JP2014185247A - 難燃性黒色ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 ポリエステルフィルムが本来持っている外観、透明性、機械的性質、化学的性質等を一切損なうことなく、難燃性を付与するだけではなく、製膜安定性および隠蔽性をも達成し得たフィルムを容易に提供することにより、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレットなどの端末のバッテリー部材や回路基盤、あるいはその周辺に用いられるラベル用やテープ用ポリエステルフィルムとして活用する。
【解決手段】 有機リン系の難燃性化合物、黒色顔料成分、および架橋剤を含有する原料から、溶融押出法によって製造されることを特徴とする難燃性ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高い製膜安定性および隠蔽性を実現した難燃性ポリエステルフィルムに関するものである。より詳しくは、本発明は、配向ポリエステルフィルムが持つ外観、透明性、機械的強度、熱的性質、電気的性質、高次加工性などの特徴を損なうことなく、難燃性および製膜安定性に加えて隠蔽性を達成した黒色フィルムに関するものである。
二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、ガスバリア性、耐薬品性などに優れ、包装材料、電気絶縁材料、金属蒸着材料、製版材料、磁気記録材料、表示材料、転写材料、窓貼り材料など多くの用途で使用されている。
近年のパーソナルコンピュータや携帯電話の小型化ならびに高性能化に伴う発熱増大に伴い、それらの装置のバッテリーに用いられるラベル用ポリエステルフィルムや外装用ポリエステルフィルムには、小型化の観点からの薄膜化の要求、そして発熱由来の火災予防の観点からの、難燃性および耐熱を要する構造材としての有用な機械物性および耐熱性の要求が強まっている。一般的に、難燃性の指標として、米国アンダーライターズラボラトリーズ(UNDERWRITERS LABORATORIES)社規格のUL94の認定が使用される場合が多い。
ポリエステルに難燃性を付与できる難燃性化合物としては、有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物などのハロゲン含有化合物が、難燃効果が高いことで知られている。しかし、ハロゲン含有の難燃性化合物を添加した樹脂は、加工時や燃焼時に有毒ガスを発生することが問題視されている。特に、臭素含有の難燃性化合物においては、成形加工時に臭化水素ガスが発生することや、燃焼時にダイオキシン類似ガスが発生することが指摘されている。そのため、近年ハロゲンを含まない難燃性化合物を用いることが強く要望されている。
また、その他の難燃性化合物として、水酸化マグネシウムに代表される無機化合物、赤リンに代表される無機リン化合物、リン酸エステルやホスホン酸化合物およびホスフィン酸化合物などの有機リン化合物が知られている。これらのうち、無機化合物、無機リン化合物などの無機系難燃性化合物は、ハロゲン系難燃性化合物のような毒性はないものの、樹脂との相溶性に乏しく、また樹脂の透明性を著しく損なう場合がある。この観点から、難燃性化合物として、有機リン系の化合物が注目されている。
ポリエステルフィルムの難燃化技術として例えば特許文献1、特許文献2などに開示されているように、有機リン系化合物を添加混合または共重合溶融押出成形する方法が提案されている。
その中でも、ポリエステル重合時に難燃性化合物を添加共重合させる方法(共重合法)が、その耐ブリードアウト性から、工業的価値の高い方法として知られている。このため、難燃性を付与する目的で有機リン系化合物をポリエステルに共重合する方法が多く提案されている。例えば、ポリエステルに、有機リン系化合物としてリン酸エステルを共重合する方法(特許文献3)、ホスホン酸を共重合する方法(特許文献4)、特殊なエステル形成性官能基を有するリン化合物を含有させる方法(特許文献5)、カルボキシホスフィン酸を共重合する方法(特許文献6)、ホスフィンオキシド誘導体を共重合する方法(特許文献7)などが開示されている。
しかし、ポリエステル重合時にリン化合物を共重合したものは、融点(T)が低下するため、機械的物性および耐熱性が悪化するといった欠点がある。これは、ポリエステル鎖中に、より軟化点の低いリン化合物が介入している構造であるためと考えられる。
また、リン酸エステルの場合では、その化合物中のP−O結合の結合エネルギーが小さいことに起因すると考えられる、成形加工時の主鎖切断に伴う自己触媒作用により、分子量低下が起きるといった欠点も生じる。すなわち、より高い難燃性の発現のためにポリエステル中のリン化合物の共重合量を増やせば、それだけ機械的物性および耐熱性は悪くなることとなる。このことから、難燃性と耐熱性、機械的物性の両立は難しいと考えられる。
以上の問題を鑑み、特許文献8において、難燃性化合物を共重合させず、一定以上の平均分子量を持つ有機リン系オリゴマーを難燃性化合物として添加することで、高い融点を維持し、耐ブリードアウト性と機械的物性を両立させた難燃化ポリエステルフィルムが提案されている。
しかし、上述の特許文献8で用いられている難燃性化合物は、化合物構成単位が連続したオリゴマーであるために自身のIV(Intrinsi Viscosity=固有粘度)が低く、また、ポリエステルとの相溶性が良くないため、ポリエステルフィルム原料中に当該難燃性化合物を混合して溶融押出法にて製膜する際に、より連続かつ安定した製膜の達成が難しくなることが懸念されている。
また、特にフィルムがバッテリーのケースなどの外装用途に用いられる場合、難燃性に加えて隠蔽性が要求される場合がある。
透明のフィルムに隠蔽性を付与する方法としては、フィルムの片面、あるいは両面にインキを塗布する方法や、隠蔽性のあるフィルムを貼り合わせる方法が考えられる。しかし、一度製膜したフィルムに後から何らかの加工を行うことは、フィルムあるいはその加工品の難燃性を低下させる恐れがあるだけでなく、工程が増えるためにコストの上昇や歩留まりの低下を招く恐れがあり、好ましくない。そのため、フィルム単独で難燃性と隠蔽性を共に実現することが望ましい。
特公昭51−19858号公報 特公昭55−41610号公報 特公昭49−22958号公報 特開昭59−91122号公報 特公昭36−20771号公報 特公昭53−13479号公報 特開平1−40521号公報 特開2012−184399号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その解決課題は、配向ポリエステルフィルムが本来持っている外観、透明性、機械的性質、化学的性質を損なうことなく、難燃性および製膜安定性に加えて隠蔽性を達成した黒色フィルムを提供することである。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、難燃性化合物に加え、黒色顔料および架橋剤を原料に添加して製膜することで、高い製膜安定性と難燃性に加えて隠蔽性をも有する黒色ポリエステルフィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、有機リン系の難燃性化合物、黒色顔料成分、および架橋剤を含有する原料から、溶融押出法によって製造されることを特徴とする難燃性ポリエステルフィルムに存する。
本発明によれば、配向ポリエステルフィルムが本来持っている外観、透明性、熱的性質などの特徴を損なうことなく、難燃性と隠蔽性の付与およびフィルムの製膜安定性の保持を達成した黒色フィルムを提供することができる。当該フィルムは、パーソナルコンピュータやスマートフォンなどのモバイルデバイスのバッテリーに用いられるラベル用ポリエステルフィルム、外装用ポリエステルフィルムなどとして好適に用いることができ、本発明の工業的価値は高い。
本発明でいうポリエステルフィルムとは、口金から溶融押出されたものを延伸後、必要に応じて熱固定したものを指す。以下、ポリエステルフィルムとして単層のフィルムについて説明するが、本発明においてポリエステルフィルムは、その目的を満たす限り、2層、あるいはそれ以上の多層であってもよい。
本発明において、フィルムの各層を構成する重合体は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとグリコールを主たる出発原料として得られるポリエステルを主とするものであり、繰り返し構造単位の60%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位を有するポリエステルを指す。そして、上記の範囲を逸脱しない条件であれば、他の第3成分を含有していてもよい。
芳香族ジカルボン酸成分の例としては、テレフタル酸およびテレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えばイソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えばp−オキシエトキシ安息香酸など)などを用いることができる。特に、テレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルを用いることが好ましい。
グリコール成分の例としては、エチレングリコール以外に、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどの1種または2種以上を用いることができる。特に、エチレングリコールを用いることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル組成物のIV[dl・g−1]は、通常0.52〜0.75、好ましくは0.55〜0.70、さらに好ましくは0.58〜0.67である。IV値が0.52未満では、架橋剤を添加してもIVが上昇していない、あるいはむしろ下がっていることを意味しており、製膜安定性が悪化するだけでなく、架橋剤が単なる不純物として働き、難燃ポリエステルフィルムが本来持っている耐熱性、機械的強度などが低下する恐れがある。IV値が0.75を超えると、ポリエステルフィルム製造時の押出工程での負荷が大きくなりすぎる傾向があり、やはり生産性が低下する恐れがある。さらに、IVが高すぎる場合、アンダーライターズラボラトリーズ社発行のプラスチック材料の燃焼性試験規格UL94に基づくV試験において、V−1以上が取得しにくくなり、同じくUL94に基づくVTM試験においては、VTM−1以上が取得しにくくなることがある。
本発明で難燃性化合物として使用する有機リン系化合物の構造は特に限定しないが、例えばカルボキシメチルフェニルホスフェート、(2−カルボキシエチル)フェニルホスフェート、(2−カルボキシエチル)トルイルホスフェート、(2−カルボキシエチル)2,5−ジメチルフェニルホスフェート、(2−カルボキシエチル)シクロヘキシルホスフェート、(カルボキシプロピル)フェニルホスフェート、(4−カルボキシフェニル)フェニルホスフェート、(3−カルボキシフェニル)フェニルホスフェート、(2−カルボキシエチル)メチルホスフェート、(2−カルボキシエチル)エチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、t−ブチルジフェニルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)−1.3−フェニルビス(ジフェニルホスフェート)、2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサイド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸ビス−(2−ヒドロキシエチル)、2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサイド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸ビス−(2−ヒドロキシエチル)の脱エチレングリコール重縮合体、ホスホニトリル酸ジフェニルエステルなどが挙げられる。
本発明では、ポリエステルフィルムを製造する際に、難燃性化合物をポリエステルフィルム製造系に添加する方法については特に限定されないが、ポリエステルフィルム製造時に難燃性化合物を直接添加する手法が好ましい。というのも、ポリエステル重合時に、より軟化点の低い難燃性化合物を共重合させるとポリエステルの融点(T)の低下が起こりうるため、それに伴い、機械的物性および耐熱性の悪化が懸念されることからである。一方、例えば2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサイド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸ビス−(2−ヒドロキシエチル)の脱エチレングリコール重縮合体は、ある一定以上の繰り返し単位を有する構造を有している。そのため、適当な分子量および樹脂内での分散性を有し、フィルム表面への移動がより抑制されたと推測される。
本発明においてポリエステルフィルム原料に加える黒色顔料成分の種類としては、例えばカーボンブラック(チャンネル、ファーネス、アセチレン、サーマルなど)、カーボンナノチューブ(単層、多層)、アニリンブラック、黒色酸化鉄などを挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。その中でもカーボンブラックや黒色酸化鉄を用いることが好ましく、特にカーボンブラックを用いることが好ましい。この際、配合する黒色顔料は単成分でもよく、また2成分以上を同時に用いてもよい。
ポリエステルフィルム中の黒色顔料成分の含有量については特に限定しないが、好ましくは2.5重量%以下、更に好ましくは2.0重量%以下である。2.5重量%を超えると、黒色顔料の含有量を増やすことによるフィルムの色の変化が収束するため、コスト面で不利になるだけでなく、難燃性および製膜安定性が低下する恐れがある。
本発明では、ポリエステルフィルムを製造する際に、黒色顔料成分および/または後述する不活性粒子をポリエステルフィルム製造系に添加する方法については特に限定されないが、ポリエステルフィルム製造時に黒色顔料成分および/または不活性粒子を直接添加する方法が好ましい。ポリエステルフィルム原料中に添加される黒色顔料成分および/または不活性粒子の形態としては、粉末やフレークなど単体の状態や、あらかじめ押出機を用いてポリエステルに練り込みペレット化したマスターバッチの状態が挙げられる。中でも特に好ましい方法は、フィルム製造工程中の押出工程で直接黒色顔料成分および/または不活性粒子を添加混合する方法である。その際の押出機としてはベント付きの二軸押出機が好ましい。また、黒色顔料成分および/または不活性粒子の分散改良のために、同方向二軸押出機よりも異方向二軸押出機の方が好ましい。
本発明では、ポリエステルフィルム原料中の架橋剤の構造について特に限定しないが、例えばエポキシ系化合物、またはカルボジイミド系化合物を使用することが好ましい。例えばエポキシ系としてはBASF社製の“ADR 4368C”、カルボジイミド系としては日清紡ケミカル社製の“HMV−8CA”や、“HMV−8CA”をポリエステルにあらかじめ練り込んでマスターバッチ(MB)化した“Eペレット”などが挙げられる。
また、架橋剤との反応でポリエステルが3次元構造を形成してゲル化するのを防ぐために、二官能性の分子構造をとる化合物を架橋剤として用いるのが好ましい。
本発明における架橋剤含有量は、押出機に投入する原料中の重量比で定義される。架橋剤ごとに効果の大小が異なるため、添加量を一概に限定することはできないが、架橋剤添加量が少なすぎる場合、IV上昇の効果が不十分であり、製膜安定化の効果が乏しい。一方含有量が過剰である場合、未反応の架橋剤が不純物として働くことで十分な難燃性が発現しなくなったり、IV過多により生産性が低下したりするだけでなく、ポリエステルのゲル化により、フィルム表面の平面性などが損なわれ、フィルムの外観が劣る恐れがある。
本発明では、ポリエステルフィルムを製造する際に、架橋剤をポリエステルフィルム製造系に添加する方法については特に限定されないが、ポリエステルフィルム製造時に架橋剤を直接添加する方法が好ましい。
ポリエステルフィルム原料中に添加される架橋剤の形態としては、フレークや粉末など架橋剤単体の状態や、あらかじめ押出機を用いてポリエステルに練り込みペレット化したマスターバッチの状態などが挙げられるが、特に限定しない。というのも、添加する架橋剤の最適な形態は、化合物ごとに異なる可能性があるためである。架橋剤をマスターバッチ化することで、原料として取り扱い易くなるものの、マスターバッチ化の過程で反応を起こすなどして失活してしまう可能性がある。また、マスターバッチ化の条件によっても架橋剤としての活性がどれほど低下するかが変わると考えられる。そのため、架橋剤として用いる化合物各々に対し、最適な添加方法を検討することが望ましい。
本発明において微細な不活性粒子を用いる場合、その平均粒径が0.5〜3.0μmである粒子、さらには、平均粒径が0.8〜2.0μmの粒子であることが好ましい。また、当該不活性粒子の添加量は0.005〜0.5重量%、さらには、0.01〜0.1重量%の範囲であることが好ましい。平均粒径が0.5μm未満、あるいは添加量が0.005重量%未満では、フィルムの巻き特性が劣り、作業性が悪くなる傾向がある。また、平均粒径が3.0μmを超える、あるいは添加量が0.5重量%を超えると、フィルム表面の平面性などが損なわれたりする恐れがある。
不活性粒子の例としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、セライト、カオリン、タルク、カーボンブラックおよび特公昭59−5216号公報に記載されたような架橋高分子微粉体を挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。この際、配合する不活性粒子は単成分でもよく、また2成分以上を同時に用いてもよい。
また、本発明のポリエステルフィルムとは、全ての層が口金から溶融押出されたものが、二軸方向に延伸、熱固定されたものが好ましい。溶融押出の方法としては、フィードブロックタイプまたはマルチマニフォールドタイプのいずれを用いてもよい。そこで、本発明のポリエステルフィルムの製造方法をさらに具体的に説明するが、本発明の構成要件を満たす限り、以下の例示に特に限定されるものではない。
まず、難燃性化合物と架橋剤と黒色顔料と、必要に応じて不活性粒子を含有する各ポリエステルを、溶融押出装置より供給し、当該ポリマーの融点以上の温度に加熱して溶融する。次いで、溶融したポリマーをスリット状のダイから押し出す。そして、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が採用される。
本発明においては、このような方法で得られたシートを二軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦一軸延伸フィルム化した後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜250度で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。この際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20% 弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸および/または再横延伸を付加することも可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明では、ポリエステルフィルム原料中に架橋剤を添加することによる製膜安定性上昇の効果を、IV測定の結果から定量的に評価した。IVはポリエステルの平均分子量と正の相関があるため、IVが高くなるとポリエステル分子鎖同士の絡み合いが増し、フィルム製膜時の破断が起きにくくなる。以下にIVの測定方法を示す。
・IV測定方法
ポリエステルチップやポリエステルペレットをサンプリングする場合は必要に応じて粉砕、あるいはカッターなどで削る。ポリエステルフィルムをサンプリングする場合はカッターやはさみで裁断する。このようにして得られたサンプルをフェノール/テトラクロロエタンの重量比1:1溶液中に加え、0.2g・dl−1となるように調製した。この溶液を110℃で20分間加熱し、サンプルを溶解させた後、容器を水道水に浸して室温まで冷却させた。毛細管粘度計“VMS−022UPC・F10”(離合社製)を用いて、この溶液の流下時間、およびフェノール/テトラクロロエタン溶液のみ(リファレンス)の流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、極限粘度を算出した。その際、Huggins定数は0.33と仮定した。なお、IVの単位は“dl・g−1”とする。
以下に、その他の評価項目についても記載する。
(1)臭気の有無
架橋剤を添加しない配合と、添加する配合とで、製造中の臭気の有無を比較した。適切な排気設備を持つ現行の設備で製膜を行うが、従業員の健康管理の観点から、悪臭の発生がない、あるいは可能な限り弱くできるような条件を検討する必要がある。具体的な判定基準は下記のとおりである。
臭気がない、あるいは弱い:IV値が0.52〜0.75ならば使用可能
臭気が容認できる程度の強さ:IV値が0.55〜0.70の場合に限り使用可能
臭気が強い、気分が悪くなる:IV値によらず使用不可
(2)ゲル化の有無
押出機から押し出される樹脂溶融物表面の凹凸の有無から評価した。ゲル化した樹脂から製膜したフィルムは平滑性が失われ、外観が損なわれるため、樹脂がゲル化しない条件を検討する必要がある。
後述する判定基準において、口金部から押し出されたポリエステルの表面に凹凸が確認された場合は、IV値、臭気の有無によらず使用不可とした。
(3)難燃性
アンダーライターズラボラトリーズ社発行のプラスチック材料の燃焼性試験規格UL94に則ったVTM試験を行い、その結果から難燃性を評価した。ポリエステルフィルムは難燃性化合物を加えなくてもVTM−2に合格できる程度の難燃性を有しているため、VTM−0に合格できることを、本発明における「難燃性ポリエステルフィルム」の定義とする。
最終的な使用可否は、表1の基準で判定した。判定結果は好ましいものから順に◎>○>△+>△−>×であり、表1内のそれぞれの行のIV、ゲル化の有無、臭気の有無、難燃性の基準を全て満たすことを、判定の条件とする。◎、○、△+、△−のいずれにも該当しないものは×、すなわち本発明の用件を満たさない。
Figure 2014185247
以下の実施例および比較例で用いたポリエステル原料の製造方法は以下の通りである。
(ポリエステルAの製造)
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩0.02重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、エステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.03重量部を添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモンを0.04重量部加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温して280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、IV=0.66に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してポリエステル樹脂ペレット(プレポリマー)を製造した。このプレポリマーを出発原料とし、真空下220℃にて固相重合を行って、ペレット状態のポリエステルAを得た。得られたポリエステルのIVは0.85であった。
(ポリエステルBの製造)
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール54重量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール25重量部とを出発物質とし、触媒としてテトラブチルチタネート0.0110重量ppm、リン酸81重量ppmを反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。1時間後、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、IV=0.81に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断して、ペレット状態のポリエステルBを製造した。得られたポリエステルのIVは0.81であった。
(ポリエステルCの製造)
ポリエステルAと、2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサイド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸ビス−(2−ヒドロキシエチル)の脱エチレングリコール重縮合物を、65:35の比でベント付きの二軸押出機にてコンパウンドし、難燃性化合物MBであるポリエステルCを得た。得られたポリエステルのIVは0.46であった。
(ポリエステルDの製造)
下記の表4に記載の比較例2のフィルムを、破砕、再溶融工程を経てリペレットしたポリエステルを、真空下215℃にて固相重合による高分子量化を行って、ペレット状態のポリエステルDを得た。得られたポリエステルのIVは1.03であった。
(ポリエステルEの製造)
ポリエステルAとカーボンブラック(オイルファーネスブラック、平均一次粒径30nm)を、80:20の比でベント付きの二軸押出機にてコンパウンドし、カーボンブラックMBであるポリエステルEを得た。得られたポリエステルのIVは0.53であった。
(ポリエステルFの製造)
ポリエステルAのプレポリマー(IV=0.66)の製造において、エステル交換終了後に、平均粒径が2.30μmのシリカ粒子0.1重量部を配合する以外はポリエステルAのプレポリマーと同様の方法でポリエステルEを得た。得られたポリエステルのIVは0.66であった。
以下に詳細な実施例について記載する。各実施例および比較例で用いた架橋剤および架橋剤MBの名称、製造メーカー、架橋反応基の種類は表2の通りである。なお、架橋剤MBのみ、当該MB中の架橋剤の含有量を併記する。
Figure 2014185247
各実施例の原料配合および評価結果を下の表3に示す。
Figure 2014185247
実施例1:
ポリエステルA〜F、および架橋剤を表3の「実施例1」の行に記載の割合で混合した各種原料を、270℃に設定した押出機に送り込んだ。ここで押出機は同方向の二軸押出機を使用した。押出機のポリマーをギヤポンプ、フィルターを介して、口金よりシート状に押出し、表面温度を30℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、実質的に非晶質のシートを得た。得られた非晶質シートを縦方向に85℃で3.0倍延伸した後、横方向に125℃で4.0倍延伸し、218℃で熱処理を施し、層厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
実施例2〜11:
表3の「実施例2」〜「実施例11」の行に示す配合の原料を用い、実施例1と同様の方法で同様の厚みの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
下記表4に、各比較例の原料配合および評価結果を示す。
Figure 2014185247
比較例1〜7:
表4の「比較例1」〜「比較例7」の行に示す配合の原料を用い、実施例1と同様の方法で同様の厚みの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本発明のフィルムは、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレットなどの端末のバッテリー部材や回路基盤、あるいはその周辺に用いられるラベル用やテープ用のポリエステルフィルムとして利用することができる。また、外装用のポリエステルフィルムとして用いる場合など、内部を隠蔽する必要がある場合に、特に好適に用いることが出来る。

Claims (1)

  1. 有機リン系の難燃性化合物、黒色顔料成分、および架橋剤を含有する原料から、溶融押出法によって製造されることを特徴とする難燃性ポリエステルフィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112225902A (zh) * 2020-10-26 2021-01-15 长春工业大学 一种ddp聚磷酸酯阻燃剂及其制备方法
KR20210028689A (ko) 2018-07-06 2021-03-12 타츠타 전선 주식회사 프린트 배선 기판용 접착 필름

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