JP2014161861A - Ni基耐熱合金部材の自由鍛造加工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%でNi:50〜55%,Cr:17〜21%,Al:0.2〜0.8%,Ti:0.6〜1.2%,Nb:4.7〜5.6%,Mo:2.8〜3.3%,Co:≦1.0%,C+Si+Mn+P+S+Cu+B:≦1.1%,残部Feの組成を有するNi基耐熱合金材に対して、予めδ相を針状に析出させるδ相析出処理を行った後、δ相析出処理した被鍛造材を920〜1025℃未満で1〜36hr加熱して、析出した針状のδ相を分断を伴って部分的に固溶させ、δ相の析出量を調整するδ相の初期量調整処理を実施し、その後、再結晶温度以上で且つ合計圧下率33%以上で打撃を加える自由鍛造と再加熱とを少なくとも1回以上繰り返す仕上げ鍛造工程を実施する。
【選択図】図6
Description
Ni基耐熱合金はオーステナイト単相材料であるため、相変態を利用した結晶粒微細化ができず、再結晶温度以上の温度での熱間鍛造及びその後の加熱保持により結晶を再結晶させ且つその際の再結晶粒の成長を抑制することで結晶粒を微細化する手法が用いられている。
下記特許文献1には、この手法によってNi基耐熱合金の結晶粒を微細化する技術が開示されている。
但しそこには、仕上げ鍛造工程前において、最終的に狙いとする結晶粒度との関係でどれだけのδ相を初期δ相として析出させておくかの点については開示されていない。
同図に示しているように鍛造によって結晶粒は変形を生じ、そして変形した結晶粒の粒界に沿って再結晶粒が生成する。
生成した再結晶粒はその後成長し、次第に大きくなって行くが、初期結晶粒が粗大であると、その芯部に至るまで再結晶による結晶成長が及ばずに、芯部が未再結晶部分(ハッチで示す部分)として残り易い。
特に、一般に1回の鍛造で済ませてしまう型鍛造の場合はこうした問題を生じ易い。
この意味において、結晶粒を微細且つ均一とする上で自由鍛造は望ましい鍛造方法である。
即ち、δ相析出処理を行って結晶粒を微細化するにしても、δ相の析出量が過少であれば結晶粒を十分に微細化することが難しいと考えられる。
かといってδ相の析出量が過剰であれば結晶粒を過剰に微細化してしまう可能性がある。
結晶粒が微細であるほど引張強度,衝撃強度,疲労強度等の機械的特性は良くなるものの、高温クリープ強度については結晶粒が過剰に微細であると却って特性が劣化することが知られている。
またδ相析出処理によって生成する初期δ相は針状形態であり、この針状のδ相が最後まで残ってしまうと機械的特性を却って損なってしまう問題が生ずる。
しかるに従来、こうした観点に基づく結晶粒微細化の制御については報告がなされていない。
しかしながらこの特許文献3に記載のものは、δ相によるピン止め効果にて結晶粒を微細化する点の開示はなく、本発明とは異なった別異のものである。
特に本発明によれば、Ni基耐熱合金部材の全体の最終の結晶粒度をASTM No.8以上とすることが可能である。
本発明では、被鍛造材(鍛造素材)に予めST処理(固溶化熱処理)を施しておく。そのST処理は、被鍛造材を得る際の加工時に併せて行っておくことができる。
その加工は、1050℃〜1120℃で行うことが望ましい。
1050℃よりも低い温度であると固溶化を良好に行うことができない。また加工時に割れ等を起してしまい加工を良好にできない。
一方1200℃を超える高い温度であると材料が溶けてしまう。
その被鍛造材(鍛造素材)の結晶粒度は、最終の結晶粒度としてASTM No.8以上とする場合にはASTM No.4以上としておくことが望ましい。
本発明では、仕上げ鍛造工程前にδ相の析出処理を行う。
ここで言うδ相の析出処理は、固溶状態からδ相の金属間化合物Ni3Nbを析出させる処理で、このδ相析出処理により針状のδ相が結晶粒の粒内,粒界に析出する。
ここでδ相析出処理は800〜1020℃の温度範囲,0.1〜36hrの時間範囲で行うことができる。
温度が高過ぎるとδ相の析出量が不十分となり、一方低過ぎるとδ相の析出量が過剰量となってしまう。
本発明ではδ相を粒界,粒内に合計で2%(体積%)以上,13%以下析出させておくことが望ましい。
好適には915℃×36hrの条件の下でこのδ相の析出処理を行う。
本発明では、上記のδ相析出処理の後において、δ相の初期量調整処理を行う。
具体的には、先のδ相析出処理によって析出した針状のδ相を、加熱によりその分断を伴って部分的に固溶させ、δ相の量を減量調整する。即ち仕上げ鍛造工程前のδ相の初期量を適正量に調整する。
このδ相の初期量調整処理は、本発明において特徴的な処理である。
この処理は、最終的に得られるNi基耐熱合金部材の結晶粒の細かさと、仕上げ鍛造工程前のδ相の初期量との間に密接な因果関係があり、δ相の初期量が、最終的に得られる結晶粒の細かさを決定する大きな要因となるとの知見の下に、本発明において実施されるものである。
残留した針状のδ相は、後に述べるようにその後の仕上げ鍛造工程における鍛造-再加熱で更に分断、固溶して微細に球状化して行き、そして微細化した球状のδ相がピン止め効果を発揮して、鍛造-再加熱における再結晶の粒成長を抑制する。
その際に微細且つ球状となったδ相の量が多ければ、再結晶粒の粒成長に対する抑制効果が大となり、逆に少なければ抑制効果は小となる。
そこでこれに応じて、δ相の初期量調整処理で残しておくべきδ相の量、即ち最終的に狙いとするNi基耐熱合金部材の結晶粒の粒度に応じた適正なδ量の初期量も知ることができる。
つまりδ相の初期量調整処理で、δ相の存在量(初期量)を適正な量としておくことで、Ni基耐熱合金部材の最終の求める結晶粒度が得易くなる。
その適正なδ相の初期量は、後続の加工,処理の条件等に応じて異なったものとなるが、これを含めて本発明ではδ相の初期量を1.5%(体積%)以上,10%以下としておくのが望ましい。
逆に結晶粒が粗大であれば他の機械的特性である高温引張強度,疲労強度,衝撃特性が悪化する。
従ってNi基耐熱合金部材の結晶粒の粒度も、適正な粒度というものがある。
本発明では、δ相の初期量調整処理で初期のδ相の量を調整することにより、最終の適正な結晶粒の粒度を容易に得ることができる。
そして加熱温度,加熱時間をコントロールすることで、δ相の初期量を求める量に調整することができる。
ここで加熱温度を920℃以上としているのは、これよりも低い温度であるとδ相の部分固溶が進み難く、求める初期量とするために極めて長時間かかってしまうか、或いはδ相の部分固溶を良好に行えなくなる。
一方1025℃以上の高い温度にすると、δ相の固溶温度を超えてしまい、δ相全体がマトリックス中に固溶してしまう。
また時間条件として1時間未満であると、針状δ相の分断を伴う部分固溶を良好に行うことが難しく、また36hrを超えると処理時間が長くなり過ぎてしまい、生産性が悪化してしまう。
即ちδ相の初期量調整処理に、予備鍛造処理と、加熱によるδ相の分断・部分固溶処理を含ませておくことができる。
ここで予備鍛造としては様々な加工方法を適用できる。前方押出し加工はその予備鍛造の加工方法として好適な加工方法である。
加工温度としては800〜980℃,加工率(減面率)として15〜60%の条件を好適に採用できる。
そしてこれにより、仕上げ鍛造工程において微細な結晶粒が得られ易くなるとともに、予備鍛造処理の際の加工条件の設定により仕上げ鍛造工程前の結晶粒の粒度を事前に制御しておくことで、仕上げ鍛造工程後における最終の結晶粒の粒度の制御を行い易くなる。
本発明では、上記のδ相の初期量調整処理の後において、被鍛造材に打撃による圧下を加える鍛造(自由鍛造)と再加熱とを少なくとも1回以上繰り返す仕上げ鍛造工程を実施する。
合金中に残留した針状形態の初期δ相は、この仕上げ鍛造工程において分断、固溶して球状化して行く。
そして球状化し微細となったδ相が、鍛造及び再加熱の際に生ずる再結晶粒の粒成長をピン止め効果によって抑制する。
即ちこのようなδ相のピン止め効果が無い状態の下では、鍛造及び再加熱によって生じた再結晶が大きく粒成長してしまうが、球状化した微細なδ相によるピン止め効果によって、その粒成長が効果的に抑制される。
圧下率が33%未満であると再結晶のための十分な駆動力が得られ難く、また再結晶による結晶粒の微細化を十分に行うことが難しい。
尚この圧下率33%は、再加熱が行われるまでに複数回の打撃を加える場合には、複数回の打撃による合計の圧下率を意味する。
920℃未満であるとδ相の分断,固溶による球状化が十分に行われず、逆に980℃を超える高い温度ではδ相の固溶量が多くなり過ぎ、また再結晶の結晶粒が粗大化し易い。
この固溶化熱処理は、最終的な粒度調整を兼ねて行うことができる。
尚ここでの固溶化熱処理は例えば975℃,2時間の条件の下で好適に行うことができる。
尚時効処理は、例えば718〜760℃,8〜20hrの条件で1段目の時効処理を行い、また621〜648℃,8〜36hrの条件で2段目の時効処理を行うことができる。
(δ相の析出挙動)
表1に示す化学組成のNi基耐熱合金にδ相析出処理を行ったときのδ相の析出挙動を調べた。
この試料を850℃以上1000℃以下の種々温度に保持し、δ相の析出挙動をSEM(走査型電子顕微鏡)にて調べた。
温度900℃,950℃,1000℃の下でのδ相の析出挙動が図2に示してある。
また温度950℃の下でも、保持時間36時間経過した時点でδ相の析出量は4%に達していない。
これに対して温度900℃の下では、36時間経過時点で7%を超えており、δ相は十分な量で析出している。
δ相の析出処理の温度としては900〜930℃の範囲が好適である。
中でも915℃×36hrの条件でδ相の析出処理を特に好適に行うことができる。
ST処理した上記の試料を915℃×36hrの条件でδ相析出処理を行い、針状δ相を6.7%析出させた固溶試験用の試料(平均粒径91.2μm)を、975℃〜1050℃の各種温度に加熱し、保持してδ相の部分固溶挙動を調べた。
加熱温度975℃,1000℃,1025℃,1050℃の下でのδ相の部分固溶挙動が図3に示してある。
但し920℃よりも低い温度であると、δ相の部分固溶が十分に進まないため、処理温度としては920℃以上とするのが良い。
表1に示す化学組成のNi基耐熱合金の素材をST処理(1050℃×1hrの条件)した後、δ相析出処理(915℃×36hr)し、次にδ相の初期量調整処理における予備鍛造処理としてサイズ外径φ23.8mm×高さ48.0mmの試験材につき高周波加熱による昇温で前方押出しを980℃,減面率60%の条件で実施した。そしてその後に、加熱によるδ相の分断・部分固溶処理として980℃×15〜360minの条件で再加熱保持してδ相を分断を伴って部分固溶させ、δ相の初期量調整を行った。
図4に示しているように、δ相は保持時間が長くなるのにつれて部分固溶によりその量が減少して行く。図4中δ相の量(初期量)は、15min保持後において5%,360min保持後において3%である。
また980℃×15min保持後及び980℃×360min保持後のミクロ組織及びδ相析出状態が図5に示してある。
以上のようなδ相の初期量調整処理を終えた後に、仕上げ鍛造工程として以下の均一圧縮加工試験を実施し、その後再加熱保持を行って結晶粒の粒成長挙動及びδ相の固溶による減少挙動を調べた。
ここで均一圧縮加工試験は次のようにして行った。
その後に980℃の再加熱保持を行って、保持時間の経過による結晶粒の粒成長挙動,δ相の減少挙動を調べた。
ここではδ相の初期量を0%,3%,5%としたものについて粒成長挙動,δ相減少挙動を調べ、それぞれの結果を比較して図7に示した。
また初期δ相0%,5%のものについて10sec後,1000sec後,3100sec後のミクロ組織を図8に併せて示した。
尚δ相の初期量0%のものは、δ相の析出処理を行うことなくST処理後のものをそのまま前方押出しして得たものを用いた。
この結果はまた、初期δ相の量を変えることで最終的な結晶粒の粒度をコントロールできることも表している。
因みに初期δ相が5%のものでは、最終的な(3100sec後)結晶粒の粒径が約10μmであり、その結晶粒度はASTM No.10程度となっている。
一方初期δ相が3%のものは、最終的な結晶粒の粒径が20μm弱であり、結晶粒の粒度はASTM No.8程度である。
尚δ相の初期量がゼロのものは、最終の結晶粒の粒径は50μm程度である。
この結果において、δ相0%のものと3%,5%のものとの最終の粒径の差がδ相によるピン止めの効果ということになる。
Claims (1)
- 質量%で
Ni:50〜55%
Cr:17〜21%
Al:0.2〜0.8%
Ti:0.6〜1.2%
Nb:4.7〜5.6%
Mo:2.8〜3.3%
Co:≦1.0%
C+Si+Mn+P+S+Cu+B:≦1.1%
残部Feの組成を有するNi基耐熱合金から成る被鍛造材に対して、δ相を針状に析出させるδ相析出処理を行い、
しかる後、δ相析出処理した被鍛造材を920〜1025℃未満で1〜36hr加熱して、前記析出した針状のδ相を分断を伴って部分的に固溶させ、δ相の析出量を調整するδ相の初期量調整処理を実施し、
その後において、再結晶温度以上で且つ合計圧下率33%以上で打撃を加える自由鍛造と再加熱とを少なくとも1回以上繰り返す仕上げ鍛造工程を実施し、
結晶粒が微細化されたNi基耐熱合金部材を得ることを特徴とするNi基耐熱合金部材の自由鍛造加工方法。
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