JP2014130135A - 複合構造体の界面検査方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セメント複合材と金属板とからなる複合構造体に振動を発生させる振動発生手段により振動を加え、複合構造体内を伝搬する振動を受信手段で受信して信号波形を取得する工程(S1)と、取得した信号波形に対して包絡線検波を行い、包絡線を取得する工程(S2)と、取得した包絡線のうち、減衰が開始する時点から減衰が終了するまでの間に含まれる包絡線を減衰曲線とし、減衰曲線における減衰特性を表す減衰係数に基づいて複合構造体の界面の状態を判定する工程(S4-S9)と、を有する。
【選択図】図2
Description
この打音法を利用して、インパルスハンマーを用いてコンクリート構造物に打撃を加え、打撃音及びマイクロホンで採取した音の振幅比や、採取した音の周波数スペクトルから求めた周波数重心に基づいて、コンクリート構造物の健全性を検査する方法が知られている(特許文献1参照)。
従って、界面状態の判定では複合構造体の大きさによる影響を受けないので、検査精度を向上させることができる。また、減衰係数に基づいて界面の状態を判定することにより、包絡線が減衰するまでの間に存在する振幅の影響を低減できるので、検査精度を向上させることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る複合構造体の界面検査装置の概略構成図である。界面検査装置10は、例えば橋梁の桁上部に設けられた、底鋼板(金属板)2とコンクリート(セメント複合材)4とからなる合成床版(複合構造体)6の界面8の状態を検査するための装置である。なお、コンクリート4には、硬化したコンクリートに限られず、硬化する前のフレッシュコンクリートをも含んでいる。
ハンマー12は、底鋼板2に振動を加えることができればよく、例えば鉄ハンマー、プラスチックハンマー、ゴムハンマー、木ハンマー等が挙げられる。
マイクロホン14はフード16で覆われており、フード16を底鋼板2に接触させることで、外部の音を遮断してノイズを低減することが可能となる。
演算装置18には出力装置としてモニタ20が接続されており、例えばマイクロホン14で採取した信号波形をモニタ20に出力するようにしてもよい。図示しないが、演算装置18は、キーボード等の入力装置を有していてもよく、例えばパーソナルコンピュータであってもよい。
以下、本発明に係る複合構造体の界面検査方法の第1実施形態について説明する。第1実施形態において、コンクリート4は硬化したコンクリートである。
図2は、本発明の第1実施形態に係る界面検査方法のフローチャートを示しており、図3(A)はマイクロホン14で採取した音の測定波形、図3(B)は図3(A)に示した測定波形から取り出した包絡線の信号波形、図3(C)は図3(B)に示す打撃音に相当する信号を除去した包絡線を曲線近似した減衰曲線の図、図3(D)は図3(C)を時間軸方向に拡大した図をそれぞれ示している。以下図2、図3に基づいて説明する。なお、以下に説明するステップS2以降の各処理は、演算装置18で行われる。
ステップS3では、上記ステップS1でハンマー12が底鋼板2に加えた打撃音に相当する信号波形を除去する。打撃音に相当する信号波形は、図3(B)に示すように時間軸方向で見ると、測定を開始してから最初に現れる最大の振幅を有する信号波形として現れる。従って、上記ステップS1で音の採取を開始した測定開始時間、即ち0秒から最大振幅が現れる時点までの時間幅dTに含まれる信号波形を除去する。これにより、打撃音の影響を包絡線から除去できるので、検査精度を向上させることが可能となる。
y=Ae-(x-x0)/t ・・・(1)
上記式(1)では、Aは指数関数の係数、xは音の採取を開始してからの変化量、tは時間をそれぞれ示している。この時間tは指数関数の変化量xに対する係数であり、時間tは上記式(1)の減衰曲線の減衰特性を表しているので、時間tを減衰パラメータとして用いる。x0は音の採取を開始してから減衰開始位置までの変化量であるのがよいが、x0は上記時間幅dT相当量で代用してもよい。なお、包絡線において減衰開始とは、減衰が終了している時点から包絡線を時間軸方向に溯っていくと包絡線の振幅は略等増幅していくが、この略等増幅していく等増幅線の変曲点となる時点のことである。
ステップS6では、上記ステップS4で求めた減衰パラメータtが第1の閾値未満なので、界面8の状態は健全であると判定して、本フローチャートを終了する。
ステップS7では、上記ステップS4で求めた減衰パラメータtが第2の閾値未満か否かを判定する。ここで第2の閾値とは、上述した第1の閾値より大きく、且つ底鋼板2とコンクリート4との界面8で空洞が存在していると判定される値である。当該判定結果が真(Yes)の場合には、減衰パラメータtは第2の閾値未満としてステップS8へ進む。
ステップS8では、上記ステップS4で求めた減衰パラメータtが第1の閾値以上であり、且つ第2の閾値未満なので、底鋼板2とコンクリート4との界面8で付着切れが生じていると判定して、本フローチャートを終了する。
ステップS9では、減衰パラメータtは第2の閾値以上であるので、底鋼板2とコンクリート4との界面8には空洞が存在すると判定して、本フローチャートを終了する。
従って、界面8の状態の識別は合成床版6の大きさに依存しないので、界面8の検査精度を向上させることができる。また上記式(1)で表される指数関数の変化量xに対する係数となる時間tを減衰パラメータとすることにより、界面8の状態に応じて減衰曲線の減衰パラメータtも変わるので、減衰パラメータtに基づいて界面8の状態を識別することができる。また、空洞が存在していると判定される第2の閾値を用いて判定することにより、界面8の状態の健全/不健全だけでなく、不健全の状態が付着切れなのか、空洞が存在するのか、ということも識別可能となる。
次に、上記第1実施形態の変形例について以下に説明する。本変形例は、上記第1実施形態に対して減衰パラメータとして減衰時間を用いる点が異なっており、その他の構成については共通しているので説明を省略する。
これにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の第2実施形態について以下に説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してさらに包絡線を周波数解析する点が異なっており、その他の構成については共通しているので説明を省略する。
ステップS12では、上記ステップS11で取得した測定波形に包絡線検波を行い、包絡線を取り出す。
ステップS13では、上記ステップS11でハンマー12が底鋼板2に加えた打撃音に相当する信号波形を除去する。
ステップS15では、上記ステップS14で求めた減衰開始から減衰終了までの減衰パラメータtが第1の閾値未満か否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合には、上記ステップS14で求めた減衰パラメータtは第1の閾値未満であるとして、ステップS16へ進む。
ステップS16では、上記ステップS14で求めた減衰パラメータtが第1の閾値未満なので、界面8の状態は健全であると判定して、本フローチャートを終了する。
ステップS17では、上記ステップS13で打撃音に相当する信号波形を除去した信号波形に対して周波数解析を行う。信号波形を周波数解析することによって、周波数に対する振幅特性の信号波形が得られる。また、信号波形における波数に応じた周波数分布を容易に把握することができる。
底鋼板2とコンクリート4との界面8に空洞が存在する場合、上記ステップS12で得られる信号波形の波数は後述する付着切れが存在する場合の波数と比べて多くなるため、特定の周波数帯域に鋭い振幅が現れることになる。
ステップS20では、周波数分布が広帯域に分布しているので、界面8は付着切れの状態であると判定して本フローチャートを終了する。
次に、本発明の第3実施形態について以下に説明する。本実施形態は、第1及び第2実施形態に対し、硬化する前のフレッシュコンクリートに本発明を適用する点が異なっており、その他の構成については共通しているので説明を省略する。
図6は、本実施形態に係る界面検査方法のフローチャートである。以下、同フローチャートに基づいて説明する。なお、本フローチャートのステップS21〜S24は、上記第1及び第2実施形態のステップS1〜S4或いはステップS11〜S14と共通しているので、説明を省略する。
ステップS26では、上記ステップS24で求めた減衰パラメータtが第3の閾値未満なので、界面8の状態は健全であり、フレッシュコンクリートが充填されていると判定して、本フローチャートを終了する。
このように、本実施形態では、底鋼板2にハンマー12で打撃を加え、マイクロホン14で測定した測定波形の包絡線を取り出し、打撃音に相当する信号波形を除去した包絡線を曲線近似して求めた減衰パラメータtに基づいて、コンクリートの打設後、硬化する前のフレッシュコンクリートからなる合成床版(複合構造体)6において、フレッシュコンクリートが充填されているか、或いは未充填であるかを識別することが可能である。
ところで、上記各実施形態において、界面検査装置10をハンマー12で自動的に打音を発生させる装置として構成するようにしてもよく、さらにハンマー12とマイクロホン14を一体に備えて構成するようにしてもよい。即ち、例えば、図7に示すような、ハンマー12とマイクロホン14とを一体にしたような界面検査ユニット110を用いるようにしてもよい。
なお、ハンマー本体112aの先端部は対象物に応じて取り替えることが可能で、例えば通常プラスチックハンマーを使用する場合に対して本装置を使用する場合には、樹脂部材112cを取り付ける。
また、界面検査ユニット110には、界面検査ユニット110を底鋼板2に押し当てるべくハンドル111が設けられている。
底鋼板2に対向する面には、マグネット122を設けるのがよく、マグネット122で界面検査ユニット110を底鋼板2に固定することで作業性の向上を図ることが可能である。
さらに、上記各実施形態では、底鋼板2とコンクリート4とからなる合成床版6を例として説明しているが、コンクリート4はセメント複合材であれば例えばモルタルでもよく、この場合であっても本発明の界面検査方法及び装置を適用可能である。
本発明に係る界面検査装置10を用いて、上記第1実施形態で説明した界面検査方法を実施し、合成床版6の界面8の健全状態の検査を行った。
本実施例で行う界面検査方法の概略図を図8、図9に示す。図8は、界面8が健全状態の合成床版6、または付着切れ(図示せず)が生じている状態の合成床版6aに対して界面検査方法を示す概略図である。図9は、界面8に空洞9が存在する合成床版6bに対して界面検査方法を示す概略図である。付着切れとは、底鋼板2とコンクリート4との接触が剥がれてしまい、底鋼板2上にコンクリート4が載っている状態のことである。
本発明に係る界面検査装置10を用いて、上記第1実施形態の変形例に係る界面検査方法を実施し、合成床版6、6a、6bにおける界面8の健全状態の検査を行った。なお、本実施例では、検査対象、構成、及び検査条件は上述した実施例1と同様である。
このように、包絡線を曲線近似した減衰曲線において、振幅が最大振幅Amの1/α1から1/α2となるまでの減衰時間Tに基づいて、界面8の健全状態を把握することが可能となることが判る。
本発明に係る界面検査装置10を用いて、上述した第2実施形態の界面検査方法を実施し、底鋼板2とコンクリート4とからなる合成床版6a、6bの界面8の健全状態の検査を行った。なお、本実施例では、1辺の長さWが200mm、高さdが10mmの模擬空洞9を有する合成床版6b、一辺の長さWが100mm、高さdが10mmの模擬空洞9を有する合成床版6bを準備した点が異なり、他の構成及び検査条件は上述した実施例1と同様である。
本発明に係る界面検査装置10を用いて、上述した第2実施形態の界面検査方法を実施し、界面8に形成された空洞の大きさと振幅が現れる周波数帯域との関係、及び底鋼板2の厚さと振幅が現れる周波数帯域との関係についてさらに調査した。なお、本実施例は、上記実施例1に対し、1辺の長さWが200mm、高さdが10mmの模擬空洞9を有する合成床版6b、1辺の長さWが200mm、高さdが50mmの模擬空洞9を有する合成床版6b、1辺の長さWが140mm、高さdが0.5mmの模擬空洞9で板厚hが8mmの底鋼板2を有する合成床版6b、及び1辺の長さWが140mm、高さdが0.5mmの模擬空洞9で板厚hが6mmの底鋼板2を有する合成床版6bを準備した点が異なり、他の構成及び検査条件は上述した実施例1と同様である。
図16(A)は界面8に模擬空洞9が形成されている合成床版6bの概略図であり、図16(B)は図16(A)のXIV-XIV線に沿う断面図であり、以下同図に基づいて説明する。
D=Eh3/12(1−ν2) ・・・(3)
ここで、E:縦弾性定数[N/m2]、ν:ポアソン比をそれぞれ示している。
λ=m2+(a/b)2n2 ・・・(4)
ここで、m=n=1とすると、定数λは以下の式(5)で表される。
λ=1+(a/b)2 ・・・(5)
また、空洞9が正方形の空洞であるとすると、辺の長さa、bはa=bとなり、これを上記式(5)に代入した以下の式(6)により定数λが求められる。
λ=1+(a/a)2=2 ・・・(6)
従って、固有振動数fは、定数λを上記式(2)に代入した以下の式(7)より求められる。
ここで、上記式(7)を用いて、本実施例で説明した図15(A)、(B)で用いた合成床版6bの固有振動数fを求める。なお、縦弾性定数E=210G[N/mm2]、ポアソン比ν=0.3として計算した。
従って、周波数解析を行って得られた顕著な大きさの鋭い振幅が現れる周波数帯域から、空洞の大きさを精度よく推定することが可能であることが判る。
本発明に係る界面検査装置10を用いて、上記第3実施形態に係る界面検査方法を実施し、底鋼板2とフレッシュコンクリートからなる合成床版6における界面8の健全状態の検査を行った。ここでは、コンクリートを打設する前の底鋼板2とコンクリートを打設した後のフレッシュコンクリートが完全に充填された合成床版6とを比較した。なお、本実施例でも、構成及び検査条件は上述した実施例1と同様である。
4 コンクリート
6 合成床版(複合構造体)
8 界面
10 界面検査装置
12 ハンマー(振動発生手段)
14 マイクロホン(受信手段)
18 演算装置(包絡線検波手段、界面状態判定手段)
110 界面検査ユニット
112 ソレノイドハンマーユニット(振動発生手段)
114 マイクロホン(受信手段)
Claims (7)
- セメント複合材と金属板とからなる複合構造体に振動を発生させる振動発生手段により振動を加え、前記複合構造体内を伝搬する振動を受信手段で受信して信号波形を取得する工程と、
取得した信号波形に対して包絡線検波を行い、包絡線を取得する工程と、
取得した包絡線のうち、減衰が開始する時点から減衰が終了するまでの間に含まれる包絡線を減衰曲線とし、前記減衰曲線における減衰特性を表す減衰係数に基づいて前記複合構造体の界面の状態を判定する工程と、
を有することを特徴とする複合構造体の界面検査方法。 - 前記包絡線を取得する工程は、前記振動発生手段により加えられた振動に相当する信号波形を前記包絡線から除去する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合構造体の界面検査方法。
- 前記振動に相当する信号波形を除去する工程では、前記複合構造体内を伝搬する振動を前記受信手段で受信を開始した受信開始時間から、前記包絡線における振幅が最大となる時間までに含まれる信号波形を除去することを特徴とする請求項2に記載の複合構造体の界面検査方法。
- 前記減衰係数は、前記減衰曲線における指数関数の変数に対する係数であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合構造体の界面検査方法。
- 前記減衰係数は、前記減衰曲線の振幅が、前記包絡線での減衰が開始する時間以降における前記減衰曲線の振幅となる第1の振幅から、前記第1の振幅よりも小さい前記減衰曲線における第2の振幅となるまでの時間幅であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合構造体の界面検査方法。
- さらに、取得した信号波形に対して周波数解析を行い、周波数に対する振幅特性の信号波形を取得する工程と、
周波数解析をして得られた信号波形における、振幅が出現している周波数帯域と、その周波数帯域における振幅の大きさとに基づいて前記複合構造体の界面の状態を判定する工程と、
を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合構造体の界面検査方法。 - セメント複合材と金属板とからなる複合構造体に振動を発生させる振動発生手段と、
前記振動発生手段により前記複合構造体に振動が加えられ、前記複合構造体内を伝搬する振動を受信して信号波形を取得する受信手段と、
前記受信手段で取得した信号波形から包絡線を取得する包絡線検波手段と、
取得した包絡線のうち、減衰が開始する時点から減衰が終了するまでの間に含まれる包絡線を減衰曲線とし、前記減衰曲線における減衰特性を表す減衰係数に基づいて前記複合構造体の界面の状態を判定する界面状態判定手段と、
を備えることを特徴とする複合構造体の界面検査装置。
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