは、加工転位のすべり変形を促進して、鋼線のねじり加工性を顕著に向上させる。しかしながら、Cuは、3.0%を超えて含有すると、製品の強度が低下する。そのため、Cuは、必要に応じて3.0%以下の範囲で含有させる。Cu含有量の好ましい範囲は、0.1〜2.5%であり、更に好ましくは0.2〜2.0%である。
Coは、鋼線のねじり加工性を向上させる。しかしながら、2.5%を超えてCoを含有すると、その効果は飽和するばかりか、逆に鋼線のねじり加工性が劣化する。そのため、Coは、必要に応じて2.5%以下の範囲で含有させる。Co含有量の好ましい範囲は、0.05〜1.0%であり、更に好ましくは0.1〜0.8%である。
Bは、粒界強度を向上して、鋼線のねじり加工性を向上させる。しかしながら、0.012%を超えてBを含有すると、粗大なボライド生成により、逆に鋼線のねじり加工性が劣化する。そのため、Bは、必要に応じて0.012%以下の範囲で含有させる。B含有量の好ましい範囲は、0.0004〜0.010%であり、更に好ましくは0.001〜0.005%である。
Alは、脱酸を促進して介在物清浄度レベルを向上させ、鋼線のねじり加工性を向上させる。しかしながら、2.0%を超えてAlを含有すると、その効果は飽和するばかりか、材料自体の靱性が劣化してねじり加工性が劣化する。そのため、Alは必要に応じて2.0%以下の範囲で含有させる。Al含有量の好ましい範囲は、0.003〜1.0%であり、更に好ましくは0.005〜0.1%である。
次に、本発明の請求項3記載の限定理由について説明する。
本発明のステンレス鋼線においては、更に質量%で、Mo:3.0%以下、W:2.5%以下、Sn:2.5%以下の内、1種類以上を含有することができる。
Moは、耐食性を向上させる。しかしながら、3.0%を超えてMoを含有すると、その効果は飽和するばかりか、逆に鋼線のねじり加工性が劣化する。そのため、必要に応じて3.0%以下の範囲でMoを含有させる。Mo含有量の好ましい範囲は、0.1〜2.7%であり、更に好ましくは0.5超、2.5%以下である。
Wは、耐食性を向上させる。しかしながら、2.5%を超えてWを含有すると、その効果は飽和するばかりか、逆に鋼線のねじり加工性が劣化する。そのため、必要に応じてWを2.5%以下の範囲で含有させる。W含有量の好ましい範囲は、0.05〜2.0%であり、更に好ましくは0.1〜1.5%以下である。
Snは、耐食性を向上させる。しかしながら、2.5%を超えてSnを含有すると、その効果は飽和するばかりか、逆に鋼線のねじり加工性が劣化する。そのため、必要に応じてSnを2.5%以下の範囲で含有させる。Sn含有量の好ましい範囲は、0.01〜1.0%であり、更に好ましくは0.05〜0.2%以下である。
次に、本発明の請求項4記載の限定理由について説明する。
本発明のステンレス鋼線においては、炭窒化物を形成して結晶粒径を微細にして鋼線のねじり加工性を改善するため、必要に応じて、Ti:1.0%以下,V:2.5%以下,Nb:2.5%以下,Ta:2.5%以下の内、1種類以上を含有させる。しかしながら、これらの元素を、上限を超えて含有させると粗大介在物が生成し、鋼線のねじり加工性が低下する。好ましい各元素の範囲は、Ti:0.03〜0.7%、V:0.04〜1.5%、Nb:0.04〜1.5%、Ta:0.04〜1.5%であり、更に好ましくは、Ti:0.05〜0.5%,V:0.08〜0.9%,Nb:0.08〜0.9%,Ta:0.08〜0.9%である。
次に、本発明の請求項5記載の限定理由について説明する。
本発明のステンレス鋼線においては、脱酸のため、必要に応じて、Ca:0.012%以下,Mg:0.012%以下,Zr:0.012%以下,REM:0.05%以下の内、1種以上を含有させる。しかしながら、これらの元素を、各上限を超えて含有すると粗大介在物が生成して鋼線のねじり加工性が低下する。好ましい範囲は、Ca:0.0004〜0.010%、Mg:0.0004〜0.010%、Zr:0.0004〜0.010%、REM:0.0004〜0.05%であり、更に好ましくはCa:0.001〜0.005%,Mg:0.001〜0.005%,Zr:0.001〜0.005%,REM:0.001〜0.05%である。
次に、本発明の請求項6記載の限定理由について説明する。
本発明のステンレス鋼線材は、上記の何れかの成分組成を有し、上記(a)式で表されるMd30値が−40〜10であり、上記(b)式で表されるTW値が0〜60であり、且つ、鋼表層から10μm深さのMn濃度と、鋼線材断面中心部のMn濃度との差が2質量%以内であるものである。
本発明のステンレス鋼線材は、上記の成分組成を有し、かつ上記のMn濃度差を有するものであるので、鋼線表層から10μm深さのMn濃度と、鋼線断面中心部のMn濃度との差が2質量%以内である本発明のステンレス鋼線の素材として好適に用いることができる。ステンレス鋼線材の上記のMn濃度差は、好ましくは0.1〜1.0%である。
なお、線材の段階で表層の脱Mn化が大きい時は、シェービング加工(皮剥き)により脱Mn層を除去することも有効である。しかし、生産性およびコストの点からシェービング加工を行わないことが好ましい。
次に、本発明の請求項7記載の限定理由について説明する。
本発明のステンレス鋼線材の製造方法では、上記の何れかの成分組成を有するビレットを1000〜1280℃で150分以内加熱する。線材圧延用のビレット加熱条件について、1000℃未満では線材圧延時に割れが生じ、1280℃を超えると線材表層の脱Mn層が発達し、これを素材として用いた鋼線においても表層脱Mn層が残存し、鋼線のねじり加工性を劣化させる。また、ビレットの加熱時間(加熱炉での在炉時間)が150分を超えても鋼線において表層脱Mn層が残存する。ビレットの加熱時間は30〜120分が好ましい。
また、線材の表層の脱Mn層の生成を抑制するには、加熱後の該ビレットを圧延終了温度950℃以上で線材圧延した後、水冷する、もしくは950〜1150℃で600s以下の短時間熱処理後に水冷する。
線材圧延直後、または、短時間熱処理直後に水冷しないと炭窒化物が生成し、鋼線のねじり加工性が劣化し易い。
短時間熱処理の方法として、線材圧延後すぐに温度が下がらないままで熱処理を施して水冷するインライン熱処理がある。また、短時間熱処理は、溶体化処理として行うことができる。
短時間熱処理は、950〜1150℃で600s以下とする。好ましい短時間熱処理範囲は、1000〜1100℃,10〜300sである。950℃未満の短時間熱処理では、炭窒化物が生成し、鋼線のねじり加工性が劣化し易い。一方、1150℃超の温度や600sを超える時間で短時間熱処理を行うと、表層の脱Mn層が発達し、鋼線の表層脱Mn層に影響を及ぼす。例えば、線材圧延後にオフライン熱処理を施す場合には、線材の急速加熱が困難であるため600s以下の熱処理時間とすることが難しく、表層の脱Mn層が発達し、鋼線の表層脱Mn層に影響を及ぼす恐れがある。
本発明のステンレス鋼線材の製造方法は、上記の何れかの成分組成を有するビレットを1000〜1280℃で150分以内加熱し、加熱後の該ビレットを圧延終了温度950℃以上で線材圧延した後、水冷する、または、950〜1150℃で600s以下の短時間の熱処理を施して水冷する方法であるので、製造工程において脱Mn層が生じにくく、容易に上記のMn濃度差を有する本発明のステンレス鋼線材が得られる。
本発明のステンレス鋼線材を製造する方法は、上述した製造方法に限定するものではなく、例えば、上記の何れかの成分組成を有するビレットを1000〜1280℃で150分以内加熱し、加熱後の該ビレットを線材圧延し、冷却した後、シェービング加工を行う方法であってもよい。
この場合、線材圧延し、冷却した後の線材は、表層に脱Mn層が発達しているため、鋼表層が硬質化したものとなっている。したがって、圧延し、冷却した後の線材は、鋼表層と鋼線材断面中心部とのMn濃度の差が大きく、鋼表層から10μm深さのMn濃度と、鋼線材断面中心部のMn濃度との差が2質量%以内のものとならない。このため、上記の製造方法では、線材圧延し、冷却した後、シェービング加工を行うことで、硬質化した表層部を除去し、鋼表層から10μm深さのMn濃度と、鋼線材断面中心部のMn濃度との差を2質量%以内としている。
次に、本発明の請求項8記載の限定理由について説明する。
本発明のステンレス鋼線を安価に得るには、連続伸線機を用いて上記のステンレス鋼線材を連続伸線する工程を行う。連続伸線する工程では、当該連続伸線機に設置されている複数の伸線ダイスのうち、少なくとも第2番目〜第5番目の伸線ダイスの入り温度を10〜70℃に制御するとともに、総伸線率を50〜90%にする。このような連続伸線工程を行うことにより、加工誘起変態双晶が促進され、加工誘起マルテンサイト量が抑制された金属組織を有するねじり加工性に優れた本発明のステンレス鋼線が得られる。
通常、連続伸線機においては、後段の伸線ダイスの入り温度ほど、加工発熱により温度が高くなり、100℃を超えることもある。本発明においては、連続伸線する工程において、安定的にステンレス鋼線の組織を制御するために、連続伸線機の中間の伸線ダイスの入り側の温度を制御するとともに、総伸線率を規定する。すなわち、本発明成分の鋼線材を連続伸線する場合、最初の伸線ダイスの入り温度や最終の伸線ダイスの入り温度が、多少変化しても、中間の少なくとも第2番目〜第5番目の伸線ダイスの入りの平均温度を10〜70℃にするとともに、総伸線率を規定することで、ステンレス鋼線の金属組織を制御でき、安定的に高強度を得られ、また、鋼線表層を適度に軟質化出来る。
しかしながら、連続伸線工程における冷却を強化し過ぎて、第2番目〜第5番目の伸線ダイス入りの平均温度が10℃未満になると、加工誘起マルテンサイト量が30vol.%を超えて、鋼線のねじり加工性が劣化する。一方、連続伸線工程における冷却が足りず、第2番目〜第5番目の伸線ダイス入りの平均温度が70℃を超える場合、表層の加工誘起変態双晶が抑制されて、鋼線断面内硬度差が大きくなり、ばね加工時の耐割れ性が劣化する。好ましい第2番目〜第5番目の伸線ダイス入りの平均温度範囲は、20〜50℃である。
また、本発明においては、連続伸線機と単釜伸線機とを組み合わせて上記のステンレス鋼線材を連続伸線することも可能である。この場合も連続伸線する工程において、第2番目〜第5番目の伸線ダイス入りの平均温度を10〜70℃に制御する。
本発明のステンレス鋼線の高い強度は、連続伸線時の加工硬化により付与される。連続伸線工程における総伸線率が50%未満では、1600MPa以上の高強度が得られない。一方、総伸線率が90%を超えると、鋼線の断面内硬度差を制御しても、強加工によるマトリックス自体の靱性が低下するため、鋼線のねじり加工性が劣化する。そのため、総伸線率を50〜90%に限定し、好ましくは60〜80%とする。
以下に本発明の実施例について説明する。
表1および表2に実施例の鋼の化学組成を示す。
Figure 2014185367
Figure 2014185367
これらの化学組成の鋼は、ステンレス鋼の安価溶製プロセスであるAOD溶製を想定し、100kgの真空溶解炉にて溶解し、φ180mmの鋳片に鋳造し、その鋳片(ビレット)を、種々の条件にて加熱した。続いて、加熱後のビレットをφ5.5mmまで熱間の線材圧延を行い、1050℃で熱間圧延を終了し、水冷、または、連続して、溶体化処理として種々の条件でインライン熱処理(短時間熱処理)を実施して水冷し、酸洗を行い線材とした。一部の熱間圧延後の水冷材について、1100℃,100分のオフライン熱処理を施した。また、一部の線材については、SF(皮剥加工)で表層を切削加工により除去した。
その後、7つの伸線ダイスを備える連続伸線機にて、室内温度と伸線巻取りドラムの冷却条件を変化させることで、種々の温度にて、φ4.0〜1.5mmまでの伸線加工を施し、高強度ステンレス鋼線とした。各ダイスの入り直前の温度についてレーザー温度計で測定した。表3および表4にビレット加熱条件とインライン熱処理条件と連続伸線条件を示す。
Figure 2014185367
Figure 2014185367
そして、線材製品の表層の脱Mn層(線材断面のMn濃度差)および鋼線製品の引張強さ,加工誘起マルテンサイト量,断面内硬さ(鋼線断面内の硬度差),表層脱Mn層の濃度(鋼線断面のMn濃度差),金属組織,ねじり加工性を評価した。その評価結果を表5および表6に示す。
Figure 2014185367
Figure 2014185367
鋼線の引張強さは、JIS Z 2241の引張試験での引張強さと破断絞りにて評価した。
本発明例の鋼線の製品では、全て1600〜2100MPaあり、強度特性に優れていた。
鋼線の加工誘起マルテンサイト(α‘)量は、直流磁束計にて10000(Oe)の磁場を付与した時の飽和磁化値を測定し、以下の(1)〜(3)式にて求めた。
α’量(vol.%)=σs/σs(bcc)×100 ・・・・(1)
σs;飽和磁化値(T),σs(bcc);100%α‘変態した時の飽和磁化値(計算値)
σs(bcc)=2.14−0.030Creq ・・・・(2)
Creq=Cr+1.8Si+Mo+0.5Ni+0.9Mn+3.6(C+N)
+1.25P+2.91S+1.85Al+1.07V ・・・・(3)
但し、(3)式中の元素記号は、当該元素の鋼中における含有質量%を意味する。また、(3)式において当該元素を含有しない場合は0を代入する。
本発明の鋼線の製品では、マルテンサイト量は30体積%未満であった。
鋼線の断面内硬さ測定について、鋼線製品を横断面に埋め込み研磨し、JIS Z 2244のマイクロビッカース硬さ試験により100gの荷重(HV0.01)で表層0.05mm部および鋼線直径の1/4部の硬さを測定した。各サンプルで4点測定し、平均値を記載した。
本発明の鋼線製品では、鋼線表層のビッカース硬さが鋼線直径の1/4部のビッカース硬さよりも25〜125Hv低かった。
線材および鋼線の表層の脱Mn層の濃度測定について、鋼線製品を横断面に埋め込み研磨し、通常のEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)のWDS(波長分散型)の分光器にて、表層10μmと鋼線中心部のMn濃度を4点ずつ定量評価し、その濃度差の平均値を記載した。
本発明の線材および鋼線製品では、表層から10μm部と鋼線断面中心部とのMn濃度差は2%(質量%)以内であった。
鋼線の金属組織は、鋼線から薄膜サンプルを採取し、通常の透過型電子顕微鏡により1万倍の倍率にて10視野ずつの組織観察とその回折像(ディフラクション パターン)の解析から加工誘起変態双晶を評価した。加工誘起変態双晶が観察される場合を○、観察されない場合を×とした。
本発明の鋼線製品において、全て加工誘起変態双晶が観察され、○であった。
鋼線のねじり加工性は、線の直径の100倍の距離で鋼線の両端を掴んで固定し、5rpmの回転速度で加工し、ねじれ回数と長手方向の縦割れの発生なくねじり破断するか否かで評価した。縦割れが生成する場合、×として評価した。
本発明の鋼線製品においては、縦割れすることなく、5回以上のねじり回数を示し、優れたねじり加工性を示した。
一方、比較例No.52〜102では、成分または製造条件が本発明範囲から外れており、ねじり特性,強度特性等の特性に劣っていた。
比較例No.52、61ではビレット加熱温度が低いため、圧延できなかった。
比較例No.53、62ではビレット加熱温度高いが低いため、また比較例No.54、63ではビレット加熱時間が長いため、線材断面のMn濃度差、鋼線断面内の硬度差,鋼線断面のMn濃度差が大きく、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.55、64ではインライン熱処理温度が低いため、また、比較例No.58、67ではダイス入りの平均温度が低いため、加工誘起マルテンサイト量が多く、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.56、65ではインライン熱処理温度が高いため、また、比較例No.57、66ではインライン熱処理時間が長いため、線材断面のMn濃度差、鋼線断面内の硬度差,鋼線断面のMn濃度差が大きく、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.59、68ではダイス入りの平均温度が高いため、鋼線の引張強さが不十分であり、鋼線断面内の硬度差が大きく、加工誘起変態双晶が観察されず、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.69では総減面率が低いため、鋼線の引張強さが不十分であった。
比較例No.70では総減面率が高いため、鋼線の引張強さが強すぎ、割れが発生した。
比較例No.60、71では水冷後にオフライン熱処理を行ったため、線材断面のMn濃度差、鋼線断面内の硬度差,鋼線断面のMn濃度差が大きく、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.72〜102では化学組成が本発明外である。
比較例No.72ではMd30が小さいため、鋼線の引張強さが不十分であった。
比較例No.73ではMd30が大きいため、加工誘起マルテンサイト量が多く、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.74ではTWが小さいため、鋼線断面内の硬度差が大きく、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.75ではTWが大きいため、鋼線の引張強さが不十分であり、加工誘起変態双晶が観察されなかった。
比較例No.76ではC含有量が少ないため、鋼線の引張強さが不十分であった。
比較例No.77ではC含有量が多いため、鋼線の引張強さが強すぎ、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.78ではSi含有量が少ないため、比較例No.79ではSi含有量が多いため、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.80ではMn含有量が少ないため、加工誘起マルテンサイト量が多く、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.81ではMn含有量が多いため、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.82ではNi含有量が少ないため、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.83ではNi含有量が多いため、高コストである。
比較例No.84ではCr含有量が少ないため、耐食性不良となった。
比較例No.85ではCr含有量が多いため、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
比較例No.86ではN含有量が少ないため、鋼線の引張強さが不十分であった。
比較例No.87ではN含有量が多いため、ブローボールが生成し、圧延できなかった。
比較例No.88ではCu含有量が多いため、鋼線の引張強さが不十分であった。
比較例No.89〜102では、それぞれCo、Al、B、Mo、W、Sn、Ti、V、Nb、Ta、Ca、Mg、Zr、REMの各含有量が多いため、ねじれ回数が5回未満となり割れが発生した。
以上の各実施例から明らかなように、本発明により、耐食性,ねじり加工性に優れる廉価な低Ni・高Mn系の高強度ステンレス鋼線材、鋼線を安価に製造でき、複雑形状のばねを割れ無く、精度よく成形可能であり、耐久性に優れる高強度複雑形状の精密ばね製品を安価に提供することができ、産業上極めて有用である。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.15%、
    Si:0.10〜1.5%、
    Mn:5%超〜15%、
    Ni:1%以上、5%未満、
    Cr:10.5〜20%、
    N:0.05〜0.35%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
    下記(a)式で表されるMd30値が−40〜10であり、
    下記(b)式で表されるTW値が0〜60であり、
    引張強さが1600〜2100MPa、加工誘起マルテンサイト量が30vol.%未満、鋼線表層から10μm深さのMn濃度と、鋼線断面中心部のMn濃度との差が2質量%以内であり、表層から0.05mm深さのビッカース硬さが鋼線直径の1/4部のビッカース硬さよりも25〜125Hv低いことを特徴とするねじり加工性に優れるステンレス鋼線。
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn
    −29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ・・・・(a)
    TW=26+2Ni+410C+19Cu+9Mo−Cr−80N−13Si−Mn
    ・・・・・・(b)
    但し、(a)式および(b)式中の元素記号は、当該元素の鋼中における含有質量%を意味する。
  2. 更に質量%で、
    Cu:3.0%以下、
    Co:2.5%以下、
    Al:2.0%以下、
    B:0.012%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のねじり加工性に優れるステンレス鋼線。
  3. 更に質量%で、
    Mo:3.0%以下、
    W:2.5%以下、
    Sn:2.5%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載のねじり加工性に優れるステンレス鋼線。
  4. 更に質量%で、
    Ti:1.0%以下、
    V:2.5%以下、
    Nb:2.5%以下、
    Ta:2.5%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のねじり加工性に優れるステンレス鋼線。
  5. 更に質量%で、
    Ca:0.012%以下、
    Mg:0.012%以下、
    Zr:0.012%以下、
    REM:0.05%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のねじり加工性に優れるステンレス鋼線。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の成分組成を有し、
    下記(a)式で表されるMd30値が−40〜10であり、
    下記(b)式で表されるTW値が0〜60であり、
    且つ、鋼表層から10μm深さのMn濃度と、鋼線材断面中心部のMn濃度との差が2質量%以内であることを特徴とするステンレス鋼線材。
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn
    −29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ・・・・(a)
    TW=26+2Ni+410C+19Cu+9Mo−Cr−80N−13Si−Mn
    ・・・・・・(b)
    但し、(a)式および(b)式中の元素記号は、当該元素の鋼中における含有質量%を意味する。
  7. 請求項1〜5の何れか1項に記載の成分組成を有するビレットを1000〜1280℃で150分以内加熱し、
    加熱後の該ビレットを圧延終了温度950℃以上で線材圧延した後、水冷する、または、950〜1150℃で600s以下の短時間熱処理を施して水冷することを特徴とするステンレス鋼線材の製造方法。
  8. 請求項6に記載のステンレス鋼線材を、連続伸線機を用いて連続伸線する工程を有するステンレス鋼線の製造方法であって、
    前記連続伸線する工程は、当該連続伸線機に設置されている複数の伸線ダイスのうち、少なくとも第2番目〜第5番目の伸線ダイスの入り温度を10〜70℃に制御するとともに、総伸線率を50〜90%にすることを特徴とするねじり加工性に優れるステンレス鋼線の製造方法。
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