JP2014141021A - 塗装金属素形材、複合体およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塗装金属素形材は、金属素形材と、金属素形材の上に配置され、厚みが0.2μm以上の有機樹脂層とを有する。有機樹脂層は、熱可塑性樹脂組成物に含まれる無機フィラーに作用できる金属化合物からなる接合促進剤を含む。
【選択図】なし
Description
[1]無機フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物の成形体と接合されうる塗装金属素形材であって、金属素形材と、前記金属素形材の上に配置され、厚みが0.2μm以上の有機樹脂層と、を有し、前記有機樹脂層は、前記無機フィラーに作用できる金属化合物からなる接合促進剤を含む、塗装金属素形材。
[2]前記接合促進剤は、Ti、Zr、VおよびMoからなる群から選択される金属の酸化物、水酸化物またはフッ化物あるいはこれらの組み合わせである、[1]に記載の塗装金属素形材。
[3]前記有機樹脂層を構成する有機樹脂は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの共重合体およびこれらの変性物からなる群から選択される1種または2種以上の組み合わせである、[1]または[2]に記載の塗装金属素形材。
[4]無機フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物の成形体と接合されうる塗装金属素形材の製造方法であって、金属素形材の上に、有機樹脂と、前記無機フィラーに作用できる金属化合物からなる接合促進剤とを含む塗料を塗布し、乾燥させて、厚みが0.2μm以上の有機樹脂層を形成する工程を含む、塗装金属素形材の製造方法。
[5]前記接合促進剤は、Ti、Zr、VおよびMoからなる群から選択される金属の酸化物、水酸化物またはフッ化物あるいはこれらの組み合わせである、[4]に記載の塗装金属素形材の製造方法。
[6][1]〜[3]のいずれか一項に記載の塗装金属素形材と、前記塗装金属素形材の表面に接合された、無機フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物の成形体と、を有する、複合体。
[7]前記無機フィラーは、ガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維、炭素繊維または高分子高強力繊維である、[6]に記載の複合体。
[8]前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびメタアクリル酸系樹脂からなる群から選択される1種または2種以上の有機樹脂を含む、[6]または[7]に記載の複合体。
[9]前記熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、1.1%以下である、[6]〜[8]のいずれか一項に記載の複合体。
[10]金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体とが接合された複合体の製造方法であって、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の塗装金属素形材を準備するステップと、前記塗装金属素形材の表面に加熱された熱可塑性樹脂組成物を接触させて、前記塗装金属素形材の表面に前記熱可塑性樹脂組成物の成形体を接合するステップと、を含み、前記熱可塑性樹脂組成物は、無機フィラーを含む、複合体の製造方法。
本発明に係る複合体は、本発明に係る塗装金属素形材と、本発明に係る塗装金属素形材の表面に接合された、無機フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物の成形体とを有する。以下、本発明に係る複合体の各構成要素について説明する。
本発明に係る塗装金属素形材は、金属素形材と、金属素形材の表面に配置された有機樹脂層とを有する。塗装金属素形材は、金属素形材と有機樹脂層との間に化成処理皮膜が配置されていてもよい。以下、塗装金属素形材の各構成要素について説明する。
塗装基材となる金属素形材の種類は、特に限定されない。金属素形材の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板などの金属板や、そのプレス加工品、あるいは、アルミダイカスト、亜鉛ダイカストなどの鋳造・鍛造物や、切削加工、粉末冶金などにより成形された各種金属部材などが含まれる。金属素形材は、必要に応じて、脱脂、酸洗などの公知の塗装前処理が施されていてもよい。
前述のように、塗装金属素形材は、金属素形材と有機樹脂層との間に化成処理皮膜が配置されていてもよい。化成処理皮膜は、金属素形材の表面に配置されており、金属素形材と有機樹脂層の間の密着性および塗装金属素形材の耐食性を向上させる。化成処理皮膜は、金属素形材の表面のうち、少なくとも熱可塑性樹脂組成物の成形体と接合する領域(接合面)に配置されていればよいが、通常は金属素形材の表面全体に配置されている。
有機樹脂層は、金属素形材(または化成処理皮膜)の表面に配置されている、有機樹脂を主成分とする層である。有機樹脂層は、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との密着性を向上させる。
熱可塑性樹脂組成物の成形体は、無機フィラーを含み、塗装金属素形材の表面(より正確には、有機樹脂層の表面)に接合されている。熱可塑性樹脂組成物の成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択されうる。
本発明に係る複合体の製造方法は、(1)本発明に係る塗装金属素形材を準備する第1工程と、(2)塗装金属素形材の表面に加熱された熱可塑性樹脂組成物を接触させて、塗装金属素形材の表面に熱可塑性樹脂組成物の成形体を接合する第2工程と、を有する。以下、各工程について説明する。
第1工程では、本発明に係る塗装金属素形材を準備する。前述のとおり、本発明に係る塗装金属素形材は、有機樹脂や所定の接合促進剤などを含む塗料を金属素形材の表面に塗布し、乾燥させて、有機樹脂層を形成することで形成される。有機樹脂層を形成する前に、化成処理皮膜を形成してもよい。
第2工程では、塗装金属素形材の表面に加熱された熱可塑性樹脂組成物を接触させて、塗装金属素形材の表面に熱可塑性樹脂組成物の成形体を接合する。前述のとおり、熱可塑性樹脂組成物は、無機フィラーを含む。塗装金属素形材は、プレス加工などにより所望の形状に加工されていてもよい。
(1)金属板
塗装原板として、ステンレス鋼板、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、溶融Alめっき鋼板および溶融Znめっき鋼板を準備した。
ステンレス鋼板として、板厚が0.8mmのSUS430、No.4仕上げ材を準備した。
溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板として、片面あたりのめっき付着量が45g/m2の溶融Zn−6質量%Al−3質量%Mg合金めっき鋼板を準備した。基材鋼板は、板厚が0.8mmの冷間圧延鋼板(SPCC)である。
溶融Alめっき鋼板として、片面あたりのめっき付着量が45g/m2の溶融Al−9質量%Si合金めっき鋼板を準備した。基材鋼板は、板厚が0.8mmの冷間圧延鋼板(SPCC)である。
溶融Znめっき鋼板として、片面あたりのめっき付着量が45g/m2の合金化溶融Znめっき鋼板を準備した。基材鋼板は、板厚が0.8mmの冷間圧延鋼板(SPCC)である。
有機樹脂のエマルション、ポリエチレンワックスおよびエポキシ系架橋剤を水に添加して、不揮発成分が20%の有機樹脂塗料を調製した。得られた有機樹脂塗料に、接合促進剤、防錆剤および消泡剤をさらに添加して、23種類の塗料を調製した(表1〜3参照)。
有機樹脂のエマルションとして、ウレタン系樹脂のエマルション、ポリプロピレン(PP)系樹脂のエマルションまたはアクリル系樹脂のエマルションを添加した。ウレタン系樹脂のエマルションとしては、市販のポリウレタン樹脂エマルション(アデカボンタイターHUX−232;株式会社ADEKA)を使用した。ポリプロピレン系樹脂のエマルションとしては、市販の酸変性ポリプロピレン樹脂エマルション(ハードレンNZ−1005;東洋紡株式会社)を使用した。アクリル系樹脂のエマルションとしては、市販のアクリル樹脂エマルション(ボンコートCF−6140;DIC株式会社)を使用した。
接合促進剤として、Ti化合物、Zr化合物、V化合物、Mo化合物またはこれらの組み合わせを添加した。Ti化合物としては、(NH4)2TiF6(森田化学工業株式会社)を使用した。Zr化合物としては、(NH4)2ZrO(CO3)2(第一稀元素化学工業株式会社)を使用した。V化合物としては、V2O5(太陽鋼工株式会社)を使用した。Mo化合物としては、(NH4)6Mo7O24・4H2O(キシダ化学株式会社)を使用した。
防錆剤として、P化合物、PおよびMgを含む化合物、SiO2化合物またはこれらの組み合わせを添加した。P化合物としては、(NH4)2HPO4(キシダ化学株式会社)を使用した。PおよびMgを含む化合物としては、MgHPO4・3H2O(キシダ化学株式会社)を使用した。SiO2化合物としては、シリカゾル(スノーテックス−N、日産化学株式会社)を使用した。
架橋剤として、市販のエポキシ系架橋剤(HUX−XW3;株式会社ADEKA)を、樹脂合計質量に対して3.0質量%添加した。
ポリエチレンワックスとして、市販のポリエチレンワックス(E−9015;東邦化学工業株式会社)を、樹脂合計質量に対して3.0質量%添加した。
消泡剤として、市販のシリコーン系消泡剤樹脂(KM−73;信越化学工業株式会社)を、樹脂合計質量に対して0.05質量%添加した。
調製した23種類の塗料について、保管安定性を評価した。密閉容器に入れた各塗料を40℃恒温槽中で保管し、処理液の状態を観察した。各塗料について、30日以上安定であったものを「○」、30日未満で増粘あるいは固化したものを「×」と評価した。
塗装原板を液温40℃、pH12のアルカリ脱脂水溶液(SD−270;日本ペイント株式会社)に1分間浸漬して、表面を脱脂した。次いで、脱脂した塗装原板の表面に、上記(2)で調製した塗料をロールコータ−で塗布し、到達板温が150℃となるように、熱風乾燥機で乾燥させて、有機樹脂層を形成した。
(1)塗装金属板
表1〜3に示される23種類の塗装金属板を作製した。
熱可塑性樹脂組成物として、ポリエチレン(PE)系樹脂組成物、ポリプロピレン(PP)系樹脂組成物、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂組成物、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂組成物、ポリアセタール(POM)系樹脂組成物、ポリアミド(PA)系樹脂組成物、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂組成物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂組成物およびポリカーボネート(PC)系樹脂組成物を準備した。
表4に示される組み合わせで、塗装金属板と熱可塑性樹脂組成物の成形体とを接合して、塗装金属板と熱可塑性樹脂の成形体との複合体を作製した。
上記(3)で得られた各複合体について、塗装金属板および熱可塑性樹脂組成物の成形体を引っ張り、破断したときの強さ(剥離強度)を測定した。塗装金属板および熱可塑性樹脂組成物の成形体は、接合面と平行でかつ互いに反対向きの方向に、100mm/分の速度で引っ張った。剥離強度が1.0kN未満の場合を「×」、剥離強度が1.0kN以上であって1.5kN未満の場合を「△」、剥離強度が1.5kN以上であって2.0kN未満の場合を「○」、剥離強度が2.0kN以上の場合を「◎」と評価した。各複合体の接合力(剥離強度)の測定結果および評価結果を表4に示す。
Claims (10)
- 無機フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物の成形体と接合されうる塗装金属素形材であって、
金属素形材と、
前記金属素形材の上に配置され、厚みが0.2μm以上の有機樹脂層と、を有し、
前記有機樹脂層は、前記無機フィラーに作用できる金属化合物からなる接合促進剤を含む、
塗装金属素形材。 - 前記接合促進剤は、Ti、Zr、VおよびMoからなる群から選択される金属の酸化物、水酸化物またはフッ化物あるいはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の塗装金属素形材。
- 前記有機樹脂層を構成する有機樹脂は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの共重合体およびこれらの変性物からなる群から選択される1種または2種以上の組み合わせである、請求項1に記載の塗装金属素形材。
- 無機フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物の成形体と接合されうる塗装金属素形材の製造方法であって、
金属素形材の上に、有機樹脂と、前記無機フィラーに作用できる金属化合物からなる接合促進剤とを含む塗料を塗布し、乾燥させて、厚みが0.2μm以上の有機樹脂層を形成する工程を含む、
塗装金属素形材の製造方法。 - 前記接合促進剤は、Ti、Zr、VおよびMoからなる群から選択される金属の酸化物、水酸化物またはフッ化物あるいはこれらの組み合わせである、請求項4に記載の塗装金属素形材の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装金属素形材と、
前記塗装金属素形材の表面に接合された、無機フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物の成形体と、
を有する、複合体。 - 前記無機フィラーは、ガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維、炭素繊維または高分子高強力繊維である、請求項6に記載の複合体。
- 前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびメタアクリル酸系樹脂からなる群から選択される1種または2種以上の有機樹脂を含む、請求項6に記載の複合体。
- 前記熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、1.1%以下である、請求項6に記載の複合体。
- 金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体とが接合された複合体の製造方法であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装金属素形材を準備するステップと、
前記塗装金属素形材の表面に加熱された熱可塑性樹脂組成物を接触させて、前記塗装金属素形材の表面に前記熱可塑性樹脂組成物の成形体を接合するステップと、を含み、
前記熱可塑性樹脂組成物は、無機フィラーを含む、
複合体の製造方法。
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