JP2014151897A - 直進旋回判定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】直進中か旋回中かの精度判定を向上させた直進旋回判定装置を提供する。
【解決手段】直進旋回判定装置は、前輪の回転速度と後輪の回転速度とを比較した値である回転速度比較値と閾値との比較によって自動二輪車が直進中か旋回中かを判定する直進旋回判定手段を備え、直進旋回判定手段は、車両速度が第1所定速度以下で、車両加速度の絶対値が所定加速度以下で、且つ、ウインカが作動していない状態における回転速度比較値を、直進時回転速度比較値として用い、回転速度比較値と直進時回転速度比較値との比率又は差が閾値よりも大きくなった時に旋回中と判定する。
【選択図】図6

Description

本発明は、車両が直進中か旋回中かを判定する直進旋回判定装置に関する。
下記に示す特許文献1に記載の技術は、自動二輪車のウインカキャンセルを行うものであって、自動二輪車が直進中であるかコーナリング中であるかを、直進中とコーナリング中とで前後輪の回転数の差に違いがあることに着目して、回転数の差が小さいときは直進中、回転数の差が大きいときはコーナリング中であると判定するものである。
特開昭62−53256号公報
前後輪の回転数の差は、タイヤの劣化や摩耗、空気圧の変化により変化するため、上記特許文献1に記載の技術では、前後輪の回転数の差が変化した場合は、直進中であるかコーナリング(旋回)中であるかを精度良く判定することができない。
そこで、本発明は、直進中か旋回中かの精度判定を向上させた直進旋回判定装置を提供することを目的とする。
本発明に係る直進旋回判定装置(100)は、以下の特徴を有する。
第1の特徴;前輪(18)の回転速度を検出する前輪回転速度検出手段(106)と、後輪(30)の回転速度を検出する後輪回転速度検出手段(108)と、前記前輪(18)の回転速度と前記後輪(30)の回転速度とを比較した値である回転速度比較値(Vdiff)を算出する回転速度比較値算出手段(124)と、前記回転速度比較値(Vdiff)の大小によって車両(10)が直進中か旋回中かを判定する直進旋回判定手段(128)と、を備える直進旋回判定装置(100)において、車両速度を検出する車速検出手段(122)と、車両加速度を検出する加速度検出手段(126)と、を備え、前記直進旋回判定手段(128)は、前記車両速度が第1所定速度以下で、前記車両加速度の絶対値が所定加速度以下で、且つ、ウインカ(102)が作動していない状態における前記回転速度比較値(Vdiff)を、直進時回転速度比較値(Vdiff_s)として用い、前記回転速度比較値(Vdiff)と前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)との比率又は差が閾値(TH)よりも大きくなった時に旋回中と判定する。
第2の特徴;前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)は、前記車両速度が前記第1所定速度以下で、前記車両加速度の絶対値が前記所定加速度以下で、且つ、前記ウインカ(102)が作動していない状態が第1所定時間継続した場合に、更新される。
第3の特徴;前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)は、前記第1所定時間中の前記回転速度比較値(Vdiff)の平均値である。
第4の特徴;前記車両速度が第1所定速度以下で、前記車両加速度の絶対値が所定加速度以下で、且つ、前記ウインカ(102)が作動していない状態における前記回転速度比較値(Vdiff)が、前回の前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)に対して所定値を超える比率又は差がある場合は、今回更新される前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)の変化量に制限を設ける。
第5の特徴;前回の前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)に対する今回更新される前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)の前記変化量は、前記所定値以下の値に制限される。
第6の特徴;増加側の前記所定値は、前記閾値(TH)以下の値に設定される。
第7の特徴;前記回転速度比較値(Vdiff)は、前後輪の回転速度の比率である。
第8の特徴;前記回転速度比較値(Vdiff)は、前後輪の回転速度の差である。
本発明の第1の特徴によれば、直進走行している時を推定し、その時の前後輪の回転速度比較値を直進時回転速度比較値として用い、回転速度比較値と直進時回転速度比較値の比率又は差が閾値よりも大きくなった時に旋回中と判定するので、タイヤの空気圧や劣化等が発生した場合であっても、精度良く直進中か旋回中かの判定を行うことができる。
また、車両速度が第1所定速度以下、車両加速度の絶対値が所定加速度以下で、且つ、ウインカが作動していない状態における回転速度比較値を、直進時回転速度比較値として用いるので、旋回中又はこれから旋回することが予定されているウインカ作動時、遠心力によってタイヤの外径が変わり易い高速度時、及び、タイヤが路面に対してスリップし易くなる高加減速度時(加速度の絶対値が高い時)の回転速度比較値を直進時回転速度比較値から除くことができ、直進中か旋回中かの判定精度を更に向上させることができる。
本発明の第2の特徴によれば、直進時回転速度比較値は、車両速度が第1所定速度以下で、車両加速度の絶対値が所定加速度以下で、且つ、ウインカが作動していない状態が第1所定時間継続した場合に更新されるので、車両速度が第1所定速度以下で、車両加速度の絶対値が所定加速度以下で、且つ、ウインカが作動していないという条件が瞬間的に成立する場合を省くことができ、直進時回転速度比較値の精度が上がる。
本発明の第3の特徴によれば、直進時回転速度比較値は、第1所定時間中の回転速度比較値の平均値であるので、信頼できる値を直進時回転速度比較値として更新することができ、直進中か旋回中かの判定精度を向上させることができる。
本発明の第4の特徴によれば、車両速度が前記第1所定速度以下で、車両加速度の絶対値が前記所定加速度以下で、且つ、前記ウインカが作動していない状態における回転速度比較値が、前回の直進時回転速度比較値に対して所定値を超える比率又は差がある場合は、今回更新される直進時回転速度比較値の変化量に制限を設けるので、直進時回転速度比較値は急激に変わるのを抑制することができる。
本発明の第5の特徴によれば、前回の直進時回転速度比較値に対する今回更新される直進時回転速度比較値の変化量は、所定値以下の値に制限されるので、直進時回転速度比較値が急激に変わるのをより抑制することができる。
本発明の第6の特徴によれば、増加側の所定値は、閾値以下の値に設定されるので、定常円旋回と考えられる場合を効果的に抑制することができる。
直進旋回判定装置が搭載される自動二輪車の側面図である。 直進旋回判定装置の機能ブロック図である。 直進旋回判定装置の直進旋回判定によるウインカキャンセルの動作を示すフローチャートである。 直進旋回判定装置の直進旋回判定によらないウインカキャンセルの動作を示すフローチャートである。 直進旋回判定装置の直進時回転速度比較値の更新の動作を示すフローチャートである。 車両速度、車両加速度、ウインカの作動・非作動、回転速度比較値、及び直進時回転速度比較値の関係を示すタイムチャートである。
本発明に係る直進旋回判定装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
図1は、直進旋回判定装置が搭載される自動二輪車10の側面図である。なお、特に指示のない限り、図1において示す矢印方向に従って、前後、上下の方向を説明し、車体に着座した運転者から見た方向に従って、左右の方向を説明する。
自動二輪車(車両)10は、車体フレーム12と、車体フレーム12の前端部に設けられたヘッドパイプ14と、ヘッドパイプ14に回転可能に軸支される左右一対のフロントフォーク16と、左右一対のフロントフォーク16に回転可能に軸支される操舵輪である前輪(車輪)18と、左右一対のフロントフォーク16の上部に取り付けられる操舵可能なバー状のハンドル20とを有する。
車体フレーム12は、ヘッドパイプ14から後方に延びる左右一対のメインフレーム22と、左右一対のメインフレーム22の後側に設けられる左右一対のピボットプレート24と、左右一対のピボットプレート24に設けられ、後方斜め上方に延びる左右一対のシートフレーム26とを備える。左右一対のメインフレーム22には、動力を発生する動力ユニット28が設けられている。駆動輪である後輪(車輪)30を回転可能に軸支するスイングアーム32は、ピボットプレート24によって揺動自在に支持される。動力ユニット28は、そのケース内にエンジン28aと変速機28bとを収納する。
左右一対のメインフレーム22の上方には、燃料を貯留する燃料タンク40が設けられ、燃料タンク40の後方且つ、左右一対のシートフレーム26の上方には、運転者が着座する運転者用シート42が設けられ、運転者用シート42の後方には乗員が着座する乗員用シート44が設けられている。左右一対のフロントフォーク16には、フロントフェンダ46が設けられ、左右一対のシートフレーム26の後部には、リアフェンダ48が設けられている。このリアフェンダ48は、リアウインカ50を支持する。
自動二輪車10は、車体フレーム12に設けられ、前方を保護するアッパーカウル52と、アッパーカウル52の上方に設けられたウインドスクリーン54と、アッパーカウル52の上部に設けられ運転者が後方を確認するためのバックミラー56と、アッパーカウル52の前部に設けられ前方を照射するヘッドライト58と、自動二輪車10の前方側部を保護するミドルカウル60と、このミドルカウル60の下部に設けられ車両後方に延びるアンダーカバー62と、シートフレーム26の上方に設けられシートフレーム26の上部から運転者用シート42の下部まで覆うサイドカバー64とを備える。このバックミラー56は、フロントウインカが内蔵されている。
図2は、直進旋回判定装置100の機能ブロック図である。直進旋回判定装置100は、左ウインカ102L、右ウインカ102R、ウインカスイッチ104、前輪回転速度センサ(前輪回転速度検出手段)106、後輪回転速度センサ(後輪回転速度検出手段)108、制御部110を備える。なお、左ウインカ102L及び右ウインカ102Rを総称してウインカ102と呼ぶ場合がある。
左ウインカ102L及び右ウインカ102Rは、それぞれ前記フロントウインカ及びリアウインカ50によって構成される。つまり、前記フロントウインカは、左フロントウインカ及び右フロントウインカを有し、前記リアウインカ50は、左リアウインカ及び右リアウインカを有し、左ウインカ102Lは、左フロントウインカ及び左リアウインカで構成され、右ウインカ102Rは、右フロントウインカ及び右リアウインカで構成される。
ウインカスイッチ104は、ハンドル20付近に設けられ、左ウインカ102L及び右ウインカ102Rのどちらか一方を点灯(点滅も含む)させるためのスイッチである。ウインカスイッチ104は、左ウインカ102L又は右ウインカ102Rの点灯を指示する左右方向に移動可能なレバーを有する。ウインカスイッチ104は、運転者の操作に応じた操作信号を制御部110に出力する。
前輪回転速度センサ106は、前輪18を回転させる回転軸に設けられ、前輪18の回転速度Vrfを検出し、該検出した回転速度Vrfを制御部110に出力する。ここで、回転速度とは、車輪の周速度として説明しているが、実際は、回転速度センサが検出する単位時間当たりのパルス数を検知し、それに係数を掛けて周速度としている。従って、周速度に限らず、回転数や回転速度センサのパルス数等の周速度に比例するものであれば何でもよい。後輪回転速度センサ108は、後輪30を回転させる回転軸に設けられ、後輪30の回転速度Vrrを検出し、該検出した回転速度Vrrを制御部110に出力する。この前輪回転速度センサ106及び後輪回転速度センサ108は、ABS(Anti-lock Brake System)制御やTCS(Traction Control System)制御等の他の制御にも用いられる。
制御部110は、ウインカ動作手段120、車速検出手段122、回転速度比較値算出手段124、加速度検出手段126、直進旋回判定手段128、及びキャンセル手段130を備える。制御部110は、図示しないCPU等で構成されるタイマーを有するコンピュータと、プログラム等が記憶されたメモリとを少なくとも有し、該コンピュータがメモリに記憶されたプログラムを読み出すことで、本実施の形態の制御部110として機能する。
ウインカ動作手段120は、ウインカスイッチ104の操作に応じて左ウインカ102L又は右ウインカ102Rを作動させるものである。例えば、左折(左旋回)するために、運転者がウインカスイッチ104の前記レバーを左側に移動させた場合は、ウインカ動作手段120は、左ウインカ102Lを点灯(作動)させる。また、右折(右旋回)するために、運転者がウインカスイッチ104の前記レバーを右側に移動させた場合は、ウインカ動作手段120は、右ウインカ102Rを点灯(作動)させる。なお、ウインカ動作手段120は、ウインカスイッチ104の前記レバーが押された場合は、左ウインカ102L又は右ウインカ102Rの点灯(作動)を停止させる。
車速検出手段122は、前輪回転速度センサ106が検出した前輪18の回転速度Vrf、及び、後輪回転速度センサ108が検出した後輪30の回転速度Vrrの少なくとも一方を用いて自動二輪車10の速度(車両速度)Vを検出する。この車両速度Vは、周知の技術、手法を用いて検出することができるので説明を割愛する。
回転速度比較値算出手段124は、前輪回転速度センサ106が検出した前輪18の回転速度Vrfと、後輪回転速度センサ108が検出した後輪30の回転速度Vrrとを比較した値である回転速度比較値Vdiffを算出する。詳しくは、前輪18の回転速度Vrfを後輪30の回転速度Vrrで除算することで回転速度比較値Vdiff(Vdiff=Vrf/Vrr)を算出する。なお、回転速度比較値Vdiffは、回転速度Vrfから回転速度Vrrを減算したもの(Vrf−Vrr)であってもよい。
加速度検出手段126は、前輪回転速度センサ106が検出した前輪18の回転速度Vrf、及び、後輪回転速度センサ108が検出した後輪30の回転速度Vrrの少なくとも一方を用いて自動二輪車10の加速度(車両加速度)Aを検出する。なお、加速度検出手段126は、車速検出手段122が検出した車両速度Vに基づいて、自動二輪車10の車両加速度Aを検出してもよく、別途、加速度センサを用いるものであってもよい。
直進旋回判定手段128は、自動二輪車10が直進中か旋回中かを回転速度比較値Vdiffの大小によって判定する。詳しくは、回転速度比較値算出手段124が算出した回転速度比較値Vdiffと、直進中であると推定される時の回転速度比較値Vdiff(以下、直進時回転速度比較値Vdiff_s)との比率(Vdiff/Vdiff_s)又は差(Vdiff−Vdiff_s)が閾値TH以下か否かによって自動二輪車10が直進中か旋回中かを判定する。
また、直進旋回判定手段128は、更新手段132を有し、更新手段132は、該直進時回転速度比較値Vdiff_sを更新する。タイヤの摩耗等に応じて前輪18及び後輪30の外径が変化し、前輪18及び後輪30の外径が変化すると、前輪回転速度センサ106及び後輪回転速度センサ108よって検出される回転速度Vrf、Vrrの値が変化するので、直進中か旋回中かの判定精度を向上させるため、該直進時回転速度比較値Vdiff_sを更新する。
更新手段132は、所定条件が成立すると、回転速度比較値算出手段124によって検出された回転速度比較値Vdiffに基づいて直進時回転速度比較値Vdiff_sを更新する。更新手段132は、車両速度Vが所定速度V1以下、車両加速度Aの絶対値が所定加速度A1以下で、且つ、ウインカ102が非作動の場合には、直進走行が行われていると推定し、所定条件が成立していると判断する。
キャンセル手段130は、直進旋回判定によるウインカキャンセルと、直進旋回判定によらないウインカキャンセルとを行う。このウインカキャンセルの動作については、後で詳細に説明する。ウインカキャンセルとは、左ウインカ102L又は右ウインカ102Rの点灯(作動)を自動で停止させることをいう。
次に、直進旋回判定装置100の直進旋回判定によるウインカキャンセルの動作を、図3のフローチャートに従って説明する。まず、ウインカ動作手段120は、運転者によってウインカ102の作動を指示するウインカスイッチ104の操作が行われたか否かを判断する(ステップS1)。
ステップS1で、ウインカスイッチ104が操作されていないと判断すると、操作されたと判断するまでステップS1に留まり、ウインカスイッチ104が操作されたと判断すると、ウインカ動作手段120は、ウインカスイッチ104の操作に応じてウインカ102を作動させる(ステップS2)。
次いで、前輪回転速度センサ106は、前輪18の回転速度Vrfの検出を開始し(ステップS3)、後輪回転速度センサ108は、後輪30の回転速度Vrrの検出を開始する(ステップS4)。前輪回転速度センサ106及び後輪回転速度センサ108は、所定の周期で検出を行う。
次いで、回転速度比較値算出手段124は、回転速度比較値Vdiffの算出を開始する(ステップS5)。詳しくは、回転速度比較値算出手段124は、ステップS3で直近に検出された前輪18の回転速度Vrfと、ステップS4で直近に検出された後輪30の回転速度Vrrとを比較した値である回転速度比較値Vdiff(Vdiff=Vrf/Vrr 、又は、Vdiff=Vrf−Vrr)を算出する処理を開始する。回転速度比較値算出手段124は、前記所定の周期で回転速度比較値Vdiffを算出する。
次いで、直進旋回判定手段128は、ステップS5で直近に算出した回転速度比較値Vdiffと直進時回転速度比較値Vdiff_sとの比率(Vdiff/Vdiff_s)又は差(Vdiff−Vdiff_s)が閾値THより大きいか否かを判断する(ステップS6)。なお、回転速度比較値Vdiffと直進時回転速度比較値Vdiff_sとの比率(Vdiff/Vdiff_s)と閾値THとを比較する場合は、閾値THは、1.05以下が好ましく、1.01がより好ましい。また、回転速度比較値Vdiffと直進時回転速度比較値Vdiff_sとの差(Vdiff−Vdiff_s)と閾値THとを比較する場合は、閾値THは、0.5[km/h]が好ましく、0.1[km/h]がより好ましい。
ステップS6で、回転速度比較値Vdiffと直進時回転速度比較値Vdiff_sとの比率(又は差)が閾値TH以下の場合は、直進旋回判定手段128は、直進中と判定して(ステップS7)、ステップS6に戻る。一方で、ステップS6で、回転速度比較値Vdiffと直進時回転速度比較値Vdiff_sとの比率(又は差)が閾値THより大きいと判断すると、直進旋回判定手段128は、旋回中と判定して(ステップS8)、ステップS9に進む。
ステップS9に進むと、直進旋回判定手段128は、ステップS5で直近に算出した回転速度比較値Vdiffと直進時回転速度比較値Vdiff_sとの比率(又は差)が閾値TH以下か否かを判断する。
ステップS9で、回転速度比較値Vdiffと直進時回転速度比較値Vdiff_sとの比率(又は差)が閾値TH以下でないと判断すると、直進旋回判定手段128は、旋回中と判定して(ステップS10)、ステップS9に戻る。この場合は、ウインカキャンセルが行われない。つまり、左ウインカ102L又は右ウインカ102Rの点灯(作動)は停止されない。
一方、ステップS9で、回転速度比較値Vdiffと直進時回転速度比較値Vdiff_sとの比率(又は差)が閾値TH以下であると判断すると、直進旋回判定手段128は、直進中と判定する(ステップS11)。次いで、キャンセル手段130は、ウインカキャンセルを行う(ステップS12)。つまり、左ウインカ102L又は右ウインカ102Rの点灯(作動)を停止させる。
自動二輪車10は、直進動作から旋回動作に入り、その後直進動作に戻ることから、ステップS6では、直進動作から一端旋回動作になったか否かを判断し、ステップS9では、旋回動作から直進動作に戻ったか否かを判断している。
次に、直進旋回判定装置100の直進旋回判定によらないウインカキャンセルの動作を、図4のフローチャートに従って説明する。なお、図4に示す動作は、左ウインカ102L及び右ウインカ102Rの一方の作動が開始した場合に行われ、図3に示す動作と並行して行われる。
図3のステップS2で、ウインカスイッチ104の操作に応じて左ウインカ102L又は右ウインカ102Rが作動すると、車速検出手段122は、図3のステップS3及びステップS4で直近に検出された前輪18の回転速度Vrf及び後輪30の回転速度Vrrの少なくとも一方を用いて、車両速度Vを検出する処理を開始する(ステップS21)。
次いで、キャンセル手段130は、ステップS21で直近に検出された車両速度Vが所定速度(第2所定速度)V2以上か否かを判断する(ステップS22)。所定速度V2は、自動二輪車10が交差点で旋回(左折、右折)する時に交差点に入る速度以上の速い速度であり、例えば、50[km/h]に設定される。
ステップS22で車両速度Vが所定速度V2以上であると判断すると、キャンセル手段130は、図3のステップS1でウインカスイッチ104の操作が行われてから所定時間(第2所定時間)T2が経過したか否かを判断する(ステップS23)。この所定時間T2が経過したか否かの判断は、前記タイマーによって時刻を計時することで判断することができる。
ステップS23で、ウインカスイッチ104の操作から所定時間T2が経過していないと判断すると、ステップS22に戻り、上記した動作を繰り返す。ステップS23で、ウインカスイッチ104の操作から所定時間T2が経過したと判断すると、キャンセル手段130は、ウインカキャンセルを行う(ステップS24)。つまり、ウインカ操作から所定時間T2が経過するまで車両速度Vが所定速度V2以上の場合は、ウインカキャンセルを行う。
一方、ステップS22で、ウインカ操作から所定時間T2が経過する前に車両速度Vが所定速度V2より小さいと判断されると、ウインカキャンセルを行なわずに処理を終了する。この場合は、図3に示す直進旋回判定によって、又は、ユーザのウインカスイッチ104の前記レバー操作によって、左ウインカ102L又は右ウインカ102Rの作動が停止されることになる。
ウインカスイッチ104の前記レバーが操作された後もなお、車両速度Vが所定速度V2以上の状態で所定時間T2継続した場合は、交差点での旋回ではなくて、レーンチェンジ(車線変更)であると考えることができるので、ウインカスイッチ104の操作時から所定時間T2経過後にウインカキャンセルを行う。この所定時間T2は、例えば、レーンチェンジに必要な十分な時間であることが好ましく、例えば、7秒に設定される。
次に、直進旋回判定装置100の直進時回転速度比較値Vdiff_sの更新の動作を、図5のフローチャートに従って説明する。更新手段132は、左ウインカ102L又は右ウインカ102Rが作動中であるか否かを判断する(ステップS31)。左ウインカ102L又は右ウインカ102Rが作動中の場合は、自動二輪車10は旋回中又はこれから旋回することが予定されていると推定することができる。
ステップS31で、左ウインカ102L又は右ウインカ102Rが作動中であると判断すると、作動が停止するまでステップS31に留まり、左ウインカ102L又は右ウインカ102Rの作動が停止していると判断すると、前輪回転速度センサ106は、前輪18の回転速度Vrfを検出し(ステップS32)、後輪回転速度センサ108は、後輪30の回転速度Vrrを検出する(ステップS33)。
次いで、車速検出手段122は、ステップS32及びステップS33で検出した前輪18の回転速度Vrf及び後輪30の回転速度Vrrの少なくとも一方を用いて、車両速度Vを検出し(ステップS34)、加速度検出手段126は、ステップS34で検出した車両速度Vに基づいて車両加速度Aを検出する(ステップS35)。
次いで、更新手段132は、ステップS34で検出した車両速度Vが所定速度(第1所定速度)V1以下であるかを判断する(ステップS36)。この所定速度V1は、所定速度V2の近傍(所定速度V2から所定範囲内の値)、若しくは所定速度V2以下に設定されている。本実施の形態では、所定速度V1は、50[km/h]に設定されている。前後輪の回転速度比較値Vdiffによる直進旋回判定を用いたウインカキャンセル制御は、交差点等における右左折時に適したものであり、右左折の際に、車両速度Vが50[km/h]より大きくなることは非常に少ないことがわかっているので、所定速度V1を50[km/h]にすることで、交差点等における右左折時に特化して精度を上げることができる。そのため、車両速度Vが所定速度V1より大きい高速度の場合は、車輪の回転数が速いため遠心力によって前輪18及び後輪30のタイヤの外径が変わり易い。
ステップS36で、車両速度Vが所定速度V1以下であると判断すると、更新手段132は、ステップS35で検出した車両加速度Aの絶対値が所定加速度A1(例えば、1[km/h2])以下であるか否かを判断する(ステップS37)。車両加速度Aの絶対値が所定加速度A1より大きい高加減速度の場合は、前輪18及び後輪30のタイヤが路面に対してスリップしている可能性が高く、直進時であっても回転速度比較値Vdiffに誤差が出やすい。
ステップS37で、車両加速度Aの絶対値が所定加速度A1以下であると判断すると、所定条件が成立したと判断し、前記タイマーをスタートさせる(ステップS38)。なお、前記タイマーが既にスタートしている場合、つまり、前記タイマーが時刻を計時している場合は、ステップS38の動作を行なわない。
次いで、回転速度比較値算出手段124は、ステップS32で検出した前輪18の回転速度Vrfと、ステップS33で検出した後輪30の回転速度Vrrとを比較した値である回転速度比較値Vdiffを算出し(ステップS39)、該算出した回転速度比較値Vdiffを前記メモリに記憶する(ステップS40)。
次いで、更新手段132は、所定時間(第1所定時間)T1が経過したか否かを判断する(ステップS41)。つまり、前記タイマーが計時した時間が所定時間T1(例えば、3秒)を過ぎたか否かを判断する。ステップS41で、所定時間T1を経過していないと判断すると、ステップS31に戻り、上記した動作を繰り返す。
このように、所定条件の成立(車両速度Vが所定速度V1以下、車両加速度Aの絶対値が所定加速度A1以下で、且つ、ウインカ102が非作動の場合)が所定時間T1継続していない場合は、ステップS41でNoに分岐することになる。この所定時間T1は、3秒以上に設定されると良い。通常のカーブにおいて、3秒以上速度がキープされることは少ないので、所定条件の成立が所定時間T1以上経過していない場合は、直進中である可能性が高いと判断できるからである。
なお、ステップS36で車両速度Vが所定速度V1以下でないと判断された場合、又は、ステップS37で車両加速度Aの絶対値が所定加速度A1以下でないと判断された場合、つまり、所定条件が成立していないと判断された場合は、ステップS42で、前記タイマーをリセットして、ステップS31に戻る。ステップS42では、ステップS40で前記メモリに記憶した回転速度比較値Vdiffも消去する。
一方、ステップS41で、所定時間T1が経過したと判断すると、更新手段132は、所定時間T1中に記憶した複数の回転速度比較値Vdiffの平均値を算出し、該算出した平均値を直進時回転速度比較値Vdiff_sとして更新する(ステップS43)。
図6は、車両速度V、車両加速度A、ウインカ102の作動・非作動、回転速度比較値Vdiff、及び直進時回転速度比較値Vdiff_sの関係を示すタイムチャートである。図6に示す様に、車両速度Vが所定速度V1以下で、車両加速度Aの絶対値が所定加速度A1以下であり、且つ、ウインカ102が非作動となったタイミングt1から回転速度比較値Vdiffが算出されて記憶される(図5のステップS39及びステップS40)。しかしながら、タイミングt1から所定時間T1が経過する前のタイミングt2で、車両加速度Aの絶対値が所定加速度A1より大きくなるので(つまり、所定条件の成立時間が所定時間T1より短いので)、直進時回転速度比較値Vdiff_sの更新は行われない。この場合は、タイミングt1〜タイミングt2の間に記憶された回転速度比較値Vdiffは消去される。
また、車両速度Vが所定速度V1以下で、車両加速度Aの絶対値が所定加速度A1以下であり、且つ、ウインカ102が非作動となったタイミングt3から回転速度比較値Vdiffが算出されて記憶される(図5のステップS39及びステップS40)。そして、少なくともタイミングt3から所定時間T1が経過するタイミングt4まで所定条件が成立しているので、タイミングt3〜タイミングt4の間に記憶された回転速度比較値Vdiffの平均値を直進時回転速度比較値Vdiff_sとして更新する。従って、タイミングt4で、直進時回転速度比較値Vdiff_sが更新される。
このように、所定条件が成立しているか否かを判断することで確実に直進走行が行われている時を推定し、その時の前輪18及び後輪30の回転速度比較値Vdiffを直進時回転速度比較値Vdiff_sとして更新するので、タイヤの空気圧や劣化等が発生した場合であっても、精度良く直進中が旋回中かの判定を行うことができる。
また、所定条件が成立している状態(車両速度Vが所定速度V1以下、車両加速度Aの絶対値が所定加速度A1以下で、且つ、ウインカ102が作動していない状態)における回転速度比較値Vdiffを、直進時回転速度比較値Vdiff_sとするので、旋回中又はこれから旋回することが予定されているウインカ作動時、遠心力によってタイヤの外径が変わり易い高速度時、及び、タイヤが路面に対してスリップし易くなる高加減速度時の回転速度比較値Vdiffを直進時回転速度比較値Vdiff_sから除くことができ、直進中か旋回中かの判定精度を更に向上させることができる。
所定条件が所定時間T1経過した場合に直進時回転速度比較値Vdiff_sを更新するので、瞬間的に所定条件が成立した場合を省くことができ、直進時回転速度比較値Vdiff_sの精度が上がる。
所定時間T1中の回転速度比較値Vdiffの平均値を、直進時回転速度比較値Vdiff_sとするので、信頼できる値を直進時回転速度比較値Vdiff_sとして更新することができ、直進中か旋回中かの判定精度を向上させることができる。
車両速度Vが所定速度V2以上の場合は、直進旋回判定手段128の判定結果に関わらず、ウインカ102の作動操作が行われてから所定時間T2が経過した時点で、ウインカ102の作動を自動停止させるので、左折又は右折ではなく、前輪18及び後輪30の回転速度比較値Vdiffが極めて小さいレーンチェンジの場合であってもウインカキャンセルを適切に行うことができる。また、所定速度V1を所定速度V2の近傍又はそれ以下に設定したので、直進旋回判定によるウインカキャンセルを行なわない高速度時に直進時回転速度比較値Vdiff_sの更新を行うことがなく、より適正した車両速度域で直進時回転速度比較値Vdiff_sを更新することができる。
[変形例]上記実施の形態は以下のように変形してもよい。
(変形例1)所定条件が所定時間T1成立した時の回転速度比較値Vdiffの平均値が、前回の直進時回転速度比較値Vdiff_sに対して所定値を超える比率又は差がある場合は、今回更新される直進時回転速度比較値Vdiff_sに制限を設けてもよい。つまり、前回の直進時回転速度比較値Vdiff_sに対する今回更新される直進時回転速度比較値Vdiff_sの変化量が、所定値以下の値に制限される。これにより、直進時回転速度比較値Vdiff_sが急激に変わるのを抑制することができる。
この増加側の所定値(前回の直進時回転速度比較値Vdiff_sより今回の直進時回転速度比較値Vdiff_sが増加する場合の所定値)は、閾値TH以下の値に設定されてもよい。これにより、定常円旋回と考えられる場合を効果的に抑制することができる。つまり、定常円旋回の時は、所定条件が成立したと判断される場合もあるが、増加側の所定値を閾値THとすることで、定常円旋回の場合に更新される直進時回転速度比較値Vdiff_sを効果的に抑制することができる。
(変形例2)上記実施の形態では、所定時間T1中に記憶した複数の回転速度比較値Vdiffの平均値を直進時回転速度比較値Vdiff_sとしたが、所定時間T1中に記憶した何れかの1つの回転速度比較値Vdiff(例えば、最小値の回転速度比較値Vdiff、又は、最新の回転速度比較値Vdiff)を直進時回転速度比較値Vdiff_sとしてもよい。また、所定条件が成立すると、所定時間T1が経過するのを待つことなく直ちに直進時回転速度比較値Vdiff_sを更新してもよい。この場合は、所定条件の成立時の回転速度比較値Vdiffを直進時回転速度比較値Vdiff_sとして更新する。
(変形例3)上記実施の形態では、直進旋回判定装置100は、ウインカキャンセルに用いるようにしたが、自動二輪車では、車体のバンク角推定に用いてもよい。
以上、本発明について好適な実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態の記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、特許請求の範囲に記載された括弧書きの符号は、本発明の理解の容易化のために添付図面中の符号に倣って付したものであり、本発明がその符号をつけた要素に限定されて解釈されるものではない。
10…自動二輪車 12…車体フレーム
18…前輪 30…後輪
100…直進旋回判定装置 102…ウインカ
102L…左ウインカ 102R…右ウインカ
104…ウインカスイッチ 106…前輪回転速度センサ
108…後輪回転速度センサ 110…制御部
120…ウインカ動作手段 122…車速検出手段
124…回転速度比較値算出手段 126…加速度検出手段
128…直進旋回判定手段 130…キャンセル手段
132…更新手段

Claims (8)

  1. 前輪(18)の回転速度を検出する前輪回転速度検出手段(106)と、
    後輪(30)の回転速度を検出する後輪回転速度検出手段(108)と、
    前記前輪(18)の回転速度と前記後輪(30)の回転速度とを比較した値である回転速度比較値(Vdiff)を算出する回転速度比較値算出手段(124)と、
    前記回転速度比較値(Vdiff)の大小によって車両(10)が直進中か旋回中かを判定する直進旋回判定手段(128)と、
    を備える直進旋回判定装置(100)において、
    車両速度を検出する車速検出手段(122)と、
    車両加速度を検出する加速度検出手段(126)と、
    を備え、
    前記直進旋回判定手段(128)は、前記車両速度が第1所定速度以下で、前記車両加速度の絶対値が所定加速度以下で、且つ、ウインカ(102)が作動していない状態における前記回転速度比較値(Vdiff)を、直進時回転速度比較値(Vdiff_s)として用い、前記回転速度比較値(Vdiff)と前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)との比率又は差が閾値(TH)よりも大きくなった時に旋回中と判定する
    ことを特徴とする直進旋回判定装置(100)。
  2. 請求項1に記載の直進旋回判定装置(100)において、
    前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)は、前記車両速度が前記第1所定速度以下で、前記車両加速度の絶対値が前記所定加速度以下で、且つ、前記ウインカ(102)が作動していない状態が第1所定時間継続した場合に、更新される
    ことを特徴とする直進旋回判定装置(100)。
  3. 請求項2に記載の直進旋回判定装置(100)において、
    前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)は、前記第1所定時間中の前記回転速度比較値(Vdiff)の平均値である
    ことを特徴とする直進旋回判定装置(100)。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の直進旋回判定装置(100)において、
    前記車両速度が前記第1所定速度以下で、前記車両加速度の絶対値が前記所定加速度以下で、且つ、前記ウインカ(102)が作動していない状態における前記回転速度比較値(Vdiff)が、前回の前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)に対して所定値を超える比率又は差がある場合は、今回更新される前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)の変化量に制限を設ける
    ことを特徴とする直進旋回判定装置(100)。
  5. 請求項4に記載の直進旋回判定装置(100)において、
    前回の前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)に対する今回更新される前記直進時回転速度比較値(Vdiff_s)の前記変化量は、前記所定値以下の値に制限される
    ことを特徴とする直進旋回判定装置(100)。
  6. 請求項4又は5に記載の直進旋回判定装置(100)において、
    増加側の前記所定値は、前記閾値(TH)以下の値に設定される
    ことを特徴とする直進旋回判定装置(100)。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の直進旋回判定装置(100)において、
    前記回転速度比較値(Vdiff)は、前後輪の回転速度の比率である
    ことを特徴とする直進旋回判定装置(100)。
  8. 請求項1〜6の何れか1項に記載の直進旋回判定装置(100)において、
    前記回転速度比較値(Vdiff)は、前後輪の回転速度の差である
    ことを特徴とする直進旋回判定装置(100)。
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