JP5147696B2 - 可溶型lox−1に対するモノクローナル抗体 - Google Patents
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Description
Medical Tribune, 1999, Vol. 32, No.31, p.6 Nature, 1997, Vol.386, p.73-77 Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. , 2000, 20(3), p.715-720 Circulation, 2005, 112(6), p.812-818
(I)モノクローナル抗体
(I-1)ヒト可溶型LOX−1に特異的に結合する性質を有する、モノクローナル抗体もしくはその一部、またはこれらの標識物。
(1)非ヒト動物に、原核細胞由来のヒトLOX−1細胞外ドメインを免疫する工程、
(2)当該動物から抗体産生細胞を回収する工程、
(3)当該抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合する工程、
(4)上記工程で得られた融合細胞のなかから、前記ヒトLOX−1細胞外ドメインと反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程、および
(5)当該選択したハイブリドーマのなかから、真核細胞由来のヒトLOX−1細胞外ドメインと反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程。
上記のモノクローナル抗体またはその一部は、血液などの体液に存在するヒト可溶型LOX−1の高感度検出に有効に利用でき、急性冠症候群の診断に応用することが可能である。また、これらのモノクローナル抗体またはその一部は、急性冠症候群の治療薬または治療候補薬の薬効評価に有効に利用することができる。よって、本発明には下記の態様が含まれる。
(III-1)(I-1)〜(I-5)のいずれかに記載するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
(1)非ヒト動物に、原核細胞由来のヒトLOX−1細胞外ドメインを免疫する工程、
(2)当該非ヒト動物から抗体産生細胞を回収する工程、
(3)当該抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合する工程、
(4)上記で得られた融合細胞のなかから、前記ヒトLOX−1細胞外ドメインと反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程、および
(5)当該選択したハイブリドーマのなかから、真核細胞由来のヒトLOX−1細胞外ドメインと反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程。
(IV-1)(I-1)〜(I-5)のいずれかに記載のモノクローナル抗体もしくはその一部、またはこれらの標識物を、ヒト可溶型LOX−1に対する特異的結合試薬またはヒト可溶型LOX−1の特異的検出試薬として含む、ヒト可溶型LOX−1検出用試薬キット。
(V-1)(I-1)〜(I-5)のいずれかに記載のモノクローナル抗体もしくはその一部、またはこれらの標識物を、ヒト可溶型LOX−1に対する特異的結合試薬または特異的検出試薬として用いる工程を有する、ヒト可溶型LOX−1の特異的検出方法。
以下、本発明で用いられる各種用語の意味を明らかにすることにより、本発明のモノクローナル抗体、およびその製造方法を詳細に説明する。
(ロ)ヒトLOX−1細胞外ドメインの部分領域をタンパク質として発現するように遺伝子組換え技術を用いて作成された遺伝子組換え細胞を培養して得た培養上清もしくは当該培養上清から精製されたヒトLOX−1細胞外ドメインの部分領域;または
(ハ)化学的に合成されたヒトLOX−1細胞外ドメインのN末端領域。
前述する本発明のモノクローナル抗体およびその一部(抗体断片)は、ヒト可溶型LOX−1と高い親和性をもって特異的に結合する。
標準物質として、下記に示すように(1)ヒトLOX−1細胞外ドメイン、および(2) CHO細胞由来の可溶型LOX−1を調製した。
ヒトLOX−1細胞外ドメインの一部をコードする配列(配列番号2)をpQEベクター(キアゲン)に組み込んでプラスミド(pQE−hLOX−1)を作製し、これを大腸菌(高速形質転換大腸菌DH5α、(株)ニッポンジーン製)に導入した。この大腸菌をアンピシリンナトリウム100μg/mL及び硫酸カナマイシン25μg/mLを含むLB(Luria−Bertani)培地50mLで一晩培養してスターターを作り、これを1Lの培地に移した後、0.5 mol/L IPTG(Isopropyl β−D−Thiogalactoside)を添加して4時間培養した。
ヒトLOX−1発現CHO細胞の培養液中に分泌されるsLOX−1が、天然のヒト可溶型LOX−1に最も近いと考えられる。そこで、ヒトLOX−1をコードするcDNAをpVP22/myc−hisベクター(インビトロジェン製)に組み込んでpVP22/myc−his−LOX−1を作製し、これをCHO細胞にトランスフェクトして、stable cell(ヒトLOX−1(C−myc−Hisタグ付き)発現CHO細胞)をつくった。このヒトLOX−1(C−myc−Hisタグ付き)発現CHO細胞を20mLの培養液(10 vol %FCS(Fetal Calf Serum)及び 0.04g/dL G−418を含む Ham’s F−12培地)を入れた培養フラスコ(80cm2)で培養(37℃、5%CO2)し、その培養細胞から次の方法に従って継代を行った。
抗体のスクリーニング法としてTR−FIA(time−resolved fluoroimmunoassay)法を構築した。当該方法は、第二抗体固相化プレートに被験抗体試料を加え、そこにビオチン標識した抗原(ビオチン標識sLOX−1−D)を結合させて複合体を生成させ、生成した複合物(第二抗体−抗sLOX−1抗体−ビオチン標識sLOX−1−D)を、ユウロピウム(Eu)標識アビジン(またはEu標識ストレプトアビジン)で標識して、時間分解蛍光法により検出することを原理とするものである(図1参照)。
実施例1(1)で調製したヒトLOX−1細胞外ドメインタンパク(sLOX−1−D)をビオチン化試薬(sulfo−NHS−LC−biotin、ピアス製)を用いてビオチン化した。すなわち、マニュアルに従って下記の方法を行った。
(iii)反応後、ゲルろ過(PD−10、アマシャム製)により目的物(ビオチン標識sLOX−1−D)を分取後、濃縮する。
第二抗体として、ヤギ抗マウスIgG血清(シバヤギ)からMAPS−IIキット(バイオラッド製)により精製して得られたIgG画分 (15.8mg/mL)を用いた。当該IgG画分を用時、固相化バッファー(0.05g/dL窒化ナトリウム含有0.05 mol/Lトリスバッファー、pH7.8)にて10μg/mLに調製し、マイクロタイタープレート(マキシソープフルオロ、ヌンク)の各ウェルに100μLずつ分注した。室温で一晩以上静置した後、ブロッキングバッファー(20g/dLシュークロース及びブロックエース(1包4g、雪印乳業)を精製水100mLと固相化バッファー 100 mLを加え溶解したもの)で2回洗浄し、さらにブロッキングバッファー200μLを加えて5時間以上静置した。ブロッキングバッファーを吸引し、このプレートを減圧下室温で乾燥して第二抗体固相化ドライプレート(4℃保管)とした。
(2)で調製した第二抗体固相化プレートを洗浄液(0.01g/dL Tween 20及び0.05g/dL窒化ナトリウムを含む生理食塩液)で2回洗浄した後、各ウェルに被験抗体試料の希釈液50μL、および標識抗原混液(ビオチン標識sLOX−1−DとEu標識ストレプトアビジンの等量混合物)100μLを加え、4℃で16時間インキュベーションし、3回洗浄する。次いで増強試薬150μL(フタル酸水素カリウム1.39g、酢酸6.0g、TOPO(tri−n−octylphosphine oxide) 19.3 mg、NFA(2−naphthoyltrifluoroacetone) 4.59 mg及びTriton X−100 1.0gを精製水で1 Lとしたもの)を加え、固相に固定化されたユウロピウム(Eu)の時間分解蛍光強度をマルチラベルカウンタ(1420アルボSX、ワラック製)により測定する。斯くして、蛍光強度が100000カウントを与える被験抗体の希釈倍数から、被験抗体試料の抗体価を求めることができる。
(2)で調製した第二抗体固相化プレートのウェルに、被験抗体試料の希釈液50μL、ヒト可溶型LOX−1の標準物質(sLOX−1−DまたはCHO細胞由来sLOX−1)溶液50μL、標識抗原混液(ビオチン標識sLOX−1−DとEu標識ストレプトアビジンの等量混合物)50μLを加えた後、4℃で一晩インキュベーションし、3回洗浄する。次いで増強試薬150μLを加え、固相に固定化されたユウロピウム(Eu)の時間分解蛍光強度をマルチラベルカウンタ(1420アルボSX、ワラック製)により測定する。配合する標準物質の濃度を段階的に変えて被験抗体試料とビオチン標識sLOX−1−Dとの結合を測定し、標準物質(sLOX−1−DまたはCHO細胞由来sLOX−1)の濃度に応じて阻害曲線を作成する。阻害曲線データのスキャッチャード解析により、被験抗体のヒト可溶型LOX−1に対するアフィニティ(解離定数、Kd)を求めることができる。
(1)免疫原
免疫原として実施例1(1)で調製したsLOX−1−D(沈殿を含む懸濁液)、およびヒトLOX−1細胞外ドメインのN端側に位置する配列番号5および6に示すアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチド1、ペプチド2)をハプテンとした。これは、実施例1(2)のCHO細胞由来sLOX−1の培養液中の含量は大腸菌などに比べて非常に少なく、また培養液中の夾雑物が多いため、このsLOX−1を免疫原として使用するには、必要量を確保するのが困難だからである。上記のハプテンとウシ血清アルブミン(BSA、シグマ製)のコンジュゲートを免疫原として用いた。
免疫動物としてはA/Jマウス(6〜8週齢、雌、10〜20g(体重)日本エスエルシーより入手)を用いた。A/Jマウスは20匹用い、4匹ずつ5群〔1−1群(No.1101〜1104)、2−1群(No.2101〜2104)、3−1群(No.3101〜3104)、4−1群(No.4101〜4104)および5−1群(No.5101〜5104)〕に分けた。免疫原(sLOX−1−D、ペプチド1−BSA、およびペプチド2−BSA)を生理食塩液に溶解し、等量のフロイント完全アジュバント(ディフコ)を加えて乳化させた。このエマルジョンの約100μg/100μLを表3に示すように、各マウスの腹腔内に3週間隔で4回投与した。
上記のようにして 抗血清が、免疫原として使用したsLOX−1−DおよびCHO細胞由来sLOX−1のいずれに対してもアフィニティの高かったマウス(No. 1103、No. 2101、No. 4103、No.5101)から、脾臓細胞を採取し、ミエローマ細胞との細胞融合を行った。ミエローマ細胞としてはP3U1細胞(P3−X63.Ag8.U1細胞の社内継代系)を選んだ。使用前に、液体窒素中で保管してあるミエローマ細胞を解凍後、ミエローマ継代用培地(RPMI−HEPES:RPMI 1640 450 mLに1mol/L HEPES(pH6.8)5 mL、OPK溶液(オキサル酢酸 7.5 mg/mL、 ピルビン酸Na 7.5 mg/mL、 カナマイシン5mg/mL)10 mL及びFBS (Fetal Bovine Serum)50 mLを加えたもの)を用いて7〜10 日間継代培養して細胞融合に供した。
〜10数個のコロニーが認められた。
融合細胞を培養して5日目に、37℃に加温したHAT培地0.1 mLを各ウェルに追加した。位相差顕微鏡を用いて、毎日ハイブリドーマの成長を観察しウェル全体の1〜5%にハイブリドーマが増殖したら、各ウェルの培養上清を0.1 mLずつサンプリングした。これを被験抗体試料として、実施例2で説明するTR−FIA法を行って、抗体価が高いものの中から、さらにアフィニティ及び細胞増殖の強いものを選んで下記のクローニングに供した。
クローニングを行なうウェルのハイブリドーマをパスツールピペットではがして、24穴の培養プレートに移動・拡大した。一部を計数して約50cell/mL になるようにHT培地(RPMI1640 350 mL、 NCTC10950 mL、 OPK溶液10 mL、NEAA 5 mL、1 mol/L HEPES(pH 6.8)5 mL、 HT(ヒポキサンチン、チミジン) 5 mL、FBS 100 mL及び10vol%BM−Condimed H1を含む培地)で倍々希釈した(8段階)。この0.2 mL(細胞数にして0.1〜10 cell/well)を培養プレートに分注した。3〜6日後に位相差顕微鏡にて観察し、各ウェルの細胞数をチェックした。ハイブリドーマがある程度増殖したら、ウェルあたり約2個以下のものについて培養上清を被験抗体試料として、TR−FIA法を用いてスクリーニングを行い、抗体価・アフィニティ及び増殖性のよいものの中で、単クローンであるウェルを選んだ(一次クローニング)。選んだウェルは速やかに再度クローニング(二次クローニング)を行い、一次クローニングと同様にTR−FIA法を用いてスクリーニングをして目的の抗体を選んだ。単クローンになっていないものについては再度クローニング(三次クローニング)を行った。確立したクローンは、継代を繰り返しながら、徐々に大きな培養フラスコへ移し、約5〜10×106cell/mLの濃度に調製して、セラムチューブに0.5 mLずつ分注(約5本)し、液体窒素中に保管した。このときの培養上清を分取して、抗体価をチェックした。なお、確立したハイブリドーマは凍結後、確認のため再び、培養を行い細胞の増殖性及び抗体価をチェックした。
以上のクローニング結果を表6に示す。
(5)で調製したハイブリドーマのうち、LOX−1の細胞外ドメインタンパク(sLOX−1−D)ならびにLOX−1の細胞外ドメインのN端ペプチドであるペプチド1のBSAコンジュゲートを免疫原として調製した11種類のハイブリドーマ(1G2、2E4、2E5、2G11、3E12、7G1、1B8、1A7、6B11、5C11、4D1)を大量培養して、無血清培地に置き換えその培養上清を集めることによりモノクローナル抗体を採取した。
(6)で調製したハイブリドーマの培養上清及びマウス腹水に含まれるモノクローナル抗体を、プロテインAアフィニティカラム(アフィゲルプロテインAMAPS−IIキット、バイオラッド)に供して、IgGに精製した。具体的には、まず、空カラムに約1mLのプロテインA固定化ビーズのゲル(懸濁液にして約1.5〜2mL)を充填し、結合バッファー(キットに添付)10mLで洗浄してプロテインAアフィニティカラムを作成した。ハイブリドーマの培養上清またはマウス腹水0.5mLと結合バッファー0.5〜1mL と混合し、遠心分離して調製した上清を、上記で作成したプロテインAアフィニティカラムに供して、まず20mLの結合バッファーを流して保持されないものを洗浄除去し、次に溶出バッファー(キットに添付)30mLを用いてIgGを脱離・溶出させた。溶出バッファーに代えた後、最初にでてくるタンパクピークをIgG溶液として採取した。溶出バッファーは酸性(pH3.0)なので、溶出してきたIgGを1mol/Lトリスバッファー(pH9.0)で直ちに中和した。得られたIgG溶液はリン酸緩衝生理食塩液(PBS)にて透析した後、凍結保管した。この結果、ハイブリドーマの培養上清の一部(30〜40mL)から100〜700μgのIgGが得られた。
実施例3で得られた11種類のモノクローナル抗体(培養上清のIgG画分)のうち1B8抗体を除く10種類を、実施例2(1)で説明する方法に従ってビオチン標識した。これらの10種のビオチン標識抗体と上記11種類のモノクローナル抗体とを、実施例2(2)の方法に従って固相化したプレートを用いて2サイトサンドイッチELISAを構築し、110通りの抗体の組み合わせについて、sLOX−1−DとCHO細胞由来sLOX−1を標準物質としたときのELISA標準曲線を調べた。
(1)モノクローナル抗体の断片化方法
モノクローナル抗体(IgG)の0.02mol/L酢酸バッファー溶液(pH4.0)0.25mlにペプシン(シグマ)希釈液(50μg/mL)50μLを加え攪拌後、37℃で3時間反応する。反応終了後、ゲルろ過HPLCシステム(島津LC−6A、カラム:TSK−gelG3000SWXL、6.8×300mm、溶離液:0.2mol/L塩化ナトリウムを含む0.1mol/Lリン酸塩バッファー、pH7.0、流速:0.5mL/min、検出:280nm)により、保持時間約18分のF(ab’)2画分(分子量約9.2万)を分取した。
アルカリホスファターゼ(ALP、ウシ小腸由来、キッコーマン)1mgを0.1mol/Lリン酸塩バッファー(pH7.0)0.2mLに溶解し、精製水0.05mLに溶解したN−(8−maleimidocapryloxy)sulfosuccinimide、 sodium salt(sulfo−HMCS、同仁化学)0.1mgを加えて、室温で2時間反応させる。反応終了後、PD−10カラム(溶離液:バッファーA)で精製後、その高分子画分を遠心限外ろ過(YM−10、セントリコン)で濃縮し、マレイミド化ALPとした。
培養上清あるいは腹水から得られた3種類のモノクローナル抗体(1G2、2G11、6B11)のIgG画分(1G2:2.0 mg、2G11:1.9 mg及び6B11:1.3 mg)を、上記(1)および(2)の方法に従って、ペプシン処理後還元してFab’とし、マレイミド化ALPと反応させて、ゲルろ過HPLCにより、3種類のFab’−ALPコンジュゲート(酵素標識抗体)を分取した。得られた酵素標識抗体はそれぞれ0.41 mg、0.42 mg及び0.29 mgであった。
モノクローナル抗体IgG(1A7のIgG)の固相化バッファー希釈液100μL(1μg/100μL)を用いて、実施例2(2)項に述べた第二抗体固相化プレート作製方法に準じて操作して、抗体固相化ドライプレートを作製した。
実施例5(4)項に従って、3種類の酵素標識抗体(1G2、2G11及び6B11)と、モノクローナル抗体1A7、5C11及び4D1のIgGを固相化(1μg/0.1 mL)したプレートを用いて、LOX−1細胞外ドメインタンパクを標準物質とした化学発光2サイトサンドイッチELISAの標準曲線(0.24−250 pg/well)を作成した。いずれの組み合わせも高いレスポンスを示し、特に固相化抗体と標識抗体(Fab’−ALPコンジュゲート)の組み合わせがそれぞれ1A7−6B11、5C11−1G2、4D1−2G11のとき高感度な標準曲線が得られた。その中でもややブランクは高いが最もレスポンスの高いものは1A7−6B11の組み合わせであった(推定検出限界0.24pg/well(約6amol/well))。
ヒト血清(ボランティア5人分の血清をプールしたもの)、ウサギ血漿及び牛胎児血清を1/1〜1/64まで希釈し、その50μL(血清量として0.78〜50μL/well)を上記の3種類のアッセイ系を用いて測定した。1A7−6B11(固相化抗体−ALP標識抗体)のELISA系において、動物血清ではほとんどレスポンスはなかったが、ヒト血清では血清量に応じてレスポンスを示し、0.78〜12.5μLの範囲で希釈直線性が見られた。これらの結果は、この測定系が、ヒト血清中のヒトsLOX−1を特異的に測定することができることを示している(図4)。
血中に抗マウス抗体(human anti−mouse antibody、HAMA)を持つヒトが無視できない割合で存在することが知られており、マウス抗体を使用するELISAにおいてこれらのヒトの血液試料は異常高値を示す。この妨害はアッセイバッファーにあらかじめマウスγグロブリン(IgG)を添加することにより抑えることができ、本ELISAにおいてもマウスγグロブリンをアッセイバッファーに添加してその影響を除くこととした。ELISA標準曲線に及ぼすマウスγグロブリン濃度の影響を調べたところ、20μg/mLまでならほとんど影響せず、アッセイバッファーには10μg/mLのマウスγグロブリンを添加することとした。なお、ここで使用したボランティア5人の血清中にHAMAは存在しなかった。図5にマウスγグロブリンを含むアッセイバッファーで作成したELISA標準曲線を示す。
sLOX−1濃度の低いボランティア血清(No. 3)にsLOX−1−Dを0.100〜12.8 ng/mL(1〜128pg/well)の濃度に添加した試料を用いてプレバリデーションを行った。表12に示すように、0.100〜6.40 ng/mLの範囲における実験内の精度・真度は良好であった(1.7〜15.7%及び−10.5〜+14.4%)。同濃度範囲における実験間の精度・真度も良好であった(5.3〜12.3%及び−8.3〜+7.5%)。一方、高濃度(12.8ng/mL)ではやや真度が悪いが、標準曲線のポイントと回帰計算方法を見直すことで改善できると思われた。これらの結果から、定量限界は約0.1ng/mLと推定された。ポリクローナル抗体を用いたELISA(定量限界:1ng/mL)よりも10倍の感度向上を達成できた。
本アッセイ系を用いて健常ボランティア5人から得た血清中のsLOX−1濃度(sLOX−1−Dを標準物質としたときのイムノリアクティビティ)を測定した。表14に示すように健常ヒト血清のsLOX−1の値は0.15〜0.57ng/mLで、本ELISAにより従来の方法(ポリクローナル抗体仕様のELISA)では測定できなかった健常ヒト血清中のsLOX−1の測定が可能であった。なお、この測定結果からは性別あるいは年齢との関連は認められなかった。
配列番号6は、可溶型分子(配列番号4)のアミノ酸配列の1−10の領域に相当するペプチドのアミノ酸配列を示す。ヒトLOX−1(配列番号1)のアミノ酸配列の92−101の領域に相当する。
Claims (7)
- 「Mouse−Mouse hybridoma sLOX−1 1A7」(受託番号:FERM BP−10645)、または「Mouse−Mouse hybridoma sLOX−1 6B11」(受託番号:FERM BP−10646)により産生される、モノクローナル抗体もしくはその一部、またはこれらの標識物。
- 請求項1に記載するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
- 「Mouse−Mouse hybridoma sLOX−1 1A7」(受託番号:FERM BP−10645)、または「Mouse−Mouse hybridoma sLOX−1 6B11」(受託番号:FERM BP−10646)である、請求項2記載のハイブリドーマ。
- 請求項1に記載のモノクローナル抗体もしくはその一部、またはこれらの標識物を含む、ヒト可溶型LOX−1検出用試薬キット。
- 急性冠症候群診断キットである請求項4に記載する試薬キット。
- 請求項1に記載のモノクローナル抗体もしくはその一部、またはこれらの標識物を、ヒト可溶型LOX−1に対する特異的結合試薬または特異的検出試薬として用いる工程を有する、ヒト可溶型LOX−1の特異的検出方法。
- 急性冠症候群の治療薬または治療候補薬が投与されたヒトから得た体液を対象として、請求項1に記載のモノクローナル抗体もしくはその一部、またはこれらの標識物を用いて、当該体液中の可溶性LOX−1を測定する工程を有する、急性冠症候群の治療薬または治療候補薬の薬効の評価方法。
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