JP3629853B2 - ハードコートフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はハードコートフィルムに関し、更に詳しくは、表面硬度が高く、耐摩耗性に優れると同時に、ハードコート層の湿熱下での接着性に優れたハードコートフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械的性質、寸法安定性、耐熱性、透明性、電気絶縁性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料、グラフィックアーツ材料などの多くの用途の基材フィルムとして広く使用されている。しかし、フィルム表面の表面硬度が低く、また、耐摩耗性も不足しているため、他の硬い物体との接触、摩擦、引っ掻きなどによって、表面に損傷を受けやすく、表面に発生した損傷は商品価値を著しく低下させたり、短期間で使用不能となったりする。
【0003】
このため、ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、その上に耐擦傷性、耐摩耗性に優れたハードコート層を設ける方法などが知られているが、ポリエステルフィルムは表面が高度に結晶配向されているためハードコート層との接着性に乏しく、ハードコート層が基材フィルムから剥離してしまい、実質的に耐久性に劣るという欠点を有している。そのため、従来から、ポリエステルフィルム表面に種々の方法により接着性付与の検討がなされてきた。
【0004】
接着性付与の方法としては、基材ポリエステルフィルム表面のコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などによる表面活性化法、酸、アルカリ、アミン水溶液などの薬剤による表面エッチング法、フィルム表面にアクリル樹脂、スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの各種樹脂をプライマー層として設ける方法(特開昭55−15825号公報、特開昭58−78761号公報、特開昭60−248232号公報など)などが既に知られている。特に、塗布によって上記プライマー層を設け接着性を付与する方法として、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに上記樹脂成分を含有する塗液を塗布し、乾燥して後、延伸、熱処理を施して結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)が工程簡略化や製造コストの点で有力視され、盛んに行われている。
【0005】
また、共押し出し法や上記したインラインコート法により、柔軟化成分を共重合した2種類のポリエステル樹脂からなる熱接着層を積層したポリエステル系樹脂積層フィルム(特開平2−16050号公報)や、ポリエステルフィルム表面にウレタン樹脂からなる塗布層を設け、その上に表面硬化層を設ける方法(特開昭62−263237号公報)なども提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来の技術には次のような問題点がある。
【0007】
接着性を付与するためにアクリル樹脂やウレタン樹脂を積層した基材ポリエステルフィルムを用いた場合には、積層膜は、被覆物であるハードコート層との接着性は優れるものの、基材ポリエステルフィルムとの接着性が不十分となりやすい。更に、最近は各種用途でハードコートフィルムが使用されるようになってきて、これまでは想像し得なかった過酷な条件下、例えば、湿度が高く、雰囲気温度も高いような状態(本発明においては、このような状態を「湿熱下」と呼ぶ)でのハードコート層の接着性が極端に不足し、ハードコートフィルムとしての機能を満足し得なくなるといった事態が起こることが多くなってきた。
【0008】
また、ポリエステル樹脂を積層した基材ポリエステルフィルムを用いた場合には、積層膜は、基材ポリエステルフィルムとの接着性は良好となる反面、ハードコート層との接着性においては十分な接着性が得られないことが多く、また、もちろん、上記アクリル樹脂やウレタン樹脂の場合と同様に、湿熱下でのハードコート層との接着性は更に悪くなる。
【0009】
上記した湿熱下での接着性改良方法として、一般的には、樹脂を架橋し、接着性を向上させる方法などが考えられている。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、あるいはポリエステル樹脂に、メラミン系架橋剤やイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を添加したものなどがある。しかし、常態下での接着性と湿熱下での接着性を両立させたものは得られていない。
【0010】
また、特開平2−16050号公報などで開示されているような柔軟化成分を共重合した2種類のポリエステル樹脂からなる積層膜を基材ポリエステルフィルム上に設けたものは、常態下での接着性には極めて優れるものの、湿熱下での接着性の点で満足するものが得られていない。
【0011】
本発明はこれらの欠点を解消せしめ、基材ポリエステルフィルムと積層膜との接着性のみならず、ハードコート層との接着性に優れると同時に、湿熱下での接着性にも優れたハードコートフィルムを提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成する本発明のハードコートフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた積層膜を介してハードコート層が設けられた積層体において、該積層膜がガラス転移点の異なる2種類のポリエステル樹脂と架橋剤(C)を主たる構成成分とし、かつ、ガラス転移点の高いポリエステル樹脂(A)のガラス転移点が、60℃以上、110℃以下であり、ガラス転移点の低いポリエステル樹脂(B)のガラス転移点が、60℃未満であることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、好ましいポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを用いることができる。これら構成成分は1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質、経済性などを総合的に判断するとエチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルを用いることが好ましい。
【0014】
また、一般的には、ハードコート層を構成する樹脂として活性線硬化型の樹脂が用いられるが、このような場合には、硬化時に樹脂の収縮を伴う場合が多いため、剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートが更に好ましい。
【0015】
また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0016】
更に、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0017】
上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるものが本発明を実施する上で好適である。
【0018】
上記ポリエステルを使用したポリエステルフィルムは、積層膜が設けられた状態においては二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理が施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0019】
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、本発明のハードコートフィルムが使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μmである。また、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせて用いることもできる。
【0020】
また、ラベル用途においては、基材フィルムとして透明タイプのポリエステルフィルムの他に、白色ポリエステルフィルムも好適に用いることができる。この白色ポリエステルフィルムは、白色に着色されたポリエステルフィルムであれば特に限定されるものではなく、好ましくは白色度が85〜150%、より好ましくは90〜130%であり、光学濃度が好ましくは0.5〜5、より好ましくは1.2〜3の場合である。例えば、白色度が小さい基材フィルムを使用した場合、反対面の模様や着色が透過し表面の印刷層の美観が損なわれ易く、一方、光学濃度が小さい場合、十分な光線反射が得られず、肉眼で見た場合白さが減少し、反対面の影響を受けるなど白色ポリエステルフィルムとしては好ましくない。
【0021】
このような光学濃度、白色度を得る方法は、特に限定されないが、通常は無機粒子あるいはポリエステルと非相溶の樹脂の添加により得ることができる。添加する量は特に限定されないが、無機粒子の場合、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは8〜25重量%である。一方、非相溶性の樹脂を添加する場合は、好ましくは5〜35体積%、より好ましくは8〜25体積%である。
【0022】
該無機粒子は特に限定されないが、好ましくは平均粒径0.1〜4μm、より好ましくは0.3〜1.5μmの無機粒子などをその代表的なものとして用いることができる。具体的には、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、タルク、クレーなどあるいはこれらの混合物を使用でき、これらの無機粒子は他の無機化合物、例えば、リン酸カルシウム、酸化チタン、雲母、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムなどと併用されてもよい。また、上述した無機粒子の中でもモース硬度が5以下、好ましくは4以下のものを使用する場合、白色度が更に増すためより好ましい。
【0023】
上述のポリエステルと非相溶の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートと混合する場合についていえば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性オレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキシドなどを用いることができ、当然、上述した無機粒子と併用してもよい。例えば特に、無機粒子やポリエステルと非相溶の樹脂を混合して2軸延伸し、内部に空洞を有する、比重が0.5〜1.3の白色ポリエステルフィルムは印刷特性が良好になるので好ましい。
【0024】
本発明に係る積層膜の構成成分であるポリエステル樹脂(ガラス転移点(以後、Tgと略称する)の高い方のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂(A)、Tgの低い方のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂(B)とする)について説明する。
【0025】
本発明においては、Tgの異なる2種類のポリエステル樹脂を用いるが、2種類のポリエステル樹脂でTgが異なり、かつ、ポリエステル樹脂(A)のTgが、60℃以上、110℃以下であり、ポリエステル樹脂(B)のTgが、60℃未満であることを満足していれば、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)のジカルボン酸成分やジオール成分などの共重合成分は、同じものを用いることができる。
【0026】
本発明に係る積層膜の構成成分であるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものであり、このようなポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得ることができるものである。
【0027】
ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。これらの芳香族ジカルボン酸は、積層膜の強度や耐熱性の点で、好ましくは全ジカルボン酸成分の30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、最も好ましくは40モル%以上のものを用いるのがよい。脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0028】
また、ポリエステル樹脂を水系樹脂とした塗液として用いる場合、ポリエステル樹脂の接着性を向上させるため、あるいはポリエステル樹脂の水溶性化を容易にするため、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
【0029】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0030】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0031】
ポリエステル樹脂のジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ビスフェノールAなどを用いることができる。
【0032】
好ましいポリエステル樹脂(A)としてポリエステルは、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、ジオール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAから選ばれる共重合体などである。
【0033】
本発明に用いられるポリエステル樹脂としては、変性ポリエステル共重合体、例えばアクリル、ウレタン、エポキシ等で変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などを用いることも可能である。
【0034】
本発明に係る積層膜に用いられるポリエステル樹脂は、以下の製造法によって製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなるポリエステル樹脂について説明すると、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸とエチレングリコール、ネオペンチルグリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸及びエチレングリコール、ネオペンチルグリコールとをエステル交換反応させる第一段階と、この第一段階の反応生成物を重縮合反応させる第二段階とによって製造する方法などにより製造することができる。
【0035】
この際、反応触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などが用いられる。
【0036】
また、カルボン酸を末端および/または側鎖に多く有するポリエステル樹脂を得る方法としては、特開昭54−46294号公報、特開昭60−209073号公報、特開昭62−240318号公報、特開昭53−26828号公報、特開昭53−26829号公報、特開昭53−98336号公報、特開昭56−116718号公報、特開昭61−124684号公報、特開昭62−240318号公報などに記載の3価以上の多価カルボン酸を共重合した樹脂により製造することができるが、むろんこれら以外の方法であってもよい。
【0037】
また、本発明に係る積層膜のポリエステル樹脂の固有粘度は特に限定されないが、接着性の点で0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.35dl/g以上、最も好ましくは0.4dl/g以上であることである。
【0038】
ここで、本発明においては、ポリエステル樹脂(A)のTgを60℃以上、110℃以下とすることが必須要件であり、これにより、常態下で優れた接着性が得られると同時に、湿熱下での接着性も両立させることが可能となる。更に、本発明者らの知見によれば、該ポリエステル樹脂(A)のTgは65℃以上、100℃以下とすることが好ましく、より好ましくは70℃以上、90℃以下である。
【0039】
また、ポリエステル樹脂(B)は、上記したポリエステル樹脂(A)とTgが異なり、かつ、Tgが60℃未満であれば、上述のポリエステル樹脂(A)と同様のジカルボン酸成分やジオール成分などの共重合成分を用いることができる。更に、本発明者らの知見によれば、該ポリエステル樹脂(B)のTgは−10℃以上、50℃以下とすることが好ましく、より好ましくは0℃以上、40℃以下である。
【0040】
本発明においては、接着性の点で、ポリエステル樹脂(B)のジオール成分として、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールが共重合されていることが好ましく、特に、ネオペンチルグリコールが共重合されていることが好ましい。また、ジカルボン酸成分として、セバチン酸、アジピン酸、アゼライン酸が共重合されていることが接着性の点で好ましい。
【0041】
ネオペンチルグリコールの共重合比は、ジオール成分中、35〜90モル%が好ましく、より好ましくは40〜70モル%である。
【0042】
また、ポリエチレングリコールの共重合は、ポリエステル樹脂を水溶性化するのに有効であり、中でも、分子量が600〜20000のものが好ましく、より好ましくは1000〜6000であり、その共重合比は、ジオール成分中、0.2〜10モル%が好ましく、より好ましくは、0.4〜5モル%である。更に、上述の共重合比はポリエチレングリコールの分子量によってその共重合比が同じでも大きく変わるため、ポリエチレングリコールの共重合量は、ポリエステル樹脂中の重量%に換算して、1〜20重量%が好ましく、より好ましくは2〜15重量%である。
【0043】
好ましいポリエステル樹脂(B)としてポリエステルは、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、ジオール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールから選ばれる共重合体などである。
【0044】
本発明に係る積層膜においては、上述したポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)に、架橋剤(C)を添加することにより、常態下での接着性が向上すると同時に、湿熱下での接着性が飛躍的に向上する。
【0045】
本発明でいう架橋剤は特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂に存在する官能基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基などと架橋反応し得るものであり、代表例としては、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン系化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。中でも、メラミン系架橋剤の添加により、特に、湿熱下での接着性が飛躍的に向上することを見出した。
【0046】
用いられるメラミン系架橋剤は、特に限定されないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン系架橋剤としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。更に、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。
【0047】
ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、および架橋剤(C)は任意の比率で混合して用いることができるが、本発明の効果をより顕著に発現させるには、以下の比率で混合するとよい。ポリエステル樹脂(A)/ポリエステル樹脂(B)が、固形分重量比で、10/90〜70/30であることが常態下での接着性の点で好ましく、より好ましくは15/85〜50/50、最も好ましくは20/80〜40/60である。
【0048】
更に、架橋剤は、常態下での接着性のみならず、高温高湿下での接着性の点で、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100重量部に対し、0.5〜20重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部、最も好ましくは2〜10重量部である。メラミン系架橋剤の添加量が、0.5重量部未満の場合、その添加効果が小さく、また、20重量部を超える場合は、接着性が低下する傾向がある。
【0049】
本発明の積層膜は、前記したTgの異なる2種類のポリエステル樹脂と架橋剤を主たる構成成分としてなるものであり、本発明において主成分とは、上記2種類が積層膜中において70重量%以上を占めることをいう。特に、本発明において、該2種類の成分比率は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0050】
また、積層膜中には本発明の効果を損なわない範囲内で、他の樹脂、例えば、本発明に用いられる上述したポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などが配合されていてもよい。
【0051】
更に、積層膜中には本発明の効果が損なわれない範囲内で各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などが配合されていてもよい。
【0052】
特に、積層膜中に無機粒子を添加したものは、易滑性や耐ブロッキング性が向上するので更に好ましい。
【0053】
この場合、添加する無機粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどを用いることができる。用いられる無機粒子は、平均粒径0.01〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜3μm、最も好ましくは0.08〜2μmであり、積層膜中の樹脂に対する混合比は特に限定されないが、固形分重量比で0.05〜8重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0054】
本発明のハードコートフィルムを製造するに際して、積層膜を設けるのに好ましい方法としては、ポリエステルフィルムの製造工程中に塗布し、基材フィルムと共に延伸する方法が最も好適である。例えば、溶融押し出しされた結晶配向前のポリエステルフィルムを長手方向に2.5〜5倍程度延伸し、一軸延伸されたフィルムに連続的に塗液を塗布する。塗布されたフィルムは段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥され、幅方向に2.5〜5倍程度延伸される。更に、連続的に150〜250℃の加熱ゾーンに導かれ結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)によって得ることができる。この場合に用いる塗布液は環境汚染や防爆性の点で水系のものが好ましい。
【0055】
本発明においては、塗液を塗布する前に、基材フィルムの表面(上記例の場合、一軸延伸フィルム)にコロナ放電処理などを施し、該表面の濡れ張力を、好ましくは47mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上とするのが、積層膜の基材フィルムとの接着性を向上させることができるので好ましく用いることができる。
【0056】
積層膜の厚みは特に限定されないが、通常は0.01〜5μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02〜2μm、最も好ましくは0.05μm〜0.5μmである。積層膜の厚みが薄すぎると接着性不良となる場合がある。
【0057】
基材フィルム上への塗布の方法は各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0058】
本発明に係るハードコート層としては、アクリル系、ウレタン系、メラミン系、有機シリケート、シリコーン系、金属酸化物などからなるものとして構成することができる。特に、硬度、耐久性などの点でシリコーン系、アクリル系が好ましく、更に、硬化性、可撓性および生産性の点でアクリル系、特に、活性線硬化型アクリル系からなるものが好ましい。
【0059】
活性線硬化型アクリル系とは、活性線重合成分としてアクリルオリゴマーと反応性希釈剤を含むものであり、その他に必要に応じて光開始剤、光増感剤、改質剤を含有しているものを用いてもよい。
【0060】
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリル、ウレタンアクリル、エポキシアクリル、ポリエーテルアクリルなどであり、またメラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
【0061】
反応性希釈剤とは、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
【0062】
また、特に、紫外線による架橋の場合には、光エネルギーが小さいため、光エネルギーの変換や開始の助長のため、光重合開始剤および/または光増感剤を添加することが好ましい。
【0063】
これらのアクリルオリゴマー、反応性希釈剤、光重合開始剤、光増感剤、架橋装置などの具体例は、山下晋三、金子東助編、「架橋剤ハンドブック」、大成社1981年発行、第267頁から第275頁、第562頁から第593頁を参考とすることができるが、これらに限定されるものではない。市販品として多官能アクリル系紫外線硬化塗料として三菱レイヨン(株)、藤倉化成(株)、大日精化工業(株)、大日本インキ化学工業(株)、東亜合成化学工業(株)、日東化成(株)、日本化薬(株)などの製品を利用することができるがこれらに限定されるものではない。
【0064】
ハードコート層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子、染料、顔料、安定剤などを用いることができ、これらは活性線による反応を損なわない範囲内で塗布層の組成物として使用され、用途に応じてハードコート層の特性を改良することができる。
【0065】
これらの中で、特に、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の少なくとも1種と、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の少なくとも1種とからなる活性線硬化性単量体混合物を主たる構成成分とする活性線硬化物からなるハードコート層が、硬度、硬化性はもちろん、耐摩耗性、可撓性に優れるので好ましい。
【0066】
本発明でいう1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(但し、本発明において(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基とを略して表示したものをいう。)を有する単量体としては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物を用いることができる。
【0067】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用してもよい。
【0068】
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の使用割合は、重合性単量体総量に対して20〜90重量%が好ましく、より好ましくは30〜80重量%、最も好ましくは30〜70重量%である。
【0069】
上記単量体の使用割合が20重量%未満の場合には、充分な耐摩耗性を有する硬化被膜を得るという点で十分でない場合があり、また、その量が90重量%を超える場合は、重合による収縮が大きく、硬化被膜に歪が残ったり、被膜の可撓性が低下したり、硬化被膜側に大きくカールするなどの不都合を招くことがあるので好ましくない。
【0070】
本発明でいう1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
【0071】
分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0072】
即ち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、
などを用いることができ、
分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、及びt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種又は2種以上混合して使用してもよい。
【0073】
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、単量体総量に対して10〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%である。単量体の使用割合が80重量%を超える場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られにくくなる方向のため好ましくない。また、その使用割合が10重量%未満の場合には、被膜の可撓性が低下したり、基材ポリエステルフィルム上に設けた積層膜との接着性が低下する場合があるので好ましくない。
【0074】
本発明における活性線硬化性の組成物を硬化させる方法として紫外線を照射する方法を用いることができ、この方法を用いる場合には前記組成物に光重合開始剤を加えることが望ましい。光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0075】
光重合開始剤の使用量は重合性単量体組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。
【0076】
本発明に用いる活性線硬化性組成物には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えるのが望ましい。添加量は重合性化合物総重量に対し、0.005〜0.05重量%が好ましい。
【0077】
本発明に用いる活性線硬化性組成物には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロールを目的として、本発明の効果が損なわれない範囲において、有機溶剤を配合することもできる。
【0078】
有機溶剤としては、沸点が50〜150℃のものが、塗工時の作業性、硬化前後の乾燥性の点から用いやすい。具体的な例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエンなどの芳香族系溶剤、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤などを用いることができる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0079】
本発明に用いる活性線硬化性組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤などを用いることができる。
【0080】
本発明に用いる活性線硬化性組成物には、外界の光源の反射像の明るさ、明瞭度を減少させる目的で、本発明の効果が損なわれない範囲で、酸化珪素粒子や有機フィラーなどの艶消し剤を配合することができ、また表面硬度化層の表面に、例えばエンボス法、サンドマット法などにより凸凹を設けることもできる。
【0081】
活性線硬化性組成物の塗布手段としては、刷毛塗り、浸漬塗り、ナイフ塗り、ロール塗り、スプレー塗り、流し塗り、回転塗り(スピンナー、ホエラーなど)などの通常行われている塗布方法を用いることができる。各々の方式には特徴があり、積層体の要求特性、使用用途などにより、塗布方法を適宜選択するとよい。
【0082】
ここで、活性線とは、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波を意味し、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点から有利である。
【0083】
ハードコート層の厚さは用途に応じて決定すればよいが、通常0.5μm〜10μmが好ましく、より好ましくは1μm〜5μmである。ハードコート層の厚さが0.5μm未満の場合には、表面硬度が十分でなく傷が付きやすかったり、一方10μmを超える場合には、硬化膜が脆くなりやすく、積層体を折り曲げたときに硬化膜にクラックが入りやすくなって好ましくない。
【0084】
また、本発明の効果が損なわれない範囲において、ハードコート層の最外層に図柄などの印刷層を設けてもよい。
【0085】
また、本発明のハードコートフィルムを、ハードコート層を設けたのとは反対面に各種粘着剤を用いて相手材と貼り合わせ、該相手材に耐摩耗性や耐擦傷性などのハードコート層の機能を付与して用いることもできる。
【0086】
このとき用いられる粘着剤としては、2つの物体をその粘着作用により接着させるものであれば特に限定されず、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などからなるものを用いることができる。中でも、ゴム系のものが一般的であり、シリコーン系は耐熱性がよく、フッ素樹脂などにも粘着するが価格が高いという欠点がある。アクリル系は耐熱性もあり、粘着力も大きく、ゴム系のような酸化劣化がないので好ましい。
【0087】
更に、粘着剤は溶剤型粘着剤と無溶剤型粘着剤の2つに大別される。乾燥性、生産性、加工性において優れた溶剤型粘着剤は依然として主流であるが、近年、公害、省エネルギ、省資源、安全性などの点で無溶剤型粘着剤に移り変わりつつある。中でも、活性線を照射することで秒単位で硬化し、可撓性、接着性、耐薬品性などに優れた特性を有する粘着剤である活性線硬化型粘着剤を使用するのは好ましい。
【0088】
活性線硬化型アクリル系粘着剤の具体例は、日本接着学会編集、「接着剤データブック」、日刊工業新聞社1990年発行、第83頁から第88頁を参考とすることができるが、これらに限定されるものではない。市販品として多官能アクリル系紫外線硬化塗料として日立化成ポリマー(株)、東邦化成工業(株)、(株)スリーボンド、東亜合成化学工業(株)、セメダイン(株)、日本化薬(株)などの製品を利用することができるがこれらに限定されるものではない。
【0089】
この種の粘着剤は、通常の二軸延伸ポリエステルフィルムに塗布した場合には、接着性が不十分となり、各種のプライマー処理、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などからなる積層膜を設けることにより、ポリエステルフィルムと粘着剤層との接着性を向上させることができる。なお、本発明に係る2種のポリエステル樹脂と架橋剤からなる積層膜を設けてもよいことはいうまでもない。
【0090】
次に、本発明のハードコートフィルムの製造方法について、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下PETと略称する)を例にして説明するが、これに限定されるものではない。
【0091】
本発明の上述した表面硬度が高く、耐摩耗性に優れると同時に耐久性にも優れるハードコートフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、特定のTgを有し、かつ、Tgの異なる2種類のポリエステル樹脂と架橋剤からなる積層膜を設け、その一方の面に活性線硬化物からなるハードコート層を設けることによって製造することができる。
【0092】
より具体的には、PETペレットを十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260〜300℃でシート状に溶融押し出しし、冷却固化せしめて未延伸PETシートを作成する。このシートを70〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得る。このフィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施し、その処理面に所定の濃度の積層膜形成塗液を塗布する。塗布して後、フィルム端部をクリップで把持して70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥して後、幅方向に2.5〜5倍に延伸する。引き続き160〜250℃の熱処理ゾーンに導き、1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で必要に応じて幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。この場合、用いる塗布液は環境汚染や防爆性の点で水系が好ましい。
【0093】
本発明のハードコートフィルムは、上記積層ポリエステルフィルムの一方の面に、ハードコート層を設けることにより得られる。ハードコート層は活性線硬化性単量体混合物を主たる構成成分とする組成物を塗布、必要に応じて乾燥を施した後、活性線で硬化させることにより得ることができる。
【0094】
なお、上記例において、積層膜が設けられる基材フィルムにもポリエステル樹脂、メラミン系架橋剤、あるいはこれらの反応生成物から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。この場合は、積層膜と基材フィルムとの接着性が向上する、積層ポリエステルフィルムの易滑性が向上するなどの効果がある。ポリエステル樹脂、メラミン系架橋剤、あるいはこれらの反応生成物を含有させる場合には、1種であれ複数種であれ、その添加量の合計が5ppm以上20重量%未満であるのが、接着性、易滑性の点で好ましい。もちろん、ポリエステル樹脂、メラミン系架橋剤、あるいはこれらの反応生成物は、基材フィルム上に設ける積層膜形成組成物(本発明に係る積層ポリエステルフィルムの再生ペレットなどを含む)であってもよい。
【0095】
このようにして得られたハードコートフィルムは、表面硬度が高く、耐摩耗性に優れ、更に、ハードコート層の耐久性に優れているため、広範な用途に使用できる。
【0096】
詳しくは、タッチパネル、ガラスや金属板に貼合わせるディスプレイ用、電子白板やホワイトボードなどの表示用、ラベル、シール、OHP用、カード、宅配便伝票、プリンタ用受像紙、更に種々の表面保護材、例えば、電卓や計器のカバーなどに用いることができる。また、被覆金属板用として、家電機器、事務用機器、建材、車両、鋼製家具などに用いることもできる。
【0097】
【特性の測定方法および効果の評価方法】
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次の通りである。
【0098】
(1)塗布層の厚み
日立製作所(株)製透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、積層膜を設けた二軸配向ポリエステルフィルムの断面を観察した写真から求めた。厚みは測定視野内の30個の平均値とした。
【0099】
(2)接着性−1
常態下(23℃、相対湿度65%)で、本発明のハードコートフィルムのハードコート層上に1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、ハードコート層の残存した個数により4段階評価(◎:100、○:80〜99、△:50〜79、×:0〜49)した。(◎)、(○)を接着性良好とした。
【0100】
(3)接着性−2
本発明のハードコートフィルムに対し、湿熱下(80℃、相対湿度90%)で2時間放置した。処理後、直ちに取り出し、常態下(23℃、相対湿度65%)で5分間放置後、上記(2)と同様の評価を行った。
【0101】
(4)鉛筆硬度
JIS−K5400に準じて、各種硬度の鉛筆を90度の角度でハードコート層に当て、荷重9.8Nで引っ掻き、傷が発生したときの鉛筆の硬さで表示し、表面硬度の指標とした。
【0102】
(5)耐摩耗性
スチールウール#0000でハードコート層表面を摩擦し、傷のつき具合いを次の基準で評価した。(○)、(△)が実用上問題ないレベルである。
【0103】
○:摩擦してもほとんど傷が付かない
△:摩擦すると少し傷が付く
×:傷が付く
【0104】
(6)ガラス転移点(Tg)
セイコー電子工業(株)製“ロボット”DSC(示差走査熱量計)RDC220にセイコー電子工業(株)製SSC5200ディスクステーションを接続して測定した。DSCの測定条件は次の通りである。即ち、試料10mgをアルミニウムパンに調整後、DSC装置にセツトし(リファレンス:試料を入れていない同タイプのアルミニウムパン)、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素中を用いて急冷処理をする。この試料を10℃/分で昇温し、そのDSCチャートからガラス転移点(Tg)を検知する。
【0105】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0106】
実施例1
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、および平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを95℃に加熱して長手方向に3.5倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を52mN/mとし、その処理面に下記の積層膜形成塗液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、110℃で乾燥後、引き続き連続的に125℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、更に230℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層PETフィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが188μm、積層膜の厚みが0.15μmであった。
【0107】
次に、この積層PETフィルム上に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート70重量部、N−ビニルピロリドン30重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン4重量部を撹拌混合して得られた組成物を、バーコータを用いて硬化後の膜厚が3μmとなるように均一に塗布した。これを、塗布面より9cmの高さにセットした80W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯で、紫外線を15秒間照射し、硬化させ、積層PETフィルム上にハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0108】
「積層膜形成塗液」
(A):ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 88モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 12モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 100モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:82℃)の水溶性塗液。
【0109】
(B):ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 50モル%
イソフタル酸 49モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 1モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 55モル%
ネオペンチルグリコール 44モル%
ポリエチレングリコール(分子量:4000) 1モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:29℃)の水分散体。
【0110】
(C):架橋剤
・メチロール化メラミンを、イソプロピルアルコールと水との混合溶媒(25/75(重量比))に希釈した塗液。
【0111】
(A)/(B)/(C)=40/60/5(固形分重量比)で混合し、積層膜形成塗液とした。
【0112】
実施例2
実施例1の積層膜形成塗液で、ポリエステル樹脂(B)を下記の共重合ポリエステルとした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0113】
(B):ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 50モル%
イソフタル酸 29モル%
セバチン酸 20モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 1モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 55モル%
ネオペンチルグリコール 44モル%
ポリエチレングリコール(分子量:4000) 1モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:−4℃)の水分散体。
【0114】
実施例3
実施例2の積層膜形成塗液で、(A)/(B)の混合比を25/75(固形分重量比)とした以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0115】
実施例4
実施例3の積層膜形成塗液で、(A)と(B)の合計100重量部に対し、架橋剤(C)を10重量部混合して用いた以外は実施例3と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0116】
実施例5
実施例3の積層膜形成塗液で、ポリエステル樹脂(A)を下記の共重合ポリエステルとした以外は、実施例3と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0117】
(A):ポリエステル樹脂
・酸成分
ナフタレンジカルボン酸 75モル%
イソフタル酸 24モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 1モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 55モル%
ネオペンチルグリコール 44モル%
ポリエチレングリコール(分子量:4000) 1モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:95℃)の水分散体。
【0118】
実施例6
実施例1の積層膜形成塗液で、架橋剤(C)を水系架橋剤であるオキサゾリン基含有水溶性ポリマー“エポクロス”WS−500((株)日本触媒製)に変えた以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0119】
実施例7
実施例4において、ポリエステルフィルムをポリエチレンテレフタレートフィルムからポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下、「PEN」と略称する)フィルムに変えた以外は実施例4と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0120】
実施例8
実施例4の積層PETフィルム上に、ペンタエリスリトールトリアクリレート60重量部、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン10重量部、N−ビニルピロリドン30重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン4重量部、トルエン90重量部、酢酸ブチル70重量部、イソプロピルアルコール70重量部を撹拌混合して得られた組成物を、バーコータを用いて硬化後の膜厚が3μmになるように均一に塗布した。これを80℃で20秒間乾燥させた。これを窒素雰囲気下で紫外線照射した以外は実施例4と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0121】
実施例9
平均粒径0.2μmの二酸化チタンを14重量%、および平均粒径1μmのシリカを0.5重量%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを95℃に加熱して長手方向に3.2倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を52mN/mとし、その処理面に実施例4と同様の積層膜形成塗液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、110℃で乾燥後、引き続き連続的に125℃の加熱ゾーンで幅方向に3.2倍延伸し、更に230℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層膜を設けた白色積層PETフィルムを得た。このとき、基材白色PETフィルムの厚みが250μm、光学濃度が1.5、白色度が85%、積層膜の厚みが0.15μmであった。
【0122】
得られた白色積層PETフィルムに、実施例4と同様にしてハードコート層を設け、ハードコートフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0123】
実施例10
予めポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコール(分子量4000)との重量比が1対1となるように、ポリブチレンテレフタレートの重合時にポリテトラメチレングリコールを添加することによって製造したポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレングリコール共重合体を1重量%、およびポリメチルペンテン(三井石油化学(株)製、TPX、DX820)5重量%を含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、285℃に加熱された押し出し機Aに供給する。また、上記と同じPETペレットを充分に真空乾燥した後、285℃に加熱された押し出し機Bに供給する。押し出し機A、Bより押し出されたポリマをB/A/Bの3層構成となるように共押し出しにより積層し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを95℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を52mN/mとし、その処理面に実施例4と同様の積層膜形成塗液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、110℃で乾燥後、引き続き連続的に125℃の加熱ゾーンで幅方向に3.4倍延伸し、更に230℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層膜を設けた白色積層PETフィルムを得た。このとき、基材白色PETフィルム厚みが125μm(厚み比はB/A/B=5/90/5)、光学濃度が1.2、白色度が70%、積層膜の厚みが0.15μmであった。
【0124】
得られた白色積層PETフィルムに、実施例4と同様にしてハードコート層を設け、ハードコートフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0125】
比較例1
実施例1において、積層膜を設けず、ハードコート層を設けたものをハードコートフィルムとした場合の結果を表2に示す。
【0126】
比較例2
実施例1の積層膜形成塗液で、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を下記に示す共重合ポリエステル樹脂とし、架橋剤(C)は混合しなかった以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0127】
(A):ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 99モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 1モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 70モル%
ネオペンチルグリコール 30モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:66℃)の水分散体。
【0128】
(B):ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 50モル%
イソフタル酸 29モル%
セバチン酸 20モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 1モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 55モル%
ネオペンチルグリコール 44モル%
ポリエチレングリコール(分子量:4000) 1モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:−4℃)の水分散体。
【0129】
比較例3
実施例1の積層膜形成塗液で、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を下記に示す共重合ポリエステル樹脂とし、架橋剤(C)は混合しなかった以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0130】
(A):ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 50モル%
イソフタル酸 49モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 1モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 55モル%
ネオペンチルグリコール 44モル%
ポリエチレングリコール(分子量:4000) 1モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:29℃)の水分散体。
【0131】
(B):ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 56モル%
イソフタル酸 18モル%
トリメリット酸 20モル%
セバシン酸 6モル%
・グリコール成分
エチレングリコール 30モル%
ネオペンチルグリコール 36モル%
1,4−ブタンジオール 34モル%
上記酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂(ガラス転移点:20℃)のアンモニウム塩型水分散体。
【0132】
比較例4
比較例3の積層膜形成塗液で、(A)と(B)の合計100重量部に対し、架橋剤としてメチロール化メラミンを5重量部混合して用いた以外は比較例3と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0133】
比較例5
実施例1の積層膜形成塗液で、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を下記に示す共重合ポリエステル樹脂とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0134】
(A):ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 88モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 12モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 100モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:82℃)の水溶性塗液。
【0135】
(B):ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 50モル%
イソフタル酸 49モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 1モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 82モル%
ネオペンチルグリコール 18モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:70℃)の水分散体。
【0136】
比較例6
実施例1において、積層膜形成塗液として、下記のポリエステル樹脂のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0137】
ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 56モル%
イソフタル酸 18モル%
トリメリット酸 20モル%
セバシン酸 6モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 30モル%
ネオペンチルグリコール 36モル%
1,4−ブタンジオール 34モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:20℃)のアンモニウム塩型水分散体。
【0138】
比較例7
比較例6の積層膜形成塗液で、架橋剤として下記の塗液を、ポリエステル樹脂/架橋剤=100/3(固形分重量比)で混合した以外は、比較例6と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0139】
架橋剤
・メチロール化メラミンを、イソプロピルアルコールと水との混合溶媒(25/75(重量比))に希釈した塗液。
【0140】
比較例8
比較例6の積層膜形成塗液で、ポリエステル樹脂を下記のポリエステル樹脂とした以外は、比較例6と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0141】
ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 84モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 16モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 94モル%
ジエチレングリコール 6モル%
上記酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:72℃)の水分散体。
【0142】
比較例9
比較例8の積層膜形成塗液で、架橋剤として下記の塗液を、ポリエステル樹脂/架橋剤=100/3(固形分重量比)で混合した以外は、比較例8と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0143】
架橋剤
・メチロール化メラミンを、イソプロピルアルコールと水との混合溶媒(25/75(重量比))に希釈した塗液。
【0144】
実施例11
基材フィルムとして、実施例1で得られた積層PETフィルムを粉砕しペレット化したものを、ポリエチレンテレフタレートに20重量%添加し、溶融押し出しした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0145】
【表1】
【表2】
【0146】
【発明の効果】
本発明のハードコートフィルムは、特定のTgを有し、かつ、Tgの異なる2種類のポリエステル樹脂と架橋剤を主たる構成成分とする積層膜を設けた積層ポリエステルフィルムを用いることにより、表面硬度が高く、耐摩耗性に優れ、かつ、ハードコート層の接着性に優れると同時に、湿熱下で処理した後も接着性に優れた効果を発現するものである。
Claims (6)
- ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた積層膜を介してハードコート層が設けられた積層体において、該積層膜がガラス転移点の異なる2種類のポリエステル樹脂と架橋剤(C)を主たる構成成分とし、かつ、ガラス転移点の高いポリエステル樹脂(A)のガラス転移点が、60℃以上、110℃以下であり、ガラス転移点の低いポリエステル樹脂(B)のガラス転移点が、60℃未満であることを特徴とするハードコートフィルム。
- 積層膜において、架橋剤(C)が、ガラス転移点の高いポリエステル樹脂(A)とガラス転移点の低いポリエステル樹脂(B)の合計100重量部に対し、固形分重量比で0.5〜20重量部含まれてなることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
- ガラス転移点の低いポリエステル樹脂(B)のジオール成分として、ネオペンチルグリコール化合物が含まれてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハードコートフィルム。
- ハードコート層が、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の少なくとも1種と、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の少なくとも1種とからなる活性線硬化性単量体混合物を主たる構成成分とする活性線硬化物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
- ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
- 積層膜を設けるに際し、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に積層膜形成塗液を塗布して後、少なくとも一方向に延伸、熱処理を施すことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のハードコートフィルム。
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