JP2014131782A - アンカーコートシートの製造方法、積層シートの製造方法 - Google Patents

アンカーコートシートの製造方法、積層シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面硬度が高く、且つその上に低エネルギー量で密着性よく硬化樹脂層を形成できるアンカーコート層をプラスチック基材の表面に有するアンカーコートシートの製造方法、これを用いた積層シートの製造方法の提供。
【解決手段】プラスチック基材の片面または両面にアンカーコート層を有するアンカーコートシートの製造方法であって、プラスチック基材上に、硬化型樹脂成分(A)を含有するアンカーコート剤を塗工し、硬化させてアンカーコート層を形成する工程を有し、前記硬化型樹脂成分(A)が、重合性不飽和基と水酸基とイソシアヌル環とを有する化合物(A1)を含み、前記化合物(A1)の含有量が、前記硬化型樹脂成分(A)の総量に対して15質量%以上であり、前記硬化を、酸素濃度10体積%以下の低酸素雰囲気下で行うことを特徴とするアンカーコートシートの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、アンカーコートシートの製造方法、これを用いた積層シートの製造方法に関する。
物品に意匠性、耐擦傷性等の機能を付与するために、加飾シート、ハードコートシート等の機能シートを物品の表面に貼着することが行われている。
機能シートとしては、プラスチック基材の表面に印刷層、ハードコート層等の機能層を設けたものが汎用されている。機能層は、硬化型樹脂材料、たとえば熱硬化型のインク、活性エネルギー線硬化型のハードコート剤等、を塗工、硬化することにより形成されることが多い。
しかし、硬化型樹脂材料を硬化して形成される硬化樹脂層は一般的に、プラスチック基材に対する密着性が低い。
プラスチック基材と硬化樹脂層との密着性を高めるために種々の方法が検討されている。そのような方法の一つとして、プラスチック基材の表面にアンカーコート層を形成する方法がある。アンカーコート層を形成する方法は、硬化樹脂層自体のプラスチック基材への密着性を高める場合に比べて、硬化樹脂層を形成する硬化型樹脂材料の制限が少なく、汎用性が高い利点がある。アンカーコート層としては、たとえば、活性水素をもつ官能基を有する樹脂成分を含むアンカーコート剤から形成されたものが提案されている(たとえば特許文献1〜2)。
特開平09−087582号公報 特開2002−285071号公報
アンカーコート層には、プラスチック基材を保護するために、ある程度の硬度が要求されることがある。しかし、従来の技術では、アンカーコート層の硬度が高くなるほど、その上に形成される硬化樹脂層の密着性が低下する傾向があり、それらを両立することが難しい。
また、特許文献1〜2のように、活性水素をもつ官能基を有する樹脂成分を含むアンカーコート剤を用いてアンカーコート層を形成した場合、その上に形成する硬化樹脂層を充分に密着させるためには、硬化型樹脂材料の硬化に必要な量よりも多くのエネルギーを供給する(硬化型樹脂材料が硬化した後も加熱や活性エネルギー線の照射を続ける)必要がある。そのため、機能シートの製造に必要なエネルギーが多くなり、製造コストや製造時間の増大を招く問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、表面硬度が高く、且つその上に低エネルギー量で密着性よく硬化樹脂層を形成できるアンカーコート層をプラスチック基材の表面に有するアンカーコートシートの製造方法、これを用いた積層シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1] プラスチック基材の片面または両面にアンカーコート層を有するアンカーコートシートの製造方法であって、
プラスチック基材上に、硬化型樹脂成分(A)を含有するアンカーコート剤を塗工し、硬化させてアンカーコート層を形成する工程を有し、
前記硬化型樹脂成分(A)が、重合性不飽和基と水酸基とイソシアヌル環とを有する化合物(A1)を含み、
前記化合物(A1)の含有量が、前記硬化型樹脂成分(A)の総量に対して15質量%以上であり、
前記硬化を、酸素濃度10体積%以下の低酸素雰囲気下で行うことを特徴とするアンカーコートシートの製造方法。
[2] 前記化合物(A1)の水酸基価が50〜300mgKOH/gである[1]に記載のアンカーコートシートの製造方法。
[3] 前記アンカーコート剤が、光重合開始剤をさらに含有する[1]または[2]に記載のアンカーコートシートの製造方法。
[4] 前記アンカーコート剤が、レベリング剤をさらに含有する[1]〜[3]のいずれか一項に記載のアンカーコートシートの製造方法。
[5] 前記化合物(A1)の分子量が900以下である[1]〜[4]のいずれか一項に記載のアンカーコートシートの製造方法。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載のアンカーコートシートの製造方法により、プラスチック基材の片面または両面にアンカーコート層を有するアンカーコートシートを製造する工程と、
前記アンカーコート層の上に、硬化型樹脂材料を塗工し、硬化させて硬化樹脂層を形成する工程と、を含む積層シートの製造方法。
[7] 前記アンカーコートシートが、前記プラスチック基材の片面に前記アンカーコート層が形成されたものであり、
前記アンカーコート層を形成する前または後に、前記プラスチック基材の、前記アンカーコート層が形成される側とは反対側に、前記アンカーコート層とは異なる他の層を形成する工程をさらに含む[6]に記載の積層シートの製造方法。
[8] 前記他の層が粘着剤層を含む[7]に記載の積層シートの製造方法。
[9] 前記硬化型樹脂材料が、インキおよびハードコート剤からなる群から選ばれる[6]〜[8]のいずれか一項に記載の積層シートの製造方法。
本発明によれば、表面硬度が高く、且つその上に低エネルギー量で密着性よく硬化樹脂層を形成できるアンカーコート層をプラスチック基材の表面に有するアンカーコートシートの製造方法、これを用いた積層シートの製造方法を提供できる。
本発明のアンカーコートシートの製造方法により製造するアンカーコートシートの第1実施形態を示す概略断面図である。 本発明の積層シートの製造方法により製造する積層シートの第1実施形態を示す概略断面図である。 本発明の積層シートの製造方法により製造する積層シートの第2実施形態を示す概略断面図である。
以下、本発明を、添付の図面を用い、実施形態例を示して説明する。
[アンカーコートシート]
{第1実施形態}
図1は、本発明のアンカーコートシートの製造方法により得られるアンカーコートシートの第1実施形態を示す概略断面図である。
本実施形態のアンカーコートシート1は、プラスチック基材11と、該プラスチック基材11上に形成されたアンカーコート層13とを有する。
<プラスチック基材>
プラスチック基材11を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂等が挙げられる。
これらのなかでも、透明性、耐候性、耐溶剤性、剛度、コスト等の観点から、PETが好ましい。
プラスチック基材11には、各種添加剤が含まれてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、カップリング剤等が挙げられる。
プラスチック基材11には、プラスチック基材11に積層される他の層(たとえばアンカーコート層13、後述する粘着剤層等)との密着性を向上させるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、サンドブラスト処理や溶剤処理等の凹凸化処理、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等の表面酸化処理等が挙げられる。
プラスチック基材11の厚みは、10〜500μmであることが好ましく、20〜300μmであることがより好ましい。プラスチック基材11の厚みが10μm以上であれば、破断しにくく、500μm以下であれば、透明性を良好に維持できるとともに、取り扱い性にも優れる。
<アンカーコート層>
アンカーコート層13は、その上(プラスチック基材11側とは反対側)に他の硬化型樹脂材料を塗工し、硬化させて硬化樹脂層を形成したときに、プラスチック基材11と硬化樹脂層との間の密着性を高める役割を果たす層である。
アンカーコート層13は、特定のアンカーコート剤を塗工し、特定の硬化条件で硬化させることにより形成される。
(アンカーコート剤)
アンカーコート層13の形成に用いられるアンカーコート剤は、硬化型樹脂成分(A)(以下「(A)成分」ともいう。)を含有し、
前記(A)成分が、重合性不飽和基と水酸基とイソシアヌル環とを有する化合物(A1)(以下「(A1)成分」ともいう。)を含有するものである。
(A1)成分を含有することで、該アンカーコート剤は、活性エネルギー線硬化性を有している。また、(A1)成分は、アンカーコート層13の上に形成される硬化樹脂層の密着性の向上、低酸素雰囲気下で硬化させたときのアンカーコート層13の硬度の向上等に寄与する。
重合性不飽和基としては、エチレン性二重結合を含む基が好ましく、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。なかでも(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を示す。
(A1)成分は、1分子中に重合性不飽和基を1個有する単官能のモノマーまたはオリゴマーであってもよく、1分子中に重合性不飽和基を複数個有する多官能のモノマーまたはオリゴマーであってもよい。形成されるアンカーコート層の硬度、耐摩耗性等の点から、多官能のモノマーまたはオリゴマーであることが好ましい。
(A1)成分が1分子中に有する水酸基の数は1個以上であればよいが、(A)成分としては、水酸基価が50〜300mgKOH/gであるものが好ましく用いられる。(A)成分の水酸基価は、100〜200mgKOH/gであることが特に好ましい。(A1)成分の水酸基価が50mgKOH/g以上であると、アンカーコート層13の上に形成される硬化樹脂層の密着性が向上する。(A1)成分の水酸基価が300mgKOH/g以下であると、アンカーコート剤に他の成分が配合される場合に、該他の成分との相溶性が良好で、アンカーコート剤の貯蔵安定性が良好となる。
水酸基価は、JIS K1557−1 A法に準拠して測定される。
(A1)成分の分子量は、本発明の効果の点で、900以下が好ましく、500以下がより好ましい。分子量の下限は特に限定されないが、反応の容易さの点で、300以上が好ましい。
(A1)成分としては、下記一般式(1)で表されるモノマー;前記モノマーの少なくとも1種が重合してなるオリゴマー;等が挙げられる。
(A)成分に含まれる(A1)成分は1種でも2種以上でもよい。
Figure 2014131782
(式中、Rは(メタ)アクリロイル基または水素原子であり、Rは(メタ)アクリロイル基であり、Xは炭素数2〜4のアルキレン基である。)
式(1)中のXにおける炭素数2〜4のアルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。Xとして具体的には、−(CH−[nは2〜4の整数である。]、−CH−CH(CH)−、−CH(CH)−CH−CH−、−CH−CH(CH)−CH−、−CH(CHCH)−CH−、−CH(CH−CH−、−CH(CH)−CH(CH)−等が挙げられる。
(A)成分中の(A1)成分の含有量は、(A)成分の総量(100質量%)に対して15質量%以上であり、30質量%以上がより好ましい。15質量%以上であると、アンカーコート層13の上に形成される硬化樹脂層の密着性が向上する。
(A)成分中の(A1)成分の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
(A)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A1)成分以外の硬化型樹脂成分(A2)(以下「(A2)成分」ともいう。)をさらに含有してもよい。
(A2)成分としては、(A1)成分と重合可能なモノマーが好ましく、たとえば前記重合性不飽和基を有するモノマーが挙げられる。該モノマーは、単官能でも多官能でもよく、多官能であることが好ましく、4〜6官能であることが特に好ましい。
(A2)成分の具体例としては、たとえば、
ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の5官能以上の(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
アンカーコート剤中の(A)成分の含有量は、アンカーコート剤の固形分(100質量%)中、85〜99質量%であることが好ましく、90〜98質量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量が85質量%以上であれば、プラスチック基材11に対する密着性、およびアンカーコート層13上に形成される硬化樹脂層に対する密着性を充分に確保できる。一方、(A)成分の含有量が99質量%以下であれば、光重合開始剤やレベリング剤等の助剤を任意成分として添加でき、硬化不良が生じにくく、プラスチック基材11への塗工適性を維持しやすい。
アンカーコート剤は、硬化を促進させるために、光重合開始剤をさらに含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射により(A)成分の硬化反応を開始させ得るものであればよく、公知のものが使用できる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、プロピオフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。
光重合開始剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アンカーコート剤中の光重合開始剤の含有量は、(A)成分の100質量部に対し、1〜7質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましい。1質量部以上であると硬化不良が生じにくい。7質量部を超えて配合しても、配合量に見合った硬化促進効果は得られず、コストも高くなる。また、硬化物中に残留して黄変やブリードアウトなどの原因となるおそれがある。
アンカーコート剤は、光重合開始剤に加えて、光増感剤をさらに含有することもできる。光増感剤としては、たとえば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
アンカーコート剤は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。例えば、アンカーコート層13に各種機能(耐ブロッキング性、抗菌性、防汚性、帯電防止性、紫外線遮蔽性等)を付与するために用いられている公知の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、抗菌性を付与するための抗菌剤;防汚性を付与するためのフッ素系防汚剤;指すべり性を付与するためのフッ素系滑剤;塗工適性を向上させるためのレベリング剤;帯電防止性能を付与するための金属酸化物微粒子、帯電防止樹脂、導電性高分子;紫外線遮蔽性をするための金属酸化物微粒子、紫外線吸収剤;光安定化剤等が挙げられる。
アンカーコート剤は、上記の中でも、レベリング剤を含有することが好ましい。レベリング剤を含有することにより、塗工適性が向上する。
レベリング剤としては、公知のものが使用でき、例えばポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、アクリル系共重合物等が挙げられる。これらの中でも、少ない添加量で充分な塗工適性が得られることから、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン系のレベリング剤が好ましい。
アンカーコート剤中のレベリング剤の含有量は、(A)成分の100質量部に対し、0.005〜1質量部が好ましく、0.01〜0.5質量部がより好ましい。0.005質量部以上であるとレベリング剤を配合することによる効果が充分に得られる。1質量部以下であると硬化樹脂層との密着性が良好である。
アンカーコート剤は、溶剤をさらに含有してもよい。
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、n−ヘキサン、n−ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドンなどが使用される。これらは1種以上を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
特に、塗工ムラを軽減できることから、蒸発速度の異なる2種以上の溶剤を併用することが好ましい。例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる少なくとも2種を混合して使用することが好ましい。
アンカーコート剤は、(A)成分、必要に応じてその他の成分や溶剤を混合することにより調製できる。
アンカーコート層13の形成方法については後で説明する。
(アンカーコート層の膜厚)
アンカーコート層13の膜厚は、0.1〜5μmが好ましく、0.5〜3μmがより好ましい。アンカーコート層13の膜厚が0.1μm以上であると、アンカーコート層としての機能が充分に発揮され、その上に形成される他の硬化樹脂層との密着性が良好である。アンカーコート層13の膜厚が5μm以下であると、カールの発生が少なく、硬化樹脂層の塗工効率が向上する。
<物性>
アンカーコートシート1は、基材よりも傷が入りにくい硬度と、ヘイズ値1%以下、全光線透過率87%以上である透明性とを有することが好ましい。
ヘイズ値はJIS K 7136に基づいて測定される値であり、全光線透過率はJIS K 7361に基づいて測定される値である。ヘイズ値および全光線透過率が上記範囲内であれば、積層シートとしたとき、光学用途として好適に用いることができる。
また、アンカーコートシート1は、アンカーコート層13上に形成される硬化樹脂層(印刷層、ハードコート層等)との間に、該硬化樹脂層のアンカーコート層13からの剥離が起こらない硬化樹脂密着性(インキ密着性、ハードコート密着性等)を有することが好ましい。
<アンカーコートシート1の製造方法>
アンカーコートシート1は、プラスチック基材11上に前記アンカーコート剤を塗工し、形成された塗膜を、必要に応じて乾燥させた後、硬化させてアンカーコート層13を形成することにより製造できる。
アンカーコート剤の塗工方法としては、公知の方法を利用でき、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター、印刷機等を用いた方法が挙げられる。
アンカーコート剤の塗工量は、形成するアンカーコート層13の厚みに応じて設定される。
塗膜の加熱は、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いて実施できる。
アンカーコート剤の塗膜は、活性エネルギー線の照射により硬化させることができる。
活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、γ線等の電離性放射線などが挙げられ、中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。
電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
活性エネルギー線の照射による硬化は、酸素濃度10体積%以下の低酸素雰囲気下で行う。活性エネルギー線の照射時に塗膜と接する雰囲気を低酸素雰囲気とすることにより、形成されるアンカーコート層13の上に、他の硬化樹脂層(印刷層、ハードコート層等)を、従来よりも低エネルギーの硬化条件で密着性良く形成することができる。また、耐摩耗性が向上する。活性エネルギー線照射時の雰囲気中の酸素濃度は、5体積%以下であることがより好ましい。該酸素濃度の下限は特に限定されず、0%であってもよい。
雰囲気中の酸素濃度は、常法により調整できる。
たとえば前記塗膜が形成されたプラスチック基材を密閉可能な収容室内に収容し、該収容室内に不活性ガス(パージガス)を供給することにより該収容室内の酸素をパージガスで置換し、その状態で塗膜に活性エネルギー線を照射すればよい。このとき使用するパージガスとしては、窒素ガスが好ましい。
硬化は、1段階で行ってもよく、予備硬化工程と本硬化工程の2段階に分けて行ってもよい。
<作用効果>
本実施形態においては、プラスチック基材11上に、(A1)成分を特定の含有量で含むアンカーコート剤を用いてアンカーコート層13を形成することで、その上にさらに他の硬化型樹脂材料を塗工、硬化して他の硬化樹脂層(印刷層、ハードコート層等)をさらに形成したときに、該他の硬化樹脂層とプラスチック基材11との間の密着性が良好となる。また、該他の硬化樹脂層を充分にアンカーコート層に密着させるために必要なエネルギー量が、(A2)成分のみを用いる場合に比べて少ない。たとえば他の硬化型樹脂材料が熱硬化型樹脂材料である場合、より短い加熱時間で充分な密着性が得られる。また、他の硬化型樹脂材料が活性エネルギー線硬化型樹脂材料である場合、より少ない照射量で充分な密着性が得られる。
そのため、アンカーコートシート1は、プラスチック基材と、該プラスチック基材の片面に形成されたアンカーコート層と、アンカーコート層の上に形成された他の硬化樹脂層とを有する積層シートの製造用として有用である。
また、本実施形態においては、アンカーコート剤の塗膜を硬化させる際に、低酸素雰囲気下で活性エネルギー線を照射することにより、上記の効果がより高まり、さらには、形成されるアンカーコート層の硬度も高くなり、耐摩耗性、耐擦傷性等が向上する。
<用途>
アンカーコートシート1は、アンカーコート層13上にさらに他の層が積層した積層シートの製造に用いられる。
アンカーコート層13上に積層する他の層としては、本発明の有用性の点で、前記アンカーコート剤以外の硬化型樹脂材料を塗工し、硬化させてなる硬化樹脂層が好適である。このような硬化樹脂層としては、たとえば硬化型樹脂材料としてインクを用いて形成される印刷層、硬化型樹脂材料としてハードコート剤を用いて形成されるハードコート層等が挙げられる。アンカーコート層13上に積層する硬化樹脂層は1層でも2層以上であってもよい。
該積層シートの製造においては、プラスチック基材11の、アンカーコート層13が形成される側とは反対側に、さらに他の層を積層してもよい。
プラスチック基材11に積層する他の層としては、上記の印刷層、ハードコート層等の硬化樹脂層、粘着剤層等が挙げられる。
[積層シート]
{第1実施形態}
図2は、本発明の積層シートの製造方法により得られる積層シートの第1実施形態を示す概略断面図である。なお、以下に記載する実施形態において、前出の実施形態に対応する構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態の積層シート2は、アンカーコートシート1と、硬化樹脂層21とを有する。
アンカーコートシート1についての説明は前記のとおりである。
硬化樹脂層21は、アンカーコートシート1のアンカーコート層13上に形成されている。
<硬化樹脂層>
硬化樹脂層21は、前記アンカーコート剤以外の硬化型樹脂材料を塗工し、硬化させてなるものである。このような硬化樹脂層としては、たとえば硬化型樹脂材料としてインクを用いて形成される印刷層、硬化型樹脂材料としてハードコート剤を用いて形成されるハードコート層等が挙げられる。
〔印刷層〕
印刷層は、主に装飾等のために施される。
印刷層としては、例えば、インキにより絵柄、文字、写真等が印刷された層が挙げられる。印刷層は、図2に示すように、アンカーコート層13の全面上に形成されていてもよく、アンカーコート層13の一部の面上に形成されていてもよい。
印刷層は、硬化型樹脂材料であるインキを塗工し、硬化させることにより形成される硬化樹脂層であり、バインダー(硬化樹脂)を含む。
バインダーとしては、例えば、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(塩酢ビ系樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。印刷層21に含まれるバインダーは1種でも2種以上でもよい。
印刷層は、通常、バインダーの他に、着色剤を含む。着色剤としては、例えば、顔料、染料等が挙げられ、インクに配合される着色剤として公知のものを使用できる。
印刷層は、バインダーおよび着色剤以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、インキ用の添加剤として公知の種々の添加剤を使用でき、たとえば消泡剤、分散剤、レベリング剤、チキソトロピック剤、スリップ剤、色別れ防止剤、沈降防止剤、可塑剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、艶消剤、硬化促進剤等が挙げられる。
(インキ)
インキとしては、バインダーを形成する硬化型樹脂成分と着色剤とを含有するものであればよく、熱硬化型インキ、活性エネルギー線硬化型インキ等の公知の種々のインキのなかから適宜選択して用いることができる。
硬化型樹脂成分としては、バインダーに応じたものが用いられる。
インキには、必要に応じて、硬化型樹脂成分および着色剤以外の他の成分が配合されてもよい。
インキが熱硬化型である場合、硬化剤が配合されることが好ましい。硬化剤としては、公知の硬化剤のなかから、硬化型樹脂成分に応じて適宜選択できる。硬化剤の配合量は、一般的な配合量と同様であってよい。
インキが活性エネルギー線硬化型である場合、光重合開始剤が配合されることが好ましい。光重合開始剤としては、前記と同様のものが挙げられる。光重合開始剤の配合量は、一般的な配合量と同様であってよい。
インキは、これら以外に、上述した種々の添加剤をさらに含有してもよい。
インキは、通常、上記の各成分を溶解または分散させるために、水、溶剤等の液体媒体を含有する。溶剤としては、インクに用いられる溶剤として公知の溶剤を用いることができる。液体媒体の配合量は、一般的な配合量と同様であってよい。
インキは、常法により調製したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。
インキの具体例としては、たとえば以下に挙げるPOS、TAS、MRS、VK、ISX等が挙げられる。
POS:メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したアクリルポリオールからなるアクリルポリオールと、トリエチレングリコールからなる他のポリオールとからなるポリオール成分を、HDIビウレット変性体からなる硬化剤で硬化させる、ポリウレタン樹脂をバインダーとする2液硬化型インキ(POSスクリーンインキ100質量部と、210硬化剤5質量部と、P−002溶剤15質量部との混合物(原料はいずれも帝国インキ(株)製)。
TAS:ポリエステルポリオールをポリイソシアネートからなる硬化剤で硬化させる、ポリウレタン樹脂をバインダーとする2液硬化型インキ(TASスクリーンインキ100質量部と、210硬化剤5質量部と、G−002溶剤15質量部との混合物(原料はいずれも帝国インキ(株)製)。
MRX:ポリエステルポリオールをポリイソシアネートからなる硬化剤で硬化させる、ポリウレタン樹脂をバインダーとする2液硬化型インキ(MRXスクリーンインキ100質量部と、210硬化剤5質量部と、G−002溶剤15質量部との混合物(原料はいずれも帝国インキ(株)製)。
VK:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂をバインダーとする1液硬化型インキ(VKスクリーンインキ100質量部と、J−002溶剤15質量部との混合物(原料はいずれも帝国インキ(株)製)。
ISX:ポリエステル系樹脂をバインダーとする1液硬化型インキ(ISXスクリーンインキ100質量部と、Z−705溶剤10質量部との混合物(原料はいずれも帝国インキ(株)製)。
(印刷層の膜厚)
印刷層21の膜厚は、3〜50μmであることが好ましく、5〜40μmがより好ましい。印刷層21の膜厚が3μm以上であると、フィルム印刷部分の不透明度が向上し、50μm以下であると、充分な不透明度を維持したまま積層体の厚みを薄くできる。
〔ハードコート層〕
ハードコート層は、主に耐擦傷性、硬度、防指紋性等を付与するために設けられる。
ハードコート層は、硬化型樹脂材料であるハードコート剤を塗工し、硬化させることにより形成される。
(ハードコート剤)
ハードコート剤としては、硬化型樹脂成分を含有するものであればよく、熱硬化型ハードコート剤、活性エネルギー線硬化型ハードコート剤等の公知の種々のハードコート剤のなかから適宜選択して用いることができる。
ハードコート剤に用いる硬化型樹脂成分としては、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂等が挙げられる。
熱硬化性型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、活性エネルギー線の照射により重合可能な重合性不飽和基(たとえばエチレン性二重結合等の重合性不飽和結合を含む基)を有するモノマーまたはオリゴマーを含有するものが挙げられる。
好ましい活性エネルギー線硬化型樹脂の例として、ウレタンアクリレートオリゴマーが挙げられる。ウレタンアクリレートオリゴマーは、ウレタン結合を介してポリオキシアルキレンセグメント又は飽和ポリエステルセグメントあるいはその両方が連結し、両末端にアクリロイル基を有するものである。
好ましい活性エネルギー線硬化型樹脂の他の例として、多官能(メタ)アクリルモノマーを含有するものが好ましい。多官能(メタ)アクリルモノマーを含有するハードコート剤を用いて形成されるハードコート層は、架橋構造を有する硬質のアクリル系重合体を含有することから、表面硬度、透明性、擦傷性等に優れる。
「多官能」は、重合性不飽和基を2つ以上有することを意味し、「(メタ)アクリルモノマー」は、重合性不飽和基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることを示す。
多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、下記のモノマーが挙げられる。
ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)ジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の5官能以上の(メタ)アクリレート等。
これらの多官能(メタ)アクリルモノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記多官能(メタ)アクリルモノマーは、4官能以上の(メタ)アクリルモノマー(好ましくは5官能以上の(メタ)アクリルモノマー)を主成分とし、2〜3官能(メタ)アクリルモノマーを副成分とするものであることが好ましい。
これらのうち、4官能以上の(メタ)アクリルモノマーは硬度の向上に寄与し、2〜3官能(メタ)アクリルモノマーは柔軟性の向上に寄与する。そのため、得られるハードコート層が、高い硬度と適度な柔軟性を有し、耐擦傷性に優れるものとなる。
全多官能(メタ)アクリルモノマー中、4官能以上の(メタ)アクリルモノマーの割合は、50質量%以上95質量%未満が好ましく、60質量%以上90質量%未満がより好ましい。また、2〜3官能(メタ)アクリルモノマーの割合は、全多官能(メタ)アクリルモノマー中、5質量%以上50質量%未満が好ましく、10質量%以上40質量%未満がより好ましい。
ハードコート剤中の硬化型樹脂成分の含有量は、ハードコート剤の固形分中、82〜97質量%であることが好ましく、87〜92質量%であることがより好ましい。硬化型樹脂成分の含有量が82質量%以上であれば、アンカーコート層13に対する密着性を充分に確保できる。また、硬化型樹脂成分として多官能(メタ)アクリルモノマーを重合させて得られる重合体を用いる場合は、充分なハードコート性能が得られやすい。一方、硬化型樹脂成分の含有量が97質量%以下であれば、光重合開始剤やレベリング剤等の助剤を任意成分として添加でき、硬化不良が生じにくく、アンカーコート層13への塗工適性を維持しやすい。
ハードコート剤は、硬化型樹脂成分に加えて、固体粒子を含有してもよい。これにより、固体粒子を含有するハードコート剤をアンカーコート層13上に塗工すると、固体粒子が塗膜表面に部分的に露出し、ハードコート層の表面が適度な凹凸面となり、耐ブロッキング性等が得られる。また、硬化時の収縮が抑制される。
ハードコート剤が含有する固体粒子は無機粒子でも有機粒子でもよい。
無機粒子としては、硬度が高いものが好ましく、例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子、二酸化スズ粒子、五酸化アンチモン粒子、三酸化アンチモン粒子などの無機酸化物粒子を用いることができる。
無機粒子は、前記無機酸化物粒子をカップリング剤により処理した反応性無機酸化物粒子であってもよい。カップリング剤により処理することにより、アクリル系重合体との間の結合力を高めることができる。その結果、表面硬度や耐擦傷性を向上させることができ、さらに無機酸化物粒子の分散性を向上させることができる。
カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシアルミニウム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
カップリング剤の処理量は、無機酸化物粒子100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリシロキサン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリアミドなどの樹脂粒子などを用いることができる。
有機粒子は、前記樹脂粒子をカップリング剤により処理した反応性樹脂粒子であってもよい。カップリング剤により処理することにより、アクリル系重合体との間の結合力を高めることができる。その結果、表面硬度や耐擦傷性を向上させることができ、さらに樹脂粒子の分散性を向上させることができる。
カップリング剤およびその処理量は、前記反応性無機酸化物粒子で挙げたカップリング剤およびその処理量と同様である。
固体粒子の平均粒子径は、5nm〜90nmが好ましく、20nm〜60nmがより好ましい。平均粒子径が5nm以上であれば、固体粒子がハードコート層中に埋没することなく表面に露出するので、ハードコート層の表面が適度な凹凸面とすることができる。平均粒子径が90nm以下であれば、ハードコート層の表面の凹凸が大きくなりすぎるのを抑制できるので、積層シート2の巻き取り時に打痕などの欠陥が生じにくい。また、平均粒子径が小さいほど、透明性も向上する。
なお、平均粒子径が5nm未満の粒子は製造が困難で高度な技術が必要である。しかも、凝集して二次粒子を形成しやすいため、取扱い性に劣る。
固体粒子の平均粒子径とは、固体粒子の1次粒子の平均粒子径のことである。1次粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡の観察像により測定される値である。具体的には、以下のようにして疎水化無機微粒子の平均粒子径を測定する。
透過型電子顕微鏡を用いて、疎水化無機微粒子の粒子画像の最大長(Dmax:粒子画像の輪郭上の2点における最大長さ)と、最大長垂直長(DV−max:最大長に平行な2本の直線で粒子画像を挟んだときの、この2本の直線間の最短長さ)を測長し、その相乗平均値(Dmax×DV−max)1/2を粒子径とする。この方法で100個の粒子について粒子径を測定し、その算術平均値を平均粒子径とする。
ハードコート剤中の固体粒子の含有量は、硬化型樹脂成分100質量部に対して3〜15質量部が好ましく、5〜12質量部がより好ましい。固体粒子の含有量が3質量部以上であれば、固体粒子を含有させることによる効果が充分に得られる。固体粒子の含有量が15質量部以下であれば、ハードコート性能が良好となる。
ハードコート剤は、硬化を促進させるために、光重合開始剤をさらに含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、アンカーコート剤の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
光重合開始剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ハードコート剤中の光重合開始剤の含有量は、(A)成分の100質量部に対し、1 〜10質量部が好ましく、2〜6質量部がより好ましい。1質量部以上であると硬化不良が生じにくい。10質量部を超えて配合しても、配合量に見合った硬化促進効果は得られず、コストも高くなる。また、硬化物中に残留して黄変やブリードアウトなどの原因となるおそれがある。
ハードコート剤は、光重合開始剤に加えて、光増感剤をさらに含有することもできる。光増感剤としては、たとえば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
ハードコート剤は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。例えば、アンカーコート層13に各種機能(耐ブロッキング性、抗菌性、防汚性、帯電防止性、紫外線遮蔽性等)を付与するために用いられている公知の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、抗菌性を付与するための抗菌剤;防汚性を付与するためのフッ素系防汚剤;指すべり性を付与するためのフッ素系滑剤;塗工適性を向上させるためのレベリング剤;帯電防止性能を付与するための金属酸化物微粒子、帯電防止樹脂、導電性高分子;紫外線遮蔽性をするための金属酸化物微粒子、紫外線吸収剤;光安定化剤等が挙げられる。
ハードコート剤は、溶剤を含有してもよい。
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、n−ヘキサン、n−ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドンなどが使用される。これらは1種以上を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
特に、塗工ムラを軽減できることから、蒸発速度の異なる2種以上の溶剤を併用することが好ましい。例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる少なくとも2種を混合して使用することが好ましい。
(ハードコート層の膜厚)
ハードコート層の膜厚は、0.1〜20μmであることが好ましく、2〜10μmがより好ましい。ハードコート層23の膜厚が0.1μm以上であると、ハードコート層が形成されるため、擦傷性、硬度が向上し、20μm以下であると、塗工後のカールが少なくなる。
<積層シート2の製造方法>
積層シート2は、アンカーコートシート1のアンカーコート層13上に硬化型樹脂材料(インク、ハードコート剤等)を塗工し、形成された塗膜を硬化させて硬化樹脂層21を形成することにより製造できる。
硬化型樹脂材料の塗工方法としては、公知の方法を利用でき、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター、印刷機等を用いた方法が挙げられる。
印刷機としては、たとえばスクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の各種印刷法による印刷機を利用できる。
インクの場合、インクの塗膜(インク層)を有するインクリボンを用いた熱転写プリンターによって、アンカーコートシート1のアンカーコート層13上にインク層を転写させてもよい。
硬化型樹脂材料の塗工量は、形成する硬化樹脂層21の厚みに応じて設定される。
硬化型樹脂材料の塗膜は、硬化型樹脂材料が熱硬化性である場合は、加熱炉や赤外線ランプ等を用いて加熱することによって硬化させることができ、活性エネルギー線硬化性である場合は、活性エネルギー線の照射によって硬化させることができる。
活性エネルギー線としては、アンカーコートシートの製造方法の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
活性エネルギー線の照射によるインク層の硬化は、大気中で行ってもよく、アンカーコート層を形成する場合と同様、低酸素雰囲気下で行ってもよい。
硬化は、1段階で行ってもよく、予備硬化工程と本硬化工程の2段階に分けて行ってもよい。
<作用効果>
積層シート2は、アンカーコート層11上に硬化樹脂層21を形成したものであり、硬化樹脂層21のアンカーコート層11に対する密着性に優れる。また、積層シート2の製造においては、硬化樹脂層21をアンカーコート層11に充分に密着させるために必要なエネルギーが少なく、積層シート2の製造に要するエネルギーや時間を低減できる。
また、積層シート2は、保護シートとして用いることができる。たとえば積層シート2を物品の表面に貼着することで該表面を保護することができる。
また、積層シートの製造に際し、硬化樹脂層21の形成に用いる硬化型樹脂材料によって、得られる積層シート2に種々の機能を持たせることができる。たとえば硬化型樹脂材料としてインクを用いた場合、得られる積層シートは、成形品等の物品(被着体)表面に貼着して意匠性等を付与するための加飾シートとして用いることができる。硬化型樹脂材料としてハードコート剤を用いた場合、得られる積層シートは、成形品等の物品(被着体)表面に貼着することで耐擦傷性等を付与するためのハードコートシートとして用いることができる。
{第2実施形態}
図3は、本発明の積層シートの製造方法により得られる積層シートの第2実施形態を示す概略断面図である。
本実施形態の積層シート3は、アンカーコートシート1と、硬化樹脂層21と、粘着剤層23と、剥離シート25とを有する。
アンカーコートシート1、硬化樹脂層21についての説明は前記のとおりである。
<粘着剤層>
粘着剤層23を構成する粘着剤としては、特に限定されず、公知のものを使用でき、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。粘着剤は、溶剤系、エマルジョン系、水系のいずれであってもよい。これらの粘着剤は、用途に応じて適宜選択できる。たとえば光学系用途に使用する場合は透明度、耐候性、耐久性、コスト等の観点からアクリル溶剤系の粘着剤が特に好ましい。
粘着剤には、必要に応じて他の助剤が添加されてもよい。他の助剤としては、増粘剤、pH調整剤、タッキファイヤー、バインダー、架橋剤、粘着性微粒子、消泡剤、防腐防黴剤、顔料、無機充填剤、安定剤、濡れ剤、湿潤剤などが挙げられる。
粘着剤層23の膜厚は、3〜500μmが好ましく、4〜300μmがより好ましく、5〜150μmがさらに好ましい。粘着剤層23の膜厚が3μm未満であると、膜厚をコントロールすることが難しく、ムラになりやすい。一方、粘着剤層23の膜厚が500μmを超えると、乾燥や硬化などの製造工程で不具合が生じることがある。また、打ち抜きなどの後加工で糊のはみ出しなどの不具合が生じることもある。
<剥離シート>
剥離シート25としては、例えば、剥離シート用基材と、剥離シート用基材の片面(粘着剤層23側)に設けられた剥離剤層とを有するものが挙げられる。
剥離シート用基材としては、例えば、上質紙、グラシン紙などの紙類、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルム類などが挙げられる。
剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
剥離シート25の膜厚は、20〜100μmであることが好ましい。
<積層シート3の製造方法>
積層シート3は、アンカーコートシート1のアンカーコート層13上に硬化型樹脂材料を塗工し、形成された塗膜を硬化させて硬化樹脂層21を形成する工程と、アンカーコートシート1のプラスチック基材11上に粘着剤層23および剥離シート25を積層する工程と、を行うことにより製造できる。
硬化樹脂層21を形成する工程の後に、粘着剤層23および剥離シート25を積層する工程を行ってもよく、粘着剤層23および剥離シート25を積層する工程の後に、硬化樹脂層21を形成する工程を行ってもよい。
硬化樹脂層21は、積層シート2の製造方法で挙げた方法と同様の方法で形成できる。
粘着剤層23および剥離シート25を積層する工程は、たとえば、プラスチック基材11上に粘着剤を塗工して粘着剤層23を形成し、該粘着層31上に剥離シート25を貼着することにより実施できる。また、剥離シート25上に粘着剤を塗工して粘着剤層23を形成し、該粘着剤層23をプラスチック基材1に貼着することによっても実施できる。
粘着剤層23の形成は公知の方法により実施できる。たとえば粘着剤の塗工には、積層シート2の説明で挙げた各種の公知の方法が利用できる。
<作用効果>
積層シート3は、第1実施形態の積層シート2のプラスチック基材11側の表面に粘着剤層23と剥離シート25とをこの順に積層した構成を有する。そのため、剥離シート25を剥がすことで、積層シート2を簡単に被着体(例えばディスプレイやタッチパネルなどの表面)に貼着できる。
以上、実施形態例を示して本発明のアンカーコートシートの製造方法および積層シートの製造方法を説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
たとえば、上記実施形態では、プラスチック基材11の片面にアンカーコート層13を形成する例を示したが、プラスチック基材11の両面にアンカーコート層13を形成してもよい。
アンカーコート層13の上に1層の硬化樹脂層21を形成する例を示したが、2層以上の硬化樹脂層を形成してもよい。
アンカーコートシート1の、アンカーコート層13側とは反対側(プラスチック基材11側)の表面に、アンカーコート層13以外の他の層として粘着剤層23を積層した例を示したが、該他の層として、粘着剤層以外の層を積層してもよい。該他の層としては、たとえば、印刷層、ハードコート層等の硬化樹脂層等が挙げられる。
アンカーコートシート1の、アンカーコート層13側とは反対側(プラスチック基材11側)の表面に形成される他の層は、1層でも2層以上でもよい。
アンカーコート層13の上に形成された硬化樹脂層の上に、硬化樹脂層以外の他の層をさらに形成してもよい。該他の層としては、たとえば粘着剤層等が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
以下の各例で用いた(A)成分を以下に示す。これらのうち、(A1)成分に該当するのはモノマーAである。各モノマーの水酸基価は、JIS K1557−1 A法に準拠して測定した。
・モノマーA:EO変性イソシアヌル酸ジアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−215、水酸基価:160mgKOH/g、前記一般式(1)中のRおよびRがアクリロイル基、Xが−(CH−であるモノマー)。
・モノマーB:EO変性イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学(株)製、商品名:A9300、水酸基価:8mgKOH/g)。
・モノマーC:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレートDPE−6A、水酸基価:6mgKOH/g)。
・モノマーD:ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレートPE−3A、水酸基価:190mgKOH/g)。
[実施例1]
<アンカーコート剤の調製>
モノマーAの100質量部と、レベリング剤(ビッグケミージャパン(株)製、商品名:BYK−310)の0.1質量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名:IRGACURE184)の3質量部と、メチルエチルケトンの100質量部とを混合してアンカーコート剤を調製した。
表1にアンカーコート剤の組成を示す。なお、表1に示す(A)成分、レベリング剤、および光重合開始剤の配合量(含有量)は、固形分換算した量(質量部)である。
<アンカーコートシートの製造>
プラスチック基材として、PETフィルム(東レ社製、商品名:ルミラーU48、21cm×29.7cm、厚さ100μm)を用い、該プラスチック基材上に、上記で得たアンカーコート剤をバー塗工し、80℃の熱風乾燥機にて60秒間乾燥し、さらに高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、照射強度200mW/cm、積算光量300mJ/cm、酸素濃度1体積%以下の条件で紫外線を照射することにより硬化させた。これにより、プラスチック基材の片面に膜厚3μmのアンカーコート層が積層したアンカーコートシートを得た。紫外線照射時の酸素濃度は、Nパージを行うことにより、1体積%以下とした。
得られたアンカーコートシートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性を耐スチールウール試験により評価した。具体的には、アンカーコートシートのアンカーコート層、PETフィルム(東レ社製、商品名:ルミラーU48)それぞれの上に、#0000のスチールウールを載せ、加重200g/cmとなるように荷重をかけた状態で10往復させた後、表面の状態を観察した。アンカーコート層の方が、PETフィルムより傷が少ないものを○、PETフィルムと同等あるいは悪いものを×とした。
<インキ密着性の評価>
インキ(帝国インキ社製、商品名:MRX HF−919墨)の100質量部と、硬化剤(帝国インキ社製、商品名:210硬化剤)の5質量部とを混合し、インキAを調製した。
別途、インキ(帝国インキ社製、商品名:MRX HF−619白)の100質量部と、硬化剤(帝国インキ社製、商品名:210硬化剤)の5質量部とを混合し、インキBを調製した。
なお、インキA、Bはいずれも、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン樹脂をバインダーとする2液性インキである。
インキA、インキBそれぞれを、アンカーコートシートのアンカーコート層側の表面にスクリーン印刷し、乾燥温度80℃、乾燥時間30分間または1時間の条件で乾燥させて、膜厚15μmの印刷層を形成した。これにより、プラスチック基材の片面にアンカーコート層と印刷層とが順次積層した積層シートを得た。
得られた積層シートにおけるインキ密着性を、JIS K5600−5−6に準拠して碁盤目密着試験を行うことにより評価した。具体的には、積層シートの印刷層に碁盤目状の切れ込みを入れ、その上に、セロハンテープ(ニチバン社製、商品名:CT28)を、指で上から押し付けるようにして密着させた後に剥離した。100マスの内、印刷層が全てのマス目で剥離していない場合を100/100、全てのマス目で剥離している場合を0/100とし、印刷層が剥離していないマス目を数え、以下の評価基準にてインキ密着性を評価した。
○:乾燥時間30分間で96/100〜100/100。
△:乾燥時間1時間で96/100〜100/100。
×:乾燥時間1時間で0/100〜95/100。
<ハードコート層密着性の評価>
ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−1200)の100質量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名:IRGACURE184)の5質量部と、レベリング剤(ビッグケミージャパン(株)製、商品名:BYK−UV3500)の1質量部と、メチルエチルケトンの240質量部とを混合して、ハードコート剤Aを調製した。
別途、ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−1200)の100質量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名:IRGACURE184)の5質量部と、レベリング剤(ダイキン工業(株)製、商品名:オプツールDAC−HP)の1質量部と、メチルエチルケトンの240質量部とを混合して、ハードコート剤Bを調製した。
ハードコート剤A、ハードコート剤Bそれぞれを、アンカーコートシートのアンカーコート層側の表面にバー塗工した後、80℃の熱風乾燥機にて60秒間乾燥し、さらに高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、照射強度200mW/cm、積算光量150mJ/cmまたは300mJ/cmの条件で紫外線を照射し、膜厚9μmのハードコート層を形成した。これにより、プラスチック基材の片面にアンカーコート層とハードコート層とが順次積層した積層シートを得た。
得られた積層シートにおけるハードコート層密着性を、JIS K5600−5−6に準拠して碁盤目密着試験を行うことにより評価した。具体的には、積層シートのハードコート層に碁盤目状の切れ込みを入れ、その上に、セロハンテープ(ニチバン社製、商品名:CT28)を、指で上から押し付けるようにして密着させた後に剥離した。100マスの内、ハードコート層が全てのマス目で剥離していない場合を100/100、全てのマス目で剥離している場合を0/100とし、ハードコート層が剥離していないマス目を数え、以下の評価基準にてハードコート層密着性を評価した。
○:積算光量150mJ/cmで96/100〜100/100。
△:積算光量300mJ/cmで96/100〜100/100。
×:積算光量300mJ/cmで0/100〜95/100。
[実施例2]
モノマーAの100質量部のうち50質量部をモノマーBに変更した以外は、実施例1と同様にして、表1に示す組成のアンカーコート剤を調製した。
得られたアンカーコート剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてアンカーコートシートを得た。
得られたアンカーコートシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
モノマーAの100質量部のうち50質量部をモノマーCに変更した以外は、実施例1と同様にして、表1に示す組成のアンカーコート剤を調製した。
得られたアンカーコート剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてアンカーコートシートを得た。
得られたアンカーコートシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
モノマーAの100質量部のうち70質量部をモノマーDに変更した以外は、実施例1と同様にして、表1に示す組成のアンカーコート剤を調製した。
得られたアンカーコート剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてアンカーコートシートを得た。
得られたアンカーコートシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
モノマーAの代わりにモノマーBを用いた以外は、実施例1と同様にして、表2に示す組成のアンカーコート剤を調製した。
得られたアンカーコート剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてアンカーコートシートを得た。
得られたアンカーコートシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例2]
モノマーAの100質量部のうち、90質量部をモノマーBに変更した以外は、実施例1と同様にして、表2に示す組成のアンカーコート剤を調製した。
得られたアンカーコート剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてアンカーコートシートを得た。
得られたアンカーコートシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例3]
モノマーAの100質量部のうち、90質量部をモノマーCに変更した以外は、実施例1と同様にして、表2に示す組成のアンカーコート剤を調製した。
得られたアンカーコート剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてアンカーコートシートを得た。
得られたアンカーコートシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例4]
モノマーAの100質量部のうち、90質量部をモノマーDに変更した以外は、実施例1と同様にして、表2に示す組成のアンカーコート剤を調製した。
得られたアンカーコート剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてアンカーコートシートを得た。
得られたアンカーコートシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例5]
アンカーコート層を形成する際に、Nパージを行わず、酸素濃度21%の大気中で紫外線の照射を行った以外は、実施例1と同様にしてアンカーコートシートを得た。
得られたアンカーコートシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例6]
アンカーコート層を形成する際に、Nパージを行わず、酸素濃度21%の大気中で紫外線の照射を行った以外は、比較例2と同様にしてアンカーコートシートを得た。
得られたアンカーコートシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2014131782
Figure 2014131782
上記結果に示すとおり、実施例1〜4は、形成されたアンカーコート層の耐摩耗性が良好であった。また、該アンカーコート層の上に印刷層を形成する際に、塗工後の加熱時間が短くても充分なインキ密着性が得られた。同様に、該アンカーコート層の上にハードコート層を形成する際に、塗工後の紫外線照射量(積算光量)が少なくても充分なハードコート層密着性が得られた。
一方、(A1)成分を含まないアンカーコート剤を用いた比較例1は、加熱時間が長くても充分なインキ密着性が得られなかった。また、紫外線照射量が多くても、充分なハードコート層密着性が得られなかった。
(A)成分中の(A1)成分の含有量が10質量%の比較例2〜4は、充分なインキ密着性を得るために必要な加熱時間が長かった。また、比較例4は、充分なハードコート層密着性を得るために必要な紫外線照射量が多く、比較例2〜3は、紫外線照射量が多くても、充分なハードコート層密着性が得られなかった。
実施例1と同じアンカーコート剤を使用し、アンカーコート層形成時の紫外線照射を酸素濃度21%の大気中で行った比較例5は、アンカーコート層の耐摩耗性が悪かった。
比較例2と同じアンカーコート剤を使用し、アンカーコート層形成時の紫外線照射を酸素濃度21%の大気中で行った比較例6は、インキ密着性以外の評価結果が比較例2よりも悪かった。
上記のうち、実施例1と比較例5とでは、耐摩耗性以外の評価結果への酸素による顕著な影響は見られなかったが、比較例2と比較例6とでは、低酸素雰囲気下で紫外線照射を行った比較例2の方が、耐摩耗性だけでなく、ハードコート層密着性も悪くなった。このことから、(A1)成分と他の(A)成分(たとえばモノマーB〜D)では、アンカーコート層を形成する際の紫外線照射時の酸素濃度が与える影響に違いがあることがわかった。
1 アンカーコートシート
2 積層シート
3 積層シート
4 積層シート
11 プラスチック基材
13 アンカーコート層
21 硬化樹脂層
23 粘着剤層
25 剥離シート

Claims (9)

  1. プラスチック基材の片面または両面にアンカーコート層を有するアンカーコートシートの製造方法であって、
    プラスチック基材上に、硬化型樹脂成分(A)を含有するアンカーコート剤を塗工し、硬化させてアンカーコート層を形成する工程を有し、
    前記硬化型樹脂成分(A)が、重合性不飽和基と水酸基とイソシアヌル環とを有する化合物(A1)を含み、
    前記化合物(A1)の含有量が、前記硬化型樹脂成分(A)の総量に対して15質量%以上であり、
    前記硬化を、酸素濃度10体積%以下の低酸素雰囲気下で行うことを特徴とするアンカーコートシートの製造方法。
  2. 前記化合物(A1)の水酸基価が50〜300mgKOH/gである請求項1に記載のアンカーコートシートの製造方法。
  3. 前記アンカーコート剤が、光重合開始剤をさらに含有する請求項1または2に記載のアンカーコートシートの製造方法。
  4. 前記アンカーコート剤が、レベリング剤をさらに含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のアンカーコートシートの製造方法。
  5. 前記化合物(A1)の分子量が900以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンカーコートシートの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のアンカーコートシートの製造方法により、プラスチック基材の片面または両面にアンカーコート層を有するアンカーコートシートを製造する工程と、
    前記アンカーコート層の上に、硬化型樹脂材料を塗工し、硬化させて硬化樹脂層を形成する工程と、を含む積層シートの製造方法。
  7. 前記アンカーコートシートが、前記プラスチック基材の片面に前記アンカーコート層が形成されたものであり、
    前記アンカーコート層を形成する前または後に、前記プラスチック基材の、前記アンカーコート層が形成される側とは反対側に、前記アンカーコート層とは異なる他の層を形成する工程をさらに含む請求項6に記載の積層シートの製造方法。
  8. 前記他の層が粘着剤層を含む請求項7に記載の積層シートの製造方法。
  9. 前記硬化型樹脂材料が、インキおよびハードコート剤からなる群から選ばれる請求項6〜8のいずれか一項に記載の積層シートの製造方法。
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