JP2014139139A - ヒトテロメレース逆転写酵素に対するモノクローナル抗体 - Google Patents

ヒトテロメレース逆転写酵素に対するモノクローナル抗体 Download PDF

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Abstract

【課題】ヒトテロメレース逆転写酵素(hTERT)タンパク質を特異的に検出することができるモノクローナル抗体、特にウェスタンブロット法、細胞免疫染色法、ELISA法、免疫沈降法、クロマチン免疫沈降法、RNA−結合タンパク質免疫沈降法等の検出方法において、内在性hTERTタンパク質を特異的に検出することができるモノクローナル抗体を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合するモノクローナル抗体および前記ポリペプチドで免疫することによるhTERTに対するモノクローナル抗体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ヒトテロメレース逆転写酵素を特異的に認識するモノクローナル抗体並びにその製造方法に関する。
染色体末端に存在するテロメアを維持する酵素であるテロメレースは、発がん過程においてがん細胞の不死化を司る重要な酵素である。不死化とはがん細胞の持つ特徴の一つであり、細胞がいつまでも分裂することのできる能力である。テロメレースの重要な役割ががん細胞の不死化能の維持であったことから、がん治療の戦略上、ヒトテロメレースは非常に重要な分子として認識されてきた。大きな複合体を形成するヒトテロメレースの触媒活性タンパク質は、ヒトテロメレース逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase:hTERT)であることが知られている。ヒトテロメレース逆転写酵素(以下、「hTERT」とも称する)の遺伝子は1997年に初めて同定・報告された(非特許文献1〜2)。hTERTは、がん診断又は治療の標的として非常に重要な分子であるため、その遺伝子がクローニングされて以来、タンパク質の発現精製、抗体の作製等に関して、多くの研究者や企業が精力的に研究を推進してきた。
しかしながら、非特許文献3〜4に記載されているように、hTERTのタンパク質精製は困難である。また、非特許文献5〜7に記載されているように、これまで信頼度が高いと考えられていたhTERTに対する抗体ですら、実は異なる分子を認識していた。さらには、これまでに作製、販売されたhTERTに対する抗体を詳細に評価した結果、信頼性の高い抗体がなかったことが非特許文献5に報告されている。このように、hTERT遺伝子配列の特定以来、そのタンパク質の発現精製やモノクローナル抗体作製は非常に困難を極めている。また、現時点でウェスタンブロッティングやELISAにおいて唯一hTERTを検出することができるとされている抗体は、ポリクローナル抗体(Rockland社製、ウサギ由来抗hTERTポリクローナル抗体、カタログ番号:600−401−252)であるため、ポリクローナル抗体であるが故の製品ロット間の不安定性等の問題点を有している。
がんの診断や治療において重要な標的となることから科学的にも商業的にも、長年の間、そのモノクローナル抗体作製の成功が待ち望まれてきているにもかかわらず、遺伝子同定からタンパク質精製、モノクローナル抗体作製へと順調に進む、多くの他のタンパク質における科学の進歩とは異なり、hTERTタンパク質の発現等を十分に検出できるモノクローナル抗体は未だ提供されていない。
Meyerson Mら、Cell、1997年、90巻、4号、785〜795ページ Nakamura TMら、Science、1997年、277巻、5328号、955〜959ページ Masutomi Kら、J Biol Chem、2000年、275巻、29号、22568〜22573ページ Mikuni Oら、Biochem Biophys Res Commun、2002年、298巻、1号、144〜150ページ Wu YLら、J Cell Sci、2006年、119巻、13号、2797〜2806ページ Yan Pら、Histochem Cell Biol、2004年、121巻、5号、391〜397ページ Zendehrokh Nら、Acta Cytol、2007年、51巻、6号、886〜892ページ
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、hTERTタンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体並びにその製造方法を提供することを目的とする。本発明は、特に、ウェスタンブロット法、細胞免疫染色法、ELISA法、免疫沈降法、クロマチン免疫沈降法、RNA−結合タンパク質免疫沈降法等の検出方法において、内在性hTERTタンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ね、hTERTのN末側領域(hTERTタンパク質の180〜460アミノ酸)が抗原として適した部位であると推測した。また、合成オリゴペプチドを免疫抗原とした抗体作製の成功例はなかったため、前記N末側領域を大腸菌で発現させたリコンビナントタンパク質を抗原として用いることを解決策として考えた。そして、前記N末側領域をコードする塩基配列のコドン使用頻度を大腸菌に適したものに置換して、前記リコンビナントタンパク質の発現・精製を試みた。しかしながら、様々な条件検討を行ったものの、このhTERTタンパク質の180〜460アミノ酸からなるリコンビナントタンパク質の発現・精製をすることはできなかった。
そこで、本発明者らは更なる研究を進めた結果、hTERTタンパク質の304〜460アミノ酸からなるリコンビナントタンパク質については、大腸菌にて発現・精製させることが可能であることを見出し、該リコンビナントタンパク質を抗原として用いることにより、hTERTに対するモノクローナル抗体を作製することに成功した。さらに、本発明者らは、作製したモノクローナル抗体のスクリーニングを多段階的に種々の方法を用いて行うことにより、特異性が高く、種々の検出方法(ウェスタンブロット法、細胞免疫染色法、ELISA法、免疫沈降法、クロマチン免疫沈降法およびRNA−結合タンパク質免疫沈降法)に適用可能な極めて優良なモノクローナル抗体を調製することにも成功した。
また、現時点で唯一hTERTタンパク質を検出することができるとされているウサギ由来抗hTERTポリクローナル抗体(Rockland社製)より、前記いずれの検出方法においても、前記モノクローナル抗体の検出感度は優れていた。さらに、該モノクローナル抗体を用いると、これまで極めて困難であった内在性hTERTタンパク質の免疫沈降も極めて効率良くでき、近年報告された新規hTERT結合RNAであるRMRP(Maida Y、Masutomi K、Biol Chem、2011年、392巻、4号、299〜304ページ、Maida Yら、Nature。2009年、461巻、7261号、230〜235ページ 参照)を含むhTERT結合RNAを網羅的に検出できるという特性を持ち合わせていることも見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、hTERTタンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体並びにその製造方法に関し、より詳しくは以下の発明を提供するものである。
<1> 配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合するモノクローナル抗体。
<2> 配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドで免疫することを特徴とする、ヒトテロメレース逆転写酵素に対するモノクローナル抗体の製造方法。
本発明によれば、hTERTタンパク質を特異的に検出することが可能となる。特に、ウェスタンブロット法、細胞免疫染色法、ELISA法、免疫沈降法、クロマチン免疫沈降法、RNA−結合タンパク質免疫沈降法等の検出方法において、内在性hTERTタンパク質を特異的に検出することが可能となる。
hTERTタンパク質(1〜100アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(101〜200アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(201〜300アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(301〜400アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(401〜500アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(501〜600アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(601〜700アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(701〜800アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(801〜900アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(901〜1000アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(1001〜1100アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 hTERTタンパク質(1101〜1132アミノ酸)における予想抗原性を分析した結果を示す、配列及びグラフである。 大腸菌におけるhTERTタンパク質(180〜460アミノ酸)の発現をSDS−PAGE、CBB染色(図中A)及びウェスタンブロット法(図中B)にて分析した結果を示す写真である。 hTERTタンパク質(180〜460アミノ酸)を発現させた大腸菌を前培養を含む通常の大量培養法により培養し、得られた培養菌体の破砕上清をNiキレートカラムにて精製してSDS−PAGE及びCBB染色にて分析した結果を示す写真である。 hTERTタンパク質(180〜460アミノ酸)を発現させた大腸菌をコロニーピックアップ法により培養し、得られた培養菌体の破砕上清をNiキレートカラムにて精製してSDS−PAGE及びCBB染色にて分析した結果を示す写真である。 hTERTタンパク質(180〜460アミノ酸)を発現させた大腸菌をコロニーピックアップ法により培養し、得られた培養菌体の破砕上清をNiキレートカラムにて精製してウェスタンブロット法にて分析した結果を示す写真である。 大腸菌におけるhTERTタンパク質(180〜320アミノ酸)の発現をSDS−PAGE、CBB染色(図中A)及びウェスタンブロット法(図中B)にて分析した結果を示す写真である。 大腸菌におけるhTERTタンパク質(304〜460アミノ酸)の発現をSDS−PAGE、CBB染色(図中A)及びウェスタンブロット法(図中B)にて分析した結果を示す写真である。 培養菌体の破砕上清をNiキレートカラムにて精製して得られた精製hTERTタンパク質(304〜460アミノ酸)の純度をSDS−PAGE、CBB染色(図中A)及びウェスタンブロット法(図中B)にて分析した結果を示す写真である。 ウェスタンブロッティングにより、抗hTERTモノクローナル抗体をスクリーニングした結果を示す写真である。なお、図中のAはBJ細胞(陰性対照)及びBJ−TAP−hTERT細胞(陽性対照)を用いたウェスタンブロッティングにより分析した結果を示し、図中のBは293T−hTERT細胞(陽性対照)及びBJ−TAP−hTERT細胞(陽性対照)を用いたウェスタンブロッティングにより分析した結果を示す。 GFP−hTERT発現Hela細胞を用いた蛍光免疫染色により、抗hTERTモノクローナル抗体をスクリーニングした結果を示す顕微鏡写真である。なお図中、「DAPI」は細胞の核をDAPIにて染色した結果を示し、「GFP−hTERT」はhTERTタンパク質に融合しているGFPのシグナルを検出した結果を示し、「抗hTERT抗体」は各抗hTERTモノクローナル抗体によって蛍光免疫染色した結果を示す。 hTERTの全長及びトランケーション変異体を用いて、抗hTERTモノクローナル抗体の認識部位を分析した結果を示す図である。なお図中Aは、293T細胞に過剰発現させたFLAG−hTERTタンパク質の全長(Full)及びトランケーション変異体(HT1、EB、EX)の模式図を示す。各模式図の右側に付された数値は各々の変異体のアミノ酸数を示す。また、図中Bは、293T細胞にFLAGタグを付加したhTERTタンパク質の全長又はトランケーション変異体を一過性に過剰発現した細胞をサンプルとし、ウェスタンブロッティング(immunoblotting:IB)を行なった結果を示す写真である。左のパネルは、抗hTERTモノクローナル抗体(9B10−10)を用いたウェスタンブロッティングによる分析の結果を示し、右のパネルは、抗FLAG(M2)抗体を用いたウェスタンブロッティングによる分析の結果を示す。 293T−hTERT細胞及びBJ−TAP−hTERT細胞をサンプルとし、抗hTERTモノクローナル抗体又はRockland社製抗hTERTポリクロ―ナル抗体を用いてウェスタンブロッティングを行なった結果を示す写真である。上のパネルは抗hTERTモノクローナル抗体(2E4−2)を用いてブロット(IB)し検出されたバンドを、下のパネルはRockland社製抗hTERTポリクロ―ナル抗体を用いてブロットを行ない検出されたバンドを示す。 トリプルネガティブ乳がん細胞株をサンプルとし、抗hTERTモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングを行なった結果を示す写真である。上のパネルは抗hTERTモノクローナル抗体(2E4−2)を用いてブロットし検出されたバンドを、下のパネルはウェスタンブロッティングに使用したトリプルネガティブ乳がん細胞株から抽出したRNAを用いて行なったRT−PCRの結果であり、検出されたバンドはhTERTのmRNAの発現量を示す。なお、いずれの細胞でもRNAの発現量とタンパク質の発現量とは相関が見られた。 FLAGタグを付加したhTERTタンパク質を過剰発現した293T細胞を使用し、プロテインA、Rockland社製抗hTERTポリクローナル抗体又は抗hTERTモノクローナル抗体(10E9−2)を用いて免疫沈降(IP)を行ない、免疫沈降後のビーズをサンプルとしてウェスタンブロッティングを行なった結果を示す写真である。また、抗FLAG(M2)抗体を用いてウェスタンブロッティングを行ない、hTERTに付加しているFLAGタグを検出することによって免疫沈降の効率を評価し、Rockland社製抗hTERTポリクローナル抗体によって得られたバンドを100とした時の抗hTERTモノクローナル抗体によって得られたバンドの相対的な量をパネル下部の数値に示す。 HeLa細胞を使用し、プロテインA、Rockland社製抗hTERTポリクローナル抗体又は抗hTERTモノクローナル抗体(10F3−10)を用いて免疫沈降を行ない、免疫沈降後のビーズから抽出したRNAをサンプルとしてRT−PCRを行なった結果を示す写真である。なお、hTERTに結合するRNA RMRP及びhTERCを検出することで免疫沈降の効率を評価し、上のパネルにはRMRPの配列に特異的なプライマーを使用して検出したバンドを、下のパネルにはhTERCの配列に特異的なプライマーを使用して検出したバンドを示す。また、各パネル下部の数値はRockland社製抗hTERTポリクロ―ナル抗体によって得られたバンドを100とした時の抗hTERTモノクローナル抗体によって得られたバンドの相対的な量を示す。 HeLa細胞を用いてクロマチン免疫沈降を行ない、テロメア末端配列を検出するプローブ(TRFプローブ)を用いたドットブロット法により評価した結果を示す写真である。上のパネルは抗体なし(抗体(−))でクロマチン免疫沈降した画分、中央のパネルはRockland社製抗hTERTポリクローナル抗体でクロマチン免疫沈降した画分、下のパネルは抗hTERTモノクローナル抗体(10E9−2)でクロマチン免疫沈降した画分を示す。 GFP−hTERT発現HeLa細胞を、抗hTERTモノクローナル抗体及びDAPIを用いた蛍光免疫染色によって分析した結果を示す顕微鏡写真である。一番上の4枚のパネルは、抗hTERTモノクローナル抗体(10E9−2)及びDAPIで、中央の4枚のパネルは、Rockland社製抗hTERTポリクローナル抗体及びDAPIで、一番下の4枚のパネルは、1次抗体無しで染色した結果を各々示す。また、一番左の列はDAPI染色像、左から二列目はGFP−hTERT像、左から3列目は抗hTERT抗体染色像、一番右の列はDAPI染色像、GFP−hTERT像、抗hTERT抗体染色像の重ね合わせ画像である。スケールバーは20μmを示す。 BJ細胞及びBJ−pBH−hTERT細胞を、抗hTERT抗体及びDAPIを用いた蛍光免疫染色によって分析した結果を示す顕微鏡写真である。上の6枚のパネルはBJ細胞、下の6枚のパネルはBJ−pBH−hTERT細胞で、左から1、2列目がDAPI及びRockland社製抗hTERTポリクローナル抗体染色像、左から3、4列目がDAPI及び抗hTERTモノクローナル抗体(10E9−2)染色像、左から5、6列目がDAPI及び1次抗体無しの染色像を示す。スケールバーは20μmを示す。
本発明は、配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合するモノクローナル抗体を提供する。
本発明にかかる「配列番号:2」に記載のアミノ酸配列は、ヒトテロメレース逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase:hTERT)に由来するものであり、GenBank アクセッション番号 NP_937983.2で特定されるタンパク質、すなわちGenBank アクセッション番号 NM_198253.2で特定される塩基配列がコードするタンパク質の180位(アラニン残基)〜460位(グルタミン残基)に記載のアミノ酸配列である。
従って、「本発明にかかる配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列」は、GenBank アクセッション番号 NP_937983.2で特定されるタンパク質、すなわちGenBank アクセッション番号 NM_198253.2で特定される塩基配列がコードするタンパク質の304位(ヒスチジン残基)〜460位(グルタミン残基)に記載のアミノ酸配列である。
本発明にかかる「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体(抗体断片を含む)を意味する。また、本発明にかかる「モノクローナル抗体」は、異なるエピトープに対する異なる抗体を含む抗体調製物であるポリクローナル抗体とは対照的に、抗原上の単一の決定基を認識するものである。
また、本発明の「モノクローナル抗体」は、免疫グロブリンのすべてのクラスおよびサブクラスを含み、さらに、抗体の機能的断片の形態も含む意である。
本発明のモノクローナル抗体の好ましい態様は、後述の実施例に記載の、9B10−10、10F3−10、2E4−2及び10E9−2からなる群より選択される少なくとも1のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体である。
また、本発明のモノクローナル抗体の好ましい別の態様は、前記ハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域と、重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域とを保持する抗体又はそれらのアミノ酸配列変異体である。
なお「CDR」とは、相補性決定領域(Complementarity Determining Region:CDR)とも称され、抗体を構成する可変領域において、抗原に対する結合を担う部位のことである。また、CDRは、可変領域中の極めて変異度の高い領域のことであり、抗体(免疫グロブリン)を構成する重鎖及び軽鎖の可変領域中に各々3ヶ所(CDR1〜3)ずつ存在する。
さらに、本発明のモノクローナル抗体の好ましい別の態様は、後述の実施例6に記載のELISAにおいて、吸光度(測定波長450nm)が0.2以上(より好ましくは0.5以上、特に好ましくは1.0以上)であるモノクロ―ナル抗体である。
また、本発明のモノクローナル抗体の好ましい別の態様は、後述の実施例9に記載の免疫沈降において、hTERTタンパク質を沈降させる活性が、Rockland社製 抗hTERTポリクローナル抗体(ウサギ由来、カタログ番号:600−401−252)と比較して、2倍以上(より好ましくは5倍以上)であるモノクロ―ナル抗体である。
さらに、本発明のモノクローナル抗体の好ましい別の態様は、後述の実施例9に記載のRNA−結合タンパク質免疫沈降において、hTERTタンパク質に結合しているRNA(RMRP又はhTERC)を共沈降させる活性が、Rockland社製 抗hTERTポリクローナル抗体(ウサギ由来、カタログ番号:600−401−252)と比較して、2倍以上(より好ましくは3倍以上)であるモノクロ―ナル抗体である。
また、本発明のモノクローナル抗体の好ましい別の態様は、後述の実施例9に記載のクロマチン免疫沈降において、hTERTタンパク質に結合している末端制限フラグメント(Telomere Restriction Fragment:TRF)を共沈降させる活性を有するモノクロ―ナル抗体である。
本発明のモノクローナル抗体は、後述するように、研究用試薬としての利用の他、診断薬や治療薬などの医薬として利用することが可能である。従って、本発明のモノクローナル抗体には、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および、これら抗体の機能的断片が含まれる。本発明の抗体を医薬としてヒトに投与する場合は、副作用低減の観点から、特に、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体が望ましい。
本発明において「キメラ抗体」とは、ある種の抗体の可変領域とそれとは異種の抗体の定常領域とを連結した抗体である。キメラ抗体は、例えば、抗原をマウスに免疫し、そのマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する抗体可変部(可変領域)を切り出して、ヒト骨髄由来の抗体定常部(定常領域)遺伝子と結合し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入して産生させることにより取得することができる(例えば、特開平7−194384号公報、特許3238049号公報、米国特許第4816397号公報、米国特許第4816567号公報、米国特許第5807715号公報)。また、本発明において「ヒト化抗体」とは、非ヒト由来の抗体のCDRの遺伝子配列をヒト抗体遺伝子に移植(CDRグラフティング)した抗体であり、その作製方法は、公知である(例えば、特許2912618号、特許2828340号公報、特許3068507号公報、欧州特許239400号公報、欧州特許125023号公報、国際公開90/07861号公報、国際公開96/02576号公報参照)。本発明において、「ヒト抗体」とは、すべての領域がヒト由来の抗体である。ヒト抗体の作製においては、免疫することで、ヒト抗体のレパートリーを生産することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を利用することが可能である。ヒト抗体の作製手法は、公知である(例えば、Nature,362:255−258(1992)、Intern. Rev.Immunol,13:65−93(1995)、J.Mol.Biol,222:581−597(1991)、Nature Genetics,15:146−156(1997)、Proc. Natl.Acad.Sci.USA,97:722−727(2000)、特開平10−146194号公報、特開平10−155492号公報、特許2938569号公報、特開平11−206387号公報、特表平8−509612号公報、特表平11−505107号公報)。
本発明において抗体の「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを特異的に認識するものを意味する。具体的には、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、多特異性抗体、およびこれらの重合体などが挙げられる。
ここで「Fab」とは、1つの軽鎖および重鎖の一部からなる免疫グロブリンの一価の抗原結合断片を意味する。抗体のパパイン消化によって、また、組換え方法によって得ることができる。「Fab’」は、抗体のヒンジ領域の1つまたはそれより多いシステインを含めて、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端でのわずかの残基の付加によって、Fabとは異なる。「F(ab’)2」とは、両方の軽鎖と両方の重鎖の部分からなる免疫グロブリンの二価の抗原結合断片を意味する。
「可変領域断片(Fv)」は、完全な抗原認識および結合部位を有する最少の抗体断片である。Fvは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域が非共有結合により強く連結されたダイマーである。「一本鎖Fv(sFv)」は、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、これらの領域は、単一のポリペプチド鎖に存在する。「sc(Fv)2」は、2つの重鎖可変領域および2つの軽鎖可変領域をリンカー等で結合して一本鎖にしたものである。「ダイアボディー」とは、二つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片であり、この断片は、同一ポリペプチド鎖の中に軽鎖可変領域に結合した重鎖可変領域を含み、各領域は別の鎖の相補的領域とペアを形成している。「多特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。例えば、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現により調製することができる。
本発明のモノクローナル抗体には、望ましい活性(例えば、ウェスタンブロット法、細胞免疫染色法、ELISA法、免疫沈降法、クロマチン免疫沈降法、RNA−結合タンパク質免疫沈降法等の検出方法において、hTERTタンパク質を特異的に検出する活性)を減少させることなく、そのアミノ酸配列が修飾された抗体が含まれる。本発明のモノクローナル抗体のアミノ酸配列変異体は、本発明の抗体鎖をコードするDNAへの変異導入によって、またはペプチド合成によって作製することができる。そのような修飾には、例えば、本発明のモノクローナル抗体のアミノ酸配列内の残基の置換、欠失、付加および/または挿入を含む。抗体のアミノ酸配列が改変される部位は、改変される前の抗体と同等の活性を有する限り、抗体の重鎖または軽鎖の定常領域であってもよく、また、可変領域(フレームワーク領域およびCDR)であってもよい。CDR以外のアミノ酸の改変は、抗原との結合親和性への影響が相対的に少ないと考えられるが、現在では、CDRのアミノ酸を改変して、抗原へのアフィニティーが高められた抗体をスクリーニングする手法が公知である(PNAS, 102:8466−8471(2005)、Protein Engineering, Design & Selection, 21:485−493(2008)、国際公開第2002/051870号、J. Biol. Chem., 280:24880−24887(2005)、Protein Engineering, Design & Selection, 21:345−351(2008))。
改変されるアミノ酸数は、好ましくは、10アミノ酸以内、より好ましくは5アミノ酸以内、最も好ましくは3アミノ酸以内(例えば、2アミノ酸以内、1アミノ酸)である。アミノ酸の改変は、好ましくは、保存的な置換である。本発明において「保存的な置換」とは、化学的に同様な側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換することを意味する。化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のグループは、本発明の属する技術分野でよく知られている。例えば、酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン・アルギニン・ヒスチジン)、中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・プロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン・トレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン・メチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン・グルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン)で分類することができる。
アミノ酸配列変異体は、抗原への結合活性が対象抗体(代表的には、本実施例に記載の抗体、すなわち、9B10−10、10F3−10、2E4−2及び10E9−2からなる群より選択される少なくとも1のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体)と同等であることが好ましい。抗原への結合活性は、例えば、配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを用いたELISAによって評価することができる(後述の実施例6 参照)。また、hTERTタンパク質が発現している細胞を用いた、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、RNA−結合タンパク質免疫沈降、クロマチン免疫沈降、細胞免疫染色によっても評価することができる(後述の実施例9 参照)。
また、本発明の抗体の改変は、例えば、グリコシル化部位の数、位置、種類を変化させるなどの抗体の翻訳後プロセスの改変であってもよい。抗体のグリコシル化とは、典型的には、N−結合またはO−結合である。抗体のグリコシル化は、抗体を発現するために用いる宿主細胞に大きく依存する。グリコシル化パターンの改変は、糖生産に関わる特定の酵素の導入または欠失などの公知の方法で行うことができる(特開2008−113663号公報、特許4368530号公報、特許4290423号公報、米国特許第5047335号公報、米国特許第5510261号公報、米国特許第5278299号公報、国際公開第99/54342号公報)。さらに、本発明においては、抗体の安定性を増加させる等の目的で脱アミド化されるアミノ酸若しくは脱アミド化されるアミノ酸に隣接するアミノ酸を他のアミノ酸に置換することにより脱アミド化を抑制してもよい。また、グルタミン酸を他のアミノ酸へ置換して、抗体の安定性を増加させることもできる。本発明は、こうして安定化された抗体をも提供するものである。
本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法によって作製することができる。
ハイブリドーマ法としては、代表的には、コーラーおよびミルスタインの方法(Kohler & Milstein,Nature,256:495(1975))が挙げられる。この方法における細胞融合工程に使用される抗体産生細胞は、抗原(配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド)で免疫された動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、サル、ヤギ)の脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血白血球などである。免疫されていない動物から予め単離された上記の細胞またはリンパ球などに対して、抗原を培地中で作用させることによって得られた抗体産生細胞も使用することが可能である。ミエローマ細胞としては公知の種々の細胞株を使用することが可能である。抗体産生細胞およびミエローマ細胞は、それらが融合可能であれば、異なる動物種起源のものでもよいが、好ましくは、同一の動物種起源のものである。ハイブリドーマは、例えば、抗原で免疫されたマウスから得られた脾臓細胞と、マウスミエローマ細胞との間の細胞融合により産生され、その後のスクリーニングにより、配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、ハイブリドーマを培養することにより、また、ハイブリドーマを投与した哺乳動物の腹水から、取得することができる。
組換えDNA法は、上記本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAをハイブリドーマやB細胞等からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞(例えば哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞など)に導入し、本発明の抗体を組換え抗体として産生させる手法である(例えば、P.J.Delves,Antibody Production:Essential Techniques,1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean Monoclonal Antibodies,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS、Vandamme A.M.et al.,Eur.J.Biochem.192:767−775(1990))。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAの発現においては、重鎖または軽鎖をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよく、重鎖および軽鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよい(WO94/11523号公報参照)。本発明のモノクローナル抗体は、上記宿主細胞を培養し、宿主細胞内または培養液から分離・精製し、実質的に純粋で均一な形態で取得することができる。抗体の分離・精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている方法を使用することができる。トランスジェニック動物作製技術を用いて、抗体遺伝子が組み込まれたトランスジェニック動物(ウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタなど)を作製すれば、そのトランスジェニック動物のミルクから、抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である。
従って、本発明は、配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドで免疫することを特徴とする、ヒトテロメレース逆転写酵素(hTERT)に対するモノクローナル抗体の製造方法をも提供する。
また、本発明は、上記本発明のモノクローナル抗体をコードするDNA、該DNAを含むベクター、該DNAを保持する宿主細胞、および該宿主細胞を培養し、抗体を回収することを含む抗体の生産方法をも提供することができる。
本発明のモノクローナル抗体は後述の実施例において示す通り、hTERTタンパク質を特異的に認識して結合することができ、特に、ウェスタンブロット法、細胞免疫染色法、ELISA法、免疫沈降法、クロマチン免疫沈降法、RNA−結合タンパク質免疫沈降法等において、内在性hTERTタンパク質を特異的に認識して結合することができる。また、本発明のモノクローナル抗体は、クロマチン免疫沈降法、RNA−結合タンパク質免疫沈降法において、hTERTタンパク質に結合しているRNAやDNAも共沈降させることができる。従って、本発明は、本発明のモノクローナル抗体を有効成分とする、hTERTタンパク質を検出及び/又は精製するための組成物を提供する。また、hTERTタンパク質に結合している分子(核酸(RNA、DNA)、タンパク質等)を検出及び/又は精製するための組成物を提供する。
本発明の組成物は、研究目的(例えば、インビトロやインビボの実験)で、hTERTタンパク質を検出及び/又は精製するための試薬、hTERTタンパク質に結合している分子を検出及び/又は精製するための試薬の形態であり得る。特に、本発明のモノクローナル抗体は、後述の実施例9に示す通り、内在性レベルでhTERTタンパク質を免疫沈降することができることから、既存のhTERTタンパク質に結合しているRNA(RMRP、hTERC)のみならず、hTERTタンパク質に結合している新規RNAを網羅的に解析するための試薬の形態でもあり得る。
また、hTERTの重要な役割は、がん細胞の不死化能の維持又はがん幹細胞の機能維持であることから、本発明の組成物は、各種がん(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、腹膜がん、肝臓がん、前立腺がん、原発不明がん、悪性リンパ腫、白血病など)及び/又はこれらのがん種のがん幹細胞に対する診断薬の形態であり得る。
本発明の組成物としては、本発明のモノクローナル抗体の他、試薬又は診断薬として許容される他の成分を含むことができる。このような他の成分としては、例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩が挙げられる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D−マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としてはアジ化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。
また、本発明のモノクローナル抗体を研究目的におけるhTERTタンパク質の検出や、癌等の診断に用いる場合、本発明のモノクローナル抗体は、標識したものであってもよい。かかる標識としては、例えば、放射性物質、蛍光色素、化学発光物質、酵素、補酵素を用いることが可能であり、具体的には、ラジオアイソトープ、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、リゾチーム、ビオチン/アビジンなどが挙げられる。
さらに、本発明のモノクローナル抗体をhTERTタンパク質の精製や、hTERTタンパク質に結合している分子(核酸(RNA、DNA)、タンパク質等)の検出及び/又は精製に用いる場合、本発明のモノクローナル抗体は、担体に直接固定化したものであってもよい。かかる担体としては、アガロース、多孔性シリカ、ポリスチレン、ラテックス、ポリカーボネート、磁性ビーズが挙げられる。
また、本発明の組成物の製品(試薬、診断薬)またはその説明書は、hTERTタンパク質の検出等に用いられる旨の表示を付したものであり得る。ここで「製品または説明書に表示を付した」とは、製品の本体、容器、包装などに表示を付したこと、あるいは製品の情報を開示する説明書、添付文書、宣伝物、その他の印刷物などに表示を付したことを意味する。
さらに、本発明の組成物は、本発明の抗体がアンタゴニスト活性(テロメーレス活性阻害能、RNA依存性RNAポリメラーゼ活性阻害能)を有している場合には、各種がん(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、腹膜がん、肝臓がん、前立腺がん、原発不明がん、悪性リンパ腫、白血病など)を治療するための医薬組成物又はがん幹細胞を治療標的とする医薬組成物の形態もとり得る。一方、本発明の抗体がアゴニスト活性を有している場合には、hTERTはRNA依存性RNAポリメラーゼとしてRNA干渉作用の増幅を促進することができることから、RNA干渉を利用する医薬組成物の形態もとり得る。RMRPはその遺伝子変異が軟骨毛髪低形成症候群の発症と関連し、またRMRPの発現制御にhTERTが関与していることから、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体は軟骨毛髪低形成症候群を治療するための医薬組成物の形態もとり得る。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
抗原部位の選定
ヒトテロメレース逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase:hTERT、GenBank アクセッション番号 NP_937983.2(NM_198253.2))に対する抗体を作製するため、先ず抗原として適した部位の探索を行なった。すなわち、免疫動物として用いるマウス由来のTERTとhTERTとのアミノ酸配列における相同性、hTERTタンパク質の二次構造予測、親水性、抗原性等の複数のパラメーターを算出・数値化し、候補として適当な部位を検討した。得られた結果を図1〜12に示す。なお、図1〜12において、「ロブソン ガミエル(Robson and Gamier)」はアミノ酸配列から予測した二次構造を示し、「H」はαへリックス構造、「E」はβストランド構造、「C」はランダムコイル構造、「T」はターン構造をとり得ることを示す。また、「二次構造(Second Structure)」は構造既知のタンパク質とのマルチプルアライメントから予測した二次構造を示し、「H」はαへリックス構造、「E」はβストランド構造、「L」はループ構造をとり得ることを示す。さらに、「接触率(Accessibility)」は溶媒との接触率を示し、「e」は溶媒との接触率が高いこと、「b」は溶媒との接触率が低いことを示す。また、「トータル(Total)」は、二次構造予測、接触率、柔軟性(Flexibility)、表面への露出のし易さ(surface permability)、抗原性(Antigenecity)、親水性(hydrophilicity)、極性(Dipole)の全ての要素を統合して算出した、トータルの予想抗原性を示す。
図1〜12に示した結果から、hTERTタンパク質は550〜935アミノ酸中に、テロメレース特異的なTモチーフ(T motif)を含めた逆転写酵素ドメイン(Reverse transcriptase domain)を有しており、この領域はDNA結合などにより立体障害となる可能性が示唆された。
なお、これまでの試み(「Harrington Lら、Genes Dev、1997年、11巻、23号、3109〜3115ページ」、 Martin−Rivera et al, 1998;「Nakayama Jら、Nat Genet、1998年、18巻、1号、65〜68ページ」、「Martin−Rivera Lら、Proc Natl Acad Sci USA、1998年、95巻、18号、10471〜10476ページ」、「国際公開第99/050407号」)においては、抗体作製のための抗原として、hTERTタンパク質の550〜630アミノ酸の部位から抽出された合成オリゴペプチドが用いられてきた。
また、hTERTタンパク質の935アミノ酸以降のC末側領域は露出度の低いαへリックスの繰り返し構造を取ると予想され、全体的に数値が低値で推移するなど、抗原としてはあまり適した部位ではないと考えられた。なお、現時点でウェスタンブロッティング等において唯一hTERTを検出することができるとされているウサギ由来抗hTERTポリクローナル抗体(Rockland社製、カタログ番号:600−401−252)は、hTERTタンパク質(Accesion No.AAC51724.1(AF018167.1))のC末側付近の領域から抽出された合成オリゴペプチドを抗原として調製されている。さらに、図には示さないが、本発明者らの分析により、当該ポリクロ―ナル抗体の認識部位はhTERTタンパク質の832アミノ酸以降であることも明らかになっている。
一方、N末側領域は露出しやすい長いループ構造を取ると予想される部位が多く、抗原性の高さを示す数値も高値で推移していた。さらにマウスTERTタンパク質に対する配列特異性も良好であったため、その点でも抗原性が高いと予想した。そこで、hTERTのN末側領域のリコンビナントタンパク質(hTERTタンパク質の180〜460アミノ酸)を抗原として、抗体を作製することとした。なお、抗原には発現確認・精製用にHis−tagを付加した。
(実施例2)
人工遺伝子の合成
hTERTタンパク質180〜460アミノ酸の配列(配列番号:2)から塩基配列を設計した。設計の際には、大腸菌での発現効率を上げる為、大腸菌で使用されやすいコドンにアミノ酸配列が変化しないよう置き換えた。また、5’側と3’側に発現ベクターへ導入する為の制限酵素部位(5’側:NdeI制限部位(catatg)、3’側:XhoI制限部位(ctcgag))を付加した。設計した塩基配列を配列番号:1に示す。そして、このようにして設計した塩基配列を基に、人工遺伝子を合成した。すなわち先ず、目的配列(設計した塩基配列)をバイオインフォマティクス的に解析し、合成方法を設計した。次いで、200〜250塩基の1本鎖を複数本作製し、アニーリングして直鎖2本鎖を作製した。そして、得られた直鎖2本鎖をプラスミドベクター(pIDTSmart−KAN、IDT社製)に挿入し、大腸菌に導入した。次に、得られた形質転換体(大腸菌コロニー)に入っているプラスミドベクターの塩基配列を確認し、その後、シークエンスを行い、目的配列を有する人工遺伝子が合成されていることを確認した。
(実施例3)
抗原(hTERTタンパク質の180〜460アミノ酸)の調製
<3−1 大腸菌発現ベクターの構築>
前記人工遺伝子を含むプラスミドベクター及び大腸菌発現ベクターpET−30a(+)(Novagen社製)を、制限酵素NdeI(NewEngland Biolabs社製)及びXhoI(NewEngland Biolabs社製)にて切断した。Mupid−2plusサブマリン型電気泳動装置(ADVANCE社製)を用いたアガロース電気泳動によって、制限酵素による切断を確認し、目的のバンドをアガロースゲルより切り出して精製した。精製にはQIAクイックゲル抽出キット(QIA quick Gel Extraction Kit、キアゲン社製)を用いた。そして、精製した目的配列及び大腸菌発現ベクターをライゲーション反応液(Ligation High、東洋紡社製)に加え、16℃にて30分間ライゲーション反応を行った。次いで、得られたプラスミドベクターを大腸菌DH5αに導入し、この大腸菌をカナマイシンを含んだLB寒天培地にプレーティングし、37℃にて一晩培養した。
培養後、得られたコロニーは、pET−30a(+)のシークエンスプライマーを用いたコロニーPCRにより、目的遺伝子が含まれているかどうかを確認した。なお、シークエンスプライマーはT7 promoter primerの配列(配列番号:3、5’−TAATACGACTCACTATAGGG−3’)、T7 terminator primerの配列(配列番号:4、5’−GCTAGTTATTGCTCAGCGG−3’)を用いた。そして、コロニーPCRの結果、目的遺伝子が含まれていると思われる菌体を2〜3mLのカナマイシン入りLB培地で一晩培養し、翌日、菌体を回収した。次いで、回収した菌体からQIAプレップスピンミニプレップキット(QIA prep Spin Miniprep kit、QIAGEN社製)を用いて、プラスミドを精製した。
そして、精製プラスミドの組み込み部位の塩基配列を確認し、目的遺伝子が正しく大腸菌発現ベクターに組み込まれていることを確認した。なお、シークエンスプライマーは前記と同じく、配列番号:3及び4に記載の塩基配列からなるプライマーを用いた。
<3−2 小スケールでの発現試験>
前記にて得られた発現プラスミドを大腸菌BL21派生株のコンピテントセルに導入した。この大腸菌の形質転換は10μLの前記コンピテントセルに前記発現プラスミドを加え、氷上に30分間静置した後、SOC培地を添加して37℃にて培養を行ない、その後、カナマイシン入りのLB寒天培地にプレーティングし、一晩培養することによって行った。
このようにして形質転換した大腸菌のシングルコロニーを、2〜3mLのカナマイシンを加えたLB培地にて対数増殖中期(O.D.600nm=0.6)になるまで培養し、O.D.600nm=0.6付近となった時点で1mM IPTGを添加し、37℃培養については2時間かけ、20℃培養については4時間かけ、発現誘導を行った。
そして、発現誘導後の菌体溶液を1mLずつ2本のチューブに回収し、15,000rpmにて5分間遠心して培地を除いた。その後、菌体に200μLの溶菌バッファー(Lysis buffer、MBL社製)を加え、超音波破砕を行なった。破砕後、1本のチューブは200μLの2×サンプルバッファー(MBL社製)を添加し、沸騰浴中で3分間煮沸した。これを全部(Whole)サンプルとした。また、残り1本は破砕後に遠心分離(15,000rpmにて5分間)を行った。遠心分離後の上清を回収し、その上清に200μLの2×サンプルバッファーを加え、沸騰浴中で3分間煮沸した。これを上清(sup.)サンプルとした。また、遠心分離後に残ったペレットは400μLの1×サンプルバッファー(MBL社製)を加え、沸騰浴中で3分間煮沸した。これを沈殿物(ppt.)サンプルとして調製した。
そして、このように調製した各サンプルについて、SDS−PAGEとHis−Tagに対する抗体(MBL社製)を用いたウエスタンブロット法により目的タンパク質の発現の有無、発現画分、発現量を確認した。SDS−PAGE、ウエスタンブロット法は15%アクリルアミドゲルを用いて実施し、1レーンあたり培養液25μL分の菌体に相当するタンパク質量を泳動した。SDS−PAGEはCBB染色を行なった後、脱色を行なった。ウエスタンブロット法では、先ずサンプルの泳動が終了した後、ブロッティング装置により、100Vにて1時間かけて、PVDF膜(イモビロンP(Immobilon P)、ミリポア社製、孔径:0.45μm)への転写を行った。転写終了後、5%スキムミルク/PBSにてブロッキングを行ない、1次抗体として抗His tagモノクローナル抗体(MBL社製、クローン 6C4)を1,000倍希釈したものを、2次抗体として抗マウスIgG−HRP標識抗体(MBL社製)を4,000倍希釈したものを使用して、検出を行なった。検出は、発色基質としてスーパーシグナルウエスト・ピコ・ケミルミネッセント・サブストレート(SUPERSIGNAL WEST PICO CHEMILUMINESCENT SUBSTRATE、PIERCE社(現 Thermo Scientific社)製)を、現像用のフィルムとしてアマシャムハイパーフィルムECL(Amersham Hyperfilm ECL、GEヘルスケア社製)を使用して行なった。得られた結果を図13に示す。なお、図13において、レーン1は「37℃で2時間かけて発現誘導したもの全部を泳動」、レーン2は「37℃で2時間かけて発現誘導したものの沈殿物を泳動」、レーン3は「37℃で2時間かけて発現誘導したものの上清を泳動」、レーン4は「20℃で4時間かけて発現誘導したもの全部を泳動」、レーン5は「20℃で4時間かけて発現誘導したものの沈殿物を泳動」、レーン6は「20℃で4時間かけて発現誘導したものの上清を泳動」、レーン7は「1%グルコース添加培地にて37℃で2時間かけて発現誘導したもの全部を泳動」、レーン8は「1%グルコース添加培地にて37℃で2時間かけて発現誘導したものの沈殿物を泳動」、レーン9は「1%グルコース添加培地にて37℃で2時間かけて発現誘導したものの上清を泳動」した結果を各々示す。また、図13のAにおいて、レーン10は「BSA 0.5μgを泳動」、レーン11は「BSA 1μgを泳動」、レーン12は「BSA 2μgを泳動」した結果を各々示し、図13のBにおいて、レーン10は「陰性対照を泳動」、レーン11は「陽性対照を泳動」した結果を各々示す。
図13に示した結果から明らかなように、ウエスタンブロット法にて32kDaのタンパク質の発現が確認できた(図13のB)。しかし、発現量が少なく、通常の発現条件(37℃にて2時間かけてのIPTG誘導)では、SDS−PAGEにおいて目的のバンドが確認できなかった(図13のA)。そこで、発現条件の至適化を行ない、1%グルコース添加培地による発現・誘導によって目的タンパク質の発現量が増加することを確認し、これを発現条件として設定した。ただし、それでも発現量は1〜2mg/L程度と推測され、抗体作製のために必要な量を得るためには大スケールで培養する必要がある事も分かった。
<3−3 大量培養>
カナマイシン入りのLB寒天培地上の前記コロニーをピックアップし、100mLの1%グルコース含有LB培地に植菌して、37℃にて一晩培養(種母培養)した。そして、翌日に、8L(1L×8本)のグルコース含有LB培地に2%の前記種母培養菌体を添加し、対数増殖期(O.D.600nm=0.6)まで37℃にて撹拌培養を行なった。次いで、O.D.600nm=0.6付近となった時点で1mM IPTGを加え、37℃にて2時間かけて培養し、発現誘導を行ない、菌体を回収した。
<3−4 Ni−キレートカラムによる精製>
回収した菌体を溶菌バッファー(MBL社製)に懸濁後、超音波破砕を行なった。破砕後、遠心分離により菌体破砕上清と不溶性画分に分離した。結果、目的タンパク質は不溶性画分にて多く確認されたため、不溶性画分にタンパク質変性剤含有可溶化バッファー(MBL社製)を加え、溶解後、遠心分離を行ない上清を回収した。回収した上清はAKTAprimeプラス(登録商標、GEヘルスケア社製)に繋げたNiキレートカラム(Ni キレーティング・セファロースFF(Ni Chelating Sepharose FF)、GEヘルスケア社製)10mLにアプライし、吸光度(A280nm)が0.05以下となるまで洗浄バッファー(MBL社製)にて洗浄した。洗浄後、イミダゾール(Imidazole)を含むバッファー(MBL社製)によりステップワイズ溶出を行ない、各フラクション(画分)を回収した。回収したフラクションをSDS−PAGEで泳動し、目的タンパク質の確認を行なった。泳動の際のゲルや染色は、<3−2>と同様の方法にて実施した。得られた結果を図14に示す。なお図14中、レーン1は「Niキレートカラムにアプライする前のサンプルを泳動」、レーン2は「Niキレートカラムを素通りした画分を泳動」、レーン3〜10は「35mMイミダゾールによる洗浄画分を泳動」、レーン11〜19は「60mMイミダゾールによる洗浄画分を泳動」、レーン20〜24は「250mMイミダゾールによる洗浄画分を泳動」した結果を各々示す。
図14に示した結果から明らかなように、8Lの培養菌体の破砕上清から精製を行なったが、目的の32kDa付近にはバンドが見られず、精製タンパク質を得ることができなかった。目的タンパク質が得られなかった原因として、8L培養での大量発現ではスケールアップによる発現低下が起きていることが考えられた。8L培養と小スケールの発現試験とで異なる部分としては、8Lスケールではストック菌株を一旦100mLスケールで前培養を行ない、その後8Lへと引き上げる、二段階での培養になっている点が挙げられる。この二段階培養が発現低下の原因である可能性を考え、前培養を行なわないコロニーピックアップ法を検討することとした。
<3−5 コロニーピックアップ法での大量培養>
先ず、培養量1Lの系でコロニーピックアップ法での発現試験を行なった。その結果、ウエスタンブロットで<3−2>に記載の小スケールでの発現試験と同等の発現量しか確認できなかったが、寒天培地上のコロニーから直接1LのLB培地8本に植菌するコロニーピックアップ法での大量培養を行なった。
すなわち、カナマイシン入りのLB寒天培地上の前記コロニーをピックアップし、1Lのグルコース含有LB培地8本(計8L)に植菌し、対数増殖期(O.D.600nm=0.6)まで37℃にて撹拌培養を行ない、O.D.600nm=0.6付近となった時点で1mM IPTGを添加して37℃にて2時間培養し、発現誘導を行った。以降の操作は<3−3>に記載した方法で実施した。得られた結果を図15及び16に示す。なお、図15中、レーン1は「Niキレートカラムにアプライする前のサンプルを泳動」、レーン2は「Niキレートカラムを素通りした画分を泳動」、レーン3〜11は「35mMイミダゾールによる洗浄画分を泳動」、レーン12〜19は「60mMイミダゾールによる洗浄画分を泳動」、レーン20〜25は「250mMイミダゾールによる洗浄画分を泳動」した結果を各々示す。また、図16中、レーン1は「Niキレートカラムにアプライする前のサンプルを泳動」、レーン2は「Niキレートカラムを素通りした画分を泳動」、レーン3は「35mMイミダゾールによる洗浄画分を泳動」、レーン4は「60mMイミダゾールによる溶出画分を泳動」、レーン5は「250mMイミダゾールによる洗浄画分を泳動」、レーン6は「陰性対照を泳動」、レーン7は「陽性対照を泳動」した結果を各々示す。さらに、これらの図において、矢印は32kDaのタンパク質の位置を示す。
図15及び16に示した結果から明らかなように、前培養を行なわない培養菌体からの精製では、250mMイミダゾールによる溶出(洗浄)にて目的の32kDaのバンドを確認することができた。しかしながら、バンドから推定される目的タンパク質の8L培養での収量は0.1mg以下とごく微量であり、更に目的タンパク質以外の大腸菌由来のタンパク質が不純物として多く含まれていた。
以上の大量培養の結果から、リコンビナントタンパク質(hTERTタンパク質の180〜460アミノ酸)の大量調製は非常に難しいと判断せざるを得ない状況となった。このリコンビナントタンパク質のコドン使用頻度(codon usage)は大腸菌に合わせたものを使用しているため、種の違いによる発現量の低下が原因ではなく、タンパク質そのものの性質による低発現の可能性が高いと推測された。しかしながら、発現量の低下に180〜460アミノ酸の中のどの部分が影響しているかは不明であるため、複数の部位を試す必要があると考えた。そこで、次に180〜460アミノ酸を2分割した、N末側(180〜320アミノ酸)とC末側(304〜460アミノ酸)のそれぞれについてタンパク質発現を試みた。
(実施例4)
抗原(hTERTタンパク質の180〜320アミノ酸)の調製
<4−1 大腸菌発現ベクターの構築>
hTERTタンパク質の180〜460アミノ酸をコードする人工遺伝子を含むプラスミドベクターから配列特異的なプライマーを用いたPCR法によって180〜320アミノ酸をコードする領域を増幅した。PCRはKOD plus(TOYOBO社製)を用いて行ない、反応は99℃で2分間、その後、「99℃で20秒、59℃で30秒,68℃で50秒」のサイクルを35回実施した後、68℃で1分間、4℃にて一晩(O/N)という条件にて行なった。また、プライマーは5’側として配列番号:5 5’−ggaattcCATATGGCCGCAACCCAGGCCCGTC−3’(つくばオリゴサービス株式会社製)、3’側として配列番号:6 5’−ccgCTCGAGAGGGGTATCCCATGGACGAG−3’(つくばオリゴサービス株式会社製)を用いた。
そして、増幅したバンドをNdeI及びXhoIで制限酵素処理し、同様の酵素で処理した大腸菌発現ベクターpET−30a(+)とライゲーション反応液中でライゲーションを行なった。以降の操作は<3−1>に記載した方法に準じて行ない、目的遺伝子が正しく大腸菌発現ベクターに組み込まれていることを確認した。
<4−2 小スケールでの発現試験>
<4−1>で得られた発現プラスミドを大腸菌BL21派生株のコンピテントセルに導入した。そして、形質転換した大腸菌のシングルコロニーを2〜3mLのカナマイシンを加えたLB培地で対数増殖期まで培養した後、1mM IPTGを添加して2時間かけ発現誘導を行った。次いで、誘導後の菌体を回収して、<3−2>に記載の方法に準じて、各サンプルを調製し、SDS−PAGEとHis−Tagに対する抗体を用いたウエスタンブロット法により目的タンパク質の発現の有無、発現画分、発現量を確認した。得られた結果を図17に示す。なお、図17において、レーン1は「誘導せずに37℃で一晩培養したもの全部を泳動」、レーン2は「誘導せずに37℃で一晩培養したものの沈殿物を泳動」、レーン3は「誘導せずに37℃で一晩培養したものの上清を泳動」、レーン4は「誘導せずに37℃で2時間培養したもの全部を泳動」、レーン5は「37℃で2時間かけて発現誘導したもの全部を泳動」、レーン6は「37℃で2時間かけて発現誘導したものの沈殿物を泳動」、レーン7は「37℃で2時間かけて発現誘導したものの上清を泳動」した結果を各々示し、矢印は16.1kDaのタンパク質の位置を示す。また、図17のAにおいて、レーン8は「BSA 0.5μgを泳動」、レーン9は「BSA 1μgを泳動」、レーン10は「BSA 2μgを泳動」した結果を各々示し、図17のBにおいて、レーン8は「陰性対照を泳動」、レーン9は「陽性対照を泳動」した結果を各々示す。
図17に示した結果から明らかなように、予想される分子量16.1kDaのタンパク質が発現していることは確認できたが、発現量が少なく、SDS−PAGEで目的のバンドは確認できなかった(図17のA)。そこで、これまでの経緯から発現条件を変更しても大きな改善が見込めないと考え、大量培養は行なわなかった。
(実施例5)
抗原(hTERTタンパク質の304〜460アミノ酸)の調製
<5−1 大腸菌発現ベクターの構築>
hTERTタンパク質の180〜460アミノ酸をコードする人工遺伝子を含むプラスミドベクターから配列特異的なプライマーを用いたPCR法によって304〜460アミノ酸をコードする領域を増幅した。PCRはKOD plus(TOYOBO社製)を用いて行ない、反応は99℃で2分間、その後、「99℃で20秒、59℃で30秒,68℃で50秒」のサイクルを35回実施した後、68℃で1分間、4℃にて一晩(O/N)という条件にて行なった。また、プライマーは5’側として配列番号:7 5’−ggaattcCATATGCACGCCGGACCACCTTCTAC−3’、3’側として配列番号:8 5’−ccgCTCGAGCTGCCACGGGCTTGAATGTTG−3’を用いた。
そして、<3−1>に記載した方法に準じて、増幅したバンドと大腸菌発現ベクターpET−30a(+)とのライゲーションを行ない、得られた発現プラスミドについても目的遺伝子が正しくに組み込まれていることを確認した。
<5−2 小スケールでの発現試験>
<5−1>で得られた発現プラスミドを大腸菌BL21派生株のコンピテントセルに導入した。そして、<4−2>に記載の方法に準じて、培養、発現誘導、SDS−PAGE及びウエスタンブロット法による目的タンパク質の発現の有無、発現画分、発現量の確認を行った。得られた結果を図18に示す。なお、図18において、レーン1は「誘導せずに37℃で一晩培養したもの全部を泳動」、レーン2は「誘導せずに37℃で一晩培養したものの沈殿物を泳動」、レーン3は「誘導せずに37℃で一晩培養したものの上清を泳動」、レーン4は「誘導せずに37℃で2時間培養したもの全部を泳動」、レーン5は「37℃で2時間かけて発現誘導したもの全部を泳動」、レーン6は「37℃で2時間かけて発現誘導したものの沈殿物を泳動」、レーン7は「37℃で2時間かけて発現誘導したものの上清を泳動」した結果を各々示す。また、図18のAにおいて、レーン8は「BSA 0.5μgを泳動」、レーン9は「BSA 1μgを泳動」、レーン10は「BSA 2μgを泳動」した結果を各々示し、図18のBにおいて、レーン8は「陰性対照を泳動」、レーン9は「陽性対照を泳動」した結果を各々示す。
図18に示した結果から明らかなように、予想される分子量18.9kDa付近にバンドが確認でき、発現量も十分であった。かかる結果から、抗体作製に必要な量は取得できると判断し、大量培養を実施した。
<5−3 大量培養>
カナマイシン入りの寒天培地上の<5−2>で得られたコロニーをピックアップし、3LのLB培地2本に植菌後、37℃で対数増殖期(O.D.600nm=0.6)になるまで撹拌培養を行った。そして、O.D.600nm=0.6付近となった時点で1mM IPTGを加え、37℃で2時間培養して発現誘導を行ない、菌体を回収した。
<5−4 Ni−キレートカラムによる精製>
回収した菌体を溶菌バッファー(Lysis buffer、MBL社製)に懸濁後、超音波破砕を行なった。破砕後、遠心分離により菌体破砕上清と不溶性画分に分離した。目的タンパク質は不溶性画分で多く確認されたため、不溶性画分にタンパク質変性剤含有可溶化バッファー(MBL社製)を加え、溶解後、遠心分離を行ない上清を回収した。その後の精製操作は<3−4>に記載の方法に準じて行なった。
そして、精製後のフラクションをSDS−PAGEにて分析した結果、目的タンパク質の精製が確認されたため、回収されたフラクションをプールした。次いで、プールした精製タンパク質の濃度をプロテインアッセイキット(Bio−Rad社製)を用いて測定した後、免疫に適した濃度(1mg/mL程度)になるまで濃縮作業を行なった。濃縮後の精製タンパク質について、SDS−PAGE、His−Tagに対する抗体を用いたウエスタンブロット法を行ない、分子量・精製度を確認した。得られた結果を図19に示す。なお、図19のAにおいて、レーン1は「精製タンパク質(精製抗原)1μgを泳動」、レーン2は「BSA 0.5μgを泳動」、レーン3は「BSA 1μgを泳動」、レーン4は「BSA 2μgを泳動」した結果を各々示す。また、図19のBは、精製タンパク質(精製抗原)0.5μgを泳動し、His−Tagに対する抗体で検出した結果を示す。
図19に示した結果から明らかなように、目的タンパク質(抗原)は純度よく精製されている事が確認された。なお、37kDa付近のバンドは、CBB染色のみならず、ウェスタンブロット法においても確認できた事から目的タンパク質由来のものと考えられる。また、最終収量は10.5mg(4M ウレア入りのバッファー(pH7.4)に溶解)であり、1mg/mLに調整した。そして、精製タンパク質を免疫1回分(200μL)毎に分注し、液体窒素を用いて急速凍結した後、−80℃で保存した。
(実施例6)
抗原(hTERTタンパク質の304〜460アミノ酸)に対する抗体の作製
<6−1 免疫>
<5−4>にて調製した精製リコンビナント蛋白質を、免疫原として1mg/mLになるように調製し、アジュバント(complete adjuvant(FREUND)、三菱化学ヤトロン社製、RM606−1)と等量で混和し、エマルジョンにして、マウス(Balb/c 4週齢 雌)の足の裏に50μLずつ免疫した。免疫は3回行ない、最終免疫の3日後に次に示す細胞融合を行った。
<6−2 細胞融合>
以下に示す細胞融合においては下記試薬類を用いて行った。
ミエローマ細胞:P3U1
PEG:PEG4000(MERCK社製、カタログ番号:1097270100)
HAT:HATサプリメント(50x)(GIBCO社製、カタログ番号:21060−017)
RPMI:RPMI1640(SIGMA社製、カタログ番号:R8758)
サプリメント:BMコンディムド(Roche社製、カタログ番号:663573)。
先ず、前記の通り免疫したマウス(最終免疫の3日後のマウス)からリンパ節由来細胞を抽出した。すなわち、免疫したマウスの足から肥大したリンパ節を取り出し、リンパ節に切込みを入れて、ピンセット等で細胞をたたき出し、遠心してリンパ節由来細胞を回収した。
また、培養フラスコで増殖させたミエローマ細胞(P3U1、培地:10%FBS−RPMI)を回収し、回収したリンパ節由来細胞とミエローマ細胞とを2:1〜10:1の割合になるよう混和し、遠心した。そして、ペレットに50%PEG(RPMIで等量希釈)を加え、細胞融合を行った。
次いで、細胞融合させたハイブリドーマをRPMI血清無添加培地にて洗浄した後、15%FBS−HAT培地80mLでサスペンドし、96穴プレート3枚に播種した。なお、15%FBS−HAT培地には、初期の不安定なハイブリドーマのためにサプリメントが添加してある。
そして、播種より3日後に培地を交換し、ハイブリドーマのコロニー形成が確認された段階(約2週間後)で、96穴プレートから培養上清をサンプリングし、1次スクリーニングを行った。
<6−3 1次スクリーニング(ELISA)>
前記免疫原をPBSにて1μg/mLに希釈した後、ELISAプレートに50μL/ウェル分注し、4℃にて一晩(over night)静置した。このようにして抗原を感作させた後、抗原溶液を除去し、ブロッキングバッファー(MBL社製)を100μL/ウェル分注し、4℃にて一晩静置した。
そして、サンプリングしたハイブリドーマの培養上清をELISAプレートに50μL/ウェル加え、室温で60分間反応させた。反応後、PBSにて3回洗浄した後、ヤギ由来抗マウスIgG−POD標識抗体(MBL社製、コード番号:330)を希釈バッファー(MBL社製)にて10,000倍希釈したものを50μL/ウェル加え、室温で60分間反応させた。そして、3回洗浄した後、発色液(MBL社製)を50μL/ウェル加え5分間発色させ、1.5mol/L リン酸を100μL/ウェル加え、反応を停止させた。反応停止後、吸光度測定器(テカン社)を用いて、測定波長450nm、参照波長620nmにて吸光度を測定した。また、前記同様に、免疫原に付加されているHisTagに反応する培養上清を除外するために、HisTagプレートを用いたELISAも行った。そして、細胞融合後、継代培養しながら何度か、かかるELISAによって反応性を確認して1次スクリーニングを行った。得られた結果を表1〜3に示す。なお、表1には免疫原プレートにおいて測定された測定波長450nmにおける吸光度が示されており、吸光度が0.2以上のサンプルにはラベルが付されている。表2にはHisTagプレートにおいて測定された測定波長450nmにおける吸光度が示されている。また、表3には各サンプル番号(1〜124)が示されており、免疫原プレートにおける吸光度が0.2以上であり、且つHisTagプレートにおける吸光度が0.2以下であるサンプルにはラベルが付されている。
表1〜3に示した結果から明らかなように、最終的に免疫原プレートに対する反応性がOD450nmで0.2以上、HisTagプレートに対する反応性が0.2以下のサンプルが72種類確認された。
<6−4 2次スクリーニング(インセルアナライザーを用いた染色スクリーニング等)>
二次スクリーニングは、BJ TAP−hTERT細胞又はBJ細胞を用いた蛍光免疫染色によって行った。なお、BJ細胞はヒト由来の正常繊維芽細胞であり、BJ TAP−hTERT細胞はFLAGペプチド及びHAペプチドで標識したhTERTが安定的に発現しているBJ細胞である。
二次スクリーニングに際して、先ず、これら細胞を96穴プレートに5,000細胞数/100mL/ウェル播種し、播種した日を0日として2日間培養した。2日後、洗浄バッファーにて洗浄して4% パラホルムアルデヒドを添加し、室温にて10分間反応させた。洗浄後、0.1% TritonX−100(Nacalai Tesque社製、35501−15)を添加し、室温にて10分間反応させた。ブロッキングバッファー(5% BSA(Equitech−Bio社製、BAC62)、2% FCS(Equitech−Bio社製))を添加して室温にて1時間反応させた。
その後、前記ハイブリドーマの培養上清を1サンプル/ウェル添加した。また、アイソタイプコントロールとしてIgG1(MBL社製、M075−3)、IgG2a(MBL社製、M076−3)、IgG2b(MBL社製、M077−3)を、各々1μg/mLずつ1ウェルに添加した。さらに、陰性対照として、培地のみを1ウェルに添加した。また、陽性対照として、1μg/mL及び2μg/mLの抗HA抗体(Sigma社製、H3663−200UL)を各々1ウェルに添加した。従って、96穴プレート1枚あたり、陰性対照について1ウェル、陽性対象について2ウェル、アイソタイプコントロールについて3ウェル、前記ハイブリドーマの培養上清90クローンについて90ウェル添加して室温にて1時間反応させた。
そして、これら抗体等を洗浄した後、PE標識抗マウスIgG抗体(Beckman Coulter社製、IM0855)を添加し、室温にて1時間反応させた。この時ヘキスト33258も同時に添加し、染色像をインセルアナライザー(IN Cell Analyzer)を用いて測定した。そして、ヘキスト33258で核染色された細胞数に対して、前記培養上清等で染色された細胞数の割合を%にて算出し、全体の85%染まったもの又は染色像にて反応性が確認されたサンプルを陽性として選別した。
以上の操作を96穴プレート10枚(プレート1〜10)を用いて、前記ハイブリドーマの培養上清900サンプルについて、これらのhTERTに対する反応性や特異性を評価した。
かかるIN Cell Analyzerを用いたスクリーニング又は目視による染色像の確認の結果、BJ TAP−hTERT細胞に反応し、BJ細胞に反応しない候補 下記47サンプルを選抜した。
プレート1においては、1B8、1B12、1C12、1E7、
プレート2においては、2B4、2B8、2D9、2D10、2E9、2F6、2F11、2G2
プレート3においては、3C1、3D12、3F7、3G4、3G6、3H7
プレート4においては、4B3、4G2、4G7
プレート5においては、5A9、5A12、5D8、5D12
プレート6においては、6A9、6A12、6C12
プレート7においては、7A7、7A12、7B4、7B6、7B12、7C12、7E7
プレート8からは選抜せず
プレート9においては、9B4、9B10、9F4
プレート10においては、10B5、10C1、10C2、10C7、10C9、10C10、10D12、10F3、10F6。
<6−5 1次スクリーニング(ウェスタンブロット法及び細胞免疫染色による確認試験)>
1次、2次スクリーニングで取得したサンプルによる反応性確認を行った。なお再度評価したサンプルは下記の通りである。
1次スクリーニング(ELISA法を利用)のみで陽性と評価された61サンプル
2次スクリーニングのみで陽性と評価された36サンプル
1次、2次スクリーニングの両方で陽性と評価された11サンプル。
前記サンプルの内、1次、2次スクリーニングの両方で陽性と評価された11サンプルに関して、BJ細胞、BJ TAP−hTERT細胞を用いてウェスタンブロッティングを行ない、BJ−TAP−hTERT細胞にhTERTのバンドが特異的に検出されるクローンを候補クローンとして選定した。得られた結果を図20のAに示す。また、293T−hTERT細胞及びBJ−TAP−hTERT細胞を用いてウェスタンブロッティングを行ない、過剰発現したhTERTのバンドが両方の細胞において検出されるクローンを候補クローンとして選定した。得られた結果を図20のBに示す。なお、293T−hTERT細胞は、ヒト腎臓形質転換株293TにFLAG−hTERT(全長またはトランケーション変異体)を一過性に過剰発現させた細胞である。
さらに、1次スクリーニングにおいて強陽性と評価されながら、2次スクリーニングにおいて陰性と評価された10サンプル(2E4、5H4、7C2、7H2、7D6、8D9、9C1、9H3、9A8、10E9)に関してはスクリーニングでの見落としを避けるため、細胞免疫染色にて再検討した。すなわち、GFP−hTERT発現HeLa細胞を前記10サンプルから得た抗hTERTモノクローナル抗体及びDAPIにて染色した。そして、目視にて発現強度及び発現パターン(GFPのシグナルとの重なり具合も含めて)を確認し、GFPのシグナルと抗hTERT抗体とのシグナルの染色パターンが類似しているかどうかを中心に判断した。得られた結果を図21に示す。
図20に示した結果から明らかなように、1次、2次スクリーニングの両方で陽性と評価された11サンプルのうち3サンプル(9B10,10F3及び10C10)で有意なシグナルが検出された(図20のA)。また、2E4及び10E9に関してはウェスタンブロッティングでもhTERTを特異的に認識していることが確認され(図20のB)、また図21に示した細胞免疫染色での再検討の結果から、これらサンプルはhTERTを良好に認識している可能性が示唆された。そこで、以上の結果から、9B10、10F3、10C10、2E4、10E9を選定し、これらクローンについてシングルクローンの確立を行った。
(実施例7)
シングルクローンの確立
<6−3>〜<6−5>に記載の評価にて選択されたハイブリドーマについて培養を行ない、対数増殖期に入った状態の良い時に細胞をパスツールピペットでピペッティングして採取し、培地にて希釈した後、1ウェルあたりの細胞数が1個から32,000個になるように細胞濃度をふって96穴プレートに播種した。そして、ハイブリドーマのシングルコロニーの形成が確認された段階(1〜2週間後)で96穴プレートから培養上清をサンプリングし、<6−3>に記載の方法に従い、活性を確認した。得られた結果を表4〜6に示す。
表4〜6に示した結果から明らかなように、ELISAレベルで反応性を維持しているサブクローンとして、9B10においては16クローン、10F3においては10クローン、10C10においては5クローン、2E4においては8クローン、10E9においては8クローンをそれぞれ確立した。
また、前記限界希釈(LD:limiting dilution)によりシングルクローン化されたハイブリドーマは、96穴プレート1穴から、48穴プレート、24穴プレート、12穴プレートまで継代培養した。そして、十分増殖した段階で1ウェル(1穴)の細胞を遠心回収し、ストック用溶液500μLに懸濁し、ストックチューブ1本に入れ−80℃にて保存した。なお、ストック用溶液はセルバンカー(十慈フィールド社製、カタログ番号:BLC−1)を用い、ストックチューブは1mLセラムチューブ(SUMILON社製、カタログ番号:MS−4601W)を用いた。
(実施例8)
サブクラスの決定
実施例7において確立したシングルクローン(サブクローン)由来の抗hTERTモノクローナル抗体のサブクラスを以下に示す方法にて決定した。
<ELISA法>
ELISA用96穴プレートに抗マウスIgG抗体(MBL社製)を10μg/mLの濃度で50μL/ウェル分注し、4℃にて一晩(over night)感作させた。感作後、抗体溶液を除き、ブロッキングバッファーを加えて4℃にて一晩ブロッキングを行った。次に、前記ハイブリドーマ由来の各培養上清を50μL加え、室温にて1時間反応させた。反応後、プレートを洗浄した後、抗マウスIg特異的抗体(BIO RAD社製、マウス−タイパー
アイソタイピングパネル(Mouse−Typer Isotyping Panel)、カタログ番号:172−2055)を室温にて1時間反応させた。反応後、プレートを洗浄した後、抗ウサギPOD標識抗体(MBL社製)を室温にて1時間反応させ、最後に発色液を加えて発色させた。そして、反応を停止させた後に吸光度測定を行った。
<イムノクロマト法>
Iso Strip マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Roche社製)を使用した。すなわち、前記ハイブリドーマ由来の培養上清をPBSにて100倍希釈したものをディベロップメントチューブに滴下し、着色ラテックスビーズを再懸濁した。次いで、チューブにアイソタイプ用ストリップを浸漬し、5分間おきに特定のサブクラス部分に検出されたバンドを確認した。
以上の分析方法にて、9B10及び10F3のサブクローン由来の抗体の一部と、2E4及び10E9の全てのサブクローン由来の抗体についてクラスチェックを行った。得られた結果を表7〜9に示す。なお、表中「―」を付したサブクローン由来の抗体は、今回サブクラスを決定していないクローン由来の抗体である。
(実施例9)
限界希釈後のシングルクローンを用いた反応性の評価
実施例7において確立したシングルクローン(サブクローン)由来の抗体を用いて、以下の実験方法(ウェスタンブロッティング、免疫沈降法、RNA−結合タンパク質免疫沈降法(RIP)、クロマチン免疫沈降(ChIP)、細胞免疫染色)にて、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体の反応性を評価した。
<ウェスタンブロッティング>
以下に示す細胞、
ヒト腎臓形質転換株293TにFLAG−hTERT(全長またはトランケーション変異体)を一過性に過剰発現した293T−hTERT細胞 7.5×10細胞、
ヒトトリプルネガティブ乳がん細胞株:MDA−MB157、MDA−MB−231、MDA−MB−436、MDA−MB−468、BT20、BT549、HCC38、HCC1937、Hs578T細胞 1×10細胞、
ヒト繊維芽細胞BJにTAP(FLAG−HA)−hTERTを安定発現させたBJ−TAP−hTERT細胞 3×10細胞
に、293T−hTERT細胞及びトリプルネガティブ乳がん細胞株に対しては500μL、BJ−TAP−hTERT細胞に対しては200μlLのRIPAバッファー(50mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl、1mM EDTA、1% NP−40)を加え、10秒間の超音波処理により細胞を破壊した。次いで、15000rpm、4℃にて15分間、遠心処理した後、293T−hTERTにおいては上清30μgを、トリプルネガティブ乳がん細胞株及びBJ−TAP−hTERT細胞においては上清100μgに、2×SDSサンプルバッファー(100mM Tris(pH6.8)、4% SDS、20% グリセロール、2% 2−メルカプトエタノール、ブロモフェノールブルー)を加え、95℃、5分間の熱処理によりタンパク質を変性させ、ウエスタンブロッティング用サンプルとした。293T−hTERT細胞及びBJ−TAP−hTERT細胞に関しては、得られたサンプルを8%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEにて分画し、トリプルネガティブ乳がん細胞株に関しては、得られたサンプルを6%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEにて分画した。そして、分画後、各々のポリアクリルアミドゲルをニトロセルロース膜にブロットした。次いで、5%スキムミルク/0.1%TBSTにて、室温下、30分間ブロッキングした後、前記シングルクローン由来の抗hTERTモノクローナル抗体又は2.5%スキムミルク/0.1%TBSTによって1000倍に希釈したウサギ由来抗hTERTポリクロ―ナル抗体(抗テロメレース触媒サブユニット(ウサギ)抗体(Anti−Telomerase catalytic subunit(Rabbit)Antibody)、Rockland社製、カタログ番号:600−401−252)と室温下で1時間反応させた。そして、0.1% TBSTでよく洗浄した後、二次抗体として2.5%スキムミルク/0.1%TBSTによって5000倍に希釈したECL
抗マウスIgG,西洋ワサビぺルオキシダーゼ結合種特異的全抗体(ECL Anti−mouse IgG,Horseradish Peroxidase−Linked Species−Specific Whole Antibody、GE Healthcare社製)又はECL
抗ウサギIgG,西洋ワサビぺルオキシダーゼ結合種特異的全抗体(ECL Anti−rabbit IgG,Horseradish Peroxidase−Linked Species−Specific Whole Antibody、GE Healthcare社製)と室温下で1時間反応させた。次いで、0.1% TBSTでよく洗浄した後、検出はルミ−ライトプラス−ウェスタン
ブロッティング サブストレート(Lumi−LightPlus Western blotting substrate、Roche社製)を用いて行ない、X線フィルム上に感光させた。以上のウェスタンブロッティングによって分析した結果を図22〜24に示す。
<免疫沈降法>
293T−hTERT細胞7.5×10個に1mLの溶解バッファーA(Lysis buffer A:20mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl、0.5% NP−40)を添加し、10秒間の超音波処理により細胞を破壊し、4℃、15000rpmにて15分間、遠心処理を行なった。得られた上清に30μLのイムノピュアイモビライズドプロテインA(ImmunoPureImmoblized Protein A、PIERCE社製)と100μLの前記シングルクローン由来の抗hTERTモノクローナル抗体又は10μgのウサギ由来抗hTERTポリクロ―ナル抗体(Rockland社製)を加え4℃にて、16時間インキュベートを行なった。1mLの溶解バッファーAによりビーズを3回洗浄し、洗浄後のビーズに2×SDSサンプルバッファーを加え、95℃、5分の熱処理によりタンパク質を変性させてウエスタンブロッティング用サンプルとした。サンプルは8%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEで分画し、ニトロセルロース膜にブロットした。5%スキムミルク/0.1%TBSTで室温、30分間ブロッキング後、2.5%スキムミルク/0.1%TBSTによって5000倍に希釈した抗FLAG M2モノクローナル抗体(ANTI−FLAG M2 monoclonal Antibody、SIGMA社製)を室温で1時間反応させた。0.1%TBSTでよく洗浄した後、二次抗体として2.5%スキムミルク/0.1%TBSTによって4000倍に希釈したマウス
トゥルーブロット ウルトラ:西洋ワサビぺルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(Mouse TrueBlot ULTRA:Horseradish Peroxidase anti−mouse IgG、eBioscience社製)を室温で1時間反応させた。0.1%TBSTでよく洗浄した後、検出はルミ−ライトプラス−ウェスタン
ブロッティング サブストレート(Roche社製)を用いて行ない、X線フィルム上に感光させた。以上の免疫沈降法によって分析した結果を図25に示す。
<RNA−結合タンパク質免疫沈降法(RNA−binding protein immunoprecipitation:RIP)>
5×10細胞のヒト子宮頸部癌細胞株
HeLaに1mLの溶解バッファーA(20mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl、0.5% NP−40)を添加し、氷上で30分放置後、4℃、15000rpmにて15分間、遠心処理を行なった。得られた上清に30μLのイムノピュアイモビライズドプロテインA(PIERCE社製)と、100μLの前記シングルクローン由来の抗hTERTモノクローナル抗体又は10μgのウサギ由来抗hTERTポリクロ―ナル抗体(Rockland社製)を加え4℃、16時間インキュベートを行なった。1mLの溶解バッファーAによりビーズを3回洗浄し、4回目の洗浄は1時間4℃において回転させた。洗浄後のビーズにトリゾル試薬(登録商標、TRIzol reagent、Invitrogen社製)500μLを加えてRNAを抽出し、12μLの滅菌水を用いてRNAを溶出した。溶出後のRNAを5μL用いてhTERCはReverse primer、RMRPはRT primerにより42℃、60分RT反応を行なった。PCR反応には表10に示すそれぞれのRNAに対するForward primer、Reverse primer、反応サイクルを用いて行なった。
PCR後のcDNAはエチジウムブロマイド0.1μg/mLを添加した1%アガロースゲルを用いた電気泳動によって分画し、電気泳動撮影装置FAS−III(東洋紡社製)を用いて撮影した。以上のRIPによって分析した結果を図26に示す。
<RT−PCR>
1×10細胞のヒトトリプルネガティブ乳がん細胞株 MDA−MB157、MDA−MB−231、MDA−MB−436、MDA−MB−468、BT20、BT549、HCC38、HCC1937、Hs578T細胞に1mLのトリゾル試薬を加えてRNAを抽出した。抽出後のRNAを0.8μg用いてオリゴ(dT)プライマー(Oligo(dT)primer、invitrogen社製)により42℃にて60分間、RT反応を行なった。そして、得られたcDNAを用いて、表11に示すForward primer、Reverse primer、反応サイクルを用いて、PCR反応を行なった。
PCR後のcDNAはエチジウムブロマイド0.1μg/mLを添加した1%アガロースゲルを用いた電気泳動によって分画し、電気泳動撮影装置FAS−III(東洋紡社製)を用いて撮影した。このRT−PCRによって得られた結果を、前記ウェスタンブロッティングによって分析した結果と共に図24に示す。
<クロマチン免疫沈降(chromatin immuno−precipitation assay :ChIP assay)>
培養細胞はヒト子宮頸癌由来細胞株であるHeLa細胞を用いた。HeLa細胞の培養培地をアスピレートし、1%パラホルムアルデヒドを含む培養培地を加え、常温にて10分間静置し、その後、200mMグリシンを含む培養培地に置換し常温で5分静置した。そして、PBSで1度洗浄し、NP−40バッファー(10mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM NaCl、0.5% NP−40)を加えセルリフター(Cell Lifter、Corning社製)により細胞を剥がして回収した。回収したHeLa細胞に100μLのSDS溶解バッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)、1% SDS、10mM EDTA)と400μLのChIP希釈バッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)、167mM NaCl、1.1% TritonX−100、0.11% デオキシコール酸ナトリウム)を加え、密閉式超音波細胞破砕装置(Bioruptor UCD−300、コスモ・バイオ社製)により250Vソニケーションon 12秒/ソニケーションoff 30秒のサイクルを6回繰り返す設定でソニケーションを行った。ソニケーションしたサンプルを4℃、20,000gにて10分遠心し、上清を回収した。上清の一部をインプット画分として保存し、残りの上清に60μLのプロテインGセファロース4ファーストフロー(Protein G Sepharose 4 Fast Flow、GE Healthcare社製)を加え4℃で2時間プレクリーンした後に、4℃、10,000rpmにて10秒遠心し、プロテインGセファロースを含まない上清を回収した。回収した上清にhTERTモノクローナル抗体を含むハイブリドーマ培養上清を100μL加え、4℃で一晩ローテーションした。ネガティブコントロールとしてhTERTモノクローナル抗体を含まないハイブリドーマ培養上清を100μL加え、同様に4℃で一晩処理した。
翌日、ハイブリドーマ培養培地でブロッキングしたプロテインGセファロースを20μL加え、さらに2時間、4℃でローテーションした。その後プロテインGセファロースを1mLの1xRIPAバッファー 150mM NaCl(50mM Tris−HCl(pH8.0)、150mM NaCl、1mM EDTA、0.1%SDS、1% TritonX−100、0.1% デオキシコール酸ナトリウム)で1回、1mLの1xRIPAバッファー500mM NaCl (50mM Tris−HCl (pH8.0)、500mM NaCl、1mM EDTA、0.1%SDS、1% Triton X−100、0.1% デオキシコール酸ナトリウム)で1回、1mLのTEバッファー(10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA)で2回洗浄した。洗浄したプロテインGセファロースにChIP溶出バッファー(10mM Tris−HCl(pH8.0)、300mM NaCl、5mM EDTA、0.5% SDS)を200μL加え、65℃で一晩、熱処理した。インプット画分にはChIP溶出バッファーを100μL加え、同様に65℃で一晩、熱処理した。
翌日、RNase A(4μg/μL、インビトロジェン社製)を1μL加え、37℃で30分熱処理をした後、プロテアーゼK(Protease K、20μg/μL、タカラ社製)を1μL加え、55℃で1時間熱処理をした。その後、サンプルをフェノール、クロロホルム、イソアミルアルコール 25:24:1(pH7.9、ナカライテスク株式会社製)を用いてフェノール・クロロホルム処理を行い、エタノール沈殿により沈殿を得た。得られた沈殿物は自然乾燥させ、20μLのTEバッファーで溶解し、使用までは−80℃で保存した。
上記過程で得られたサンプル10μLにHOを40μL、NaOH、EDTA(終濃度:0.4N NaOH、10mM EDTA)を添加し、軽く撹拌後、100℃で10分間処理し、急冷した。メンブレンはハイボンド−XL(Hybond−XL、GE Healthcare社製)を用い、ドットブロッティングはバイオ−ドット マイクロフィルトレーション装置(Bio−Dot Microfiltration Apparatus、BIO−RAD社製)を用いた。変性させたサンプル全量をメンブレンにブロットした後に、2xSSC(300mM NaCl、30mMクエン酸ナトリウム)で30秒リンスし、80℃で30分乾燥させ、UVクロスリンカーCL−1000(CL−1000 UV CROSSLINKER、UVP社製)により70mJ/cmの強度のUVを照射した。
そして、このメンブレンをHOで湿らせ、次に0.5Mリン酸バッファー(pH7.2、28mM NaHPO、72mM NaHPO)で湿らせた後に15mLのチャーチバッファー(0.5M NaHPO(pH7.2)、1mM EDTA、7% SDS)により37℃にて1時間のプレハイブリを行った。プレハイブリのチャーチバッファーを捨て、RI標識(32P)した末端制限フラグメントプローブ(Telomere Restriction Fragmentプローブ(TRFプローブ):5’−CCCTAACCCTAACCCTAA−3’、配列番号:16)を含んだ新たな15mLのチャーチバッファーを加え、37℃にて一晩ハイブリした。
次いで、TRFプローブを含んだチャーチバッファーを捨て、10mLの2xSSC,0.1% SDSバッファーで2回リンスした。その後、50mLの2xSSC,0.1% SDSバッファーで37℃にて10分間、2回洗浄し、50mLの1xSSC,0.1% SDSバッファーで37℃にて10分間、2回洗浄し、50mLの0.1xSSC,0.1% SDSバッファーで37℃にて5分間、4回洗浄した。洗浄後のメンブレンをハイブリバッグにはさみ、コダック
バイオマックス MSフィルム(Kodak BioMax MS film、シグマアルドリッチ社製)を用いて現像した。以上のChIPによって分析した結果を図27に示す。
<細胞免疫染色>
GFP融合hTERTをレトロウイルスを用いて安定的に発現させたヒト子宮頸がん(HeLa)細胞、またはヒト正常線維芽細胞(BJ細胞)にレトロウイルスを用いてhTERTを安定的に発現させたBJ−pBH−hTERT細胞を8ウェルカルチャースライド(8well culture slide、BD、Falcon社製)に播種した。翌日、Dulbecco’s PBS(−)(ニッスイ、塩化ナトリウム8g、リン酸一水素ナトリウム(無水)1.15g、塩化カリウム0.2g、リン酸二水素カリウム(無水)0.2g/L)で2回洗浄後、0.5%TritonX−100、1%パラホルムアルデヒド(PFA)含有Dulbecco’s PBS(−)を添加し、37℃にて20分間固定・浸透処理を行った。Dulbecco’s PBS(−)で5分間4回洗浄した後、100 mMグリシン含有PBS(−)で室温にて30分間処理した。そして、液を5% BSA含有Dulbecco’s PBS(−)に入れ替え、4℃にて一晩ブロッキングを行った。必要に応じて1% BSA含有 Dulbecco’s PBS(−)で希釈した一次抗体液(ウサギ由来抗hTERTポリクロ―ナル抗体(Rockland社製):1.3μg/mL、抗hTERTモノクローナル抗体:原液)、または一次抗体無しのものは1% BSA含有Dulbecco’s PBS(−)にて、4℃で一晩反応させた。次いで、Dulbecco’s PBS(−)で5分間4回洗浄した後、1%BSA含有 Dulbecco’s PBS(−)で希釈した二次抗体液に入れ替え、室温にて90分間反応させた。そして、Dulbecco’s PBS(−)で5分間4回洗浄した後、DAPI含有ベクタシールド・マウンティングメディウム(Vectashield Mounting Medium with DAPI、Vector Laboratories,Inc.製)で封入した。次いで、封入後のカルチャースライドの蛍光観察を共焦点レーザースキャン顕微鏡(Leica Microsystems K.K.製,TCS SP2)を用いて行った。以上の細胞免疫染色によって分析した結果を図28〜29に示す。
<ウェスタンブロッティングによる分析結果>
図22に示した結果から明らかなように、ウェスタンブロッティングにて、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体(9B10−10)と、293T−hTERT細胞において発現しているhTERT全長(Full)及びhTERTトランケーション変異体(HT1(hTERTタンパク質の532〜1132アミノ酸)、EB(hTERTタンパク質の1〜831アミノ酸)、EX(hTERTタンパク質の1〜655アミノ酸)との反応性を確認したところ、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体は、hTERTのFull、EB及びEXを認識する一方で、HT1は認識しなかった。従って、抗体を作製する際に抗原として用いた精製タンパク質(hTERTタンパク質の180〜460アミノ酸)を含む全長及びトランケーション変異体(Full、EB及びEX)のみを認識することが確認された。
なお、図22のAにおいて示す通り、前記hTERT全長及びhTERTトランケーション変異体のいずれにもN末端側にFLAGタグペプチドが付加されているため、前記hTERT全長及びhTERTトランケーション変異体の293T−hTERT細胞における発現は抗FLAG抗体によって確認することができ、実際、図22のB(右側)において示す通り、各々の発現は確認されている。
また、図23に示した結果から明らかなように、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体(2E4−2)は、293T−hTERT細胞及びBJ−TAP−hTERT細胞において発現しているhTERT全長を認識できることも確認された。さらに、市販品 Rockland社製 抗hTERTポリクローナル抗体(ウサギ由来)よりも良好にhTERTを認識することが明らかになった。
また、図24に示した結果から明らかなように、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体(2E4−2)を用いて内在性hTERTタンパク質の発現レベルを確認したところ、RT−PCRによって確認された内在性hTERTmRNAの発現レベルと相関して、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体は内在性hTERTタンパク質の発現を検出することが可能であった。
<免疫沈降法による分析結果>
図25に示した結果から明らかなように、293T−hTERT細胞を用いた免疫沈降において、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体(10E9−2)はRockland社製 抗hTERTポリクローナル抗体(ウサギ由来)と比較して、約5.3倍、効率良くFLAG−hTERTを免疫沈降できることが明らかになった。
<RIPによる分析結果>
図26に示した結果から明らかなように、HeLa細胞において内在性hTERTタンパク質の免疫沈降を行い、内在性hTERTタンパク質に結合するRNAを回収したところ、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体(10F3−10)はRockland社製 抗hTERTポリクローナル抗体(ウサギ由来)よりも効率的に内在性hTERTタンパク質を免疫沈降できることが明らかになった。すなわち、これまでに知られているhTERTに結合する2種類の異なるRNA(RMRP及びhTERC、Maida Y,ら、Nature、2009年、461巻、7261号、230〜235ページ 参照)を指標に内在性hTERTタンパク質の回収率を計算したところ、RMRPを指標とした場合は約3.6倍、hTERCを指標とした場合は約2.5倍、内在性hTERTタンパク質をRockland社製 抗hTERTポリクローナル抗体(ウサギ由来)よりも効率的に本発明の抗hTERTモノクローナル抗体は回収できることが明らかになった。
<ChIPによる分析結果>
図27に示した結果から明らかなように、クロマチン免疫沈降法にてより自然に近い状態(hTERTタンパク質が機能構造体として染色体上に存在する状態)における細胞内での内在性hTERTタンパク質の回収状況を確認したところ、既存の抗体(Rockland社製 抗hTERTポリクローナル抗体(ウサギ由来))ではほとんど回収されなかったのに対し、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体(10E9−2)は非常に効率良く、より自然な状況での内在性hTERTタンパク質を回収できることが明らかになった。
<免疫染色による分析結果>
抗体を用いずにhTERTを検出するために、GFP融合hTERTを安定的に発現させているHeLa細胞を用いて細胞免疫染色を行なったところ、図28に示した結果から明らかなように、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体(10E9−2)によるシグナルとGFPのシグナルとは殆ど共局在していた。一方、Rockland社製 抗hTERTポリクローナル抗体(ウサギ由来)により検出されるシグナルとGFPのシグナルとの共局在の比率は、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体に比べると有意に低かった。
また、BJ−pBH−hTERT細胞を用いて細胞免疫染色を行なったところ、図29に示した結果から明らかなように、本発明の抗hTERTモノクローナル抗体(10E9−2)はRockland社製 抗hTERTポリクローナル抗体(ウサギ由来)よりも効率的にhTERTタンパク質を認識できた。
以上説明したように、本発明によれば、hTERTタンパク質を特異的に認識することが可能となる。したがって、本発明のモノクローナル抗体は、特に、ウェスタンブロット法、細胞免疫染色法、ELISA法、免疫沈降法、クロマチン免疫沈降法、RNA−結合タンパク質免疫沈降法等の検出方法において、内在性hTERTタンパク質を特異的に認識する点において優れているため、hTERTタンパク質を検出及び/又は精製するための試薬、hTERTタンパク質に結合している分子(核酸(RNA、DNA)、タンパク質等)を検出及び/又は精製するための試薬、hTERTタンパク質の発現量を指標とするがん等の診断等において有用である。
配列番号1
<223> コドンの使用頻度を大腸菌の系に適合させ、人工的に合成されたポリヌクレオチド配列
配列番号3〜15
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列
配列番号16
<223> 人工的に合成されたプローブの配列

Claims (2)

  1. 配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合するモノクローナル抗体。
  2. 配列番号:2のアミノ酸番号125〜281に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドで免疫することを特徴とする、ヒトテロメレース逆転写酵素に対するモノクローナル抗体の製造方法。
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