JP2004106277A - ハードコートフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】接着層(プライマー層)を設けなくても、常態下と湿熱下のいずれにおいても基材熱可塑性フィルムとハードコート層の接着性に優れたハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】熱可塑性フィルムの少なくとも片面にハードコート層を積層し、かつ該ハードコート層中にTi元素を0.1〜2.0重量%含有する、ハードコートフィルム。
【選択図】なし
【解決手段】熱可塑性フィルムの少なくとも片面にハードコート層を積層し、かつ該ハードコート層中にTi元素を0.1〜2.0重量%含有する、ハードコートフィルム。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハードコートフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械的特性、寸法安定性、耐熱性、透明性、電気絶縁性などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料、グラフィックアート材料、光学表示材料などの多くの用途の基材フィルムとして広く使用されている。しかし、フィルム表面の表面硬度が低く、また、耐摩耗性も不足しているため、他の固い物質との接触、摩擦、引っ掻きなどによって、表面に損傷をうけやすく、表面に発生した損傷は商品価値を著しく低下させたり、短期間で使用不可になったりする。
【0003】
このため、上記のようなポリエステル等のフィルムを基材フィルムとし、その上に耐擦傷性、耐摩耗性に優れたハードコート層を設ける技術が知られている。しかし、例えば通常のポリエステルフィルムは表面が高度に結晶配向されているためハードコート層との接着性に乏しく、ハードコート層が基材フィルムから剥離してしまい、実質的に耐久性に劣るという欠点を有している。
【0004】
そのため、従来から、ポリエステル等のフィルム表面に種々の方法により接着性を付与する検討がなされてきた。
【0005】
接着性付与の方法としては、基材ポリエステルフィルム表面のコロナ処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などによる表面活性化法、酸、アルカリ、アミン水溶液などの薬剤による表面エッチング法、フィルム表面にアクリル樹脂、スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの各種樹脂をプライマー層として設ける方法などが既に知られている(例えば特許文献1〜3参照。)。特に、塗布によってプライマー層を設ける方法では、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに上記樹脂成分を含有する塗液を塗布し、乾燥して後、延伸、熱処理を施して結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)が工程の簡略化や製造コストの点で有力視され、盛んに行われている。
【0006】
また、共押し出し法や上記したインラインコート法により、柔軟化成分を共重合したポリエステル樹脂からなる接着層を積層したポリエステル系樹脂積層フィルム(特許文献4)や、ポリエステルフィルム表面にウレタン樹脂からなる塗布層を設け、その上にハードコート層を設ける方法(特許文献5)なども開示されている。
【0007】
しかし、これら従来の技術には次のような問題点がある。
【0008】
まず、表面エッチング法や表面活性化法は基材とハードコート層との接着性が十分に得られないのみならず、処理工程が複雑になるなどの問題がある。
【0009】
接着性を付与するためにアクリル樹脂やウレタン樹脂を積層した基材ポリエステルフィルムを用いた場合には、積層膜は、被覆物であるハードコート層との接着性に優れるものの、基材ポリエステルフィルムとの接着性が不十分となりやすい。更に、最近は各種用途でハードコートフィルムが使用されるようになってきて、これまでには想像し得なかった過酷な条件下、例えば、湿度が高く、雰囲気温度も高いような状態(本発明に於いては、この様な状態を「湿熱下」と呼ぶ)でのハードコート層の接着性が極端に不足し、ハードコートフィルムとしての機能を満足し得なくなるといった事態が起こることが多くなってきた。
【0010】
また、ポリエステル樹脂を積層した基材ポリエステルフィルムを用いた場合には、積層膜は、基材ポリエステルフィルムとの接着性は良好となる反面、ハードコート層との接着性に於いては十分な接着性が得られないことが多く、また、もちろん、上記アクリル樹脂やウレタン樹脂の場合と同様に、湿熱下でのハードコート層との接着性は不十分なものであった。
【0011】
上記した湿熱下での接着性改良方法として、一般的には、樹脂を架橋し、接着性を向上させる方法などが考えられる。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、あるいはポリエステル樹脂にメラミン系架橋剤やイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を添加したものがある。しかし、常態下での接着性と湿熱下での接着性を両立させたものは得られていない。
【0012】
また、特開平2−16050号公報などで開示されているような柔軟化成分を共重合した2種類のポリエステル樹脂からなる積層膜を基材ポリエステル上に設けたものは、常態下での接着性には極めて優れるものの、湿熱下での接着性の点で満足するものが得られていない。
【0013】
さらに、上述したハードコート層と基材の間に各層の接着性を向上する層を設ける方法では、工程が多くなり、そのために各工程間でフィルム表面への異物の付着や、各工程中にある渡りロールなどとの接触によるフィルム表面への傷の発生により、生産性が大きく低下するし、2工程以上を経るため加工費用が高くなるなどの問題がある。
【0014】
【特許文献1】
特開昭55−15825号公報
【0015】
【特許文献2】
特開昭58−78761号公報
【0016】
【特許文献3】
特開昭60−248232号公報
【0017】
【特許文献4】
特開平2−16050号公報
【0018】
【特許文献5】
特開昭62−263237号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこれらの欠点を解消せしめ、接着層(プライマー層)を設けなくても、常態下と湿熱下のいずれにおいても基材熱可塑性フィルムとハードコート層の接着性に優れた、ハードコートフィルムを提供することを目的とするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、熱可塑性フィルムの少なくとも片面にハードコート層を積層し、かつ該ハードコート層にTi元素を0.1〜2.0重量%含有することを特徴とする、ハードコートフィルムである。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明は、熱可塑性フィルムの少なくとも片面にハードコート層を積層したハードコートフィルムに関する。
【0022】
本発明における熱可塑性フィルムの素材としては、溶融押し出し可能なものが好ましく、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィドなどを挙げることができる。特にポリエステルフィルムが、透明性、寸法安定性、機械的特性、およびハードコート層との接着性などの点で好ましい。ポリエステルとしてより詳細には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。またこれらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよいが、共重合ポリエステルを用いる場合には、結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のものが好ましい。結晶化度を25%以上とすることで、寸法安定性や機械的強度が十分に得られる。
【0023】
また、熱可塑性フィルムは、内層と表層の2層以上の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず表層部に粒子を含有するものや、内層部に粗大粒子を含有し表層部に微細粒子を含有するものや、内層部が微細な気泡を含有し表層部は実質的に気泡を含有しないものなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。
【0024】
またポリエステルとしては、その極限粘度(JIS K7367に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
【0025】
本発明のハードコートフィルムにおける熱可塑性フィルムは、フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度を十分なものとし、平面性を良好にする観点から、二軸延伸により結晶配向された状態のものが好ましい。二軸配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0026】
熱可塑性フィルムの厚みは、ハードコートフィルムの使用用途に応じて適宜選択すれば良いが、機械的強度やハンドリング性などの点からは、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μmである。
【0027】
ハードコート層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂、金属酸化物などで構成することができる。特に、硬度や耐久性などの点で、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂が好ましく、更に、硬化性、可撓性および生産性の点で、アクリル系樹脂、特に、活性線硬化型または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
【0028】
活性線硬化型または熱硬化型のアクリル系樹脂は、重合硬化成分として多官能アクリレート、アクリルオリゴマーと反応性希釈剤等から得られる。
【0029】
アクリルオリゴマーとしては、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどがあり、またメラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられ得るが、本発明では特にウレタンアクリレートを用いると、基材フィルムとの接着性が特に向上するので好ましい。
【0030】
また、反応性希釈剤は、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となる。
【0031】
より詳細に活性線硬化型または熱硬化型のアクリル系樹脂を例示すると、特に、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の少なくとも1種と、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の少なくとも1種とからなるものが、硬度、硬化性はもちろん、耐摩耗性、可撓性に優れるので好ましい。
【0032】
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(但し、本発明において(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基とを略して表示したものをいう。)を有する単量体としては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。
【0033】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の使用割合は、ハードコート層構成成分総量に対して20〜90重量%が好ましく、より好ましくは30〜80重量%、最も好ましくは30〜70重量%である。
【0035】
上記単量体の使用割合を20重量%以上とすることで、十分な耐摩耗性を得ることができる。また、90重量%以下とすることで、硬化による収縮を抑え、硬化被膜に歪を残さず、被膜の可撓性を維持し、硬化被膜側に大きくカールするなどの不都合を抑えることができる。
【0036】
次に、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
【0037】
分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0038】
すなわち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、および(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、などを用いることができ、分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0039】
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、ハードコート層構成成分総量に対して10〜50重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。単量体の使用割合を50重量%以下とすることで、十分な耐摩耗性を得られる。また、10重量%以上とすることで、被膜の可撓性が向上し、接着性が向上する。
【0040】
以上に列挙したアクリル系樹脂の中でも、フィルム基材との接着性の点で、ウレタン(メタ)アクリレート類を用いたものが最も好ましい。
【0041】
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層中にはTi元素を含有することが重要である。そうすることで、接着層(プライマー層)を設けなくても、常態下と湿熱下のいずれにおいてもハードコート層とフィルム基材との接着性を向上させることができる。
そのメカニズムは定かではないが、基材表面の水酸基とチタン元素との結合形成によるものと推察する。
【0042】
ハードコート層中のTi元素の含有量は、0.1〜2.0重量%とすることが重要である。好ましくは0.5〜1.5重量%、より好ましくは0.7〜1.2重量%である。Ti元素が0.1重量%未満では塗膜の密着性の向上効果はほとんどなく、2.0重量%より多く含まれると、塗膜の着色、塗膜硬度の低下、さらに熱分解で発生する有機物量が多くなりすぎる為に好ましくない。
【0043】
ハードコート層中のTi元素量は例えば、ハードコートフィルムを切り出し、断面研磨した後に電子線マイクロアナライザー(EPMA)により分析することが可能である。
【0044】
ハードコート層中のTi元素の存在状態としてはアルコキシド化合物、キレート化合物、アシレート化合物およびそれらの熱分解物などが良く、特に限定はしない。この中でも好ましいのはアルコキシドおよびその分解物であり、更に好ましくは、アルコキシドおよびその分解物がハードコート層中に微分散しているものである。ハードコート層に添加をして、上記の様なTi化合物を形成するものとして、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどのアルコキシド類、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテートなどのキレート類、チタンオクタンジオレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのアシレート類、およびこれらの反応物、熱分解物などが挙げられる。
【0045】
この中でも特にテトライソプロピルチタネートおよびその反応物が、塗膜への分散性が良く、塗液安定性、塗膜密着性、塗膜の着色などの点から好ましい。
【0046】
その他に、必要に応じて光開始剤、光増感剤または熱重合開始剤や改質剤を添加してもよい。
【0047】
特に、紫外線による架橋の場合には、光エネルギーが小さいため、光エネルギーの変換や開始の助長のため、光重合開始剤および/または光増感剤を添加することが好ましい。
【0048】
これらのアクリルオリゴマー、反応性希釈剤、光重合開始剤、光増感剤、熱重合開始剤、架橋装置などの具体例は、山下晋三、金子東助編、「架橋剤ハンドブック」、大成社1981年発行、第267頁から第275頁、第562頁から第593頁を参考とすることができる。市販品の多官能アクリル系硬化塗料としては、三菱レイヨン(株)、藤倉化成(株)、大日精化工業(株)、大日本インキ化学工業(株)、東亜合成化学工業(株)、日東化成(株)、日本化薬(株)、共栄社化学(株)などの製品を利用することができる。
【0049】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0050】
熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
【0051】
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量はハードコート層構成成分100重量部に対して、0.01〜10重量部とするのが好ましい。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。
【0052】
本発明に用いられる活性線または熱硬化性の樹脂組成物には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることも好ましい。熱重合防止剤の添加量は、重合性化合物総重量に対し、0.005〜0.05重量%が好ましい。
【0053】
本発明で述べるハードコート層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、染料、顔料などを用いることができる。
【0054】
本発明に用いられるハードコート層を形成する活性線または熱硬化性の樹脂組成物を含有する塗液には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロール、基材フィルムである熱可塑性フィルムとの接着を目的として、本発明の効果が損なわれない範囲において、有機溶剤を配合しても良いができるだけ少ない方が好ましい。
【0055】
ハードコート層を形成するための塗液の塗布手段としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0056】
活性線硬化型樹脂の硬化に用いる活性線としては、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)など、アクリル系のビニル基を重合させる電磁波であれば良く、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。また更に、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
【0057】
熱硬化型樹脂の硬化に用いる熱としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーター、遠赤外線ヒーターなどにより140℃以上に加温した空気や不活性ガスを、スリットノズルを用いて基材、塗膜に吹きあてることにより与えられる熱を採用することができ、中でも200℃以上に加温された空気による熱や、更には200℃以上に加温された窒素による熱が、硬化速度の点で好ましい。
【0058】
ハードコート層の厚さは、用途に応じて決定すればよいが、通常0.1〜30μmが好ましく、より好ましくは1〜15μmである。ハードコート層の厚さを0.1μm以上とすることで、表面硬度を十分に得ることができ傷が付きにくい。一方、30μm以下とすることで、折り曲げなどの応力によっても硬化膜にクラックが入りにくくすることができる。
【0059】
また、本発明の効果が損なわれない範囲において、ハードコート層の最外層に図柄などの印刷層を設けてもよい。
【0060】
また、本発明のハードコートフィルムを、ハードコート層を設けたのとは反対面に各種粘着剤を用いて相手材と貼り合わせ、該相手材に耐摩耗性や耐擦傷性などのハードコート層の機能を付与して用いることもできる。このとき用いられる粘着剤としては、2つの物体をその粘着作用により接着させる接着剤であれば特に限定されず、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などからなる接着剤を用いることができる。
【0061】
更に、粘着剤は溶剤型粘着剤と無溶剤型粘着剤の2つに大別される。乾燥性、生産性、加工性において優れた溶剤型粘着剤は依然として主流であるが、近年、公害、省エネルギ、省資源、安全性などの点で無溶剤型粘着剤に移り変わりつつある。中でも、活性線を照射することで秒単位で硬化し、可撓性、接着性、耐薬品性などに優れた特性を有する粘着剤である活性線硬化型粘着剤を使用することが好ましい。
【0062】
活性線硬化型アクリル系粘着剤の具体例は、日本接着学会編集、「接着剤データブック」、日刊工業新聞社1990年発行、第83頁から第88頁を参考とすることができる。市販品として多官能アクリル系紫外線硬化塗料として日立化成ポリマー(株)、東邦化成工業(株)、(株)スリーボンド、東亜合成化学工業(株)、セメダイン(株)、日本化薬(株)などの製品を利用することができる。
【0063】
この種の粘着剤は、通常の二軸延伸ポリエステルフィルムに塗布した場合には、接着性が不十分となり、各種のプライマー処理、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などからなるプライマー層を設けることにより、ポリエステルフィルムと粘着剤層との接着性を向上させることができる。
【0064】
また、得られたハードコートフィルムを各種の方法で各種機能フィルムなどと貼り合わせて用いることもできるし、他方の面に粘着層を積層したり、導電層を設けたりすることもできる。
【0065】
本発明のハードコートフィルムを得るには、
熱可塑性フィルムの少なくとも片面に前記のハードコート構成成分を塗布し、必要に応じて乾燥、更に活性線照射もしくは高温熱処理によって硬化させる方法、1軸延伸され結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、前記のハードコート構成成分を塗布し、その後、予熱工程を経て1軸延伸方向に対し直角方向に延伸され熱固定、更に必要に応じて活性線照射処理する方法を挙げることができる。特に後者の方法は、界面接着性、塵埃の付着防止、フィルムを製造すると同時にハードコート層を設けられることによるコスト面でのメリットが大きく好ましい。
【0066】
以下、その製造方法について、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下PETと略称する)を例にして説明するが、これに限定されるものではない。
【0067】
基材フィルムとなる含有するPETペレットを180℃程度で約2時間真空乾燥して十分に水分を除去した後、押し出し機に供給し、260〜300℃の温度で溶融押し出し、T字型の口金からシート状に成形する。このシート状物を好ましくは鏡面の冷却ドラム上で冷却固化して未延伸シートを得る。このときキャストドラムとの密着性を向上させる目的で静電印加法を用いることが好ましい。その後、得られた未延伸シートを70〜120℃に加熱したロールで長手方向に2〜5倍の延伸を行なう。次いで、この1軸延伸フィルムの表面に、本発明のTi元素含有化合物を配合したハードコート層組成物を塗布し、その後フィルムの両端をクリップで把持しつつテンターに導く。テンター内で予熱後、幅方向に約2〜5倍延伸する。幅方向に延伸された積層フィルムは、更に200℃程度で熱処理を行ない、基材フィルムの結晶配向を完了させる。
【0068】
また、前述のように片面にハードコート層、その反対面にプライマー層と粘着剤層とを設ける場合は、ハードコート層の塗液を塗布するときに同時にその裏面にプライマー層の塗液を塗布しても良い。
【0069】
二軸に延伸後、連続的に照射エネルギー約85mJ/cm2の活性線を照射し、活性線硬化型樹脂を用いた場合のハードコート層を硬化させることにより、ハードコートフィルムを得ることができる。活性線の照射は熱処理ゾーン、および熱処理後のいずれにおいて実施しても良いが、熱処理ゾーン内で幅方向または長手方向に1〜12%の弛緩処理を施しながら照射し硬化させると、カールが著しく改善されるので特に好ましい。
【0070】
このようにして得られたハードコートフィルムは、製膜工程内で一気にハードコート層を設けることができるので生産性が良く、表面硬度が高く、耐摩耗性に優れ、ハードコート層と基材フィルムとの密着性が優れているので、広範な使用条件で使用できる。特に反射防止フィルム基材、タッチパネル用基材、窓張り用基材、銘板用基材などとして好適に使用される。
【0071】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0072】
[測定方法および評価方法]
測定方法および評価方法は次のとおりである。
【0073】
(1)ハードコート層の厚み
ハードコートフィルムの断面を凍結超薄切片法により超薄切片に切り出し、RuO4染色、OsO4染色、または両者の二重染色による染色超薄切片法により、透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製H−7100FA型)にて、加速電圧100kVで観察、写真撮影を行なった。その断面写真からハードコート層の厚みの測定を行なった。厚みは測定視野内の30個の平均値とした。
【0074】
(2)Ti元素濃度分析
ハードコートフィルムの断面を切片に切り出し、断面研磨、カーボン蒸着した後、電子線マイクロアナライザー(日本電子(株)JXA−8621MX型)にて、加速電圧15.0kVで波長分散法により塗膜中のTi濃度分析を行った。
【0075】
(3)常態下の接着性
常態下(23℃、相対湿度65%)で、ハードコートフィルムのハードコート層上に1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを荷重19.6Nで押し付けながら3往復させた後、90度方向にテープからクロスカットを剥離させ、ハードコート層の残存した個数により4段階評価(◎:100、○:80〜99、△:50〜79、×:0〜49)した。◎と○を合格とした。
【0076】
(4)湿熱下の接着性
ハードコートフィルムを、湿熱下(80℃、相対湿度90%)で2時間放置した。処理後、直ちに取り出し、常態下(23℃、相対湿度65%)で5分間放置後、上記(3)と同様の評価を行なった。
【0077】
(5)耐摩耗性
スチールウール#0000でハードコート層表面を荷重を変更し、それぞれの荷重において一定荷重下で10往復摩擦し、耐傷性があった最大荷重を測定した。2kg/cm2が実用上問題ないレベルであり、合格とした。
【0078】
(6)鉛筆硬度
HEIDON(新東科学(株)製)を用いてJIS K−5400に従って測定した。2H以上を合格とした。
【0079】
[調製]
<塗剤A>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:日本化薬(株)製)75重量部、ポリエステルアクリレート(M−7100:東亞合成(株)製)10重量部、テトライソプロピルチタネート(TA−10:松本製薬工業(株)製)10重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバガイギ(株)製)5重量部を混合し塗剤Aとした。
【0080】
<塗剤B>
塗剤Aにおいてテトライソプロピルチタネートを添加しなかった以外は同様にして混合し塗剤Bとした。
【0081】
<塗剤C>
多官能ウレタンアクリレート(紫光7600B:日本合成化学(株)製)90重量部、テトライソプロピルチタネート(TA−10:松本製薬工業(株)製)5重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバガイギ(株)製)5重量部を混合し塗剤Cとした。
【0082】
<塗剤D>
塗液Cにおいてテトライソプロピルチタネートを添加しなかった以外は同様にして混合し塗剤Dとした。
【0083】
<塗剤E>
塗液Cにおいてテトライソプロピルチタネート5重量部の替わりに、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製)5重量部を添加した以外は同様にして混合し塗剤Eとした。
【0084】
<塗剤F>
多官能ウレタンアクリレート(紫光7600B:日本合成化学(株)製)83重量部、テトライソプロピルチタネート(TA−10:松本製薬工業(株)製)12重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバガイギ(株)製)5重量部を混合し塗剤Fとした。
【0085】
<塗剤G>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:日本化薬(株)製)75重量部、ポリエステルアクリレート(M−7100:東亞合成(株)製)13重量部、テトライソプロピルチタネート(TA−10:松本製薬工業(株)製)10重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバガイギ(株)製)5重量部を混合し塗剤Gとした。
【0086】
<塗剤H>
多官能ウレタンアクリレート(紫光7600B:日本合成化学(株)製)94.2重量部、テトライソプロピルチタネート(TA−10:松本製薬工業(株)製)0.8重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバガイギ(株)製)5重量部を混合し塗剤Hとした。
【0087】
(実施例1)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有する極限粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート(以下PET)チップを180℃で十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金からシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸フィルムの状態から、95℃に加熱したロール群で長手方向に3.5倍延伸した。次いでこの1軸延伸されたフィルムの片面に、塗液Aをダイコート方式で16.5μm厚に塗布した。塗布されたフィルムの両端をクリップで把持しつつ90℃の予熱ゾーンに導き、引き続き100℃の加熱ゾーンで幅方向に3.3倍延伸した。更に連続的に200℃の熱処理ゾーンで5秒間の熱処理を施し、基材フィルムの結晶配向を完了させた。さらに、このフィルムの両端をクリップで把持した状態で、フィルムを冷却させるときに、5%の弛緩処理をさせながら塗布面より12cmの高さにセットした160W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯で、紫外線を1秒間照射し、硬化させ、PETフィルム上にハードコート層を有する本発明のハードコートフィルムを得た。尚、以上の工程は、フィルムを途中で一旦巻き取ることなく行った。
【0088】
このハードコートフィルムは、厚みが100μm、ハードコート層厚みが5.0μmの、透明性に優れたものであった。また常態下の接着性は85/100で○、湿熱下の接着性は80/100で○、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0089】
(比較例1)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Bを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は0/100で×、湿熱下の接着性は0/100で×、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0090】
(実施例2)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Cを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は100/100で◎、湿熱下の接着性は85/100で○、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は2Hであった。結果を表1にも示す。
【0091】
(比較例2)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Dを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は30/100で×、湿熱下の接着性は5/100で×、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0092】
(比較例3)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Eを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は0/100で×、湿熱下の接着性は0/100で×、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0093】
(比較例4)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Fを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は100/100で◎、湿熱下の接着性は100/100で◎、耐摩耗性は1.0kg/cm2、鉛筆硬度はHであった。結果を表1にも示す。
【0094】
(実施例3)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Gを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は100/100で◎、湿熱下の接着性は100/100で◎、耐摩耗性は2.0kg/cm2、鉛筆硬度は2Hであった。結果を表1にも示す。
【0095】
(実施例5)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Hを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は82/100で○、湿熱下の接着性は80/100で○、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0096】
(実施例5)
厚み50μmの二軸配向PETフィルム(“ルミラー”T60(東レ(株)製))の片面に、塗剤Cを、ハードコート層厚みが5.0μmとなるように塗布した後、170℃で1分間熱処理し、フィルムを金属枠に固定して、12cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯で、紫外線を5秒間照射し、硬化させ、本発明のハードコートフィルムを得た。
常態下の接着性は90/100で○、湿熱下の接着性85/100で○、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0097】
(比較例5)
厚み50μmの二軸配向PETフィルム“ルミラー”T60(東レ(株)製))の表面に、ハードコート層との接着性向上のために水性ポリウレタン樹脂の接着層(プライマー層)を設け、その上に、塗剤Dを、最終積層厚みが5.0μmとなるように塗布した後、170℃で1分間熱処理し、フィルムを金属枠に固定して、12cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯で、紫外線を5秒間照射し、硬化させ、ハードコートフィルムを得た。
常態下の接着性は95/100で○、湿熱下の接着性は30/100で×、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、接着層(プライマー層)を設けなくても、常態下と湿熱下のいずれにおいても基材熱可塑性フィルムとハードコート層の接着性に優れたハードコートフィルムが得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハードコートフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械的特性、寸法安定性、耐熱性、透明性、電気絶縁性などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料、グラフィックアート材料、光学表示材料などの多くの用途の基材フィルムとして広く使用されている。しかし、フィルム表面の表面硬度が低く、また、耐摩耗性も不足しているため、他の固い物質との接触、摩擦、引っ掻きなどによって、表面に損傷をうけやすく、表面に発生した損傷は商品価値を著しく低下させたり、短期間で使用不可になったりする。
【0003】
このため、上記のようなポリエステル等のフィルムを基材フィルムとし、その上に耐擦傷性、耐摩耗性に優れたハードコート層を設ける技術が知られている。しかし、例えば通常のポリエステルフィルムは表面が高度に結晶配向されているためハードコート層との接着性に乏しく、ハードコート層が基材フィルムから剥離してしまい、実質的に耐久性に劣るという欠点を有している。
【0004】
そのため、従来から、ポリエステル等のフィルム表面に種々の方法により接着性を付与する検討がなされてきた。
【0005】
接着性付与の方法としては、基材ポリエステルフィルム表面のコロナ処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などによる表面活性化法、酸、アルカリ、アミン水溶液などの薬剤による表面エッチング法、フィルム表面にアクリル樹脂、スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの各種樹脂をプライマー層として設ける方法などが既に知られている(例えば特許文献1〜3参照。)。特に、塗布によってプライマー層を設ける方法では、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに上記樹脂成分を含有する塗液を塗布し、乾燥して後、延伸、熱処理を施して結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)が工程の簡略化や製造コストの点で有力視され、盛んに行われている。
【0006】
また、共押し出し法や上記したインラインコート法により、柔軟化成分を共重合したポリエステル樹脂からなる接着層を積層したポリエステル系樹脂積層フィルム(特許文献4)や、ポリエステルフィルム表面にウレタン樹脂からなる塗布層を設け、その上にハードコート層を設ける方法(特許文献5)なども開示されている。
【0007】
しかし、これら従来の技術には次のような問題点がある。
【0008】
まず、表面エッチング法や表面活性化法は基材とハードコート層との接着性が十分に得られないのみならず、処理工程が複雑になるなどの問題がある。
【0009】
接着性を付与するためにアクリル樹脂やウレタン樹脂を積層した基材ポリエステルフィルムを用いた場合には、積層膜は、被覆物であるハードコート層との接着性に優れるものの、基材ポリエステルフィルムとの接着性が不十分となりやすい。更に、最近は各種用途でハードコートフィルムが使用されるようになってきて、これまでには想像し得なかった過酷な条件下、例えば、湿度が高く、雰囲気温度も高いような状態(本発明に於いては、この様な状態を「湿熱下」と呼ぶ)でのハードコート層の接着性が極端に不足し、ハードコートフィルムとしての機能を満足し得なくなるといった事態が起こることが多くなってきた。
【0010】
また、ポリエステル樹脂を積層した基材ポリエステルフィルムを用いた場合には、積層膜は、基材ポリエステルフィルムとの接着性は良好となる反面、ハードコート層との接着性に於いては十分な接着性が得られないことが多く、また、もちろん、上記アクリル樹脂やウレタン樹脂の場合と同様に、湿熱下でのハードコート層との接着性は不十分なものであった。
【0011】
上記した湿熱下での接着性改良方法として、一般的には、樹脂を架橋し、接着性を向上させる方法などが考えられる。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、あるいはポリエステル樹脂にメラミン系架橋剤やイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を添加したものがある。しかし、常態下での接着性と湿熱下での接着性を両立させたものは得られていない。
【0012】
また、特開平2−16050号公報などで開示されているような柔軟化成分を共重合した2種類のポリエステル樹脂からなる積層膜を基材ポリエステル上に設けたものは、常態下での接着性には極めて優れるものの、湿熱下での接着性の点で満足するものが得られていない。
【0013】
さらに、上述したハードコート層と基材の間に各層の接着性を向上する層を設ける方法では、工程が多くなり、そのために各工程間でフィルム表面への異物の付着や、各工程中にある渡りロールなどとの接触によるフィルム表面への傷の発生により、生産性が大きく低下するし、2工程以上を経るため加工費用が高くなるなどの問題がある。
【0014】
【特許文献1】
特開昭55−15825号公報
【0015】
【特許文献2】
特開昭58−78761号公報
【0016】
【特許文献3】
特開昭60−248232号公報
【0017】
【特許文献4】
特開平2−16050号公報
【0018】
【特許文献5】
特開昭62−263237号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこれらの欠点を解消せしめ、接着層(プライマー層)を設けなくても、常態下と湿熱下のいずれにおいても基材熱可塑性フィルムとハードコート層の接着性に優れた、ハードコートフィルムを提供することを目的とするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、熱可塑性フィルムの少なくとも片面にハードコート層を積層し、かつ該ハードコート層にTi元素を0.1〜2.0重量%含有することを特徴とする、ハードコートフィルムである。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明は、熱可塑性フィルムの少なくとも片面にハードコート層を積層したハードコートフィルムに関する。
【0022】
本発明における熱可塑性フィルムの素材としては、溶融押し出し可能なものが好ましく、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィドなどを挙げることができる。特にポリエステルフィルムが、透明性、寸法安定性、機械的特性、およびハードコート層との接着性などの点で好ましい。ポリエステルとしてより詳細には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。またこれらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよいが、共重合ポリエステルを用いる場合には、結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のものが好ましい。結晶化度を25%以上とすることで、寸法安定性や機械的強度が十分に得られる。
【0023】
また、熱可塑性フィルムは、内層と表層の2層以上の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず表層部に粒子を含有するものや、内層部に粗大粒子を含有し表層部に微細粒子を含有するものや、内層部が微細な気泡を含有し表層部は実質的に気泡を含有しないものなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。
【0024】
またポリエステルとしては、その極限粘度(JIS K7367に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
【0025】
本発明のハードコートフィルムにおける熱可塑性フィルムは、フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度を十分なものとし、平面性を良好にする観点から、二軸延伸により結晶配向された状態のものが好ましい。二軸配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0026】
熱可塑性フィルムの厚みは、ハードコートフィルムの使用用途に応じて適宜選択すれば良いが、機械的強度やハンドリング性などの点からは、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μmである。
【0027】
ハードコート層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂、金属酸化物などで構成することができる。特に、硬度や耐久性などの点で、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂が好ましく、更に、硬化性、可撓性および生産性の点で、アクリル系樹脂、特に、活性線硬化型または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
【0028】
活性線硬化型または熱硬化型のアクリル系樹脂は、重合硬化成分として多官能アクリレート、アクリルオリゴマーと反応性希釈剤等から得られる。
【0029】
アクリルオリゴマーとしては、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどがあり、またメラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられ得るが、本発明では特にウレタンアクリレートを用いると、基材フィルムとの接着性が特に向上するので好ましい。
【0030】
また、反応性希釈剤は、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となる。
【0031】
より詳細に活性線硬化型または熱硬化型のアクリル系樹脂を例示すると、特に、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の少なくとも1種と、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の少なくとも1種とからなるものが、硬度、硬化性はもちろん、耐摩耗性、可撓性に優れるので好ましい。
【0032】
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(但し、本発明において(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基とを略して表示したものをいう。)を有する単量体としては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。
【0033】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の使用割合は、ハードコート層構成成分総量に対して20〜90重量%が好ましく、より好ましくは30〜80重量%、最も好ましくは30〜70重量%である。
【0035】
上記単量体の使用割合を20重量%以上とすることで、十分な耐摩耗性を得ることができる。また、90重量%以下とすることで、硬化による収縮を抑え、硬化被膜に歪を残さず、被膜の可撓性を維持し、硬化被膜側に大きくカールするなどの不都合を抑えることができる。
【0036】
次に、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
【0037】
分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0038】
すなわち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、および(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、などを用いることができ、分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0039】
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、ハードコート層構成成分総量に対して10〜50重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。単量体の使用割合を50重量%以下とすることで、十分な耐摩耗性を得られる。また、10重量%以上とすることで、被膜の可撓性が向上し、接着性が向上する。
【0040】
以上に列挙したアクリル系樹脂の中でも、フィルム基材との接着性の点で、ウレタン(メタ)アクリレート類を用いたものが最も好ましい。
【0041】
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層中にはTi元素を含有することが重要である。そうすることで、接着層(プライマー層)を設けなくても、常態下と湿熱下のいずれにおいてもハードコート層とフィルム基材との接着性を向上させることができる。
そのメカニズムは定かではないが、基材表面の水酸基とチタン元素との結合形成によるものと推察する。
【0042】
ハードコート層中のTi元素の含有量は、0.1〜2.0重量%とすることが重要である。好ましくは0.5〜1.5重量%、より好ましくは0.7〜1.2重量%である。Ti元素が0.1重量%未満では塗膜の密着性の向上効果はほとんどなく、2.0重量%より多く含まれると、塗膜の着色、塗膜硬度の低下、さらに熱分解で発生する有機物量が多くなりすぎる為に好ましくない。
【0043】
ハードコート層中のTi元素量は例えば、ハードコートフィルムを切り出し、断面研磨した後に電子線マイクロアナライザー(EPMA)により分析することが可能である。
【0044】
ハードコート層中のTi元素の存在状態としてはアルコキシド化合物、キレート化合物、アシレート化合物およびそれらの熱分解物などが良く、特に限定はしない。この中でも好ましいのはアルコキシドおよびその分解物であり、更に好ましくは、アルコキシドおよびその分解物がハードコート層中に微分散しているものである。ハードコート層に添加をして、上記の様なTi化合物を形成するものとして、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどのアルコキシド類、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテートなどのキレート類、チタンオクタンジオレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのアシレート類、およびこれらの反応物、熱分解物などが挙げられる。
【0045】
この中でも特にテトライソプロピルチタネートおよびその反応物が、塗膜への分散性が良く、塗液安定性、塗膜密着性、塗膜の着色などの点から好ましい。
【0046】
その他に、必要に応じて光開始剤、光増感剤または熱重合開始剤や改質剤を添加してもよい。
【0047】
特に、紫外線による架橋の場合には、光エネルギーが小さいため、光エネルギーの変換や開始の助長のため、光重合開始剤および/または光増感剤を添加することが好ましい。
【0048】
これらのアクリルオリゴマー、反応性希釈剤、光重合開始剤、光増感剤、熱重合開始剤、架橋装置などの具体例は、山下晋三、金子東助編、「架橋剤ハンドブック」、大成社1981年発行、第267頁から第275頁、第562頁から第593頁を参考とすることができる。市販品の多官能アクリル系硬化塗料としては、三菱レイヨン(株)、藤倉化成(株)、大日精化工業(株)、大日本インキ化学工業(株)、東亜合成化学工業(株)、日東化成(株)、日本化薬(株)、共栄社化学(株)などの製品を利用することができる。
【0049】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0050】
熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
【0051】
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量はハードコート層構成成分100重量部に対して、0.01〜10重量部とするのが好ましい。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。
【0052】
本発明に用いられる活性線または熱硬化性の樹脂組成物には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることも好ましい。熱重合防止剤の添加量は、重合性化合物総重量に対し、0.005〜0.05重量%が好ましい。
【0053】
本発明で述べるハードコート層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、染料、顔料などを用いることができる。
【0054】
本発明に用いられるハードコート層を形成する活性線または熱硬化性の樹脂組成物を含有する塗液には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロール、基材フィルムである熱可塑性フィルムとの接着を目的として、本発明の効果が損なわれない範囲において、有機溶剤を配合しても良いができるだけ少ない方が好ましい。
【0055】
ハードコート層を形成するための塗液の塗布手段としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0056】
活性線硬化型樹脂の硬化に用いる活性線としては、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)など、アクリル系のビニル基を重合させる電磁波であれば良く、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。また更に、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
【0057】
熱硬化型樹脂の硬化に用いる熱としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーター、遠赤外線ヒーターなどにより140℃以上に加温した空気や不活性ガスを、スリットノズルを用いて基材、塗膜に吹きあてることにより与えられる熱を採用することができ、中でも200℃以上に加温された空気による熱や、更には200℃以上に加温された窒素による熱が、硬化速度の点で好ましい。
【0058】
ハードコート層の厚さは、用途に応じて決定すればよいが、通常0.1〜30μmが好ましく、より好ましくは1〜15μmである。ハードコート層の厚さを0.1μm以上とすることで、表面硬度を十分に得ることができ傷が付きにくい。一方、30μm以下とすることで、折り曲げなどの応力によっても硬化膜にクラックが入りにくくすることができる。
【0059】
また、本発明の効果が損なわれない範囲において、ハードコート層の最外層に図柄などの印刷層を設けてもよい。
【0060】
また、本発明のハードコートフィルムを、ハードコート層を設けたのとは反対面に各種粘着剤を用いて相手材と貼り合わせ、該相手材に耐摩耗性や耐擦傷性などのハードコート層の機能を付与して用いることもできる。このとき用いられる粘着剤としては、2つの物体をその粘着作用により接着させる接着剤であれば特に限定されず、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などからなる接着剤を用いることができる。
【0061】
更に、粘着剤は溶剤型粘着剤と無溶剤型粘着剤の2つに大別される。乾燥性、生産性、加工性において優れた溶剤型粘着剤は依然として主流であるが、近年、公害、省エネルギ、省資源、安全性などの点で無溶剤型粘着剤に移り変わりつつある。中でも、活性線を照射することで秒単位で硬化し、可撓性、接着性、耐薬品性などに優れた特性を有する粘着剤である活性線硬化型粘着剤を使用することが好ましい。
【0062】
活性線硬化型アクリル系粘着剤の具体例は、日本接着学会編集、「接着剤データブック」、日刊工業新聞社1990年発行、第83頁から第88頁を参考とすることができる。市販品として多官能アクリル系紫外線硬化塗料として日立化成ポリマー(株)、東邦化成工業(株)、(株)スリーボンド、東亜合成化学工業(株)、セメダイン(株)、日本化薬(株)などの製品を利用することができる。
【0063】
この種の粘着剤は、通常の二軸延伸ポリエステルフィルムに塗布した場合には、接着性が不十分となり、各種のプライマー処理、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などからなるプライマー層を設けることにより、ポリエステルフィルムと粘着剤層との接着性を向上させることができる。
【0064】
また、得られたハードコートフィルムを各種の方法で各種機能フィルムなどと貼り合わせて用いることもできるし、他方の面に粘着層を積層したり、導電層を設けたりすることもできる。
【0065】
本発明のハードコートフィルムを得るには、
熱可塑性フィルムの少なくとも片面に前記のハードコート構成成分を塗布し、必要に応じて乾燥、更に活性線照射もしくは高温熱処理によって硬化させる方法、1軸延伸され結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、前記のハードコート構成成分を塗布し、その後、予熱工程を経て1軸延伸方向に対し直角方向に延伸され熱固定、更に必要に応じて活性線照射処理する方法を挙げることができる。特に後者の方法は、界面接着性、塵埃の付着防止、フィルムを製造すると同時にハードコート層を設けられることによるコスト面でのメリットが大きく好ましい。
【0066】
以下、その製造方法について、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下PETと略称する)を例にして説明するが、これに限定されるものではない。
【0067】
基材フィルムとなる含有するPETペレットを180℃程度で約2時間真空乾燥して十分に水分を除去した後、押し出し機に供給し、260〜300℃の温度で溶融押し出し、T字型の口金からシート状に成形する。このシート状物を好ましくは鏡面の冷却ドラム上で冷却固化して未延伸シートを得る。このときキャストドラムとの密着性を向上させる目的で静電印加法を用いることが好ましい。その後、得られた未延伸シートを70〜120℃に加熱したロールで長手方向に2〜5倍の延伸を行なう。次いで、この1軸延伸フィルムの表面に、本発明のTi元素含有化合物を配合したハードコート層組成物を塗布し、その後フィルムの両端をクリップで把持しつつテンターに導く。テンター内で予熱後、幅方向に約2〜5倍延伸する。幅方向に延伸された積層フィルムは、更に200℃程度で熱処理を行ない、基材フィルムの結晶配向を完了させる。
【0068】
また、前述のように片面にハードコート層、その反対面にプライマー層と粘着剤層とを設ける場合は、ハードコート層の塗液を塗布するときに同時にその裏面にプライマー層の塗液を塗布しても良い。
【0069】
二軸に延伸後、連続的に照射エネルギー約85mJ/cm2の活性線を照射し、活性線硬化型樹脂を用いた場合のハードコート層を硬化させることにより、ハードコートフィルムを得ることができる。活性線の照射は熱処理ゾーン、および熱処理後のいずれにおいて実施しても良いが、熱処理ゾーン内で幅方向または長手方向に1〜12%の弛緩処理を施しながら照射し硬化させると、カールが著しく改善されるので特に好ましい。
【0070】
このようにして得られたハードコートフィルムは、製膜工程内で一気にハードコート層を設けることができるので生産性が良く、表面硬度が高く、耐摩耗性に優れ、ハードコート層と基材フィルムとの密着性が優れているので、広範な使用条件で使用できる。特に反射防止フィルム基材、タッチパネル用基材、窓張り用基材、銘板用基材などとして好適に使用される。
【0071】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0072】
[測定方法および評価方法]
測定方法および評価方法は次のとおりである。
【0073】
(1)ハードコート層の厚み
ハードコートフィルムの断面を凍結超薄切片法により超薄切片に切り出し、RuO4染色、OsO4染色、または両者の二重染色による染色超薄切片法により、透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製H−7100FA型)にて、加速電圧100kVで観察、写真撮影を行なった。その断面写真からハードコート層の厚みの測定を行なった。厚みは測定視野内の30個の平均値とした。
【0074】
(2)Ti元素濃度分析
ハードコートフィルムの断面を切片に切り出し、断面研磨、カーボン蒸着した後、電子線マイクロアナライザー(日本電子(株)JXA−8621MX型)にて、加速電圧15.0kVで波長分散法により塗膜中のTi濃度分析を行った。
【0075】
(3)常態下の接着性
常態下(23℃、相対湿度65%)で、ハードコートフィルムのハードコート層上に1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを荷重19.6Nで押し付けながら3往復させた後、90度方向にテープからクロスカットを剥離させ、ハードコート層の残存した個数により4段階評価(◎:100、○:80〜99、△:50〜79、×:0〜49)した。◎と○を合格とした。
【0076】
(4)湿熱下の接着性
ハードコートフィルムを、湿熱下(80℃、相対湿度90%)で2時間放置した。処理後、直ちに取り出し、常態下(23℃、相対湿度65%)で5分間放置後、上記(3)と同様の評価を行なった。
【0077】
(5)耐摩耗性
スチールウール#0000でハードコート層表面を荷重を変更し、それぞれの荷重において一定荷重下で10往復摩擦し、耐傷性があった最大荷重を測定した。2kg/cm2が実用上問題ないレベルであり、合格とした。
【0078】
(6)鉛筆硬度
HEIDON(新東科学(株)製)を用いてJIS K−5400に従って測定した。2H以上を合格とした。
【0079】
[調製]
<塗剤A>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:日本化薬(株)製)75重量部、ポリエステルアクリレート(M−7100:東亞合成(株)製)10重量部、テトライソプロピルチタネート(TA−10:松本製薬工業(株)製)10重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバガイギ(株)製)5重量部を混合し塗剤Aとした。
【0080】
<塗剤B>
塗剤Aにおいてテトライソプロピルチタネートを添加しなかった以外は同様にして混合し塗剤Bとした。
【0081】
<塗剤C>
多官能ウレタンアクリレート(紫光7600B:日本合成化学(株)製)90重量部、テトライソプロピルチタネート(TA−10:松本製薬工業(株)製)5重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバガイギ(株)製)5重量部を混合し塗剤Cとした。
【0082】
<塗剤D>
塗液Cにおいてテトライソプロピルチタネートを添加しなかった以外は同様にして混合し塗剤Dとした。
【0083】
<塗剤E>
塗液Cにおいてテトライソプロピルチタネート5重量部の替わりに、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製)5重量部を添加した以外は同様にして混合し塗剤Eとした。
【0084】
<塗剤F>
多官能ウレタンアクリレート(紫光7600B:日本合成化学(株)製)83重量部、テトライソプロピルチタネート(TA−10:松本製薬工業(株)製)12重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバガイギ(株)製)5重量部を混合し塗剤Fとした。
【0085】
<塗剤G>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:日本化薬(株)製)75重量部、ポリエステルアクリレート(M−7100:東亞合成(株)製)13重量部、テトライソプロピルチタネート(TA−10:松本製薬工業(株)製)10重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバガイギ(株)製)5重量部を混合し塗剤Gとした。
【0086】
<塗剤H>
多官能ウレタンアクリレート(紫光7600B:日本合成化学(株)製)94.2重量部、テトライソプロピルチタネート(TA−10:松本製薬工業(株)製)0.8重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバガイギ(株)製)5重量部を混合し塗剤Hとした。
【0087】
(実施例1)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有する極限粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート(以下PET)チップを180℃で十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金からシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸フィルムの状態から、95℃に加熱したロール群で長手方向に3.5倍延伸した。次いでこの1軸延伸されたフィルムの片面に、塗液Aをダイコート方式で16.5μm厚に塗布した。塗布されたフィルムの両端をクリップで把持しつつ90℃の予熱ゾーンに導き、引き続き100℃の加熱ゾーンで幅方向に3.3倍延伸した。更に連続的に200℃の熱処理ゾーンで5秒間の熱処理を施し、基材フィルムの結晶配向を完了させた。さらに、このフィルムの両端をクリップで把持した状態で、フィルムを冷却させるときに、5%の弛緩処理をさせながら塗布面より12cmの高さにセットした160W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯で、紫外線を1秒間照射し、硬化させ、PETフィルム上にハードコート層を有する本発明のハードコートフィルムを得た。尚、以上の工程は、フィルムを途中で一旦巻き取ることなく行った。
【0088】
このハードコートフィルムは、厚みが100μm、ハードコート層厚みが5.0μmの、透明性に優れたものであった。また常態下の接着性は85/100で○、湿熱下の接着性は80/100で○、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0089】
(比較例1)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Bを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は0/100で×、湿熱下の接着性は0/100で×、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0090】
(実施例2)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Cを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は100/100で◎、湿熱下の接着性は85/100で○、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は2Hであった。結果を表1にも示す。
【0091】
(比較例2)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Dを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は30/100で×、湿熱下の接着性は5/100で×、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0092】
(比較例3)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Eを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は0/100で×、湿熱下の接着性は0/100で×、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0093】
(比較例4)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Fを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は100/100で◎、湿熱下の接着性は100/100で◎、耐摩耗性は1.0kg/cm2、鉛筆硬度はHであった。結果を表1にも示す。
【0094】
(実施例3)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Gを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は100/100で◎、湿熱下の接着性は100/100で◎、耐摩耗性は2.0kg/cm2、鉛筆硬度は2Hであった。結果を表1にも示す。
【0095】
(実施例5)
実施例1において塗剤Aの代わりに塗剤Hを用いた以外は同様にして作成した。常態下の接着性は82/100で○、湿熱下の接着性は80/100で○、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0096】
(実施例5)
厚み50μmの二軸配向PETフィルム(“ルミラー”T60(東レ(株)製))の片面に、塗剤Cを、ハードコート層厚みが5.0μmとなるように塗布した後、170℃で1分間熱処理し、フィルムを金属枠に固定して、12cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯で、紫外線を5秒間照射し、硬化させ、本発明のハードコートフィルムを得た。
常態下の接着性は90/100で○、湿熱下の接着性85/100で○、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0097】
(比較例5)
厚み50μmの二軸配向PETフィルム“ルミラー”T60(東レ(株)製))の表面に、ハードコート層との接着性向上のために水性ポリウレタン樹脂の接着層(プライマー層)を設け、その上に、塗剤Dを、最終積層厚みが5.0μmとなるように塗布した後、170℃で1分間熱処理し、フィルムを金属枠に固定して、12cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯で、紫外線を5秒間照射し、硬化させ、ハードコートフィルムを得た。
常態下の接着性は95/100で○、湿熱下の接着性は30/100で×、耐摩耗性は3.0kg/cm2、鉛筆硬度は3Hであった。結果を表1にも示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、接着層(プライマー層)を設けなくても、常態下と湿熱下のいずれにおいても基材熱可塑性フィルムとハードコート層の接着性に優れたハードコートフィルムが得られる。
Claims (4)
- 熱可塑性フィルムの少なくとも片面にハードコート層を積層し、かつ該ハードコート層中にTi元素を0.1〜2.0重量%含有することを特徴とする、ハードコートフィルム。
- 該ハードコート層がウレタン(メタ)アクリレート硬化物を主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載のハードコートフィルム。
- 熱可塑性フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする、請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
- 熱可塑性フィルムが二軸配向していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008524402A (ja) * | 2004-12-21 | 2008-07-10 | ミツビシ ポリエステル フィルム インク | 過酸化物系硬化剤を使用したインライン法により熱硬化可能な塗布 |
US20150124314A1 (en) * | 2012-06-01 | 2015-05-07 | Konica Minolta, Inc. | Functional film and method of manufacturing functional film |
-
2002
- 2002-09-17 JP JP2002270136A patent/JP2004106277A/ja active Pending
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US20150124314A1 (en) * | 2012-06-01 | 2015-05-07 | Konica Minolta, Inc. | Functional film and method of manufacturing functional film |
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